(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体光装置に含まれる半導体レーザ素子は、駆動温度によってP−I特性(光出力と駆動電流間の関係)が変化するため、温度変化に応じて駆動電流等を制御しなければ、消光比及び平均出力が変動してしまう。
図12は、半導体レーザ素子のP−I特性を示す図である。縦軸は半導体レーザ素子の平均出力の大きさを表し、横軸は半導体レーザ素子に供給されるバイアス電流の大きさを表す。曲線Jは、半導体レーザ素子の温度が参照値温度T
adjである場合のP−I特性曲線であり、曲線Kは、半導体レーザ素子の温度が参照値温度T
adjより大きい温度Tの場合におけるP−I特性曲線である。
【0008】
曲線Jに注目すると、参照値温度T
adjの場合、半導体レーザ素子の平均出力をP
adjに合わせるためには、バイアス電流の大きさをI
adjとすべきことがわかる。また、光信号において0を表す光出力をP1とし、1を表す光出力をP2として所望の消光比を実現する場合、半導体レーザ素子に加えるべき変調電流の大きさはI
mod,adjであることがわかる。一方、曲線Kに注目し、温度T>T
adjの場合に、参照値温度T
adjの場合と変わらない平均出力及び消光比を実現するためには、バイアス電流の大きさをI1>I
adjとし、変調電流の大きさをI
mod>I
mod,adjと調整するべきことがわかる。すなわち、一定の平均出力及び消光比を実現するためには、半導体レーザ素子の温度上昇に伴って、バイアス電流及び変調電流を大きくするように調整しなければならない。
【0009】
図13は、半導体レーザ素子のV−I特性を示す図である。縦軸は半導体レーザ素子の端子間に印加される電圧の直流成分であるバイアス電圧の大きさを表し、横軸は半導体レーザ素子に供給されるバイアス電流の大きさを表す。曲線Lは、半導体レーザ素子の温度が参照値温度T
adjである場合のV−I特性曲線であり、曲線Mは、半導体レーザ素子の温度が参照値温度T
adjより大きい温度Tの場合におけるV−I特性曲線である。
【0010】
図12で示すように、参照値温度T
adjの場合に平均出力としてP
adjを得るためには、バイアス電流の大きさをI
adjとしなければならない。曲線Lに注目すると、その場合の端子間電圧はV
adjであることがわかる。一方、温度T>T
adjの場合に、平均出力としてP
adjを得るためには、バイアス電流をI1としなければならず、曲線Mに注目すると、その場合の端子間電圧はV1となることがわかる。すなわち、一定の平均出力を得るためには、半導体レーザ素子の温度上昇に伴って、端子間電圧が小さくなるように半導体レーザ素子の駆動条件を調整しなければならない。
【0011】
ここで、半導体レーザ素子から出射される光の一部を受光素子で受光し、光信号の消光比及び平均出力を直接モニタすることで、バイアス電流等をフィードバック制御することが考えられる。
【0012】
しかし、光通信において用いられる光信号は数GHz以上の高周波信号であるから、受光素子等で光信号を受光して、消光比及び平均出力をモニタすることとすると、高周波信号の受信に適した受光素子及び受信回路が必要とされる。そのため、半導体光装置に専用部品を組み込む必要が生じて、コスト等の面で不利となる。
【0013】
そこで、本発明は、受光素子を用いることなく、光信号の平均出力を一定に制御し、また、光信号の消光比を一定に制御することができる半導体光装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る半導体光装置は、光信号を出力する半導体光素子と、前記半導体光素子にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段と、前記半導体光素子の端子間に印加されるバイアス電圧を測定する電圧測定手段と、前記バイアス電流を測定する電流測定手段と、前記半導体光素子の温度を直接的又は間接的に測定する温度測定手段と、参照値バイアス電圧、参照値バイアス電流、参照値温度、及び参照値αを記憶する記憶手段と、前記光信号の平均出力が一定である場合に成立する、前記電圧測定手段により測定されたバイアス電圧、前記電流測定手段により測定されたバイアス電流、前記温度測定手段により測定された温度、前記参照値バイアス電圧、前記参照値バイアス電流、前記参照値温度、及び前記参照値αの関係を規定する第1の情報に基づいて、前記バイアス電流供給手段を制御するバイアス電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
(2)上記(1)に記載の半導体光装置であって、前記第1の情報は、前記測定された温度を変数とする第1の関数と、前記測定されたバイアス電圧と前記測定されたバイアス電流との比の値である第1の値との等号関係を規定し、前記バイアス電流制御手段は、前記第1の情報に規定される等号関係が満たされるように、前記バイアス電流供給手段を制御することを特徴としてもよい。
【0016】
(3)上記(2)に記載の半導体光装置であって、前記第1の関数は、変数である前記測定された温度に関して単調減少関数であることを特徴としてもよい。
【0017】
(4)上記(3)に記載の半導体光装置であって、前記参照値バイアス電圧をV
adj、前記参照値バイアス電流をI
adj、前記参照値バイアス電圧V
adjと前記参照値バイアス電流I
adjとの比をy=V
adj/I
adj、前記参照値温度をT
adj、前記第1の値をx、前記測定された温度をTと表す場合に、前記第1の関数f
1(T)は、f
1(T)=y(α(T−T
adj)+1)
1/2であり、前記バイアス電流制御手段は、x=f
1(T)となるように前記バイアス電流供給手段を制御することを特徴してもよい。
【0018】
(5)本発明に係る半導体光装置は、光信号を出力する半導体光素子と、前記半導体光素子にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段と、前記半導体光素子に変調電流を供給する変調電流供給手段と、前記半導体光素子の端子間に印加されるバイアス電圧を測定する電圧測定手段と、前記バイアス電流を測定する電流測定手段と、前記半導体光素子の温度を直接的又は間接的に測定する温度測定手段と、参照値変調電流、参照値バイアス電圧、参照値バイアス電流、参照値温度、及び参照値αを記憶する記憶手段と、前記光信号の消光比が一定である場合に成立する、前記電圧測定手段により測定されたバイアス電圧、前記電流測定手段により測定されたバイアス電流、前記温度測定手段により測定された温度、前記参照値変調電流、前記参照値バイアス電圧、前記参照値バイアス電流、前記参照値温度、及び前記参照値αの関係を規定する第2の情報に基づいて、前記変調電流供給手段を制御する変調電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
(6)上記(5)に記載の半導体光装置であって、前記第2の情報は、前記測定されたバイアス電圧と前記測定されたバイアス電流との比の値である第1の値、及び前記測定された温度を変数とする第2の関数と、前記変調電流供給手段により供給される変調電流との等号関係を規定し、前記変調電流制御手段は、前記第2の情報に規定される等号関係が満たされるように、前記変調電流供給手段を制御することを特徴してもよい。
【0020】
(7)上記(6)に記載の半導体光装置であって、前記第2の関数は、変数である前記測定された温度に関して単調増加関数であることを特徴としてもよい。
【0021】
(8)上記(7)に記載の半導体光装置であって、前記参照値バイアス電圧をV
adj、前記参照値バイアス電流をI
adj、前記参照値バイアス電圧V
adjと前記参照値バイアス電流I
adjとの比をy=V
adj/I
adj、前記参照値温度をT
adj、前記参照値変調電流をI
mod,adj、前記第1の値をx、前記測定された温度をT、前記変調電流供給手段により供給される変調電流をI
modと表す場合に、前記第2の関数f
2(x、T)は、f
2(x、T)=(α(T−T
adj)+1)
−1/2(log(x
2)/x
2)((y
2(α(T−T
adj)+1)/log(y
2(α(T−T
adj)+1)))であり、前記変調電流制御手段は、I
mod=I
mod,adjf
2(x、T)となるように前記変調電流供給手段を制御することを特徴としてもよい。
【0022】
(9)上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の半導体光装置であって、前記記憶部は、参照値平均出力をさらに記憶し、前記測定されたバイアス電圧、前記測定されたバイアス電流、前記測定された温度、前記参照値バイアス電圧、前記参照値バイアス電流、前記参照値温度、前記参照値α、及び前記参照値平均出力の関係を規定する第3の情報に基づいて、前記光信号の平均出力を算出する平均出力算出手段をさらに備えることを特徴としてもよい。
【0023】
(10)上記(9)に記載の半導体光装置であって、前記第3の情報は、前記測定されたバイアス電圧と前記測定されたバイアス電流との比の値である第1の値、及び前記測定された温度を変数とする第3の関数と、前記光信号の平均出力との等号関係を規定し、前記平均出力算出手段は、前記第3の情報に規定される等号関係により、前記光信号の平均出力を算出することを特徴としてもよい。
【0024】
(11)上記(10)に記載の半導体光装置であって、前記第3の情報に規定される等号関係は、前記測定されたバイアス電流の値が大きくなるに従って、前記半導体光素子のP−I特性に近づくことを特徴としてもよい。
【0025】
(12)上記(10)又は(11)に記載の半導体光装置であって、前記参照値バイアス電圧をV
adj、前記参照値バイアス電流をI
adj、前記参照値温度をT
adj、前記参照値平均出力をP
adj、前記参照値バイアス電圧と前記参照値バイアス電流との比をy=V
adj/I
adj、前記第1の値をx、前記測定された温度をT、前記光信号の平均出力をPと表す場合に、前記第3の関数f
3(x、T)は、f
3(x、T)=(log(x
2)/x
2)((y
2(α(T−T
adj)+1)/log(y
2(α(T−T
adj)+1)))であり、前記平均出力算出手段は、P=P
adjf
3(x、T)により前記光信号の平均出力を算出することを特徴としてもよい。
【0026】
(13)本発明に係る半導体光装置は、光信号を出力する半導体光素子と、前記半導体光素子にバイアス電流を供給するバイアス電流供給手段と、前記半導体光素子に変調電流を供給する変調電流供給手段と、前記半導体光素子の端子間に印加されるバイアス電圧を測定する電圧測定手段と、前記バイアス電流を測定する電流測定手段と、前記半導体光素子の温度を直接的又は間接的に測定する温度測定手段と、参照値バイアス電圧、参照値バイアス電流、参照値温度、参照値α、及び参照値変調電流を記憶する記憶手段と、前記光信号の平均出力が一定である場合に成立する、前記電圧測定手段により測定されたバイアス電圧、前記電流測定手段により測定されたバイアス電流、前記温度測定手段により測定された温度、前記参照値バイアス電圧、前記参照値バイアス電流、前記参照値温度、及び前記参照値αの関係を規定する第1の情報に基づいて、前記バイアス電流供給手段を制御するバイアス電流制御手段と、前記光信号の消光比が一定である場合に成立する、前記電圧測定手段により測定されたバイアス電圧、前記電流測定手段により測定されたバイアス電流、前記温度測定手段により測定された温度、前記参照値変調電流、前記参照値バイアス電圧、前記参照値バイアス電流、前記参照値温度、及び前記参照値αの関係を規定する第2の情報に基づいて、前記変調電流供給手段を制御する変調電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0027】
(14)本発明に係る制御方法は、光信号を出力する半導体光素子の端子間に印加されるバイアス電圧を測定する電圧測定工程と、前記半導体光素子に供給されるバイアス電流を測定する電流測定工程と、前記半導体光素子に変調電流を供給する変調電流供給工程と、前記半導体光素子の温度を直接的又は間接的に測定する温度測定工程と、前記光信号の平均出力が一定である場合に成立する、測定されたバイアス電圧、測定されたバイアス電流、測定された温度、参照値バイアス電圧、参照値バイアス電流、参照値温度、及び参照値αの関係を規定する第1の情報に基づいて、前記バイアス電流を制御するバイアス電流制御工程と、前記光信号の消光比が一定である場合に成立する、前記測定されたバイアス電圧、前記測定されたバイアス電流、前記測定された温度、参照値変調電流、前記参照値バイアス電圧、前記参照値バイアス電流、前記参照値温度、及び前記参照値αの関係を規定する第2の情報に基づいて、前記変調電流を制御する変調電流制御工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、受光素子を用いることなく、光信号の平均出力を一定に制御し、また、光信号の消光比を一定に制御することができる半導体光装置及び制御方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体光装置1の構成図である。本実施形態に係る半導体光装置1は、駆動回路(driver circuit)2と、光送信モジュール3と、マイクロコンピュータ(microcomputer)4と、バイアス電流源5と、電圧測定部6と、電流測定部7とを備える。
【0032】
駆動回路2は、変調電流源20と、変調電流源20に並列に接続される2つのトランジスタを含む。2つのトランジスタのゲート電極には、外部から信号P及び信号Nがそれぞれ入力され、駆動回路2は、光送信モジュール3に対して変調信号を出力する。
【0033】
光送信モジュール3は、半導体光素子30を含む光送信サブアセンブリ(TOSA: Transmitter Optical Sub-Assembly)である。本実施形態において、半導体光素子30は半導体レーザ素子であり、特定の波長のレーザ光を出射するDFBレーザであってよい。半導体光素子30には、駆動回路2から入力される変調信号に応じて変調された電流が供給され、半導体光素子30は光信号を出力する。ここで、変調電流源20が供給する電流の大きさに応じて、半導体光素子30から出射される光の最高出力と最低出力の差が定められることとなる。すなわち、変調電流源20を制御することにより、半導体光素子30から出力される光信号の消光比が制御される。
【0034】
マイクロコンピュータ4は、記憶部(storage unit)40と、温度計(thermometer)42と、制御部(control unit)44とを含む。また、制御部44は、平均出力算出部(Average Output Calculator)440と、変調電流制御部(Modulation Current Controller)442と、バイアス電流制御部(Bias Current Controller)444とを含む。
【0035】
記憶部40は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。記憶部40は、制御部44が実行するプログラムを格納するとともに、制御部44のワークメモリとしても機能する。なお、記憶部40に格納される制御部44が実行するプログラムは、電気通信回線を介して提供されるものであってもよいし、半導体記憶素子等のコンピュータで読み取り可能な情報記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。記憶部40に記憶される情報については、後に詳細に説明する。
【0036】
温度計42は、マイクロコンピュータ4に内蔵された温度計であり、例えばサーミスタである。本実施形態では、温度計42によりマイクロコンピュータ4の温度を測定し、測定値を制御部44に送信し、半導体光素子30の温度を間接的に測定する。光送信モジュール3とマイクロコンピュータ4が物理的に離れて設置される場合、温度計42の検出する温度は、必ずしも半導体光素子30の温度とはならないが、温度計42の検出する温度と半導体光素子30の温度との間には相関関係があるため、温度計42で検出された温度により、間接的に半導体光素子30の温度を測定することができる。もしくは温度計42で検出された温度を、予め定められた方法により制御部44で読み変えた値を用いても良い。もっとも、温度計42をマイクロコンピュータ4と別体で備えることとして、半導体光素子30の温度を直接測定することとしてもよい。以後、特記なき場合は、本願明細書にて「温度計42により測定される半導体光素子30の温度」とは、温度計42で検出された半導体光素子30の温度そのものであると規定した場合、温度計42で検出された温度を読み変えた値とした場合、又は半導体光素子30の温度を直接測定した場合等を示すものとする。
【0037】
制御部44は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んでおり、記憶部40に格納されるプログラムを実行することにより、平均出力算出部440により半導体光素子30から出力される光信号の平均出力を算出し、変調電流制御部442により変調電流源20を制御し、バイアス電流制御部444によりバイアス電流源5を制御する。制御部44の行う制御については、後に詳細に説明する。平均出力算出部440により算出された値は、外部に信号Outとして出力される。信号Outの示す値は、液晶表示装置等の表示部に出力されることとしてもよい。
【0038】
バイアス電流源5は、光送信モジュール3に直流のバイアス電流を供給する。バイアス電流源5によって供給されるバイアス電流は、半導体光素子30から出力される光信号の平均出力を定める。バイアス電流源5は、バイアス電流制御部444によって制御される。
【0039】
電圧測定部6は、オペアンプ60、抵抗R
2、コンデンサC
2、及び第1の電圧計62を含む。オペアンプ60には、半導体光素子30の電極間電圧が入力され、規定の増幅率で増幅され出力される。本実施形態では、オペアンプ60による電圧増幅率はnであり、当該増幅率は記憶部40に記憶されているものとする。抵抗R
2及びコンデンサC
2は、ローパスフィルタとして機能する。半導体光素子30には、駆動回路2によって高周波で変調された電流が供給されるため、半導体光素子30の電極間電圧は高周波成分を有する。抵抗R
2及びコンデンサC
2によって、そのような高周波成分が除去され、第1の電圧計62では、半導体光素子30の端子間に印加される電圧のうち直流成分(以下、バイアス電圧という。)が測定される。測定された電圧の値は、マイクロコンピュータ4の制御部44に送信される。制御部44では、第1の電圧計62より受信した値をnで割ることによって、半導体光素子30の端子間に印加されているバイアス電圧を算出する。
【0040】
電流測定部7は、抵抗R
i、抵抗R
1、コンデンサC
1、及び第2の電圧計70を含む。抵抗R
iは、バイアス電流源5とグランドとの間に設けられた抵抗体であり、バイアス電流源5により直流電流Iが供給される場合、抵抗R
iの端子間電圧はR
iIとなる。ここで、抵抗R
iの抵抗値は、記憶部40に記憶されているものとする。抵抗R
1及びコンデンサC
1で形成されるローパスフィルタは、電圧の高周波成分を除去する。第2の電圧計70は、抵抗R
1及びコンデンサC
1で形成されるローパスフィルタを通過した電圧を測定し、制御部44に送信する。制御部44では、第2の電圧計70より受信した値をR
iで割ることにより、半導体光素子30に供給されているバイアス電流Iの値を算出する。なお、バイアス電流源5及び電流測定部7が、例えば駆動回路2に内蔵されている(駆動回路2がバイアス電流源及び電流測定部としての機能を備えている)場合もある。その場合には、駆動回路2の備える電流測定部により、駆動回路2の備えるバイアス電流源が出力するバイアス電流の値を測定し、駆動回路2からマイクロコンピュータ4に出力されたバイアス電流値を測定値として用いても構わない。
【0041】
なお、本実施形態において、光送信モジュール3の半導体光素子30には、順方向電流が供給される。半導体光素子30には、バイアス電流源5及び駆動回路2によって高周波で変調された電流が供給されるものの、逆方向電流が供給されることは無いものとする。半導体光素子30の端子間に印加される電圧についても、順方向電圧が印加されることとし、逆方向電圧が印加されることは無いものとする。
【0042】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体光装置1の駆動時に行われる制御工程を示すフローチャートである。半導体光素子1の駆動に先立って、記憶部40には、半導体光素子30により出力される光信号の平均出力が一定である場合に成立する、半導体光素子30の端子間に印加されるバイアス電圧、半導体光素子30に供給されるバイアス電流、温度計42により測定される半導体光素子30の温度、及び参照値の関係を規定する第1の情報が記憶されているものとする。また、記憶部40には、半導体光素子30により出力される光信号の消光比が一定である場合に成立する、変調電流源20により供給される変調電流、半導体光素子30の端子間に印加されるバイアス電圧、半導体光素子30に供給されるバイアス電流、温度計42により測定される半導体光素子30の温度、及び参照値の関係を規定する第2の情報が記憶されているものとする。さらに、記憶部40には、半導体光素子30により出力される光信号の平均出力、半導体光素子30の端子間に印加されるバイアス電圧、半導体光素子30に供給されるバイアス電流、温度計42により測定される半導体光素子30の温度、及び参照値の関係を規定する第3の情報が記憶されているものとする。
【0043】
半導体光素子1の駆動時に行われる制御工程は、バイアス電流、バイアス電圧、及び温度の測定から始まる(S10)。ここで、バイアス電流は、バイアス電流源5により半導体光素子30に供給される電流であり、電流測定部7及び制御部44により測定される。バイアス電圧は、半導体光素子30の端子間に印加される電圧のうち直流成分であり、電圧測定部6及び制御部44により測定される。また、温度は、半導体光素子30の温度であり、温度計42及び制御部44により測定される。
【0044】
次に、制御部44の変調電流制御部442は、第2の情報に基づいて変調電流を制御する(S11)。より詳しくは、変調電流制御部442は、光信号の消光比が一定である場合に成立する、測定されたバイアス電圧、測定されたバイアス電流、測定された温度、及び参照値の関係を規定する第2の情報に基づいて、変調電流源20を制御する。変調電流制御部442は、測定されたバイアス電圧、測定されたバイアス電流、測定された温度を入力として、光信号の消光比が一定となる場合に成立する第2の情報に基づいて、変調電流源20を制御する。
【0045】
また、制御部44の平均出力算出部440は、第3の情報に基づいて平均出力を算出する(S12)。より詳しくは、平均出力算出部440は、測定されたバイアス電圧、測定されたバイアス電流、測定された温度、及び前記第3の情報に基づいて、光信号の平均出力を算出する。平均出力算出部440は、算出した値を外部に信号Outとして出力する。
【0046】
制御部44のバイアス電流制御部444は、測定されたバイアス電圧、バイアス電流、及び温度が、第1の情報により規定される関係を満たすか否かを判定する(S13)。バイアス電流制御部444は、測定されたバイアス電圧、測定されたバイアス電流、及び測定された温度を入力として、それらの値が、光信号の平均出力が一定である場合に成立する第1の情報に規定される関係を満たすか否かを判定する。
【0047】
バイアス電流制御部444により、測定されたバイアス電圧、測定されたバイアス電流、及び測定された温度は、第1の情報に規定される関係を満たさないと判定された場合(S13においてNOの場合)、バイアス電流制御部444はバイアス電流を補正する(S14)。すなわち、バイアス電流制御部444は、半導体光素子30から出力される光信号の平均出力が一定となるように、バイアス電流源5を制御する。
【0048】
バイアス電流制御部444によりバイアス電流が補正されると、バイアス電流と、半導体光素子30の端子間に印加されるバイアス電圧とが変化するため、変調電流制御部442により行った変調電流源20の制御(S11)、及び平均出力算出部440により行った光信号の平均出力の算出(S12)の前提が変化する。そのため、バイアス電流補正(S14)の後、バイアス電流、バイアス電圧、温度を測定する工程(S10)に戻り、S10乃至13の工程を再度行う。そして、バイアス電流制御部444により、測定されたバイアス電圧、測定されたバイアス電流、及び測定された温度が、第1の情報に規定される関係を満たすと判定されるまで(S13においてYESと判定されるまで)、S10乃至14の工程を繰り返す。
【0049】
バイアス電流制御部444により、測定されたバイアス電圧、測定されたバイアス電流、及び測定された温度は、第1の情報に規定される関係を満たすと判定された場合(S13においてYESの場合)、制御工程は終了する。
【0050】
このように、本実施形態では、半導体光素子30の端子間に印加されるバイアス電圧、半導体光素子30に供給されるバイアス電流、及び半導体光素子30の温度を測定し、記憶部40に記憶された情報に基づいて、半導体光素子30から出力される光信号の平均出力を一定とするようなバイアス電流源5の制御、半導体光素子30から出力される光信号の消光比を一定とするような変調電流源20の制御、及び半導体光素子30から出力される光信号の平均出力のモニタを行うことができる。そのため、本実施形態に係る半導体光装置1は、受光素子を用いることなく、光信号の平均出力を一定に制御し、また、光信号の消光比を一定に制御することができる。また、受光素子を用いることなく、光信号の平
均出力をモニタすることができる。従来、平均出力の制御や消光比の制御には、受光素子を用いてそのモニタ値を用いて制御されていたが、発明者等は鋭意検討することで、バイアス電圧、バイアス電流、及び温度の3つのパラメータを測定し、この3つの測定値を用いて、平均出力、消光比を一定とする(所望の値とする)制御ができることを見出した。より具体的な制御については後述する。
【0051】
なお、半導体光装置1の制御工程は、半導体光装置1の駆動時に、例えば数秒毎等、定期的に行われることとしてよい。また、バイアス電流補正(S14)は、例えば0.01mA毎等、規定の増減量ずつ行うこととしてよい。もっとも、増減量に制限を加えず、自由に補正できることとしてもよい。
【0052】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体光装置1の製造時に行われる参照値決定工程を示す第1のフローチャートである。参照値決定工程は、半導体光装置1が駆動可能な状態に組み立てられた後に行われる工程であり、半導体光装置1の記憶部40に記憶される種々の参照値を決定するために行われる工程である。特に、第1のフローチャートに示す処理は、参照値バイアス電圧、参照値バイアス電流、参照値温度、及び参照値平均出力を決定するために行われるものである。
【0053】
参照値決定工程では、はじめに、固定抵抗値R
i、及びオペアンプ増幅率nを記憶部40に記憶する(S20)。これらの値は、半導体光装置1の設計時点において既知である。
【0054】
次に、半導体光装置1の置かれる雰囲気温度を設定する(S21)。設定される雰囲気温度は、半導体光装置1に過度な負担を与えない範囲で十分に安定していれば、自由に設定して良いが、半導体光装置1が実際に使用される場合の雰囲気温度に近いものであることが望ましく、例えば、25℃に設定することとする。ここで、雰囲気温度ではなく、半導体光素子30の温度を設定することとしてもよい。その場合、半導体光素子30の温度を、ペルチェ素子等により一定に保つこととしてもよい。
【0055】
次に、バイアス電流の初期値設定を行う(S22)。バイアス電流の初期値設定は、マイクロコンピュータ4に入力部を接続し、外部からバイアス電流制御部444を操作するか、記憶部40に初期設定値として予め記憶しておき、この初期設定値によりバイアス電流制御部444を操作することにより行う。バイアス電流の初期値は自由に設定してよいが、半導体光素子30が十分な平均出力の光を出力し、半導体光素子30に過度な負担を与えない範囲内のものとする。
【0056】
半導体光素子30が光を出力する状態が得られた後、平均出力は規定範囲内であるか否かを判定する(S23)。ここで、半導体光素子30から出力される光の出力は、参照値決定工程において準備される光出力測定器で測定する。また、平均出力が規定範囲内であるか否かとは、規定の精度で平均出力が所望の値となっているか否かをいう。例えば、所望の値の±5%以内の出力が達成されていれば、平均出力が規定範囲内であると判定することとしてよい。光平均出力が規定範囲内でない場合(S23においてNOの場合)、バイアス電流制御部444を介してバイアス電流源5を制御し、バイアス電流を補正する(S24)。
【0057】
平均出力が規定範囲内と判定された場合(S23においてYESの場合)、平均出力、バイアス電流、バイアス電圧、温度を測定する(S25)。これらの値は、参照値決定工程において準備される光出力測定器、半導体光装置1に備えられた電圧測定部6、電流測定部7、温度計42、及び制御部44を用いて測定する。
【0058】
測定されたバイアス電圧、バイアス電流、温度、及び平均出力を、それぞれ、参照値バイアス電圧V
adj、参照値バイアス電流I
adj、参照値温度T
adj、及び参照値平均出力P
adjとして記憶部40に記憶する(S26)。これらの値は、第1の情報、第2の情報、及び第3の情報に規定される関係において参照され、半導体光装置1の制御工程において、バイアス電流制御部444、変調電流制御部442、及び平均出力算出部440における処理を実行する際に用いられる。
【0059】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体光装置1の製造時に行われる参照値決定工程を示す第2のフローチャートである。第2のフローチャートに示される処理は、第1のフローチャートに示される処理を行った後に行われるものであり、参照値αを決定するために行われるものである。
【0060】
はじめに、半導体光装置1の置かれる雰囲気温度を変更する(S30)。すなわち、第1のフローチャートに示した、参照値V
adj、I
adj、T
adj、及びP
adjを決定する工程における場合とは異なる雰囲気温度に半導体光装置1を置く。例えば、雰囲気温度を85℃とする。この場合も、ペルチェ素子等で半導体光素子30の温度を直接制御することとしてもよい。
【0061】
そして、参照値決定工程において準備される光出力測定器、半導体光装置1に備えられた電圧測定部6、電流測定部7、温度計42、及び制御部44を用いて、平均出力、バイアス電流、バイアス電圧、及び温度を測定する(S31)。測定された平均出力、バイアス電流、バイアス電圧、及び温度の値を、それぞれP、V、I、及びTと表すこととする。
【0062】
測定されたP、V、I、及びTの値と、既に記憶部40に記憶されている参照値P
adj、V
adj、I
adj、及びT
adjと、第3の情報に規定される関係とに基づいて参照値αを算出し、記憶部40に記憶する(S32)。第3の情報に規定される関係とは、測定されたバイアス電圧V、測定されたバイアス電流I、測定された温度T、参照値バイアス電圧V
adj、参照値バイアス電流I
adj、参照値温度T
adj、及び参照値αの関係であり、具体的には以下の数式(1)で規定される関係をいう。本実施形態において、参照値αは、−0.01程度の負の値となる。ただし、参照値αの値は半導体光装置1や半導体光素子30の構成や材料によって変わる値である。
【0064】
ここで、logは、10を底とする対数を表し、P、V及びIは、mW、mV及びmAの単位で規格化された平均出力、バイアス電圧及びバイアス電流の値を表す。P
adj、V
adj及びI
adjについても同様である。また、T及びT
adjはKの単位で表した温度であり、参照値αの単位は、[K
−1]である。数式(1)で規定される関係には、成立するための条件がある。そのため、参照値αの決定は、そのような条件を満たすようなバイアス電流の値等を用いて行う必要がある。当該条件については、後に詳細に説明する。
【0065】
数式(1)は、異なる2条件下における、バイアス電圧、バイアス電流、温度、そして平均出力の関係を表した式である。すなわち、第1の条件(参照値決定工程で定めた条件)であるバイアス電圧V
adj、バイアス電流I
adj、そして温度T
adjにおいての平均出力をP
adjとし、第2の条件(ある時点の測定値)であるバイアス電圧V、バイアス電流I、そして温度Tにおいての平均光出力をPとした場合に、これらのパラメータは参照値αを含めた数式(1)の関係となっている。αはいわゆる係数である。この数式(1)は、発明者等が数多くの半導体光装置の様々な条件下における平均出力、バイアス電圧、バイアス電流、そして温度の値がどのような関係にいるかを鋭意検討することで得られた経験式であり、発明者等が初めて見出したものである。後述する数式(2)、(3)、(4)についても同様である。
【0066】
第3の情報(数式(1))に基づいて参照値αを決定するためには、少なくとも2つの異なる条件で、平均出力、バイアス電圧、バイアス電流、及び温度を測定する必要がある。もっとも、3以上の異なる条件で平均出力、バイアス電圧、バイアス電流、及び温度を測定し、複数の条件の組合せについて数式(1)を用い、αを算出し、それらの平均値として参照値αを決定することとしてもよい。
【0067】
参照値αは、半導体光装置1の構成などにより決まる値であり個体差は小さいため、少なくとも1台の半導体光装置1を用いて決定すればよく、製造した全ての半導体光装置1について第2のフローチャートに示す処理を行わなくともよい。もっとも、複数台の半導体光装置1について第2のフローチャートに示す処理を行い、得られた値の平均値を参照値αとして全ての半導体光装置1の記憶部40に記憶することとしてもよいし、すべての半導体光装置1について参照値αを決定しても構わない。
【0068】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る半導体光装置1の製造時に行われる参照値決定工程を示す第3のフローチャートである。第3のフローチャートに示す処理は、第2のフローチャートに示す処理の後に行われるものであり、参照値変調電流を決定するために行われるものである。
【0069】
はじめに、変調電流の初期値設定が行われる(S40)。変調電流の初期値設定は、マイクロコンピュータ4に入力部を接続し、外部から変調電流制御部442を操作するか、記憶部40に初期設定値を予め記憶しておき、この初期設定値により変調電流制御部442を操作することにより行う。変調電流の初期値は自由に設定してよいが、半導体光素子30の消光比が規定値に近いものとなるように設定されることが望ましく、半導体光素子30に過度な負担を与えない範囲内のものとする。なお、雰囲気温度は第2のフローチャートにて記憶部40に記憶されたT
adjとし、バイアス電流も同様にI
adjとする。初期値はこれに限らず、任意の値で設定しても良い。
【0070】
半導体光素子30が光を出力する状態が得られた後、消光比は規定範囲内であるか否かを判定する(S41)。ここで、半導体光素子30から出力される光の消光比は、参照値決定工程において準備される、例えば光オシロスコープ等の光波形測定器で測定する。消光比が規定範囲内であるか否かとは、規定の精度で消光比が所望の値となっているか否かをいう。例えば、所望の値の±5%以内の消光比が達成されていれば、消光比が規定範囲内であると判定することとしてよい。消光比が規定範囲内でない場合(S41においてNOの場合)、変調電流制御部442を介して変調電流源20を制御し、変調電流を補正する(S42)。
【0071】
消光比が規定範囲内であると判定された場合(S41においてYESの場合)、その場合の変調電流値を参照値変調電流I
mod,adjとして記憶部40に記憶する(S43)。ここで、変調電流制御部442から変調電流源20に与えられる信号と、変調電流源20により供給される電流との関係は既知であるものとし、変調電流制御部442の制御状況から変調電流源20により供給される変調電流値が読み取れるものとする。
【0072】
以上で参照値決定工程が終了し、半導体光装置1の記憶部40には、固定抵抗値R
i、オペアンプ増幅率n、参照値α、V
adj、I
adj、T
adj、P
adj、及びI
mod,adjが記憶された状態となる。その後、記憶部40には、これらの参照値を参照する第1乃至3の情報が記憶され、出荷される。半導体光装置1の駆動時には、
図2に示した制御工程により、光信号の平均出力及び消光比を一定とする制御が行われ、光信号の平均出力の算出し、算出した値を外部に信号Outとして出力する。
【0073】
図6は、第2の情報に規定される関係を示す図である。第2の情報は、光信号の消光比が一定である場合に成立する、測定された変調電流、測定されたバイアス電圧V、測定されたバイアス電流I、測定された温度T、参照値変調電流I
mod,adj、参照値バイアス電圧V
adj、参照値バイアス電流I
adj、参照値温度T
adj、及び参照値αの関係である。第2の情報は、VとIとの比の値である第1の値V/I、及び測定された温度Tを変数とする第2の関数f
2(V/I、T)と、変調電流源20により供給される変調電流I
modとの等号関係である以下の数式(2)を規定する。
【0075】
ここで、logは、10を底とする対数を表し、I
mod、V及びIは、それぞれmA、mV及びmAの単位で規格化された変調電流、バイアス電圧及びバイアス電流の値を表す。I
mod,adj、V
adj及びI
adjについても同様である。また、T及びT
adjはKの単位で表した温度であり、参照値αの単位は、[K
−1]である。
【0076】
第2の情報に規定されるI
mod/I
mod,adj=f
2(V/I、T)の関係は、消光比が規定の値で一定である場合に成立する関係である。また、第2の情報に規定される関係は、数式(1)(第3の情報)を用いて変形すると、以下の数式(3)のように表すこともできる。
【0078】
図6では、縦軸をI
mod/I
mod,adj、横軸をTとして、I
mod/I
mod,adj=f
2(V/I、T)の関係のうち、特に、光信号の平均出力PがP
adjに等しい場合を表す曲線Aを示している。すなわち、曲線Aは、P=P
adjの場合における、光信号の消光比が一定となるようなI
modとTの関係を表す曲線である。つまり曲線Aは、P=P
adj及び消光比が一定となる場合の数式(3)に基づいたI
mod/I
mod,adjとTの関係曲線である。
【0079】
温度計42により測定される半導体光素子30の温度Tが、原点であるT=T
adjである場合には、参照値決定工程において消光比を調整した場合と同じ条件となるから、I
mod/I
mod,adj=1で消光比が規定値となる。そのため、曲線AはI
mod/I
mod,adj=1で縦軸と交わる。この場合、変調電流制御部442は、変調電流源20を、I
mod=I
mod,adjとなるように制御することで、光信号の消光比を規定値に合わせることができる。
【0080】
また、測定される温度Tが、点Zで表される値であった場合、変調電流制御部442は、変調電流源20を、I
mod/I
mod,adj=Z1となるようにI
modを制御することで、光信号の消光比を規定値に合わせることができる。一方、測定される温度Tが、点Qで表される値であった場合、変調電流制御部442は、変調電流源20を、I
mod/I
mod,adj=Q1となるようにI
modを制御することで、光信号の消光比を規定値に合わせることができる。
【0081】
第2の関数f
2(V/I、T)は、測定された温度Tに関して単調増加関数である。そのため、曲線Aは右上がりの曲線となり、光信号の消光比を一定に保つためには、測定される温度Tが参照値温度T
adjより大きい場合には、I
mod>I
mod,adjとなるよう制御し、測定される温度Tが参照値温度T
adjより小さい場合には、I
mod<I
mod,adjとなるよう制御する必要がある。このことは、
図12に示す半導体レーザ素子のP−I特性から定性的に読み取れることである。本実施形態における第2の情報に規定される関係を表す数式(2)又は(3)は、半導体レーザ素子のP−I特性から定性的に読み取れる内容を、定量的に表現したものである。すなわち駆動時において、半導体光装置1の消光比を一定制御するためには、例えば後述する平均出力一定制御を行った後に、数式(3)が成立するようにI
modを制御すれば消光比を一定制御することができる。より具体的には、平均出力一定制御を行うと、数式(3)においてP/P
adj=1となる。その結果、数式(3)は変調電流と温度のみで表現された式となる。そして、数式(3)の関係を満たすようにI
modを制御すれば消光比を一定制御することとなる。さらに、顧客仕様によっては消光比ではなく、光信号において1を表す光強度と0を表す光強度の差であるOMA(Optical Modulation Amplitude)を基準とする場合もあるが、本実施形態により平均出力一定および消光比一定制御をすれば、必然的にOMAも一定制御され、OMA規定の顧客仕様をも満足することが出来る。また数式(2)の関係を用いれば、平均出力一定制御とは独立して消光比を制御することもできる。例えば、参照値決定工程おいて、平均出力一定制御に用いる各参照値は第1のフローチャートで求めた値を使い、消光比一定制御に用いる各参照値は第2のフローチャートで個別に求めた値を使って制御しても良い。その後、後述する平均出力一定制御を行えば、平均出力及び消光比の一定制御が可能となり、さらに上述したOMAについても一定制御がされた状態となる。
【0082】
なお、OMA一定制御は、平均出力がどのような値であっても行うことができる。そのためには、I
mod/I
mod,adj=(α(T−T
adj)+1)
−1/2の関係を満たすように変調電流源20を制御すればよい。ここで、平均出力をP、光信号において1を表す出力をP+P0、光信号において0を表す出力をP−P0と表す場合、OMAは、(P+P0)−(P−P0)=2P0であり、平均出力に依存しない。そして、P0の大きさは変調電流I
modの大きさによって制御される。そのため、上記のように平均出力に依存しない関係によってOMAを一定に制御することができる。一方、消光比は、(P+P0)/(P−P0)であり、平均出力に依存する。そのため、数式(3)のように平均出力に依存した関係により、消光比一定制御が行われる。
【0083】
図7は、異なる平均出力の場合における、第2の情報に規定される関係を示す図である。
図7では、
図6において示した曲線Aを破線で表し、曲線B及びCを実線で表している。
【0084】
曲線Bは、光信号の平均出力が参照値平均出力P
adjの2倍である場合において、光信号の消光比が一定の場合に成立する関係を示している。曲線Bは、I
mod/I
mod,adj=2で縦軸と交わる。曲線Bより、P=2P
adjの場合には、測定される温度Tが点Zで表される値の場合、変調電流制御部442は、変調電流源20を、I
mod/I
mod,adj=Z3となるようにI
modを制御することで、光信号の消光比を規定値に合わせることができることがわかる。また、測定される温度Tが点Qで表される値の場合、変調電流制御部442は、変調電流源20を、I
mod/I
mod,adj=Q3となるようにI
modを制御することで、光信号の消光比を規定値に合わせることができる。Z3とQ3の差は、Z1とQ1の差よりも大きく、Z1とQ1の差の2倍になる。
【0085】
半導体光装置1は、通常、予め定められた平均出力P
adjで駆動されるため、製造時に参照値平均出力P
adjを所望の平均出力値として記憶部40に記憶し、駆動時に曲線Aに従って変調電流源20を制御することで、光信号の消光比を一定に制御することができる。しかし、例えば、光信号に関して仕様変更があった場合等、当初予定されていた光信号の平均出力とは異なった平均出力で光信号を出力しつつ、当初予定されていたのと同じ消光比を実現したいという場合も想定される。曲線B又はCは、当初予定されていたのとは異なる平均出力で、当初予定されていたのと同じ消光比を達成したいという場合に用いられる関係である。なお、図示しないが消光比についても同様であり、当初予定されていた消光比とは異なる値で一定動作させたい場合は、数式(1)−(3)から所望の消光比となる様な変調電流を算出することもできる。
【0086】
曲線Cは、光信号の平均出力が参照値平均出力P
adjの半分である場合において、光信号の消光比が一定の場合に成立する関係を示している。曲線Cは、I
mod/I
mod,adj=0.5で縦軸と交わる。曲線Cより、P=0.5P
adjの場合には、測定される温度Tが点Zで表される値の場合、変調電流制御部442は、変調電流源20を、I
mod/I
mod,adj=Z2となるように制御することで、光信号の消光比を規定値に合わせることができることがわかる。また、測定される温度Tが点Qで表される値の場合、変調電流制御部442は、変調電流源20を、I
mod=Q2となるように制御することで、光信号の消光比を規定値に合わせることができる。Z2とQ2の差は、Z1とQ1の差よりも小さく、Z1とQ1の差の半分になる。
【0087】
図8は、第3の情報に規定される関係を示す図である。第3の情報に規定される関係とは、数式(1)で規定される関係である。
図8では、縦軸をP/P
adjとし、横軸をV/I(第1の値x)として、数式(1)で規定される関係を示している。数式(1)の右辺は、第3の関数f
3(V/I、T)であり、平均出力算出部440は、測定されたバイアス電流、測定されたバイアス電圧、測定された温度を第3の関数f
3(V/I、T)に代入することで、P=P
adjf
3(V/I、T)という等号関係により光信号の平均出力Pを算出する。
【0088】
曲線Dは、測定される温度Tが参照値温度T
adjに等しい場合における、第3の情報に規定される関係を示す。すなわち、P/P
adj=f
3(V/I、T=T
adj)の関係を示す。例えば、測定されたバイアス電圧とバイアス電流の比の値である第1の値x=V/Iが、点Rで表される値の場合、P=P
adjであることが算出される。第3の関数は、
図8に示した範囲において、第1の値xに関して単調減少関数である。すなわち、第1の値xの増加に伴い、光信号の平均出力は小さくなる。
【0089】
一方、曲線Eは、測定される温度Tが参照値温度T
adjより大きい場合における、第3の情報に規定される関係を示す。すなわち、P/P
adj=f
3(V/I、T>T
adj)の関係の一例を示す。曲線Eは、曲線Dよりも傾きが小さく、値が小さい。そのため、T>T
adjの状態においては、第1の値x=V/Iが点Rで表される値の場合にP<P
adjとなる。第1の値xが点Sで表される値の場合に、P=P
adjとなる。反対に、測定される温度Tが参照値温度T
adjより小さい場合には、第1の値xが点Rで表される値の場合にP>P
adjとなり、第1の値xが点Rで表される値より大きい値である場合に、P=P
adjとなる。
【0090】
図9は、第3の情報に規定される関係である数式(1)が成立する範囲を示す図である。
図9では、縦軸に光信号の平均出力Pをとり、横軸に測定されたバイアス電流の値Iをとって、数式(1)に規定される関係を実線で曲線Fとして示し、半導体光素子30のP−I特性を破線で示している。曲線Fは、測定される温度Tが参照値温度T
adjに等しい場合における、数式(1)に規定される関係である。
【0091】
本実施形態において、半導体光素子30は半導体レーザ素子であり、バイアス電流Iの値が閾値電流I
thを越えると、平均出力Pがバイアス電流Iにおおよそ比例するように上昇するという特性を有する。ここで、曲線Fは、測定されたバイアス電流の値Iが大きくなるに従って、半導体光素子30のP−I特性を表す破線に近づき、I=I1以上でほぼ一致する。I1は、半導体光素子30のP−I特性曲線において、閾値電流I
thにおける屈曲点からさらにI
thの大きさの分だけP−I特性曲線上を進んだ点に対応するバイアス電流の値である。I1は、閾値電流I
thより大きい値である。
【0092】
半導体光素子30に印加することのできるバイアス電流の大きさには、破損を防止する観点から上限があり、仮にそれをI2と表すこととすると、数式(1)が半導体光素子30のP−I特性を再現する範囲(数式(1)を用いることができる範囲)は、I1≦I≦I2であることがわかる。ここで、バイアス電流がI1の場合における光信号の平均出力はP1であり、バイアス電流がI2である場合における平均出力はP2である。
【0093】
参照値バイアス電流I
adjは、I1≦I
adj≦I2を満たすように選ばれる。半導体光装置1の駆動時に供給されるバイアス電流Iの大きさは、I
adjの前後で調整されるものであるから、I1≦I≦I2の範囲に収まり、第3の情報に基づいて光信号の平均出力を算出することができる。言い換えると、本実施形態に係る半導体光装置1では、温度がT
adjの場合、光信号の平均出力がP1以上、P2以下の場合であれば、第3の情報に基づいて光信号の平均出力を算出することができる。
【0094】
図8において示した曲線D及びEは、条件I1≦I≦I2を満たす範囲におけるものであり、第3の関数f
3(V/I、T)は、条件I1≦I≦I2を満たす範囲において、第1の値xに関して単調減少関数である。
【0095】
図10は、第1の情報に規定される関係を示す図である。
図10では、縦軸を第1の値V/Iとし、横軸を測定された温度Tとして、第1の情報により規定される関係である曲線Gを示している。第1の情報は、光信号の平均出力が一定の場合に成立する、測定されたバイアス電圧V、測定されたバイアス電流I、測定された温度T、参照値バイアス電圧V
adj、参照値バイアス電流I
adj、参照値温度T
adj、及び参照値αの関係であり、以下に示す数式(4)で表される関係である。
【0097】
ここで、V及びIは、mV及びmAの単位で規格化されたバイアス電圧及びバイアス電流の値を表す。V
adj及びI
adjについても同様である。また、T及びT
adjはKの単位で表した温度であり、参照値αの単位は、[K
−1]である。数式(4)の右辺を、第1の関数f
1(T)と呼ぶこととする。
【0098】
本実施形態において、αの値は負であるため、第1の関数f
1(T)は、温度Tについて単調減少関数となる。そのため、曲線Gは右下がりとなる。T=T
adjの場合、光信号の平均出力がP
adjとなるのは、V/I=V
adj/I
adjの場合であり、曲線Gと縦軸はV
adj/I
adjで交わる。
【0099】
T=T1>T
adjの場合、P=P
adjに合わせるためには、バイアス電流制御部444によりバイアス電流源5を制御し、V/I=V1/I1<V
adj/I
adjとする必要がある。また、T=T2<T
adjの場合、P=P
adjに合わせるためには、バイアス電流制御部444によりバイアス電流源5を制御し、V/I=V2/I2>V
adj/I
adjとする必要がある。
【0100】
このことは、
図12及び13から定性的に読み取ることができる。
図12に示す半導体レーザのP−I特性によると、光信号の平均出力を一定とするためには、温度上昇に伴い、バイアス電流の値を上昇させる必要があることがわかる。また、
図13に示す半導体レーザのV−I特性によると、バイアス電流の値を上昇させた場合におけるバイアス電圧は、温度上昇に伴い、減少することがわかる。すなわち、光信号の平均出力を一定とするためには、第1の値x=V/Iを温度上昇に伴い減少させる制御が必要となることがわかる。第1の情報に規定される関係を表す数式(4)は、半導体レーザ素子のP−I特性及びV−I特性から定性的に読み取れる内容を、定量的に表現したものである。数式(1)で規定される関係をも併せて考えると、駆動時において、半導体光装置1の温度TがT
adjより高温となった場合(
図8の曲線Eの場合)に、平均出力を一定制御するためには、第1の値xが点Sの値となるように制御すれば良いことを示している。より具体的には、第1の値x=V/Iを点Rより小さくするように制御するので、バイアス電流Iを大きくすれば良いことが分かる。バイアス電流Iを変化させるとバイアス電圧Vも変化していく。従って、バイアス電流Iとバイアス電圧Vの両方の値、およびその時の温度Tを観測し、式(4)が成立するようにバイアス電流を変えていけば、平均出力を一定制御することができる。
【0101】
以上のように、本願発明によれば、予め所望の平均出力P
adj、及び所望の消光比となるバイアス電流I
adj、バイアス電圧V
adj、変調電流I
mod,adj、温度T
adj、そしてαを記憶部に記憶させておけば、駆動時においては、ある時点でのバイアス電流I、バイアス電圧V、温度Tを測定すれば、数式(1)−(4)を用いて、平均出力、消光比を一定制御することができる。これにより、従来の受光素子を用いた制御と比べると部品の削減によるコストダウン、半導体光装置の小型化へ寄与することができる。
【0102】
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係る半導体光装置1の構成図である。本実施形態に係る半導体光装置1は、駆動回路2と、光送信モジュール3と、マイクロコンピュータ4と、バイアス電流源5と、電圧測定部6と、電流測定部7と、温度計(thermometer)8とを備えている。第2の実施形態に係る半導体光装置1は、温度計8がマイクロコンピュータ4と別体で備えられている点で第1の実施形態に係る半導体光装置1と相違する。また、第2の実施形態に係る半導体光装置1における電圧測定部6及び電流測定部7は、第1の実施形態に係る半導体光装置1におけるものとそれぞれ相違する。その他の構成については、第2の実施形態に係る半導体光装置1の構成と、第1の実施形態に係る半導体光装置1の構成とは同様である。
【0103】
本実施形態に係る温度計8は、サーミスタ等であり、光送信モジュール3の温度を直接測定する。測定したデータを、マイクロコンピュータ4の制御部44に送信する点は、第1の実施形態に係る半導体光装置1と同様である。
【0104】
本実施形態に係る電圧測定部6は、ローパスフィルタとしてデジタルフィルタ64及び66を備える。デジタルフィルタ64及び66は、適当な抵抗を介して半導体光素子30の両電極に接続される。デジタルフィルタ64及び66を通過した電圧の値は、第1の電圧計62によって測定され、制御部44に送信される。ここで、第1の実施形態に係る半導体光装置1と同様に、半導体光素子30の端子間電圧をオペアンプにより増幅した後、ローパスフィルタを通過させる構成としてもよい。その場合、記憶部40に増幅率を記憶することとする。
【0105】
本実施形態に係る電流測定部7は、ローパスフィルタとしてデジタルフィルタ72を備え、第2の電圧計70によりR
iIの値を測定し、制御部44において固定抵抗値R
iを除き、バイアス電流源5によって供給されるバイアス電流の値Iを測定する。
【0106】
本実施形態に係る半導体光装置1の駆動時に行われる制御工程と、製造時に行われる参照値決定工程は、第1の実施形態に係る半導体光装置1の場合と同様である。本実施形態に示す構成であっても、受光素子を用いることなく、光信号の平均出力を一定に制御し、また、光信号の消光比を一定に制御することができる。加えて、受光素子を用いることなく、光信号の平均出力をモニタすることができる。
【0107】
なお、第1又は第2の実施形態では、参照値決定工程において、第3の情報に基づいて参照値αを算出することとしているが(S32)、第1の情報に基づいて参照値αを算出することとしてもよい。その場合、異なる条件(雰囲気温度がT
adjである場合と、T≠T
adjである場合)において、平均出力が等しいことを光出力測定器により確認し、数式(4)により参照値αを算出する。
【0108】
なお、第1又は第2の実施形態に示した構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、当業者が実施形態に係る半導体光装置1を適宜変形することにより得られる範囲を含むものである。
【0109】
なお、第1又は第2の実施形態は、平均出力および消光比の両方について一定制御する例を示したが、各々片方だけの制御機能を有した半導体光装置にも適用できることは言うまでもない。具体的には光信号の変調機能を有しない、連続光を出力する光源において、本願発明の平均出力一定制御を用いても構わない。また平均出力一定制御は受光素子を用いて行い、消光比一定制御には本願発明の構成を用いて行っても構わない。平均出力一定制御のためだけであれば、高速変調光に対応した受光素子を用いる必要はなく、より低価格な受光素子を用いることができ、装置全体として低価格化を実現できる。
【0110】
なお、第1又は第2の実施形態では、参照値決定工程において光出力測定器や光波形測定器を用いて参照値を決定したが、以下の方法でも決定することができる。例えば、半導体光装置に搭載する前の半導体光素子の状態または前記半導体光素子を内蔵した光送信モジュール(TOSA等)の状態で、参照値バイアス電圧、参照値バイアス電流、参照値温度、及び参照値平均出力を決定し、また類似の半導体光装置で決定した参照値αの値を記憶部40に記憶させ、半導体光装置としては参照値決定工程を行わなくても構わない。さらに、前記導体光素子の状態もしくは光送信モジュールの状態で決定した各参照値を仮に記憶部40に記憶させ、所望の平均出力Pとなるように、ある温度Tにおいてバイアス電流Iを数式(1)が成立するように調整し、得られたバイアス電流IをI
adj、その時のバイアス電圧をV
adj、温度をT
adjとして、記憶部40に記憶させても構わない。変調電流についても同様に数式(2)が成立するよう決定させる。このようにすると、半導体光装置の参照値決定工程において、光出力測定器や光波形測定器を用いることなく参照値を決定することができる。
【0111】
また、平均出力や消光比等の顧客仕様や国際規格における規定仕様は、固定値ではなくある範囲(許容範囲)や上限値、下限値で規定されていることが一般的である。例えば、平均出力の仕様として、−8.2dB〜+0.5dBの範囲が与えられる場合があり、消光比の仕様として、3.5dB以上という下限値が与えられる場合がある。従って、第1及び第2の実施形態において、平均出力一定制御や消光比一定制御という場合、必ずしも一定値に合わせるだけでなく、平均出力や消光比についての仕様を満たす範囲内となるように制御することも含まれるものとする。より具体的な制御方法としては、例えば以下の方法がある。顧客仕様には光波形の品質に関わる光マスク規定がある。光波形は、半導体光素子の特性上、高温時の方が劣化しやすい傾向にある。その対策として、高温時においては高出力化状態で使用し、光波形品質を保ちやすくするというものがある。逆に低温時においては、高温時と同等の光波形品質とするためには、高温時と比較して低出力化の状態とすることが望ましい場合がある。つまり、マスク規定を満足するためには、高温時は高出力とし、低温時は低出力とすることが望ましい。従って、平均出力の顧客仕様が上述のように、ある範囲で規定されている場合は、高温時は高出力となるように制御し、低温時は低出力となるように制御することで、平均出力仕様もマスク規定も満足することができる。制御方法としては、例えば数式(4)において、左辺に温度により変わる係数をかけることで、高温時と低温時で目標とする平均出力値を変えることができる。これは消光比についても同様で、温度により目標とする消光比仕様が変わる場合などは、数式に温度により変わる係数を掛け合わせることで、消光比仕様もマスク規定も満足することができる。