(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伸長性層が、ポリスチレン、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、ビニルコポリマー、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルコポリマー及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項3〜6のいずれか一項に記載のシート。
前記伸長性層が、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマーと、(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとを(A):(B)質量比10:90〜90:10で含む、請求項7に記載のシート。
前記非伸長性層が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリアセタール、ポリフェニレン、ポリエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ナイロン及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項3〜8のいずれか一項に記載のシート。
前記粘弾性層が、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、ビニルコポリマー、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルコポリマー、ポリウレタン、及びシリコーンポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項3〜9のいずれか一項に記載のシート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示の態様について説明するが、本発明は以下の態様に限定されず、特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱しない任意の改変が本発明に包含されることが意図される。
【0015】
<シート>
本発明の一態様は、
第1のパターンイメージを有する変形追従部、
第2のパターンイメージを有する非変形追従部、及び
該変形追従部と該非変形追従部との間に存在する変形緩衝部、
を有するシートであって、
該第1のパターンイメージが該第2のパターンイメージを介して視認可能である、シートを提供する。
【0016】
図1〜3は、本発明の一態様に係るシートの例を示す図であり、シート1が対象物2に固定されている状態を示している。
図1〜3を参照し、シート1は、変形追従部11、非変形追従部12、及びこれらの間に存在する変形緩衝部13を有する。典型的な態様において、シートは、
図1〜3に示すように、変形追従部及び非変形追従部がシートの第1及び第2の主面をそれぞれ含む。
【0017】
本開示で、変形追従部とは、シートを対象物に固定した状態で該対象物に変位が生じた際に、該対象物の変位に追従して変位する能力を有する部位である。
本開示で、非変形追従部とは、上記変形追従部に変位が生じた際に該変位に実質的に追従せず、従って実質的に変位が生じない部位である。
本開示で、変形緩衝部とは、上記非変形追従部が上記変形追従部の変位によって実質的に変位しないために十分な変形緩衝能力を有する部位である。
【0018】
シートは、単層又は複数層で構成されていることができる。シートは、変形追従部、非変形追従部、及び変形緩衝部として機能する部位を有していればよい。従って、例示の態様においては、シートが単層であり、該単層が適切な厚み及び物性を有していることによって、変形追従部、非変形追従部、及び変形緩衝部が構成される。また、別の例示の態様においては、シートが、材質、厚み等が互いに異なる複数層で構成され、各層が変形追従部、非変形追従部又は変形緩衝部としてそれぞれ機能することができる。また、更に別の例示の態様においては、シートが、変形追従部及び変形緩衝部として機能する層と、非変形追従部として機能する層との2層で構成されることができ、又は、変形追従部として機能する層と、変形緩衝部及び非変形追従部として機能する層との2層で構成されることができる。以上のように、シートの層構成は、変形追従部、非変形追従部、及び変形緩衝部として機能する部位を有することを条件として任意に設計可能である。例えば、
図1は、シートが単層である場合の例を示しており、
図2及び3は、シートが3層(例えば後述の伸長性層、非伸長性層及び粘弾性層)である場合の例を示している。
【0019】
変形追従部は第1のパターンイメージを有し、非変形追従部は第2のパターンイメージを有する。本開示のシートは、第1のパターンイメージと第2のパターンイメージとが生成するモアレ縞が検出可能であるように構成されている。より具体的には、第1のパターンイメージは第2のパターンイメージを介して視認可能である。ここで第1のパターンイメージが第2のパターンイメージを介して視認可能であるとは、シートの第1のパターンイメージ側及び第2のパターンイメージ側のうち第2のパターンイメージ側から第1及び第2のパターンイメージを観測したときに、第1のパターンイメージが第2のパターンイメージとともに視覚化できることを意味する。視覚化の手段は任意に選択でき、例えば各種カメラを用いた可視光下でのパターンイメージ撮影を例示できる。第1のパターンイメージが第2のパターンイメージを介して視認可能であるような構成によれば、第1のパターンイメージと第2のパターンイメージとの干渉によって生成するモアレ縞もまた視認可能であり、該モアレ縞に基づいた対象物の3次元の変位の評価が可能である。
【0020】
従って、本開示のシートによれば、対象物の変形を、3次元にて、定量的かつ簡便に評価することが可能である。本開示で、対象物の変形を3次元にて評価可能であるとは、対象物の全方位の変位の評価が可能であること、すなわち、互いに直交するX、Y及びZの方向の各々、並びにこれらの任意の2つ以上の組合せの方向のいずれの変位の評価も可能であることを意図する。また、定量的な評価が可能であるとは、対象物の変位の量を検出でき、かつ例えば測定者によるばらつき等の測定誤差が生じにくいことを意図する。また、簡便な評価が可能であるとは、例えば、対象物に近接する必要がなく遠方からの評価が可能であること等を意図する。
【0021】
第1のパターンイメージが第2のパターンイメージを介して視認可能であるための好ましい態様において、本開示のシートの、第1のパターンイメージから第2のパターンイメージを介してシート表面に至るまでの部位は、典型的には明澄な材料で構成されている。本開示で、「明澄な材料」とは、300〜830nm波長光における全光線透過率が30%以上であること、より好ましくは80%以上であることを意味する。上記全光線透過率は、ヘイズメーター(例えば、NDH2000ヘイズメーター(日本電色工業(株)製 東京都文京区))にて測定される値である。
【0022】
本開示のシートの重要な特徴の1つは、変形追従部の変位によって第1のパターンイメージが歪むこと、及び、非変形追従部が有する第2のパターンイメージは、上記第1のパターンイメージの歪みの影響を実質的に受けないこと、すなわち実質的に歪まないことである。シートは、対象物に固定されたときに該対象物の変位を第1のパターイメージの歪みによって3次元で検出できる。すなわち、
図1及び2に示すような対象物の面内方向の変位(
図1及び2の(A)は変位前、
図1及び2の(B)は変位後をそれぞれ示す)、
図3に示すような対象物の厚み方向の変位(
図3(A)は変位前、
図3(B)は変位後をそれぞれ示す)、又はこれらの組合せの変位が、第1のパターンイメージの歪みを生じさせる。そしてこの第1のパターンイメージの歪みと、歪んでいない第2のパターンイメージとによって生じるモアレ縞を検出及び解析することにより、該対象物に生じた変位を3次元において定量的に評価できる。また対象物において変位が生じた位置も特定できる。
【0023】
本開示のシートを用いて対象物の変位を評価する際には、シートのモアレ縞を検出する。モアレ縞の検出機器は、必ずしもシート近傍まで接近する必要はないため、本開示のシートは簡便な評価という点で有利である。加えて、本開示のシートは、安価であり、かつ電源等を必要としないため設置が簡便であるという点でも有利である。
【0024】
第1のパターンイメージ及び第2のパターンイメージとしては、モアレ縞により変位を評価するのに用いられる従来公知の任意のパターンイメージを採用できる。パターンイメージの詳細、例えばパターンイメージ形状の種類、ピッチ等は、目的の変位の量等に応じて適宜選択できる。パターンイメージ形状としては、グリッド、千鳥模様、ドット、複数の平行な直線等を例示できる。例示の態様において、第1及び第2のパターンイメージが、それぞれピッチ約0.4mm〜約0.8mm程度を有するグリッドであることができる。例えば、本開示のシートの好適な用途である建造物の壁面等の変形評価においては、例えば0.1〜2.0mm程度の変位の検出が所望される場合が多い。このような用途に適したパターンイメージの形状及びピッチの例としては、例えば、一辺が100mm程度のサイズのシートにおいて、ピッチ約0.3mm〜約1.0mm程度が挙げられる。
【0025】
好ましい態様において、変形追従部の変位量100%に対する非変形追従部の変位量の割合は、約30%以下、約20%以下、約10%以下、又は約0%であることができる。上記割合は、後述する変位の測定方法において、シートの少なくとも一部が破断するまでのいずれかの任意の時点で満足されればよい。しかし好ましい態様においては、変形追従部の変位が0mmである状態から該変位を増大させたときに、例えばシートの少なくとも一部が破断するまでの全時点で、上記割合が満足される。
【0026】
また、好ましい態様において、変形追従部を10mm変位させたときに、非変形追従部が示す変位は、約3mm以下、又は約2.0mm以下、又は約1.0mm以下、又は約0mmであることができる。
【0027】
但し上記の変位は、各々、以下の方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される。
【0028】
図4は、本発明における非変形追従部の変位の測定方法を説明する図であり、
図4(A)は上面図であり、
図4(B)は側面図である。
図4を参照し、所定サイズ(例えば長さ100mm×幅25mm)の本開示のシート1、及び、シートを固定可能な矩形の板3(例えば、ステンレス板等の金属板)2枚を準備する。シート1が長さ方向Lにおいて2枚の板3に跨るようにシートの変形追従部11側表面を板3表面に固定する。固定は接着等により行う。2枚の板3の各々を把持具(図示せず)で把持し、2枚の板3を互いに引き離す方向に(すなわち
図4(A)中の矢印Aの方向に)、5mm/秒で板間距離が所定距離(例えば10mm)になるまで、引張試験機(例えばSHIMADZU AUTOGRAPH AGS−X 株式会社島津製作所製 京都府京都市)で引っ張る(
図4(B)に示すように)。このとき例えば変形追従部が破断した場合にも引っ張り操作は継続する。このときのシートの非変形追従部12側表面の長さL1を計測(長さが最大となる箇所にて計測)し、試験前の非変形追従部12の長さ(例えば上記の100mm)を差し引いて、非変形追従部12の変位とする。非変形追従部の変位が変形追従部の変位の約30%以下であること、又は、変形追従部を10mm変位させたときの非変形追従部の変位が約3mm以下であることは、いずれも、第1のパターンイメージと第2のパターンイメージとが生成するモアレ縞に基づいた変位の評価の精度が良好であることを示す。
【0029】
例示の態様において、シートが単層である場合、該単層の材質としては、ポリアクリレート等を例示できる。該単層が薄すぎる場合には、変形追従部の変形によって非変形追従部も変形する場合があり、一方厚すぎる場合には、第1のパターンイメージと第2のパターンイメージとが観測角によってずれる場合があり、従ってモアレ縞の視認性が低下する場合がある。このような観点から、該単層の厚みは、好ましくは、約100μm〜約1.5mm、又は約500μm〜約1.0mmである。また、該単層の物性としては、粘性、弾性、又は粘弾性を有することが望ましい。なお本開示でシートが単層であるとは、対象物の変形の検出に実質的に寄与しない層(例えば接着層等)の存在を排除しないことを意図する。
【0030】
好ましい態様において、変形追従部は、第1のパターンイメージを有する伸長性層を含む。好ましい態様において、非変形追従部は、第2のパターンイメージを有する非伸長性層を含む。好ましい態様において、変形緩衝部は、粘弾性層を含む。好ましい態様において、シートは、伸長性層、非伸長性層及び粘弾性層からなる。但しこの場合対象物の変形の検出に実質的に寄与しない層(例えば接着層等)の存在を排除しない。
【0031】
典型的な態様において、伸長性層と粘弾性層とは、伸長性層自体の粘着性によって、若しくは粘着性層自体の粘着性によって、若しくは別途の接着層によって、又はこれらの2つ以上の組合せによって、互いに接着されている。また典型的な態様において、粘弾性層と非伸長性層とは、粘着性層自体の粘着性によって、若しくは非伸長性層自体の粘着性によって、若しくは別途の接着層によって、又はこれらの組合せによって、互いに接着されている。
【0032】
(伸長性層)
伸長性層は、変形追従部として機能するのに十分な伸長性を有する任意の材料で構成されていることができる。特定の態様において、パターンイメージの視認可能性の観点から伸長性層は明澄である。好ましい態様において、伸長性層は、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、ビニルコポリマー、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルコポリマー及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。なお本開示で、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0033】
好ましい態様において、伸長性層は、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマーと、(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとを(A):(B)質量比約10:90〜約90:10で含む。この場合、伸長性層は優れた耐候性、及び被着体への追従性を有することができる。
【0034】
好ましい態様において、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマーは、主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得たものであることができる。
【0035】
好ましい態様において、(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーは、主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得たものであることができる。
【0036】
(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマー及び(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーのそれぞれにおいて、上記共重合は、ラジカル重合により行なうことが好ましい。この場合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロ二トリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、約0.05質量部〜約5質量部とするのがよい。
【0037】
伸長性層において、(A)カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマー及び(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーの一方のTgを0℃以上とし、かつ他方のTgを0℃以下とすることが好ましい。高いTgを有する(メタ)アクリルコポリマーは伸張性層に高い引張強さを与える一方、低いTgを有する(メタ)アクリルコポリマーは伸張性層の伸び特性を良好にするからである。
【0038】
好ましい態様において、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマー及び(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーの重量平均分子量は、それぞれ、約10,000以上、又は約50,000以上、又は約100,000以上であり、また約10,000,000以下、又は約1,000,000以下である。
【0039】
好ましい態様において、上記モノエチレン性不飽和モノマーとしては、一般式CH
2=CR
1COOR
2(式中、R
1は水素又はメチル基であり、R
2は直鎖又は分岐状のアルキル基、フェニル基、アルコキシアルキル基、又はフェノキシアルキル基である)で表されるモノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル類が挙げられる。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレートや2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノエチレン性不飽和モノマーは、所望のガラス転移温度、引張強さ、及び伸び特性を得るために、その目的に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0040】
例えば、メチルメタクリレート(MMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)等、単体で重合した場合のホモポリマーが0℃以上のTgを有するような(メタ)アクリル系モノマーを主成分として共重合させることにより、容易にTgが0℃以上の(メタ)アクリルコポリマーを得ることができる。
【0041】
また、エチルアクリレート(EA)、n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)等、単体で重合した場合のホモポリマーが0℃以下のTgを有するような成分を主成分として共重合させることにより、容易にTgが0℃以下の(メタ)アクリルコポリマーを得ることができる。
【0042】
ここで、(A)カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマー、及び(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求められる。
1/Tg=X
1/(Tg
1+273.15)+X
2/(Tg
2+273.15)+・・・
+X
n/(Tg
n+273.15)
(Tg
1:成分1のホモポリマーのガラス転移点
Tg
2:成分2のホモポリマーのガラス転移点
X
1:重合の際に添加した成分1のモノマーの重量分率
X
2:重合の際に添加した成分2のモノマーの重量分率
X
1+X
2+・・・+X
n=1)
【0043】
上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してカルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーを構成する、カルボキシル基を含有した不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0044】
カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として(具体的には約80質量部〜約95.5質量部の範囲で)、かつカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを約0.5質量部〜約20質量部の範囲で共重合して得るのが好ましい。
【0045】
上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してアミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーを構成する、アミノ基を含有する不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、及びビニルイミダゾール等の含窒素複素環を有するビニルモノマーに代表される3級アミノ基を有するモノマー等が挙げられる。
【0046】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として(具体的には約80質量部〜約95.5質量部の範囲で)、かつアミノ基を含有する不飽和モノマーを約0.5質量部〜約20質量部の範囲で共重合して得るのが好ましい。
【0047】
上記のようにカルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとをそれぞれ別々に重合した後、通常のフィルム成形方法により、伸長性層を形成できる。例えば、これらのポリマーの溶液を混合し、ライナーの剥離面上に塗布し、乾燥・固化させることにより伸長性層を形成することができる。塗布装置としては、通常のコータ、例えば、バーコータ、ナイフコータ、ロールコータ、ダイコータ等を用いることができる。固化操作は、揮発性溶媒を含む塗料の場合の乾燥操作や、溶融した樹脂成分を冷却する操作と同様である。また、伸長性層は、溶融押出成形法によっても形成することができる。
【0048】
伸長性層の形成において、カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとの配合比を変化することにより、所望の引張強さ及び伸び特性を有する伸長性層を得ることができる。具体的には、カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーのうち、Tgが相対的に高いポリマー:Tgが相対的に低いポリマーの配合比を、約10:90〜約90:10、又は約20:80〜約90:10、又は約30:70〜約90:10とすることができる。好ましい態様においては、Tgが相対的に高いコポリマーの量を、Tgが相対的に低いコポリマーの量よりも多くする。
【0049】
好ましい態様において、伸長性層は、上記(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマー及び上記(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーに加え、(C)カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤を更に含む。この架橋剤は、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマーと(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとの架橋に寄与する。このような架橋により網目構造が形成され、伸長性層の低温における伸び特性が更に向上する。有利には、架橋剤は、カルボキシル基と反応することのできる官能基を有し、具体的にはビスアミド系架橋剤(例えば、3M製RD1054)、アジリジン系架橋剤(例えば、日本触媒製ケミタイトPZ33、アビシア製NeoCrylCX−100)、カルボジイミド系架橋剤(例えば、日清紡製カルボジライトV−03,V−05,V−07)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX,E−5XM,E5C)等を使用できる。架橋剤の使用量は、(A)カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマー100質量部に対して約0.1〜約5質量部である。
【0050】
伸長性層は、所望に応じて更に各種の添加剤を1種以上含んでもよい。添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑材、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等を例示できる。
【0051】
好ましい態様において、伸長性層は、例えば数mm程度の変位に対して破断しないような強度を有している。この観点において、伸長性層は、引張強度約100MPa以下を有することが好ましい。またこの観点において、伸長性層の厚みは、例えば、約10μm〜約150μm、又は約30μm〜約100μmであってよい。
【0052】
好ましい態様において、伸長性層は、第1及び第2の主面を有し、該第1の主面上に第1のパターンイメージを有する。第1のパターンイメージは例えば印刷層である。例えば、前述したようなポリマーから形成した伸長性フィルムの表面に所望のパターンイメージを直接印刷する方法、支持体上に形成した所望のパターンイメージを有する印刷層を該伸長性フィルム上に転写する方法、等によって、印刷層を有する伸長性層を形成できる。印刷は、インクジェット、グラビア、凸版、フレキソ、スクリーン、静電複写、昇華放熱転写等で行うことができる。例示の態様においては、上記第1の主面が粘弾性層と対向するように伸長性層と粘弾性層とが互いに固定されている。この場合、第1のパターンイメージが粘弾性層によって保護され、損傷しにくい点で有利である。別の例示の態様においては、上記第2の主面が粘弾性層と対向してもよい。この場合、第1のパターンイメージがコート層等により保護されてもよい。
【0053】
(非伸長性層)
非伸長性層は、非変形追従部として機能するのに十分な非伸長性を有する任意の材料で構成されていることができる。パターンイメージの視認可能性の観点から非伸長性層は典型的には明澄である。
【0054】
好ましい態様において、非伸長性層は、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリビニルからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。非伸長性層は、典型的には硬質フィルムであることができる。硬質フィルムは市販で入手可能なものであってもよく、市販品としては例えばポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリアセタール、ポリフェニレン、ポリエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ナイロン及びポリカーボネート等が挙げられる。
【0055】
典型的な態様において、非伸長性層は、使用時に環境中に露出する場合がある。従って非伸長性層は優れた耐候性を有していることが好ましい。この観点から好ましい非伸長性層としては、ポリエステルが挙げられる。
【0056】
典型的な態様において、非伸長性層は、伸長性層に変位が生じたときに実質的に変位しないために十分な強度を有している。この観点において、非伸長性層は、引張強度約50MPa以上を有することが好ましい。またこの観点において、非伸長性層の厚みは、例えば、約10μm〜約150μm、又は約50μm〜約100μmであってよい。
【0057】
好ましい態様において、非伸長性層は、第1及び第2の主面を有し、該第1の主面上に第2のパターンイメージを有する。第2のパターンイメージは例えば印刷層である。例えば、非伸長性フィルムの表面に所望のパターンイメージを直接印刷する方法、支持体上に形成した所望のパターンイメージを有する印刷層を非伸長性フィルム上に転写する方法、等によって、印刷層を有する非伸長性層を形成できる。印刷は、インクジェット、グラビア、凸版、フレキソ、スクリーン、静電複写、昇華放熱転写等で行うことができる。例示の態様においては、上記第1の主面が粘弾性層と対向するように非伸長性層と粘弾性層とが互いに固定されている。この場合、第2のパターンイメージが粘弾性層によって保護され、損傷しにくい点で有利である。別の例示の態様においては、上記第2の主面が粘弾性層と対向してもよい。この場合、第2のパターンイメージがコート層等により保護されてもよい。
【0058】
(粘弾性層)
粘弾性層は、変形追従部の変位を弾性変形作用により減衰させる能力を有し、非変形追従部が変形追従部の変位によって実質的に変位しないために十分な変形緩衝能力を有する任意の粘弾性材料で構成されていることができる。パターンイメージの視認可能性の観点から粘弾性層は典型的には明澄である。
【0059】
好ましい態様において、粘弾性層は、ポリオレフィン及びオレフィンコポリマー(以下、纏めてオレフィン(コ)ポリマーともいう。)、ビニルコポリマー(例えば塩化ビニルポリマー等)、(メタ)アクリルポリマー及び(メタ)アクリルコポリマー(以下、纏めて(メタ)アクリル(コ)ポリマーともいう。)(例えば、ポリ(メタ)アクリレート、アクリル酸及びアクリルアミドの共重合体等)、ポリウレタン(例えばポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン等)、並びにシリコーンポリマー(例えばメチルビニルシリコーン等)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。また、粘弾性層はゴム層であってもよく、ゴムとしてはブタン系ゴム、ブチル系ゴム等が挙げられる。
【0060】
(メタ)アクリル(コ)ポリマーの原料モノマーとしては、例えば、炭素数が14から22の直鎖又は分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマー(以下、C14−22(メタ)アクリルモノマーともいう。)、例えばイソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ベヘニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソパルミチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
原料モノマーは、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸等)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、イタコン酸等)、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、又は2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有モノマーを含んでもよい。
【0062】
例えば、原料モノマーが、C14−22(メタ)アクリルモノマーとカルボキシル基含有モノマーとを含む場合、配合は、C14−22モノマー約92質量%〜約95質量%に対し、カルボキシル基含有モノマーは約5質量%〜約8質量%であることができる。カルボキシル基含有モノマーの量が約5質量%以上である場合、粘弾性層のせん断貯蔵弾性率G’が大きく、凝集力が良好である点で有利である。また、損失正接tanδが大きく変位緩衝性能において有利である。一方、カルボキシル基含有モノマーの量が約8質量%以下である場合、変位緩衝性能の温度依存性が小さい点で有利である。
【0063】
オレフィン(コ)ポリマーとしては、飽和ポリオレフィン、すなわち、実質的に炭素間二重結合及び三重結合を持たないポリオレフィンが挙げられる。例えば、飽和ポリオレフィンに含まれる炭素間結合のうち、90%以上が単結合であることが好ましい。飽和ポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリα−オレフィン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、水添ポリブタジエン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
飽和ポリオレフィンには非結晶性のポリマーを用いることもできる。非結晶性のポリマーとは、結晶化度が極めて低いか、結晶化状態になり得ないポリマーを意図する。非結晶性のポリマーでは、ガラス転移温度は測定されるが、融点は測定されない。非結晶性のポリマーを用いた場合、粘弾性層の0℃〜40℃でのせん断貯蔵弾性率G’を、例えば1.5×10
4〜5.0×10
6パスカル(Pa)に調整して、良好な変形緩衝性能を得るとともに粘弾性層と他の層とを良好に接着することができる。
【0065】
飽和ポリオレフィンブロックと、芳香族ビニルモノマーブロックとを含むブロック共重合体(以下、ブロック共重合体)もまた使用でき、これは、実質的に炭素間二重結合及び三重結合を持たないポリオレフィンからなるブロックと、芳香族ビニルモノマーからなるブロックとを含む。飽和ポリオレフィンブロックに含まれる炭素間結合のうち、90%以上が単結合であることが好ましい。芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、インデン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上で組み合わせて用いてもよい。ブロック共重合体としては、たとえば、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0066】
飽和ポリオレフィンブロックは非結晶性のものを用いることもできる。非結晶性のものを用いた場合、粘弾性層の0〜40℃でのせん断貯蔵弾性率G’を、例えば約1.5×10
4〜約5.0×10
6パスカル(Pa)に調整して、良好な変形緩衝性能を得るとともに粘弾性層と他の部材とを良好に接着することができる。
【0067】
飽和ポリオレフィン、及び/又はブロック共重合体の配合比は、(メタ)アクリル(コ)モノマー100質量部に対して、約2質量部〜約40質量部とすることができる。約2質量部以上である場合温度依存性の小さい粘弾性層が得られ、約40質量部以下である場合耐候性が良好であり、長期の使用の信頼性、及び他の部材の接着性において有利である。
【0068】
(メタ)アクリル(コ)ポリマーの重量平均分子量は、約10,000〜約2,000,000の範囲とすることができる。上記範囲は、弾性率が高く、長期使用の信頼性において有利である粘弾性層を得る点で有利である。
【0069】
粘弾性層は、上記のようなポリマーに加え、粘着付与樹脂、例えばロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂(水素添加ロジン系樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン系樹脂等)、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、C
5系及びC
9系の石油樹脂、クマロン樹脂等を含んでもよい。また、増粘剤、チキソトロープ剤、増量剤、充填剤等の通常用いられる添加剤を含んでもよい。
【0070】
粘弾性層に使用できる粘弾性材料の例のより詳細な例は、例えば特開2009−249485号公報、特開2006−28224号公報等に記載されている。
【0071】
粘弾性層が薄すぎる場合には、伸長性層の変形によって非伸長性層も変形する場合があり、一方厚すぎる場合には、第1のパターンイメージと第2のパターンイメージとが観測角によってずれる場合があり、従ってモアレ縞の視認性が低下する場合がある。好ましい態様において、粘弾性層の厚みは、約100μm〜約1.5mm、又は約500μm〜約1.0mmである。
【0072】
(追加の層)
シートは、伸長性層、非伸長性層、及び粘弾性層に加えて、追加の層、例えば前述の接着層等を更に有してもよい。接着層は、典型的には、粘着性ポリマーを含有する感圧接着剤層であり、例えば単層フィルム状の感圧接着フィルム、2つの感圧接着層を有する両面接着シート等が挙げられる。
【0073】
接着層は、例えば、粘着性ポリマーを含有する接着剤の塗膜から形成できる。好ましい接着剤は、粘着性ポリマーと粘着性ポリマーとを架橋する架橋剤とを含有する。本開示で、粘着性ポリマーとは、常温(約25℃)で粘着性を示すポリマーである。粘着性ポリマーとしては、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。
【0074】
<シートの特性>
好ましい態様において、シートを引張試験に供したときに、伸長性層は、引張強度0.5MPa以上100MPa以下及び伸び3%以上200%以下を示す。好ましい態様において、シートを引張試験に供したときに、非伸長性層は、引張強度50MPa以上350MPa以下及び伸び1%以上200%以下を示す。好ましい態様において、シートを引張試験に供したときに、粘弾性層は、引張強度0.01MPa以上100MPa以下及び伸び10%以上3000%以下を示す。
【0075】
引張強度及び伸びは、JISK6251(2010年度版・ISO37)に規定される方法に準拠し、以下の条件で測定される。
・測定サンプル形状:JISK6251に記載される「ダンベル状3号形」
・引張速度:300mm/min
・測定温度:23±1℃
引張強度T(単位:MPa)は、測定サンプルの各層の破断に至るまでの最大引張力F(単位:N)と、測定サンプルの各層の断面積A(単位:mm
2)とを測定し、以下の式から求める。
T=F/A
伸びE(単位:%)は、測定サンプルにおける各層の破断時の標線間距離L1(単位:mm)と、標線間距離L0(25mm)とを測定し、以下の式から求める。
E=(L1−L0)/L0×100
【0076】
本開示のシートを上記引張試験に供した際には、通常、各層が順次破断し、例示の態様では非伸長性層、粘弾性層及び伸長性層の順に破断する。従って上記方法にて各層の引張強度及び伸びとして測定される値には他の層による寄与が含まれることになるが、本開示ではそのような測定値をシートにおける各層の引張強度及び伸びとして規定する。
【0077】
好ましい態様において、シートの伸長性層のみをシート面内方向に引っ張ったときに、伸長性層の破断が非伸長性層の破断よりも先に生じる。このことは、
図4を参照して上記した変位の測定方法において、伸長性層の破断が非伸長性層の破断よりも先に生じることによって確認できる。
【0078】
また、好ましい態様において、伸長性層の上記破断時において、非伸長性層の伸びは、伸長性層の伸びに対して0〜35%である。この比は、
図4を参照して上記した変位の測定方法において、伸長性層の破断時における、伸長性層の伸びと非伸長性層の伸びとの比として評価できる。このような比は、モアレ縞による対象物の変位量の精度良い評価に寄与する。
【0079】
好ましい態様において、シートの変形追従部側表面は対象物に対して接着性を有する。この接着性は、変形追従部(例えば伸長性層)自体の粘着性、又は別途の接着層によって与えられることができる。接着層の好適な態様は前述のとおりである。シートの変形追従部側表面の接着特性としては、JISK5600(ISO 2409)に準拠した、モルタル板に対する接着力として、剪断方向で約1.0N/cm
2以上であることが挙げられる。このような接着特性は、例えば対象物がコンクリート、金属等である場合にシートを対象物に良好に固定できる点で有利である。
【0080】
好ましい態様において、本開示のシートは、第1及び第2のパターンイメージを除く実質的に全ての部位が明澄な材料で構成されている。
【0081】
<建造物変形評価用物品>
本発明の別の態様は、上述した本開示のシートを含む建造物変形評価用物品を提供する。
【0082】
典型的な態様において、建造物変形評価用物品は、建造物変形評価用物品と対象物とを接着するための接着面を有する。該接着面は、本開示のシートの変形追従部側表面であってよい。又は、建造物変形評価用物品は、本開示のシートと接着剤との組合せとして提供されてもよい。この場合、シートの使用時に、該シートを該接着剤で対象物に接着することができる。又は、本開示のシートからなる建造物変形評価用物品を提供し、別途従来公知の接着剤を使用して対象物に建造物変形評価用物品を固定することもできる。以上のように、本開示の建造物変形評価用物品は対象物に固定可能な任意の形態で提供されうる。
【0083】
<シート又は建造物変形評価用物品の使用>
本開示のシートは、対象物において生じた変位の位置及び程度を3次元にて評価できるという特性を活用して、種々の対象物の変位の評価に使用できる。本開示のシートは種々の材質及び形状の広範な対象物に適用できるが、特に想定される対象物としては、建造物のコンクリート面(例えばコンクリート壁)、金属面等が挙げられる。本開示のシートは、対象物の変形又は損傷による変位の評価において特に好適に使用できるが、他の用途、例えば第1及び第2のパターンイメージ及びこれらによるモアレ縞を利用した装飾等への適用も可能である。
【0084】
第1及び第2のパターンイメージによって生じたモアレ縞の評価は、従来公知の装置及び方法を用いて行うことが可能である。例えば、モアレ縞を3Dカメラ等の撮影装置で撮影し、得られた画像を適切な画像解析ソフトで解析処理することで、モアレ縞に基づいて変形追従部の変位を3次元にて評価でき、従って対象物に生じた変位を3次元にて評価できる。撮影方法等は適宜設定可能であるが、例えば、第1及び第2のパターンイメージのピッチ差によってモアレ縞を生じさせる場合、拡大倍率は、第1及び第2のパターンイメージのピッチをこれらパターンイメージ間のずれで除した値の2乗に設定することができる。例えば、第1及び第2のパターンイメージの一方のピッチが0.5mm、他方のピッチが0.4mmである場合に拡大倍率を25倍とする方法、また、第1及び第2のパターンイメージの一方のピッチが0.5mm、他方のピッチが0.45mmである場合に拡大倍率を100倍とする方法、等を例示できる。例えば、第1及び第2のパターンイメージの一方のピッチが0.5mm、他方のピッチが0.45mmである場合、ピッチが(0.5/(0.5−0.45))
2mmであるモアレ縞が観測されることが当業者の技術常識により理解されるであろう。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明はこれら限定に何ら限定されない。
【0086】
[実施例1]
<シート構成>
非変形追従部(非伸長性層):格子(グリッド間隔ピッチ0.5mm×0.5mm)が印刷された、厚み100μmの明澄、無色のPETフィルム(PLUS IT−120PF 45−035、プラス株式会社(東京都港区)から入手可能、格子パターンイメージが印刷されていない部位での全光線透過率:99.9%(測定方法:NDH2000ヘイズメーター(日本電色工業(株)製 東京都文京区)にて、D65ランプを光源として用いて測定(有効波長は300〜830nm)。以下同じ。)
変形緩衝部(粘弾性層):厚み1.0mmの明澄、無色のアクリル粘弾性体(2EHA/Irg651/1,6−ヘキサンジオールジアクリレート=100:0.14:0.08(モル比)、Tg=−70℃(測定方法:TAinstruments製Q2000にて測定)、全光線透過率:99.9%)
変形追従部(伸長性層):格子(グリッド間隔ピッチ0.5mm×0.5mm)が印刷された、厚み150μmの明澄、無色の伸長可能テープ(3M(登録商標) インクジェットプリンターラベル 29297、住友スリーエム株式会社(東京都品川区)から入手可能、格子パターンイメージが印刷されていない部位での全光線透過率:99.9%)
【0087】
<シートの作製>
上記のPETフィルムの格子印刷面に上記アクリル粘弾性体を接着し、次いで該アクリル粘弾性体のPETフィルム非形成面に伸長可能テープの格子印刷面を貼り付け、実施例1のシートを得た。
【0088】
<引張試験>
用いたPETフィルム、アクリル粘弾性体及び伸長可能テープ、並びに作製されたシートの各々について、JISK6251に準拠して引張試験を行った。なおシートの引張試験においては、PETフィルム、アクリル粘弾性体、伸長可能テープの順に破断した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
<シートの変形試験、及び変位評価試験>
図4及び5を参照して前述した方法で変形試験を行った。長さ100mm×幅50mmのステンレス板4を2枚準備した。シートを長さ100mm×幅25mmに切り出した。シート1の伸長可能テープ側表面を2つのステンレス板4である板3に跨るように貼り付けた。2枚のステンレス板をそれぞれエアクランプで把持し、引っ張り試験装置にて、
図4(A)の矢印Aの方向にステンレス板を引っ張った。ステンレス板間の距離が2mmになったところで伸長可能テープが破断した。伸長可能テープの最大引張強度は約2.67MPaであった。更に引っ張りを継続したところ、伸長可能テープと粘弾性層とが界面剥離したため、この時点で試験を終了した。伸長可能テープ破断時、及び上記界面剥離時の両者で、PETフィルムの長さL1を計測したところ、いずれも100mmであり、試験前との差は0.0mmであった。従ってPETフィルムには変位が生じなかったことが確認された。ステンレス板間の距離が2mmになったときのモアレ縞を、遠方(シートから30cmの距離)から目視で観察した(
図5(B)参照)。試験前(
図5(A)参照)と比較して、ステンレス板間部位にモアレ縞が生じていることが明瞭に観測され、モアレ縞によって対象物の変位箇所を検出可能であることが確認された。