(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321433
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】電気機器収納用箱体
(51)【国際特許分類】
H02B 1/44 20060101AFI20180423BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
H02B1/44
H05K5/03 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-79571(P2014-79571)
(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公開番号】特開2015-201969(P2015-201969A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】木曽 勝広
(72)【発明者】
【氏名】高木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大庭 進一
【審査官】
段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−065401(JP,A)
【文献】
特開2004−364465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/44
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収納可能な箱体の内部に、前記電気機器の配線を覆うための矩形板状の配線覆い用カバーが、上下方向を軸とした片開き動作により開閉可能に蝶着された電気機器収納用箱体であって、
前記配線覆い用カバーの後面側に、後方へ突出する第1凸部と、前側から後側へ向かうにつれて蝶着部側へ傾斜する第1傾斜面とを設ける一方、
前記箱体側で前記配線覆い用カバーを閉じた際に前記第1凸部と対向する位置に、水平な乗り上げ面と、前記乗り上げ面から一連に前方へ向かって下降傾斜する第2傾斜面とを設けるとともに、前記箱体側で前記配線覆い用カバーを閉じた際に前記第1傾斜面と対向する位置に、前方へ突出する第2凸部を設けており、
前記配線覆い用カバーの前記閉方向への回動に伴い、前記第1凸部が前記第2傾斜面に当接して前記第2傾斜面上を上方へ移動し、最終的に前記第1凸部が前記上面上に乗り上がることにより、前記配線覆い用カバーの上下方向での位置を矯正するとともに、前記第2凸部が前記第1傾斜面に当接し、前記第1傾斜面上を相対的に前方へ移動して前記配線覆い用カバーを前記蝶着部側へ押すことにより、前記配線覆い用カバーの左右方向での位置を矯正することを特徴とする電気機器収納用箱体。
【請求項2】
前記第1傾斜面、及び第1凸部を一体的に備える第1矯正部材と、前記乗り上げ面、前記第2傾斜面、及び前記第2凸部を一体的に備える第2矯正部材とを設け、
前記蝶着部において、前記第1矯正部材を前記配線覆い用カバーに、前記第2矯正部材を前記箱体に夫々設置したことを特徴とする請求項1に記載の電気機器収納用箱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば回路遮断器を収納する分電盤等に使用される電気機器収納用箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば回路遮断器を収納する分電盤等に使用される電気機器収納用箱体には、収納される分電盤等から延びる配線を覆うための配線覆い用カバーが設けられている。そして、この配線覆い用カバーは、背面に対し上下方向を軸とした片開き動作により開閉可能に蝶着されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2586125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように配線覆い用カバーを蝶着すると、自重等により蝶着されていない側が片下がりしてしまい、配線覆い用カバーを閉じることができなくなるといった問題が生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、たとえ配線覆い用カバーが片下がりしたとしても、配線覆い用カバーを確実に閉じることができる電気機器収納用箱体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、電気機器を収納可能な箱体の内部に、前記電気機器の配線を覆うための矩形板状の配線覆い用カバーが、上下方向を軸とした片開き動作により開閉可能に蝶着された電気機器収納用箱体であって、前記配線覆い用カバーの後面側に、後方へ突出する第1凸部と、前側から後側へ向かうにつれて蝶着部側へ傾斜する第1傾斜面とを設ける一方、前記箱体側で前記配線覆い用カバーを閉じた際に前記第1凸部と対向する位置に、水平な乗り上げ面と、前記乗り上げ面から一連に前方へ向かって下降傾斜する第2傾斜面とを設けるとともに、前記箱体側で前記配線覆い用カバーを閉じた際に前記第1傾斜面と対向する位置に、前方へ突出する第2凸部を設けており、前記配線覆い用カバーの前記閉方向への回動に伴い、前記第1凸部が前記第2傾斜面に当接して前記第2傾斜面上を上方へ移動し、最終的に前記第1凸部が前記乗り上げ面上に乗り上がることにより、前記配線覆い用カバーの上下方向での位置を矯正するとともに、前記第2凸部が前記第1傾斜面に当接し、前記第1傾斜面上を相対的に前方へ移動して前記配線覆い用カバーを前記蝶着部側へ押すことにより、前記配線覆い用カバーの左右方向での位置を矯正することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1傾斜面、及び前記第1凸部を一体的に備える第1矯正部材と、前記乗り上げ面、前記第2傾斜面、及び前記第2凸部を一体的に備える第2矯正部材とを設け、前記蝶着部において、前記第1矯正部材を前記配線覆い用カバーに、前記第2矯正部材を前記箱体に夫々設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配線覆い用カバーの前記閉方向への回動に伴い、第1凸部が第2傾斜面に当接して第2傾斜面上を上方へ移動し、最終的に第1凸部が乗り上げ面上に乗り上がることにより、配線覆い用カバーの上下方向での位置が矯正される。また、第2凸部が第1傾斜面に当接し、第1傾斜面上を相対的に前方へ移動して配線覆い用カバーを蝶着部側へ押すことにより、配線覆い用カバーの左右方向での位置が矯正される。したがって、たとえ配線覆い用カバーが片下がりしたとしても、配線覆い用カバーを片下がりしていない状態で閉じることができ、配線覆い用カバーを確実に閉じることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、第1傾斜面、及び第1凸部を一体的に備える第1矯正部材と、乗り上げ面、第2傾斜面、及び第2凸部を一体的に備える第2矯正部材とを設け、蝶着部において、第1矯正部材を配線覆い用カバーに、第2矯正部材を箱体に夫々設置している。したがって、部品点数を削減することができるし、配線覆い用カバーの蝶着部の近傍で配線覆い用カバーの姿勢を矯正することができるため、一層確実に配線覆い用カバーの片下がりを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】キャビネット本体に対し片開き可能に蝶着された配線覆い用カバーを示した斜視説明図である。
【
図4】第2矯正部材の説明図であり、(a)は上面図、(b)は左側面図、(c)は正面図となっている。
【
図6】第1矯正部材の説明図であり、(a)は正面図、(b)は上面図となっている。
【
図7】配線覆い用カバーが上下方向で矯正される様子を示した説明図であり、(a)は矯正前を、(b)は矯正後を夫々示している。
【
図8】配線覆い用カバーが左右方向で矯正される様子を示した説明図であり、(a)は矯正前を、(b)は矯正後を夫々示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる電子機器収納用箱体(以下、キャビネットと称す)について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、キャビネット本体1に対し片開き可能に蝶着された配線覆い用カバー2を示した斜視説明図である。
図2は、
図1の一部を拡大して示した説明図である。
図3は、第2矯正部材20を示した斜視説明図である。
図4は、第2矯正部材20の説明図であり、(a)は上面図、(b)は左側面図、(c)は正面図となっている。
図5は、第1矯正部材40を示した斜視説明図である。
図6は、第1矯正部材40の説明図であり、(a)は正面図、(b)は上面図となっている。
図7は、配線覆い用カバー2が上下方向で矯正される様子を示した説明図であり、(a)は矯正前を、(b)は矯正後を夫々示している。
図8は、配線覆い用カバー2が左右方向で矯正される様子を示した説明図であり、(a)は矯正前を、(b)は矯正後を夫々示している。
【0011】
キャビネットは、背面部1A、左右両側面部1B、1B、及び底面部1Cを有し、前面及び上面に開口する箱状のキャビネット本体1と、キャビネット本体1の上面開口を覆うように組み付けられる上面部材(図示せず)と、キャビネット本体1の前面開口を開閉可能に組み付けられる扉部材(図示せず)とを有している。また、キャビネット本体1の背面部1Aには、上下方向に長い一対の支持部材4、4が左右で対向するように設置されている。さらに、右側の支持部材4に、配線覆い用カバー2が、上下方向を軸とした片開き動作により、キャビネット本体1の内部に収納される電気機器の配線を覆うための空間を開閉可能に蝶着されている。
【0012】
また、配線覆い用カバー2の上側の蝶着部に、本発明の要部となる第1矯正部材40及び第2矯正部材20が設置されている。この第1矯正部材40及び第2矯正部材20は、配線覆い用カバー2を開いた際に配線覆い用カバー2の左側が右側に比べて自重等により片下がりしていたとしても、配線覆い用カバー2を閉じる際に配線覆い用カバー2の左側を片下がりしていない位置へ矯正するためのものである。
【0013】
第2矯正部材20は、金属板を折り曲げてなるもので、前後方向へ長い帯状の右側面部21と、右側面部21の上縁に沿って左側へ折り曲げられた上面部22と、右側面部21の下縁に沿って左側へ折り曲げられた下面部23と、右側面部21の後端から左側に折り曲げられた後面部24と、右側面部21の前側に形成された矯正部25とを有する。この後面部24は、第2矯正部材20を背板部1Aに固定するための基台部として機能するものであり、略中央にネジ孔26が穿設されている。また、矯正部25は、右側面部21の前端から左側へ折り曲げられた補強部25Aと、補強部25Aの先端から前側へ折り曲げられた上下矯正部25Bと、上下矯正部25Bの先端から再び左側へ折り曲げられた規制部25Cとを有する。そして、上下矯正部25Bの上端面に、片下がり矯正時に第1矯正部材40が乗り上げる水平な乗り上げ面27と、乗り上げ面27から一連に前方へ向かうにつれて下降傾斜する上下傾斜面28と、上下傾斜面28の下端と同じ上下方向高さのまま規制部25Cへ続く回転許容面29とが設けられている。また、規制部25Cには、上端面が乗り上げ面27よりも上方まで突出する規制壁30と、規制壁30の右側(上下矯正部25B側)で、上端面が回転許容面29から同じ上下方向高さで続く回転許容部とが設けられている。
【0014】
一方、第1矯正部材40は、第2矯正部材20と同じく金属板を折り曲げてなるもので、正面視板状の基台部41と、基台部41の右端から前側へ折り曲げられた右側面部42と、基台部41の上端から前側へ折り曲げられた上面部43と、上面部43の前端から上側へ折り曲げられた立ち上げ部44と、立ち上げ部44の上端から後側へ折り曲げられた後方突出部45とを有する。この基台部41は、配線覆い用カバー2の後面に設けられた固定部5の後面に固定される箇所であり、ネジ孔46が穿設されている。また、後方突出部45の左端部は、立ち上げ部44よりも左側へ突出しており、その左側端面は、前側から後側へむかうにつれて右側(蝶着部側)へ傾斜する左右傾斜面47として形成されている。
【0015】
そして、上記第2矯正部材20は、矯正部25が前方へ突出するような姿勢で後面部24をキャビネット本体1の背板部1Aにネジ止めすることにより、キャビネット本体1の内部に設置される。一方、第1矯正部材40は、基台部41の前面を固定部5の後面に、右側面部42を、固定部5の右側面に夫々当接させた状態でネジ止めすることにより、キャビネット本体1の内部に設置される。この設置状態においては、配線覆い用カバー2を開いた際に第2矯正部材20の上下傾斜面28と第1矯正部材40の後方突出部45とが前後方向で対向し、且つ、第1矯正部材40の後方突出部45が第2矯正部材20の回転許容面29の上方に位置し、第2矯正部材20の規制壁30と第1矯正部材40の左右傾斜面47とが左右方向で対向している。
【0016】
また、上述の如く設置された第1矯正部材40及び第2矯正部材20は、配線覆い用カバー2を閉じる際に次のように作用する。まず、
図7をもとに上下方向での矯正について説明すると、配線覆い用カバー2の閉方向への回動に伴い、第1矯正部材40の後方突出部45の後端が上下傾斜面28に当接する(
図7(a))。そこで、さらに配線覆い用カバー2を閉方向へと回動させると、後方突出部45の後端が上下傾斜面28上を滑って第1矯正部材40、ひいては配線覆い用カバー2が上方へ移動する。そして最終的には、乗り上げ面27上に後方突出部45が乗り上がり、片下がりしている配線覆い用カバー2が上下方向に矯正された状態で閉じられることになる(
図7(b))。
【0017】
次に、
図8をもとに左右方向での矯正について説明すると、配線覆い用カバー2の閉方向への回動に伴い、第1矯正部材40の後方突出部45の左右傾斜面47が規制壁30に当接する(
図8(a))。そこで、さらに配線覆い用カバー2を閉方向へと回動させると、規制壁30が左右傾斜面47上を相対的に前方へ移動する格好で第1矯正部材40を右方へ押し、第1矯正部材40、ひいては配線覆い用カバー2が右方へ移動する。そして、最終的には、規制壁30が左右傾斜面47の前端に至り、片下がりしている配線覆い用カバー2が左右方向にも矯正された状態で閉じられることになる(
図8(b))。
【0018】
以上のような構成を有するキャビネットによれば、配線覆い用カバー2の上側の蝶着部において、キャビネット本体1側に上下傾斜面28及び規制壁30を備えた第2矯正部材20を設置するとともに、配線覆い用カバー2側に左右傾斜面47を備えた第1矯正部材40を設置している。そして、配線覆い用カバー2の閉方向への回動に伴い、第2矯正部材20の上下傾斜面28と第1矯正部材40の後方突出部45とを干渉させることにより、配線覆いカバー2の片下がりを上下方向で矯正するとともに、第2矯正部材20の規制壁30と第1矯正部材40の左右傾斜面47とを干渉させることにより、配線覆いカバー2の片下がりを左右方向で矯正するようになっている。したがって、たとえ配線覆い用カバー2が片下がりしたとしても、配線覆い用カバー2を片下がりしていない状態で閉じることができ、配線覆い用カバー2を確実に閉じることができる。
【0019】
また、上下傾斜面28及び規制壁30を第2矯正部材20として一体的に設けるとともに、後方突出部45及び左右傾斜面47を第1矯正部材40として一体的に設けているため、片下がり矯正に係る部品点数を削減することができる。
さらに、第1矯正部材40及び第2矯正部材20を、配線覆い用カバー2の蝶着部に設置しているため、蝶着部の近傍で配線覆い用カバー2の姿勢を矯正することができる。したがって、一層確実に配線覆い用カバー2の片下がりを矯正することができる。
【0020】
なお、本発明に係るキャビネットは、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、キャビネットの全体的な構成は勿論、配線覆い用カバーに係る構成や第1矯正部材、第2矯正部材に係る構成等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0021】
たとえば、上記実施形態では、右側を軸として配線覆い用カバーを片開き可能としているが、左側を軸として片開き可能としても何ら問題はない。
また、上記実施形態では、後方突出部及び左右傾斜面の両者を第1矯正部材の一部として、上下傾斜面及び規制壁の両者を第2矯正部材の一部として夫々設けているが、後方突出部と左右傾斜面とを別の部材に設けたり、上下傾斜面と規制壁とを別の部材に設けたりすることも可能である。
さらに、上記実施形態では、第1矯正部材や第2矯正部材を配線覆い用カバーの蝶着部に設置しているが、開放側に設置してもよいし、後方突出部及び上下傾斜面を開放側に、左右傾斜面及び規制壁を蝶着側に夫々設置する等してもよく、後方突出部や左右傾斜面等の設置位置についても適宜変更可能である。
加えて、キャビネット本体の構成についても適宜変更可能であり、本発明において、上面部等を有して前方へのみ開口するようなキャビネット本体を箱体として採用することも当然可能である。
【符号の説明】
【0022】
1・・キャビネット本体(箱体)、2・・配線覆い用カバー、20・・第2矯正部材、25・・矯正部、25B・・上下矯正部、25C・・規制部、27・・乗り上げ面、28・・上下傾斜面(第2傾斜面)、29・・回転許容面、30・・規制壁(第2凸部)、40・・第1矯正部材、45・・後方突出部(第1凸部)、47・・左右傾斜面(第1傾斜面)。