特許第6321410号(P6321410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321410携帯可能なバイブレーションメータ及び振動機構のバイブレーションを測定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321410
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】携帯可能なバイブレーションメータ及び振動機構のバイブレーションを測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   G01H17/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-50334(P2014-50334)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-178318(P2014-178318A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】13/800,705
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509233459
【氏名又は名称】フルークコーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Fluke Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール・リッチャー
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−038323(JP,A)
【文献】 実開昭60−098030(JP,U)
【文献】 特開2009−109339(JP,A)
【文献】 特開昭59−214721(JP,A)
【文献】 特開2009−281806(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/049436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00 − 17/00
G01M 13/00 − 13/04
G01M 99/00
G01L 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
振動機構に接触し、該振動機構の振動を電気信号に変換するように構成されたバイブレーションセンサーであって、ハウジング内にその少なくとも一部が含まれているバイブレーションセンサーと、
該バイブレーションセンサーに接触した除振装置であって、振動の一又はそれ以上の周波数を濾過するように構成された除振装置と、
前記バイブレーションセンサーに加えられた接触力に応答する力センサーからなる携帯バイブレーションメータであって、
該携帯バイブレーションメータが該バイブレーションセンサーのための複数の感度曲線を含み、
該携帯バイブレーションメータが該力センサーによって測定された接触力に基づく感度曲線のうち一つを選択し、振動測定決定時に選択された感度曲線を使用する携帯バイブレーションメータ。
【請求項2】
力センサーが感圧性電気抵抗器からなる前記請求項1に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項3】
力センサーがバイブレーションセンサーにほぼ面する第1の側面と、その第1の側面から離れて第1の側面に面する第2の側面を有し、
更に、接触力を力センサーに伝達するように構成されたプランジャーであって、力センサーの該第の側面にあるプランジャーと、
力センサーの該第の側面にあるパッドとからなる前記請求項1に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項4】
除振装置がバイブレーションセンサーの前側の第1の除振装置であり、更に、バイブレーションセンサーの後側の第2の除振装置を有する前記請求項1に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項5】
除振装置がゴムからなる前記請求項1に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項6】
バイブレーションセンサーの応答と力センサーの応答の組み合わせから調節されたバイブレーションセンサーの応答を決定する手段からなる前記請求項1に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項7】
調節されたバイブレーションセンサーの応答を決定する前記手段が参照テーブルとプロセッサーとそれらの組み合わせとからなる前記請求項6に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項8】
バイブレーションセンサーの応答と調節されたバイブレーションセンサーの応答のうちの少なくとも一つが線形化される前記請求項6に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項9】
ハウジングと、
振動機構に接触し、該振動機構の振動を電気信号に変換するように構成されたバイブレーションセンサーであって、ハウジング内にその少なくとも一部が含まれているバイブレーションセンサーと、
該バイブレーションセンサーに接触した除振装置であって、振動の一又はそれ以上の周波数を濾過するように構成された除振装置と、
前記バイブレーションセンサーに加えられた接触力に応答する力センサーからなる携帯バイブレーションメータであって、
該携帯バイブレーションメータが、前記バイブレーションセンサーの電気信号を使用して振動機構の振動と該バイブレーションセンサーのための選択された感度曲線を測定し、
該選択された感度曲線が前記力センサーによって測定された接触力に基づいて複数の感度曲線から選択される携帯バイブレーションメータ。
【請求項10】
前記除振装置がバイブレーションセンサーの前側の第1の除振装置であり、
更に、バイブレーションセンサーの後側に第2の除振装置を有する前記請求項9に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項11】
力センサーが感圧性電気抵抗器からなる前記請求項9に記載の携帯バイブレーションメータ。
【請求項12】
バイブレーションメータを用いて振動機構のバイブレーションを測定する方法であって、該方法が、
該振動機構に接触してバイブレーションセンサーにより振動機構のバイブレーションを感知することと、
バイブレーションセンサーによりバイブレーションセンサーの応答を生成することと、
バイブレーションセンサーと振動機構の間の接触力を測定することと、
該接触力に基づいてバイブレーションセンサーの応答を調整して調整されたバイブレーションセンサーの応答を発生することからなる方法であって、
前記バイブレーションセンサーの応答の調整が、
測定された接触力に基づいて該バイブレーションセンサーの複数の感度曲線のうち一つを選択することと、
該バイブレーションセンサーの応答調整時に選択された感度曲線を使用することを含む方法。
【請求項13】
更に、バイブレーションセンサーの応答を線形化して線形化された周波数応答を発生することからなる前記請求項12に記載の振動機構のバイブレーションを測定する方法。
【請求項14】
更に、調整されたバイブレーションセンサーの応答に基づいて振動の振幅を決定することからなる前記請求項13に記載の振動機構のバイブレーションを測定する方法。
【請求項15】
更に、調整されたバイブレーションセンサーの応答に基づいて振動の周波数を決定することからなる前記請求項12に記載の振動機構のバイブレーションを測定する方法。
【請求項16】
更に、バイブレーションセンサーに接触した除振装置を用いて振動の一又はそれ以上の周波数を濾過することからなる前記請求項12に記載の振動機構のバイブレーションを測定する方法。
【請求項17】
除振装置がバイブレーションセンサーの前側の第1の除振装置と、バイブレーションセンサーの後側の第2の除振装置からなる前記請求項16に記載の振動機構のバイブレーションを測定する方法。
【請求項18】
バイブレーションセンサーと振動機構の間の接触力を前記測定することが力センサーによって行われる前記請求項12に記載の振動機構のバイブレーションを測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、バイブレーションメータ及びそれに関連する振動を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動は機械装置を設計したり、試験したり、保守するときに重要な要件となることがある。たとえば、相当大きな振動により、機械装置が不十分な設計であること、又は、妨害されて停止してしまうことを示すことがある。振動機構の予測しない周波数ピークの存在がサブアセンブリの固有振動数の間で非線形相互作用を示すことがあり、それは機械装置の早期損傷の原因となることがある。ある種の場合においては、振動振幅の増加を検出したときが機器メンテナンス及び/又はサービスを開始するきっかけとなる。
【0003】
振動検出は、一又はそれ以上の加速度計又は他のバイブレーションセンサーを回転機械又は他の振動機構に付着することによって現場においてたびたび行われている。バイブレーションセンサーは出力信号を生成して、振動の振幅と周波数を決定するために用いられる。バイブレーションセンサーと振動機構の間の接触が、バイブレーションセンサー(たとえば、加速度計)を回転装置にきっちりと付着することにより改善されうることが知られている。一般的に、バイブレーションセンサーをきっちり付着することは、振動機構からセンサーへの振動伝達を改善する。しかし、そのようなバイブレーションセンサーのきっちりとした付着は、現場使用において好適である携帯バイブレーションメータの場合には不可能であるかもしれない、若しくは、少なくとも実際的ではないかもしれない。そうではなくて、携帯バイブレーションメータは、概して振動計測する現場で回転機械に接触して手に保持される。
【0004】
図1は、従来のバイブレーションメータ100を示している。作動時、バイブレーションメータ100の先端部3が振動機構5に接触する。振動が先端部3を介してハウジング4内部の加速度計2に伝えられる。振動を受けた場合、加速度計2はワイヤ6を介してバイブレーションメータ100内の電子部品に伝送されるべき出力信号を生成する。そして、バイブレーションメータ100は加速度計からの信号に基づいて振動の振幅/周波数を決定する。出力(振動の振幅/周波数)がディスプレイ7を用いて表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−281806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、そのような従来のバイブレーションメータは、そのメータと振動機構の間の接触の質の影響を受けやすかった。従って、携帯バイブレーションメータの場合、利用者の手の振動がバイブレーションメータに伝わり、バイブレーションセンサーに影響を及ぼし、バイブレーションメータの表示精度に問題が残る。
【0007】
本発明の実施の形態は、先行技術のこれらの及び他の制約を解消する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1番目の基本理念は、ハウジングと、振動機構に接触し、該振動機構の振動を電気信号に変換するように構成されたバイブレーションセンサーであって、ハウジング内に少なくともその一部が含まれているバイブレーションセンサーと、バイブレーションセンサーに接触した除振装置であって、振動の一又はそれ以上の周波数を濾過するように構成された除振装置と、前記バイブレーションセンサーに加えられた接触力に応答する力センサーからなる携帯バイブレーションメータであって、該携帯バイブレーションメータが該バイブレーションセンサーのための複数の感度曲線を含み、該携帯バイブレーションメータが該力センサーによって測定された接触力に基づく感度曲線のうち一つを選択し、振動測定決定時に選択された感度曲線を使用する携帯バイブレーションメータである。
【0010】
本発明の第番目の基本理念は、本発明の第番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、力センサーが感圧性電気抵抗器からなる携帯バイブレーションメータである。
【0011】
本発明の第3番目の基本理念は、本発明の第1番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、力センサーがバイブレーションセンサーにほぼ面する第1の側面と、その第1の側面から離れて第1の側面に面する第2の側面を有し、更に、接触力を力センサーに伝達するように構成されたプランジャーであって、力センサーの第の側面にあるプランジャーと、力センサーの第の側面にあるパッドとからなる携帯バイブレーションメータである。

【0012】
本発明の第番目の基本理念は、本発明の第1番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、除振装置がバイブレーションセンサーの前側の第1の除振装置であり、更に、バイブレーションセンサーの後側に第2の除振装置を有する携帯バイブレーションメータである。
【0013】
本発明の第番目の基本理念は、本発明の第1番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、除振装置がゴム製である携帯バイブレーションメータである。
【0014】
本発明の第番目の基本理念は、本発明の第番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、更に、バイブレーションセンサーの応答と力センサーの応答の組み合わせから調節されたバイブレーションセンサーの応答を決定する手段からなる携帯バイブレーションメータである。
【0015】
本発明の第番目の基本理念は、本発明の第番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、調節されたバイブレーションセンサーの応答を決定する前記手段が参照テーブルとプロセッサーとそれらの組み合わせとからなる携帯バイブレーションメータである。
【0016】
本発明の第番目の基本理念は、本発明の第番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、バイブレーションセンサーの応答と調節されたバイブレーションセンサーの応答のうちの少なくとも一つが線形化される携帯バイブレーションメータである。
【0017】
本発明の第番目の基本理念は、ハウジングと、振動機構に接触し、該振動機構の振動を電気信号に変換するように構成されたバイブレーションセンサーであって、ハウジング内にその少なくとも一部が含まれているバイブレーションセンサーと、バイブレーションセンサーに接触した除振装置であって、振動の一又はそれ以上の周波数を濾過するように構成された除振装置と、バイブレーションセンサーに加えられた接触力に応答する力センサーからなる携帯バイブレーションメータであって、該携帯バイブレーションメータが、前記バイブレーションセンサーの電気信号を使用して振動機構の振動と該バイブレーションセンサーのための選択された感度曲線を測定し、該選択された感度曲線が前記力センサーによって測定された接触力に基づいて複数の感度曲線から選択される携帯バイブレーションメータである。
【0018】
本発明の第10番目の基本理念は、本発明の第番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、除振装置がバイブレーションセンサーの前側の第1の除振装置であり、更に、バイブレーションセンサーの後側に第2の除振装置を有する携帯バイブレーションメータである。
【0019】
本発明の第11番目の基本理念は、本発明の第番目の基本理念の携帯バイブレーションメータにおいて、力センサーが感圧性電気抵抗器からなる携帯バイブレーションメータである。
【0020】
本発明の第12番目の基本理念は、バイブレーションメータを用いて振動機構の振動を測定する方法であって、その方法が該振動機構に接触してバイブレーションセンサーにより振動機構の振動を感知することと、バイブレーションセンサーによりバイブレーションセンサーの応答を生成することと、バイブレーションセンサーと振動機構の間の接触力を測定することと、接触力に基づいてバイブレーションセンサーの応答を調整して調整されたバイブレーションセンサーの応答を発生することからなる方法であって、前記バイブレーションセンサーの応答の調整が、測定された接触力に基づいて該バイブレーションセンサーの複数の感度曲線のうち一つを選択することと、該バイブレーションセンサーの応答調整時に選択された感度曲線を使用することを含む方法である。
【0021】
本発明の第13番目の基本理念は、本発明の第12番目の基本理念の振動機構の振動を測定する方法において、更に、バイブレーションセンサーの応答を線形化して線形化された周波数応答を発生することからなる方法である。
【0022】
本発明の第14番目の基本理念は、本発明の第13番目の基本理念の振動機構の振動を測定する方法において、更に、調整されたバイブレーションセンサーの応答に基づいて振動の振幅を決定することからなる方法である。
【0023】
本発明の第15番目の基本理念は、本発明の第12番目の基本理念の振動機構の振動を測定する方法において、更に、調整されたバイブレーションセンサーの応答に基づいて振動の周波数を決定することからなる方法である。
【0025】
本発明の第16番目の基本理念は、本発明の第12番目の基本理念の振動機構の振動を測定する方法において、更に、バイブレーションセンサーに接触した除振装置を用いて振動の一又はそれ以上の周波数を濾過することからなる方法である。
【0026】
本発明の第17番目の基本理念は、本発明の第16番目の基本理念の振動機構の振動を測定する方法において、除振装置がバイブレーションセンサーの前側の第1の除振装置と、バイブレーションセンサーの後側の第2の除振装置からなる方法である。
【0027】
本発明の第18番目の基本理念は、本発明の第12番目の基本理念の振動機構の振動を測定する方法において、バイブレーションセンサーと振動機構の間の接触力を測定することが力センサーによって行われる方法である。
【発明の効果】
【0028】
利用者は、携帯バイブレーションメータを手に持ってバイブレーションメータを振動機構に接触して振動機構の振動を測定する。そのときに、利用者の手の振動による周波数が濾過されて除振装置によってバイブレーションメータに利用者の手の振動が伝わることが阻止されるので、本願発明に係わるバイブレーションメータはその表示精度が向上する。また、本願発明に係わるバイブレーションメータは、バイブレーションセンサーと振動機構の間の接触力を計測する力センサーを含むことができ、その振動の表示(たとえば、振幅と周波数)の精度を調整することができる。
更に、本願発明に係わる振動機構の振動を測定する方法は、バイブレーションセンサーと振動機構の間の接触力を測定して、その接触力に基づいてバイブレーションセンサーの応答を調整して、振動の表示(たとえば、振幅と周波数)の精度を調整することができる。
【0029】
本開示事項の多くのアスペクトは以下の図に関連してよりよく理解可能となる。各図面における各構成要素は必ずしも現実の要素をスケールしたものではなく、説明のために現実のものとは異なっている場合もあり得る。また、本開示事項の原理原則を明瞭に図示するときには強調が行われている。更に、図面においては、同じ参照番号がいくつかの図において共通する部品を示している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、先行技術に関する携帯バイブレーションメータの平面図である。
図2図2は、本願発明の実施に形態に関する携帯バイブレーションメータの平面図である。
図3A図3Aは、本願発明の実施に形態に関する携帯バイブレーションメータの分解斜視図である。
図3B図3Bは、本願発明の実施に形態に関する力センサー組み立て体の等角図である。
図4図4は、周波数の関数としてのバイブレーションセンサーの感度のグラフである。
図5図5は、本願発明の実施に形態に関するバイブレーションセンサー出力の線形化の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
代表的なバイブレーションメータとそれに関連する振動測定方法のいくつかの実施の形態の特別な細部が以下に記載されている。本発明のいくつかの実施の形態において、バイブレーションメータは、振動機構(たとえば回転機械)に接触してその振動機構の振動を計測する携帯機器である。バイブレーションメータは、また、バイブレーションセンサーと振動機構の間の力を計測する力センサーを含むことができる。この力の計測は、バイブレーションの表示(たとえば、振幅と周波数)の精度を改善するために用いられうる。なぜならば、バイブレーションセンサーの出力がバイブレーションメータと振動機構の間の接触力の強度と共に一般的に変動するからである。従って、ある種の実施の形態においては、バイブレーションセンサー出力が接触力の読みと組み合わされて、利用者からそれ以上入力することなく接触力を自動的に考慮に入れた調節された出力を生成することが可能である。更に、一又はそれ以上の除振装置がバイブレーションセンサーに接続されて、操作者の手の不安定さ、若しくは、震えによって生み出される、濾過されないとバイブレーションセンサー出力において低周波数の振動として現れるノイズを濾過することができる。いわゆる当業者は、また、本発明が他の実施の形態を有することがあり、そして、本発明が、図2乃至5に関連して以下に記載の実施の形態の詳細のいくつかがなくとも実施可能であることを理解する。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態に関するバイブレーションメータ200を図示している。バイブレーションメータ200は、成型されたプラスティック又はその他の適切な材料製のハウジング70を有する。作動時、バイブレーションメータ200は振動機構5に対して手持ちであり、バイブレーションセンサー10が振動機構5に接触する。本発明の他の実施の形態においては、バイブレーションセンサーは、振動機構からバイブレーションセンサーに振動を伝達する、図示しない介在物を介して振動機構5に接触することもできる。バイブレーションセンサー10は、ゴム加工された成型プラスティック又は金属若しくは織物、又は他の適切な材料製のジャケット25によって機械的損傷又は環境的なダメージから保護されることが可能である。ある実施の形態においては、バイブレーションセンサー10は、バイブレーションセンサー10の残りの部分よりも堅い先端11aを有し、バイブレーションセンサー10と振動機構5の間の接触をよくすることもある。当業者であれば、たとえば、加速度計を含むバイブレーションセンサーの多くの例を知っている。バイブレーションセンサー10は、ハウジング70内の(図2において図示されていない)信号処理電子機器に接続されている。信号処理電子機器は、バイブレーションセンサー10からの出力に基づいて振動の振幅と周波数を決定することが可能である。たとえば、振動の振幅は、(たとえば、加速度計である)バイブレーションセンサー10からの信号を2回積分することで決定されうる。当業者であれば、バイブレーションセンサー信号を数値的又は電子的に積分して被測定振動機構の対応する変位を決定する多くの方法を知っている。コマンドボタン80とディスプレイ90は、振動機構5に対応する振動の振幅と周波数を選択及び表示するために用いられうる。図3Aから図5に関連して以下に詳細に説明されるように、低周波数ノイズがバイブレーションセンサー10から濾過されうる。更に、低周波数ノイズからの信号がより正確な振動表示を生成するために、力センサーからの信号に関連して処理されうる。
【0033】
図3Aは、本発明の実施の形態に関連して構成されたバイブレーションメータ200の分解された状態を図示している。同図右上端から、バイブレーションセンサージャケット25が、バイブレーションセンサー10を機械的損傷又は環境的なダメージから保護するためにバイブレーションセンサー10を部分的に収容することが可能である。更に、少なくともある実施の形態においては、バイブレーションセンサー10は、除振装置16,20に少なくともその一部が接続されている。従来の携帯バイブレーションメータに関しては、操作者の手の振動がバイブレーションセンサー10に伝わることがあり、それが振動機構自体によって起こる振動として誤って解釈されることがある。操作者の手の振動は、一般的に、低周波数レンジ(たとえば、約50Hz以下)内にある。本発明の少なくともある実施の形態においては、除振装置16、20は、これらの低周波数振動がバイブレーションセンサー10に到達する前に、これらの低周波数振動を濾過することを可能にする。除振装置16、20は、ゴム状物質又は問題の周波数に対してバイブレーションセンサー10の振動を減衰する他の物質で出来ている。たとえば、ゴム状物質は、その既知の周波数減衰特性に基づいて選択されうる。除振装置16、20は、バイブレーションセンサー10とより確実に係合するために、それぞれリップ部17、21を有することが可能である。バイブレーションセンサー10からの出力信号は、ケーブル11を介してインタフェースボード61に、更に、図示しない信号処理電子機器に伝送されうる。
【0034】
バイブレーションメータ200は、また、力センサー30を有することが可能である。バイブレーションメータ200が振動機構(図示せず)に対して押圧されたときに、以下に図3Bに関連してより詳細に説明されるように、接触力がバイブレーションセンサー10から力センサー30に伝えられる。力センサー30は、力センサー30を適当なところに保持するために、たとえば、ロードボス65とロードビーム55とロードビーム張り50の組み合わせのような構造物によって支持可能である。スクリュー70が螺子受け孔26と係合してバイブレーションメータ200の各パーツを接触状態に維持することを可能にする。
【0035】
図3Bは、パッド45とプランジャー40の間に配置された力センサー30の等角図を示す。当業者であれば、たとえば、ロードセルやフィルム抵抗力センサーのような市販の多くの力センサーを知っている。ほぼ平坦な第1の面41を有するプランジャー40は、バイブレーションセンサー10からの接触力をプランジャー40とパッド45の間で挟持された力センサー30に伝達することが可能である。ある実施の形態においては、力センサー30は、その出力を感度範囲内に前もって調整するように前もって加重が掛けられている。この前持って掛けられた加重は、たとえば、プランジャー40を力センサー30に対して押圧することによって達成可能となるが、力センサー30は反対側で可撓性パッド45によって支持されている。負荷が加わったとき、力センサー30はその電気抵抗が変化する。力の変化に対応したこの抵抗変化は、コネクタ35を介して測定されうる。図4に関連して以下に説明されるように、振動機構5とバイブレーションセンサー10の間の接触力の値に基づいて、振動振幅の測定が改善されうる。
【0036】
図4は、バイブレーションセンサー10の周波数特性のグラフである。グラフの水平軸は対数目盛で周波数領域を示している。左側の垂直軸は、dBで示されたバイブレーションセンサー10の感度を示している。バイブレーションセンサー10の感度は、たとえば、バイブレーションセンサー10の出力において示される振幅と振動機構自体の振動振幅の比として解釈されうる。グラフ400の対数目盛の0付近の感度は、線形目盛の約1の感度値に対応する。反対に、垂直軸の正の値は、より高感度を示し、垂直軸の負の値は、より低感度を示す。一般的に、バイブレーションセンサーの感度は、振動周波数の関数である。更に、バイブレーションセンサー10の感度が既知である場合、適切な係数又は他の調整値が使用されて、特定の振動周波数における振動機構の関連する振動振幅を決定する。
【0037】
右側の垂直軸は振動振幅を示している。通常、周波数の関数としてのバイブレーションセンサー10の感度は、バイブレーションセンサーの製造者から得ることができるか、若しくは、経験的に決定されることが可能である。したがって、振動の振幅は、特定の振動周波数に関して逆算されうる。しかしながら、バイブレーションセンサー10の感度がセンサーと振動機構の間の接触力の関数でもある場合、接触力を考慮しない振動振幅の測定は測定精度の低下につながることがある。たとえば、図4の曲線F1、F2、F3は、周波数領域に亘るが、しかし、異なる接触力を用いた振動振幅測定に対応することができる。当業者であれば、所定の振幅周波数に対して、加速度信号を2回積分しバイブレーションセンサーの既知の感度に基づいてその結果を調整することで振動振幅が算出されうることを知っている。
【0038】
図示の例において、約1.4kHzの振動周波数に対して、バイブレーションセンサー10は、バイブレーションセンサー10と振動機構5の間の接触力の大きさに応じて、それぞれの感度曲線F1、F2、F3に対して振動振幅A1、A2又はA3を示す。より正確な振動振幅測定を得るために、接触力が測定されると共に用いられて、たとえば、F1、F2、F3のような適切な感度曲線を選択する。そして、振動機構5の振幅が適切な感度曲線から決定される。たとえば、(図3A図3Bに関連して説明した)力センサー30は、接触力を測定することができ、それが感度曲線F1、F2、F3のうちの適正な振動感度曲線を選択するために用いられる。少なくともある実施の形態においては、簡易な計算のために関連する振動周波数ごとの表形式で利用可能である。表形式の感度曲線は、力センサーの表示値に基づいて適切な電子機器を用いてアクセスされ、そして、更に、処理されて、たとえば、信号積分アルゴリズムを用いて振動振幅を算出しうる。 ある実施の形態においては、感度曲線は線形化回路を用いて線形化することが可能である。たとえば、感度曲線F1、F2、F3が線形化されて、それぞれ、線形感度曲線L1、L2、L3を生成する。少なくともある実施の形態においては、線形感度曲線は振動振幅計算を簡単及び/又は迅速にする。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態に関する線形化回路500の略図である。(たとえば、図4に示された感度曲線F1、F2、F3である)非線形入力110は、関数発生器120に供給され、関数発生器120は減衰器130によって減衰される関数を出力する。次いで、非線形入力110と減衰器130の出力は加算増幅器140において加算されて、(たとえば、図4に示された線形感度曲線L1、L2、L3である)線形化された出力150を生成する。線形化された出力150は、振動振幅の簡易な決定のために用いられうる。多くの関数発生器と線形化回路が市販されている。たとえば、米国マサシュウセッツ州ノースウッドのアナログデバイス社製の関数発生器AD640、AD639、AD538と線形化回路AD7569である。
【0040】
上記から、本発明の特定の実施の形態がここでは例示目的で記載されていることは明らかであるが、開示事項から逸脱することなく各種の変形例があり得ることも明らかである。たとえば、ある実施の形態においては、関数分析器が開示された技術発明に関連して用いられ、主周波数を決定するのに役立つこともある。他の実施の形態においては、バイブレーションセンサーの出力は、バイブレーションメータ外で行われることもありうる以後のデータ処理のためにアナログ−デジタル変換回路によって獲得されることもある。更に、バイブレーションメータは、振動機構のメイン周波数の望ましくない調波や低調波を排除するためのアナログ又はデジタルの周波数フィルタを含むこともある。また、ある実施の形態に関する各種の効果や特徴がそれらの実施の形態の背景において上記に説明されてきたけれども、他の実施の形態もそのような効果や特徴を示すことが可能であり、本願発明の技術範囲内にあるために必ずしもすべての実施の形態がそのような効果及び/又は特徴を示す必要はない。したがって、この開示事項は、ここに明確に示されていない若しくはここに明確に開示されていない他の実施の形態を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の実施の形態に係わる携帯バイブレーションメータ及びそれに関連する振動測定方法は、現場で回転機械などの振動機構の振動を測定するときに利用されうる。
【符号の説明】
【0042】
100…従来のバイブレーションメータ
2…加速度計
4…ハウジング
5…振動機構
7…ディスプレイ
200…バイブレーションメータ
10…バイブレーションセンサー
16、20…除振装置
25…ジャケット
30…力センサー
35…コネクタ
40…プランジャー
45…パッド
50…ロードビーム張り
55…ロードビーム
61…インタフェースボード
65…ロードボス
70…ハウジング
80…コマンドボタン
90…ディスプレイ
120…関数発生器
130…減衰器
140…加算増幅器
500…線形化回路
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5