(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特願2012−288619号に係る発明によると、力布が捻れた状態にならないように、取付部材の向きを確認してこれを取り付ける必要があるため、力布取付作業に時間がかかり、シートの製造効率が低くなっていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、案内部材の取り付けが容易である取付部材を提供すること、取付部材の誤組みを防いで製造効率の高いエアバッグモジュール装備シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本願発明のエアバッグモジュール装備シートによれば、エアバッグを格納するエアバッグモジュールを装備したシートであって、該シートのサイド部に沿って延出するサイドフレームと、該サイドフレームに取り付けられる前記エアバッグモジュールと、該エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材と、該案内部材を前記サイドフレームに取り付けるための取付部材と、を備え、前記サイドフレームには、前記取付部材が嵌合する取付孔が形成されており、該取付孔には、前記取付部材の誤組みを抑制する誤組抑制部が形成されており、
前記取付孔は、複数の面取り状の角部を備えた形状から成り、前記誤組抑制部は、少なくとも前記取付孔の内面と前記取付部材とが対向する部分に形成されて
おり、前記複数の角部のうち、少なくとも一の角部が他の角部と異なる曲率半径で形成されていることによって構成されること、により解決される。
【0010】
上記構成によれば、取付部材が誤った向きで取付孔に取り付けられようとすると、取付部材における取付孔の内面に対向する部分が取付孔の内面に干渉し、取付部材が取付孔に嵌らないために誤組みが事前に防止される。よって、取付部材の向きを確認しなくとも、取付部材の組み直しが必要になることがないため取付部材の取付孔への取り付けが容易であり、シートの製造効率が高いエアバッグモジュール装備シートを提供することができる。
【0011】
更に、前記取付孔は、複数の面取り状の角部を備えた形状から成り、前記誤組抑制部は、前記複数の角部のうち、少なくとも一の前記角部が他の前記角部と異なる曲率半径で形成されていることによって構成され
ているので、複数の角部のうち一の角部を、成形型の寸法設定、又は簡単な加工によって他の角部と異なる曲率半径で形成でき、低コストで誤組みを抑制することができる。
【0012】
更に、前記一の角部と前記他の角部とは、シート前後方向に配されていると好ましい。
上記構成によれば、サイドフレームの取付孔において曲率半径の異なる一の角部と他の角部が前後に配されているため、例えば助手席のサイドフレームと運転席側のサイドフレームとで、左右異なるサイドフレームにエアバッグが取り付けられる場合に、取付部材を上下に反転させて取り付けるようにして取付部材を共有することができる。
【0013】
更に、前側に配される前記一の角部の曲率半径は、前記他の角部よりも大きいと好ましい。
上記構成によれば、サイドフレームの取付孔の内面において前側の角部の曲率半径が大きいので、取付孔の内面において前側の応力集中を低減させて支持剛性を好適にでき、取付安定性を高めることができる。つまり、エアバッグ膨張の際に案内部材が引っ張られたときには、取付孔の内面のうち応力集中を低減された前側の角部で荷重を受けることができるため好適である。
【0014】
また、前記取付孔は、前記サイドフレームの上下方向に複数配設され、複数の前記取付孔は、同形状を成すものであると好ましい。
上記構成によれば、上下に複数配設された取付孔に取り付けられる取付部材を共有化できる。
【0015】
前記課題は、本願発明の取付部材によれば、エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材をサイドフレームに形成された取付孔に取り付けるための取付部材であって、前記取付孔への前記取付部材の誤組みを抑制する誤組抑制部を備え、
前記取付部材は、前記取付孔に形成された複数の面取り状の角部に対向する複数の面取り状の対向角部を有し、前記誤組抑制部は、少なくとも前記取付孔の内面に対向する部分に形成されて
おり、前記複数の対向角部のうち、一の対向角部が他の対向角部よりも大きな曲率半径で形成されていることによって構成されること、により解決される。
【0016】
上記構成によれば、取付部材が誤った向きで取付孔に取り付けられようとすると、取付部材における取付孔の内面に対向する部分が取付孔の内面に干渉し、取付部材が取付孔に嵌らないために誤組みが事前に防止される。よって、取付部材の組み直しが必要になることがないため取付部材の取付孔への取り付けが容易であり、シートの製造効率を高めることが可能な取付部材を提供することができる。
【0017】
また
、前記取付部材は、前記サイドフレームに係止する爪部と、前
記複数の面取り状の対向角部とを有する本体部を備え、該本体部は、前記案内部材の端部を収容する収容部と、前記本体部の外面から前記収容部に連通して形成された切れ込みとを有し
、前記一の対向角部は、前記爪部及び前記切れ込みが形成されている一側の反対側に形成されていると好ましい。
上記構成によれば、対向角部の曲率半径が、サイドフレームに係止する爪部及び切れ込みが形成された一側の反対側において大きく形成されていることで、取付部材が爪部でサイドフレームに係止した状態において、取付部材における爪部側の反対側の応力集中を避けることができる。
【0018】
更に、前記本体部は、前記収容部の前記一側と前記反対側とに張り出す張出部を備え、該張出部は、前記反対側よりも前記一側の方が小さいと好ましい。
上記構成によれば、一側にある爪部でサイドフレームに取り付けられている部位を中心に回動する取付部材において、張出部の一側が反対側よりも小さく形成されていることで、一側の張出部がサイドフレームに接触する領域を小さくでき、一側で取付部材を撓みやすくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、取付部材の取付孔への取り付けが容易であり、シートの製造効率の高いエアバッグモジュール装備シートを提供することができる。
【0020】
また、本発明によれば、複数の角部のうち一の角部を、成形型の寸法設定、又は簡単な加工によって他の角部と異なる曲率半径で形成でき、低コストで誤組みを抑制することができる。
【0021】
また、本発明によれば、取付部材を上下に反転させて取り付けるようにして、取付部材を共有することができる。
【0022】
また、本発明によれば、取付孔の内面において前側の応力集中を低減させて支持剛性を好適にでき、取付安定性を高めることができる。
【0023】
また、本発明によれば、上下に複数配設された取付孔に取り付けられる取付部材を共有化できる。
【0024】
また、本発明によれば、取付部材の取付孔への取り付けが容易であり、シートの製造効率を高めることが可能な取付部材を提供することができる。
【0025】
また、本発明によれば、取付部材が爪部でサイドフレームに係止した状態において、取付部材における爪部側の反対側の応力集中を避けることができる。
【0026】
また、本発明によれば、一側の張出部がサイドフレームに接触する領域を小さくでき、一側で取付部材を撓みやすくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る案内部材をサイドフレームに取り付ける取付部材、及び取付部材を備えるエアバッグモジュール装備シートについて、
図1〜
図10を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートの外観図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートのシートフレームの斜視図である。
図3は、
図1のA−A断面図であって、本発明の一実施形態に係る取付部材を介して力布をサイドフレームに連結した状態を示す説明図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るトリムカバーと力布を破断部で共縫いした状態を示す説明図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る取付部材の斜視図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る取付部材の平面図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る取付部材の側面図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る取付部材の底面図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る取付部材を介して力布をサイドフレームに連結した状態を示す断面説明図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る取付部材を介して力布をサイドフレームに連結した状態を示す断面説明図であって、力布の取付部材への取り付け方を変更した例である。
ここで、以下の説明中、シートの前後方向とは、着座者がシートに座った状態における着座者から見た前後方向のことであり、以下では単に前後方向とも呼ぶ。また、上下方向とは、シートの上下方向のことである。
【0029】
本実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートとしての車両用シートSは、
図1で示すように、シートバックS1、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されている。
車両用シートSの中には、
図2に示すようなシートフレームFが設けられている。シートフレームFは、シートバックS1のフレームであるシートバックフレーム1と、着座部S2のフレームである着座フレーム2とから構成されている。着座フレーム2とシートバックフレーム1は、リクライニング機構3を介して連結されている。シートバックフレーム1及び着座フレーム2の外側には、クッション及びトリムカバーが設けられることで、シートバックS1及び着座部S2が構成される。
【0030】
シートバックS1は、
図1乃至
図3に示すように、シートバックフレーム1と、シートバックフレーム1上に載置されるクッションパッド5,5aと、シートバックフレーム1及びクッションパッド5,5aを覆うトリムカバー4と、トリムカバー4の破断部40に一端が縫い付けられた力布31,32を主要構成要素とする。
シートバックフレーム1は、
図1,
図2に示すように、シート幅方向左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレーム21と、下端部を連結する下部フレーム22とにより枠状に構成されている。ここで、サイドフレーム10が配置されているシートバックフレーム1のシート幅方向左右は、特許請求の範囲のサイド部に対応する。
上部フレーム21には、ピラー支持部23が設けられ、ピラー支持部23には、不図示のヘッドレストフレームが設けられる。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレストS3が構成される。
【0031】
サイドフレーム10は、板金をプレス加工して成形され、上方よりも下方の幅が広くなるように湾曲した略板体からなる。
図3に示すように、サイドフレーム10は、略平板状の側板11と、この側板11の前端部を内側にU字状に折り返してなる前縁部12と、後端部をL字型に内側に屈曲させた後縁部13とを有している。
サイドフレーム10には、乗員を後方から支持するSバネからなる一対の乗員支持部材としての架設部材25の両端が係止される係止孔を備えた係止部15と、取付部材50を取り付けるための一対の取付孔16とが設けられている。
取付孔16は、シート前後方向に2つずつの面取り状の後角部16aと面取り状の前角部16bとを有した縦長の略長方形の孔であり、側板11の前縁部12に近い部分に、前縁部12の傾斜に沿って設けられている。例えば、取付孔16の長辺の長さは33mmであり、短辺の長さは11mmである。
【0032】
前角部16bの曲率半径は、後角部16aの曲率半径よりも大きく形成されている。例えば、前角部16bと後角部16aの曲率半径の比は、2:1から3:1の範囲内の比である。更に具体的には、前角部16bの曲率半径は2.5mmであり、後角部16aの曲率半径は1mmである。更に、取付孔16に嵌められる後述する取付部材50においては、後角部16a及び前角部16bのそれぞれと対応する形状で面取り状に形成された後角部50a及び前角部50bを有する。例えば、前角部50bと後角部50aの曲率半径の比は、2:1から3:1の範囲内の比で後角部16a及び前角部16bに対応する比である。更に具体的には、前角部50bの曲率半径は2.5mmであり、後角部50aの曲率半径は1mmである。
このように、取付孔16及び後述する取付部材50が形成されていることで、後述する取付部材50が取付孔16に嵌められるときには、取付部材50の向きが制限されることで誤組みが事前に防止される。つまり、前角部16b及び後角部16aが後述する取付部材50の取付孔16への組付けについての誤組抑制部80として機能する。
【0033】
また、上記において、前角部16bの曲率半径が後角部16aよりも大きく形成されていることとして説明したが、取付孔16の内面のいずれかの角部の曲率半径が他の角部と異なるように形成されて、取付孔16に対応した形状で内面に対向する部分を有する取付部材50が組み付けられるようにすれば、同様の効果を奏し得ることとなる。
例えば、取付孔16の内面における曲率半径の異なる角部は、取付部材50の取付向きを制限できればよく、シート前後方向に配されたものに限らず、上下、斜め等の各位置に形成するようにできる。
【0034】
取付部材50の取付孔16は、サイドフレーム10におけるエアバッグモジュール6を取り付けるボルト18の軸部とは異なる位置に形成されており、力布32をボルト18の軸部で支持する必要がなく、力布32自体に直接孔をあける必要がない。従って、力布32とサイドフレーム10との連結箇所の耐久性を向上できる。また、エアバッグモジュール6のサイドフレーム10への取り付けと、力布32のサイドフレーム10への連結とを異なる位置で行うため、取付構造を単純化できると同時に、力布32のサイドフレーム10への連結構造により、エアバッグモジュール6への取り付けが影響を受けることがない。
なお、本実施形態では、サイドフレーム10の前縁部12に近い位置のみに、インナー側の力布32取付用の取付孔16を備えているが、インナー側の力布32とアウター側の力布31の双方を、取付部材50を用いてサイドフレーム10に取り付ける場合には、後縁部13に近い位置にも、アウター側の力布31取り付け用の取付孔16を設けるとよい。
【0035】
取付孔16は、側板11の上端近くと下端近くに一対設けられ、架設部材25の係止部15を挟むように、係止部15の上方と下方に形成されている。このように、取付孔16は、係止部15と水平方向に並ばず、上下方向において異なる位置に形成されている。このように構成することにより、架設部材25及び取付部材50の取付の作業性を向上できると共に、サイドフレーム10の剛性が、架設部材25又は取付部材50の取付箇所において低下することを抑制できる。
サイドフレーム10の前後の幅の狭い前後幅狭部は、サイドフレーム10下方の前後の幅の広い前後幅広部よりも剛性が低いが、上方の取付孔16は、サイドフレーム10の前後幅狭部の中でも、上部フレーム21近くに配置されるため剛性を補うことができる。
【0036】
また、サイドフレーム10には、その上下に渡って複数の同形状の取付孔16が形成されていると好ましい。このようにすれば、エアバッグモジュール6の取り付け高さが異なる車両において、取付部材50を取り付ける取付孔16を選択するようにしてシートフレームFを共用し、汎用性を高くすることができる。また、取付部材50を用いて複数の力布31,32を取り付ける場合にも、同一形状の取付部材50を用いることができる。
また、サイドフレーム10には、
図3に示すように、シート幅方向外側の面にエアバッグモジュール6が固定されている。
【0037】
本実施形態のエアバッグモジュール6は、モジュールケースを有しないケースレスエアバッグモジュールからなる。エアバッグモジュール6は、
図3に示すように、インフレータ6aと、折り畳まれたエアバッグ6bと、インフレータ6aを保持するリテーナ6cと、エアバッグ6bを包むラップ材6dを備えている。
インフレータ6aの外周部は、車両用シートS内側に向かって立設されたボルト18により、リテーナ6c及びサイドフレーム10に固定されている。なお、インフレータ6aは、ボルト以外のインフレータ取付部材によりサイドフレーム10に固定されていてもよい。
【0038】
インフレータ6aは、エアバッグ6b内に配設され、エアバッグ6bは、インフレータ6aから噴出されるガスによって車両用シートS前方に展開するようになっている。
エアバッグ6bは、布袋等からなるラップ材6dによって折り畳み状態に保持されており、このラップ材6dは、エアバッグ6bが展開する場合に容易に破けるようになっている。
なお、本実施形態では、エアバッグモジュール6をケースレスのものから構成しているが、これに限定されるものでなく、モジュールケースを備えたものとして構成してもよい。
クッションパッド5には、
図3に示すように、エアバッグモジュール6を格納するための開口8が形成され、この開口8により、空間7が形成されている。
【0039】
トリムカバー4は、公知の材料からなり、
図3,
図4に示すように、座面中央から左右の土手面を被包する前面マチ部41と周側面から背面に至る側面マチ部42とを縫い合わせ、更に、側面マチ部42の前面マチ部41逆側の端部に不図示の後面マチ部を縫い合わせることにより袋状に縫製されている。
前面マチ部41と側面マチ部42との土手部において膨出した頂点には、破断部40が形成されている。破断部40は、前面マチ部41と側面マチ部42の端部を、通常の使い勝手に耐えられる強度を保ちつつ、エアバッグの膨張による引張力で裂断可能なように、相互に縫製されている。
【0040】
図4に示すように、破断部40には、力布31,32が共縫いされている。
力布32は、伸縮性の小さい布状素材からなり、エアバッグの膨張による応力を破断部40に伝達する役割を果たす。更に、力布31,32は、特許請求の範囲の案内部材に対応し、エアバッグモジュール6の展開方向を案内する部材である。
【0041】
力布32は、
図4に示すように、略矩形の布からなる。破断部40に対向する辺35には、両端に、矩形状に突出したトリムプレート37取付用の取付部36が、それぞれ複数設けられている。
トリムプレート37は、硬質樹脂製からなる矩形の板体である。トリムプレート37は、力布32の取付部36の端末の形状を保持するために用いられる。力布32の端末にトリムプレート37が固定されていることにより、力布32の端末を保持空間59に差込む際の作業性が向上する。ここで、保持空間59は、力布32の端末に縫合されたトリムプレート37を収容する機能を有し、特許請求の範囲の収容部に対応するものである。
なお、本実施形態では、力布32の取付部36にトリムプレート37を固定しているが、これに限定されるものではなく、トリムプレート37を用いずに、力布32の取付部36の端末を複数回折り返して縫成したものや、複数重に巻回して縫成したもの、複数重に巻回して縫成したものを一方向に押し潰したものを取付部材50の保持空間59に挿入してもよい。
【0042】
力布32は、
図3に示すように、破断部40より空間7へ引き込まれている。力布32の取付部36に固定されたトリムプレート37は、取付部材50を介してサイドフレーム10の取付孔16に係止されている。
また、
図3に示すように、力布31の他端には、係止フック33が縫合により固定されている。力布31は、エアバッグモジュール6の後方に配置されたクッションパッド5aとエアバッグモジュール6との間の空間に引き込まれ、係止フック33がサイドフレーム10の後縁部13に係止されている。
なお、アウター側の力布31の取付にも取付部材50を用いる場合には、力布31の端部にもトリムプレート37を縫合により固定する。サイドフレーム10の後縁部13の近くに取付孔16を設け、インナー側の力布32の場合と同様に、この取付孔16に取付部材50を介して力布31を取り付ける。
取付部材50を介してサイドフレーム10に力布31を取り付ける構成は、シート前後方向で逆に取り付けることを除いては、力布32の取付の構成と同様であるため説明を省略する。
【0043】
取付部材50は、硬質樹脂から一体成形されてなり、
図5,
図7に示すように、中空直方体の一辺の周囲が切り欠かれた形状からなり、特許請求の範囲の本体部に対応する保持部51と、保持部51の切欠かれた一辺の逆側から連続して、四方に向かって張り出した板状のフランジ部52と、を備えている。フランジ部52が、特許請求の範囲の張出部に対応する。
保持部51は、前壁53,水平壁54,後壁55,水平壁56と、前壁53のフランジ部52逆側の端部から後方に向かって垂直に立設する天壁57と、水平壁54と水平壁56を架橋し、前壁53及び後壁55に平行な仕切壁58と、を備えている。
前壁53,水平壁54,後壁55,水平壁56,天壁57に囲まれた空間が、トリムプレート37を内部に係止する保持空間59となっている。保持空間59は、仕切壁58によって、前側空間59aと、後側空間59bに分割されている。
また、取付部材50が車両用シートSの右側のサイドフレーム10に取り付けられる場合には、水平壁54が上方、水平壁56が下方に位置し、取付部材50が車両用シートSの左側のサイドフレーム10に取り付けられる場合には、水平壁54が下方、水平壁56が上方に位置する。
【0044】
前壁53は、後述するフランジ部52から略垂直に(約85度〜約90度の傾斜で)立設して延出している。また、前壁53は、フランジ部52から平面的に立設して延在するのではなく、フランジ部52から約5mm離れるごとに約0.5mmずつ後壁55側に薄くなるように段付きで延在するようにしてもよい。
このように、複数段から成る前壁53を有する保持部51によれば、保持部51を取付孔16に挿入する際には、厚さの薄く外形の小さい側から取付孔16に挿入されることとなるため、フランジ部52から垂直に形成されたものよりも挿入が容易となる。
一方、取付孔16に取付部材50が取り付けられた状態においては、取付孔16の内面に対して前壁53が略垂直に当接することとなるため、後壁55側に傾斜して形成されたものよりも取付部材50の回動が抑制されて、取付部材50が取付孔16から抜けることを抑制できる。
【0045】
水平壁54,水平壁56は、
図5,
図7に示すように、長方形の一つの角が切り欠かれた略L字状の形状からなっている。
また、天壁57の上下方向の中央は、
図5,
図6に示すように、前壁53まで後退して切欠かれた形状となっている。
水平壁54,水平壁56,天壁57の切欠かれた部分は、全体として略T字状の開口を形成しており、この開口を通して保持空間59内に係止される力布32及びトリムプレート37を視認可能である。また、この開口により、保持部51側からとフランジ部52側からの二つの型割により架橋部61を成形可能となる。
【0046】
後壁55の上下方向の中央には、スリット55sが形成されている。このスリット55sにより、後壁55とフランジ部52の後方部分が中央で二つに分割されている。スリット55sは、保持空間59に連通して形成されており、力布32を保持空間59に挿入するために用いられる。具体的には、作業者は、力布32を折り曲げた状態でスリット55sに通して保持空間59内において力布32を広げることで、取付部材50に力布32を挿通させた状態とする。また、力布32をスリット55sに通して保持空間59に収める際に、スリット55sと保持空間59とが交わる部分に隣接する後壁55の角部55aに力布32が擦れて損傷しないように、角部55aは面取り状に形成されている。
また、スリット55sによって後壁55とフランジ部52の後方部分が分断されていることによって、詳細には後述するが、後壁55におけるスリット55s側の端部の前壁53側への撓みが許容されることとなる。なお、スリット55sが、特許請求の範囲の切れ込みに対応する。
【0047】
後壁55のシート後側の外面には、
図5〜
図7に示すように、スリット55sを挟んだ両側に、それぞれ突起60が形成されている。
突起60は、フランジ部52側の面60aが、後壁55に対して直角に近い角度を成し、フランジ部52逆側の面60bが、後壁55に対して、小さい鋭角の角度を成した略三角柱状からなる。面60aとフランジ部52との間の距離は、サイドフレーム10の取付孔16における厚みと同じかそれより僅かに大きく形成されている。面60aは、フランジ部52に対向した面となっており、面60aとフランジ部52との間に、取付孔16の縁部を挟持して、取付孔16から取付部材50が抜けることを抑制可能となっている。なお、突起60が、特許請求の範囲の爪部に対応する。
また、取付部材50を取付孔16に取り付ける際、力の付加がされていない自然状態に取付部材50があるときは突起60が取付孔16の内面に当接するため、その挿入が阻まれる。上記のように、スリット55sによって後壁55が分断されており、更に突起60が略三角柱状に形成されていることによって、取付部材50を取付孔16側に押し込むと突起60が取付孔16の内面に当接して後壁55に前壁53側の力が加わって後壁55が撓むこととなる。後壁55が撓むことで取付部材50の外周が取付孔16の内面と同じか小さくなるため、取付部材50を取付孔16に取り付けることが可能となる。
なお、保持部51のうち、フランジ部52に隣接した部分であって、突起60とフランジ部52との間の厚みの部分が、特許請求の範囲の取付孔の内面に対向する部分に対応する。
【0048】
仕切壁58と前壁53は、シート外側の端部で、架橋部61により連結されている。架橋部61は、仕切壁58及び前壁53の上下方向の中央に短い帯板状の部分として設けられ、フランジ部52の面と同じ面を形成している。架橋部61のシート上下方向の幅は、天壁57の中央に設けられた切欠き部分の幅よりも小さく形成され、保持部51側からとフランジ部52側からの二つの型割により、中子を用いることなく取付部材50を成形可能となっている。架橋部61は、保持空間59に挿入されたトリムプレート37及び力布32の端部が保持空間59から抜け出ることを防止する抜け止めとしての役割を果たす。
天壁57の内面の後壁55側先端には、前側空間59aに向かって突出する突起57aが設けられている。この突起57aは、前側空間59aに挿入されたトリムプレート37が、エアバッグ6b膨張時に、力布32を介して前側空間59a外に引き出す力を受けたときに、前側空間59a外に引き出されることを抑制する抜け止めとしての機能を果たす。
この突起57aは、前側空間59a外側の面が、天壁57の先端から連続した平面からなり、前側空間59a側の面に、略L字状の鉤型の段差を備えているため、トリムプレート37の前側空間59aへの挿入は、人の手の力によっても可能であるが、前側空間59aからトリムプレート37を引き出す力が掛かったときには、段差でトリムプレート37の端部が係止して、トリムプレート37は、容易に前側空間59aから引き出されない。
【0049】
後壁55と水平壁54とが交差する部分、及び後壁55と水平壁56とが交差する部分には、後角部50aがあり、前壁53と水平壁54とが交差する部分、及び前壁53と水平壁56とが交差する部分には、前角部50bがある。これらの後角部50a,前角部50bは、上記のように、前角部50bが後角部50aよりも大きな曲率半径で形成されており、取付孔16の内面との間で誤組抑制部81を構成する。なお、前角部50bが、特許請求の範囲における一の対向角部に対応し、後角部50aが、特許請求の範囲における他の対向角部に対応する。
【0050】
このように、後角部50a,前角部50bが形成されていることで、取付部材50の取付孔16への取り付けが安定保持されることとなる。
具体的に説明すると、突起60とフランジ部52とによって取付孔16の内面を挟持している部位を中心として、距離の離れた前壁53の前角部50bには大きな曲げモーメントがかかることとなる。この曲げモーメントの増大により前角部50bの応力が大きくなるが、上記のように、前角部50bが後角部50aよりも大きな曲率半径で形成されていることによって応力集中を低減することができる。このため、応力増大による取付部材50の変形を防ぐことができるため取付孔16への取付状態が安定することとなる。
また、後角部50a、前角部50b、後壁55及び水平壁54,56はフランジ部52から略垂直に(約85度〜約90度の傾斜で)立設して延出している。このように形成されていることにより、中子を用いずに、二つの型割により保持部51の成形が可能となる。
【0051】
フランジ部52は、サイドフレーム10に当接する当接面52aと、当接面52aの裏側の押え面52bを備えた平板状からなる。当接面52aは、平面からなり、押え面52bは、端部が当接面52aの端部に交わるよう、周囲の縁の部分が、当接面52aに向かって湾曲した曲面52cを形成している。
フランジ部52は、保持部51よりも前方の部分が、後方の部分よりも長く形成され、サイドフレーム10への組付け時に、サイドフレーム10の側板11と前縁部12との境界部分に力布32が接触して傷つくことを抑制可能となっている。
【0052】
また、
図5及び
図6に示すように、フランジ部52は、後壁55に沿う方向における突起60に交差する位置からスリット55sの位置を含む範囲には形成されていない。換言すると、フランジ部52は、突起60の近傍においては形成されていない。
このように、フランジ部52が形成されていることで、中子を用いずに、二つの型割により突起60を有する取付部材50の形成が可能となる。
【0053】
上記のように構成された取付部材50は、曲率半径の異なる後角部50a,前角部50bを有することによって、二つの型割による良好な成形性を損なわずに、取付孔16への誤組みを防止できる。
【0054】
力布32の端部を、取付部材50を介してサイドフレーム10の側板11に取り付けた状態に係る横断面図を
図9に示す。
取付部材50は、フランジ部52の長く形成された部分を前方にして、保持部51のフランジ部52側の端部の外面をサイドフレーム10の取付孔16の内面に当接させて、取付孔16に挿通されている。このとき、取付孔16の後方部分の縁は、フランジ部52と突起60により挟持されている。
このように、取付部材50は、取付孔16に挿通されているため、取付部材50の上下前後方向の取付位置を、取付孔16と取付部材50の当接面により容易に規制できると同時に、力布32の引張方向によって、力布32がサイドフレーム10の端部に接触することが抑制される。
【0055】
トリムプレート37は、力布32の端部に縫合された状態で、トリムプレート37を仕切壁58の前側の面に対向させて、前側空間59aに保持されている。トリムプレート37及び力布32の端部は、架橋部61のシート内側の面に当接している。
このように、力布32の端部には、力布32よりも剛性の高いトリムプレート37が固定され、取付部材50は、保持空間59にトリムプレート37を保持した状態で、取付孔16に挿通されているため、力布32自体に孔をあけてこの孔にサイドフレーム側の軸を挿通して固定するような場合と比較し、力布32が、エアバッグ6bの膨張による引張力を受けたときの耐久性を向上できる。
図9では、トリムプレート37を、前壁53の内面に対向させているが、
図10のように、力布32をトリムプレート37の幅に合わせて折り返すことにより、前側空間59a内でトリムプレート37が力布32に挟まれ、トリムプレート37の両面が力布32に当接した状態としてもよい。このとき、力布32が前壁53の内面に当接する。
力布32は、仕切壁58と天壁57との間を通って、後側空間59bに入り、後側空間59bのフランジ部52側の開口を通って、取付部材50の外側に導出されている。
【0056】
フランジ部52は、当接面52aを側板11に当接させて配置されている。また、フランジ部52の押え面52bは、力布32を押え面52bとリテーナ6cとの間に挟んだ状態で、リテーナ6cにより押さえ付けられている。
なお、本実施形態では、押え面52bの略全面が、リテーナ6cによって側板11に向かって押さえ付けられているが、これに限定されるものでなく、押え面52bの少なくとも一部が、リテーナ6cによって押さえ付けられていればよい。
押え面52bのシート前方を押さえ付けるようにすると、押え面52bのみでなく、力布32も共に押さえ付けることになるため、エアバッグ6bの膨張による引張力の取付部材50への伝達を効果的に抑えることができる。その結果、力布32によるエアバッグ6bの膨張力を破断部40にスムーズに伝達可能となる。
【0057】
また、本実施形態では、押え面52bをリテーナ6cによって押さえ付けているが、インフレータ6aやエアバッグ6bで押さえ付けてもよい。エアバッグ6bを押え面52bに当接させて配置した場合、一般使用時には、エアバッグ6bからの押圧力は受けないが、エアバッグ6bが膨張したときに、押え面52bが側板11側に押さえ付けられる。
また、エアバッグ6bがモジュールケースに格納される場合には、モジュールケースで押え面52bを押さえ付けてもよい。また、押え面52bを押さえ付けるための専用部材を設けてもよい。
【0058】
力布32端部のサイドフレーム10への取付手順について説明する。
まず、取付部材50に、トリムプレート37が縫合された力布32の取付部36の端部を係止する。
力布32の取付部材50への取付は、次の手順で行う。取付部36のトリムプレート37に垂直な2辺のうち1辺を、スリット55sを通して、後側空間59bに挿入する。このとき、トリムプレート37が後壁55側、取付部36の端部が前壁53側を向くようにする。
次いで、取付部36のトリムプレート37に垂直な2辺のうち、残りの1辺も、スリット55sを通して、後側空間59bに挿入し、取付部36が後側空間59bを貫通した状態とする。
次に、トリムプレート37を180°反転させ、取付部36の端部側を前側空間59a側に向かって折り曲げて、トリムプレート37を、仕切壁58と天壁57との間の隙間から前側空間59aに挿入し、トリムプレート37の先端が架橋部61に当接するまで押し込む。以上で、力布32と取付部材50との連結が完了する。
【0059】
次いで、取付部材50を、サイドフレーム10のシート外側から取付孔16に挿入し、取付孔16の内面のうち後側がフランジ部52と突起60との間に挟まれるまで、取付部材50を押し込む。
このとき、具体的には前述のように、取付部材50を取付孔16側に押し込むと、突起60が取付孔16の内面に当接して後壁55に前壁53側の力が加わり、その力によって後壁55が撓むことで取付孔16に保持部51を挿入可能となる。更に、突起60が取付孔16の内面を越える位置まで取付部材50を挿入すると後壁55の撓みが解消されて、取付部材50が取付孔16に嵌合することとなる。
次に、エアバッグモジュール6を、シート外側から組付ける。このとき、リテーナ6cが、フランジ部52の少なくとも一部を押さえ付けるようにして、ボルト18により固定する。
その後、クッションパッド5aをエアバッグモジュール6の外側に配置し、トリムカバー4でクッションパッド5aごと被覆して完成する。
【0060】
本実施形態では、主として本発明に係るエアバッグモジュール装備シート及びエアバッグモジュールの案内部材取付用の取付部材に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、取付部材と取付部材が嵌る取付孔の内面のそれぞれにおいて曲率半径の異なる角部が形成されていることで、相互の誤組みを抑制するものとして説明したが、取付部材が一の向きであるときにのみ取付孔に嵌るような構成であればよく、これに限定されない。
例えば、取付部材の一部を所定断面形状で突出させ、取付孔の内面の一箇所を、当該所定断面形状に対応する断面形状に広げられているように形成して、取付部材が所定の向きにあるときのみ、相互が嵌めこまれるようにしてもよい。逆に、取付部材の一部に所定断面形状の窪みを設け、取付孔の一箇所に、当該所定断面形状に対応する断面形状を有する突出部を形成して、取付部材が所定の向きにあるときのみ相互が嵌めこまれるようにしてもよい。