(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321480
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】オフセット型フローティングナット
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
F16B37/04 J
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-146213(P2014-146213)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-23658(P2016-23658A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002052
【氏名又は名称】日本ドライブイット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】石井 一義
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−171914(JP,U)
【文献】
特開2010−014189(JP,A)
【文献】
特開2002−242918(JP,A)
【文献】
実開昭50−152053(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
F16B 5/04−5/12
F16C 11/00−11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プレート(1)と、その固定プレート(1)にフローティング機構(2)を介して接続されたナットプレート(3)と、
そのナットプレート(3)に、前記フローティング機構(2)および固定プレート(1)からオフセットした位置に設けられた一以上のナット(11)と、を具備し、
前記フローティング機構(2)は、前記ナットプレート(3)に固定された保持ピン(4)と保持バネ(5)とが協働して、固定プレート(1)とナットプレート(3)とが平面方向に移動自在となるようにしたオフセット型フローティングナット。
【請求項2】
請求項1に記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
固定プレート(1)が、その両端にフランジ部(6)を有する偏平な台形に曲折され、
ナットプレート(3)が平面T字状に形成されて、そのTの脚部(3a)が固定プレート(1)の台形部(1a)内に収納されたオフセット型フローティングナット。
【請求項3】
請求項1に記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
固定プレート(1)が、その両端にフランジ部(6)を有する偏平な台形に曲折され、
ナットプレート(3)が、平面H字状に形成され、そのHの横棒部分(3b)のみが固定プレート(1)の台形部(1a)内に収納されたオフセット型フローティングナット。
【請求項4】
請求項1に記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
固定プレート(1)が、その両端にフランジ部(6)を有する偏平な台形に曲折され、
ナットプレート(3)が平面方形に形成されて、その一部が固定プレート(1)の台形部(1a)内に収納されたオフセット型フローティングナット。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
前記ナットプレート(3)は、ナットプレート(3)の穿設孔の孔縁(3c)に固定したケース(7)と、そのケース(7)内に収納されて、平面方向に僅かに移動自在で、軸線回りには回り止め手段(8)を有する可動型のナット(11)とを有するオフセット型フローティングナット。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれかに記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
固定プレート(1)の両フランジ部(6)が、第1部材(9)に固定され、その第1部材(9)から独立した第2部材(10)がナットプレート(3)のナット(11)にボルト(12)を介して固定されるオフセット型フローティングナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ケーシングの内部等に取付けて、そこにボルト等を介して各種部品を固定する際、そのナットが水平方向へ移動できるようにしたフローティングナットに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、既に特許文献1に記載のフローティングナットを提案している。
このフローティングナットは、中央にネジ孔を有するナット板と、それを支持する支持板とを有し、その支持板の長手方向両端を折り返してナット板を抱持するものである。そしてナット板は、平面に沿って移動可能としたものである。さらには、他に多くのフローティングナットが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−1802号公報
【特許文献2】特開2013−113391号公報
【特許文献3】特開2011−140978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記何れの特許文献のフローティングナットも、台形状に曲折した固定プレートの中央に孔を設け、そこにフローティング機構を介してナット板を取付けたものである。そしてそのナット板のナット位置は、固定プレートの孔内に配置され、そのナット位置を孔内で僅かに移動できるようにしたものである。そのため、取付けられる部材の汎用性が低く、フローティング機構から離れた位置の部材を固定ができなかった。
即ち、フローティング機構からオフセットした位置で部材を取付けることができなかった。
そこで本発明は、フローティング機構から離れたオフセット位置においても、取付部材を固定することができるオフセット型フローティングナットを提供することを第1の課題とする。
【0005】
第2の課題として従来、離間した2部材を裏側に回り込めないような一方向から締結するには、第1部材に当て板やガゼットプレートを固着し、続いて第2部材を当て板を介して当て板に設けられたナットやねじ部にボルトをねじ込んで取付けるのが一般的である。この場合、第2部材の取付け孔を大きくすることによりボルトの挿通許容範囲を大きくし、ナットやねじとの螺合を容易にしている。
このように第2部材の取付け孔を大きくすることは第2部材の強度低下となる。特に複数本のボルトで取り付けるときには顕著となる。また、第2部材の取付け孔が大きいことでせん断方向の力が作用した時にズレやくす、またズレ幅が大きくなる。
そこで本発明は、第2の課題を解決するオフセット型フローティングナットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、固定プレート(1)と、その固定プレート(1)にフローティング機構(2)を介して接続されたナットプレート(3)と、
そのナットプレート(3)に、前記フローティング機構(2)および固定プレート(1)からオフセットした位置に設けられた一以上のナット(11)と、を具備し、
前記フローティング機構(2)は、前記ナットプレート(3)に固定された保持ピン(4)と保持バネ(5)とが協働して、固定プレート(1)とナットプレート(3)とが平面方向に移動自在となるようにしたオフセット型フローティングナットである。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
固定プレート(1)が、その両端にフランジ部(6)を有する偏平な台形に曲折され、
ナットプレート(3)が平面T字状に形成されて、そのTの脚部(3a)が固定プレート(1)の台形部(1a)内に収納されたオフセット型フローティングナットである。
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
固定プレート(1)が、その両端にフランジ部(6)を有する偏平な台形に曲折され、
ナットプレート(3)が、平面H字状に形成され、そのHの横棒部分(3b)のみが固定プレート(1)の台形部(1a)内に収納されたオフセット型フローティングナットである。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項1に記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
固定プレート(1)が、その両端にフランジ部(6)を有する偏平な台形に曲折され、
ナットプレート(3)が平面方形に形成されて、その一部が固定プレート(1)の台形部(1a)内に収納されたオフセット型フローティングナットである。
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
前記ナットプレート(3)は、ナットプレート(3)の穿設孔の孔縁(3c)に固定したケース(7)と、そのケース(7)内に収納されて、平面方向に僅かに移動自在で、軸線回りには回り止め手段(8)を有する可動型のナット(11)とを有するオフセット型フローティングナットである。
【0009】
請求項6に記載の本発明は、請求項2〜請求項5のいずれかに記載のオフセット型フローティングナットにおいて、
固定プレート(1)の両フランジ部(6)が、第1部材(9)に固定され、その第1部材(9)から独立した第2部材(10)がナットプレート(3)のナット(11)にボルト(12)を介して固定されるオフセット型フローティングナットである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオフセット型フローティングナットは、フローティング機構2および固定プレート1からオフセットした位置で、そのナットプレート3にナット11が設けられたものである。しかも、そのナットプレート3はフローティング機構を介して、固定プレートに対して相対的に移動できるように構成したから、固定プレート1を第1部材9に固定して、第2部材10とナットプレート3のナット11とを任意の位置で容易に固定できる。即ち、第1部材9に対して、一定の関係を有して、第2部材を容易にナットプレート3に固定できる。しかも、ナットプレート3のナット11の取付け個数や配置を第2部材との固定強度や意匠等により適宜設計できる。
また、このようにナットプレートをフローティングできることで第2部材を取付けるためのボルト挿通孔を小さくしてボルトとの整合を図ることができ、第2部材に大きな孔をあける必要が無いので、第2部材の強度低下が起きない。また、せん断力が作用した時のズレが小さくなる。
【0011】
請求項2に記載の発明のように、固定プレート1が、その両端にフランジ部6を有する偏平な台形に曲折され、ナットプレート3が平面T字状に形成されて、その脚部3aが固定プレート1の台形部1a内に収納された場合には、コンパクトで取付け易いオフセット型フローティングナットとなる。
請求項3に記載の発明のように、ナットプレート3が、平面H字状に形成され、そのHの横棒部分3bのみが固定プレート1の台形部1a内に収納された場合には、第1部材9を第2部材10の任意の位置で、強固に固定できる。
【0012】
請求項4に記載の発明のように、ナットプレート3が平面方形に形成されて、その一部が固定プレート1の台形部3a内に収納された場合には、構造が簡単で、扱い易いオフセット型フローティングナットとなる。
請求項5に記載の発明のように、ナットプレート3に固定したケース7に可動型のナット11を設けた場合には、第2部材10の取付けの自由度がさらに増し、取り扱い易い、オフセット型フローティングナットとなる。
【0013】
請求項6に記載の発明のように、固定プレート1のフランジ部6が、第1部材9に固定され、その第1部材9から独立した第2部材10がナットプレート3のナット11にボルト12)を介して固定された場合には、コンパクトで取付け易いオフセット型フローティングナットとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例のオフセット型フローティングナットの平面図。
【
図5】同フローティングナットの取付け状態の一例を示す断面図。
【
図7】本発明の第2実施例のオフセット型フローティングナットの底面図。
【
図11】本発明のフローティングナットに用いられるナット11の他の例を示す縦断面図及びB−B矢視断面図。
【
図12】本発明のオフセット型フローティングナットのさらに他の実施例の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
【実施例1】
【0016】
図1〜
図6は本発明の第1実施例のオフセット型フローティングナット14を示すものである。
このオフセット型フローティングナット14は、
図1〜
図3に示す如く、固定プレート1と、その固定プレート1にフローティング機構2を介して接続されたナットプレート3とを有する。
固定プレート1は、金属板を偏平な台形状に曲折してその両端にフランジ部6を形成し、各フランジ部6にビス孔13を穿設している。このビス孔13は第1部材9にリベット等で取付けるための孔であり、スポット溶接等で第1部材9に取付ける場合は不要となる。
【0017】
次に、ナットプレート3は、平面T字状に形成されて、そのTの脚部3aが固定プレート1の台形部1a内に収納されている。固定プレート1の頂部には孔1bが穿設され、その孔縁にフローティング機構2が配置される。
このフローティング機構2は、ナットプレート3に固定された保持ピン4と、その保持ピン4に止着された保持バネ5とからなる。この保持ピン4に保持バネ5を取付けるには、
図4に示す如く、保持ピン4をナットプレート3に固定した状態で、それらを固定プレート1の孔1bに挿入し、保持バネ5を保持ピン4の外周に圧入し、その上縁の鍔部に保持バネ5の爪を係止すればよい。または、ナットプレート3をプレス機の台座に載せて、その上に固定プレート1、保持バネ5を重ねてセットし、その上から保持ピンをプレスしてナットプレート3に固定することもできる。これらの取付け法の選択は、保持バネのバネ強度、フローティングさせるための移動する力又は保持力等による。
【0018】
なお、保持ピン4にはこの例では内ネジが形成されている。そしてこのフローティング機構2により、
図1に示す如く、ナットプレート3は固定プレート1に対して水平方向に移動自在である。
即ち、
図1においてナットプレート3は固定プレート1に対し矢印方向の平面内を移動できると共に、それに直行する平面内にも移動できる。
さらにナットプレート3は、フローティング機構2及び固定プレート1からオフセットした位置に、この例では3つのナット11が固定されている。
【0019】
このようにしてなるオフセット型フローティングナット14は、一例として、
図5,
図6に示す如く使用される。
先ず、第1部材9に固定プレート1のフランジ部6をスポット溶接又は、リベットやビスにより固定する。次いで、第2部材10のボルト孔と、ナットプレート3のナット11のボルト孔とを整合させる。このときフローティング機構2の作用により、ナットプレート3は適宜位置に水平移動することができる。そしてボルト12を介し、第2部材10とナットプレート3のナット11とを螺着締結すればよい。
なお、この例では3本のナット11に夫々ボルト12を固定することができる。
【実施例2】
【0020】
次に、
図7〜
図10は本発明の第2実施例であり、この例が前記第1実施例と異なる点は、ナットプレート3の平面形状である。
このナットプレート3は、平面H型に形成され、そのHの横棒部分3bが固定プレート1の台形部1aに収納される。そして、ナットプレート3の四隅に夫々ナット11が固定されるものである。
この実施例は、一例として
図9,
図10の如く使用される。この例では、固定プレート1のフランジ部6が第1部材9にスポット溶接又はリベットやビスにより固定される。次いで、第2部材10のボルト孔と、ナットプレート3のナット11のボルト孔とが整合され、そこにボルト12が固定される。このときフローティング機構2の作用により、各ボルト孔とナット11とを整合することができる。次いで、第1部材9のボルト孔と
図10において左側のナットプレート3のナット11のボルト孔とが整合される。このとき第2部材10を移動させて、第1部材9のボルト孔とナット11のボルト孔とを整合させて、ボルト12で固定する。
【0021】
次に、
図11はナットプレート3に取付けられるナット11が、ケース7内で軸の半径方向に僅かに移動できると共に、軸の回りに回り止めされる回り止め手段8を設けたものである。そのために、この例ではナット11のスカート部11aの外周が四角形に形成されると共に、ケース7のスカート部11aの受入孔7aも四角形とされる。スカート部11aと受入孔7aの間には僅かな隙間を設けてあり、ナット11は半径方向の何れにも移動できる。
なお、このナット11内にボルトが進入したとき、回り止め手段8によって、軸のまわりに回り止めされる。即ち、このナット11は半径方向には移動するが、軸の周りには僅かの移動を許して固定される。このナット11をナットプレート3に用いると、
図5,
図9において、第2部材10のボルト孔とナット11のボルト孔とをさらに容易に整合させることができる。
【実施例3】
【0022】
次に、
図12,
図13は本発明のさらに他の実施例であり、この例が
図1の例と異なる点は、ナットプレート3の平面形状である。
このナットプレート3は細長い方形に形成され、その一端側が保持バネ5を介して固定プレート1の台形部1aに収納され、他端に一つのナット11が設けられたものである。
なお、このナット11を複数設けることもできる。その取付けは、
図5に準じて行うことができる。
【0023】
(変形例)
上記各実施例の各使用方法は一例を示すものであって、他の使用方法にも利用できる。
図9及び
図10では、固定プレート1を第1部材9に固定したが、第1部材9,第2部材10以外の第3の部材に固定プレート1を固定し、その第3の部材を第1部材9及び第2部材10に固定することもできる。
【符号の説明】
【0024】
1 固定プレート
1a 台形部
1b 孔
2 フローティング機構
3 ナットプレート
3a 脚部
3b 横棒部分
3c 孔縁
4 保持ピン
5 保持バネ
【0025】
6 フランジ部
7 ケース
7a 受入口
8 回り止め手段
9 第1部材
10 第2部材
11 ナット
11a スカート部
12 ボルト
13 ビス孔
14 オフセット型フローティングナット