特許第6321468号(P6321468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321468
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】横ビームの取替え方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   E01F15/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-130864(P2014-130864)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-8455(P2016-8455A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安西 咲菜恵
(72)【発明者】
【氏名】佐川 就一
(72)【発明者】
【氏名】井上 仁
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭祐
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−363936(JP,A)
【文献】 特開2011−042925(JP,A)
【文献】 特開2009−097205(JP,A)
【文献】 米国特許第05169127(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
E01F 13/00−15/14
E04H 17/00−17/26
E01F 9/00−11/00
E01F 3/00−8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナースリーブが筒状の横ビームの端部内側に挿入されて、設置面に間隔をおいて設置された隣り合う支柱の前側に、締結具により前記インナースリーブを介して横ビームが取付けられている防護柵における、特定の横ビームを取替える横ビームの取替え方法であって、
前記締結具を取外す締結具取外し工程と、
前記特定の横ビームの両端部にそれぞれ挿入されている第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを、前記特定の横ビームの隣りに配置されている隣りの横ビーム側に移動させることにより、前記特定の横ビームの両端部からそれぞれのインナースリーブを抜き取った後、前記特定の横ビームを前記支柱から取外す取外し工程と、
前記特定の横ビームの両端部からその隣りの横ビーム側に移動した前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを、前記隣りの横ビーム間に配置された取替え用横ビームの一方の端部と他方の端部とに挿入する挿入工程と、
前記取替え用横ビームの両端部に前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブが挿入された状態で、前記締結具により前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを介して、前記取替え用横ビームを前記支柱の前側に取付ける取付け工程と、
を含み、
前記インナースリーブはスリーブ本体とカバー材とを備え、前記スリーブ本体に前記締結具である取付ボルト頭又はナットが配置されている凹部が設けられ、前記スリーブ本体は中実の棒状体の一部が切り落とされて縦壁状部が形成されているとともに、前記インナースリーブが前記支柱に取付けられた状態において、前記カバー材がスリーブ本体に被せられて取付けられるとともに、前記支柱の前側面に前記カバー材が当接されて取付けられてなり、
前記取外し工程においては、前記カバー材を取外して、前記スリーブ本体を前記隣りの横ビーム側に移動させることにより、前記特定の横ビームから前記スリーブ本体を抜き取るものであり、
前記挿入工程においては、前記特定の横ビームからその隣りの横ビーム側に移動した前記スリーブ本体を、前記隣りの横ビーム間に配置された前記取替え用横ビームに挿入するものであり、
さらに、前記挿入工程と取付け工程の間に、前記スリーブ本体に前記カバー材を被せる被せ工程
を含むことを特徴とする横ビームの取替え方法。
【請求項2】
請求項1に記載の横ビームの取替え方法により横ビームが取り替えられる防護柵であって、スリーブ本体とカバー材とを備えると共に、前記スリーブ本体に前記締結具である取付ボルト頭又はナットが配置されている凹部が設けられ、前記スリーブ本体は中実の棒状体の一部が切り落とされて縦壁状部が形成されている、インナースリーブを備えたことを特徴とする防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等に設置される防護柵、特に支柱の前側に横ビームが取付けられている、所謂フロントビームタイプの防護柵における横ビームの取替え方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路等に設置されるフロントビームタイプの防護柵としては、例えば特許文献1には、横ビームの連結構造が、支柱に対して前面側に固着されるブラケットと、ブラケットにより長手方向に向けて中央部分を支持されるインナースリーブとを備えており、インナースリーブは、ブラケット内に挿通された上で、その中央部分をボルト並びにナットにより固定することにより支持され、その結果、インナースリーブの両端が、ブラケットから長手方向から突き出された状態となり、この突き出された突出部分が、それぞれ横ビームの端部に嵌め込まれ、さらにボルトとナットにより固定されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−2613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなインナースリーブを用いた防護柵の場合には、各横ビームの取替えが煩雑な作業になる。つまり、長手方向に連続して取付けられている横ビームの中間に位置する1本の横ビームを取替えるために、取替え対象となっている横ビームとインナースリーブとを締結しているボルトを取外しても、インナースリーブの端部がビームの端部に嵌め合わされた状態が維持されたままなので、取替え対象となっている横ビームのみを支柱から取外すことができない。したがって、取替え対象の横ビームを取替えるには、連続して取付けられている横ビームの一番端の横ビームから順々に、取替え対象となっている横ビームまでの全ての横ビームを、一旦支柱から取外す必要がある。
【0005】
また、車両の衝突等により破損した横ビームについては、その横ビームを切断等することにより、前記インナースリーブの存在にかかわらず支柱から取外すことができるものの、その場合であっても、取替え用の新しい横ビームを取付ける際には、前記インナースリーブが邪魔になり取付けることができないため、結局は上記の様に、一番端の横ビームから順々に、取替え対象となっている横ビームまでの全ての横ビームを、一旦支柱から取外さなければならない。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解消するたねになされたものであり、インナースリーブを用いて横ビームが支柱に取付けられている防護柵において、取替え対象となっている横ビームの取替え作業を効率的に実施することができる横ビームの取替え方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る横ビームの取替え方法は、インナースリーブが筒状の横ビームの端部内側に挿入されて、設置面に間隔をおいて設置された隣り合う支柱の前側に、締結具により前記インナースリーブを介して横ビームが取付けられている防護柵における、特定の横ビームを取替える横ビームの取替え方法であって、
前記締結具を取外す締結具取外し工程と、
前記特定の横ビームの両端部にそれぞれ挿入されている第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを、前記特定の横ビームの隣りに配置されている隣りの横ビーム側に移動させることにより、前記特定の横ビームの両端部からそれぞれのインナースリーブを抜き取った後、前記特定の横ビームを前記支柱から取外す取外し工程と、
前記特定の横ビームの両端部からその隣りの横ビーム側に移動した前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを、前記隣りの横ビーム間に配置された取替え用横ビームの一方の端部と他方の端部とに挿入する挿入工程と、
前記取替え用横ビームの両端部に前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブが挿入された状態で、前記締結具により前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを介して、前記取替え用横ビームを前記支柱の前側に取付ける取付け工程と、
を含み、
前記インナースリーブはスリーブ本体とカバー材とを備え、前記スリーブ本体に前記締結具である取付ボルト頭又はナットが配置されている凹部が設けられ、前記スリーブ本体は中実の棒状体の一部が切り落とされて縦壁状部が形成されているとともに、前記インナースリーブが前記支柱に取付けられた状態において、前記カバー材がスリーブ本体に被せられて取付けられるとともに、前記支柱の前側面に前記カバー材が当接されて取付けられてなり、
前記取外し工程においては、前記カバー材を取外して、前記スリーブ本体を前記隣りの横ビーム側に移動させることにより、前記特定の横ビームから前記スリーブ本体を抜き取るものであり、
前記挿入工程においては、前記特定の横ビームからその隣りの横ビーム側に移動した前記スリーブ本体を、前記隣りの横ビーム間に配置された前記取替え用横ビームに挿入するものであり、
さらに、前記挿入工程と取付け工程の間に、前記スリーブ本体に前記カバー材を被せる被せ工程
を含むことを特徴とするものである。
【0008】
また本発明に係る防護柵は、横ビームの取替え方法により横ビームが取り替えられる防護柵であって、スリーブ本体とカバー材とを備えると共に、前記スリーブ本体に前記締結具である取付ボルト頭又はナットが配置されている凹部が設けられ、前記スリーブ本体は中実の棒状体の一部が切り落とされて縦壁状部が形成されている、インナースリーブを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る横ビームの取替え方法によれば、インナースリーブが筒状の横ビームの端部内側に挿入されて、設置面に間隔をおいて設置された隣り合う支柱の前側に、締結具により前記インナースリーブを介して横ビームが取付けられている防護柵における、特定の横ビームを取替える横ビームの取替え方法であって、
前記締結具を取外す締結具取外し工程と、
前記特定の横ビームの両端部にそれぞれ挿入されている第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを、前記特定の横ビームの隣りに配置されている隣りの横ビーム側に移動させることにより、前記特定の横ビームの両端部からそれぞれのインナースリーブを抜き取った後、前記特定の横ビームを前記支柱から取外す取外し工程と、前記特定の横ビームの両端部からその隣りの横ビーム側に移動した前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを、前記隣りの横ビーム間に配置された取替え用横ビームの一方の端部と他方の端部とに挿入する挿入工程と、前記取替え用横ビームの両端部に前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブが挿入された状態で、前記締結具により前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを介して、前記取替え用横ビームを前記支柱の前側に取付ける取付け工程と、を含むようになされているので、前記取替え用横ビームを取付ける取付け工程において、前記第一のインナースリーブ及び第二のインナースリーブを前記取替え用横ビームの隣りに配置されている隣りの横ビームから前記取替え用横ビームの両端部に挿入する。このことにより、前記取替え用横ビームの一方の端部と第一のインナースリーブとが係り合い、前記取替え用横ビームの他方の端部と第二のインナースリーブとが係り合って、前記取替え用横ビームは略水平な状態に支持することができ、各支柱に取付けられるインナースリーブを移動させて取替え用横ビームの取付け作業を行うので、横ビームの取替え作業を容易に行うことができる。
【0010】
また本発明に係る横ビームの取替え方法によれば、前記インナースリーブはスリーブ本体とカバー材とを備え、前記スリーブ本体に前記締結具である取付ボルト頭又はナットが配置されている凹部が設けられているとともに、前記インナースリーブが前記支柱に取付けられた状態において、前記カバー材がスリーブ本体に被せられて取付けられるとともに、前記支柱の前側面に前記カバー材が当接されて取付けられてなり、前記取外し工程においては、前記カバー材を取外して、前記スリーブ本体を前記隣りの横ビーム側に移動させることにより、前記特定の横ビームから前記スリーブ本体を抜き取るものであり、前記挿入工程においては、前記特定の横ビームからその隣りの横ビーム側に移動した前記スリーブ本体を、前記隣りの横ビーム間に配置された前記取替え用横ビームに挿入するものであり、さらに、前記挿入工程と取付け工程の間に、前記スリーブ本体に前記カバー材を被せる被せ工程を含むので、支柱に固定されている取付ボルト又はナットを緩めて取外し、次に前記カバー材を取外しさえすれば、前記スリーブ本体は移動可能な状態になり、前記特定の横ビーム側から前記特定の横ビームの隣りの横ビーム側に前記スリーブ本体を移動させ、前記特定の横ビーム端部から前記スリーブ本体を抜き取ることにより、前記特定の横ビームのみを取外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る横ビームの取替え方法が適用可能な防護柵の実施の一形態を示す正面図である。
図2図1に示す防護柵の要部拡大の平面図である。
図3図1に示す防護柵のA−A矢視の側面図である。
図4図1に示す防護柵のB−B矢視の断面図である。
図5図1に示す防護柵を背面側から見た分解斜視図である。
図6図1に示す防護柵に用いられているインナースリーブのスリーブ本体を示す、(イ)は斜視図、(ロ)は(イ)の反対側から見た斜視図である。
図7図1に示す防護柵に用いられているインナースリーブのカバー材を示す、(イ)は斜視図、(ロ)は(イ)の反対側から見た斜視図である。
図8】本発明に係る横ビームの取替え方法において、特定の横ビームを取外す工程を説明するための分解斜視図である。
図9】本発明に係る横ビームの取替え方法において、取替え用横ビームを取付ける工程を説明するための分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照し、具体的に説明する。
なお、本発明に係る明細書及び特許請求の範囲の記載において、設置面に立設された支柱の横ビームが取付けられている側を前側とし、その逆側を後側(又は背面側)とし、横ビームは、支柱に対して左右方向に延設されているというものとする。
【0013】
図面において、Pは本発明に係る横ビームの取替え方法が適用可能な防護柵、1は設置面Gに間隔をおいて立設された支柱、2は前記支柱1に上下に並行に間隔をあけて2段取付けられている横ビーム、3は前記横ビーム2の端部内側に挿入されているインナースリーブであり、該インナースリーブ3が前記支柱1を前後方向に貫通する取付ボルト6とナットNとにより、前記支柱1の前側面11に当接されて取付けられ、もって前記支柱の前側に横ビーム2が取付けられている。
【0014】
前記支柱1は、従来の防護柵に用いられているものと同様なものが用いられ、一般には外表面を塗装や合成樹脂で被覆した円形のパイプ材から形成されているものであって、前記横ビーム2も、従来の防護柵に用いられているものと同様なものが用いられ、一般には外表面を塗装や合成樹脂で被覆した長尺の円形パイプ材から形成されている。
【0015】
前記インナースリーブ3は、スリーブ本体4と該スリーブ本体4に被せられるカバー材5とを備え、前記スリーブ本体4は、円筒状の前記横ビーム2の内径よりやや小さい外径の円形中実の棒状体の一部が切り落とされて縦壁状部46が形成され、その端部が前記横ビーム2の端部内側に挿入でき、かつ横ビーム2とスリーブ本体4とが大きくガタつかないようになされている。
【0016】
前記インナースリーブ3を構成するスリーブ本体4及びカバー材5は、安いコストで製作できる合成樹脂を成形したものでもよいが、防護柵Pに用いられる部材であるため、車両等の衝撃に対する強度が求められることから、アルミニウム合金や鉄合金等、金属製のものが好ましく、形状をある程度自在に成形することができる金属の成形品や鋳造品を用いるのが好ましい。この様に、前記インナースリーブ3(スリーブ本体4及びカバー材5)を金属製の中実形状にすることにより、外方から防護柵Pに衝撃が加わった場合であっても、ある程度の衝撃に耐え得る防護柵を形成することができる。
【0017】
前記スリーブ本体4の中央部には、前記取付ボルト6の胴体部61を挿通するための前後方向に貫通した貫通孔41が設けられるとともに、該貫通孔41の前側が拡径されて、前記取付ボルト頭62又はナットNが配置される凹部42となされている。
【0018】
また前記凹部42は、そこに配置されている前記取付ボルト頭62又はナットNの回動が阻止されるように形成されており、本実施形態においては、前記取付ボルト頭62又はナットNが六角形状であるので、前記凹部42も、前記取付ボルト頭62又はナットNより少し大きい六角形状の凹部となされ、前記取付ボルト頭62又はナットNを前記凹部42に嵌め込んで配置することができるとともに、前記取付ボルト頭62又はナットNを回転させて取付ボルト6とナットNを螺着する作業を行う際、前記取付ボルト6とナットNとが一緒に回転する、所謂供回りが発生することなく、螺合作業を効率的に行うことができるように、前記取付ボルト頭62又はナットNの回動が阻止されるようになされている。
【0019】
また前記貫通孔41とそれに連通する凹部42とが設けられているスリーブ本体4の中央部は、その前面側と背面側とが切り込まれて切り込み部43が設けられ、それぞれ前側切り込み部431と後側切り込み部432となされ、その切り込み部43に上方から前記カバー材5が嵌め込まれて、インナースリーブ3が形成されている。
【0020】
また前記スリーブ本体4の両端部には、前記横ビーム2端部の下面側に設けられている横ビーム取付孔21に対応する位置に、上下方向に貫通した横ビーム固定ボルトB1の胴体部B1’を挿通する挿通孔44が設けられているとともに、該挿通孔44の上部が拡径されて、前記横ビーム固定ボルトB1と螺着されてインナースリーブ3に横ビーム2を固定するための横ビーム固定ナットN1が配置されるビーム固定用凹部45となされている。
【0021】
また前記ビーム固定用凹部45は、前記横ビーム固定ナットN1の回動が阻止されるように形成されており、本実施形態においては、前記横ビーム固定ナットN1が六角形状であるので、前記ビーム固定用凹部45も、前記横ビーム固定ナットN1より少し大きい六角形状の凹部となされ、前記横ビーム固定ナットN1を前記ビーム固定用凹部45に嵌め込んで配置することができるとともに、前記横ビーム固定ボルト頭B1”を回転させて前記横ビーム固定ボルトB1と横ビーム固定ナットN1を螺着する作業を行う際、前記横ビーム固定ボルトB1と横ビーム固定ナットN1とが一緒に回転する、所謂供回りが発生することなく、螺合作業を効率的に行うことができるように、前記横ビーム固定ナットN1の回動が阻止されるようになされている。
【0022】
前記カバー材5は、上面側の水平壁51の前後の端部から下方に縦壁52,53が突設され、側面視が下方に開口されたコの字状となされるとともに、前記上面側の水平壁51と前面側の縦壁52とは前記横ビーム2の外径とほぼ同じ外径となるように、その外側面側が円弧状に形成され、かつ前記カバー材5の背面側の縦壁53は前記支柱1の前側面11の形状に対応して円弧状に凹んで形成されている。
【0023】
本実施形態においては、前記支柱1が円形であるので、前記カバー材5の背面側の縦壁53は、その外側面531が平面視において円弧状に凹んだ凹面形状となされ、さらにその中央には、前記取付ボルト6の胴体部61が挿通される透孔532が設けられている。さらに前記背面側の縦壁53の内側面533には、前記前面側の縦壁52に向けて突出した段部534が設けられて、前記カバー材5を下部の開口している部分から前記スリーブ本体4に嵌め込む際、カバー材5の段部534がスリーブ本体4の後側切り込み部432に嵌合し、かつカバー材5の前面側の縦壁52がスリーブ本体4の前側切り込み部431に嵌合するようになされている。なお、前記カバー材5の左右の幅は、スリーブ本体4の左右の幅より狭いものとなされており、前記後側切り込み部432の左右の幅は、前側切り込み部431の左右の幅より狭くなされている。
【0024】
そして、その凹部42にナットNが配置された状態の前記スリーブ本体4に、前記カバー材5が嵌め込まれ、インナースリーブ3の両端部が前記横ビーム2の端部内側に挿入されて、前記支柱1に前後方向に設けられた取付ボルト挿通孔12と、前記カバー材5の背面側の縦壁53の透孔532と、前記スリーブ本体4の貫通孔41とに、前記取付ボルト6を挿通し、前記凹部42に配置されたナットNと螺着されて、前記支柱1の前側面11にインナースリーブ3のカバー材5の背面側の縦壁53の外側面531が当接されて、前記支柱1に前記横ビームが取付けられている。つまり、前記インナースリーブ3が前記支柱1に取付けられた状態においては、前記カバー材5が前記スリーブ本体4に被せられており、前記スリーブ本体4に設けられた凹部42が隠蔽され外方から見えない様になされている。
【0025】
また、特に図2,3に示す様に、前記カバー材5の背面側の縦壁53の外側面531が凹面となされていることにより、前記横ビーム2の長手方向の端部の後端縁22は、前記支柱1の前端縁13より距離Yの寸法分離れて後側(背面側)に配置されるようになされている。これにより、支柱の前端縁に横ビームを取付ける構造となっている防護柵に比べ、少なくとも距離Yの寸法分、防護柵Pの前後方向の幅Xを幅狭くすることができるので、幅員の狭い道路に防護柵Pを設置した場合、少しでも道路幅員を広く残すことができる。
【0026】
また、前記背面側の縦壁53の外側面531の外径は、前記支柱1の外径より大きくなされ、背面側の縦壁53の中央から左右端部に向かうに従い、支柱1の前側面11との間に隙間Sが生じるようになされている。これにより、防護柵Pを設置する設置面Gが水平でなく、傾斜している場合であっても、前記取付ボルト6を軸にして、インナースリーブ3を傾斜させることができ、したがって、水平な設置面Gに用いる防護柵Pと同じ部材を用いて、傾斜した設置面にも防護柵Pを設置することができる。
【0027】
次に、インナースリーブ3が筒状の横ビーム2の端部内側に挿入されて、設置面Gに間隔をおいて設置された隣り合う支柱1の前側面11に、締結具である取付ボルト6とナットNとにより前記インナースリーブ3を介して横ビーム2が取付けられている防護柵Pにおいて、例えば車両等が横ビームに衝突するなどして、当該横ビームを取り替える必要がある場合、その特定の横ビーム2Aを取替える方法について説明する。
【0028】
図8(イ)、(ロ)、(ハ)に順番に示す様に、まず、隣り合って設置面Gに設置されている支柱1A,1Bに取付けられている取付ボルト6A,6B及び横ビーム固定ボルトB1をそれぞれ緩めて取外すとともに、前記特定の横ビーム2Aの両端部にそれぞれ挿入されている第一のインナースリーブ3A及び第二のインナースリーブ3Bの、スリーブ本体4A,4Bに被せられているカバー材5A,5Bを上方向に取外して、前記特定の横ビーム2Aの左右の隣りに配置されている隣りの横ビーム2B,2C側に前記スリーブ本体4A,4Bを横方向に移動させ、前記特定の横ビーム2Aの両端部からそれぞれの前記スリーブ本体4A,4Bを抜き取ることにより、前記特定の横ビーム2Aを前記支柱1A,1Bから取外す。
【0029】
そして、図9(イ)、(ロ)、(ハ)に順番に示す様に、前記特定の横ビーム2Aの両端部からその左右の隣りの横ビーム2B,2C側に移動した前記スリーブ本体4A及びスリーブ本体4Bを、前記隣り合う横ビーム2B,2Cの間に配置した取替え用横ビーム2Dの一方の端部と他方の端部とに挿入し、前記カバー材5A,5Bを前記スリーブ本体4A及びスリーブ本体4Bに上方から被せ、前記取替え用横ビーム2Dの両端部に前記第一のインナースリーブ3A及び第二のインナースリーブ3Bが配置された状態で、前記取付ボルト6A,6B及び横ビーム固定ボルトB1を締め込んで、前記第一のインナースリーブ3A及び第二のインナースリーブ3Bを介して、前記取替え用横ビーム2Dが前記支柱1A,1Bの前側に取付けられる。
【0030】
また上述の実施形態においては、前記スリーブ本体4の凹部42にナットNを配置するようにしているが、これに限定されるものではなく、取付ボルト頭62を配置するようにしてもよい。この場合は、前記カバー材5の背面側の縦壁53に設けられている透孔532を、背面側の縦壁53の下端まで延設し、下側に開口された逆U字孔とするのがよい。また、前記カバー材5をスリーブ本体4の上方から被せるようにしているが、下方から被せるようにしてもよい。
【0031】
また、前記スリーブ本体4の両端部に設けられているビーム固定用凹部45については、必ずしも設ける必要はなく、設けない場合には、前記横ビーム2端部の下面側に設けられている横ビーム取付孔21に対応する横ビーム2端部の上面側に貫通孔を設けて、適宜長さの横ビーム固定ボルトB1を前記横ビーム取付孔21と上面側の貫通孔とスリーブ本体4の挿通孔44とに挿通し、横ビーム固定ナットB1を螺合して、横ビーム2を固定するようにすればよい。
【0032】
また、本実施形態において、前記支柱1と横ビーム2とは、断面が円形のパイプ材を用いているが、これに限定されるものではなく、断面が正方形や楕円形と言ったパイプ材を用いてもよい。その場合には、前記インナースリーブ3及び前記カバー材5の背面側の縦壁53の外側面531を支柱1と横ビーム2の断面形状に対応するように形成すればよい。
【符号の説明】
【0033】
1、1A、1B 支柱
11 前側面
12 取付ボルト挿通孔
13 前端縁
2 横ビーム
2A 特定の横ビーム
2B、2C 隣りの横ビーム
2D 取替え用横ビーム
21 横ビーム取付孔
22 後端縁
3 インナースリーブ
3A 第一のインナースリーブ
3B 第二のインナースリーブ
4、4A、4B スリーブ本体
41 貫通孔
42 凹部
43 切り込み部
431 前側切り込み部
432 後側切り込み部
44 挿通孔
45 ビーム固定用凹部
46 縦壁状部
5、5A、5B カバー材
51 上面側の水平壁
52 前面側の縦壁
53 背面側の縦壁
531 外側面
532 透孔
533 内側面
534 段部
6、6A、6B 取付ボルト
61 胴体部
62 取付ボルト頭
P 防護柵
N ナット
B1 横ビーム固定ボルト
B1’ 胴体部
B1” 横ビーム固定ボルト頭
N1 横ビーム固定ナット
G 設置面
X 前後方向の幅
Y 距離
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9