(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
農園芸用施設内部に入射する可視光線の少なくとも一部が、更に波長500〜600ナノメートルに吸収極大を有する色素を含む媒体を透過後、施設内部に入射することを特徴とする請求項1に記載の農園芸用施設。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の化石燃料や原子力に替わる新たなエネルギー源として、太陽光発電が注目を集めており、住宅や農園芸用ハウスの屋根等への太陽光発電システムの設置が進んでいる。太陽光発電システムを農園芸用ハウスの屋根の上や農地に設置された架台の上に設置する場合は、農園芸作物の生育に必要な光を施設内に採り入れるため、採光部分を有する太陽光発電システムが使用される。
【0003】
しかし、採光部分を有していても、採光部分以外の箇所による影が出来るため、農園芸作物の受け取る光量は場所により違い、その生育状態にばらつきが出易いという問題があった。またこの問題を解決するため、太陽光発電システムのアレイを非常に高い位置に設置することが行われているが、システムのメンテナンス作業性やメンテナンス作業時の安全性が低下する;システムが強風により被害を受け易い;という新たな問題を生じていた。
【0004】
農園芸用施設等に使用する採光部分を有する太陽光発電システムとして、両面発電型のものを使用することは公知であり、「採光部分を有し太陽光を内部に採光するように構成した建物内の該採光部分の直下に、複数枚の太陽電池セルを並設し透明な合成樹脂で被覆してなる薄型軽量太陽電池モジュールを配設するか又は複数の該薄型軽量太陽電池モジュールを配設した構成の太陽電池アレイを設け、前記建物内への採光は前記太陽電池モジュールの太陽電池セルと太陽電池セルの間及び/又は前記太陽電池アレイの太陽電池モジュールと太陽電池モジュールの間から行うようにしたことを特徴とする遮光・調光機能付太陽光発電システム。」、及び上記のシステムにおいて、「太陽電池モジュールに両面発電可能な太陽電池セルを用い、該太陽電池モジュールは屋外から入射する太陽光の他、屋内で反射・散乱した光でも発電できるように構成したことを特徴とする遮光・調光機能付太陽光発電システム。」が提案されている(特許文献1)。しかし、採光部分以外の箇所による影が出来るため、農園芸作物の生育状態にばらつきが生じるという問題を解決する方法については、何の記載も示唆もない。また、寒冷期であっても、晴天の日中には、農園芸作物の生育に必要な光をハウス内に採り入れることにより、ハウス内部の温度は大きく上昇するため、農園芸用ハウスの内部が高温になることにより育成に障害が生じ易い農園芸作物、例えば、イチゴやレタスなどの場合には、冷房を必要としているという問題を解決する方法については、何の記載も示唆もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、任意の低い位置に採光部分を有する太陽光発電システムのアレイを設置しても、農園芸作物の受け取る光量が場所によらず一定となり、その生育状態のばらつきを小さくすることのできる太陽光発電システムを備えた農園芸用施設を提供することにある。本発明の更なる課題は、農園芸作物の生育に必要な光は透過させつつ、その余の光は効率的に太陽光発電に利用し、農園芸用施設内部の温度上昇を抑制することのできる太陽光発電システムを備えた農園芸用施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究した結果、採光部分を有する太陽光発電システムの採光部分を透過した光を、光拡散性部材に入射させ、その透過拡散光を農園芸用施設内部へと入射させることにより、上記課題を達成できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、農園芸用施設であって、
(A)太陽光が直射する箇所の少なくとも一部分に、採光部分を有する太陽光発電システムが、設けられていること;
(B)光拡散性部材が、上記太陽光発電システムの採光部分を透過した光の少なくとも一部が入射するように、かつ、上記光拡散性部材を透過した光の少なくとも一部は、施設内部に入射するように設けられていること;
を特徴とする農園芸用施設である。
【0009】
第二の発明は、上記採光部分を有する太陽光発電システムが、更に、両面発電型モジュールと赤外線反射部材とを有し、上記赤外線反射部材は、
(C)赤外線反射率が30%以上;かつ、
(D)可視光線透過率が50%以上;
であり、
(E)上記太陽光発電システムの採光部分を透過した光の少なくとも一部は、上記赤外線反射部材に入射するように構成されていること;
(F)上記赤外線反射部材で反射された赤外線の少なくとも一部は、上記両面発電型モジュールに入射するように構成されていること;
を特徴とする第一の発明に記載の農園芸用施設である。
【0010】
第三の発明は、農園芸用施設内部に入射する可視光線の少なくとも一部が、更に波長500〜600ナノメートルに吸収極大を有する色素を含む媒体を透過後、施設内部に入射することを特徴とする第一の発明又は第二の発明に記載の農園芸用施設である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の太陽光発電システムを備えた農園芸用施設は、任意の低い位置に採光部分を有する太陽光発電システムのアレイを設置しても、農園芸作物の受け取る光量が場所によらず一定となり、その生育状態のばらつきを小さくすることができる。また本発明の第二の発明及び第三の発明では、更に農園芸作物の生育に不必要な光は効率的に太陽光発電に利用することができ、農園芸用施設内部の温度上昇を抑制することができる。そのためイチゴやレタスなどの高温に弱い作物の栽培に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の農園芸用施設は、(A)太陽光が直射する箇所の少なくとも一部分に、採光部分を有する太陽光発電システムが、設けられていること;を特徴とする。
【0013】
本明細書において、「農園芸用施設」とは、農園芸用ハウスのみならず、農地に設置された架台に太陽光発電システムを設置した施設も含む用語である。また「農園芸用施設内部」とは、農園芸用ハウスの場合はハウス内部であり、農地に設置された架台に太陽光発電システムを設置した施設の場合は、太陽光発電システムの下となる場所である。
【0014】
本発明の農園芸用施設を
図1を用いて説明する。太陽光発電システムの採光部分1を透過した光4は、光拡散性部材3に入射し、拡散された光5が農園芸施設内部に入射する。太陽光発電システムは、農園芸用施設の太陽光が直射する箇所の少なくとも一部分に、設けられているため、太陽電池モジュールの表面に入射する光6により、効率的に発電が行われる。
【0015】
上記太陽光発電システムの採光部分は、発電要素と発電要素との間に設けた隙間である。隙間の設け方は制限されず、任意である。例えば、太陽電池セルに隙間を施したタイプ、太陽電池モジュールのセルとセルとの間に隙間を設けたタイプ、太陽電池アレイのモジュールとモジュールとの間に隙間を設けたタイプ、太陽電池アレイと太陽電池アレイとの間に隙間を設けたタイプ、及びこれらを任意に組み合わせたタイプなどをあげることができる。隙間の形も任意であり、例えば、直線状、曲線状、円形、三角形、四角形、六角形などの連続した、又は/及び独立した隙間を設けることができる。
【0016】
なお本明細書において、太陽電池セルとは、太陽電池素子そのもののことであり、太陽電池の基本単位となるものである。太陽電池モジュールとは、太陽電池セルを複数並べて配線し、強化ガラス等で保護・パッケージ化したものである。太陽電池アレイとは、太陽電池モジュールを複数並べて配線したものであり、太陽光発電システムの発電要素の設置単位となるものである。太陽光発電システムとはアレイ、及び制御系等を含むものである。
【0017】
上記太陽光発電システムの採光部分の全光線透過率は、通常50%以上である。農園芸作物の生育や、発電効率の観点から、採光部分の全光線透過率は高いほど好ましく、70%以上が好ましい。
【0018】
上記太陽光発電システムの採光部分の面積の、太陽光発電システムの全太陽光受光面積に対する割合は、特に制限されず、採光部分の全光線透過率や農園芸用施設内部で栽培される作物の種類などを勘案して、任意に決めることができる。例えば、イチゴやレタスなどの高温に弱い作物を栽培するときは、遮光効果を大きくするため、上記割合を小さくすることが好ましい。
【0019】
本発明の農園芸用施設に使用する太陽光発電システムは、採光部分を有すること以外は制限されず、任意のシステムを使用することができるが、上記光拡散性部材で反射されて太陽電池モジュールの裏面に入射する光を発電に用いることができるように、両面発電型を使用することが好ましい。
【0020】
本発明の農園芸用施設は、(B)光拡散性部材が、上記太陽光発電システムの採光部分を透過した光の少なくとも一部が入射するように、かつ、上記光拡散性部材を透過した光の少なくとも一部は、施設内部に入射するように設けられていること;を特徴とする。
【0021】
太陽光発電システムが採光部分を有していても、採光部分以外の箇所による影が出来るため、農園芸作物の受け取る光量は場所により違うものになる。光量の位置依存性は、太陽光発電システムの採光部分からの距離を十分に遠くすることによっても減じることはできるが、そのためには太陽光発電システムのアレイを非常に高い位置に設置しなくてはならなくなる。するとシステムのメンテナンスは高所作業となり、その作業性や安全性は低いものになる。また高所であるため、システムが強風により被害を受け易いという問題も生じる。そこで本発明においては、採光部分を透過した光を光拡散性部材に入射させ、その透過拡散光を農園芸用施設内部へと入射させることにより、任意の低い位置に太陽電池システムのアレイを設置したとしても、光量の位置依存性を減らし、農園芸作物の受け取る光量が場所によらず一定となり、その生育状態のばらつきを小さくすることができるようにしたものである。
【0022】
なお本発明の農園芸用施設では、太陽光発電システムのアレイを、任意の低い位置に設置することができるが、実際の設置高さは、通常、農園芸用施設で栽培される作物の生育や施設内部における農作業性に支障のない高さを勘案して決定することが好ましい
【0023】
上記光拡散性部材は、十分な光拡散性が得られ、全光線透過率の高いものであれば制限されず、任意のものを用いることができる。例えば、透明樹脂からなるマトリックス中に、光拡散剤を分散させた樹脂組成物からなる部材をあげることができる。
【0024】
上記透明樹脂としては、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂などをあげることができる。
【0025】
上記光拡散剤としては、結晶性シリカ、無定形シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の無機系微粒子;ガラス繊維等の無機系繊維;架橋アクリル系粒子、架橋シリコン系粒子及び架橋スチレン系粒子等の架橋樹脂微粒子;などをあげることができる。
【0026】
上記光拡散性部材の形状は、任意である。通常は、シート状のものが好ましく使用できるが、これに制限されない。
【0027】
上記光拡散性部材の光拡散性は、
図2に示すように、光拡散性部材3の表面に、光線を光源7から入射角0°で入射したとき、透過光(出射光)の光量が、0°の値の1/2の値になる角度θとして評価することができる。上記角度θは、大きいほど光拡散性が良好なことを示す。上記光拡散性部材の光拡散性は、全光線透過率を高く保持できる範囲内において、大きいほど好ましい。島津製作所株式会社の分光光度計「SolidSpec−3700(商品名)」を使用し、波長380〜780ナノメートルの全範囲における日射を測定光として用いて測定したとき、上記角度θは好ましくは20°以上、より好ましくは23°以上である。
【0028】
上記光拡散性部材の全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。全光線透過率は、高いほど好ましい。
【0029】
なお本明細書において、全光線透過率は、JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000」(商品名)を用いて測定した値である。
【0030】
以下、本発明の第二の発明について説明する。本発明の第二の発明は、上記採光部分を有する太陽光発電システムが、更に、両面発電型モジュールと赤外線反射部材とを有し、上記赤外線反射部材は、(C)赤外線反射率が30%以上;かつ、(D)可視光線透過率が50%以上;であり、(E)上記太陽光発電システムの採光部分を透過した光の少なくとも一部は、上記赤外線反射部材に入射するように構成されていること;(F)上記赤外線反射部材で反射された赤外線の少なくとも一部は、上記両面発電型モジュールに入射するように構成されていること;を特徴とする第一の発明に記載の農園芸用施設である。
【0031】
上記両面発電型モジュールは、両面からの発電が可能なモジュールである。本発明に使用する両面発電型モジュールは、特に制限されず、例えば、表裏対象構造の太陽電池セルを、表面ガラスと裏面ガラスとでサンドイッチ構造にしたモジュール;表面のみ発電可能なモジュールを組み合わせ、モジュール組合体として両面からの発電を可能にしたもの;など任意の両面からの発電が可能なモジュールを使用することができるが、裏面側で発電に使用する光は、主に上記赤外線反射部材で反射された赤外線となるので、少なくとも裏面側については、赤外線領域の分光感度の高いものが好ましい。赤外線領域の分光感度の高いものとしては、例えば、結晶シリコン型、CIS(カルコパイライト)型などをあげることができる。
【0032】
上記赤外線反射部材は、赤外線は反射し、可視光線は透過する部材であり、(C)赤外線反射率は30%以上であり;かつ、(D)可視光線透過率は50%以上である。
【0033】
なお本明細書において、赤外線反射率は、波長780〜2500ナノメートルの全範囲における日射の反射率が100%であると仮定した場合の反射スペクトルの積分面積に対する波長780〜2500ナノメートルにおける日射の反射スペクトルの積分面積の割合であり、島津製作所株式会社の分光光度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用い、光を入射角0°で赤外線反射部材に入射させて測定した値である。
【0034】
また可視光線透過率は、波長380〜780ナノメートルの全範囲における日射の透過率が100%であると仮定した場合の透過スペクトルの積分面積に対する波長380〜780ナノメートルにおける日射の透過スペクトルの積分面積の割合であり、島津製作所株式会社の分光光度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用い、光を入射角0°で赤外線反射部材に入射させて測定した値である。
【0035】
上記(C)赤外線反射率は、好ましくは40%以上である。(C)赤外線反射率は、高いほど太陽光発電効率が上がり、農園芸用施設内部の温度上昇を抑制することができるため好ましい。また上記(D)可視光線透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。(D)可視光線透過率は、高いほど農作物の生育の観点から好ましい。
【0036】
本発明に使用する赤外線反射部材は、上記特性(C)及び(D)を満たすこと以外は特に制限されず、任意の赤外線反射部材を使用することができる。
【0037】
好ましい赤外線反射部材としては、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの任意の透明ウェブ基材の少なくとも片面に、スパッタリング、蒸着、及びコーティング等の手法を用いて、高屈折率層と低屈折率層とを交互に多積層したもの;高屈折率の透明熱可塑性樹脂組成物と低屈折率の透明熱可塑性樹脂組成物との共押出交互多層積層体;などの光学的な干渉により赤外線を反射するものをあげることができる。
【0038】
上記赤外線反射部材の形状は、任意であり、特に制限されない。例えば、フィルム状、プリズム状など任意のものを使用することができる。
【0039】
本発明の第二の発明に使用する太陽光発電システムは、(E)上記採光部分を透過した光の少なくとも一部は、上記赤外線反射部材に入射するように構成され、(F)上記赤外線反射部材で反射された赤外線の少なくとも一部は、上記両面発電型モジュールに入射するように構成されている。そして両面発電型モジュールにおいて入射した赤外線を使用して発電が行われる。
【0040】
上記構成(E)及び上記構成(F)の実施態様としては、例えば、
図3や
図4に示すように、上記採光部分を透過した光が、上記赤外線反射部材に直接入射するように構成しても良いし、例えば、
図5に示すように、上記採光部分を透過した光を1以上の鏡などの全光線反射部材で反射し、上記赤外線反射部材に間接的に入射するように構成しても良い。赤外線反射部材に直接入射する実施態様では、システムを簡素で低コストなものにすることができる。赤外線反射部材に間接的に入射する実施態様では、赤外線反射部材により反射された赤外線が、両面発電型モジュールに入射することなく、再び採光部分を透過してしまうというロスを減らすことができる。
【0041】
本発明の第二の発明においても第一の発明と同様に、上記赤外線反射部材を透過した可視光線の少なくとも一部、好ましくは全部は、光拡散性部材に入射し、かつ上記光拡散性部材を透過した光の少なくとも一部、好ましくは全部が農園芸用施設内部に入射するように構成する。好ましい実施態様としては、赤外線反射シートと光拡散性シートとの積層体を、赤外線反射シート側を両面発電型モジュール側に(光拡散性シート側を農園芸用施設内部側に)して設置する態様をあげることができる。この実施態様は、赤外線反射部材を透過した可視光線の全部が光拡散性部材に入射し、かつ省スペースである。
【0042】
また休耕中は、農園芸用施設内部に光を入射させても何ら得るものはないため、例えば
図5に示す実施態様において、上記採光部分を透過した光を、上記赤外線反射部材に入射させずに、上記全光線反射部材からの反射光の全てを、上記両面発電型モジュールに入射させるようにしてもよい。
【0043】
本発明の第二の発明の農園芸用施設では、赤外線は上記赤外線反射部材により反射され、農園芸用施設内部には入射しないため、内部温度の上昇を大きく抑制することができるという更なる効果を有する。
【0044】
以下、本発明の第三の発明について説明する。第三の発明では、第一の発明又は第二の発明の農園芸用施設に、更に波長500〜600ナノメートルに吸収極大を有する色素を含む媒体を有し、波長500〜600ナノメートルの光を吸収する装置又は部材が、施設内部に入射する可視光線の少なくとも一部が、上記媒体を透過後に施設内部に入射するように設けられている。通常の農園芸作物の生育に必要とする光は、可視光線の中でも波長400〜500ナノメートルと600〜700ナノメートルの光であり(文献1)、波長500〜600ナノメートルの光は生育への寄与は小さい。一方、施設内部の温度を上昇させる影響は大きい。そのため本発明の第三の発明は、農園芸作物の生育に影響を及ぼすことなく、農園芸用施設内部の温度上昇を更に大きく抑制することができる
【0045】
(文献1)植物の成長・発育と光質の関係
http://www.nodai.ac.jp/journal/research/amaki/050708.html
【0046】
上記波長400〜500ナノメートルと600〜700ナノメートルの光を透過し、波長500〜600ナノメートルの光を吸収する装置又は部材としては、例えば、ガラスなどの透明部材で構成した槽や流路の中に、ローダミンB(ベーシックバイオレット10)などの波長500〜600ナノメートルに吸収極大を有する色素を、適量溶解させた水などの熱交換媒体を適宜循環させる、熱交換媒体循環装置をあげることができる。上記装置は、施設内部に入射する可視光線の少なくとも一部が、上記装置を透過後に施設内部に入射するように設置する。好ましい実施態様としては、例えば、上記槽を深さの非常に浅い直方体等の箱状のもので構成し、その底面に光拡散性シートを、所望によりその平面に赤外線反射シートを、設置する態様;その平面に光拡散性シートを、所望により該光拡散性シートの上に赤外線反射シートを積層して、設置する態様;などをあげることができる。
【0047】
上記装置により吸収した波長500〜600ナノメートルの光のエネルギーは、熱エネルギーとして用いることができる。
【0048】
また上記波長400〜500ナノメートルと600〜700ナノメートルの光を透過し、波長500〜600ナノメートルの光を吸収する部材としては、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの任意の透明ウェブ基材の少なくとも片面に、波長500〜600ナノメートルに吸収極大を有する色素を含む硬化性樹脂塗膜を設けたもの;波長500〜600ナノメートルに吸収極大を有する色素を含む透明熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム;などをあげることができる。
【0049】
上記フィルム状部材を用いる場合の好ましい実施態様としては、例えば、上記フィルム状部材の農園芸用施設内部側の面に光拡散性シートを、所望によりその反対側の面に赤外線反射シートを積層する態様;上記フィルム状部材の太陽発電モジュール側の面に光拡散性シートを、所望により該光拡散性シートの上に赤外線反射シートを積層する態様;などをあげることができる。
【0050】
本発明の構成が、実施例により具体的に説明されたが、これらは本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特徴から外れない範囲内で様々な変形が可能である。本明細書に開示された実施例により、本発明の技術思想と技術的範囲が何ら限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、これと同等の範囲内にある全ての技術は、本発明の技術的範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0052】
1:採光部分
2:太陽光発電システムのモジュール
3:光拡散性部材
4:採光部分を透過する光
5:光拡散性部材3で拡散され、農園芸用施設内部に入射する光
6:太陽光発電システムのモジュール2又は両面発電型モジュール9の表面に入射する光
7:光拡散性評価装置の光源
8:光拡散性部材3を透過した光の光量が、0°の値の1/2の値になる角度θ
9:太陽光発電システムの両面発電型モジュール
10:赤外線反射部材
11:赤外線反射部材10を透過した可視光線
12:赤外線反射部材10で反射され、両面発電型モジュール9の裏面に入射する赤外線
13:全光線反射部材
14:全光線反射部材13で反射され、赤外線反射部材10に入射する光