特許第6321415号(P6321415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321415
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】積層構造体の製造方法および積層構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20180423BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20180423BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20180423BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180423BHJP
   B32B 7/06 20060101ALI20180423BHJP
   B29C 47/06 20060101ALN20180423BHJP
【FI】
   B32B27/00 M
   C09J7/02 Z
   C09J133/00
   B32B27/30 A
   B32B7/06
   !B29C47/06
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-57162(P2014-57162)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178248(P2015-178248A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 潤一
(72)【発明者】
【氏名】田矢 直紀
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−126569(JP,A)
【文献】 特開2012−062406(JP,A)
【文献】 特表2002−524580(JP,A)
【文献】 特開2009−167312(JP,A)
【文献】 特開2013−189486(JP,A)
【文献】 特開2005−199706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 7/20
C09J 133/00
B29C 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた粘着シートを備える積層構造体の製造方法であって、
前記基材を形成するための第一樹脂組成物および前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物を共押出成形することにより、前記基材と前記粘着剤層とが積層されてなる第一積層体を前記粘着シートとして得る第一共押出成形工程を備え、
前記第二樹脂組成物は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有し、
前記主樹脂は(メタ)アクリル酸系トリブロック重合体からなり、
前記第一樹脂は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が50万以上であるアクリル系樹脂からなり、
前記第二樹脂組成物における前記第一樹脂の含有量は0.01質量%超10質量%未満であり、
前記第二樹脂組成物の調製にあたり前記第一樹脂は粉体として供給されること
を特徴とする積層構造体の製造方法。
【請求項2】
前記粘着シートの前記粘着剤層側の面に剥離シートの剥離面を貼付して、前記粘着シートおよび前記剥離シートを備える前記積層構造体を得る、請求項1に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第一共押出成形工程において、前記第一樹脂組成物および前記第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したときの温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第一樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下である、請求項1または2に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項4】
基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた積層構造体の製造方法であって、
前記基材を形成するための第一樹脂組成物、前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物および剥離シートを形成するための第三樹脂組成物を共押出成形することにより、前記粘着剤層の一方の面に基材が積層されるとともに前記粘着剤層の他方の面に前記剥離シートが剥離可能に積層されてなる第三積層体を、前記粘着シートおよび前記剥離シートを備える前記積層構造体として得る第三共押出成形工程を備え、
前記第二樹脂組成物は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有し、
前記主樹脂は(メタ)アクリル酸系トリブロック重合体からなり、
前記第一樹脂は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が50万以上であるアクリル系樹脂からなり、
前記第二樹脂組成物における前記第一樹脂の含有量は0.01質量%超10質量%未満であり、
前記第二樹脂組成物の調製にあたり前記第一樹脂は粉体として供給されること
を特徴とする積層構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第三共押出成形工程において、
前記第一樹脂組成物および前記第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したときの温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第一樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は1以上4.3以下であり、
前記第三樹脂組成物および前記第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したときの温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第三樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下である、請求項に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項6】
前記粉体は平均粒子径が2.5μm超である、請求項1からのいずれか一項に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項7】
基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた粘着シートを備える積層構造体であって、
前記粘着シートは、前記基材を形成するための第一樹脂組成物および前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物を用いた共押出成形物であって、
前記粘着剤層は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有し、
前記主樹脂は(メタ)アクリル酸系トリブロック重合体からなり、
前記第一樹脂は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が50万以上であるアクリル系樹脂からなり、
前記第二樹脂組成物における前記第一樹脂の含有量は0.01質量%超10質量%未満であること
を特徴とする積層構造体。
【請求項8】
基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた粘着シート、および前記粘着シートの前記粘着剤層側の面に剥離可能に積層された剥離シートを備える積層構造体であって、
前記積層構造体は、前記基材を形成するための第一樹脂組成物、前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物および前記剥離シートを形成するための第三樹脂組成物を用いた共押出成形物であって、
前記粘着剤層は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有し、
前記主樹脂は(メタ)アクリル酸系トリブロック重合体からなり、
前記第一樹脂は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が50万以上であるアクリル系樹脂からなり、
前記第二樹脂組成物における前記第一樹脂の含有量は0.01質量%超10質量%未満であること
を特徴とする積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備える粘着シートを備える積層構造体の製造方法、および粘着シートを備える積層構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着シートの製造方法の一例として、基材の一方の面に、粘着剤層を形成するための塗工用組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥することにより粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0003】
この塗布工程を行うことなく、粘着シートを製造する方法の一例として、基材を形成するための樹脂組成物(本明細書において「第一樹脂組成物」ともいう。)および粘着剤層を形成するための樹脂組成物(本明細書において「第二樹脂組成物」ともいう。)をそれぞれ溶融状態とし、これらの溶融体を押し出しつつ積層して粘着シートを製造する共押出成形が挙げられる。この共押出成形により粘着シートを製造する方法は、一工程で粘着シートを形成できることから、生産性に優れる。また、共押出成形直後は基材と粘着剤層とが高温状態で接することから、これらの界面での剥離が生じにくくなり、品質(耐剥離性)に優れる粘着シートが得られるという利点もある。
【0004】
このように、粘着シートの製造方法として共押出成形は優れた製造方法であるが、共押出成形による粘着シートの製造を安定的に行うためには、次の課題を克服する必要がある。
【0005】
押出成形により粘着剤層を製造する場合には、通常、第二樹脂組成物の少なくとも一部を与えるペレットを成形機のホッパーに供給し、ホッパー内のペレットを他の材料とともにスクリュー部内に送入して溶融混練し、溶融状態にある第二樹脂組成物をフィードブロック内に吐出させる。通常、第二樹脂組成物は比較的軟質であるため、特許文献1に記載されるように、ホッパー内でペレットが自着する場合があり、この場合には成形機のスクリュー部内に適切にペレットが送り込まれず、第二樹脂組成物のダイからの供給量が不安定化してしまう。したがって、ホッパー内のペレットの自着を回避して、第二樹脂組成物の供給量を安定化させ、押出成形により得られる粘着剤層の形状を安定化させることが求められる。
【0006】
この課題を解決するための手段として、特許文献1には、アクリル系樹脂を主としてなるペレットの表面に、平均粒子径が2.5μm以下の自着防止剤を被覆させることを含む手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−167312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によれば、自着防止剤となる粉体の平均粒子径が2.5μmを超えると、押出成形により得られた粘着剤層の透明性が低下してしまうことが指摘されている。ところが、2.5μm以下の平均粒子径を有する粉体は凝集しやすく、2.5μm以下の状態を維持することは容易でない。粉末の保管時の雰囲気(特に湿度)などを十分に管理するとともに、アクリル系樹脂に対して粉末を被覆させる際にも凝集の影響が生じないように留意する必要がある。
【0009】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、自着防止剤として機能しうる粉体の平均粒子径の上限を緩和することが可能な粘着シートを備える積層構造体の製造方法、および粘着シートを備える積層構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らが検討した結果、自着防止剤として機能しうる粉体を、粘着剤層を形成するための樹脂組成物である第二樹脂組成物が含有する主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂から構成することにより、粉体の平均粒子径について2.5μm以下という厳しい制限を設けることなく、適切な表面性状を有する粘着剤層を備える積層体を共押出成形によって製造することが可能であるとの、新たな知見を得た。
【0011】
本明細書において「主樹脂に対して相溶性を有する」とは、主樹脂および第一樹脂を含有する第二樹脂組成物を押出成形するために設定される温度領域(具体例として、200℃から220℃の温度領域が挙げられる。)において、主樹脂に対して実質的に溶解した状態になりうることを意味する。
【0012】
また、本明細書において、粉体の「平均粒子径」とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めた粉体の粒度分布における積算値50%での粒径(メジアン径D50)を意味する。
【0013】
かかる知見に基づき完成された本発明は、第1に、基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた粘着シートを備える積層構造体の製造方法であって、前記基材を形成するための第一樹脂組成物および前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物を共押出成形することにより、前記基材と前記粘着剤層とが積層されてなる第一積層体を前記粘着シートとして得る第一共押出成形工程を備え、前記第二樹脂組成物は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有し、前記第二樹脂組成物の調製にあたり前記第一樹脂は粉体として供給されることを特徴とする積層構造体の製造方法を提供する(発明1)。
【0014】
上記発明(発明1)において、前記粘着シートの前記粘着剤層側の面に剥離シートの剥離面を貼付して、前記粘着シートおよび前記剥離シートを備える前記積層構造体を得てもよい(発明2)。
【0015】
上記発明(発明1または2)において、前記第一共押出成形工程において、前記第一樹脂組成物および前記第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したときの温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第一樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下であってもよい(発明3)。
【0016】
本発明は、第2に、基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた粘着シートを備える積層構造体の製造方法であって、剥離シートを形成するための第三樹脂組成物および前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物を共押出成形することにより、前記剥離シートと前記粘着剤層とが剥離可能に積層されてなる第二積層体を得る第二共押出成形工程、および前記第二積層体の前記粘着剤層側の面に前記基材を積層して、前記粘着シートおよび前記剥離シートを備える前記積層構造体を得る基材積層工程を備え、前記第二樹脂組成物は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有し、前記第二樹脂組成物の調製にあたり前記第一樹脂は粉体として供給されることを特徴とする積層構造体の製造方法を提供する(発明4)。
【0017】
上記発明(発明4)において、前記第二共押出成形工程において、前記第三樹脂組成物および前記第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したときの温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第三樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下であってもよい(発明5)。
【0018】
本発明は、第3に、基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた積層構造体の製造方法であって、前記基材を形成するための第一樹脂組成物、前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物および剥離シートを形成するための第三樹脂組成物を共押出成形することにより、前記粘着剤層の一方の面に基材が積層されるとともに前記粘着剤層の他方の面に前記剥離シートが剥離可能に積層されてなる第三積層体を、前記粘着シートおよび前記剥離シートを備える前記積層構造体として得る第三共押出成形工程を備え、前記第二樹脂組成物は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有し、前記第二樹脂組成物の調製にあたり前記第一樹脂は粉体として供給されることを特徴とする積層構造体の製造方法を提供する(発明6)。
【0019】
上記発明(発明6)において、前記第三共押出成形工程において、前記第一樹脂組成物および前記第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したときの温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第一樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は1以上4.3以下であり、前記第三樹脂組成物および前記第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したときの温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第三樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の前記第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下であってもよい(発明7)。
【0020】
上記発明(発明1から7)において、前記第一樹脂はポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が50万以上であってもよい(発明8)。
【0021】
上記発明(発明1から8)において、前記粉体は平均粒子径が2.5μm超であってもよい(発明9)。
【0022】
上記発明(発明1から9)において、前記第二樹脂組成物における前記第一樹脂の含有量は0.01質量%超10質量%未満であってもよい(発明10)。
【0023】
上記発明(発明1から10)において、前記主樹脂および前記第一樹脂はアクリル系樹脂からなってもよい(発明11)。
【0024】
上記発明(発明11)において、前記主樹脂は(メタ)アクリル酸系トリブロック重合体からなってもよい(発明12)。
【0025】
本発明は、第4に、基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた粘着シートを備える積層構造体であって、前記粘着シートは、前記基材を形成するための第一樹脂組成物および前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物を用いた共押出成形物であって、前記粘着剤層は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有することを特徴とする積層構造体を提供する(発明13)。
【0026】
本発明は、第5に、基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた粘着シート、および前記粘着シートの前記粘着剤層側の面に剥離可能に積層された剥離シートを備える積層構造体であって、前記粘着剤層と前記剥離シートとからなる積層体は、前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物および前記剥離シートを形成するための第三樹脂組成物を用いた共押出成形物であって、前記粘着剤層は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有することを特徴とする積層構造体を提供する(発明14)。
【0027】
本発明は、第6に、基材と前記基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えた粘着シート、および前記粘着シートの前記粘着剤層側の面に剥離可能に積層された剥離シートを備える積層構造体であって、前記積層構造体は、前記基材を形成するための第一樹脂組成物、前記粘着剤層を形成するための第二樹脂組成物および前記剥離シートを形成するための第三樹脂組成物を用いた共押出成形物であって、前記粘着剤層は、主樹脂および前記主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有することを特徴とする積層構造体を提供する(発明15)。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、粘着剤層を備える積層体を共押出成形によって製造するにあたり、粉体の平均粒子径が粘着剤層の性状に与える影響を低減させることが可能となる。したがって、本発明に係る粘着シートを備える積層構造体の製造方法は、生産性に優れる。また、本発明によれば、粘着剤層の性状が良好な粘着シートを備える積層構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る粘着シートおよび剥離シートを備える積層構造体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.積層構造体の第一の製造方法
本発明の一実施形態に係る積層構造体が備える粘着シート1は、図1に示されるように、基材2と基材2の一方の面に積層された粘着剤層3とを備える。
【0031】
本発明の一実施形態に係る積層構造体の第一の製造方法は、粘着シート1を、次に説明する第一共押出成形工程により製造することを含む。第一共押出成形工程では、基材2を形成するための樹脂組成物である第一樹脂組成物および粘着剤層3を形成するための第二樹脂組成物をそれぞれ溶融した状態とし、これらの溶融体を共押出成形することにより、基材2と粘着剤層3とが積層されてなる第一積層体を粘着シート1として得る。
【0032】
この第一共押出成形工程を行うための装置である押出成形機は、ホッパーおよびこれに連設されるスクリュー部を備える押出機を複数備え、さらにフィードブロックおよびTダイを備える。押出成形機の基本動作は次のとおりである。まず、第一樹脂組成物を与える原材料が押出機のホッパーに投入されると、その原材料はスクリュー部へと送入されて、スクリュー部内で溶融混練されて第一樹脂組成物となる。第二樹脂組成物を与える原材料も別の押出機のホッパーに投入され、その押出機のスクリュー部内で溶融混練されて第二樹脂組成物となる。第一樹脂組成物および第二樹脂組成物はそれぞれの押出機からフィードブロック内に押し出され、押し出されたこれらの樹脂組成物は、それぞれフィードブロック内で平板状に成形されながら、それぞれの一方の面同士が接するように導かれ、積層される。こうして得られた積層体は、Tダイ、ローラーなどで厚さを調整されながら冷却されて、粘着シート1となる。
【0033】
押出機のホッパーは、樹脂組成物の原材料がスクリュー部に適量送入されるように調整する機能を有するため、ホッパー内にはスクリュー部に送入される前の原材料が貯留された状態となる。この貯留された原材料は、特に加熱される必要はないが、スクリュー部からの熱伝導により、通常、常温よりも高い温度となっている。粘着剤層を形成するための樹脂組成物である第二樹脂組成物は、後述するように、アクリル系樹脂などの主樹脂を含有し、この主樹脂は、通常、ペレットとしてホッパー内に供給される。主樹脂は粘着剤層2の粘着性を直接的にもたらす成分であることから、ガラス転移温度が常温以下の材料である場合が多い。このため、ホッパー内でペレットの粘着性が高まり、ペレット同士が凝着する、いわゆるペレットの自着が発生する場合がある。ペレットの自着が生じると、ホッパーからスクリュー部へのペレットを含む原材料の送入量が安定しにくくなり、押出機からの第二樹脂組成物の押出量がばらつきやすくなる。この押出量のばらつきは、結果的に、粘着シート1における粘着剤層3の厚さの均一性の低下をもたらしてしまう。
【0034】
そこで、自着防止剤として機能する粉体をペレットに被覆させることが特許文献1に開示されている。特許文献1には、この粉体が粘着剤層の透明性に影響を与えないようにするために、粉体の平均粒子径を2.5μm以下とすることが指摘されている。ところが、そのような小径の粉体を取り扱うことは生産管理上の問題をもたらすことは前述のとおりである。
【0035】
本発明の一実施形態に係る積層構造体の第一の製造方法では、ホッパーにある状態では特許文献1に開示される粉体と同様に自着防止剤として機能することが可能であるとともに主樹脂に対して相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を、第二樹脂組成物の成分として含有させる。
【0036】
第一樹脂は、非架橋型樹脂であるため、粉体として供給されても、溶融状態にある第二樹脂組成物内では主樹脂に溶解した状態となる。したがって、第一樹脂が2.5μmを超える平均粒子径の粉体として供給されても、第二樹脂組成物から形成された粘着剤層の表面性状を低下させにくい。したがって、本発明の一実施形態に係る積層構造体の第一の製造方法によれば、第二樹脂組成物に係る原材料の自着を生じさせにくくすることと、厚さのばらつきが少ない粘着剤層3を備える粘着シート1を得ることとを両立させることが可能である。しかも、第一樹脂に係る粉体の形状は粘着剤層3の透明性に影響を与えにくいため、粉体の形状を厳密に制御する必要がない。それゆえ、性状(透過性など)に優れる粘着剤層3を備える粘着シート1を容易に製造することが可能である。
【0037】
第一共押出成形工程において、第一樹脂組成物および第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したとき、具体的には、フィードブロックからTダイまでの間の温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の第一樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の第二樹脂組成物の粘度の平均値(本明細書においてこの粘度の平均値を「第二粘度」ともいう。)に対する比率(本明細書においてこの比率を「第一粘度比率」ともいう。)は、1以上4.3以下であることが好ましい。
【0038】
なお、本明細書において、樹脂組成物の粘度はCrossモデルを用いて導出された値とする。この場合、キャピラリーレオメーターを用いて測定したせん断速度、見かけ粘度、温度を下記数式1および数式2に挿入し、フィッティングすることで指数を導出する。
【数1】

【数2】
【0039】
上記式中、ηは回帰式より求められる任意の温度・せん断速度における粘度(単位:Pa・s)、γはせん断速度(単位:1/s)、τは臨界せん断応力(単位:Pa・s)、cは指数、ηは臨界粘度(単位:1/s)、aは粘度(単位:Pa・s)、Tは温度係数(単位:K)、Tは温度(単位:K)を示す。
【0040】
第一粘度比率が上記の範囲である場合には、基材2と粘着剤層3とが適切に積層されて粘着シート1を形成することが容易となる。一般的に、第一樹脂組成物よりも第二樹脂組成物の方が低温で軟化しやすいため、第一粘度比率は通常1以上となる。第一粘度比率が4.3よりも過度に高い場合には、第二樹脂組成物は、第一樹脂組成物から形成された層状体を取り囲むように配置されやすくなる。本明細書において、この現象を「カプセル化」と称する場合もある。また、第一粘度比率が特に高い場合には、第一樹脂組成物の層状体内に第二樹脂組成物が分散した構造を有する部材が形成される場合もある。基材2と粘着剤層3との積層体からなる粘着シート1をより安定的に製造する観点から、第一粘度比率は1.0以上4.0以下であることが好ましく、1.0以上3.5以下であることがより好ましい。
【0041】
第二樹脂組成物に含有される第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)を変化させたり、第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量を変化させたりすることにより、上記の第一粘度比率を調整することが可能である。
【0042】
なお、本明細書において、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン標準)により測定される場合の値である。このような方法による測定は、たとえば、以下の装置および条件で行われる。
装置名:HLC−8220GPC、東ソー社製
カラム:TSKgelGMHXL、TSKgelGMHXLおよびTSKgel2000HXLを順次連結したもの
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
試料濃度:1%(w/v)
【0043】
溶融状態にある第二樹脂組成物内で、主樹脂に溶解している第一樹脂は、主樹脂と適度に相互作用する。このため、第二樹脂組成物に含有される第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)を増大させたり、第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量を高めたりすると、溶融状態にある第二樹脂組成物内の主樹脂の流動性を低下させることができる、すなわち、第二粘度を高めることができる。したがって、他の因子を変動させなければ、第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の増大および/または第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量の増加により、第一粘度比率を低下させることが可能となる。
【0044】
主樹脂の分子量を増大させることによって第一粘度比率を低下させることも可能であるが、この場合には、粘着剤層3の粘着性の著しい低下がもたらされることがある。これに対し、上記の第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)や第二樹脂組成物内含有量を変化させる場合には、粘着剤層3の粘着性への影響を抑えつつ、第一粘度比率を低下させることが可能である。
【0045】
第一粘度比率の低下を安定的に実現させる観点から、第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、50万以上であることが好ましく、75万以上であることがより好ましく、100万以上であることが特に好ましい。第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の上限は、溶融状態にある第二樹脂組成物内で第一樹脂が主樹脂に溶解できる限り、限定されない。
【0046】
第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量の下限は、第一樹脂に係る粉体が自着防止剤として機能することができる限り、限定されない。第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量の上限は、溶融状態にある第二樹脂組成物内で第一樹脂が主樹脂に溶解できる限り、限定されない。第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量を0.01質量%超10質量%未満とすることが好ましい場合もある。
【0047】
上記の第一共押出成形工程により得られた粘着シート1の粘着剤層3側の面に、剥離シート4の剥離面を貼付する貼付工程を実施してもよい。かかる貼付工程を実施することにより、図2に示されるような、粘着シート1および剥離シート4を備える積層構造体10を得ることができる。
【0048】
2.積層構造体の第二の製造方法
本発明の一実施形態に係る積層構造体の第二の製造方法は、次に説明する第二共押出成形工程および基材積層工程を備える。積層構造体の第二の製造方法により、図2に示されるような、粘着シート1および粘着シート1の粘着剤層3側の面に剥離可能に積層された剥離シート4を備える積層構造体10を得ることができる。
【0049】
第二共押出成形工程では、剥離シート4を形成するための第三樹脂組成物および前述の第二樹脂組成物を共押出成形することにより、剥離シート4と粘着剤層3とが剥離可能に積層されてなる第二積層体を得る。第二共押出成形工程における共押出成形の条件などは適宜設定されるべきものである。この第二共押出成形工程を行うため押出成形機は、第一共押出成形工程を行うための押出成形機と構造および基本的な動作が共通するため、説明を省略する。
【0050】
前述のとおり第二樹脂組成物は第一樹脂を含有するため、ホッパー内で第二樹脂組成物に係るペレットが自着する現象は生じにくい。また、第一樹脂は主樹脂に相溶性を有する非架橋型樹脂である。したがって、積層構造体の第二の製造方法により製造された積層構造体10が備える粘着シート1の粘着剤層3は、その性状(厚さの均一性、表面性状、透明性等)に優れる。
【0051】
基材積層工程では、上記の第二共押出成形工程を実施することにより得られた第二積層体の粘着剤層3側の面に、基材2を積層する。基材2は、粘着剤層3の面に直接積層されてもよい。あるいは、基材2と粘着剤層3との間に、これらの間で剥離が生じる可能性を低減させるための層状体(連続体でなくてもよい。)が介在してもよい。かかる層状体として、エポキシ接着剤などからなる接着剤層が例示される。基材2における粘着剤層3に対向する面には、コロナ処理、シランカップリング処理等のプライマー処理などが施されていてもよい。
【0052】
こうして、粘着シート1および剥離シート4を備える積層構造体10が得られる。
【0053】
第二共押出成形工程において、第三樹脂組成物および第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したとき、具体的には、フィードブロックからTダイまでの間の温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の第三樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率(本明細書においてこの比率を「第二粘度比率」ともいう。)は、1以上4.3以下であることが好ましい。
【0054】
第二粘度比率が上記の範囲である場合には、粘着剤層3と剥離シート4とが適切に積層されて第二積層体を形成することが容易となる。一般的に、第三樹脂組成物よりも第二樹脂組成物の方が低温で軟化しやすいため、第二粘度比率は通常1以上となる。第二粘度比率が4.3よりも過度に高い場合には、カプセル化現象が生じやすくなる。また、第二粘度比率が特に高い場合には、第三樹脂組成物の層状体内に第二樹脂組成物が分散した構造を有する部材が形成される場合もある。第二積層体をより安定的に製造する観点から、第二粘度比率は1.0以上4.3以下であることが好ましく、1.0以上3.7以下であることがより好ましく、1.0以上2.0以下であることが特に好ましい。
【0055】
第二樹脂組成物に含有される第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)を変化させたり、第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量を変化させたりすることにより、上記の第二粘度比率を調整することが可能である。第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)を変化させることおよび第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量の変化させることの詳細については、積層構造体の第一の製造方法の場合と同様であるから、説明を省略する。
【0056】
3.積層構造体の第三の製造方法
本発明の一実施形態に係る積層構造体の第三の製造方法は、次に説明する第三共押出成形工程を備え、積層構造体の第三の製造方法により、図2に示されるような、粘着シート1および粘着シート1の粘着剤層3側の面に剥離可能に積層された剥離シート4を備える積層構造体10を一工程で得ることができる。
【0057】
第三共押出成形工程では、第一樹脂組成物、第二樹脂組成物および第三樹脂組成物を共押出成形することにより、粘着剤層3の一方の面に基材2が積層されるとともに粘着剤層3の他方の面に剥離シート4が剥離可能に積層されてなる第三積層体を積層構造体10として得る。第三共押出成形工程における共押出成形の条件などは適宜設定されるべきものである。この第三共押出成形工程を行うため押出成形機は、第一共押出成形工程を行うための押出成形機と構造および基本的な動作が共通するため、説明を省略する。第三積層体を構成する3つの層状体は、同時に積層されてもよいし、段階的に積層されてもよい。
【0058】
前述のとおり第二樹脂組成物は第一樹脂を含有するため、ホッパー内で第二樹脂組成物に係るペレットが自着する現象は生じにくい。また、第一樹脂は主樹脂に相溶性を有する非架橋型樹脂である。したがって、積層構造体の第三の製造方法により製造された積層構造体10が備える粘着シート1の粘着剤層3は、その性状(厚さの均一性、表面性状、透明性等)に優れる。
【0059】
第三共押出成形工程において、第一樹脂組成物および第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したとき、具体的には、フィードブロックからTダイまでの間の温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の第一樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率(本明細書においてこの比率を「第三粘度比率」ともいう。)は1以上4.3以下であることが好ましい。
【0060】
また、第三共押出成形工程において、第三樹脂組成物および第二樹脂組成物が積層されるべく互いに接したとき、具体的には、フィードブロックからTダイまでの間の温度における、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の第三樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率(本明細書においてこの比率を「第四粘度比率」ともいう。)は、1以上4.3以下であることが好ましい。
【0061】
第三粘度比率および/または第四粘度比率が上記の範囲である場合には、基材2と粘着剤層3との積層および/または粘着剤層3と剥離シート4との積層が適切に行われて第三積層体を形成することが容易となる。第三粘度比率の詳細は第一粘度比率と同様であり、第四粘度比率の詳細は第二粘度比率と同様であるから、双方の詳細説明を省略する。
【0062】
第二樹脂組成物に含有される第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)を変化させたり、第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量を変化させたりすることにより、上記の第三粘度比率および第四粘度比率を調整することが可能である。第一樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)を変化させることおよび第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量を変化させることの詳細については、積層構造体の第一の製造方法の場合と同様であるから、説明を省略する。
【0063】
4.第一の積層構造体
本発明の一実施形態に係る第一の積層構造体は、具体的な一例において、図1に示されるように、粘着シート1からなる。粘着シート1は、基材2と基材2の一方の面に積層された粘着剤層3とを備え、基材2を形成するための第一樹脂組成物および粘着剤層3を形成するための第二樹脂組成物を用いた共押出成形物である。本発明の一実施形態に係る第一の積層構造体を構成する粘着シート1は、前述の積層構造体の第一の製造方法において製造される第一積層体であってもよい。
【0064】
(1)基材
基材2は第一樹脂組成物から形成されたものである。第一樹脂組成物の組成は、第一樹脂組成物と第二樹脂組成物とから粘着シート1を共押出成形により製造できる限り、限定されない。粘着シート1の用途に合わせて適宜設定すればよい。第一樹脂組成物は押出成形可能であることから、熱可塑性を有する。
【0065】
第一樹脂組成物に含有される樹脂成分として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のオレフィン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエステル系重合体;ナイロン6,6、ナイロン6等のアミド系重合体などが例示される。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0066】
第一樹脂組成物は、用途に応じて、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を含有していてもよい。
【0067】
基材2の厚さは、用途に応じて適宜設定されるべきものであり、限定されない。基材2の厚さは、通常は10μmから1000μm、好ましくは20μmから500μm、特に好ましくは25μmから200μm程度である。
【0068】
(2)粘着剤層
前述のように、粘着剤層3を形成するための第二樹脂組成物は、主樹脂および主樹脂に対する相溶性を有する非架橋型樹脂である第一樹脂を含有する。
【0069】
主樹脂の種類は限定されない。主樹脂は粘着剤層3の粘着性の発生に直接関与する成分であり、ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂などが主樹脂の具体例として挙げられる。これらの中でも、取扱いの容易さ、入手安定性などの観点から、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂の具体例として、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸ブチル−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸−2−エチルヘキシル−ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸系トリブロック重合体が挙げられる。主樹脂は1種類の材料から構成されていてもよいし、複数種類の材料から構成されていてもよい。
【0070】
主樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は限定されない。第一樹脂が主樹脂に対して相溶性を有することを容易にする観点から、主樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は1万から100万の範囲にあることが好ましく、2万から70万の範囲にあることがより好ましい。
【0071】
第一樹脂は、主樹脂に対して相溶性を有する非架橋型樹脂であるとともに、押出機のホッパー内の温度領域において粉体となりうる限り、その具体的な種類は限定されない。
【0072】
第一樹脂が主樹脂に対する相溶性を有することをより安定的に実現する観点から、第一樹脂は主樹脂と同系列の樹脂であることが好ましい。すなわち、主樹脂が(メタ)アクリル酸系樹脂からなる場合には、第一樹脂も(メタ)アクリル酸系樹脂であることが好ましい。
【0073】
押出機のホッパー内で第一樹脂が粉体であるとき、その形状は限定されない。第一樹脂に係る粉体の平均粒子径が2.5μm以上であっても、スクリュー部内ではその粉体は主樹脂に対して溶融するため、粘着剤層3の特性(表面性状、透明性等)は、粉体の平均粒子径の影響を受けにくい。
【0074】
第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量は自着防止剤としての機能を果たし、さらに必要に応じ第二粘度を調整する機能を果たすことができる限り、限定されない。第二樹脂組成物における第一樹脂の含有量は、0.01質量%超10質量%未満であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい場合もある。
【0075】
第二樹脂組成物は、求められる機能に応じて、主樹脂および第一樹脂以外の成分を含有してもよい。例えば、高い粘着性が求められる場合には粘着付与樹脂を含有してもよい。粘着性を変化させることが求められる場合には、エネルギー線重合性化合物を含有してもよい。これらの添加成分の第二樹脂組成物における含有量は、求める機能に応じて設定される。
【0076】
粘着剤層3の厚さは、用途に応じて適宜設定されるべきものであり、限定されない。粘着剤層3の厚さは、通常は3μmから500μm、好ましくは5μmから200μm程度である。
【0077】
(3)粘度に関する比率
せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲における220℃の第一樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲における220℃の第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下であることが好ましい。本明細書において、220℃は、共押出成形を行う場合における、複数の樹脂組成物が接するときの温度の典型的な一例として位置付けられる。
【0078】
(4)剥離シート
本発明の一実施形態に係る第一の積層構造体は、粘着シート1の粘着剤層3側の面に剥離シート4が貼付されて、図2に示される積層構造体10と同様の基本構成を有していてもよい。
【0079】
第一の積層構造体が備えてもよい剥離シート4として、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどのフィルムや、グラシン紙や上質紙などの紙を用いることができる。また、これらの架橋フィルムを用いてもよい。さらに、これらのフィルムの複数が積層された積層フィルムであってもよい。
【0080】
上記剥離シート4の剥離面(粘着剤層3と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0081】
なお、剥離シート4の厚さについては特に限定されず、通常、20μmから150μm程度である。
【0082】
5.第二の積層構造体
図2に示されるように、本発明の一実施形態に係る第二の積層構造体10は、粘着シート1および粘着シート1の粘着剤層3側の面に剥離可能に積層された剥離シート4を備える。本発明の一実施形態に係る第二の積層構造体10が備える粘着剤層3と剥離シート4とからなる積層体は、粘着剤層3を形成するための第二樹脂組成物および剥離シート4を形成するための第三樹脂組成物を用いた共押出成形物である。この粘着剤層3と剥離シート4とからなる積層体は、前述の積層構造体の第二の製造方法において製造される第二積層体であってもよい。
【0083】
第二の積層構造体が備えてもよい基材2として、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどのフィルムや、グラシン紙や上質紙などの紙を用いることができる。また、これらの架橋フィルムを用いてもよい。さらに、これらのフィルムの複数が積層された積層フィルムであってもよい。
【0084】
粘着シート1および粘着剤層3の詳細は第一の積層構造体の場合と同様であるから詳しい説明を省略する。基材2と粘着剤層3とは直接接触していてもよい。あるいは、基材2と粘着剤層3との間に、これらの間で剥離が生じる可能性を低減させるための層状体(連続体でなくてもよい。)が介在してもよい。かかる層状体として、エポキシ接着剤などからなる接着剤層が例示される。基材2における粘着剤層3に対向する面には、コロナ処理、シランカップリング処理等のプライマー処理などが施されていてもよい。
【0085】
剥離シート4は第三樹脂組成物から形成されたものである。第三樹脂組成物の組成は、第二樹脂組成物とともに用いて粘着シート1を共押出成形により製造できる限り、限定されない。粘着シート1の用途に合わせて適宜設定すればよい。第三樹脂組成物は押出成形可能であることから、熱可塑性を有する。第二樹脂組成物がアクリル系樹脂を含有し、第三樹脂組成物はオレフィン系重合体を含有することが好ましい。
【0086】
せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲における220℃の第三樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲における220℃の第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下であることが好ましい。
【0087】
6.第三の積層構造体
本発明の一実施形態に係る第三の積層構造体は、基材2と基材2の一方の面に積層された粘着剤層3とを備えた粘着シート1、および粘着シート1の粘着剤層3側の面に剥離可能に積層された剥離シート4を備える。本発明の一実施形態に係る第三の積層構造体は、基材1を形成するための第一樹脂組成物、粘着剤層3を形成するための第二樹脂組成物および剥離シート4を形成するための第三樹脂組成物を用いた共押出成形物である。第三の積層構造体は、前述の積層構造体の第三の製造方法において製造される第三積層体であってもよい。
【0088】
粘着シート1、基材2および粘着剤層3の詳細は前述の第二の積層構造体の場合と同様であるから詳しい説明を省略する。
【0089】
剥離シート4は第三樹脂組成物から形成されたものである。第三樹脂組成物の組成は、第一樹脂組成物および第二樹脂組成物とともに用いて後述する第三の積層構造体を共押出成形により製造できる限り、限定されない。粘着シート1の用途に合わせて適宜設定すればよい。第三樹脂組成物は押出成形可能であることから、熱可塑性を有する。
【0090】
粘着剤層3を形成するための第二樹脂組成物がアクリル系樹脂を含有し、基材2を形成するための第一の樹脂組成物はエステル系重合体を含有し、剥離シート4を製造するための第三樹脂組成物はオレフィン系重合体を含有することが好ましい場合もある。
【0091】
せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲における220℃の第一樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲における220℃の第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下であることが好ましい。
【0092】
せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲における220℃の第三樹脂組成物の粘度の平均値の、せん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲における220℃の第二樹脂組成物の粘度の平均値に対する比率は、1以上4.3以下であることが好ましい。
【0093】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0095】
〔実施例1〕
(メタ)アクリル酸系トリブロック粘着剤(クラレ社製,「クラリティLA2330」)100質量部に対して、非架橋ポリメタクリル酸微粒子(積水化成社製,「テクポリマーMB−4」,平均粒子径:5.4μm,ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):78万)1質量部を添加し、タンブラーで10分間混合して、粘着剤組成物(A)を第二樹脂組成物として得た。この粘着剤組成物(A)をペレット化したところ、常温(23℃)の環境下では、得られたペレットには凝着(自着現象)は認められなかった。
【0096】
第一樹脂組成物としての非晶質ポリエステル(イーストマンケミカル社製,「イースターGN001」、実施例において「PET−G」と略記する。)を第一の押出機におけるホッパー内に投入し、第一の押出機のスクリュー部内でPET−Gを混練溶融させた。第二の押出機におけるホッパー内に上記の粘着剤組成物(A)を投入し、第二の押出機のスクリュー部内で粘着剤組成物(A)を混練溶融させた。第一の押出機から吐出させた溶融状態のPET−Gおよび第二の押出機から吐出させた溶融状態の粘着剤組成物(A)を、フィードブロックを用いて積層した。さらにTダイを用いて、粘着剤組成物(A)から形成される粘着剤層の厚さが20μmであって、PET−Gから形成される基材の厚さが50μmである第一積層体を粘着シートとして得た。
【0097】
得られた粘着シートの粘着剤層側の面に、剥離シート(リンテック社製,「SP−PET38 1031」)の剥離面を貼付して、粘着シートおよび剥離シートを備える積層構造体を得た。
【0098】
内部温度が220℃であったフィードブロック内の樹脂粘度をシミュレーションソフト(HASL社製,「Materialfit」)を用いてシミュレーションした。220℃における粘着剤組成物(A)のせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は766.9Pa・sと算出された。220℃におけるPET−Gのせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は2986.9Pa・sと算出された。したがって、第一粘度比率は3.9であった。
【0099】
〔実施例2〕
実施例1において、PET−Gに代えて、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA,三井・デュポン ポリケミカル社製,「ニュクレルN0903HC」)を第一樹脂組成物として用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートおよび剥離シートを備える積層構造体を得た。
【0100】
実施例1の場合と同様にして粘度のシミュレーションを行った結果、220℃におけるEMMAのせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は1472.2Pa・sと算出された。したがって、第一粘度比率は1.9であった。
【0101】
〔実施例3〕
実施例1において、第一樹脂組成物としてのPET−Gに代えて、低密度ポリエチレン(LDPE,日本ポリエチレン社製,「ノバテック LD LC604」,本実施例において「RL−resin」と略記する。)を第三樹脂組成物として用いた以外は、実施例1と同様にして共押出成形することによって、20μmの粘着剤層と40μmの剥離シートとからなる第二積層体を得た。
【0102】
この積層体の粘着剤層側の面を、基材としてのポリエステルフィルム(PET,東レ社製,「ルミラーS10」,厚さ50μm)の一方の面に貼付して、粘着シートおよび剥離シートを備える積層構造体を得た。
【0103】
実施例1の場合と同様にして粘度のシミュレーションを行った結果、220℃におけるLDPEのせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は1787.3Pa・sと算出された。したがって、第二粘度比率は2.3であった。
【0104】
〔実施例4〕
第一樹脂組成物としてのPET−Gを第一の押出機におけるホッパー内に投入し、第一の押出機のスクリュー部内でPET−Gを混練溶融させた。第二の押出機におけるホッパー内に、実施例1の製造方法で製造した粘着剤組成物(A)を第一樹脂組成物として投入し、第二の押出機のスクリュー部内で粘着剤組成物(A)を混練溶融させた。第三樹脂組成物としてのRL−resinを第三の押出機におけるホッパー内に投入し、第三の押出機のスクリュー部内でRL−resinを混練溶融させた。
【0105】
第一の押出成形機から吐出させた溶融状態のPET−G、第二の押出成形機から吐出させた溶融状態の粘着剤組成物(A)および第三の押出成形機から吐出させた溶融状態のRL−resinを、フィードブロックを用いて、フィートブロック内の構成がPET−G/粘着剤組成物(A)/RL−resinとなるように積層した。さらにTダイを用いて、PET−Gから形成される基材の厚さが50μmであって、粘着剤組成物(A)から形成される粘着剤層の厚さが20μmであって、RL−resinから形成される剥離シートの厚さが40μmである第三積層体を、粘着シートおよび剥離シートを備える積層構造体として得た。
【0106】
内部温度が220℃であったフィードブロック内の樹脂粘度をシミュレーションソフト(HASL社製,「Materialfit」)を用いてシミュレーションした。220℃におけるPET−Gのせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は2986.9Pa・sと算出された。220℃における粘着剤組成物(A)のせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は766.9Pa・sと算出された。220℃におけるRL−resinのせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は1787.3Pa・sと算出された。したがって、第三粘度比率は3.9であり、第四粘度比率は2.3であった。
【0107】
〔実施例5〕
実施例1において、非架橋ポリメタクリル酸微粒子の種類を積水化成社製「テクポリマーMB−8」,(平均粒子径:8.7μm,ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):112万)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例1の粘着剤組成物(A)に代えて粘着剤組成物(B)を得た。以降、粘着剤組成物(B)を第二樹脂組成物として用いた以外は実施例1と同様にして、粘着シートおよび剥離シートを備える積層構造体を得た。
【0108】
実施例1の場合と同様にして粘度のシミュレーションを行った結果、220℃における粘着剤組成物(B)のせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は823.6Pa・sと算出された。したがって、第一粘度比率は3.6であった。
【0109】
〔比較例1〕
実施例1において用いたアクリルトリブロック粘着剤からなる第二樹脂組成物を得るべく第二の押出成形機のホッパーに当該粘着剤のペレットを投入したところ、スクリュー部への当該樹脂の送入が適切に行われなかった。このため、粘着シートを製造することができなかった。
【0110】
〔比較例2〕
実施例1において、非架橋ポリメタクリル酸微粒子の添加量を、アクリルトリブロック粘着剤100質量部に対して0.01質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例1の粘着剤組成物(A)に代えて粘着剤組成物(C)を得た。
【0111】
得られた粘着剤組成物(C)を第二樹脂組成物として用いた以外は実施例1と同様にして、基材と粘着剤層とからなる第一積層体を形成しようとしたところ、カプセル化が生じて、第一樹脂組成物から形成された層状体と第二樹脂組成物から形成された層状体の積層が適切に行われなかった。このため、比較例2では粘着シートを製造することができなかった。
【0112】
実施例1の場合と同様にして粘度のシミュレーションを行った結果、220℃における粘着剤組成物(C)のせん断速度10〜10(単位:1/s)の範囲の粘度の平均値は658.2Pa・sと算出された。したがって、第一粘度比率は4.5であった。
【0113】
〔比較例3〕
実施例1において、非架橋ポリメタクリル酸微粒子の添加量を、アクリルトリブロック粘着剤100質量部に対して10質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例1の粘着剤組成物(A)に代えて粘着剤組成物(D)を得た。
【0114】
得られた粘着剤組成物(D)を第二樹脂組成物として用いた以外は実施例1と同様にして、基材と粘着剤層とからなる第一積層体を形成しようとしたところ、非架橋ポリメタクリル酸微粒子が過剰であったため粘着剤組成物(D)のスクリュー部への送入が適切に行われなかった。それゆえ、粘着シートを製造することができなかった。
【0115】
〔比較例4〕
実施例1において、非架橋ポリメタクリル酸微粒子を含有させず、架橋ポリメタクリル酸微粒子(旭化成社製,「デルパウダ720V」,平均粒子径:300μm)1質量部添加に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例1の粘着剤組成物(A)に代えて粘着剤組成物(E)を得た。
【0116】
得られた粘着剤組成物(E)を第二樹脂組成物として用いた以外は実施例1と同様にして、基材と粘着剤層とからなる第一積層体を形成しようとしたところ、第一樹脂組成物から形成された層状体(基材)に対して第二樹脂組成物から形成された層状体が適切に積層されず、後者の層状体の厚さが不均一になってしまった。このため、比較例4では粘着シートを製造することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る積層構造体の製造方法は、粘着シートを備える積層構造体を生産性高く製造することができるため、各種用途の積層構造体の製造方法として好適である。本発明に係る積層構造体が備える粘着シートの粘着剤層はその性状に優れるため、本発明に係る積層構造体は、粘着剤層が透明であることが求められる用途や、安定した粘着性が求められる用途に好適に使用されうる。
【符号の説明】
【0118】
1…粘着シート
2…基材
3…粘着剤層
4…剥離シート
10…積層構造体(第一の積層構造体、第二の積層構造体、第三の積層構造体)
図1
図2