【実施例1】
【0022】
まず、本発明が適用される冷蔵庫の構成を
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1は冷蔵庫の正面外観図であり、
図2は
図1の縦断面を示す断面図である。尚、
図2においては製氷室の断面は示されていない。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面図である。
図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、上方から冷蔵室2、左右に併設された製氷室3と上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の順番で構成されている。以降、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5をまとめて冷凍室7と以下では呼ぶ。冷蔵室2は左右に分割された回転式の冷蔵室ドア2a、2bを備え、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室ドア3a、上段冷凍室ドア4a、下段冷凍室ドア5a、野菜室ドア6aを備えている。以下では、冷蔵室ドア2a、2b、製氷室ドア3a、上段冷凍室ドア4a、下段冷凍室ドア5a、野菜室ドア6aを、単にドア2a、2b、3a、4a、5a、6aと以下では呼ぶ。ドア2aには庫内の温度設定の操作を行う操作部26を設けている。冷蔵庫1とドア2a、2bを固定するためにドアヒンジが冷蔵室2上部及び下部に設けてあり、上部のドアヒンジはドアヒンジカバー16で覆われている。また、庫外温度センサ37、及び庫外湿度センサ38(
図2参照)は、冷蔵庫1の温度の影響を受け難い位置として、例えば、冷蔵庫1のドアヒンジカバー16の内部に設けている。
【0024】
図2は
図1に示した本発明の実施例1に係る冷蔵庫のA−A断面図である。冷蔵庫1の庫外と庫内は、外箱10aと内箱10bとの間に発泡断熱材を充填して形成される、断熱箱体10によって隔てられている。断熱箱体10には発泡断熱材に加えて複数の真空断熱材25を、外箱10aと内箱10bとの間に実装している。各貯蔵室は上断熱仕切壁28によって、冷蔵室2と上段冷凍室4、及び製氷室3が隔てられ、また、同様に下断熱仕切壁29によって下段冷凍室5と野菜室6が隔てられている。ドア2a、2bの庫内側には複数のドアポケット33a、33b、33cと、冷蔵室2には複数の棚34a、34b、34c、34d(総称して棚34)が上下方向に設けてあり、複数の貯蔵スペースに区画されている。
【0025】
上断熱仕切壁28の上方には、貯蔵室35を設けている。一般に、貯蔵室35は冷蔵室2の温度帯よりも低めに設定されたチルドルームを設けていることが多い。貯蔵室35内の温度調整は、例えば、貯蔵室35の後方部の冷蔵室冷気ダクト11の途中に設けた専用の風量調整装置(図示なし)によって行なわれるが、貯蔵室35が冷え過ぎた場合は、貯蔵室35の下部に設けた温度調整用の加熱手段(一例としてヒータ19)によって加熱する場合もある。
【0026】
上段冷凍室4及び製氷室3と下段冷凍室5との間には、断熱仕切壁40を設けている。ドア開口部に接する上断熱仕切り壁28、下断熱仕切り壁29、断熱仕切壁40には、それぞれ仕切りカバー36a、36b、36cを設けてある。上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6には、それぞれの前方に備えたドア4a、5a、6aと一体に移動する収納容器4b、5b、6bがそれぞれ設けられており、ドア4a、5a、6aを手前側に引き出すことにより、収納容器4b、5b、6bも引き出せるようになっている。製氷室3にもドア3aと一体に移動する収納容器が設けられ、ドア3aを手前側に引き出すことにより、収納容器3bも引き出せる。ドア6aの下部にはカバー15を備えている。
【0027】
冷却器14は下段冷凍室5の略背部に備えた冷却器収納室8内に設けてあり、冷却器14の上方に設けた送風機9により、冷却器14と熱交換した冷気が冷蔵室冷気ダクト11、上段冷凍室冷気ダクト12、下段冷凍室送風ダクト13、及び製氷室送風ダクト(図示なし)を介して、冷蔵室2、上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3の各貯蔵室へ吐出口11a、11b、11c、及び12a、13a、13bからそれぞれ送られる。各貯蔵室への冷気の送風は、冷蔵室ダンパ20と冷凍室ダンパ21の開閉により制御される。冷蔵室ダンパ20、冷凍室ダンパ21にはそれぞれバッフル20a、21aを備えており、バッフル20a、21aはモータ駆動(図示なし)によって開閉角度が調整され、送風量を調整している。
【0028】
冷却器14の下部には第1のヒータ、例えばラジアントヒータ22を設けている。除霜時に発生したドレン水(融解水)は樋23に一旦落下し、ドレン孔27を介して圧縮機24の上部に設けた蒸発皿32に排出される。冷蔵庫1の背面下部に設けた機械室39内には、圧縮機24の他に放熱器と放熱用の機械室ファン(図示なし)が配置されている。また、冷却器14に接触させるように、第2のヒータ、例えばパイプヒータ43を設けている(詳細は
図3参照)。冷蔵庫1の上壁上部後方には演算装置(CPU)、メモリー、インターフェース回路を搭載した制御手段である制御基板31が配置されており、制御基板31の動作に従って冷凍サイクル、及び送風系の制御が実施される。制御基板31は基板カバー30で覆われている。
【0029】
冷蔵室2を冷却する冷蔵室冷却運転の場合には、冷蔵室ダンパ20を開、冷凍室ダンパ21を閉にし、冷蔵室冷気ダクト11に設けた吐出口11a、11b、11cから冷蔵室2に冷気が送られる。冷蔵室2を冷却した後の冷気は、冷蔵室2下部に設けた冷気戻り口(図示なし)に流入し、その後、冷却器14に戻される。
【0030】
野菜室6の冷却手段については種々の方法があるが、例えば、冷蔵室2を冷却した後に野菜室6に冷気を送る方法や、野菜室専用の風量調整装置(図示なし)を用いて、冷却器14で熱交換して発生した冷気を直接野菜室6に送る方法がある。本実施例においては、野菜室6への冷気の供給方法についてはいずれの場合でも良い。
図2の記載例では、野菜室6に流入した冷気は、断熱仕切壁29の下部前方に設けた野菜室側の冷気戻り部18aから野菜室冷気戻りダクト18を介して、野菜室冷気戻り部18bから冷却器14下部に流入する。
【0031】
冷凍室7(製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5)を冷却する冷凍室冷却運転の場合には、冷蔵室ダンパ20を閉、冷凍室ダンパ60を開にし、上段冷凍室冷気ダクト12、及び下段冷凍室冷気ダクト13のそれぞれに設けた複数の吐出口12a、13a、13bから冷気が吐出されて、上段冷凍室4、下段冷凍室5、及び製氷室3を冷却した後、冷却室冷気戻り部17から冷却器14に戻される。冷蔵室2、及び冷凍室7の温度は、庫内に設けた冷蔵室温度センサ41、冷凍室温度センサ42で検知され、庫内の温度に応じて冷蔵室2と冷凍室7を同時に冷却する運転もあり、その場合には冷蔵室ダンパ20と冷凍室ダンパ21をいずれも開にして各貯蔵室に冷気を送風する。
【0032】
図3は本発明の実施例1に係る冷却器14の周辺部を、冷蔵庫正面から見た図である。冷却器入口パイプ47と冷却器出口パイプ48に接続する冷媒パイプ50は、上下方向に折り返して7段のフィンチューブ式熱交換器(冷却器14)を構成している。冷却器14の上部に設けた冷却器入口パイプ47には、冷却器温度センサ49が設置されており、冷却器温度センサ49で検出される温度によって除霜運転に関する判定を行っている。冷却器14の下部に設けたラジアントヒータ22は、ヒータ線を内部に挿入したガラス管44と、その外周部に設けた金属製の放熱フィン46、及びガラス管44と金属フィン46の上部を覆うように設けた金属製の融解水滴下防止部45から構成されている。可燃性冷媒を使用した冷蔵庫1で採用される除霜ヒータの一例として、ラジアントヒータ22を示したが、庫内で可燃性冷媒が漏れた場合を想定して、ガラス管44の表面温度を可燃性冷媒の発火温度(イソブタンの場合494℃)よりも100℃程度低くする工夫がなされている。融解水滴下防止部45をガラス管44の上部に設けることによって、除霜時に生じた融解水がガラス管44の表面に直接滴下して、急激な温度変化によるガラス管44の破損を防止している。庫内循環空気の通風抵抗を考慮すると、融解水滴下防止部45は放熱フィン46の直径と同程度が好ましい。ラジアントヒータ22は、一般的に100W〜200W程度の電気ヒータである。ラジアントヒータ22は主に周囲の空気を暖め、暖められた空気によって霜を融解する機能を備えている。この他に輻射によって周囲を加熱する機能も併せ備えている。
【0033】
冷却器14の各段のフィン64の間に接触させるようにして、パイプヒータ43を設けている。パイプヒータ43の配置場所の一例として、冷却器14の最上段(1段目)と2段目の間、3段目と4段目の間、4段目と5段目の間、5段目と6段目の間、6段目と最下段(7段目)の間にパイプヒータ43を配置しており、冷却器14の背面側にも前面側と同じ位置にパイプヒータ43を延長して設けている。パイプヒータ43は金属製のパイプ内にヒータ線を挿入してあり、ヒータ線に通電することによって発熱させて、冷却器14のフィン64を直接加熱して霜の内側から霜を融解する機能を備えている。尚、パイプヒータ43の設置場所として一例を示したが、必ずしもこれに限るものではなく、冷却器14に成長する霜の分布に応じて配置するのが良い。本実施例では、冷却器14の下部に設けたラジアントヒータ22と冷却器14に直接接触するように配置したパイプヒータ43が、除霜時の電気ヒータによる加熱源となる。パイプヒータ43は、一般的に100W程度の電気ヒータである。
【0034】
冷却器14の側方には冷蔵室冷気戻りダクト51を設けてあり、冷蔵室2を冷却した後の冷蔵室戻り冷気52は、冷蔵室冷気戻りダクト51と樋23の接続部で冷却器14側に向きが変わり、樋23、ラジアントヒータ22を通過し、冷却器14の最下段(7段目)から最上段(1段目)に向かって、冷蔵室冷気戻りダクト51を流れる冷気の向きと反対方向に流れる。
【0035】
図4は
図3に示す冷却器14のA−A断面図である。
図4の(a)は冷却器14に霜がない場合、
図4の(b)は冷却器14に霜が成長した場合を示している。冷却器14は、断熱箱体10の内側壁面と、冷却器カバー63の間に形成される冷却器収納室8に設置されている。冷却器カバー63の前面側には冷凍室背面部材62を設けてあり、冷却器カバー63と冷凍室背面部材62との間には、下段冷凍室冷気ダクト13を形成している。冷却器14の前面側にはバイパス前風路53、冷却器7の背面側にはバイパス後風路54が設けられており、これらは冷却器14の下段部に多量の霜が成長した場合でも、冷却性能が所定の時間、維持できるように設けたバイパス風路である。
【0036】
図4の(a)にバイパス風路の形状の一例を示している。バイパス前風路53は冷却器14の上から3段目の高さまで、冷却器カバー63と冷却器14の前側に隙間(2〜3mm程度)を設けており、バイパス後風路54は上から4段目の高さまで、断熱箱体10の内側壁面と冷却器14の後側に隙間(2〜3mm程度)を設けている。バイパス風路の幅は、いずれも冷却器14の幅とほぼ同じである。バイパス前風路53、バイパス後風路54の形状は、冷却器14の形状や冷却器14を通過する際の冷気の流れに応じて決定される。
図4の(b)に示すように、冷却器14の下部のフィン間に霜68が成長してくると、通風抵抗が大きくなるので、冷却器14に流入する冷気の一部はバイパス前風路53とバイパス後風路54に分配されて流れる。バイパス前風路53とバイパス後風路54を通過した冷気は、バイパス前風路53とバイパス後風路54を設けていない部分から再び冷却器14内に流入する。バイパス前風路53とバイパス後風路54に、冷蔵室2や冷凍室7の戻り冷気が流入してくるので、バイパス風路側のフィン端部に霜が成長し易くなる。従って、冷却時間の経過と共に冷却器14の下部と、バイパス前風路53とバイパス後風路54側のフィン端部に霜が多く見られるようになる。
【0037】
冷却器14の各段の間に設けたパイプヒータ43を、霜が多く成長するバイパス前風路53とバイパス後風路54に重点的に設けている。ラジアントヒータ22によって、冷却器14の下部やその周囲部の加熱を行うので、冷却器14の最下段フィンの下側にはパイプヒータ43を配置していない。また、バイパス前風路53とバイパス後風路54を設けていない冷却器14の下流側では、着霜量が少ないので冷却器14の最上段フィンの上部と、2段目と3段目の間にはパイプヒータ43を配置していない。除霜運転時の冷却器14の霜の解け方については、
図6、7、8A、8Bを用いて説明する。
【0038】
尚、冷却器カバー63と冷凍室背面部材62との間の下方が開口した、空気断熱部83を設けてある。冷却器14を加熱した際に、冷却器カバー63と冷凍室背面部材62を介して移動する熱が、冷凍室5に流入し難くしたものである。
【0039】
図5は本発明の実施例1に係る除霜運転モード時の各除霜運転を説明するタイムチャートである。冷蔵室温度センサ41と冷却器温度センサ49の時間的な温度変化を表すグラフに対応して、送風機9、ラジアントヒータ22、パイプヒータ43、冷蔵室ダンパ20、冷凍室ダンパ21、圧縮機24の制御の状況をそれぞれ示している。
【0040】
1つの冷却器14で冷蔵庫1の全ての貯蔵室を冷却する冷蔵庫では、除霜中の冷凍室7の温度上昇をできるだけ抑えるために、除霜運転直前に冷凍室冷却運転を実施する場合が多い。従って、除霜開始時(t=t0)の冷却器温度センサ49で検出される温度は−30℃程度で、非常に低い温度からのスタートとなる。この場合、冷凍室7に冷気を送るため送風機9は事前にONにされている。
【0041】
まず、除霜運転開始から実施する送風機による除霜運転について説明する。送風機による除霜運転とは、除霜開始時に送風機9だけをONにして、冷蔵室ダンパ20を「開状態」、冷凍室ダンパ21を「閉状態」、圧縮機24をOFFにして冷蔵室2の空気を循環させ、冷却器14及び冷却器14に成長した霜を循環する空気によって加熱して温度上昇させる除霜運転である。すなわち、ラジアントヒータ22、パイプヒータ43を使用せず、送風機9を単独で使用して空気の熱による除霜運転を意味するものである。
【0042】
図5に示した例では、t=t2まで送風機による除霜運転を実施し、t=t2以降からは送風機9の運転に加えて、ラジアントヒータ22をONにしている。尚、場合によっては、t=t2以降からは送風機9の運転を停止しても良いものである。従って、少なくとも送風機による除霜運転では送風機9の駆動は必要であるが、t=t2以降からは必要によって駆動しても良いし、停止しても良いものである。本実施例では冷却器14に空気を流すことによって霜の冷熱を取り去り、霜の冷熱によって冷蔵室2の冷却を行うためにも送風機9を駆動しているが、これ以外に、霜の表面の冷熱を取り去ることで加熱効率を上げて除霜時間を短縮する作用も果たしている。
【0043】
また、送風機9を運転してラジアントヒータ22及びパイプヒータ43を停止するt0からt1までを省略して、t=t2以降から除霜運転を開始する構成であってもよい。
【0044】
本実施例ではt=t0〜t2まで送風機9による除霜運転を実施しているが、ラジアントヒータ22をONにするタイミングは次のように決める。冷蔵室2の空気による加熱量が同じであれば、霜が多い時は冷却器14の温度上昇が緩やかになるため、所定の温度T=T1に到達するまでの時間は長くなる。送風機9による除霜運転実施中のt=t1において、冷却器温度センサ49で検出される温度がT=T1に到達しない場合は霜が多いと見做し、t=t1の時点でラジアントヒータ22をONにして除霜時間を短縮する。一方、冷却器温度センサ49で検出される温度がT=T1に到達している場合は、そのまま送風機9による除霜運転をt=t2まで続ける。送風機9による除霜運転の時間は、実験によって望ましい時間が決められている。このように、送風機9による除霜運転中に冷却器14の温度上昇の割合を冷却器温度センサ49で検出される冷却器温度と、制御基板31に備えたタイマーを用いることによってラジアントヒータ22をONにするタイミングを決めることができる。
【0045】
送風機9による除霜区間(t=t0〜t2)では、冷蔵室2の空気を熱源にして冷却器14と霜を加熱しているが、ラジアントヒータ22やパイプヒータ43のような除霜ヒータに比べると加熱量は少なく、冷却器14から融解水が滴下するほど発生しない。しかしながら、約5℃の冷蔵室2の空気が霜層表面を通過する際にその一部を解かし、その際に発生した融解水は、霜層内に浸透して再凍結する現象が見られる。送風機9による除霜運転区間では、大部分の霜の融解は始まっていないので、冷却器温度センサ49で検出される温度は、温度上昇を伴う顕熱変化として現れる。
【0046】
例えば、除霜開始時t=t0では約−30℃であるが、冷蔵室2の空気を熱源にして冷却器14を加熱するので、t=t2(例えば10分)では約−10℃まで上昇する。ここでは冷却器温度センサ49の検出温度を示しているが、除霜ヒータを用いていないので、冷却器14の最上段と最下段の温度差は小さく、ほぼ均一に加熱される。送風機9による除霜運転区間となるt=t0〜t2では、冷蔵室2の空気温度と冷却器14の温度の差に基づく加熱によって冷却器14と冷却器14に付着している霜の温度が上昇するが、一方、冷蔵室2は霜によって冷却されるので、冷蔵室2の温度は除々に低下してくる。尚、ラジアントヒータによる除霜運転までの間は、冷蔵室ダンパ20を「開状態」、冷凍室ダンパ21を「閉状態」に維持している。
【0047】
次にt=t2で、ラジアントヒータ22をONにし、引き続き送風機9をONにして霜の融解を促進させる。ここで、上述したように、送風機9を停止させる制御も可能であるが、本実施例では送風機9を駆動したままとしている。この理由は後述する。このラジアントヒータ22による除霜運転は後述するパイプヒータ43の加熱効率を上げる作用を奏するものである。この理由についても後述する。そして、冷却器温度センサ49の検出温度が例えばT3=−5℃(t=t3)に到達した時点で、パイプヒータ43をONにする。
【0048】
次に、t=t3以降は、ラジアントヒータ22とパイプヒータ43を組み合わせた加熱形態によって、霜の融解を急速に促進させている。すなわち、熱伝導が支配的となるパイプヒータ43による冷却器14の直接加熱と、ラジアントヒータ22による空気を介した間接加熱を、送風機9をONにした強制対流下で実施している。パイプヒータ43によって局所的に冷却器14を加熱しているが、送風機9をONにした状態で加熱しているので、冷却器14に温度分布が付き難く速く熱が伝わる効果がある。
【0049】
仮に、パイプヒータ43を使用せずにラジアントヒータ22の発熱量を大きくすると、ガラス管44の表面温度を可燃性冷媒の発火温度(イソブタンの場合494℃)より高くなってしまい、容易に発熱量を増やすことはできない。また、ラジアントヒータ22による加熱は、空気を介した間接加熱となるので、発熱量を増やすと特に冷却器14の下部、及び冷却器収納室8の加熱し過ぎが問題となる。除霜時の電気ヒータ入力の増加は、消費電力量の増加に直接影響するが、除霜時に電気ヒータによって加えられた熱量は、除霜終了後の再冷却運転時の熱負荷にもなるので、加熱し過ぎは省エネルギー性能の悪化を引き起こす恐れが大きい。
【0050】
また、t=t3以降の冷却器14の温度は、霜が融解する約0℃の区間を経て、その後上昇していく。パイプヒータ43による冷却器14の加熱は、パイプヒータ43を冷却器14のフィンに直接接触させて配置しているので、冷却器14の温度上昇は素早く、加熱し過ぎの恐れがある。従って、冷却器14に付着した霜がほぼ解けたと見なせる、例えばT5=1℃(t=t5)に到達した時点で、パイプヒータ43は先にOFFにする。
【0051】
次にt=t6(例えば、T6=3℃)では霜の融解が終了して、冷却器14の温度が高くなり始めるので、送風機9をOFFにして冷蔵室2への送風を停止する。この時、冷蔵室ダンパ20は「閉状態」に変更され、冷凍室ダンパ21は「開状態」に変更される。このような制御を行うのは、冷蔵室2よりも冷却器14の温度が高くなると、送風機9をONにしても冷蔵室2を冷やすことはできないからである。
【0052】
t=t6〜t7では、T7=約7℃までラジアントヒータ22による加熱が実施される。このラジアントヒータによる除霜運転区間では、樋23に落下した霜の融解や、冷却器14以外、例えば送風機9の周囲の霜の融解が主な目的である。この区間の加熱は、ラジアントヒータ22を利用して行う。冷却器14の霜が解けた後は霜による障害物がなくなるので、自然対流や輻射によって冷却器14の上部やその周辺部の加熱が行い易くなる。ラジアントヒータ22による加熱は、冷却器14の下部が加熱し過ぎになり易いので、除霜終了(t=t8)よりも前のt=t7でラジアントヒータ22をOFFにしている。その後は、冷却器14に加えられた熱の拡散を利用し、除霜終了であるT8=約10℃になるまで(t=t8)放置する。t=t8になると再冷却に備えて冷蔵室ダンパ20は「開状態」に変更され、冷凍室ダンパ21は「閉状態」に変更される。
【0053】
これにより、冷却器14の下部の加熱し過ぎを抑えることができ、除霜終了時の冷却器14の上下方向の温度分布が小さくなり、省エネルギー性能が高まる。また、霜の融解水が十分にドレン孔27から排水され、除霜終了後の冷却において残った融解水が再氷結することによる熱負荷が低減し、エネルギーの無駄が抑えられる。
【0054】
本実施例では、ラジアントヒータ22、パイプヒータ43を用いて冷却器14や冷却器14に付着した霜の加熱を行う前に、ラジアントヒータ22、パイプヒータ43を用いない送風機9による除霜運転区間を設けている。ラジアントヒータ22、パイプヒータ43を使用する前の送風機9による除霜運転で得られる、霜の密度変化による通風抵抗の低減や、霜層内の伝熱性能向上は(
図6参照)、送風機9による除霜運転の後に引き続き行われるラジアントヒータ22やパイプヒータ43を併用する加熱区間に好ましい影響を与え、冷却器14の加熱し過ぎを抑えながら霜の融解を促進させることができる。
【0055】
従って、送風機9による除霜運転に加えて、ラジアントヒータ22による除霜運転及びラジアントヒータ22とパイプヒータ43を併用した除霜運転を順次行うことによって、冷却器14の霜の融解が促進されて除霜運転時間の延長を抑えることができ、その結果、冷凍室7の温度上昇を抑制することが可能となる。もちろん、冷凍室7の温度上昇を抑制することを前提に、送風機9による除霜運転と、ラジアントヒータ22による除霜運転、及びラジアントヒータ22とパイプヒータ43を併用した除霜運転を適切に組み合わせることで省エネルギー性能を向上することができる。
【0056】
次に、各除霜運転での霜の解け方についての作用効果について
図6乃至
図8A、8Bを用いて説明する。
【0057】
図6は送風機9による除霜運転区間における冷却器14下部の霜を拡大した模式図であり、
図6の(a)は送風機9による除霜運転開始時(t=t0)を示し、
図6の(b)は送風機9による除霜運転終了時(t=t2)を示している。同様に
図7は冷却器14の正面図で冷却器最下段の霜を拡大した模式図であり、
図7の(a)は送風機9による除霜運転開始時(t=t0)を示し、
図7の(b)はt=t0〜t2の状態を示し、
図7の(c)は送風機9による除霜運転終了時(t=t2)を示している。
【0058】
図6において、冷却器14の前側(冷凍室7側)にはバイパス前風路53、後側にはバイパス後風路54を設けている。冷却器14の最下段のフィン、すなわち冷蔵室2や冷凍室7から流入する戻り冷気と最初に熱交換する部分が最も熱伝達が良くなる。従って、冷却器14の最下段のフィン間に霜が多く成長するため通風抵抗が大きくなり、冷却器14の下部から流入する冷蔵室2や冷凍室7の冷気の一部が、バイパス前風路53、あるいはバイパス後風路54に流入し、その後、再び冷却器14内に流入する経路が形成される(
図4(b)参照)。
【0059】
冷却運転中のこのような流れによって、除霜開始時の冷却器14の下部のフィンに成長した霜68の様子は
図6の(a)に示す通りである。バイパス前風路53とバイパス後風路54には、フィン端部から霜68が成長するので、バイパス前風路53とバイパス後風路54の風路の一部を霜68が占めるようになる。冷却運転時に成長する霜68は低密度の霜なので、霜層内部に空気層を多く含んだ多孔質体となる。空気層を含んだ霜層によって、フィン間及びバイパス前風路53、バイパス後風路54の一部が閉塞されるので通風抵抗が増加し、また空気層を多く含んだ霜層が熱抵抗になるので、冷却器14を通過する際の空気の冷却効率が悪くなる。
【0060】
このような状況になると、まず初めにt=t0〜t2の間、送風機9による除霜運転を実施する。送風機9による除霜運転とは、送風機9をONにして冷蔵室2の空気を循環させて冷却器14、及び冷却器14に付着した霜68の温度を高める運転である。冷却器14の下部に流入してきた冷蔵室2の冷気は、フィン間やバイパス前風路53、及びバイパス風路54のいずれかに分配されて流れる。冷蔵室2の空気は霜層表面を通過する際にその一部を解かしているが、加熱量が少ないので融解水66が冷却器14から落下するほど発生しない。
図6の(b)に示すように、霜層表面の融解によって生じた融解水66は、霜層内部に浸透して再凍結する。再凍結した領域をL1、融解水66の影響を受けていない霜の領域をL2とすると、L1の霜密度の方が高くなる。また、L1部の霜の密度が高くなるので、除霜運転開始時(t=t0)の霜層全体の高さL0よりも、霜層表面の一部の融解が生じた後の(L1+L2)の方が低くなる。
【0061】
これによって、送風機9による除霜運転区間中に、冷却器14に付着した霜層表面の一部が融解することによって、霜密度が高いL1の領域を得ることができる。このため、霜層全体の高さ(L1+L2)が低くなり、その結果、バイパス前風路53、バイパス後風路54に空気が流れ易くなる。また、空気を含む霜層の一部の領域の霜密度を高くすることができるので、霜層内の伝熱性能を高くすることができる。すなわち、後述するように、パイプヒータ43をONにしてパイプヒータ43の周囲の霜を加熱する際に、霜層内の伝熱促進効果によって霜を効率よく融かすことができる。
【0062】
同様の現象を
図7の(a)、(b)、(c)を用いて説明する。
図7は冷却器14の最下段を冷蔵庫の正面から見た場合である。冷却運転時に冷蔵室2、冷凍室7から流入する空気の影響によって、冷却器14の最下段フィン端部に霜が多く成長する。
図7の(a)の送風機9による除霜運転開始時(t=t0)では、霜層高さL0となってフィン表面に霜が成長しているのでフィン間に形成される風路の幅はD0となる。
【0063】
図7の(b)の送風機9による除霜運転中(t=t0〜t2)では、冷蔵室2の空気を利用した冷却器14、及び霜68の加熱によって、
図6で説明したように、融解水66の影響を受ける領域L1の密度が大きくなるので、霜層全体の高さ(L1+L2)は当初の霜層高さL0よりも低くなる。その結果、フィン間に形成される風路の幅はD1となってD0より広くなる。
【0064】
その後、t=t2まで送風機9による除霜運転を実施するので、融解水66の影響を受けて霜密度が高くなる領域L1が増える。その結果、
図7の(c)の送風機9による除霜運転終了時(t=t2)ではフィン間に形成される風路の幅D2は広がり、この間を通る空気の量を更に増やすことができる。
【0065】
以上のように、送風機9による除霜運転区間(t=t0〜t2)では、霜層内の霜密度を高めることによって、(1)霜層高さ低下に伴う通風抵抗の低減と、(2)霜層内の熱抵抗低減に伴う霜の伝熱性能向上が期待できる。このような効果が得られるので、後に行われるラジアントヒータ22を用いた除霜、及びラジアントヒータ22とパイプヒータ43を用いた除霜を効率よく行うことができ、省エネルギー性能を高めることが可能となる。
【0066】
送風機9による除霜運転区間を長くすると、冷蔵室2の空気を利用した加熱量が増えるので、その分だけラジアントヒータ22及びパイプヒータ43による加熱量が減り、省エネ性能が向上する。加えて、送風機9による除霜運転時に霜層内の霜密度を高めることにより、t=t2以降に実施されるラジアントヒータ22及びパイプヒータ43を使用した場合の除霜効率向上にも好影響を及ぼすことができる。
【0067】
送風機9による除霜運転区間を長くすると、除霜運転モードの省エネルギー性能が高まることを説明したが、本実施例では、特にパイプヒータ43を用いた際に霜の融解を促進させて効率良く霜を融かさないと、除霜運転開始から除霜運転終了までの除霜運転時間が長くなってしまい、冷凍室7の温度上昇が問題になる。このため、パイプヒータ43を用いるまでに霜の伝熱性能を更に高めておく必要がある。
【0068】
また、送風機9による除霜運転の実施時間が長くなると、送風機9による除霜運転開始時に比べて経過時間が長くなるほど冷蔵室2の温度は低くなり、冷却器14に流入してくる冷蔵室2の空気の温度も低くなる。一方で冷却器14の温度は上昇するため、空気と冷却器14の間の温度差が小さくなって、冷蔵室2の空気による冷却器14の加熱効率は低下していくことになる。
【0069】
そこで、上述した背景から、冷却器14の下部に設けたラジアントヒータ22を通電することによって、冷却器14に流入してくる冷蔵室2の空気を加熱し、温度の高い空気を冷却器14に流すことで冷却器14の加熱効率を高くしている。これによって、結果的に霜を多く融かすことで霜の伝熱性能を更に向上し、パイプヒータ43による霜の融解を促進することができる。したがって、除霜運転開始から除霜運転終了までの全体の除霜運転時間を短縮することが可能となる。
【0070】
図8A、
図8Bはラジアントヒータ22及びパイプヒータ43を用いた場合の冷却器14下部の霜の融け方を説明する模式図で、
図8Aは前半部を示し、
図8Bは後半部を示している。
図8Aの(a)はt=t2で送風機9による除霜運転を終了し、送風機9をON、ラジアントヒータ22をONにした直後の状態を示し、
図8Aの(b)はt=t3で送風機9をON、ラジアントヒータ22をON、パイプヒータ43をONにした直後の状態を示している。更に、
図8Bの(c)は霜の融解が進行しているt=t4の状態を示し、
図8Bの(d)はラジアントヒータ22を単独で使用して加熱しているt=t6〜t7の状態を示している。
【0071】
ラジアントヒータ22及びパイプヒータ43を用いて効率良く急速に冷却器14に付着した霜の加熱を行うために、本実施例ではまずラジアントヒータ22の通電を開始し、送風機9を運転しながら冷却器14、及び冷却器14に付着した霜68、69の加熱を行って霜を融かして霜の伝熱性能を向上するようにしている。
【0072】
図8Aの(a)に示したように、送風機9による除霜運転後の冷却器14、及び冷却器14に付着した霜層内には大きな温度分布は見られず、霜層内には霜密度が高くなった領域L1が形成されており、ラジアントヒータ22によって加熱された空気が通過し易いように、バイパス前風路53やバイパス後風路54には、送風機9による除霜運転区間(t=t0〜t2)の時よりも広い流路が形成されている(
図7(c)参照)。
【0073】
ここで、冷却器14の下部に霜が多い場合、送風機9をOFF、ラジアントヒータ22をONにすると、加熱されて温度が高くなった空気は、冷凍室冷気戻り部17から冷凍室7に流入してしまうことが考えられる。冷却器14の最下段のフィン間の霜と、バイパス前風路53、バイパス後風路54の通風抵抗が大きいためである。従って、送風機9がOFFの場合は、通風抵抗低減のためパイプヒータ43を用いた霜の局所的な融解を先に実施する必要があり、省エネルギー性の観点からすると好ましくない。
【0074】
本実施例のように送風機9をONにした状態で、ラジアントヒータ22をONにするとこのような心配はない。更に、送風機9による除霜運転区間(t=t0からt2)を充分確保しているので、送風機9による除霜運転終了時(t=t2)には、上記霜層内の霜密度を高めることによって、霜層高さ低下に伴う通風抵抗の低減の効果が得られており、ラジアントヒータ22によって加熱された温度の高い空気が冷却器14のフィン間を流れやすく、ラジアントヒータ22の熱エネルギーを冷却器14や冷却器14に付着した霜に効率よく伝えることができる。これによって、霜の密度を更に高くすることができるので霜の伝熱性能も高くすることができる。
【0075】
図8Aの(b)に示すように、パイプヒータ43の通電を開始するt=t3時には、ラジアントヒータ22の熱エネルギーによって、霜層内における霜密度が高くなった領域L1の割合が更に増加して霜層内の熱抵抗が低減されており、パイプヒータ43の熱が霜内部から霜層表面付近まで伝わり易くなっている。
【0076】
一方、霜層表面の外側では、ラジアントヒータ22によって加熱された冷蔵室2の空気が通過するので霜が融け易くなっている。従って、霜層内に霜密度が高い領域L1が得られるので霜層内の伝熱性能が良くなり、更に送風機9を運転することによって加熱された空気を霜層の表面付近を通過させることができるので、霜は内側と外側から効率良く急速に加熱されることになる。
【0077】
一連の除霜運転の中で、t=t3以降での高密度の霜69の融解は、最も大きな熱量を必要とする。低密度の霜68と比べ、高密度の霜69の有する水分量は大きく、その融解に要する融解熱が大きくなるためである。冷却器14のフィン64に直接接触させて配置したパイプヒータ43からの熱は、フィン64や霜68、69に対して主に熱伝導によって伝えることができるので、特に伝熱性能の高い高密度の霜69の融解に際してパイプヒータ43に通電することで、高い加熱効率で除霜を行うことができ、省エネルギー性能を向上できる。
【0078】
本実施例では、送風機9による除霜運転の後にラジアントヒータ22による除霜運転を行うことによって、より多くの霜を融かして霜の伝熱性能を向上することで、パイプヒータ43による除霜運転の実施環境を整えている。即ち、本実施例ではパイプヒータ43に通電する除霜運転区間を、パイプヒータ43による除霜効率が十分に高い除霜区間に限定することで、省エネルギー性能の高い除霜運転を実現している。また、一連の除霜運転の中で効率的に各除霜運転を行うことで除霜時間を短くすることができ、冷凍室の温度上昇を可及的に抑制することが可能となるものである。
【0079】
次に、
図8の(c)に示すように、霜の融解が進行しているt=t4では、融解水66が多くなるので、融解水を霜層内に保持することができなくなり、冷却器14から落下している。ラジアントヒータ22の加熱作用により、冷却器14の最下段から霜は解けてなくなり、最下段フィンの表面に霜の融解が完了した領域67が現れる。送風機9をONにしているので、フィン表面の領域67は冷却器14の下流側へと拡大していく。バイパス前風路53、バイパス後風路54を設置している冷却器14の上流側の着霜量は、バイパス風路を設けていない冷却器14の上流側に比べて多くなるが、送風機9による除霜運転区間で霜密度を高めた領域L1を形成することができるので、バイパス前風路53やバイパス後風路54に成長した霜を効率良く解かすことができる。更に、送風機9をONにしているので、局所的に冷却器14の温度が高くなり難い加熱手段となる。
【0080】
図8の(d)は送風機9をOFFにした後に、ラジアントヒータ22を引き続きONにした場合(t=t6〜t7)である。パイプヒータ43による冷却器14の直接加熱は、T5=1℃に到達した(t=t5)時点でOFFにしている。t=t6〜t7では、冷却器温度センサ49で検出される温度は5℃程度と高いので、冷却器14のフィン表面の霜は、ほぼ解けているが、フィン表面に一部解け残った霜、樋23に落下した霜、及び送風機9周辺部の霜の融解を目的に、ラジアントヒータ22のみの加熱を行う。ラジアントヒータ22によって加熱された加熱空気70は、霜がほとんどない状態ではバイパス前風路、53、バイパス後風路54、及び冷却器14の各段のフィン間を通過し易くなっているので、冷却器入口パイプ47に設けた冷却器温度センサ49周辺部を加熱し易い。送風機9をOFFにした加熱であるので、冷却器14の最下段付近の温度が、冷却器14の最上段付近の温度よりも高くなり易い。冷却器14の最下段の加熱し過ぎを避けるために、t=t7でラジアントヒータ22をOFFにしている。除霜終了はT=T8(約10℃)に到達した時点で終了となるが、t=t7〜t8はラジアントヒータ22をOFFにして、冷却器14の最下段付近の熱が最上段に向かって拡散し、T=T8に到達するt=t8まで放置させておく。t=t6以降はラジアントヒータ22による加熱空気70の自然対流による加熱となるため、この対流を促進させるために冷凍室ダンパ21は開にした方が良い。
【0081】
以上述べた通り、本実施例によれば、冷却器の下部に配設したラジアントヒータと冷却器に近接して配設したパイプヒータを設け、除霜運転に際して、圧縮機を停止させて冷凍室ダンパが「閉状態」、冷蔵室ダンパが「開状態」で、送風機を駆動して送風機による除霜運転を行い、その後にラジアントヒータに通電してラジアントヒータによる除霜運転を行い、更にその後にパイプヒータに通電してラジアントヒータとパイプヒータによる除霜運転を行うようにしている。
【0082】
これによって、送風機による除霜運転では、冷却器に付着した霜層表面の一部が融解することによって、霜密度が高い領域を得ることができる。このため、霜層全体の高さが低くなり、その結果、バイパス前風路、バイパス後風路に空気が流れ易くなり熱交換の環境が改善される。また、空気を含む霜層の一部の領域の霜密度を高くすることができるので、霜層内の伝熱性能を高くすることができる。
【0083】
また、冷却器の下部に設けたラジアントヒータを通電することによって、冷却器に流入してくる冷蔵室の空気を加熱し、温度の高い空気を冷却器に流すことで、冷却器や霜との熱交換の効率を高くして霜をより融解して霜層の密度を更に高くすることができる。これによって霜の伝熱性能を向上することができる。
【0084】
更に、ラジアントヒータの加熱によって伝熱性能の高い高密度の霜とされた霜層を融解するのに際して、パイプヒータに通電することでパイプヒータからの熱はフィンや霜に対して主に熱伝導によって伝えることができる。このため、伝熱性能が向上した霜の内側からパイプヒータの熱がフィンを介して霜に伝わり、高い加熱効率で霜を加熱して除霜を行うことができる。この場合、ラジアントヒータによって霜の外側からも熱が加えられているため、霜の外側からも霜を加熱することができる。これらの組み合わせによって効率よく素早く除霜することができるようになる。
【0085】
したがって、全体の除霜運転時間を短縮して冷凍室の温度上昇を抑制し、かつ省エネルギー性能を向上することができる。
【0086】
尚、本実施例ではラジアントヒータとパイプヒータの加熱のための電力は固定の値であるが、ラジアントヒータとパイプヒータの電力は調整可能としても良いものである。例えば、霜の融解が進行するにしたがって直接加熱であるパイプヒータの電力を多くし、この分ラジアントヒータの電力を少なくして、効率よく熱を霜に与えることも可能である。