(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(a)は、実施形態に係るマット用留め具10の斜視図であり、
図1(b)は、マット用留め具10の上面図である。また、
図2(a)および
図2(b)は、マット用留め具10の側面図である。
図2(a)は車両に取り付けた際の車両幅方向にみたマット用留め具10であり、
図2(b)は車両に取り付けた際の車両前後方向にみたマット用留め具10である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
マット用留め具10は、マットの移動を抑えるためにマットおよびカーペットに取り付けられ、マットをカーペットに連結する。車室内に設けられるカーペットは、布地状であって、運転席や助手席等の座席シート下に位置する車体パネルに貼られ、固定される。マットは、車室内のカーペットの上に配される。
【0012】
マット用留め具10はマットの移動を制限し、マットがブレーキペダルやアクセルペダルに干渉することを抑える。マット用留め具10は、例えば座席シートの根元近傍に配置され、運転者の足が当りづらい位置に設けられる。マット用留め具10は、一つのマットに対して複数取り付けられてよい。
【0013】
マット用留め具10は、カーペットに固定される第1固定部材20と、マットに固定される第2固定部材22と、第2固定部材22にスライド可能に保持される操作部材28と、操作部材28を付勢する弾性部材とを備える。
【0014】
マット用留め具10は、車両に対する取付方向が定められる。
図1(a)に示す3次元軸のうちx軸を車両前後方向とし、y軸を車両左右方向とし、z軸を上下方向とする。第1固定部材20および第2固定部材22は、カーペットおよびマットに対する取付方向が定められており、カーペットおよびマットに対する回転が制限されるように取り付けられる。カーペット取付孔およびマット取付孔は楕円形状や長方形状に形成され、第1固定部材20および第2固定部材22のうちカーペット取付孔またはマット取付孔に挿通される部分も楕円形状や長方形状に形成される。
図2(a)および(b)に示す第1固定部材20の基部32は、断面が長方形状に形成され、カーペット取付孔も長方形状に形成される。また、マット取付孔に挿通される第2固定部材22の筒部62も
図2(a)に示す第1側面を長辺に、
図2(b)に示す第2側面を短辺に形成され、マット取付孔も筒部62の形状に応じて形成される。この第1固定部材20および第2固定部材22について、さらに図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図3は、
図1(b)に示すマット用留め具10の線分A−Aの断面図である。第1固定部材20は、筒状の基部32と、基部32から径方向に張り出す板状のフランジ部34と、基部32から上方の突出する突軸36と、を有する。基部32の側面には突出する一対の係止部40が撓み可能な弾性爪体として形成される。
【0016】
基部32がカーペット14のカーペット取付孔14aに挿入され、フランジ部34と一対の係止部40がカーペット14の表裏を挟むことで、第1固定部材20がカーペット14に固定される。フランジ部34には下方に突き出た複数の歯部38は、フランジ部34がカーペット14の表面に係止した際にカーペット14に食い込む。一対の係止部40はカーペット取付孔14aの裏縁に係止する。歯部38がカーペット14に刺さることで第1固定部材20のカーペット14に対する相対回転をいっそう抑えることができる。
【0017】
突軸36は、柱状に形成され、基部32からフランジ部34より上方に突出する。突軸36は、先端側に形成された大径部36aと、基部32側に突軸36より小径に形成された小径部36bと、小径部36bから大径部36aに向かって突軸36の外周面に径方向外向きに張り出すように形成された張出部42と、小径部36bの外周面の一部から径方向外側に突出するように形成された一対のリブ44と、を有する。
【0018】
リブ44は、大径部36aより下方に、張出部42と軸方向に離間して形成される。一対のリブ44は、大径部36aの直径と略同一となるように大径部36aの外周面に沿った位置まで径方向外向きに張り出す。張出部42とリブ44とにより、ロック状態での操作部材28のロック部72の軸方向の動きを制限できる。突軸36は第2固定部材22の挿通孔に挿入されて、第2固定部材22を第1固定部材20にロックするために機能する。
【0019】
リブ44は、表側部材24の挿通孔50の縁および裏側部材26の挿通孔66の縁に当接または近接して、ロック状態での第1固定部材20と第2固定部材22のガタツキを抑えることができる。第2固定部材22の挿通孔を貫通させることで、突軸36を挿入する際に挿通孔と突軸36の位置合わせを容易にできる。また、第2固定部材22の挿通孔を円形に形成し突軸36を円柱状に形成することで、第1固定部材20と第2固定部材22の相対回転を許容できる。
【0020】
第2固定部材22は、表側部材24と裏側部材26を有し、マット12のマット取付孔12aの縁を表側部材24と裏側部材26とで挟むことで、マット12に固定される。
【0021】
操作部材28の一部および弾性部材30は、表側部材24の箱状の収容空間形成部52に収容される。表側部材24の収容空間形成部52は、上壁部52aと、上壁部52aに対向する下壁部52cと、上壁部52aおよび下壁部52cとを連結する側壁部52bと、上壁部52aを開口する開口部54とを有する。開口部54は、操作部材28の操作部70をマット用留め具10の表に露出させる。収容空間形成部52内に操作部材28と弾性部材30とを収容することで、表側部材24と裏側部材26をマット取付孔12aへ容易に取り付けることができる。また、収容空間形成部52は操作部材28のスライドのガイドとしても機能する。上壁部52aおよび下壁部52cはマット12に取り付けた際にマット12と略平行に設けられる。これにより、操作部材28が、第2固定部材22の周囲のマット12と略平行に、マット面に沿ってスライド可能になる。
【0022】
裏側部材26は、表側部材24に対向するように配置される蓋部61と、蓋部61から径方向外向きに張り出す裏側フランジ部60と、蓋部61の縁から上方に突出する筒部62と、筒部62の内面から突出するように形成される係止爪部64と、蓋部61の中央に形成された挿通孔66と、を有する。なお表側部材24の挿通孔50と裏側部材26の挿通孔66を区別しない場合、第2固定部材22の「挿通孔」という。
【0023】
裏側フランジ部60は、マット取付孔12aの裏側の縁に係止する。蓋部61は、下面の挿通孔66の周りに凹み部63を有し、湾曲しやすく形成される。表側部材24と裏側部材26は、下壁部52cの周縁58と係止爪部64との係止により、一体に結合される。マット取付孔12aに裏側部材26の筒部62を挿入し、表側部材24の収容空間形成部52を筒部62内に押し込むことで、マット12に第2固定部材22を容易に取り付けることができる。
【0024】
操作部材28は、開口部54から表に露出する操作部70と、スライドに応じて突軸36の張出部42にロックまたはロック解除するロック部72と、弾性部材30の一端に当接するバネ受け部74とを有する。ロック部72と操作部70の間に突軸36が挿入される。
【0025】
弾性部材30は、一端が操作部材28のバネ受け部74に当接し、他端が表側部材24の側壁部52bに当接する。弾性部材30は、操作部材28のロック部72をロックさせる方向に付勢する。
【0026】
図4は、操作部材28について説明するための図である。
図4(a)は表側部材24を省いて示すマット用留め具10の斜視図であり、
図4(b)は
図2(a)に示すマット用留め具10の線分B−Bの断面図である。
図4(a)では、表側部材24を省いて示すため、操作部材28および弾性部材30は裏側部材26の蓋部61に対して浮いた状態で示す。操作部材28は弾性部材30の付勢に抗してスライド可能である。
【0027】
図4(b)に示すように弾性部材30の一端は、バネ受け部74に支持され、他端は、側壁部52bのバネ用凹み部52dに支持される。
図4(b)に示すように表側部材24の収容空間形成部52は裏側部材26の筒部62の内側に配置され、収容空間形成部52の中に操作部材28の一部と弾性部材30が設けられる。
【0028】
操作部材28は、対向する一対の側部76と、一対の側部76を連結する第1連結部75および第2連結部78とを有し、側部76と第1連結部75と第2連結部78は平板状の「基板71」として機能する。この操作部材28の基板71に対して段状に持ち上げられるように操作部70が形成される。操作部70は、筒部62の上方に乗り上げるように位置し、操作部70の下面は、基板71の下面より上方に位置し、マット12の表面より上方に位置する。これにより、操作部70をマット取付孔12aの表側の縁に乗り上げるように配置でき、ユーザが操作部70を一見して認識でき、マット12の表面側に露出した操作部70を操作しやすくできる。
【0029】
図4(b)に示すように操作部材28の基板71は、収容空間形成部52内にてスライド可能に設けられ、操作部材28のスライド方向は、収容空間形成部52により弾性部材30の付勢方向に沿うように規制される。収容空間形成部52の側壁部52bが操作部材28のスライドのガイドとして機能する。
【0030】
一対の側部76と第1連結部75と第2連結部78により中央孔77が画成され、中央孔77に突軸36が隙間をもって挿通される。
図3および
図4(b)に示すようにロック部72は、第2連結部78から中央孔77内に向かって張り出すように形成され、第2連結部78の内面に突出するように形成される。
【0031】
図4(a)に示すように一対の側部76の上面にはスライド方向に延在する突状の凸部73が形成される。凸部73は、収容空間形成部52内にて上壁部52aに当接可能であり、操作部材28のスライド方向の傾斜を抑えることができる。
【0032】
図4(b)に示すようにロック部72は、弾性部材30の付勢方向、操作部材28のスライド方向に直交する薄板状に形成され、
図3に示すように操作部材28の基板71より薄肉に形成される。
図3に示すようにロック部72は、突軸36の張出部42とリブ44の間の凹みに入り込み、突軸36の小径部36bに当接している。
【0033】
図4(a)に示すように側部76の外面には表側部材24への抜け止めとなる抜け止め部80が形成される。抜け止め部80は撓み可能な弾性爪体である。
【0034】
図5は、
図2(a)に示すマット用留め具10の線分C−Cの断面図である。操作部材28は弾性部材30に付勢され、抜け止め部80が側壁部52bに形成された溝部52eの縁に当接することで抜け止めされる。突軸36の外周面に形成された一対のリブ44は、操作部材28のスライド方向に張り出す。これにより、ロック部72は、操作部材28のスライドに応じてリブ44の上方に乗り上げることが可能となる。
【0035】
図6は、マット用留め具10の動作について説明するための図である。
図6は
図3に示すマット用留め具10の断面図と同じ位置の断面であり、
図3ではロック部72がロック状態にあったが、
図6ではロック部72がロック解除状態にある。
【0036】
図3に示すように、ロック部72が張出部42の下方に入り込み張出部42と軸方向に重複するように位置することで、ロック部72の上方への移動が張出部42により制限され、ロック状態となる。ロック部72を有する操作部材28は、表側部材24の収容空間形成部52内に収容され、操作部材28の上方への動きが制限されると、第2固定部材22の表側部材24の上方への動きが制限される。このように、ロック状態では第2固定部材22の上方の動きが制限されて、マット12とカーペット14の相対移動が制限される。
【0037】
ロック解除する際、ユーザは操作部70を突軸36に向かって押し、操作部材28を弾性部材30の付勢力に抗してスライドさせる。
図6に示すように操作部材28のスライドによりロック部72が小径部36bから離間してロック解除状態となる。操作部材28のスライド方向が車両前後方向になるように操作部材28は車両に配設される。
【0038】
ロック解除状態となったまま、つまり操作部70を押し込んだまま第2固定部材22を上方に移動すれば、挿通孔から突軸36が抜けて第2固定部材22と第1固定部材20との連結が外れ、マット12がカーペット14から取り外される。
図1に示すように操作部70が表側に露出しているため、ユーザは一見して取り外し方を認識でき、操作部70をスライドさせることで、マット12をカーペット14から容易に取り外すことができる。
【0039】
マット用留め具10は、操作部70をマット12の面に沿ってスライドさせることによりロック解除するため、運転者がマット用留め具10を上から踏んでもロック解除される可能性は極めて低い。このように、マット用留め具10は、ユーザの操作で第1固定部材20および第2固定部材22の連結を容易に外せる一方、無意識に足で踏んでも連結が容易に外れないようにできる。このように、マット用留め具10において、取り外し操作の容易性と意図しない外れ防止を両立することができる。
【0040】
また、ユーザの足を操作部70に掛けて操作部材28がスライドされて一時的にロック解除状態となっても、足を操作部70から外せば弾性部材30の付勢により自動的にロック状態と戻るため、マット12が意図しない操作によりカーペット14から外れる可能性をいっそう低くできる。
【0041】
また、マット用留め具10において操作部70を車両前方側に配置し、ロックするための操作部材28のスライド方向が車両前方に向かうようになり、ロック解除するための操作部材28のスライド方向が車両後方に向かうよう配置される。例えば運転者がアクセルペダルやブレーキペダルの近傍でマット12を踏み込んだ際、マット12を車両前方に引っ張り、マット12をペダル側に接近させる荷重が加わる。この際、マット12から付与される車両前方への荷重はロック部72をロックさせる方向であるため、この荷重によってマット用留め具10がロック解除されてマット12が外れる可能性を極めて低くできる。
【0042】
表側部材24および裏側部材26の間に設けられるロック部72と、ユーザが操作しやすいように表面側に設けられる操作部70は異なる高さに形成される。操作部70を操作部材28の基板71の下面より上方に位置させて、マット12の表側に露出するように形成することで、操作部70とロック部72とを一体に形成でき、製造コストを抑えることができる。
【0043】
図7は、第1変形例のマット用留め具100を説明するための図である。
図7(a)はマット用留め具100から表側部材24を省いて示す斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)に示すマット用留め具100の線分D−Dの断面図である。
【0044】
第1変形例のマット用留め具100は、
図3に示すマット用留め具10と比べて、収容空間形成部152が表側部材124ではなく裏側部材126に形成されている点で異なる。マット用留め具100は、カーペット14に固定される第1固定部材20と、マット12に固定される第2固定部材122とから構成される。
【0045】
第2固定部材22は、表側部材124および裏側部材126を有し、マット12のマット取付孔12aの縁を表側部材124と裏側部材126とで挟むことで、マット12に固定される。
【0046】
図7(a)に示すように、裏側部材126は箱状の収容空間形成部152と、裏側フランジ部60とを有する。収容空間形成部152は、上壁部152aと、上壁部152aに対向する下壁部152cと、上壁部152aおよび下壁部152cとを連結する側壁部152bと、上壁部152aを開口する開口部154とを有する。
【0047】
側壁部152bの外面には外向きに突出する係止爪部164が形成される。表側部材124は、係止爪部164に係止する周状爪部158を有する。周状爪部158は、収容空間形成部152を覆うように外側から係止爪部164に係止して、表側部材124と裏側部材126が結合される。収容空間形成部152は、操作部材28の基板71と弾性部材30とを収容する。これにより、マット12への組み付けが容易となる。
【0048】
図8は、第2変形例のマット用留め具200を説明するための図である。
図8はマット用留め具200の上面図であり、マット用留め具200の表側部材24を省いて示す。第2変形例のマット用留め具200では、操作部材128のロック部172の形状が、
図4(b)および
図5に示すマット用留め具10の操作部材28のロック部72と異なる。
【0049】
図4(b)および
図5に示すロック部72は、柱体に形成され、突軸36の小径部36bに対して柱体の直線的な側面が当接する。一方、
図8に示すロック部172は、円弧状に湾曲するように形成され、小径部36bを囲むように小径部36bに当接する。ロック部72の小径部36bに当接する側面は、小径部36bの外周面に応じて湾曲する。
【0050】
これにより、ロック部172が張出部42の下方に入り込む面積、および張出部42と軸方向に重複する面積が増し、ロック状態での耐荷重性を高めることができる。また、ロック部172が小径部36bを囲むように当接することで、ロック部172と小径部36bの密着性が増し、ロック状態での第1固定部材20と第2固定部材22のガタツキを抑えることができる。
【0051】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0052】
マット用留め具10の表面は上方に位置するものの、
図1(a)に示すz軸は鉛直方向に対して傾斜してもよい。車体パネルが水平方向に対して傾斜していれば、車体パネルに貼られるカーペット14は車体パネルに応じて傾斜する。傾斜したカーペット14に載置されるマット12も傾斜し、マット用留め具10も傾斜面に取り付けられる。
【0053】
実施形態では、操作部材28および弾性部材30を表側部材24の収容空間形成部52内に収容する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、
図2に示す収容空間形成部52の下壁部52cを除いて表側部材24を形成し、表側部材24および裏側部材26の間に収容空間を形成し、操作部材28および弾性部材30を収容してもよい。表側部材24および裏側部材26で操作部材28および弾性部材30を挟むように保持する。この変形例によれば、マット用留め具10を軽量化でき、コストを制限できる。
【0054】
実施形態では、マット用留め具10において操作部70を車両前方側に配置し、弾性部材30が車両前方に付勢する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、マット用留め具10において操作部70を車両後方側に配置してもよい。これにより、操作部70が運転者の足元の後方に配置されるため、運転者の足が操作部70に当りにくくなる。
【0055】
実施形態では、突軸36に大径部36aと小径部36bと張出部42とを形成する態様を示したがこの態様に限られない。例えば、突軸36は棒状に形成され、軸方向途中に径方向外向きに張り出すフランジが形成され、そのフランジの下面が張出部42となる態様であってよい。また、突軸36は円柱状に形成する態様を示したが、この態様に限られず、角柱状であってもよい。突軸36を角柱状に形成して、第2固定部材22の挿通孔を突軸36に応じた多角形状にすることで、第1固定部材20に対する第2固定部材22の相対回転を制限できる。
【0056】
実施形態では、第2固定部材22に貫通した挿通孔を形成する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、裏側部材26の挿通孔66および表側部材24の下壁部52cの挿通孔50は形成されるものの、上壁部52aの挿通孔50は形成されず、開口部54以外は上壁部52aが平板状に形成されてよい。この変形例によれば、マット用留め具10の表面に孔が少なく、ゴミなどが入り込むことを抑えることができる。