特許第6321392号(P6321392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321392
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】高温流体供給システム
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/00 20060101AFI20180423BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20180423BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   F26B21/00 F
   F25B30/02 Z
   F25B27/02 Q
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-26524(P2014-26524)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-152233(P2015-152233A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】横井 健治
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−026532(JP,U)
【文献】 特開昭62−162880(JP,A)
【文献】 特開2012−117783(JP,A)
【文献】 特開2013−068363(JP,A)
【文献】 特開2012−137201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 21/00
F25B 27/02
F25B 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された高温流体を利用する高温流体利用装置に高温流体を供給する高温流体供給システムにおいて、
吸熱用熱交換器によって受入流体から熱を回収し、前記高温流体よりも低温であって該吸熱用熱交換器を通過した受入流体とは異なる低温流体を放熱用熱交換器によって該低温流体よりも高い温度まで加熱することで該高温流体を得るヒートポンプと、
前記ヒートポンプで得られた高温流体を前記高温流体利用装置に向けて送る送り手段と、
前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報を取得する制御手段と、
前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を調整する調整手段とを備え、
前記制御手段前記受入流体の設定温度が設定され、前記情報として前記吸熱用熱交換器に供給される前の前記受入流体の温度を表す情報に基づいて前記調整手段を制御し、該調整手段に、前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を調整させ、該受入流体の温度を該設定温度に収束させるものであることを特徴とする高温流体供給システム。
【請求項2】
供給された高温流体を利用する高温流体利用装置に高温流体を供給する高温流体供給システムにおいて、
吸熱用熱交換器によって受入流体から熱を回収し、前記高温流体よりも低温であって該吸熱用熱交換器を通過した受入流体とは異なる低温流体を放熱用熱交換器によって該低温流体よりも高い温度まで加熱することで該高温流体を得るヒートポンプと、
前記ヒートポンプで得られた高温流体を前記高温流体利用装置に向けて送る送り手段と、
前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報を取得する制御手段と、
前記放熱用熱交換器の放熱能力を調整する調整手段とを備え、
前記制御手段前記受入流体の設定温度が設定され、前記情報として前記吸熱用熱交換器に供給される前の前記受入流体の温度を表す情報に基づいて前記調整手段を制御し、該調整手段に、前記放熱能力を調整させ、該受入流体の温度を該設定温度に収束させるものであることを特徴とする高温流体供給システム。
【請求項3】
熱源体から排出され、前記受入流体よりも温度が高い排出流体と、前記吸熱用熱交換器を通過した流体とが流れ込み、流れ込んだ流体を貯留しておく貯留手段を備え、
前記吸熱用熱交換器が、前記受入流体として前記貯留手段に貯留されている流体から熱を回収するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の高温流体供給システム。
【請求項4】
前記送り手段によって前記高温流体利用装置に向けて送られる高温流体に、外気を混合する混合手段と、
前記混合手段によって外気が混合された高温流体の温度を調整する温度調整手段とを備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の高温流体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高温流体利用装置に高温流体を供給する高温流体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の施設などから排出される廃温水の廃熱などを熱源として、ヒートポンプによって外気等の流体を加熱し、この加熱した高温流体を、乾燥機等の高温流体利用装置に供給する高温流体供給システムが採用されている。以下、高温流体になる前の流体を低温流体と称することがある。高温流体供給システムでは、例えば、工場の工作機械等の装置を熱源体として、この熱源体から熱を回収した廃温水等の流体が、ヒートポンプに受け入れられる。以下、ヒートポンプが受け入れる流体を、受入流体と称することがある。ヒートポンプは、吸熱用熱交換器と放熱用熱交換器を備えたものである。ヒートポンプでは、吸熱用熱交換器によって、受入流体と、二酸化炭素等の冷媒との間で熱交換され、受入流体の熱が冷媒に回収される。受入流体は、吸熱用熱交換器を通過する間に熱が回収され温度低下する。以下、吸熱用熱交換器を通過した流体を、通過流体と称することがある。温度低下した通過流体は、熱源体に送られ熱源体の冷却等に用いられる。以下、吸熱用熱交換器が、受入流体から熱を回収する能力を冷却能力と称することがある。受入流体から熱を回収した冷媒は、圧縮機によって圧縮されることで高圧高温になり、放熱用熱交換器に送られる。放熱用熱交換機では、外気等の流体と高圧高温の冷媒との間で熱交換されることで流体が加熱され、高温流体が得られる。以下、放熱用熱交換器が放熱する能力を放熱能力と称することがあり、放熱用熱交換器が放熱する熱量を放熱量と称することがある。高温流体は、乾燥機等に供給され、被乾燥物を乾燥させる熱風等に利用される。
【0003】
ここで、放熱能力は、理論的には、冷却能力と、ヒートポンプの圧縮機の消費電力との和になる。一般的に、乾燥機等に供給される高温流体の流量や設定温度は一定に維持されるため、必要な放熱能力もほぼ一定になる。この結果、冷却能力と、ヒートポンプの圧縮機の消費電力もほぼ一定になる。一方、熱源体から生じる熱量は、季節変動や熱源体となる装置等の稼働状況によって変動し、これに伴い受入流体が熱源体から回収できる熱量も変動する。受入流体が熱源体から回収した熱量が少ない場合は、吸熱用熱交換器を通過した通過流体の温度が低下していき、通過流体が水などの流体の場合、通過流体は最終的には凍結温度に達して凍結してしまう。これによって、高温流体供給システムが異常停止することになる。このため、受入流体が熱源体から回収できる熱量が少ない場合は、受入流体が別の熱源体からも熱を回収できるように構成した高温流体供給システムが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
特許文献1に記載された高温流体供給システムでは、ヒートポンプの吸熱用熱交換器に接続し流体が循環する循環路と、この循環路からそれぞれ分岐した、第1分岐循環路と第2分岐循環路を備えている。第1分岐循環路は、第1の熱源体から熱を回収する冷却装置に接続するものであり、第2分岐循環路は、第2の熱源体から熱を回収する冷却装置に接続するものである。また、循環路には、通過流体の温度を測定する温度センサが設けられている。特許文献1に記載された高温流体供給システムでは、通常は、循環路から第1分岐循環路に流れる流体によって第1の熱源体から熱を回収する。季節変動や第1の熱源体における稼働率の低下等により第1の熱源体から回収した熱量が少なく、温度センサで測定した通過流体の温度が設定温度以下に低下した場合は、第2の熱源体からも熱を回収する。これによって、第1の熱源体から回収した熱量の不足分を、第2の熱源体から熱を回収することによって補うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−68363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された高温流体供給システムでは、第1の熱源体の他に第2の熱源体が必要になるが、工場などの施設においては、第2の熱源体を確保できない場合があり汎用性に劣る。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、汎用性に優れ、吸熱用熱交換器を流れる流体の熱量の変動に対応することができる高温流体供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明のうちの一の高温流体供給システムは、
供給された高温流体を利用する高温流体利用装置に高温流体を供給する高温流体供給システムにおいて、
吸熱用熱交換器によって受入流体から熱を回収し、前記高温流体よりも低温であって該吸熱用熱交換器を通過した受入流体とは異なる低温流体を放熱用熱交換器によって該低温流体よりも高い温度まで加熱することで該高温流体を得るヒートポンプと、
前記ヒートポンプで得られた高温流体を前記高温流体利用装置に向けて送る送り手段と、
前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報を取得する制御手段と、
前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を調整する調整手段とを備え、
前記制御手段は、前記受入流体の設定温度が設定され、前記情報として前記吸熱用熱交換器に供給される前の前記受入流体の温度を表す情報に基づいて前記調整手段を制御し、該調整手段に、前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を調整させ、該受入流体の温度を該設定温度に収束させるものであることを特徴とする。
上記目的を解決する本発明のうちの他の高温流体供給システムは、
供給された高温流体を利用する高温流体利用装置に高温流体を供給する高温流体供給システムにおいて、
吸熱用熱交換器によって受入流体から熱を回収し、前記高温流体よりも低温であって該吸熱用熱交換器を通過した受入流体とは異なる低温流体を放熱用熱交換器によって該低温流体よりも高い温度まで加熱することで該高温流体を得るヒートポンプと、
前記ヒートポンプで得られた高温流体を前記高温流体利用装置に向けて送る送り手段と、
前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報を取得する制御手段と、
前記放熱用熱交換器の放熱能力を調整する調整手段とを備え、
前記制御手段は、前記受入流体の設定温度が設定され、前記情報として前記吸熱用熱交換器に供給される前の前記受入流体の温度を表す情報に基づいて前記調整手段を制御し、該調整手段に、前記放熱能力を調整させ、該受入流体の温度を該設定温度に収束させるものであることを特徴とする。
また、供給された高温流体を利用する高温流体利用装置に高温流体を供給する高温流体供給システムにおいて、
吸熱用熱交換器によって受入流体から熱を回収し、前記高温流体よりも低温の低温流体を放熱用熱交換器によって該低温流体よりも高い温度まで加熱することで該高温流体を得るヒートポンプと、
前記ヒートポンプで得られた高温流体を高温流体利用装置に向けて送る送り手段と、
前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報を取得する制御手段と、
前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を調整する調整手段とを備え、
前記制御手段が、前記情報に基づいて前記調整手段を制御し、該調整手段に、前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を調整させるものであることを特徴とする第1の高温流体供給システムであってもよい
【0009】
上記第1の高温流体供給システムでは、前記制御手段は、前記情報が前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度低下に関する情報である場合には、前記調整手段に、前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を減少させるものであってもよい。また、前記吸熱用熱交換器に流れる流体は、該吸熱用熱交換器に受け入れられる前記受入流体、および該吸熱用熱交換器を通過した流体を含むものである。
【0010】
上記第1の高温流体供給システムによれば、前記制御手段が、前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報に基づいて、前記調整手段に、前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を調整させる。このため、前記吸熱用熱交換器に流れる流体の熱量に応じて、前記放熱用熱交換器が放熱する熱量と、該吸熱用熱交換器が該吸熱用熱交換器に流れる流体から回収する熱量を調整することができる。これにより、前記吸熱用熱交換器に流れる流体の熱量の変動に対応することができる。例えば、前記制御手段は、前記情報が前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度低下に関する情報である場合には、前記調整手段に、前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を減少させる。こうすることで、前記吸熱用熱交換器に流れる流体から回収する熱量が減少し、該吸熱用熱交換器に流れる流体が凍結温度に達してしまうことを防ぐことができる。また、前記制御手段は、前記情報が前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度上昇に関する情報である場合には、前記調整手段に、前記放熱用熱交換器に流れる流体の量を増加させてもよい。こうすることで、前記吸熱用熱交換器に流れる流体から回収する熱量が増加し、例えば受入流体が熱源体から回収した熱を無駄にすることなく活用できる。さらに、上記第1の高温流体供給システムは、前記受入流体の熱量を調整するものではないため、前記受入流体が熱を回収する熱源体が複数必要になることもなく、汎用性にも優れたものである。
【0011】
また、供給された高温流体を利用する高温流体利用装置に高温流体を供給する高温流体供給システムにおいて、
吸熱用熱交換器によって受入流体から熱を回収し、前記高温流体よりも低温の低温流体を放熱用熱交換器によって該低温流体よりも高い温度まで加熱することで該高温流体を得るヒートポンプと、
前記ヒートポンプで得られた高温流体を前記高温流体利用装置に向けて送る送り手段と、
前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報を取得する制御手段と、
前記放熱用熱交換器の放熱能力を調整する調整手段とを備え、
前記制御手段が、前記情報に基づいて前記調整手段を制御し、該調整手段に、前記放熱能力を調整させるものであることを特徴とする第2の高温流体供給システムであってもよい
【0012】
上記第2の高温流体供給システムでは、前記制御手段は、前記情報が前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度低下に関する情報である場合には、前記調整手段に、前記放熱能力を低下させるものであってもよい。また、前記放熱能力は、前記ヒートポンプで得られる前記高温流体の、該ヒートポンプにおける温度設定を変更することで調整してもよい。また、前記吸熱用熱交換器に流れる流体は、該吸熱用熱交換器に受け入れられる前記受入流体、および該吸熱用熱交換器を通過した流体を含むものである。
【0013】
上記第2の高温流体供給システムによれば、前記制御手段が、前記吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報に基づいて、前記調整手段に、前記放熱用熱交換器の放熱能力を調整させる。このため、前記吸熱用熱交換器に流れる流体の熱量に応じて、前記放熱用熱交換器が放熱する熱量と、該吸熱用熱交換器が該吸熱用熱交換器に流れる流体から回収する熱量を調整することができる。これにより、前記吸熱用熱交換器に流れる流体の熱量の変動に対応することができ、該吸熱用熱交換器に流れる流体の凍結等を防ぐことができる。また、の第2の高温流体供給システムも、前記受入流体の熱量を調整するものではないため、前記受入流体が熱を回収する熱源体が複数必要になることもなく、汎用性にも優れたものである。さらに、前記放熱用熱交換器から流出する流体の温度の設定値を変更することで、容易に前記放熱能力を調整することができ、部品点数の増加を抑えることもできる。
【0014】
また、上記第1の高温流体供給システム、および上記第2の高温流体供給システムにおいて、前記制御手段が、前記情報として前記受入流体の温度に基づいて前記調整手段を制御するものであってもよい。
【0015】
こうすることで、前記受入流体の温度に基づき、前記放熱用熱交換器が放熱する熱量、および前記吸熱用熱交換器が該吸熱用熱交換器に流れる流体から回収する熱量の調整が容易になる。
【0016】
さらに、上記第1の高温流体供給システム、および上記第2の高温流体供給システムにおいて、前記制御手段が、前記情報として、前記受入流体の温度および該受入流体の流量に基づいて前記調整手段を制御するものであることが好ましい。
【0017】
前記制御手段が、前記受入流体の温度および該受入流体の流量に基づいて前記調整手段を制御することで、該受入流体の熱量に基づき該調整手段を制御することができ、前記放熱用熱交換器が放熱する熱量、および前記吸熱用熱交換器に流れる流体から回収する熱量の調整を正確に行うことができる。
【0018】
また、上記第1の高温流体供給システム、および上記第2の高温流体供給システムにおいて、前記制御手段が、前記情報として前記吸熱用熱交換器を通過した流体の温度に基づいて前記調整手段を制御するものであってもよい。
【0019】
この場合には、前記吸熱用熱交換器を通過した流体の温度に基づいて前記受入流体の温度を推定し、前記制御手段が、前記調整手段を制御してもよい。
【0020】
さらに、上記第1の高温流体供給システム、および上記第2の高温流体供給システムにおいて、前記制御手段が、前記情報として、前記吸熱用熱交換器を通過した通過流体の温度および該通過流体の流量に基づいて前記調整手段を制御するものであってもよい。
【0021】
この場合には、前記通過流体の温度および該通過流体の流量に基づいて、前記受入流体の温度および該受入流体の流量を推定し、前記制御手段が、前記調整手段を制御してもよい。
【0022】
また、上述した各高温流体供給システムにおいて、熱源体から排出され、前記受入流体よりも温度が高い排出流体と、前記吸熱用熱交換器を通過した流体とが流れ込み、流れ込んだ流体を貯留しておく貯留手段を備え、
前記吸熱用熱交換器が、前記受入流体として前記貯留手段に貯留されている流体から熱を回収するものであることが好ましい。
【0023】
ここで、前記吸熱用熱交換器に流れる流体は、前記貯留手段に貯留されている流体および前記排出流体を含むものである。また、前記貯留手段と前記熱源体とを経由する循環経路を備えたものであってもよい。前記循環経路を備えた場合には、該循環経路を流れる流体も、前記吸熱用熱交換器に流れる流体に含まれる。さらに、前記情報は、前記熱源体の稼働率であってもよい。
【0024】
こうすることで、前記受入流体の急激な温度変化が抑えられ、該受入流体の温度を安定させることができる。
【0025】
さらに、上述した各高温流体供給システムにおいて、前記送り手段によって前記高温流体利用装置に向けて送られる高温流体に、外気を混合する混合手段と、
前記混合手段によって外気が混合された高温流体の温度を調整する温度調整手段とを備えたものであってもよい。
【0026】
こうすることで、前記混合手段によって、前記高温流体利用装置に向けて送られる高温流体の流量の不足分を外気で補うことができる。また、前記温度調整手段によって、前記混合手段により外気が混合された高温流体を、前記高温流体利用装置に必要な温度に調整することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、汎用性に優れ、受入流体の熱量の変動に対応することができる高温流体供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の高温流体供給システムにおける第1実施形態を示す系統図である。
図2図1に示すヒートポンプの構造を示す系統図である。
図3】本発明の第1の高温流体供給システムにおける、放熱用熱交換器に流れる外気の流量を制御するための回路構成の一例を表すブロック図である。
図4】本発明の第1の高温流体供給システムにおける第2実施形態を示す系統図である。
図5】本発明の第1の高温流体供給システムにおける第3実施形態を示す系統図である。
図6】本発明の第2の高温流体供給システムにおける一実施形態を示す系統図である。
図7】本発明の第2の高温流体供給システムにおける、放熱用熱交換器の放熱能力を制御するための回路構成の一例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である高温流体供給システムは、工場における工作機械等の装置を熱源体として、この熱源体から回収した熱を用いて、ヒートポンプによって外気等の流体を加熱し、加熱した高温流体を、乾燥機等の高温流体利用装置に送るものである。本実施形態では、熱源体から熱を回収する流体が廃温水等の液体であり、高温流体利用装置に供給する流体が気体である場合を例に挙げて説明するが、熱源体から熱を回収する流体が気体であってもよく、高温流体利用装置に供給する流体が液体であってもよい。
【0030】
図1は、本発明の第1の高温流体供給システムにおける第1実施形態を示す系統図である。
【0031】
図1に示すように、第1の高温流体供給システム10は、ヒートポンプ2と、タンク3と、ダンパ41と、第1ファン51と、第1外気取入部61と、第2外気取入部62と、ヒータ71を備えている。ヒートポンプ2は、吸熱用熱交換器21と、放熱用熱交換器22を有している。ヒートポンプ2の詳しい説明は後述する。タンク3は、水を貯留するものであり、タンク3から吸熱用熱交換器21に接続した経路81と、吸熱用熱交換器21からタンク3に接続した経路82が設けられている。経路81は、工作機械73を経由するものであり、ポンプPが設けられている。
【0032】
タンク3に貯留されている水は、ポンプPによって経路81を通って工作機械73に供給される。工作機械73に供給された水は、工作機械73の冷却に用いられることによって工作機械73の熱を回収し、工作機械73から排出される。以下、工作機械73から排出された水を、排出水と称することがある。排出水は、経路81を通って吸熱用熱交換器21に受け入れられる。工作機械73は、本発明における熱源体の一例に相当し、排出水は、本発明における排出流体の一例に相当する。
【0033】
吸熱用熱交換器21に受け入れられた水は、後述するように吸熱用熱交換器21によって熱が回収され、吸熱用熱交換器21を通過した水が、経路82を通ってタンク3に流れ込む。以下、吸熱用熱交換器21に受け入れられる水を受入水と称することがあり、吸熱用熱交換器21を通過した水を通過水と称することがある。経路81における吸熱用熱交換器21寄りの部分には、受入水の温度を測定する温度センサTが設けられている。また、図における一点鎖線で示すように、経路82に温度センサTを設け、通過水の温度を測定する態様を採用してもよい。受入水は、本発明における受入流体の一例に相当し、通過水は、本発明における通過流体の一例に相当する。また、受入水、通過水、およびタンク3に貯留されている水は、本発明における、吸熱用熱交換器に流れる流体に含まれる。
【0034】
第1外気取入部61は、第1外気取入管611によって放熱用熱交換器22に接続され、第2外気取入部62は、第2外気取入管621によってヒータ71に接続されている。放熱用熱交換器22は、第1供給路84によって第2外気取入管621に接続されている。第1供給路84には、コントロールモータCMを有するダンパ41と、第1ファン51が設けられている。ダンパ41は、コントロールモータCMによってその開度が調整されるものである。第1ファン51の作用によって、第1外気取入部61から外気が取り入れられ、取り入れられた外気は、第1外気取入管611を流れて放熱用熱交換器22に供給される。ヒータ71は、第2供給路85によって図示しない乾燥機に接続されている。第2供給路85には、第2ファン52が設けられている。
【0035】
図2は、図1に示すヒートポンプの構造を示す系統図である。
【0036】
図2に示すように、ヒートポンプ2は、放熱用熱交換器22から吸熱用熱交換器21に接続する第1循環路23と、第1循環路23に設けられた膨張弁24と、吸熱用熱交換器21から放熱用熱交換器22に接続する第2循環路25と、第2循環路25に設けられた圧縮機26を備えている。本実施形態のヒートポンプ2では、冷媒として二酸化炭素を用いている。なお、冷媒は二酸化炭素に限られるものではなく、フロン、水、空気等の、冷媒として公知の媒体を冷媒に用いることができる。図では太い矢印で示すように、冷媒は、放熱用熱交換器22から第1循環路23を通って吸熱用熱交換器21に流れ、吸熱用熱交換器21から第2循環路25を通って放熱用熱交換器22に流れる。また、前述したように、放熱用熱交換器22には、第1外気取入部61(図1参照)から取入れられた外気が供給され、吸熱用熱交換器21には、受入水が経路81(図1参照)を流れて受け入れられる。受入水は、吸熱用熱交換器21によって冷媒と熱交換され、受入水の熱が冷媒に回収される。これによって、例えば、温度が30℃程度の受入水は、温度が25℃程度まで低下し、吸熱用熱交換器21を通過した通過水は、経路82を通ってタンク3に流れ込む(図1参照)。なお、上記では吸熱用熱交換器21を流れる冷媒と受入水の流れ方向が並流として説明したが、冷媒と受入水の流れ方向が向流であっても構わない。
【0037】
一方、吸熱用熱交換器21によって、受入水から熱を回収した冷媒は、第2循環路25の圧縮機26によって圧縮されることで高圧高温のガスになり、放熱用熱交換器22に流れる。放熱用熱交換器22に供給された外気は、放熱用熱交換器22によって高圧高温の冷媒と熱交換されることで、後述するようにヒートポンプ2から流出する流体の温度として設定した温度(例えば100℃)まで加熱される。すなわち、第1外気取入部61から取り入れられた外気は、本発明における低温流体の一例に相当し、放熱用熱交換器22によって加熱された外気は、本発明における高温流体の一例に相当する。以下、放熱用熱交換器22によって加熱された外気を、高温気体と称することがある。また、放熱用熱交換器22において放熱した冷媒は、第1循環路23を通って膨張弁24に流れる。冷媒が膨張弁24を通過すると、冷媒は断熱膨張することで温度が低下し低温の液体状態になる。低温の液体状態になった冷媒は、吸熱用熱交換器21に流れる。なお、図2は、ヒートポンプ2の冷媒が関る要部の構造を模式的に示したものであり、この制御における構成は不図示としているが、ヒートポンプ2から流出する高温気体の温度に関する情報を用い、この高温気体が目標とする設定温度となるように制御する構成もヒートポンプ2には備えられているものである。
【0038】
図1に示すように、高温気体は、第1ファン51によって、放熱用熱交換器22から第1供給路84を通り、第2外気取入管621に送られる。すなわち、高温気体は、第1ファン51によって、後述する高温流体利用装置としての乾燥機に向けて送られるものであり、第1ファン51が、本発明における送り手段の一例に相当する。高温気体は、第1供給路84を流れる流量がダンパ41によって調整され、これによって放熱用熱交換器22に流れる外気の流量が調整される。すなわち、ダンパ41は、本発明における調整手段の一例に相当する。また、図における一点鎖線で示すように、第1ファン51にインバータ装置INVを設け、このインバータ装置INVによって周波数を変え第1ファン51の回転数を調整することで、放熱用熱交換器22に流れる外気の流量を調整する態様を採用してもよい。この態様の場合には、第1ファン51が、本発明における調整手段の一例に相当する。
【0039】
第2外気取入管621では、送られてきた高温気体に、第2外気取入部62から取入れられた外気が混合される。すなわち、第2外気取入部62と第2外気取入管621は、本発明における混合手段の一例に相当する。外気が混合された高温気体は、ヒータ71に供給される。ヒータ71に供給された高温気体は、ヒータ71によって所定の温度まで加熱され、この加熱された高温気体が第2ファン52によって第2供給路85を通って不図示の乾燥機に供給される。乾燥機では、供給された高温気体が、被乾燥物を乾燥させる熱風に用いられる。すなわち、ヒータ71が、本発明における温度調整手段の一例に相当し、乾燥機が、本発明における高温流体利用装置の一例に相当する。
【0040】
次いで、放熱用熱交換器に流れる外気の流量の制御について説明する。
【0041】
図3は、本発明の第1の高温流体供給システムにおける、放熱用熱交換器に流れる外気の流量を制御するための回路構成の一例を表すブロック図である。
【0042】
本実施形態では、放熱用熱交換器22に流れる外気の流量を制御する制御手段として、汎用の調節計を用いた調節手段9を採用している。操作者からは調節手段9に安定運転を目的とした受入水の設定温度が事前に入力され、運転時には受入水の温度に関する情報が温度センサTなどから調節手段9に入力され、これらに基づき、例えばPID制御により、その出力信号が調節手段9からコントロールモータCMに出力され、ダンパ41の開度が変更される。PID制御の結果、受入水の実際の温度は設定温度に収束するように制御される。本実施形態では、受入水の温度が、本発明における、吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報の一例に相当する。
【0043】
調節手段9は、ダンパ制御回路91、温度センサTおよび操作部92それぞれに接続されている。なお、調節手段9は、内部にCPU(中央演算処理装置)とメモリ等を備えている。ダンパ制御回路91は、調節手段9からの指令に従い、ダンパ41のコントロールモータCMを用いてダンパ41の開度を制御する回路である。また、操作部92には、高温流体供給システム10の操作者による操作を受け付ける各種の操作子が設けられており、汎用の調節計には通常一体的に備えられている。
【0044】
続いて、放熱用熱交換器22に流れる外気の流量の制御動作を説明する。
【0045】
あらかじめ、ヒートポンプ2には、放熱用熱交換器22から乾燥機に向けて送られる高温気体の温度が設定されており、ヒートポンプ2から流出する高温気体が設定された温度になるように、ヒートポンプ2は制御される。より具体的には、ヒートポンプ2は、放熱用熱交換器22から流出する高温気体の温度を設定する設定器を備えており、高温気体の温度が設定器の温度となるように、放熱用熱交換器22の放熱量が制御され、放熱量に応じて必要とされる熱量が受入水から吸熱用熱交換器21により回収される。
【0046】
ここで受入水は、例えば以下に述べる工程を経るものである。高温流体供給システム10が稼働する前に、タンク3に貯留されている水が、経路81を通って工作機械73に供給される。工作機械73に供給された水は、工作機械73から熱を回収することで例えば温度が30℃程度に加熱され、経路81を通って受入水として放熱用熱交換器22に受け入れられる。
【0047】
本実施形態では、受入水の温度は、調節手段9に事前に適正な温度が設定されており、受入水の実際の温度がこの設定温度になるように制御されるものであり、具体的には以下に述べる動作による。
【0048】
まず、例えば、工作機械73の稼働率の低下等により受入水の温度が設定温度よりも低下すれば、調節手段9によりダンパ41の開度は、受入水の温度が低下する前よりは閉じる方向に動作される。これによりヒートポンプ2から流出する高温気体の流量が減少するので、放熱用熱交換器22の放熱量も減少し、この放熱量に応じて必要とされる吸熱用熱交換器21により回収される熱量も減少する。このため通過水の温度は上昇し、この温度上昇した通過水が工作機械73に利用されるので、工作機械73を経由した受入水の温度も上昇することになり、受入水の設定温度に近づくという制御動作となる。
【0049】
逆に、工作機械73の稼働率の上昇等により受入水の温度が設定温度よりも上昇すれば、調節手段9によりダンパ41の開度は、受入水の温度が上昇する前よりは開く方向に動作される。これによりヒートポンプ2から流出する高温気体の流量が増加するので、放熱用熱交換器22の放熱量も増加し、この放熱量に応じて必要とされる吸熱用熱交換器21により回収される熱量も増加する。このため通過水の温度は低下し、この温度低下した通過水が工作機械73に利用されるので、工作機械73を経由した受入水の温度も低下することになり、受入水の設定温度に近づくという制御動作となる。
【0050】
以上の動作が、図3におけるダンパ制御に関る制御あるいは動作となる。いずれにおいても、調節手段9による制御動作は、運転中は常時継続され、実際の受入水の温度が設定温度に収束するように制御される。また、第2外気取入部62から流入する外気の流量は、ヒートポンプ2から流出する高温気体の流量が減少すればおのずと増加し、逆に、高温流体の流量が増加すればおのずと減少する。なお、受入水の温度とダンパ41の開度とが一対一で定められたデータをあらかじめ試験的に求め、このデータに基づいてダンパ41の開度を制御する態様を採用することもできる。
【0051】
また、第1ファン51によって、放熱用熱交換器22に流れる外気の流量を調整する態様を採用した場合は、調節手段9には、ダンパ制御回路91に代えて、図3に一点鎖線で示すファン制御回路93が接続されている。ファン制御回路93は、調節手段9からの出力信号に従い、第1ファン51のインバータ装置INVを用いて第1ファン51の回転数を制御する回路である。
【0052】
上述のダンパ制御に関る動作と同様に、受入水の温度は、調節手段9に事前に適正な温度が設定されており、受入水の実際の温度がこの設定温度になるように、第1ファン51の回転数が制御されるものであり、具体的には以下に述べる動作による。
【0053】
例えば、受入水の温度が設定温度より低下すれば、調節手段9により、受入水の温度が低下する前よりは第1ファン51の回転数を減少する方向に動作される。これによりヒートポンプ2から流出する高温気体の流量が減少し、上述のダンパ制御に関る動作と同様に、受入水の設定温度に近づくという制御動作となる。逆に、受入水の温度が設定温度よりも上昇すれば、調節手段9により、受入水の温度が上昇する前よりは第1ファン51の回転数は増加する方向に動作される。これによりヒートポンプ2から流出する高温気体の流量が増加し、上述のダンパ制御に関る動作と同様に、受入水の設定温度に近づくという制御動作となる。以上の動作が、図3におけるファン制御に関る制御あるいは動作となる。
【0054】
上述した、放熱用熱交換器22に流れる外気の流量の制御によって、吸熱用熱交換器21に流れる受入水の熱量の変動に対応することができ、通過水が温度低下し過ぎて凍結温度に達してしまうことを防ぐことができる。また、受入水が工作機械73から回収した熱をヒートポンプ2から流出させる高温気体の増量という形で利用できるので、熱を無駄にすることなく利用することもできる。
【0055】
ダンパ41によって流量が調整された高温気体は、第1供給路84を通って第2外気取入管621に流れる。第2外気取入管621では、第2ファン52の作用によって第2外気取入部62から取入れられた外気が、高温気体に混合される。第1供給路84、第2外気取入管621および第2供給路85は密閉した経路であり、第2外気取入管621を通ってヒータ71に供給される、外気が混合された高温気体の流量は、第2ファン52によって一定に調整される。このため、受入水の温度が低下し放熱用熱交換器22を流れる外気の流量が減少すると、減少した分、第2外気取入管621で高温気体に混合される外気の流量が増加する。ヒータ71に供給される、外気が混合された高温気体の温度は、混合される外気の流量や温度によって変動するが、ヒータ71によって所定の温度まで加熱され、乾燥機に送られる。なお、高温気体に混合される外気の温度により、不図示の高温流体利用装置が必要とする風量より若干過剰、あるいは、若干不足となる場合があるため、微妙な調節を要する場合は、例えば、第2ファン52とヒータ71の間にあるダンパを用いて風量の微調整がなされる。
【0056】
次に、本発明における第1の高温流体供給システム10の他の実施形態について説明する。以下の他の実施形態についての説明では、図1に示す、高温流体供給システムの第1実施形態との相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0057】
図4は、本発明の第1の高温流体供給システムにおける第2実施形態を示す系統図である。図3も参照しつつ、図4を用いて第2実施形態の高温流体供給システム11について説明する。
【0058】
図4に示すように、高温流体供給システム11は、熱交換器74を備え、この熱交換器74とタンク3が循環路83によって接続されている。タンク3に貯留されている水は、ポンプPによって循環路83を流れ、熱交換器74に供給される。また、熱交換器74には、図示しない工作機械等の熱源体から排出された廃温水が供給される。熱交換器74では、循環路83を流れてきた水と廃温水との間で熱交換されることで、循環路83を流れてきた水に廃温水の熱が回収され、廃温水の熱を回収した水は循環路83を通ってタンク3に流れ込む。これによって、タンク3に貯留されている水は、工作機械等の熱源体から熱を回収することができる。なお、熱交換器74によって熱が回収された廃温水は、排水される。
【0059】
また、高温流体供給システム11では、経路82に温度センサTを設け、通過水の温度を測定する態様を採用している。上述のダンパ制御に関る動作の説明と同様に、通過水の温度は、調節手段9に事前に適正な温度が設定されており、通過水の実際の温度が設定温度に収束するように、ダンパ41の開度が制御されるものである。まず、第2外気取入部62は、第2外気取入管621によって第1供給路84に接続され、第2外気取入管621にダンパ41が設けられている。また、図1に示す第1ファン51は設けられておらず、第2ファン52が、本発明における送り手段の一例に相当する。第1供給路84と第2外気取入管621は密閉された経路であり、外気が混入された高温気体がヒータ71に供給される流量は第2ファン52によって一定に維持されている。そのため、第2外気取入部62から取り入れられる外気が増加すれば、一方のヒートポンプ2に流入する外気は減少する。これにより、第2外気取入管621を通って第1供給路84に供給される外気の流量が調整される。具体的には、通過水の温度が低下した場合は、ダンパ41の開度を大きくして第1供給路84に供給される外気の流量を増加させる。外気が混入された高温気体がヒータ71に供給される流量は一定に維持されているため、第2外気取入管621から第1供給路84に供給される外気の流量が増加した分、放熱用熱交換器22を流れる外気の流量が減少するので、吸熱用熱交換器21により回収される熱量も減少し、そのため通過水の温度は上昇し、設定温度に近づくことになる。逆に、通過水の温度が上昇した場合は、ダンパ41の開度を小さくして第1供給路84に供給される外気の流量を減少させることで、放熱用熱交換器22を流れる外気の流量が増加する。これらにより、第1実施形態の高温流体供給システム10と同様の効果を得ることができる。
【0060】
さらに、第2実施形態の高温流体供給システム11では、廃温水がヒートポンプ2に受け入れられることがなくなる。このため廃温水が汚れている場合でも吸熱用熱交換器21には常に清澄な温水が流れることになる。廃温水の汚れは熱交換器74に影響を与えることになるが、清掃が容易な構造の熱交換器74を適用することにより、運転上の運用を容易とすることが可能となる。さらに、不図示であるが、熱交換器74を並列に2系列設置し、片方の熱交換器74が汚れた場合、残る片方の熱交換器74に廃温水を流すように切り替えるなどして、清掃による運転の停止を生じさせない運転も可能となる。また、第2実施形態の高温流体供給システム11では、第1ファンを省略することで、設備コストの低減を図っている。
【0061】
図5は、本発明の第1の高温流体供給システムにおける第3実施形態を示す系統図である。図3も参照しつつ、図5を用いて第3実施形態の高温流体供給システム12について説明する。
【0062】
図5に示すように、第3実施形態の高温流体供給システム12では、第1供給路84にダンパ41が設けられている。また、第2外気取入部62は、第2外気取入管621によって第1供給路84に接続され、第2外気取入管621には、コントロールモータCMを有する第2ダンパ42が設けられている。タンク3には、ポンプを備え、チラー72と工作機械73を経由する循環路83が設けられている。工作機械73から排出された排出水は、循環路83を通ってタンク3に流れ込む。また、タンク3に貯留されている水は、ポンプPによって経路81を流れて吸熱用熱交換器21に受け入れられ、通過水が、経路82を通ってタンク3に流れ込む。タンク3は、本発明における貯留手段の一例に相当する。
【0063】
具体的な制御動作を述べれば、受入水の温度が設定温度よりも低下すれば、調節手段9により、受入水の温度が低下する前よりも、ダンパ41の開度は閉じる方向に動作され、第2ダンパ42の開度は開く方向に動作される。逆に、受入水の温度が設定温度よりも上昇すれば、調節手段9により、受入水の温度が上昇する前よりも、ダンパ41の開度は開く方向に動作され、第2ダンパ42の開度は閉じる方向に動作される。これらにより、第1実施形態の高温流体供給システム10と同様の効果を得ることができる。
【0064】
以上説明した第1の高温流体供給システム10,11,12によれば、受入水の熱量の変動に対応することができる。また、受入水の熱量を調整するものではないため、受入水が熱を回収する、工作機械等の熱源体が複数必要になることもなく、汎用性にも優れたものである。
【0065】
次に、本発明における第2の高温流体供給システムの実施形態について説明する。
【0066】
図6は、本発明の第2の高温流体供給システムにおける実施形態を示す系統図である。第2の高温流体供給システム13は、図1に示す第1の高温流体供給システム10における基本的な構成を採用している。このため、第1の高温流体供給システム10との相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0067】
図6に示すように、第2の高温流体供給システム13では、経路81に、温度センサTと流量センサFが設けられている。温度センサTによって受入水の温度を測定し、流量センサFによって受入水の流量を測定する。これらによって、受入水の熱量を算出することができる。また、図6の一点鎖線で示すように、温度センサTと流量センサFを経路82に設け、通過水の温度と流量に基づいて通過水の熱量を算出する態様を採用してもよい。なお、タンク3には、ポンプを備え、工作機械73を経由する循環路83が設けられている。
【0068】
第1供給路84には、第1ファン51が設けられ、図1に示す第1の高温流体供給システム10におけるダンパ41は設けられていない。第1供給路84と第2外気取入管621は密閉された経路であり、第1ファン51によって、第1外気取入部61から一定流量の外気が取り入れられ、乾燥機に向けて送られる。このため、放熱用熱交換器22を流れる外気の流量は一定に維持され、一定流量の高温気体が第1供給路84を通って第2外気取入管621に流れる。第2外気取入管621では、高温気体に、第2ファン52の作用によって第2外気取入部62から取り入れた外気が混合され、外気が混合された高温気体がヒータ71によって所定の温度まで加熱されて、第2供給路85を流れて乾燥機に送られる。
【0069】
図7は、本発明の第2の高温流体供給システムにおける、放熱用熱交換器の放熱能力を制御するための回路構成の一例を表すブロック図である。
【0070】
本実施形態では、制御手段として、プログラマブルロジックコントローラー(以下PLCと略す)90を用いている。なお、PLC90は、内部にCPUとメモリ等を備えている。PLC90には、温度センサT、流量センサF、操作部92、および設定器94が接続されている。また、PLC90には、事前に操作者により受入水の温度と流量に基づく演算式が入力されており、実際の受入水の状態を示すそれぞれの温度センサTおよび流量センサFからの入力信号を用いて演算が行われる。またPLC90には、この演算結果に対応する、高温気体の温度設定値が格納されている。
【0071】
演算の結果、PLC90から演算結果に対応する温度設定値がヒートポンプ2の設定器94に送られ、ヒートポンプ2はこの新たに入力された温度設定値に基づき高温気体が流出されることになる。具体的には、0℃を基準として実際の受入水の温度との温度差、及び流量に基づき熱量が演算され、その熱量が事前に設定された値より低下すれば、PLC90から、熱量が低下する前よりも低温側の設定温度が設定器94に出力される。設定器94は、新たな設定温度に基づき、放熱用熱交換器22の放熱能力を調整し、温度の低下した高温流体となるようにヒートポンプ2が制御される。これにより、高温流体の温度は低下するため、吸熱用熱交換器21で回収される熱量は減少し、通過水の温度は上昇することになる。
【0072】
逆に、PLC90で演算された熱量が事前に設定された値より上昇すれば、PLC90からは、熱量が上昇する前よりも高温側の設定温度が設定器94に出力される。設定器94は、新たな設定温度に基づき、放熱用熱交換器22の放熱能力を調整し、温度の上昇した高温流体となるようにヒートポンプ2が制御される。これにより、高温気体の温度は上昇するため、吸熱用熱交換器21で回収される熱量は増加し、通過水の温度は低下することになる。すなわち、受入水の熱量が、本発明における、吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報に相当する情報であり、設定器94が、本発明における調整手段の一例に相当する。
【0073】
いずれにおいても、PLC90による制御動作は、運転中は常時継続され、受入水の温度と流量により高温気体の設定温度が変更され、高温気体の実際の温度が設定温度に収束するように制御される。このような受入水の温度と流量に基づく熱量を用いることでも通過水の凍結を防ぎ、受入水の熱量が大きければ高温流体の温度を上昇させることで熱を無駄にすることなく利用することもできる。なお、一点鎖線で示すように、経路82に設けた温度センサTと流量センサFを用いて制御を行う場合も同様であり、0℃を基準として実際の通過水の温度との温度差、及び流量に基づき熱量が演算され、その熱量が事前に設定された値より低下あるいは上昇すると、PLC90から新たな設定温度が設定器に出力されて制御が行われる。この態様では、通過水の熱量が、本発明における、吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報に相当する。
【0074】
放熱用熱交換器22によって加熱された高温気体は、第1供給路84を通って第2外気取入管621に流れる。第2外気取入管621では、第2ファン52によって第2外気取入部62から取入れられた外気が、高温気体に混合される。高温気体の温度は、上述した、放熱用熱交換器22の放熱能力の制御によって変動する。このため、第2外気取入管621を通ってヒータ71に供給される、外気が混合された高温気体の温度も変動するが、ヒータ71によって所定の温度まで加熱され、乾燥機に送られる。なお、上記では受入水あるいは通過水の温度と流量によりヒートポンプ2の設定器94の設定温度を調整する態様を例にあげて説明したが、単に受入水あるいは通過水の温度に基づきヒートポンプ2の設定器94の設定温度を調整してもよい。
【0075】
以上説明した第2の高温流体供給システム13によっても、受入水の熱量の変動に対応することができる。また、受入水の熱量を調整するものではないため、受入水が熱を回収する工作機械等の熱源体が複数必要になることもなく、汎用性にも優れたものである。さらに、ヒートポンプ2の設定器94を調整することのみで行えるため、設備上の部品点数の増加を抑えることができる。
【0076】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上述の実施形態では、吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報として、受入水の温度や熱量、あるいは通過水の温度や熱量を用いているが、タンク3に貯留されている水や循環路83を流れている水の温度や熱量を、吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報に用いてもよい。また、工作機械等の熱源体の稼働率に基づき、受入水の温度等を推定することで、熱源体の稼働率を、吸熱用熱交換器に流れる流体の温度に関する情報として用いることもできる。さらに、上述の実施形態では、圧縮機26を有する、いわゆる蒸気圧縮式のヒートポンプを採用しているが、いわゆる、吸収式や吸着式、あるいは熱電子式等のヒートポンプを採用してもよい。
【0077】
なお、以上説明した第1の高温流体供給システムの各実施形態や第2の高温流体供給システムの実施形態の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態に適用してもよい。例えば、第1の高温流体供給システム10,11,12における、放熱用熱交換器22に流れる外気の流量の調整と、第2の高温流体供給システム13における、ヒートポンプ2の設定器94の設定温度の調整とを、併用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10,11,12 第1の高温流体供給システム
13 第2の高温流体供給システム
2 ヒートポンプ
21 吸熱用熱交換器
22 放熱用熱交換器
24 膨張弁
26 圧縮機
3 タンク
41 ダンパ
51 第1ファン
52 第2ファン
62 第2外気取入部
621 第2外気取入管
71 ヒータ
73 工作機械
9 調節手段
90 PLC
94 設定器
F 流量センサ
T 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7