(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの要素と関連づけられた攪拌機を含み、該攪拌機は、前記表面と接触する炭素質材料を撹拌して該炭素質材料を表面下の領域へ移送するように構成される請求項9に記載のシステム。
それぞれが表面を有し該表面が縦カスケード配置に構成された複数の要素を含み、該複数の要素の中を通って縦に延びる回転可能軸をさらに含み、それぞれの表面と関連づけられた攪拌機は該回転可能軸の回転によって動作可能である請求項14に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
ガス化とは、炭素質材料などの固体または液体材料をガス燃料に変換することを言う。ガス化は、化学およびエネルギー業界で低排出量技術として注目されている。
【0003】
炭素質材料のガス化は概念的に2つの工程に分けられるが、この2つの工程の間の明確な区別は不可能である。(固体)炭素質材料が加熱されると、炭素質材料の水分を含むガスと蒸気の混合物(「揮発性物質」)が炭素質材料から放出され、固体在留物(「炭化物」)を残す。そして、揮発性物質と炭化物の両方が、H
2OやO
2等のガス化剤と反応して生成ガスを形成する。
【0004】
褐炭(亜炭)、泥炭、バイオマス、固体廃棄物等の低品位炭素質燃料は、その高度なガス化反応性のため特にガス化に適している。しかしながら、これら低品位燃料はいくつかの固有の性質を持ち、これら低品位燃料をガス化するためのガス化装置の設計および運用ではそれらの性質を考慮しなければならない。
【0005】
第1に、低品位燃料は一般に揮発性物質産出量が高く、ある種のバイオマスでは(乾燥ベースで)例えば80wt%以上となる。タールの除去は手間とコストがかかるため、揮発性物質のタール性成分の完全な改質はガス化装置の設計において最も重要な検討事項の1つである。
【0006】
第2に、低品位燃料は、熱分解およびガス化中に簡単に揮発することがある、よく分散したアルカリおよびアルカリ土類金属(AAEM)種を含むことが多い。ガス化生成ガス中の揮発したAAEM種は、タービン/エンジン部品の腐食/浸食を生じさせることがある。揮発したAAEM種はまた、流動層ガス化装置の流動媒体(砂等)と反応し、流動媒体の凝集と非流動化を生じることもある。一方で、これらAAEM種を炭化物中に保持すると、炭化物のガス化にとってすぐれた触媒となり得る。
【0007】
第3に、低品位燃料からの炭化物と揮発性物質はとても反応性が高い。炭化物と揮発性物質との間の相互作用はそれぞれの固有の金属種(褐炭中のNaやバイオマス中のK等)の揮発を増進し炭化物構造を非活性化するため、炭化物の反応性を下げることがある。最悪の場合、揮発性物質−炭化物相互作用が実質的に炭化物のガス化を終結させることもある。揮発性物質−炭化物相互作用がある場合、ガス化温度の上昇は必ずしもガス化速度の大きな改善につながらない。事実、揮発性物質−炭化物相互作用はガス化のほぼすべての側面に影響を与える。
【0008】
酸素の消費は、ガス化装置の設計と運用において高効率を達成するための重要な検討事項である。多くのガス化装置において、炭化物より反応性が高い揮発性物質はO
2と優先的に反応する傾向があり、反応性の低い炭化物が残り、蒸気その他のガス化剤によってゆっくりガス化されることになる。より望ましい状況は、反応性の低い炭化物がO
2と反応し、反応性の高い揮発性物質が蒸気その他ガス化剤によって改質されることであろう。
【0009】
粗生成ガスが、微量のタール、揮発した無機種(アルカリ等)、汚染物質形成種(NH
3、HCNおよびH
2S等)を含むことがある。粗生ガスは、例えばタービン/エンジンのガス燃料として、または化学合成の原料として用いられるためには通常、洗浄する必要がある。ガス化生成ガスからのタール性材料、AAEM蒸気、粒子、H
2S/NH
3/HCl等の望ましくない各種成分の除去は通常ガス化処理全体の複雑さを増し、ガス化の資本および運用コスト全体の重要な部分を占める。これら望ましくない種を液体(水等)スクラブによって除去する場合、廃液流が生成され、それをさらに大きな費用をかけて処理しなければならない。従来の各種触媒を用いてタールを改質することができる。しかしながら、これら触媒は簡単に非活性化することが多い。
【0010】
したがって、技術的進歩の必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の1つの態様に従い、炭素質材料をガス化する方法が提供され、
当該方法は炭素質材料を熱分解して揮発性物質と炭化物とを生成する工程と、
当該炭化物と当該揮発性物質とを分離する工程と、
当該炭素質材料を熱分解する工程及び当該炭化物と当該揮発性物質とを分離する工程の後で、
酸素含有ガスおよび/または水蒸気を反応させ該炭化物をガス化して熱ガスを生成する工程と、
当該揮発性物質を改質して生成ガスを生成する工程と、
前記生成ガスおよび改質されていない
揮発性物質、または該生成ガスを、タール残留物及び他の不純物を除去するように配置された触媒床を含む、触媒による生成ガス洗浄領域の中を通過させる工程を含み、
少なくとも前記炭素質材料を熱分解する工程と、前記炭化物をガス化する工程と、前記揮発性物質を改質して生成ガスを生成する工程は、熱分解領域と炭化物ガス化領域と改質領域とを有し、前記熱分解領域からの前記揮発性物質が直接前記改質領域に入るように前記熱分解領域が前記炭化物ガス化領域及び前記改質領域の間にかつ隣接して配置され、前記触媒による前記生成ガス洗浄領域と直接連結されている容器中で
実行され、
該容器中には、生成ガス洗浄領域が配置されていると共に、全ての炭素質材料を揮発性物質と炭化物に変換する滞留時間の間炭素質材料と接触するように構成された下向きの斜面部分を有する表面を有する少なくとも1つの要素を含み、当該表面は炭素質材料を熱分解および部分的にガス化するために熱を受けるように該要素が構成されている熱分解装置が配置されている。
【0012】
部分的に改質された揮発性物質および/または生成ガスを、触媒床の中を通過させることで、タール残留物や無機汚染物質等その他の不純物の除去や、水性ガスシフト反応による生成ガスの水素含有物の増加を含むいくつかの効果が得られ、その結果、清浄な生成ガスが生成される。
【0013】
前記触媒床は、炭化物または炭化物担持触媒の移動床を含んでよい。当該移動床は、炭化物または炭化物担持触媒の非等温移動床であってもよい。当該炭化物または炭化物担持触媒は、前記炭素質材料(触媒種を充填されたものを含む)の熱分解および/または部分的ガス化から調製してよい。ある例では、当該触媒床から使用済み炭化物または炭化物担持触媒を排出し、この使用済み炭化物または炭化物担持触媒をガス化してそのエネルギー値を回復する工程を含む。当該使用済みまたは部分的使用済み炭化物または炭化物担持触媒は、土壌改良剤、栄養源として、および/または炭素の生物学的隔離のために現場に戻してもよい。
【0014】
他の実施例では、前記触媒床は一連の触媒床の1つである。
【0015】
本発明のある実施例では、前記炭素質材料の熱分解工程は、実質的に全ての炭素質材料を揮発性物質と炭化物に変換するのに十分な長さの期間炭素質材料を熱分解することを含む。
【0016】
ある実施例では、前記炭素質材料の熱分解工程は、熱ガス向流で炭素質材料を加熱することを含む。この熱ガスは炭化物のガス化から生成されてよい。炭素質材料は同時に熱分解と(部分的)ガス化してよい。
【0017】
ある実施例では、前記炭化物のガス化工程は、炭化物をガス化剤と反応させることを含む。
前記炭化物のガス化工程は、炭化物を制御された量の酸素含有ガスと反応させることを含んでよい。このガス化工程は、揮発性物質−炭化物相互作用を最小限にするために揮発性物質の改質工程とは隔離して行われてもよい。
【0018】
本発明のさらなる態様に従って、低品位炭素質材料のガス化から生成された粗生成ガスの処理方法が提供され、この粗生成ガスは部分的に改質された揮発性物質、タール残留物、汚染物質を含み、この方法は、当該粗生成ガスを触媒床に通すことを含む。
【0019】
ある実施例では、前記粗生成ガスの処理方法は、前記粗生成ガスを、炭化物または炭化物担持触媒の移動床を含む触媒床に通すことを含む。タール残留物および無機汚染物質等のその他不純物は当該粗生成ガスから除去される。さらに、水性ガスシフト反応によって、処理済み生成ガスの水素含有量は粗生成ガスと比べて増加する。
【0020】
この方法は、炭素質材料の熱分解前に炭素質材料を乾燥させる工程を含んでもよい。炭素質材料を乾燥させる工程を含む方法の実施例では、当該乾燥工程から生成された蒸気を揮発性物質の改質工程に使用してよい。
【0021】
本発明のさらなる態様に従って、炭素質材料をガス化するガス化システムが提供され、このガス化システムは、
改質領域と炭化物ガス化領域と熱分解領域を有する容器を含み、前記容器は前記改質領域、前記炭化物ガス化領域、および前記熱分解領域
が互いに分かれており、
前記改質領域は、揮発性物質を改質して生成ガスを生成するように構成され、
前記炭化物ガス化領域は、炭化物をガス化するように構成され、
前記熱分解領域は、炭素質材料を熱分解して揮発性物質及び炭化物を生成するように構成され、前記熱分解領域は前記改質領域と前記炭化物ガス化領域との間にかつ隣接して配設され、前記改質領域および前記炭化物ガス化領域と液体連結され、
前記容器は、前記炭素質材料の熱分解と前記炭化物と前記揮発性物質の分離に続いて、前記揮発性物質および前記炭化物がそれぞれ前記改質領域と前記炭化物ガス化領域とに直接入り、
さらに、
前記容器内に、前記改質領域と液体連結する配置であって、そのことにより、
生成ガスおよび改質されていない揮発性物質
、または生成ガスがその生成ガス洗浄領域の中のタール残留物及び他の不純物を除去するように配置された触媒床を通過させられる、触媒による生成ガス洗浄領域を
含むと共に、全ての炭素質材料を揮発性物質と炭化物に変換する滞留時間の間炭素質材料と接触するように構成された下向きの斜面部分を有する表面を有する少なくとも1つの要素を含み、当該表面は炭素質材料を熱分解および部分的にガス化するために熱を受けるように該要素が構成されている熱分解装置が配置されている。
【0022】
このように、本発明の前記ガス化システムは、揮発性物質−炭化物相互作用を減少させ、通常は最小限にする。
【0023】
ある実施例では、前記熱分解領域は、前記改質領域と前記炭化物ガス化領域との中間に配設される。
【0024】
ある実施例では、前記生成ガス洗浄領域は触媒床を含む。当該触媒床は、直列に配置された1つ以上の触媒床を含んでもよいことが理解されよう。
【0025】
発明の各種実施例では、前記ガス化システムは、前記熱分解領域に炭素質材料を導入するための入口と、蒸気や酸素含有ガスなどのガス化剤を前記炭化物ガス化領域に導入するための1つ以上の入口とを備えてよい。前記ガス化システムはまた、前記触媒床から生成ガスを引き出すための出口を備えてよい。
【0026】
ある実施例では、前記ガス化システムは、前記改質、炭化物ガス化および熱分解領域を中に画定するガス化容器を含む。
【0027】
発明のある実施例では、前記炭化物ガス化領域は前記ガス化容器の下部に配設される。前記改質領域は前記ガス化容器の上部に配設してよい。
【0028】
ある実施例では、前記炭化物ガス化領域はさらに、前記ガス化容器の下部に配設された出口に機能を達成するように結合された、係止ホッパーのような灰排出装置を備える。
【0029】
発明のある実施例では、前記熱分解領域は、実質的に全ての炭素質材料を揮発性物質と炭化物に変換するのに十分な長さの滞留時間の間炭素質材料を保持するよう構成される。
【0030】
前記熱分解領域は、実質的に全ての炭素質材料を揮発性物質と炭化物に変換するのに十分な長さの滞留時間の間炭素質材料を保持するよう構成された熱分解装置を備えてよい。
【0031】
ある実施例では、前記熱分解領域で形成された炭化物の一部をガス洗浄触媒として残りの炭素質材料から分離して、前記生成ガス洗浄領域へ向かわせる。
【0032】
ある実施例では、前記ガス化システムは、炭素質材料を熱分解および/または部分的にガス化して炭化物または炭化物担持触媒を調製するための移動床反応炉等の別個の容器を含み、該システムは、熱分解および/または部分的にガス化された炭素質材料を前記生成ガス洗浄領域内に排出して生成ガス洗浄のための触媒として機能させるよう構成される。炭素質材料はガス化の主な原料であってよい。
【0033】
前記生成ガス洗浄領域は前記炭化物ガス化領域と一致してもよく、当該炭化物ガス化領域は、炭化物が部分的または完全にガス化されるような条件下で構成および運用されてよい。当該炭化物ガス化領域もまた、炭化物貯蔵場所を含む別個の容器であってよい。
【0034】
本発明のさらなる態様に従って、炭素質材料を熱分解および部分的にガス化するための装置が提供され、該装置は
炭素質材料を受けとる時に受けとった炭素質材料が炭素質材料を熱分解するのに十分な長さの期間の間接触するよう構成された表面を有する少なくとも1つの要素を含み、
該表面が炭素質材料を熱分解および部分的にガス化するために熱を受けるように構成される。
【0035】
ある実施例では、前記表面が、前記期間中炭素質材料が該表面と接触するのを補助するように構成された下向きの斜面部分を有する。
【0036】
該装置は複数の表面を含み、それぞれの表面は、炭素質材料を受けとり受けとった炭素質材料が炭素質材料を熱分解するのに十分な長さの期間それぞれの表面に接触するように構成され、それぞれの表面は、炭素質材料を熱分解および部分的にガス化するために熱を受けるように構成される。当該複数の表面はカスケード配置してよく、該装置は、炭素質材料を熱分解するよう十分な長さの期間後に炭素質材料がカスケード配置された一連の表面に移送されるように構成されてよい。
【0037】
ある実施例では、該装置は少なくとも1つの要素と関連づけられている攪拌機を含み、該攪拌機は、前記表面と接触する炭素質材料を撹拌してその炭素質材料を該表面下方の領域へ移送するように構成される。
【0038】
該装置が前記カスケード配置の複数の表面を含む実施例において、前記攪拌機は、カスケード配置のそれぞれ次に続く表面に炭素質材料を移送するように構成されてよい。
【0039】
ある実施例では、該装置は複数の攪拌機を含み、それぞれの攪拌機は、それぞれ表面を有する要素と関連づけられ、また、カスケード配置された次に続く表面に炭素質材料を移送するように、又はカスケード配置の最後の表面の場合、カスケード配置の最後の表面の下の領域に炭素質材料を移送するように構成される。
【0040】
前記複数の表面は縦カスケード配置に構成されてよく、該装置は当該複数の表面を通って延びる回転可能な軸を含み、それぞれの表面と関連づけられた攪拌機は当該回転可能軸の回転によって動作可能である。
【0041】
縦カスケード配置のそれぞれ次に続く各表面は、その上の表面と補完的な形状を有する下向き斜面部分を有してよい。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施例は、
図1から
図4を参照して説明する、炭素質材料をガス化する方法10と、ガス化システム20、40と、炭素質材料の熱分解装置30とに関連する。
【0044】
該方法10は、炭素質材料を熱分解するための熱分解領域と、蒸気および酸素含有ガスで炭化物をガス化するための炭化物ガス化領域と、蒸気で揮発性物質を改質し生成ガスを生成するための改質領域と、生成ガスを洗浄するガス洗浄領域とを一体的にその中に画定するガス化容器で実施してよいことが理解されよう。本発明によるガス化容器の実施例を説明の後方のページでより詳細に説明する。
【0045】
最も広い形態で、また
図1に示すように、ガス化方法10は、炭素質材料を熱分解して揮発性物質と炭化物を生成する工程12と、当該炭化物と当該揮発性物質を分離する工程14と、当該炭化物をガス化する工程16と、当該揮発性物質を改質して生成ガスを生成する工程18と、当該生成ガスを洗浄する工程19を含む。
【0046】
「炭素質材料」という用語は、本明細書中で最も広い意味での用語として用いられており、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭および泥炭等の石炭、バイオマス、車両タイヤその他を含むゴム廃棄物、廃棄プラスチック材料、農業廃棄物、それらの混合物および前記炭素質材料とその他物質との混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
図1から
図4を参照して説明する本発明の実施例の方法およびシステムは、揮発性物質産出量が多く含水量が多い低品位炭素質材料と共に用いるのに特に適している。
図4を参照して説明するシステムは、揮発性物質産出量が多く含水量が多いバイオマスと共に用いるのに特に適している。
【0047】
バイオマス等の炭素質材料の含水量が多い実施例では、炭素質材料を熱分解前に乾燥させることが望ましい。炭素質材料の事前乾燥の利点は2つある。事前乾燥によって貯蔵ホッパーおよびガス化容器中の炭素質材料の粒子の凝集が最小限になる。
【0048】
さらに、炭素質材料を入れたガス化容器には本来一定量の水分を導入し、その後、改質領域で用いる蒸気に変換することが望ましいが、余分な水分量はガス化容器内の水分を蒸気に変換するためのエネルギー必要量を増し、効率を下げることになる。
【0049】
したがって、ある実施例では、方法10は炭素質材料を熱分解する前に炭素質材料を乾燥させる工程を含む。
【0050】
発明の1形態では、炭素質材料の乾燥は、炭素質材料を間接的熱交換配置で処理過程の生成ガスと接触させることを含む。生成ガスとの間接的熱交換は、当業者ならわかるように、炭素質材料を従来の間接乾燥機の中を通過させることによって達成してよい。このように、方法10において生成ガスの顕熱を効率的に用いることができる。
【0051】
方法10のある実施例では、炭素質材料の熱分解には、炭素質材料の連続流をガス化容器の熱分解領域へ導入することが含まれる。炭素質材料の熱分解領域への連続流を容易にし、かつ粒子凝集を最小限にするために、上述のように炭素質材料の含水量を制御し、また炭素質材料の粒径を制御することが望ましい。
【0052】
炭素質材料の熱分解は炭素質材料を加熱することを含み、炭素質材料を熱ガスで直接加熱することが望ましい。熱ガスはガス化容器の炭化物ガス化領域で生成でき、熱分解領域の炭素質材料の連続流との対向流直接熱交換に向けられる。熱ガスの温度は炭素質材料の種類に依存し、約900℃から約1200℃の温度範囲でよい。炭素質材料は熱ガス流との反応を通じて同時に熱分解および部分的ガス化をしてよい。
【0053】
好適な実施例では、炭素質材料の連続流は、炭素質材料を揮発性物質と炭化物に実質的に完全に熱分解できるのに十分な長さの期間、熱分解領域を通って徐々に降下する。ある実施例では、炭素質材料の連続流は重力によって熱分解領域を通って徐々に降下する。別の実施例では、炭素質材料の連続流は、オーガ、ねじ、移動床、または例えば
図3を参照して説明するような熱分解装置と関連づけられた撹拌手段等の移送手段によって熱分解領域を通って徐々に降下する。
【0054】
熱分解の後、揮発性物質はガス化装置の改質領域内へ上昇する一方、炭化物はガス化装置のガス化領域内へ下降する。好都合なことに、炭素質材料の揮発性物質と炭化物への完全な熱分解によって揮発性物質と炭化物それぞれの改質領域と炭化物ガス化領域への分離が改善され、そのことにより炭化物ガス化領域での揮発性物質と炭化物との間の相互作用が最小限になる。その結果、炭化物ガス化領域に実質的に揮発性物質がなくなり、従来技術による処理と比べて炭化物ガス化速度が相対的に上昇する。揮発性物質が実質的に存在しないことで、酸素が主に炭化物によって消費され、通常は速度限定工程である炭化物の急速なガス化を迅速にする。したがって、本発明の実施例は、最小量の酸素でガス化速度を増加させ、高いガス化効率を達成する。
【0055】
炭化物のガス化は、蒸気や酸素含有ガス等のガス化剤を炭化物ガス化領域に導入し炭化物と蒸気や酸素含有ガスを反応させることを含む。
【0056】
発明のある実施例では、炭化物ガス化領域に導入される酸素含有ガスは、空気、純酸素または希釈酸素を含んでよい。酸素と炭化物との間の発熱反応は、次のように単純化した反応で表わせる。
C+1/2O
2−>CO (1)
C+O
2−>CO
2 (2)
【0057】
蒸気と炭化物との間の吸熱反応は、次のように単純化した反応で示すことができる。
C+H
2O−>CO+H
2 (3)
【0058】
炭化物ガス化領域に導入される酸素含有ガスおよび/または蒸気の量は、炭化物ガス化領域の動作温度を制御するためにそれぞれ変化させてよい。
【0059】
所要動作温度は、生成ガス洗浄のための触媒床を含むガス化容器内の各種領域間のエネルギーバランスに基づいて決定できる。高いガス化効率を達成するためには、炭化物ガス化領域内への酸素送り速度はできるだけ低い方が望ましい。
【0060】
ある実施例では、炭化物は実質的に炭化物ガス化領域で消費され、熱ガスと灰を生成する。灰は、係止ホッパー等の灰排出装置によってガス化容器の炭化物ガス化領域から排出してよい。
【0061】
炭化物ガス化から生じた熱ガスは、ガス化容器の熱分解領域の炭素質材料の加熱と熱分解、改質領域の揮発性物質の改質、およびガス洗浄領域の生成ガスの洗浄のための熱源となる。
【0062】
「起動」モードを含めて、炭化物が熱需要とのバランスをとるのに十分でない場合、方法10で生成された生成ガスの一部はリサイクルして炭化物ガス化領域で燃焼させるか、又は改質領域で燃焼させることができるであろうことが理解されよう。
【0063】
熱ガスは炭化物ガス化領域から熱分解領域に流れ、炭化物材料が熱分解領域を通って徐々に移動し熱分解されるときに炭化物材料との対向流直接熱交換を通過する。熱ガスが熱分解領域を通過する時、熱ガスは炭化物材料から放出された(蒸気を含む)揮発性物質と混合し改質領域に流れ込む。このようにして、熱ガスは熱分解領域で生成された炭化物からの揮発性物質の分離を手助けする。
【0064】
熱ガスはまた、改質領域での吸熱揮発性物質改質反応のエネルギー需要を満たす。改質領域では、揮発性物質と蒸気が吸熱的に反応して生成ガスを生成する。ある実施例では、改質領域での蒸気による揮発性物質の改質は、約700℃から約1000℃の範囲の温度で行われる。したがって、好都合なことに、炭化物ガス化領域で生成された熱ガスの顕熱の一部が生成ガスの形で化学的エネルギーとして回復する。
【0065】
上述の熱ガス中の余分なガス化剤は、上方に流れる時、熱分解原料、その揮発性物質および炭化物と接触し反応するであろう。
【0066】
改質領域で生成された生成ガスは、有機および無機汚染物質を含むことがある。汚染物質の例には、限定するわけではないが、タール残留物、NH
3、HCN、H
2S、および揮発した無機AAEM種が含まれる。汚染物質を含む生成ガスは「粗生成ガス」と呼ばれることが多い。
【0067】
方法10は、有機および無機汚染物質を生成ガスから都合よく除去する。
【0068】
発明のある実施例では、方法10は、部分的改質揮発性物質および/または生成ガスを触媒床に通すことをさらに含む。
【0069】
ある実施例では、触媒床は触媒の非等温移動床を含む。別の実施例では、触媒床は直列に配置された複数の流体相互接続床である。
【0070】
ある実施例では、触媒は炭素質材料基板上に担持された遷移金属触媒を含む。これは、金属を含むか含浸させた炭素質材料の熱分解および/または部分的ガス化によって生成できる。あるいは、この分野の当業者なら一般に周知の方法に従って、金属を炭化物に充填/含浸させてよい。好適な実施例では、触媒は炭化物上に担持されたFeおよび/またはNiを含む。別の実施例では、触媒は炭化物自身でよい。好都合なことに、バイオマスの熱分解から生成された炭化物は、炭化物内部によく分散された固有の触媒種、特にAAEM種を豊富に含む。したがって、熱分解から生成された炭化物を、生成ガス中のタール残留物の分解を触媒するために用いることができる。炭化物または炭化物担持触媒の場合、触媒は容器(移動床等)中の炭素質材料の熱分解から生成でき、その後、ガス洗浄領域に送ることができる。炭素質材料はガス化する原料(バイオマス等)であってよい。別の好適な実施例では、触媒はイルメナイト等の(処理済み)鉄芯を含む。
【0071】
触媒床はガス化容器と一体化し、改質領域と液体連結してよい。触媒が炭化物または炭化物担持触媒を含む実施例では、使用済み触媒はガス化容器の炭化物ガス化領域内へ排出し、その後ガス化してよい。このように、上述のような汚染された生成ガスの処理からは余計な固体または液体廃棄物が次々と生じることはない。
【0072】
部分的改質揮発性物質および/または生成ガスを触媒床に通すことにより、それらから無機汚染物質を除去する。揮発したAAEMは適切な温度で固体触媒表面に凝縮し、その粒子も触媒床によって捕捉される。NH
3、H
2S、その他N−、Cl−またはS−含有化合物等の無機汚染物質は、固体触媒との接触によって分解または吸収される。このように、AAEM等の無機汚染物質は触媒に捕捉される。好都合なことに、AAEMは炭化物ガス化領域中の炭化物の反応性を高める。したがって、方法10は低品位炭素質材料から生じた揮発性物質の無機汚染物質を上手に活用して炭化物ガス化を促進する手段を提供する。AAEMはその後、灰となる。
【0073】
部分的改質揮発性物質および/または生成ガスを触媒床に通すことは、蒸気等との触媒改質反応によりタール残留物等の有機汚染物質も除去する。好都合なことに、これにより熱エネルギー(顕熱)を改質生成物の化学的エネルギーに回復する。多少のタール残留物も又個体触媒上にコークスを形成することにより除去される。さらに、触媒床の低温端では触媒水性ガスシフト反応(CO+H
2O−>CO
2+H
2)に好都合であるため、生成ガスを触媒床に通すことにより生成ガスの水素含有量を増やすことができる。
【0074】
部分的改質揮発性物質および/または生成ガスを触媒床に通すことは、約1000℃から約200℃の温度範囲で行うことができる。触媒床の温度は、ガス流の方向に約200℃まで徐々に下がることが望ましい。
【0075】
ガス化システム20およびガス化システム20で用いる炭素質材料の熱分解装置30について、
図2および
図3を参照して以下に説明する。
【0076】
ガス化システム20は、中に一体的に画定した4つの反応領域、すなわち、熱分解領域22、炭化物ガス化領域23、改質領域25、および触媒床26を有するガス化容器21を含む。熱分解領域22は炭化物ガス化領域23および改質領域25と液体連結する。
【0077】
一般に、ガス化容器21は、ほぼその全長に沿って、および/または材料および/または液体流の方向に沿ってほぼ一定の横断面積を有する垂直面容器である。容器21中の材料および/または液体の滞留時間を変化させることが利となる場合、炭素質材料の組成特性に応じて、容器21の横断面積をその長さに沿って、および/または材料および/または液体流の方向に沿って変更してよい。容器21は耐火物で裏打ちすることが望ましい。
【0078】
ガス化容器21の上部は、バイオマス等の炭素質材料の連続流をフィーダ28によって導入するための入口28aを備える。フィーダ28は容器の入口28aと液体連結し、そしてブロック問題を最小限にするため回転式フィーダを含むことが望ましい。フィーダ28はまた、バイオマスを貯蔵するためのホッパーと関連づけられた攪拌機を含むことが望ましい。攪拌機は、ホッパー中のバイオマス架橋現象の可能性を最小限にするよう配設する。
【0079】
熱分解領域22は、炭素質材料を熱分解するための装置30(
図3参照)を備える。当業者に周知のあらゆる好適な熱分解装置を用いることができる。好適な熱分解装置の実例には、移動床、ねじ/オーガ/焼成窯(キルン)熱分解装置およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定するものではない。
【0080】
装置30は、炭素質材料を熱分解装置の中を通って炭化物ガス化領域内へ徐々に移送することを重力または機械的移送手段によって円滑に行えるように構成してよい。装置30は、炭素質材料を炭化物および揮発性物質に実質的に変換するのに十分な長さの期間炭素質材料を熱分解領域中に保持するよう構成されるのが望ましい。
【0081】
図2に示す実施例では、熱分解領域22は、炭化物ガス化領域23由来の加熱されたガスによって炭素質材料を加熱し揮発性物質および炭化物を生成するための装置30を備える。装置30は
図3により詳細に示す。
【0082】
ある好適な形式では、装置30中で生成される炭化物および揮発性物質の効果的な分離を容易にするために、装置30と炭化物ガス化領域23および改質領域25の間に間隔を置く。
【0083】
装置30は、3組の円錐面32,34,36を含む。かかる円錐面の数は可変でよいことが理解されよう。3組の円錐面32,34,36は互いから間隔をあけ、回転可能軸31の長さに沿って間隔をあけた長手配列で配設される。円錐面32,34、36の各組は、対向する下部逆円錐面32b、34b、36bから間隔をあけた上部円錐面32a、34a、36aを含む。
【0084】
円錐面の組32、34、36は、熱の通過、特に熱ガスの通過に好適な孔あき金属板を含むのが望ましい。金属板は炭素質材料の直接加熱に効果的な熱導体としても機能する。
【0085】
下部逆円錐面32b、34b、36bはそれぞれ、軸31周囲に同心に配設された開口部32c、34c、36cを備える。開口部32c、34c、36cの目的は、下部逆円錐面32b、34b、36bから上部円錐面34a、36aおよびすぐ下に配設された炭化物ガス化領域23へ炭素質材料を通過させることである。
【0086】
さらに、上部円錐面32a、34a、36aの直径は、対向する下部逆円錐面32b、34b、36bの直径より小さい。このようにして、上部円錐面32a、34a、36a上に滞留する炭素質材料が各表面の縁から滑り落ちて、すぐ下に配設された対向する下部逆円錐面32b、34b、36bに落ちる。
【0087】
装置30はまた、円錐面32,34,36のそれぞれの組と関連づけられた1つ以上の撹拌手段32d、34d、36dを含む。撹拌手段の数は、円錐面の組の数と一致する必要はないことが理解されよう。この実施例の撹拌手段32d、34d、36dは回転アームである。回転アームは、上部円錐面32a、34a、36aおよび/または下部の対向する逆円錐面32b、34b、36bの上に短い距離(例えば2から5mm)間隔をあける。撹拌手段32d、34d、36dは、回転可能軸31の回転によって動作可能である。軸31の回転速度は、熱分解領域での粒子の滞留時間を制御するため、炭素質材料の特性に応じて変えられる。ある実施例では、回転アームは12rpmの速度で回転する。
【0088】
回転可能軸31の回転により、撹拌手段32d、34d、36dが、下部逆円錐面32b、34b、36b上に滞留する炭素質材料の粒子を撹乱し、それぞれの開口部32c、34c、36cを通過してすぐその下の円錐面まで移動させる。同様に、回転可能軸31の回転により、撹拌手段32d、34d、36dが、上部円錐面32a、34a、36a上に滞留する炭素質材料の粒子を撹乱し、各表面の縁を滑り落ちて、そのすぐ下の対向する下部逆円錐面32b、34b、36bに集まるようにする。
【0089】
軸の回転速度は、上部円錐面32a、34a、36a上と対向する下部逆円錐面32b、34b、36b上に滞留する炭素質材料の滞留時間を変えるために変更することができる。このように、炭素質材料が実質的に炭化物と揮発性物質に変換されるのに十分な期間を割り当てるために装置30中の炭素質材料の滞留時間を制御することができる。
【0090】
円錐面の傾きは、炭素質材料の粒子が前記表面に滞留する期間を制御するために変えることができる。あるいは、円錐面が撹拌手段に対して回転してよい。
【0091】
炭素質材料の炭化物および揮発性物質への実質的に完全な熱分解を促進するために装置30中の炭素質材料の滞留時間を制御する当業者に周知の他の好適な方法を、本発明の処理過程および装置に採用してもよい。熱分解反応に加えて、原料は装置30内である程度ガス化もすることになろう。
【0092】
炭化物ガス化領域23は容器21の下部に配設される。炭化物ガス化領域23は、上に炭化物を担持しながら酸素含有ガスおよび蒸気が通過して炭化物と反応することを可能とする、格子のある1つ以上の固定床または移動床を備えてよい。あるいは、炭化物ガス化領域23は、バブリング流動層と、酸素含有ガスおよび蒸気を供給するガス分配器を備えてよい。
【0093】
図2に示す実施例では、炭化物は円錐形固定床でガス化される。容器21は、酸素含有ガス入口23aと蒸気入口23bとを備える。空気は一般にバイオマスガス化等の小規模用途に用いられ、純粋または希釈酸素は石炭ガス化等大規模用途に用いられ、特に二酸化炭素の捕捉と貯蔵を目的とする時や生成ガスを用いて液体燃料や化学薬品を合成する時に用いられると考えられる。
【0094】
炭化物ガス化領域23は、係止ホッパー等の灰排出装置24をさらに備える。
【0095】
改質領域25は容器21の上部に配設され、容器21の上部によって画定されその中で揮発性物質と蒸気との間のガス改質反応が生じる間隙を含む。
【0096】
改質領域25は触媒床26と液体連結する。触媒床26は、固体触媒の移動床または一連の触媒床であることが望ましい。ある実施例では、移動床の構成は、使用済み触媒が容器21に排出されるようになっている。従って、触媒床26は、触媒が触媒床26から排出されるときに固体触媒の移動床を継続的に補給する固体触媒排出装置26aを備える。触媒床26は生成ガスを引き出すための出口27を備える。
【0097】
触媒床中の固体触媒は様々な形態を取ってよい。炭化物担持遷移金属(Feおよび/またはNi等)触媒が好適な実施例で、これは遷移金属(Feおよび/またはNi等)を充填した炭素質材料(バイオマスまたは褐炭等)を熱分解し部分的にガス化することによって生成できる。金属を充填することなく、炭化物自体を触媒とすることができる。あるいは、イルメナイト、鉄鉱石も固体触媒として用いることができる。
【0098】
図4に、炭素質材料、特にバイオマスから生成ガスと炭化物を生成するためのシステム40の実施例を示す。システム40は、生成ガスおよび/または部分的改質揮発性物質を炭化物に晒す追加工程を含む方法10の実施例に使用されるものである。方法10によって生成された炭化物は、活性炭素または土壌改良剤として、および/または炭素隔離のために用いることができる。
【0099】
この例では、ストレージ50中の含水量約60%までの炭素質材料の原料を乾燥器52内へ送り、原料の水分を、望ましくは含水量約20%未満まで減少させる。他の工程で生成された熱を乾燥器52の加熱媒体として用いることができる。
【0100】
部分的に乾燥させた原料をその後熱分解装置54に送り、ここで原料を加熱して炭化物と揮発性物質を生成する。発明者等は、乾燥した原料を約450℃から約550℃等の適温で熱分解することで、原料から潜在的揮発性物質の相当量を放出するであろうことを明らかにしている。加えて、適度の熱分解温度では、AAEM種等の無機種が炭化物中に保持される傾向がある。炭化物中の無機種の保持は、炭化物の触媒活性を高め、原料としてバイオマスを用いることができて得られる炭化物を土壌改良剤として用いる場合に無機栄養物をリサイクルして土壌に戻しやすくするため特に有益である。
【0101】
熱分解装置54は、炭化物の熱分解装置54から炉60への移送を重力または機械的移送手段によって円滑に行うように構成されてよい。炭化物を炉60に移送する前に、炭化物を炉60と液体連結する貯蔵室(図示せず)に移送し一時的に保持してもよい。貯蔵室は、炉60への炭化物の流量を制御する制御手段を備えてよい。
【0102】
熱分解後、揮発性物質はガス改質装置56に向けられる。ガス改質装置56は加熱され、乾燥器52で生成された所望量の蒸気が、酸素や空気等の酸素(O
2)含有ガスと共にそれぞれの入口56aおよび56bを介してガス改質装置56へ導入され、ここで揮発性物質はガス改質反応を起こし、おもにCOとH
2からなる粗生成ガスを生成する。
【0103】
粗生成ガスおよび/または炭化物の一部は、点線54aおよび56cに示すように、ガス改質装置56を加熱するのに用いることのできる高温ガスを生成する燃焼のための燃焼装置58および炉60に向けられてよい。
【0104】
ガス改質装置56で生成する粗生成ガスは、熱分解装置54で生成された炭化物も保持する炉60に導入される。炉60は約900℃の温度まで加熱され、その中の炭化物は固体触媒として作用し粗生成ガスに含まれるタール残留物を触媒的に分解し、CO、H
2その他燃焼可能ガスを形成する。一部タール残留物も、炭化物表面にコークスを形成することにより除去される。他の無機汚染物質も、炭化物により粗生成ガスから除去される。例えば、放出されたAAEM種および無機粒子も炭化物に捕捉されることがあり、NH
3,H
2Sおよび他のN−、Cl−またはS含有化合物等のその他無機汚染物質は炭化物との接触を通じて分解または吸収される。このようにして、AAEM等の無機汚染物質が炭化物上に捕捉される。好都合なことに、AAEMは炭化物の反応性を高める。
【0105】
粗生成ガスは余分な蒸気を含むことがあり、炉60での動作条件は、粗生成ガスが炉60中の炭化物と接触するにつれ炭化物が部分的にガス化されるようになっている。
【0106】
炉60での炭化物の部分的ガス化は、約700℃から約900℃の温度で行われるのが望ましい。好都合なことに、これらの温度は、タール在留物の分解や炭素活性化のための炭化物上の触媒活性箇所の形成を促進する。
【0107】
部分的ガス化の後、本発明の処理過程により生成された使用済み炭化物は、一般に炭化物1グラムあたり約700m
2より上という高い表面積を有する。炭化物中に存在する可能性のある汚染物質(有機物等)も部分的ガス化処理過程で除去される。重要なことは、この温度範囲で炭化物中の固有AAEM種がより浸出可能な形態に変化し、無機栄養物の現地へのリサイクルが容易になることである。
【0108】
炉60から排出された使用済み炭化物は容器64に貯蔵する。使用済み炭化物はAAEM種その他無機栄養物を豊富に含み、直ちに土壌改良剤として土壌に戻すことができる。炭化物のこのようなリサイクルには、(1)炭化物中の無機栄養物を現場に返す、および(2)炭素隔離、すなわち発電に関連する炭素排出量を削減するという2つの重要な利点がある。地方および地域コミュニティの長期的持続可能な開発にとってこれら要素は重要である。
【0109】
方法40により生成された炭化物および生成ガスの相対量(すなわち、炭化物対生成ガス比)は可変でよい。ある実施例では、炉60は部分的ガス化領域と完全ガス化領域を含む。炉60の部分的ガス化領域は、炭化物を部分的にガス化して生成ガスと使用済み炭化物を生成するという条件下で運転される一方、炉60の完全ガス化領域は、炭化物をガス化して生成ガスと灰を生成するという条件下で運転される。より大きな量の清浄な生成ガスが必要な場合、より大きな相対割合の炭化物を炉60の完全ガス化領域に移送してもよい。あるいは、より大きな量の使用済み炭化物が必要な場合、より大きな相対割合の炭化物を炉60の部分的ガス化領域に移送してもよい。
【0110】
システム20または40は、ガス化容器内の温度分布を確定、維持および/または変化させるための手段を備えてよい。かかる手段は、酸素含有ガスおよび/または蒸気の送り速度を制御するための制御装置を備えてよい。例えば、炭化物ガス化領域の温度を上げるために、より多くの酸素含有ガスを供給し中の炭化物との発熱反応を促進してよい。
【0111】
一部実施例では、システム20または40は、複数のセンサーおよびガスおよび固体サンプリングプローブをさらに含む。
【0112】
上記に詳述するように、本発明の実施例は、特に低品位炭素質材料用の、発電、発熱および化学合成等の目的で比較的高品質の生成ガスを製造するための効率的なガス化方法を提供する。
【0113】
本発明の実施例はまた、生成ガス流からタール残留物その他汚染物質と汚染物質形成種とを除去可能であると共に生成ガス中の水素含有量を増加させることが可能な固体触媒も提供する。
【0114】
生成ガスの顕熱は、蒸気等本発明における他の処理流が炭化物ガス化領域に導入される前に、かかる処理流との間接的熱交換に効率的に用いることができることも理解されよう。あるいは、生成ガスの顕熱は、炭素質材料をガス化前に乾燥させるために用いてもよい。
【0115】
一部実施例では、特にガス化方法10の起動モードにおいて、炭化物ガス化領域の中の動作温度を上げるためにその中で生成ガスを燃焼、および/または改質領域の中の温度を上げるためにその中で生成ガスを燃焼させてよい。
【0116】
上記記述は方法工程の特定の順序に言及するが、システム、装置および設備の部品とその構成は実例を示すためにのみ提示され、本発明の範囲を決して限定するものでないことも理解されよう。
【0117】
本発明の実施例はガス化効率を改善し得るかもしれない。この技術は、例えばエネルギーおよび化学業界での使用に適するであろう。特に発明者らは、本発明の実施例は比較的広い粒径分布のバイオマスを用いた分散型発電に適しているとしている。
【0118】
有益なことに、処理効率および経済性を改善したコンパクトなガス化装置構成とするために、方法10は熱分解、揮発性物質の改質、炭化物のガス化、生成ガスの洗浄を一体化している。
【0119】
当業者にとっては、本発明の一部実施例は従来技術に対して、以下を含む利点を提供するかもしれないことが明らかであろうが、以下に限定されるものではない。
−ガス化と熱ガス洗浄を一体化し単一ガス化容器で実行可能な、特に低品位炭素質材料ガス化のためのガス化処理過程を提供する
−炭化物ガス化中の揮発性物質と炭化物との間の相互作用を最小化し炭化物ガス化の高速化につなげる
−揮発性物質とその改質生成物による直接酸素消費を最小化する
−炭化物ガス化領域中の炭化物と酸素との直接反応を促進しガス化容器内の各種反応に必要な熱を生成し、これにより炭化物ガス化生成物の熱エネルギーを生成ガスとして化学エネルギーの形態で回復する
−ガス化効率を最大限にするために酸素の全体消費量を最小限にする
−タール残留物を触媒で改質することにより、低品位炭素質材料のガス化で一般的に生じる問題である生成ガス中のタール残留物量を最小限にする
−低品位炭素質材料において一般的な無機種、特にAAEMの揮発を最小化する
−揮発したAAEMおよびNH
3、HCNおよびH
2S等の汚染物質形成不純物を触媒で除去する
−使用済み触媒を、処分方法として炭化物ガス化領域に排出し酸化的にガス化することにより、さらなる液体または固体廃流を生成することなく容器中での熱エネルギー生成に貢献する
−触媒を用いて水性ガスシフト反応を促進することにより、触媒非活性化、再生および処分に関連する従来の問題なしに最終生成ガスの水素含有量を増加させる
【0120】
上述のものに加え、多くの変形または修正が、基本的な発明的概念から逸脱することなく当業者に示唆されるであろう。かかる変形および修正はすべて本発明の範囲内とみなされ、その性質は上記記述から判断されるものである。例えば、本発明の実施例は、小規模(数メガワット以下)および大規模(数百メガワット)の両方で様々なやり方で実施および実行可能であることが理解される。
【0121】
発明の記述において、明確な言語または必要な暗示により文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「を含む」(comprise)という言葉またはその変形(comprises、comprising)は包含的な意味、すなわち、記述された機能や機構の存在を明記するために用いられるが、発明の各種実施例でのさらなる機能や機構の存在または追加を除外するものではない。