特許第6321398号(P6321398)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6321398-冷凍倉庫用低露点除湿装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321398
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】冷凍倉庫用低露点除湿装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20180423BHJP
   F25D 21/04 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B01D53/26 220
   F25D21/04 N
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-30388(P2014-30388)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155081(P2015-155081A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】金 偉力
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−166124(JP,A)
【文献】 特表2012−525954(JP,A)
【文献】 特開2001−179036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26−53/28
F25D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気吸着剤の担持されたデシカントロータを有し、前記デシカントロータの回転方向に対し処理ゾーン、再生ゾーン、パージゾーンの順で3つのゾーンに分割し、前記処理ゾーンとパージゾーンに冷蔵倉庫内からの空気を通し、前記パージゾーンを通過した空気を前記冷蔵倉庫内からの空気に戻し、再生ヒータを通過して加熱された外気を前記再生ゾーンに通して外気に排気し、前記処理ゾーンを通過した空気を前記冷蔵倉庫内に戻すようにし、前記冷蔵倉庫内からの空気と前記冷蔵倉庫内に戻す空気とを顕熱交換するようにした除湿装置。
【請求項2】
処理送風機入口温度を計測する温度検出手段を設け、前記処理送風機入口温度が処理送風機使用温度域となるように、処理風量とパージ風量を調節するようにした請求項記載の除湿装置。
【請求項3】
前記パージゾーンを通過する空気の風量を前記処理ゾーンを通過した空気の風量の1/2〜1/10とした請求項1記載の除湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば冷蔵倉庫や冷凍倉庫などに用いられる除湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵倉庫や冷凍倉庫あるいは冷蔵庫や冷凍庫は一般にフロンを使用した冷凍サイクルが用いられ、冷蔵倉庫用の冷凍サイクルでは最近は一部のものにあってはアンモニアを使用した冷凍サイクルが用いられている。
【0003】
外気の露点よりも冷蔵倉庫内の温度が低いと、運転中にエバポレータ(蒸発器)に霜が付着する。霜が付着すると熱交換効率が低下し、甚だしい場合はエバポレータの熱交換器が完全に霜で塞がれ、空気の流通ができなくなる場合がある。
【0004】
このため、特定の周期で冷凍機の運転を停止し、エバポレータに温風を通して付着した霜を融かすようにしている。
【0005】
このようなものは、霜の解凍中は冷凍機の運転が停止されるため冷凍食品など冷凍機の運転を停止すると保存物の品質が低下するものを保管している冷蔵倉庫の場合は問題があった。
【0006】
このため1台の冷凍機にエバポレータを2台設け、2台のエバポレータを交互に運転させて、交互に霜を融かすようにしたものがある。このようなものは、冷凍機を停止させることなく霜取りを行うことができるがエバポレータを2台設けるために価格が高くなり、エバポレータを2台設置するスペースが必要であるという問題点がある。
【0007】
エバポレータに霜が付着するということは、冷凍機に潜熱負荷が掛かっているということであり、エネルギーが無駄に消費される。つまり、霜が発生するためにエバポレータで水の凝縮熱と凍結熱が発生する。日本の気象条件であると、この潜熱負荷は冷凍機の消費エネルギーの半分近くにもなることがしばしばある。さらに、霜の熱伝導率が低いためエバポレータの熱交換効率が悪くなるという問題もある。
【0008】
このエバポレータに空気中の水分が霜として着霜することを防止する技術として、特許文献1に開示された技術のように、デシカントロータを用いて空気中の水分を吸着するもので、水分脱着の熱源として冷凍機の廃熱を利用してエネルギー消費の少ない除湿装置を提供するものが発明された。
【0009】
また特許文献2に開示されたものは、特許文献1と同様にエバポレータに空気中の水分が霜として着霜することを防止する技術として、水分を吸着するロータを使用するもので、水分吸着ロータの吸着剤細孔径を調整し、細孔内の水分が凍結しない除湿装置を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−179036号公報
【特許文献2】WO2008−084573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示されたものは、デシカントロータによって蒸発器に入る前の空気中の水分を吸着し、蒸発器に霜が付くのを抑制できるのであるが、デシカントロータの凍結ついて言及した記述が無く、送風機の耐低温性に関する技術も開示されていない。
【0012】
特許文献2に開示されたものは、水分吸着ロータの吸着剤細孔径を調整していないデシカントロータを使用する技術は開示されていない。また、送風機の耐低温性に関する技術も開示されていない。
【0013】
つまり両特許文献には、どのようなデシカントロータを使用してもロータ自体が凍結することなく、冷蔵倉庫や冷凍倉庫に採用可能なエネルギー消費の少ない除湿装置について開示がない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本件発明は以上のような課題を解決するため、冷蔵倉庫や冷凍倉庫からの空気を全量循環できるように、デシカントロータのパージ空気を除湿機処理入口へ全量戻すことを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の除湿装置は上記の如く構成したので、冷蔵倉庫内の空気をデシカントロータの処理(吸着)ゾーンに通し全量冷蔵倉庫に戻すため、省エネルギーを達成しつつ、エバポレータ(蒸発器)への着霜を防止することが可能な除湿装置を提供することができる。
【0016】
また、デシカントロータのパージゾーンを通した空気を処理送風機の前に戻すため、倉庫業法施工規則で定められた冷蔵室の保管温度帯「C1級」(摂氏マイナス10度以下摂氏マイナス20度未満)以下の冷蔵倉庫からの被処理空気温度が上がり、処理送風機の使用できない温度以下となることも無く、デシカントロータが凍結することも無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の除湿装置の実施例1におけるフロー図である。
図2】本発明の除湿装置の実施例2におけるフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
冷蔵倉庫からの処理空気をデシカントロータの処理出口空気と熱交換する顕熱交換器を通して、処理ゾーン、再生ゾーン、パージゾーンに3分割したデシカントロータの処理ゾーンとパージゾーンを通して、パージゾーンを通した空気を処理空気に戻し、処理ゾーンから出た処理出口空気を前記顕熱交換器で処理空気と熱交換して冷蔵倉庫へ供給する。また、外気を再生ヒータで加熱し、デシカントロータの再生ゾーンを通してデシカントロータが吸着した水分を脱着後、外気へ排気するようにして、蒸発器への着霜を防止することが可能な除湿装置を提供することができた。
【実施例1】
【0019】
以下本発明の冷蔵倉庫用除湿装置の実施例について図に沿って詳細に説明する。図1は本発明の実施例1における除湿装置の空気の流れを示したフロー図である。
【0020】
図1において1はデシカントロータであり、処理ゾーン2とパージゾーン3と再生ゾーン4の3つのゾーンに分割し、デシカントロータ1の回転方向に対して処理ゾーン2、再生ゾーン4、パージゾーン3となるようにする。このデシカントロータ1はモータ(図示せず)によって回転する。
【0021】
冷蔵倉庫5内の処理空気は処理送風機11によって直交型顕熱交換器12を通して、デシカントロータ1の処理ゾーン2を通して乾燥空気となり、直交型顕熱交換器12で処理空気と熱交換され冷蔵倉庫5内へ戻る。
【0022】
処理送風機11を出た空気の一部は、デシカントロータ1のパージゾーン3を通して、直交型顕熱交換器12から出た処理空気と混合される。
【0023】
外気OAは再生送風機10によって再生ヒータ9を通して加熱され、デシカントロータ1の再生ゾーン4を通してデシカントロータ1に吸着された水分を脱着し外気へ排気される。
【0024】
このような構成にすることにより、パージゾーンを通して加熱された空気を冷蔵倉庫からの処理空気に戻すことで、特殊な耐低温性を有する処理送風機を使用する必要がなく、イニシャルコストを低減でき、デシカントロータの凍結も防止することが可能になる。また、冷蔵倉庫からの処理空気を全量冷蔵倉庫に戻すため、外気の冷蔵倉庫への侵入が発生しないため省エネルギーとなる。
【0025】
例えば、冷蔵倉庫5内の温度が摂氏マイナス30度(以降、温度は全て「摂氏」とする)でデシカントロータの再生温度が140度の場合、熱交換効率52.4%の直交型顕熱交換器12を使用して、顕熱交換器出口温度はマイナス13.2度となり、デシカントロータ1のパージゾーン3を出た温度42度の空気と混合されることにより空気温度がマイナス5.4度となる。なお、デシカントロータ1の処理ゾーン2入口温度はマイナス2.4度で露点温度マイナス30度、処理ゾーン2出口温度は2度で露点温度マイナス40度となり、直交型顕熱交換器12で冷蔵倉庫からの処理空気と熱交換され、冷蔵倉庫への供給空気温度はマイナス14.7度で露点温度マイナス40度となる。
【実施例2】
【0026】
図2は本発明の実施例2における除湿装置の空気の流れを示したフロー図である。実施例1と異なる点として、設置スペースの問題などで顕熱交換器12が設置できない場合の実施例である。他の構成は共通であるので、重複した説明は省く。
【0027】
冷蔵倉庫5内の処理空気は処理送風機11によって、デシカントロータ1の処理ゾーン2を通して乾燥空気となり、冷蔵倉庫5内へ戻る。処理送風機11を出た空気の一部は、デシカントロータ1のパージゾーン3を通して、冷蔵倉庫5から出た処理空気と混合されるが、その空気温度が処理送風機11の使用可能温度になるよう、パージゾーンのゾーン比を大きくするなどしてパージゾーンを通る空気の風量を多くする。なお、処理送風機入口に温度センサなどの温度検出手段を設けて、処理ゾーンとパージゾーンを通す風量比をダンパなどの風量調整手段で調整するようにしてなしてもよい。
【0028】
通常、パージゾーンを通過させる空気の風量は、処理ゾーンを通過する空気の風量の1/2〜1/10で良いが、望ましくは1/3〜1/6とする。表1に直径320mm、幅400mmのハニカムロータを使って、処理ゾーン入口温度マイナス20度、再生温度140度、再生空気湿度20g/kg、再生風量比(再生風量/処理風量)が1/6の場合のパージ風量が除湿性能に及ぼす影響の試験結果を示す。パージ風量比(パージ風量/処理風量)を1/2〜1/10にすることで処理ゾーン出口の露点温度がパージがない場合と比較して15度以上低くなり、1/3〜1/6にすることで20度以上低くなった。
【表1】
【0029】
除湿装置運転開始時にはダンパ6、7、8を閉じて運転を開始し、冷蔵倉庫内の氷点下の低温空気が直接処理送風機に通らないようにし、処理送風機入口温度が十分上がってからダンパ6、7、8を開くようにしてもよい。なお、実施例1でも同様の操作をなしてもよい。なお顕熱交換器12には、氷点下の空気が流れるが、冷蔵倉庫5から顕熱交換器12に入る温度よりも、冷蔵倉庫5に戻される空気の乾球温度が高く、露点温度が低いため、顕熱交換器12内で霜が発生することがない。
【0030】
以上のようにパージゾーンを通した空気全量を被処理空気と混合することにより、処理送風機へ供給される被処理空気の温度が上がるため、通常用いられる送風機の最低使用温度がマイナス10度程度なので、特殊な耐低温性を有する送風機を採用する必要がなく、デシカントロータの凍結を防止することも可能となる。また、冷蔵倉庫からの被処理空気を全量冷蔵倉庫に戻すため、外気を導入する必要がなく省エネルギーとなり、外気処理用のプレクーラも設置の必要がなくイニシャルコストの低減にもなる。一般に市販されている送風機の耐低温性は、日本の気象条件に合わせて設計されている。このため、屋内使用の一般的な送風機の場合はメーカの保証する最低温度がマイナス10度程度である。本発明は、このような一般的な送風機を使用でき、コストや納期に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は冷蔵倉庫や冷凍倉庫などの蒸発器の霜付を防止するエネルギー消費を低減した除湿装置を提供する。
【符号の説明】
【0032】
1 デシカントロータ
2 処理ゾーン
3 パージゾーン
4 再生ゾーン
5 冷蔵倉庫
6,7,8 ダンパ
9 再生ヒータ
10 再生送風機
11 処理送風機
12 直交型顕熱交換器
図1
図2