(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321457
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】グリル
(51)【国際特許分類】
F24C 15/20 20060101AFI20180423BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20180423BHJP
F24C 3/00 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
F24C15/20 B
A47J37/06 366
F24C3/00 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-112492(P2014-112492)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227735(P2015-227735A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 優美子
【審査官】
宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−013326(JP,A)
【文献】
特開2011−036313(JP,A)
【文献】
特開2012−042171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C15/16−15/36
F24C3/00−3/14
A47J37/00−37/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリルバーナの加熱により焼き物調理を行うグリル庫と、前記グリル庫の後端から後方に延びる排気ダクトと、前記排気ダクトを流れる燃焼排気中に含まれる油煙や臭気成分を焼失させるアフターバーナとを備え、前記アフターバーナの燃焼面が、前記排気ダクトの前記グリル庫に向かって次第に下降する方向に傾斜する下面壁の一部に設けられ、前記アフターバーナの燃焼面の周囲に、前記排気ダクトの下面壁上に立設された仕切壁を備えるグリルにおいて、
前記仕切壁は、前記アフターバーナの燃焼面の前側縁に沿って起立する前方壁部と、前記アフターバーナの燃焼面の後側縁に沿って起立する後方壁部と、前記アフターバーナの燃焼面の左右側縁の夫々に沿って起立する側方壁部とにより構成され、
前記前方壁部の左右方向の両端部の少なくとも下部に、前記アフターバーナの燃焼面と前記側方壁部との間に侵入した煮こぼれを排出自在とする前方開放部が形成されていることを特徴とするグリル。
【請求項2】
請求項1記載のグリルにおいて、
前記アフターバーナの燃焼面の左右側縁と各側方壁部の下端との間に、前記前方開放部の左右方向幅以上の幅を有する側方間隔部が設けられていることを特徴とするグリル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のグリルであって、前記アフターバーナに点火する電極を有する点火器と、前記アフターバーナの火炎を検知する検知部を有する炎検知器とを備えるものにおいて、
前記点火器及び前記炎検知器は、前記電極及び前記検知部が、前記前方壁部の上縁より下方に位置し且つ前記前方開放部を除く前記前方壁部の後方に位置して前記アフターバーナの燃焼面に臨むように設けられていることを特徴とするグリル。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のグリルにおいて、
前記アフターバーナの燃焼面の後側縁と前記後方壁部の下端との間の距離は、前記アフターバーナの燃焼面の前側縁と前記前方壁部の下端との間の距離より大とされていることを特徴とするグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き物調理中に調理物から出る油煙や臭気成分を焼失させることにより、消煙・消臭性能を得られるようにしたグリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚等の焼き物調理を行うグリルにおいては、下記特許文献1に見られるように、グリル庫の後端から後方に延びる排気ダクトにアフターバーナを設けて、燃焼排気中に含まれる油煙や臭気成分を焼失させるようにしたものが知られている。
【0003】
特許文献1において、アフターバーナは、多数の炎孔を有する燃焼面を備えた表面燃焼式バーナにより構成され、アフターバーナの燃焼面は、排気ダクトの下面壁の一部に設けられる。これにより、排気ダクトにおいては、アフターバーナの熱気や燃焼排気による排気抵抗の増大が抑制され、排気ダクトにおけるグリル庫からの燃焼排気の円滑な流れを維持して油煙や臭気成分を焼失させることができる。
【0004】
ところで、例えば、グリルの上方で生じた煮こぼれが排気ダクトの内部に侵入すると、その煮こぼれは、排気ダクトの下面壁に沿って流れる。よって、アフターバーナの燃焼面が排気ダクトの下面壁に設けられていると、煮こぼれがアフターバーナの燃焼面に付着して炎孔を覆い、燃焼面の燃焼が阻害されるおそれがある。
【0005】
そこで、下記特許文献2に見られるように、アフターバーナの燃焼面の外側を包囲する仕切壁を設け、煮こぼれがアフターバーナの燃焼面を回避して流れるようにしたものが知られている。
【0006】
即ち、
図5に示すように、仕切壁51は、アフターバーナの燃焼面52の前側縁に沿って起立する前方壁部53と、燃焼面52の後側縁に沿って起立する後方壁部54と、燃焼面52の左右側縁の夫々に沿って起立する側方壁部55,56とにより構成されている。
【0007】
仕切壁51は、各壁部53,54,55,56の下端から外方に張り出す取付舌片53a,54a,55a,56aを介してネジ止め等により排気ダクトの下面壁57上に取り付けられる。排気ダクトの下面壁57は、グリル庫側に向かって次第に下降するように傾斜しており、下面壁57を流れる煮こぼれは、グリル庫内に収容されている汁受け皿により回収されるようになっている。
【0008】
なお、仕切壁51のうち、後方壁部54と側方壁部55,56とは、アフターバーナの燃焼面52に向かう煮こぼれの流れを阻止するために設けられているが、前方壁部53は、排気ダクトを流れるグリル庫からの燃焼排気がアフターバーナの燃焼面52に接触しないようにするために設けられている。グリル庫からの燃焼排気がアフターバーナの燃焼面52に接触すると、アフターバーナの燃焼面52の火炎が煽りを受けて、良好な燃焼が維持できないおそれがある。そこで、前方壁部53を設けて、アフターバーナの燃焼面52に向かうグリル庫からの燃焼排気の流れを阻止し、燃焼面52での安定した燃焼状態を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−301979号公報
【特許文献2】特開2011−36313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、排気ダクトの下面壁57上にアフターバーナの燃焼面52の外側を包囲する仕切壁51が設けられていても、仕切壁51の内側(燃焼面22側)への煮こぼれの侵入が防止されない場合がある。即ち、醤油、みりん、砂糖等を含む煮汁が煮こぼれとなって仕切壁51に触れると、
図6に示すように、煮こぼれYは、取付舌片55a(56a,54a)と排気ダクトの下面壁57との間に入り込み、側方壁部55,56や後方壁部54の下端から染み出すようにして、仕切壁51の内側に侵入した状態となる。そして、仕切壁51の内側に侵入した煮こぼれYは、側方壁部55,56の下端を伝って前方壁部53に向かってゆっくりと流れる。
【0011】
発明者の知見によれば、仕切壁51の下端からその内側に染み出した煮こぼれは、排気ダクトの下面壁57の傾斜方向に沿って延びている側方壁部55,56の下端に集まるようにして流れる。このため、
図7に示すように、煮こぼれYは、側方壁部55,56から前方壁部53の左右方向両端部にかけての範囲に比較的多く溜まり易い。この煮こぼれYが仕切壁51の内側で更に成長すると、アフターバーナの燃焼面52に形成されている炎孔を塞ぎ、アフターバーナの燃焼が阻害されて、消煙・消臭性能が低下する不都合がある。
【0012】
本発明は、上記の不都合に鑑み、排気ダクトに侵入した煮こぼれの影響による消煙・消臭性能の低下を防止したグリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明は、グリルバーナの加熱により焼き物調理を行うグリル庫と、前記グリル庫の後端から後方に延びる筒状の排気ダクトと、前記排気ダクトを流れる燃焼排気中に含まれる油煙や臭気成分を焼失させるアフターバーナとを備え、前記アフターバーナの燃焼面が、前記排気ダクトの前記グリル庫に向かって次第に下降する方向に傾斜する下面壁の一部に設けられ、前記アフターバーナの燃焼面の周囲に、前記排気ダクトの下面壁上に立設された仕切壁を備えるグリルにおいて、前記仕切壁は、前記アフターバーナの燃焼面の前側縁に沿って起立する前方壁部と、前記アフターバーナの燃焼面の後側縁に沿って起立する後方壁部と、前記アフターバーナの燃焼面の左右側縁の夫々に沿って起立する側方壁部とにより構成され、前記前方壁部の左右方向の両端部の少なくとも下部に、前記アフターバーナの燃焼面と前記側方壁部との間に侵入した煮こぼれを排出自在とする前方開放部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、排気ダクト内に流れ落ちた煮こぼれが、万一仕切壁の内側に侵入しても、前方壁部の前方開放部から仕切壁の外側に円滑に排出することができる。これにより、アフターバーナの燃焼が煮こぼれによって阻害されることがなく、良好な消煙・消臭性能を長期に亘って維持することができる。
【0015】
また、本発明においては、前記アフターバーナの燃焼面の左右側縁と各側方壁部の下端との間に、前記前方開放部の左右方向幅以上の幅を有する側方間隔部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
側方壁部の下端とアフターバーナの燃焼面の左右側縁との間には、比較的多くの煮こぼれが集まり易いが、前記側方間隔部を設けたことによって、煮こぼれがアフターバーナの燃焼面に接触するよも早く前方開放部から排出され、アフターバーナの燃焼面の炎孔が煮こぼれにより塞がれる事態を確実に防止することができる。
【0017】
ところで、アフターバーナの燃焼面の火炎は、仕切壁の前方壁部によって、排気ダクトを流れるグリル庫からの燃焼排気の接触が防止されて安定的に形成される。前方壁部に前方開放部を形成したことにより、グリル庫からの燃焼排気が前方開放部を通過するが、側方間隔部の幅が前方開放部の左右方向幅以上であることにより、アフターバーナの燃焼面は、前方開放部を避けた前方壁部の後方に位置する。よって、前方開放部を通過するグリル庫からの燃焼排気によるアフターバーナの燃焼面の火炎の煽りが抑えられる。
【0018】
また、アフターバーナの近傍に、アフターバーナに点火する電極を有する点火器と、アフターバーナの火炎を検知する検知部を有する炎検知器とが設けられている場合には、点火器の電極や炎検知器の検知部に前方開放部を通過するグリル庫からの燃焼排気が当たって、アフターバーナの点火不良や火炎の検知精度が低下するおそれがある。
【0019】
そこで、本発明においては、前記アフターバーナに点火する電極を有する点火器と、前記アフターバーナの火炎を検知する検知部を有する炎検知器とを備えるとき、前記点火器及び前記炎検知器は、前記電極及び前記
検知部が、前記前方壁部の上縁より下方に位置し且つ前記前方開放部を除く前記前方壁部の後方に位置して前記アフターバーナの燃焼面に臨むように設けられていることが好ましい。
【0020】
これによれば、点火器の電極及び炎検知器の検知部が、グリル庫からの燃焼排気の接触が前方壁部によって回避されている位置で、アフターバーナの燃焼面に臨むので、アフターバーナの点火不良や火炎の検知精度の低下を防止することができる。
【0021】
また、排気ダクト内に流れ落ちた煮こぼれは、排気ダクトの下面壁の傾斜に沿って下降するので、前方壁部の下端から仕切壁の内側に向かって傾斜に逆らって染み出すことは殆どない。従って、アフターバーナの燃焼面の前側縁と前方壁部の下端との間の距離を比較的小さくすることができる。アフターバーナの燃焼面の前側縁と前方壁部の下端との間の距離を可及的に小さくすることで、前方壁部によりグリル庫からの燃焼排気の回避させる効果が向上する。
【0022】
一方、後方壁部の下端からは、煮こぼれが染み出すようにして仕切壁の内側に侵入する。このため、アフターバーナの燃焼面の前側縁と前方壁部の下端との間の距離と同じように、アフターバーナの燃焼面の後側縁と後方壁部の下端との間の距離を小さくすると、後方壁部の下端から仕切壁の内側に侵入した煮こぼれがアフターバーナの燃焼面に付着するおそれがある。
【0023】
そこで、本発明において、前記アフターバーナの燃焼面の後側縁と前記後方壁部の下端との間の距離は、前記アフターバーナの燃焼面の前側縁と前記前方壁部の下端との間の距離より大とされていることが好ましい。これによれば、後方壁部の下端からアフターバーナの燃焼面までの煮こぼれの到達距離が長くなり、燃焼面への煮こぼれの付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るグリルを備えたガスコンロの縦断面概略図。
【
図2】本実施形態のグリルにおけるアフターバーナとその周辺の説明的斜視図。
【
図3】
図2のアフターバーナとその周辺を上方から臨む説明図。
【
図5】従来のグリルにおけるアフターバーナとその周辺の説明的斜視図。
【
図7】
図6のアフターバーナとその周辺を上方から臨む説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態のグリル1は、ガスコンロ2に組み込まれている。ガスコンロ2は、グリル1を収容したコンロ本体3と、コンロ本体3の上部を覆う天板4とを備えている。コンロ本体3は、システムキッチンのカウンタ5に形成されたコンロ用開口6に落とし込んだ状態で装着されている。天板4は、カウンタ5上に露出してコンロ本体3の上部を覆っている。
【0026】
天板4の上面には、五徳7が載置されており、五徳7の下方に開設された天板4の図示しないバーナ用開口部には、五徳7上に載置された鍋等の調理容器をガス燃焼熱によって加熱するコンロバーナ8が臨んでいる。更に、天板4の上面後部には、排気口9が開設されている。
【0027】
グリル1は、グリル庫10と、グリル庫10の前面側の開口を開閉するグリル扉11と、グリル庫10に連通する排気ダクト12とを備えている。グリル庫10内には、魚等の調理物Wを載置する焼網13と、焼網13の下方で調理物Wから出る焼き汁等を受ける汁受け皿14とが収容されている。
【0028】
グリル庫10には、グリルバーナとして、グリル庫10の天井部に配置された上火バーナ15と、グリル庫10の横方向両側部の下部(焼網13よりも低い部分)に配置された下火バーナ16とが設けられている。焼網13上に載置した調理物Wは、上火バーナ15と下火バーナ16とで上下から加熱され、これによって焼き物調理が行われる。
【0029】
排気ダクト12は、グリル庫10の後端上部から後方に且つ斜め上方に延びて、上端が天板4の上面後部の排気口9に臨んでおり、グリル庫10内で生じた燃焼排気をガスコンロ2の外部に導出させる。
【0030】
排気ダクト12の下面壁17は、グリル庫10に向かって次第に下降する方向に傾斜している。排気ダクト12の下面壁17の傾斜は、天板4上に生じた煮こぼれが排気口9から排気ダクト12に流れ込んだとき、下面壁17を伝ってグリル庫10側に案内するために付与されている。排気ダクト12の下面壁17はグリル庫10内に張り出して汁受け皿14に臨んでおり、排気口9に入った煮こぼれは汁受け皿14で回収される。
【0031】
排気ダクト12には、アフターバーナ18が設けられている。アフターバーナ18は、多数の炎孔19(
図2及び
図3参照)が形成された板金製の燃焼板20と、燃焼板20の各炎孔19に燃料ガスと一次空気とを混合した混合ガスを供給するバーナ本体部21とを備えた表面燃焼式ガスバーナにより構成されている。なお、燃焼板20はセラミック製であってもよい。
【0032】
アフターバーナ18の燃焼板20は、排気ダクト12の傾斜する下面壁17の一部に設けられて上向きに面状の火炎を形成する。そして、
図2及び
図3に示すように、アフターバーナ18の燃焼板20は、炎孔19が形成されている領域(
図3に示す燃焼板20上の仮想線で包囲した領域)が燃焼面22となっている。
【0033】
図1を参照して、グリル庫10内で焼き物調理が行われると、上火バーナ15及び下火バーナ16の燃焼排気が、調理物Wから生じた油煙や臭気成分を含んで排気ダクト12に向かう。アフターバーナ18は、排気ダクト12を通過する燃焼排気を加熱し、燃焼排気に含まれる油煙や臭気成分を焼失させる。
【0034】
また、
図1に示すように、排気ダクト12の下面壁17上には、アフターバーナ18の燃焼板20を包囲するようにして、仕切壁23が立設されている。
【0035】
仕切壁23は、
図2及び
図3に示すように、アフターバーナ18の燃焼板20の前側縁に沿って起立する前方壁部24と、アフターバーナ18の燃焼板20の後側縁に沿って起立する後方壁部25と、アフターバーナ18の燃焼板20の左右側縁の夫々に沿って起立する側方壁部26,27とによって構成されている。各壁部24,25,26,27は、夫々の下端から外方に張り出す取付舌片24a,25a,26a,27aを介して図示しないネジ部材等により排気ダクトの下面壁17上に固定されている。
【0036】
前方壁部24の左右方向の両端部には前方開放部28が形成されている。前方開放部28に対応する後方(仕切壁23の内方)であって、アフターバーナ18の燃焼面22の左右側縁と側方壁部26,27の下端との間には、前方開放部28の左右方向幅以上(本実施形態では前方開放部28の左右方向幅と同等)の幅を有する側方間隔部29が設けられている。
【0037】
後方壁部25の左右方向の長さ寸法は、前方壁部24の左右方向の長さ寸法よりも大きい。前方壁部24の左右方向の長さ寸法は、アフターバーナ18の燃焼面22の左右方向幅と略同等であり、後方壁部25の左右方向の両端部は、前方壁部24との寸法差によりアフターバーナ18の燃焼面22の左右側に延出している。そして、各側方壁部26,27が後方壁部25の左右端に連接していることにより、前方壁部24の左右端と側方壁部26,27の前端との間が開いた状態となって前方開放部28が形成されると同時に、各側方壁部26,27の下端がアフターバーナ18の燃焼面22の左右側縁から離間して側方間隔部29が形成される。
【0038】
また、前方壁部24の左右方向の長さ寸法は、アフターバーナ18の燃焼面22の左右方向幅と略同等であることにより、アフターバーナ18の燃焼面22は、前方壁部24の左右方向の長さに対応する後方の領域に収められている。
【0039】
更に、アフターバーナ18の燃焼面22の後側縁と後方壁部25の下端との間には、アフターバーナ18の燃焼面22の前側縁と前方壁部24の下端との間の距離より大とすることにより形成された後方間隔部30が設けられている。
【0040】
後方間隔部30は、燃焼板20の後方側に沿った領域には炎孔19を形成せず、燃焼板20の後側縁と燃焼面22の後側縁との間に距離を設けたことによって形成されている。これにより、前方壁部24と同様に燃焼板20に近接させて後方壁部25を設けても、後方壁部25の下端と燃焼面22との間に十分な広さの後方間隔部30を形成することができる。特に、本実施形態においては、燃焼板20が板金製であるため、炎孔19の加工が極めて容易であり、炎孔19の位置や数量を自由に設定できる利点があり、燃焼板20の製造コストも低く抑えることができる。なお、燃焼板20がセラミック製である場合には、図示しないが、一般に略全面が燃焼面となっているが、燃焼板20の後側縁から離間した位置に後方壁部25を設けることによって、後方間隔部30を形成することができる。
【0041】
以上の構成のように、アフターバーナ18の燃焼面22が後方壁部25と側方壁部26,27とによって囲われていることにより、排気ダクト12の傾斜する下面壁17上を流れる煮こぼれを、燃焼面22から回避させてグリル庫10側へ導くことができる。
【0042】
また、後方壁部25や側方壁部26,27に接触した煮こぼれが、例えば、後方壁部25や側方壁部26,27の取付舌片25a,26a,27aと排気ダクト12の下面壁17との間に入り込み、後方壁部25の下端や側方壁部26,27の下端から染み出すようにして仕切壁23の内方に侵入しても、前方壁部24の左右側の前方開放部28によって仕切壁23の外方に排出することができる。
【0043】
更に、アフターバーナ18の燃焼面22の両側方と後方には、側方間隔部29及び後方間隔部30が設けられているので、側方壁部26,27の下端や後方壁部25の下端から染み出した煮こぼれは、アフターバーナ18の燃焼面22への到達距離が長いために、燃焼面22に付着し難い。特に、比較的多くの煮こぼれが集まり易い側方壁部26,27の下端に沿った側方間隔部29の前方には前方開放部28が設けられているので、煮こぼれがアフターバーナ18の燃焼面22に接触するよも早く煮こぼれを前方開放部28から排出することができる。また、煮こぼれの粘性が高い場合には、側方壁部26,27の下端に沿った流動速度が遅く、後方壁部25の下端や側方壁部26,27の下端に留まる煮こぼれ量も増加するが、側方間隔部29及び後方間隔部30による十分なスペースが確保されているので、煮こぼれの燃焼面22への到達を確実に抑制することができる。
【0044】
このように、本実施形態のグリル1によれば、仕切壁23の内側に煮こぼれが侵入しても、アフターバーナ18の燃焼面22の燃焼が阻害されることがないから、良好な消煙・消臭性能を長期に亘って維持することができる。
【0045】
更に、アフターバーナ18の燃焼面22は、前方壁部24の左右方向の長さに対応する後方の領域に収められているから、前方壁部24によって、グリル庫10からの燃焼排気がアフターバーナ18の燃焼面22に接触することが防止され、燃焼状態を安定させることができる。
【0046】
ところで、
図2及び
図3に示すように、アフターバーナ18の近傍には、燃焼面22に点火するための点火プラグ31(点火器)と、アフターバーナ18の燃焼状態を監視するために燃焼面22に形成される火炎を検知する熱電対32(炎検知器)とが設けられている。点火プラグ31は、排気ダクト12の図外の一方の側壁に取り付けられ、その先端に備える電極31aが燃焼面22の上方に臨んでいる。熱電対32は、排気ダクト12の図外の他方の側壁に取り付けられ、その先端に備える検知部32aが燃焼面22の上方に臨んでいる。
【0047】
そして、点火プラグ31の電極31aと熱電対32の検知部32aとは、何れも、前方壁部24の上縁より下方に位置し且つ前方開放部28を除く前方壁部24の後方に配置されている。これにより、点火プラグ31の電極31a及び熱電対32の検知部32aに対して、前方壁部24によってグリル庫10からの燃焼排気の接触が防止される。それだけでなく、点火プラグ31の電極31aが臨む燃焼面22の炎孔19から噴出する混合ガスがグリル庫10からの燃焼排気によって飛ばされることによる点火不良が防止され、熱電対32の検知部32aが臨む燃焼面22の火炎がグリル庫10からの燃焼排気によって煽られて火炎が検知部32aから離反することによる火炎の検知精度の低下が防止される。
【0048】
なお、本実施形態においては、前方壁部24の左右端と側方壁部26,27の前端との間の間隙により前方開放部28が形成されているものを挙げたが、これ以外の構成として、
図4に示すように、前方壁部24の左右方向の両端部の下部を一部切欠くことにより前方開放部33を形成してもよい。
【0049】
これによれば、仕切壁23の内方に侵入した煮こぼれを前方開放部33から排出することができるだけでなく、グリル庫10からの燃焼排気が前方開放部33を通過する量を小さくすることができるので、アフターバーナ18の燃焼面22に対するグリル庫10からの燃焼排気による悪影響を一層確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…グリル、10…グリル庫、12…排気ダクト、15…上火バーナ(グリルバーナ)、16…下火バーナ(グリルバーナ)、17…下面壁、18…アフターバーナ、22…燃焼面、23…仕切壁、24…前方壁部、25…後方壁部、26,27…側方壁部、28…前方開放部、29…側方間隔部、31…点火プラグ(点火器)、31a…電極、32…熱電対(炎検知器)、32a…検知部。