(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321386
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20180423BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
G03F9/00 A
G03F7/20 505
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-14529(P2014-14529)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-142036(P2015-142036A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 隆志
【審査官】
赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−191901(JP,A)
【文献】
特開2008−294019(JP,A)
【文献】
特開2006−196555(JP,A)
【文献】
特開2007−271867(JP,A)
【文献】
特開2009−272373(JP,A)
【文献】
特開2009−170666(JP,A)
【文献】
特開2008−021830(JP,A)
【文献】
特開2002−014005(JP,A)
【文献】
特開2006−349945(JP,A)
【文献】
特表2007−514292(JP,A)
【文献】
特開平09−237755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイと、
前記光変調素子アレイによる露光エリアを、被描画体に対し主走査方向に沿って相対移動させる走査部と、
前記露光エリアの相対位置に応じて前記複数の光変調素子を制御し、パターン光を前記被描画体に投影させる露光制御部と、
前記被描画体の描画面に沿って複数のスリットを形成した遮光部と、
前記遮光部の下方に配置され、前記複数のスリットを透過する光を受光可能なサイズの受光部を有する測光部と、
前記測光部の出力から露光位置を算出する位置算出部とを備え、
前記複数のスリットが、副走査方向に沿って形成されたスリットを主走査方向に複数並べたスリットであって、
前記露光制御部が、前記遮光部を前記露光エリアが相対移動する間、前記スリットの主走査方向幅よりも広い主走査方向幅を有する位置検出パターンの光を投影させ、
前記位置算出部が、前記測光部の時系列出力に従う連続的光量分布から、露光位置を算出することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記連続的光量分布が、パターン光の空間的光量分布に対応していることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記位置検出パターンが、副走査方向に沿ったバー状のパターンを有することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の露光装置。
【請求項4】
前記スリットの主走査方向に沿った幅が、バー状パターンの主走査方向に沿った幅に対して0.1〜0.5倍であることを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記位置検出パターンが、副走査方向に沿ったバー状のパターンを主走査方向に沿って等間隔で並べたパターン列であることを特徴とする請求項3または4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記露光制御部が、主走査方向に沿って並ぶ複数の位置検出パターンの光を投影させ、
前記複数のスリットの間隔が、複数の位置検出パターンの間隔よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項7】
複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイと、
前記光変調素子アレイによる露光エリアを、被描画体に対し主走査方向に沿って相対移動させる走査部と、
前記露光エリアの相対位置に応じて前記複数の光変調素子を制御し、パターン光を前記被描画体に投影させる露光制御部と、
前記被描画体の描画面に沿って少なくとも1つのスリットを形成した遮光部と、
前記スリットを透過する光を受光する測光部と、
前記測光部の出力から露光位置を算出する位置算出部とを備え、
前記露光制御部が、前記遮光部を前記露光エリアが相対移動する間、前記スリットの主走査方向幅よりも広い主走査方向幅を有する位置検出パターンの光を投影させ、
前記位置算出部が、前記測光部の時系列出力に従う連続的光量分布から、露光位置を算出し、
前記測光部が、主走査方向に沿って分割された第1、第2の測光領域を有し、そして、前記第1、第2の測光領域ごとに光量を検知し、
前記露光制御部が、露光エリア内で互いに異なる第1の位置検出パターンの光、第2の位置検出パターンの光を、前記第1の測光領域、前記第2の測光領域に対しそれぞれ投影させることを特徴とする露光装置。
【請求項8】
前記露光制御部が、副走査方向に沿ったバー状パターンを前記第1の位置検出パターンとして投影させ、主走査方向に対し傾斜したバー状パターンを前記第2の位置検出パターンとして投影させることを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイによる露光エリアを、被描画体に対し主走査方向に沿って相対移動させ、
前記露光エリアの相対位置に応じて前記複数の光変調素子を制御し、パターン光を前記被描画体に投影させ、
前記被描画体の描画面に沿って複数のスリットを形成した遮光部の下方に配置され、前記複数のスリットを透過する光を受光可能なサイズの受光部を有する測光部の出力から露光位置を算出する露光方法であって、
前記複数のスリットが、副走査方向に沿って形成されたスリットを主走査方向に複数並べたスリットであって、
前記遮光部を前記露光エリアが相対移動する間、前記スリットの主走査方向幅よりも広い主走査方向幅を有する位置検出パターンの光を投影し、
前記測光部の時系列出力に従う連続的光量分布から、露光位置を算出することを特徴とする露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調素子アレイを用いてパターンを形成するマスクレス露光装置に関し、特に、基板等に投影されるパターンの位置検出に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクレス露光装置では、基板が搭載されるステージを走査方向に沿って移動させながら、DMD(Digital Micro-mirror Device)などの光変調素子アレイによってパターン光を基板に投影する。そこでは、ステージに載せられた基板上における投影エリア(露光エリア)の位置を検出し、その位置に応じたパターン光を投影するように、2次元状に配列されたマイクロミラーなど光変調素子を制御する。
【0003】
マイクロメータのオーダーで微細パターンを形成する場合、基板の位置を正確に検出し、パターン光を位置ずれなく投影する必要がある。しかしながら、DMDの温度変化などに起因して、パターン光の投影位置にずれが生じ、パターン形成位置に誤差が生じることがある。
【0004】
これを防ぐため、フォトダイオードなどの光センサをステージ脇に複数配置し、露光位置を補正する(特許文献1参照)。そこでは、描画面の傍に複数のスリットを形成し、DMDの投影エリアがスポット光サイズよりも幅広のスリットを通過するとき、特定のマイクロミラーをON状態にする。そして、スリット通過時におけるスポット光の光量変化を検出し、最大光量の半値が検出される位置を描画位置として算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−271867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1つのマイクロミラーによるスポット光を基準にして光量測定する場合、スポット光強度が微弱であるため、フォトセンサにおいて生じているノイズが光量測定に影響する。また、スポット光サイズに対してスリット幅が広いため、光源の揺らぎなどによってスポット光の位置が不安定となり、露光位置を正確に検出することが難しい。
【0007】
したがって、マスクレス露光装置において、フォトダイオードなどのフォトセンサを用いて正確な2次元の位置検出が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の露光装置は、複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイと、光変調素子アレイによる投影エリアとなる露光エリアを、被描画体に対し主走査方向に沿って相対移動させる走査部と、露光エリアの相対位置に応じて複数の光変調素子を制御し、パターン光を被描画体に投影させる露光制御部とを備える。
【0009】
また、露光装置は、被描画体の描画面に沿って少なくとも1つのスリットを形成した遮光部と、スリットを透過する光を受光する測光部と、測光部の出力から露光位置を算出する位置算出部とを備える。測光部は、例えばフォトセンサで構成することが可能であり、単一のフォトセンサ配置、あるいは走査バンドごとのフォトセンサ配置が構成可能である。
【0010】
本発明では、露光制御部は、遮光部を露光エリアが所定速度で相対移動する間、スリットの主走査方向幅よりも広い主走査方向幅を有する位置検出パターンの光を投影する。そして、位置算出部は、測光部から連続的、時系列的に出力される光量による連続的光量分布から、露光位置を算出する。測光部からの時系列的な一連の出力から連続的な光量分布が導かれ、分布特性は出力値に従う。位置算出部は、スポット的、静的な光量ではなく、例えば一定速度でパターンのスリット通過中の光量分布に基づいて露光位置を算出する。
【0011】
連続的光量分布がパターン光の空間的光量分布に対応するようにパターン光、スリットを構成することが望ましい。感光材料などの露光量に対応させて露光位置を光量分布から求めることが可能となる。
【0012】
スリットは、例えば副走査方向に沿って形成することが可能であり、位置検出パターンは、副走査方向に沿ったバー状パターンとして形成することが可能である。スリットの主走査方向に沿った幅は、バー状パターンの主走査方向に沿った幅に対して0.1〜0.5倍に定めることが可能である。
【0013】
また、複数のスリットを主走査方向に沿って形成することが可能であり、露光位置をスリットごとに算出することが可能である。この場合、露光制御部は、主走査方向に沿って複数の位置検出パターンの光をパターン列として投影することが可能であり、このとき、複数のスリットの間隔が、複数の位置検出パターンの間隔よりも広くなるように、パターン列を投影すればよい。
【0014】
一方、測光部において2つの受光領域を規定し、別々に出力するように構成することも可能である。この場合、露光制御部は、露光エリアに投影するパターンとして、互いに異なる第1の位置検出パターン、第2の位置検出パターンを、第1の測光領域、第2の測光領域に対し投影する。測光部は、第1、第2の測光領域から、第1の位置検出パターン、第2の位置検出パターンそれぞれに応じた光量を検知し出力を行う。
【0015】
例えば、露光動作制御部が、副走査方向に沿ったバー状パターンを第1の位置検出パターンとして投影し、主走査方向に対し傾斜したバー状パターンを第2の位置検出パターンとして投影することが可能である。
【0016】
本発明の他の態様における露光方法は、複数の光変調素子をマトリクス状に配列した光変調素子アレイによる露光エリアを、被描画体に対し主走査方向に沿って相対移動させ、露光エリアの相対位置に応じて複数の光変調素子を制御し、パターン光を被描画体に投影させ、被描画体の描画面に沿って少なくとも1つのスリットを形成し、スリットを透過する光を受光し、測光部の出力から露光位置を算出する露光方法であって、遮光部を露光エリアが相対移動する間、スリットの主走査方向幅よりも広い主走査方向幅を有する位置検出パターンの光を投影し、測光部の時系列出力に従う連続的光量分布から、露光位置を算出する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マスクレス露光装置において、正確にパターン形成位置/露光位置を定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態である露光装置のブロック図である。
【
図2】遮光部と位置検出パターン列を示した図である。
【
図3】フォトセンサと遮光部の配置を示した概略的側面図である。
【
図4】1つのスリットを1つのバー状パターン光が通過したときの時系列的光量分布を示したグラフである。
【
図5】露光位置検出時におけるタイミングチャートである。
【
図6】第2の実施形態におけるフォトセンサと位置検出パターン列を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態である露光装置のブロック図である。
【0021】
露光装置(描画装置)10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布、あるいは貼り付けた基板Wへ光を照射することによってパターンを形成するマスクレス露光装置であり、基板Wを搭載するステージ12が走査方向に沿って移動可能に設置されている。ステージ駆動機構15は、主走査方向X、副走査方向Yに沿ってステージ12を移動させることができる。
【0022】
露光装置10は、パターン光を投影する複数の露光ヘッドを備えており(ここでは1つの露光ヘッド18のみ図示)、露光ヘッド18は、DMD22、照明光学系、結像光学系(いずれも図示せず)を備える。光源20は、例えば放電ランプ(図示せず)によって構成され、光源駆動部21によって駆動される。
【0023】
ベクタデータなどで構成されるCAD/CAMデータが露光装置10へ入力されると、ベクタデータがラスタ変換回路26に送られ、ベクタデータがラスタデータに変換される。生成されたラスタデータは、バッファメモリ(図示せず)に一時的に格納された後、DMD駆動回路24へ送られる。
【0024】
DMD22は、微小マイクロミラーを2次元配列させた光変調素子アレイ(光変調器)であり、各マイクロミラーは、姿勢を変化させることによって光の反射方向を選択的に切り替える。DMD駆動回路24によって各ミラーが姿勢制御されることにより、パターンに応じた光が、結像光学系を通じて基板Wの表面に投影される。
【0025】
ステージ駆動機構15は、コントローラ30からの制御信号に従い、ステージ12を移動させる。ステージ駆動機構15には不図示のリニアエンコーダが備わっており、ステージ12の位置を測定し、コントローラ30にフィードバックする。
【0026】
位置検出部28は、ステージ12の端部付近に設置されており、単一のフォトセンサPD、およびパルス信号発生部29を備えている。位置検出部28の上方には、部分的に光を通す遮光部40が設けられている。位置算出部27は、位置検出部28から送られてくる信号に基づき、露光位置、すなわち露光ヘッドに対する基板W(ステージ12)の位置を算出する。
【0027】
露光動作中、ステージ12は、走査方向Xに沿って一定速度で移動する。DMD22全体による投影エリア(以下、露光エリアという)は、基板Wの移動に伴って基板W上を相対的に移動する。露光動作は所定の露光ピッチに従って行なわれ、露光ピッチに合わせてマイクロミラーがパターン光を投影するように制御される。
【0028】
DMD22の各マイクロミラーの制御タイミングを露光エリアの相対位置に従って調整することにより、露光エリアの位置に描くべきパターンの光が順次投影される。そして、露光ヘッド18を含めた複数の露光ヘッドにより基板W全体を描画することによって、基
板W全体にパターンが形成される。
【0029】
なお、露光方式としては、一定速度で移動する連続移動方式だけでなく、間欠的に移動するステップ&リピートも可能である。また、露光ショット時の投影エリアを部分的に重ねる多重露光(オーバラップ露光)も可能である。
【0030】
露光動作を始める前段階においては、パターンを正確な位置に形成するため、露光開始位置に関する補正処理が行われる。ステージ12を一定速度で移動させながら、位置検出用のパターンの光を投影する。コントローラ30は、位置算出部27から送られてくる位置情報に基づき、露光開始位置を補正する。
【0031】
以下、
図2〜7を用いて、露光位置の検出および補正について説明する。
【0032】
図2は、遮光部と位置検出パターン列を示した図である。
図3は、フォトセンサと遮光部の配置を示した概略的側面図である。
【0033】
単一の矩形状フォトセンサPDの光源側上方に配置された遮光部40には、スリットエリアSTが主走査方向Xに沿って形成されており、ここでは主走査方向Xに垂直、すなわち副走査方向Yに平行な6つのバー状スリットST1〜ST6がスリットピッチSPで等間隔に形成されている。遮光部40のサイズは、フォトセンサPD全体のサイズよりも大きく、遮光部40の真下に配置されたフォトセンサPDは、スリットSTを通った光のみ受光する。
【0034】
光強度/光量を検知するフォトセンサPDは、基板Wを支持する支持機構60によって保持されており、フォトセンサの受光面PSと基板Wの描画面に平行な遮光部40の両端を支持する支持機構50は、基板Wを支持する支持機構60によって支持されている。支持機構60は、ステージ12に取り付けられている。ステージ12の移動に伴い、露光エリアが遮光部40を通過する。
【0035】
露光位置検出のとき、位置検出パターン列PTの光が、パターン光として投影される。位置検出パターン列PTは、主走査方向Xに垂直、すなわち副走査方向Yに平行なバー状パターンを複数並べたパターン列であり、ここでは、パターンピッチPPで等間隔に並ぶ4つのバー状パターンPL1、PL2、PL3、PL4によって構成されている。位置検出パターン列PTの光を遮光部40に向けて走査させる。
【0036】
バー状パターンPL1、PL2、PL3、PL4の各パターン幅Kは、遮光部40に形成されたスリットST1〜ST6各々のスリット幅Zよりも広い。また、パターンピッチPPも、スリット幅Zよりも広い。したがって、1つのバー状パターンが所定速度で1つのスリットを完全に通過した後、次のバー状パターンがスリット通過を開始する。位置検出パターン列PTの主走査方向Xに沿った全体幅PWは、スリットピッチSPよりも小さい。このため、位置検出パターン列PTの最後尾バー状パターンPL4が1つのスリットを例えば一定速度で通過終了すると、先頭のバー状パターンPL1が次のスリット通過を開始する。
【0037】
図4は、1つのスリットを1つのバー状パターン光が通過したときの時系列的光量分布を示したグラフである。
図5は、露光位置検出時におけるタイミングチャートである。以下では、スリットST6、バー状パターンPL1を対象にして説明する。
【0038】
位置検出パターン列PTの光が遮光部40を一定速度で通過すると、バー状パターンPL1がスリットST6を透過したときにフォトセンサPDから出力される信号(以下、光量信号という)は、時系列的に連続変化する。これは、上述したように、スリット幅Zがバー状パターンPL1のパターン幅Kよりも短いことに起因する。
【0039】
図4に示すように、バー状パターンPL1の主走査方向Xに沿った光強度分布/光量分布GDは、略ガウス分布で表される。したがって、ピーク値を中心にして光量が徐々に減少していく。その結果、フォトセンサPDによって検出される光量の時系列的分布(以下、光量信号分布という)ALも略ガウス分布となり、時系列的な光量信号分布ALと空間的な光量分布GDが、互いに相似的な相関関係をもつ。ただし、ここでの光量信号分布ALは、スリット幅Zに従って検出される光量信号値をステージ12の移動に対して連続的にプロットした軌跡を表す。
【0040】
光量信号分布ALと光量分布GDとが相似的関係をもつには、スリット幅Zがバー状パターン幅Kよりも短ければよく、十分短くすることによって光量信号分布ALの山形形状が光量分布GDの山形形状に一層近くなる。ここでは、スリット幅Zが、バー状パターン幅Kに対して0.1〜0.5倍に定められる。このような比率にするため、バー状パターンPL1の光を投影するマイクロミラーの領域設定、あるいは、スリット幅Zの調整いずれか、あるいは両方を行う。
【0041】
露光位置の測定については、光量信号分布ALの中心位置を求め、その位置を露光位置として測定することにより、バー状パターンPL1の投影位置を連続的走査の過程で検出することが可能となる。具体的検出方法としては、光量信号があらかじめ定められた閾値を通過する/跨ぐとき、トリガー信号がパルス信号発生部29から出力されるように構成されている。閾値は、基板Wの感光材料の露光量が光強度の半値に基づいて算出されていることを考慮し、ここでは、バー状パターンPL1の光強度分布GDの半値を閾値として定めている。
【0042】
光量信号分布ALは、光量の連続的増加から連続的減少となる分布であるから、
図5に示すように、バー状パターンPL1がスリットST6を通過するとき、2つのトリガー信号が出力される。この2つのトリガー信号出力タイミングの中間が、バー状パターンPL1の光量分布ALのピーク位置に対応する露光位置として求められる。
【0043】
バー状パターンPL1がスリットST6を通過するときの光量信号分布について説明したが、他のバー状パターンPL2〜PL4がスリットST6を通過するときも同様の光量信号分布が得られ、トリガー信号も同じようなタイミングにより一定時間間隔で出力される。
【0044】
さらに、位置検出パターン列PTが先頭のスリットST6を通過終了し、次のスリットST5を通過開始するまでの時間間隔は、2つのバー状パターンの光が1つのスリットST6を通過する時間間隔と同じになるように、走査速度、スリットピッチSPが定められている。したがって、位置検出パターン列PTがスリットST1〜ST6すべてを通過する間、トリガー信号は一定時間間隔PPtで出力される。位置算出部27では、上述した隣接する2つのトリガー信号出力タイミングの中間値から露光位置を順次算出する。
【0045】
コントローラ30では、トリガー信号から算出される露光位置に対し、あらかじめ設定された標準露光位置との差を順次算出する。標準露光位置としてはスリットの中心地点の位置座標が、あらかじめ記憶、設定されている。
【0046】
検出されるすべての露光位置座標に対して補正値を算出した後、その平均値が求められる。この平均値によって、露光位置が補正される。実際の描画処理を行うとき、露光位置を補正値だけシフトさせて描画を開始する。ここでは、複数の露光ヘッドそれぞれに対し、露光位置が基板Wの基準位置として補正される。
【0047】
このように第1の実施形態によれば、DMD22を備えた露光装置10において、単一のフォトセンサPDの上方にスリットST1〜ST2を等間隔で形成した遮光部40を設置し、露光エリアが遮光部40を相対移動する間、副走査方向Yに平行な複数のバー状パターンPL1〜PL4から成る位置検出パターン列PTを投影する。そして、フォトセンサPDから出力される光量信号の半値を検知し、トリガー信号の出力中間位置から露光位置を算出し、補正する。
【0048】
フォトセンサがスリットを通過した光のみ受光するため、漏れ光等のノイズの影響が抑えられる。そして、時系列的に検出される光量信号分布がパターン光の光強度分布に相当する形状になるため、光量分布の半値を検出することによって、ピーク位置に相当する露光位置を精度よく検出することができる。
【0049】
また、複数のスリットをパターン光が通過し、その相対的移動量に基づいて平均値を算出することにより、光源の揺らぎやフォトセンサの感度ムラなどが生じた場合においても、その影響を抑えることができる。さらに、複数のバー状パターンが複数のスリットを通過することにより、平均値の母数が拡大し、露光位置が精度よく計測される。
【0050】
位置検出パターン列のバー状パターンは、主走査方向に垂直でなくてもよく、スリット形成方向に合わせてパターン形状を定め、上述した連続的光量分布が得られるようにスリットの主走査方向幅、パターン光の主走査方向幅を定めてもよい。また、パターン列の代わりに、1つのバー状パターンを位置検出パターンとして用いることも可能である。フォトセンサについては、各走査バンドに対してフォトセンサを設置することも可能である。
【0051】
次に、
図6、7を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、フォトセンサを2つの光量検出領域に分割し、主走査方向(X方向)、副走査方向(Y方向)に関して2次元の露光位置を検出する。それ以外の構成については、実質的に第1の実施形態と同じである。
【0052】
図6は、第2の実施形態におけるフォトセンサと位置検出パターン列を示した図である。
【0053】
フォトセンサPD1は、主走査方向に沿って均等に2分割されており、第1、第2の測光領域AP1、AP2がそれぞれ規定されている。ここで分割とは、フォトセンサPDが2つの受光部を持つ様に構成されることを意味し、1つの受光素子を電気的に分断して2つの受光部としてもよいし、独立した2つの受光素子を隣接して備えるよう構成してもよい。フォトセンサPD1では、光量が各領域において別々に検知される。そして、第1の測光領域AP1に対して第1の位置検出パターン列PT1、第2の測光領域AP2に対して位置検出パターン列PT2が投影される。
【0054】
遮光部400の第1の測光領域AP1に応じた半分の領域には、第1の実施形態と同様、副走査方向Yに平行な複数のスリットSU1が等間隔で形成されている。そして、第1の位置検出パターン列PT1も、第1の実施形態と同様、副走査方向Yに平行な複数のバー状パターンから構成される。
【0055】
一方、遮光部400において第2の測光領域AP2に応じた残り半分の領域には、主走査方向Xに対して所定角度傾斜したスリットSU2が等間隔で形成されている。そして、第2の位置検出パターン列PT2も、同じ傾斜角度だけ傾斜したパターン列として構成される。ここでは、傾斜角度は主走査方向Xに対して−45度に定められている。
【0056】
露光位置を検出する場合、第1、第2の位置検出パターン列PT1、PT2が投影される。このとき、第1の測光領域AP1、第2の測光領域AP2それぞれにおいて、時系列的に連続であってガウス分布に相当する光量信号分布が得られ、トリガー信号が第1の測光領域AP1、第2の測光領域AP2それぞれから出力される。
【0057】
第1の測光領域AP1については、第1の実施形態と同様、主走査方向Xに沿った露光位置およびその補正値が算出される。一方、第2の測光領域AP2で検出される露光位置には、主走査方向X、副走査方向Yの位置ずれが含まれている。しかしながら、第1の執行領域AP2で求められた主走査方向Xの位置ずれを利用することにより、2軸のずれ量を求めることができる。
【0058】
図7は、ずれ量と測定値との関係を示した図である。主走査方向Xに関するずれ量をAとすると、パターン傾斜角度が45度であることから、副走査方向Yに関するずれ量はB−Aとなる。したがって、第2の測光領域AP2に対して算出される主走査方向Xの露光位置の値と、第1の測光領域AP1に対して算出される主走査方向Xの露光位置の値との差分(B−A)を取ることにより、X、Y2軸について露光位置を補正することができる。
【0059】
なお、第1の測光領域に応じた遮光部の領域においても、傾斜したスリットを形成し、傾斜した位置検出パターン列を投影することが可能である。この場合、それぞれの領域における2軸の露光位置から、ずれ量を求めればよい。
【符号の説明】
【0060】
10 露光装置
22 DMD(光変調素子アレイ)
27 位置算出部
28 位置検出部(測光部)
30 コントローラ(露光制御部)
40 遮光部
PD フォトセンサ