(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリゴンミラースキャナモータは、レーザビームプリンタなどに搭載され、ポリゴンミラー(多面鏡)を高速回転させるモータである。レーザーダイオードで生成されたレーザービームは、ポリゴンミラースキャナモータにより回転駆動されたポリゴンミラーに対して照射され、ポリゴンミラーで反射される。これにより、感光体上をスキャンするレーザービームが生成される。
【0003】
一般的に、ポリゴンミラーは中心部に形成された嵌合孔を含んでおり、嵌合孔の内周面は、ロータの外周面と嵌合している。ポリゴンミラーのロータに対する着脱を容易にするために、嵌合孔の内周面とロータの外周面との間には隙間が設けられている。従来のポリゴンミラースキャナモータにおいて、ポリゴンミラーは、押さえバネ、ネジ、または接着剤などを用いてロータに固定されていた。
【0004】
たとえば下記特許文献1には、嵌め込み孔を含む回転多面鏡と、回転多面鏡の嵌め込み孔に嵌め込まれた円筒部を含むロータと、ロータの円筒部の上部にネジ止めされたミラー押さえ部材とを備えた多面鏡駆動装置が開示されている。ミラー押さえ部材は、ロータにネジ止めされたキャップと、キャップと回転多面鏡との間でキャップからのスラスト方向の力により弾性変形している押さえバネとを含んでいる。キャップと回転多面鏡との間の隙間には接着剤が充填されている。回転多面鏡は、押さえバネから受ける力と接着剤とでロータに固定されている。回転多面鏡およびミラー押さえ部の各々は、ロータの円筒部における同一径の部分に嵌め込まれている。
【0005】
下記特許文献2には、ロータと、ロータの一部が挿入された中心孔を有し、ロータ上に載置されたリング状のポリゴンミラーと、ポリゴンミラーをミラー載置部に向けて押しつけ固定するキャップとを備えたポリゴンミラー型光偏光器が開示されている。キャップのミラー固定部と、ポリゴンミラーとは接着剤によって固定されている。ポリゴンミラーおよびキャップの各々は、ロータにおける同一径の部分に嵌め込まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、回転体が回転する場合には、回転軸を中心とする半径の大きさに比例する大きさの遠心力が作用し、回転体は膨張する。回転が停止すると遠心力が作用しなくなり、回転体は元の寸法に戻る。したがって、外径の大きな回転体ほど作用する遠心力が大きくなり、膨張量が大きくなる。
【0008】
ポリゴンミラースキャナモータは、約40000rpmという高速でポリゴンミラーを回転駆動する。ポリゴンミラーの外径はロータの外径よりも大きいため、ポリゴンミラーに作用する遠心力はロータに作用する遠心力よりも大きくなる。このため、ロータの外周面と嵌合孔の内周面と隙間は、回転停止時には小さくても、回転時にはポリゴンミラーに作用する遠心力とロータに作用する遠心力との差に起因して大きくなる。その結果、ポリゴンミラーの回転(起動)および停止が繰り返されると、ロータに対するポリゴンミラーの位置が徐々にずれ、ポリゴンミラーの重心がサブミクロン単位で移動する。これにより、安定性が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、安定性を向上することのできるポリゴンミラースキャナモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面に従うポリゴンミラースキャナモータは、回転軸を中心として回転するロータと、ロータの外周面と嵌合された嵌合部材と、ロータの外周面と嵌合され、
回転軸に直交する面で嵌合部材に接着されたポリゴンミラーとを備え、ロータにおける嵌合部材と嵌合する部分の径は、ロータにおけるポリゴンミラーと嵌合する部分の径よりも小さい。
【0011】
上記ポリゴンミラースキャナモータにおいて好ましくは、ロータは、回転軸の位置に設けられた円柱形状のシャフトを含み、嵌合部材はシャフトの外周面と嵌合される。
【0012】
上記ポリゴンミラースキャナモータにおいて好ましくは、嵌合部材は、シャフトと嵌合する嵌合孔を含み、嵌合孔のサイズは、シャフトを基準として規定される。
【0013】
上記ポリゴンミラースキャナモータにおいて好ましくは、ロータは、ロータフレームをさらに含み、ロータフレームは、シャフトの外周面に嵌合されたロータボスと、ロータボスよりも外径側に設けられたロータテーブルとを含み、ロータボスはロータテーブルよりも回転軸の一方側に突出しており、ポリゴンミラーは、ロータボスの外周面と嵌合され、かつ回転軸の延在方向の他方側の面でロータテーブルと接触する。
【0015】
上記ポリゴンミラースキャナモータにおいて好ましくは、ポリゴンミラーをロータに対して付勢する付勢部材をさらに備え、付勢部材は、嵌合部材と接触し、嵌合部材を介してポリゴンミラーを付勢する。
【0016】
上記ポリゴンミラースキャナモータにおいて好ましくは、嵌合部材とポリゴンミラーとは同じ材料よりなる。
【0017】
上記ポリゴンミラースキャナモータにおいて好ましくは、
嵌合部材の上部において、嵌合部材を介してポリゴンミラーを付勢する押さえばねをさらに備え、嵌合部材は、回転軸の延在方向の一方側から他方側に貫通する貫通孔
であって、押さえばねよりも外径側の位置に設けられた貫通孔を含み、貫通孔の底面全体にポリゴンミラーが存在する。
【0018】
上記ポリゴンミラースキャナモータにおいて好ましくは、嵌合部材は、ロータの外周面に対して中間バメまたは圧入の方法で嵌合される。
【0019】
上記ポリゴンミラースキャナモータにおいて好ましくは、嵌合部材は、ロータの外周面と嵌合される嵌合孔を含み、嵌合孔は多角形の平面形状を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安定性を向上することのできるポリゴンミラースキャナモータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態におけるポリゴンスキャナモータの構成を模式的に示す断面図である。なお、以降の
図1〜
図4の説明において、回転軸Rに沿って押さえばね51からスラストカバー33に向かう方向(
図1中下方向)を下と記し、回転軸Rに沿ってスラストカバー33から押さえばね51に向かう方向(
図1中上方向)を上と記すことがある。
【0025】
図1を参照して、本実施の形態におけるポリゴンスキャナモータは、ポリゴンミラーを回転駆動するものである。ポリゴンスキャナモータは、ロータ10と、ステータ20と、流体軸受30と、基板40とを主に備えている。ロータ10は流体軸受30によって支持されている。ロータ10は、回転軸Rを中心としてステータ20に対して回転する。ロータ10は、ロータフレーム11と、マグネット12と、シャフト13とを備えている。シャフト13は円柱形状を有しており、回転軸Rの位置に設けられている。ロータ10において、シャフト13は、ロータフレーム11の中心部を貫くように上下方向に延在している。ロータフレーム11は、回転軸Rを中心としてシャフト13とともに回転可能である。マグネット12は、ステータ20と対向するようにロータフレーム11に取り付けられている。
【0026】
ロータフレーム11は、ロータボス14aと、ロータテーブル14bと、側壁部14cとを含んでいる。ロータボス14aは、円の平面形状を有しており、シャフト13の外周面に嵌合されている。ロータボス14aは円筒形状を有しており、ロータテーブル14bよりも上側に突出している。ロータテーブル14bは、ロータボス14aよりも外径側に設けられており、ロータボス14aから外径方向(
図1中横方向)に延在している。側壁部14cは、ロータテーブル14bの外径側端部から下方向に延在している。
【0027】
ロータボス14aの中心部にはシャフト13を通すための孔60が設けられている。ロータフレーム11は、孔60を通じてシャフト13の外周面と嵌合することにより、シャフト13に固定されている。ロータテーブル14bは、たとえば円の平面形状を有している。側壁部14cは円筒形状を有しており、外周側を向いた面である外周面11aと、内周側を向いた面である内周面11bとを有している。マグネット12は、内周面11bに取り付けられている。
【0028】
ポリゴンミラースキャナモータは、プレート(嵌合部材の一例)50と、ポリゴンミラー51と、押さえばね52(付勢部材の一例)とをさらに備えている。プレート50とポリゴンミラー51とは、熱膨張係数を等しくするために、同じ材料よりなっていることが好ましく、たとえばアルミニウムなどの金属よりなっている。
【0029】
プレート50は、たとえば板状であり、嵌合孔50aと、複数の貫通孔50bとを含んでいる。嵌合孔50aは、プレート50の中心部分に設けられている。嵌合孔50aの内周面はシャフト13の外周面と嵌合されており、それによってプレート50はロータ10に対して固定されている。複数の貫通孔50bの各々は、嵌合孔50aの周囲に設けられており、プレート50の上面から下面に貫通している。
【0030】
ポリゴンミラー51は、プレート50の下部に設けられている。ポリゴンミラー51は、板状であり、多角形の平面形状を有している。ポリゴンミラー51は、中心部分に設けられた嵌合孔51aを含んでいる。嵌合孔51aの内周面はロータボス14aの外周面と嵌合されている。嵌合孔51aの内径は、ロータボス14aの外径よりもわずかに大きいため、嵌合孔51aとロータボス14aとの間には隙間が設けられている。これにより、ポリゴンミラー51のロータ10に対する着脱が容易になっている。ポリゴンミラー51は、ロータテーブル14b上に載置されており、ポリゴンミラー51の下面はロータテーブル14bと接触している。また、ポリゴンミラー51の上面とプレート50の下面とは、互いに接着されている。なお、ポリゴンミラー51とプレート50とは、どの部分で接着されてもよいが、回転軸Rに直交する面で互いに接着されることが好ましい。
【0031】
ここで、ロータ10におけるプレート50が嵌合する部分の径を径R1と規定し、ロータ10におけるポリゴンミラー51が嵌合する部分の径を径R2と規定する。本実施の形態では、シャフト13およびロータボス14aはいずれも円筒形状を有しているので、径R1はシャフト13の外径に相当し、径R2はロータボス14aの外径に相当する。ロータボス14aはシャフト13の外径側に設けられているので、径R1は径R2よりも小さい。
【0032】
ロータ10におけるプレート50が嵌合する部分を、シャフト13のように、ロータ10の中で径の最も小さな部分とすることにより、ロータ10の回転時に遠心力に起因するプレート50の内径の膨張量を小さくすることができる。
【0033】
押さえばね52は、プレート50の上部に設けられている。押さえばね52は、嵌合孔52aと、複数の足52bとを含んでいる。嵌合孔52aは押さえばね52の中心に設けられている。嵌合孔52aの内周面はシャフト13の外周面と嵌合されており、それによって押さえバネ52はシャフト13に固定されている。複数の足52bの各々は、嵌合孔52aから等間隔で外径方向および下方向に突出している。複数の足52bの各々における外径側の端部は、プレート50の上面と接触している。これにより、押さえばね52は、プレート50を介してポリゴンミラー51をロータテーブル14b(ロータ10)に対して下方向に付勢している。
【0034】
ステータ20は、中央から径方向外側へ放射状に延びるように形成された複数のティース部21aを有するステータコア21と、ティース部21aの周囲に巻回されたステータコイル22とを備えている。ステータ20は、マグネット12と空間を隔てて対向するようにマグネット12よりも内周側に配置されている。ステータコイル22は、電流が流された場合に磁界を発生する。ステータコイル22の磁界とマグネット12の磁界との相互作用により、駆動力(ロータ10を回転させる力)が発生する。
【0035】
基板40の中心部には孔61が形成されており、シャフト13および流体軸受30のスリーブ32が孔61を貫通している。なお図示しないが、基板40には、ブラシレスモータを駆動および制御するための駆動・制御集積回路や、チップ型電子部品(抵抗、コンデンサ)や、各ステータコイル22への電圧の印加をオン/オフするためのパワーMOSアレイなどが形成されていてもよい。
【0036】
なお、シャフト13の外周面およびスリーブ32の軸受孔41の内周面のうち少なくとも一方に、動圧を発生させるための溝(動圧溝)を形成することにより、流体軸受30を流体動圧軸受としてもよい。この軸受孔41は、
図1のように貫通していてもよいし、回転軸R方向の一端が塞がっていてもよい。
【0037】
流体軸受30は、シャフト13と、スリーブ32と、スラストカバー33およびスラスト板34とを含んでいる。スリーブ32は軸受孔41を含んでおり、シャフト13は軸受孔41内に挿入されている。シャフト13の外周面と、軸受孔41の内周面と、スラスト板34とにより構成された空間(スリーブ32とシャフト13との間)には、オイル(図示無し)が充填されている。スラストカバー33は、軸受孔41の下端部を覆っており、スラスト板34は、スラストカバー33とシャフト13の下端面13aとの間に配置されている。
【0038】
図2は、プレート50の構成を模式的に示す平面図である。
【0039】
プレート50は、たとえば
図2(a)、
図2(b)、または
図2(c)などに示す構成を有している。
図2(a)に示すプレート50では、プレート50の外形は円の平面形状を有しており、嵌合孔50aは円の平面形状を有している。
図2(b)に示すプレート50では、プレート50の外形は円の平面形状を有しており、嵌合孔50aは多角形(ここでは四角形)の平面形状を有している。この場合、嵌合孔50aは、必要な寸法精度で形成されたシャフト13を挿入することで、シャフト13を基準としてその寸法精度(サイズ)が規定される。これにより、嵌合孔50aのサイズを高精度にすることができる。
図2(c)に示すプレート50では、プレート50の外形は多角形(ここでは四角形)の平面形状を有しており、嵌合孔50aは円の平面形状を有している。嵌合孔50aが
図2(a)および
図2(c)に示すように円の平面形状を有している場合、嵌合部50aの内径が、径R1に相当する。また、嵌合孔50aが
図2(b)に示すように多角形の平面形状を有している場合、嵌合孔50aにおけるシャフト13が接する部分を繋いだ円の直径が、径R1に相当する。
【0040】
なお、
図2(a)、
図2(b)、および
図2(c)に示すプレート50は、いずれも等間隔で形成された複数(ここでは3個)の貫通孔50bを含んでいるが、貫通孔50bの位置および個数は任意であり、貫通孔50bは設けられていなくてもよい。
【0041】
[ポリゴンスキャナモータの組立方法]
【0042】
次に、ポリゴンミラースキャナモータの組立方法ついて説明する。
【0043】
図3および
図4は、本発明の一実施の形態におけるポリゴンミラースキャナモータの組立方法を説明する部分断面図である。
図3および
図4では、
図1における回転軸Rよりも左側におけるロータフレーム11の上部付近のみが拡大して示されている。
【0044】
図3(a)を参照して、ステータ20に対してロータ10を組み付けた後、ロータボス14aの外周面にポリゴンミラー51の嵌合孔51aを嵌合させる。これにより、ポリゴンミラー51はロータテーブル14b上に載置される。
【0045】
ポリゴンミラー51とロータボス14aとは、隙間バメなどの方法で嵌合されることが好ましい。これにより、ポリゴンミラー51とロータボス14aとを嵌合させる際に、ポリゴンミラー51に力が加わりポリゴンミラー51が損傷する事態や、ポリゴンミラー51に手や工具などが接触することでポリゴンミラー51が汚染される事態を回避することができる。
【0046】
図3(b)を参照して、続いて、シャフト13の外周面にプレート50の嵌合孔50aを嵌合させる。これにより、プレート50はポリゴンミラー51上に載置される。プレート50とシャフト13との嵌合方法としては、JIS(Japanese Industrial Standards) B 0401に規定される中間バメまたは圧入などの方法を用いることができる。プレート50とシャフト13との間になるべく隙間が生じないように、嵌合孔50aは、シャフト13の外周面に応じた寸法精度を有していることが好ましい。プレート50とシャフト13との隙間を小さくすることにより、万が一、ロータ10が回転した場合に、シャフト13に対するプレート50の位置が遠心力によりずれたとしても、ロータ10が停止した場合に、プレート50はシャフト13との相互作用により元の位置に戻るようになる。プレート50とシャフト13との隙間(クリアランス)は1μm以下とされることが好ましい。
【0047】
図4(a)を参照して、続いて、シャフト13の外周面に押さえばね52の嵌合孔52aを嵌合させ、押さえばね52を下方へ移動させる。これにより、押さえばね52の複数の足52bは縮んだ状態となり、プレート50およびポリゴンミラー51は、複数の足52bの各々によってロータテーブル14bに対して押しつけられて固定される。
【0048】
図4(b)を参照して、次に、複数の貫通孔50bの各々を通じて、プレート50とポリゴンミラー51との間に接着剤53を注入し、プレート50とポリゴンミラー51とを接着により固定する。接着剤53としては、嫌気性接着剤を用いることが好ましい。これによりプレート50およびポリゴンミラー51が金属よりなる場合に、接着剤の浸透性を高めることができ、容易に接着することができる。
【0049】
なお、プレート50が貫通孔を含んでいない場合には、ポリゴンミラー51をロータテーブル14b上に載置した後(
図3(a)に示す工程の後)であって、プレート50をポリゴンミラー51上に載置する前(
図3(b)に示す工程の前)に、ポリゴンミラー51の上面およびプレート50の下面の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布するようにしてもよい。
【0051】
本実施の形態のポリゴンミラースキャナモータによれば、ポリゴンミラー51はプレート50に接着されているため、回転時にロータ10の外周面とポリゴンミラー51の嵌合孔51aの内周面と隙間が大きくなったとしても、ポリゴンミラー51の位置ずれはプレート50によって抑制される。すなわち、ロータ10におけるプレート50が嵌合する部分の径R1(シャフト13の外径)は、ポリゴンミラー51が嵌合する部分の径R2(ロータボス14aの外径)よりも小さいため、回転時におけるプレート50の嵌合孔50aの膨張量は小さく、プレート50のロータ10に対する位置ずれは小さい。また、回転時の膨張に起因してロータ10に対するプレート50およびポリゴンミラー51の位置が相対的にわずかに移動したとしても、停止時には、プレートおよびポリゴンミラー51は元の位置に戻る。その結果、ポリゴンミラー51の回転および停止が繰り返された場合であっても、ロータ10に対するポリゴンミラー51の位置はずれにくくなり、ポリゴンミラースキャナモータの安定性を向上することができる。
【0052】
加えて、プレート50、ポリゴンミラー51、および押さえばね52は、いずれもシャフト13に対して嵌合されているに過ぎないので、万が一ポリゴンミラーに不具合(たとえばポリゴンミラーの表面の汚染や変形など)が生じた場合には、プレート50、ポリゴンミラー51、および押さえばね52をシャフト13から取り外すことにより、ポリゴンミラー51を容易に取り外す(分解する)ことができる。
【0053】
本願発明者は、本実施の形態の効果を確認すべく、以下のシミュレーションを行った。
【0054】
図5は、ポリゴンミラーが42000rpmで回転している時の膨張量の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【0055】
図5を参照して、ポリゴンミラーの回転時には、ポリゴンミラーの嵌合孔の内周面(ポリゴンミラーの内径)の膨張が顕著である。具体的には、ポリゴンミラーの嵌合孔の内周面(
図5中A1部)の膨張量は、約1.4μmにまで達している。
【0056】
図6は、ロータフレームが42000rpmで回転している時の膨張量の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【0057】
図6を参照して、ロータフレームにおけるロータボスのインロー部(ポリゴンミラーと嵌合される部分、
図6中A2部)の膨張量は、約0.6μmである。したがって、回転時にポリゴンミラーの嵌合孔の内周面とロータボスの外周面との間には、1.4μm−0.6μm=0.8μmの差が発生する。その結果、ポリゴンミラーがプレートに接着されない場合には、ロータフレームのロータボスとポリゴンミラーの嵌合孔との間には数μmと隙間があるため、起動および停止が繰り返されることでロータボスに対するポリゴンミラーの位置が相対的に徐々に移動し、ロータのアンバランスが発生する。
【0058】
図7は、プレートが42000rpmで回転している時の膨張量の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【0059】
図7を参照して、ここでは、プレートの嵌合孔の内周面の直径(プレートの内径)がシャフトの外径と同一(プレートとシャフトとのクリアランスが0)であるものとする。この場合、プレートの嵌合孔の内周面(
図7中A3部)の膨張量は、約0.15μmである。
【0060】
図7に示すプレートの膨張量は、
図5に示すポリゴンミラーの膨張量に比べて非常に小さい(ただし、実際にはプレートにはポリゴンミラーが接着されるので、プレートの膨張量は約0.15μmよりも若干大きくなると推測される)。したがって、膨張量の小さいプレートに対してポリゴンミラーを固定することにより、ロータに対するポリゴンミラーの位置がずれにくくなり、ポリゴンミラースキャナモータの安定性を向上することができることが分かる。
【0062】
図8は、本発明の変形例におけるポリゴンスキャナモータの一部の構成を模式的に示す断面図である。
図8では、回転軸Rより左側の部分であって、載置部113よりも上の部分のみの構成を示している。
図8の説明において、回転軸Rに沿ってキャップ152aからロータ110に向かう方向(
図1中下方向)を下と記し、回転軸Rに沿ってロータ110からキャップ152aに向かう方向(
図8中上方向)を上と記すことがある。
【0063】
図8を参照して、本変形例におけるポリゴンミラースキャナモータは、ロータ110と、ステータ120と、プレート150と、ポリゴンミラー151と、ミラー押さえ部材152とを備えている。
【0064】
ロータ110は回転軸Rを中心としてステータ120に対して回転する。ロータ110は円筒形状を有しており、その中空部110aにはステータ120が設けられている。ロータ110は、小径部111と、大径部112と、載置部113とを含んでいる。小径部111は径(外径)R111を有している。大径部112は、小径部111の下部に設けられており、小径部111の径R111よりも大きな径(外径)R112を有している。載置部113は大径部112の下部に設けられており、大径部112よりも外径方向に突出している。
【0065】
プレート150は、中心部分に設けられた嵌合孔150aを含んでいる。嵌合孔150aの内周面は、ロータ110の小径部111の外周面と嵌合されている。
【0066】
ポリゴンミラー151は、中心部分に設けられた嵌合孔151aを含んでいる。嵌合孔151aの内周面は、大径部112の外周面と嵌合されている。ポリゴンミラー151は、載置部113上に載置されており、ポリゴンミラー151の下面はロータ110と接触している。また、ポリゴンミラー151の上面とプレート150の下面とは、互いに接着されている。
【0067】
ミラー押さえ部材152は、ロータ110の上端部に設けられている。ミラー押さえ部材152はネジ153によってロータ110に固定されている。ミラー押さえ部材152は、キャップ152aと、嵌合部152bと、肉薄部152cとを含んでいる。キャップ152aはロータ110およびステータ120を覆うようにロータ110の上端部にネジ153によって固定されている。嵌合部152bは、キャップ152aの下面から下方に延在している。嵌合部152bは円筒形状を有している。嵌合部152bの内周面は、小径部111の外周面と嵌合されている。肉薄部152cは、嵌合部152bの下部に設けられている。肉薄部152cは、嵌合部152bから外径方向に延在している。肉薄部152cは、板ばね状に撓んだ状態でポリゴンミラー151の上面に接触している。これにより、ミラー押さえ部材152は、ポリゴンミラー151を載置部113に押し付けて固定している。さらに、薄肉部152cとポリゴンミラー151の上面とは互いに接着されている。
【0068】
ロータ110におけるプレート150が嵌合する部分の径R111(小径部111の外径)は、ロータ110におけるポリゴンミラー151が嵌合する部分の径R112(大径部112の外径)よりも小さい。
【0069】
本変形例のポリゴンスキャナモータにおいても、上述の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、ロータ110に対する位置ずれが小さいプレート150に、ポリゴンミラー151が接着されているため、回転時にロータ110の外周面とポリゴンミラー151の嵌合孔151aの内周面と隙間が大きくなったとしても、ポリゴンミラー151の位置ずれはプレート150によって抑制される。その結果、ポリゴンミラー151の回転および停止が繰り返された場合であっても、ロータ110に対するポリゴンミラー151の位置はずれにくくなり、ポリゴンミラースキャナモータの安定性を向上することができる。
【0070】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。