特許第6321486号(P6321486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321486断熱材の製造方法、および、断熱材の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321486
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】断熱材の製造方法、および、断熱材の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/26 20060101AFI20180423BHJP
   F16L 59/00 20060101ALI20180423BHJP
   C04B 38/00 20060101ALN20180423BHJP
【FI】
   B28B1/26
   F16L59/00
   B28B1/26 102
   !C04B38/00 303A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-163561(P2014-163561)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-37021(P2016-37021A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】光洋サーモシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 翁堂
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−001567(JP,U)
【文献】 特開昭62−257806(JP,A)
【文献】 特開平03−087204(JP,A)
【文献】 特開平03−090302(JP,A)
【文献】 中国実用新案第203542792(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/26− 1/54
C04B 38/00−38/10
F16L 59/00−59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料、および、バインダーが混合された混合液を槽に準備する、準備工程と、
液体透過性を有し、且つ、前記原料の通過を規制可能な成形型に前記混合液を加圧注入する注入工程と、
を含み、
前記注入工程では、中空の前記成形型の内部に前記混合液を加圧注入し、
前記成形型は、複数の外側面を有する形状に形成され、各前記外側面に、前記成形型内から排出される液体が通過する貫通孔が形成され、
何れの前記外側面においても、前記貫通孔が前記成形型の外部の空間に開放されていることを特徴とする、断熱材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱材の製造方法であって、
前記注入工程は、空気中に配置された前記成形型に前記混合液を加圧注入することを特徴とする、断熱材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の断熱材の製造方法であって、
前記準備工程は、前記原料として所定の第1原料を含む前記混合液としての第1混合液を前記槽としての所定の第1槽に準備するとともに、前記原料として所定の第2原料を含む前記混合液としての第2混合液を前記槽としての所定の第2槽に準備する工程を含み、
前記注入工程は、前記第1混合液を前記成形型に加圧注入し、次いで、前記第2混合液を前記成形型に加圧注入することを特徴とする、断熱材の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載の断熱材の製造方法であって、
前記断熱材は、当該断熱材の外郭部と、この外郭部の内側に配置される内側部と、を含み、
前記注入工程が実行されることで、前記外郭部および前記内側部、それぞれ、前記原料として互いに異なる前記第1原料および前記第2原料を用いて形成されていることを特徴とする、断熱材の製造方法
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の断熱材の製造方法であって、
前記断熱材のかさ密度が3g/cm以上となるように構成されていることを特徴とする、断熱材の製造方法
【請求項6】
原料、および、バインダーが混合された混合液を貯めるための槽と、
液体透過性を有し、且つ、前記原料の通過を規制可能な成形型と、
前記混合液を前記成形型に加圧注入するための加圧部と、
を備え
前記成形型は、複数の外側面を有する形状に形成され、各前記外側面に、前記成形型内から排出される液体が通過する貫通孔が形成され、
何れの前記外側面においても、前記貫通孔が前記成形型の外部の空間に開放されていることを特徴とする、断熱材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材の製造方法、および、断熱材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバー材料を用いて成形品を製造する構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の製造方法では、まず、セラミックスファイバーと水とバインダーとが混合された混合液に凝集剤を添加することで、スラリーを作成する。そして、このスラリーが貯められた槽に成形型を沈める。成形型は、金網を円筒状に形成してなる本体部と、この本体部の両端部を閉じる一対の板とを有している。一方の板には、吸引ポンプが接続されている。
【0003】
吸引ポンプの動作により、成形型の周囲にスラリー中のセラミックスファイバーが吸引および積層される。これにより、円筒状の成形品が形成される。この成形品は、成形型から取り出されて乾燥されることで、固体状の成形品となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−196381号公報([0018]〜[0021])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の成形体を断熱材として用いる場合、高温域での断熱性能を向上させるために、かさ密度を高くすることが有効な場合がある。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、真空吸引によってスラリーを成形型に積層させる構成である。このため、最大でも真空と大気圧との圧力差(約0.1MPa)に相当する圧力でしか、スラリーを吸引することができず、吸引によっては断熱材のかさ密度をあまり高くできない。
【0006】
このため、たとえば、成形型で断熱材を成形したあと、乾燥前の断熱材にプレス機などで機械的に圧力を加えることで、断熱材のかさ密度を高める必要がある。しかしながら、断熱材がプレス機で機械的に強く加圧されると、断熱材を構成しているファイバーに損傷が生じて断熱材の強度が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、かさ密度と強度の双方が高い断熱材の製造方法、および、断熱材の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる断熱材の製造方法は、原料、および、バインダーが混合された混合液を槽に準備する、準備工程と、液体透過性を有し、且つ、前記原料の通過を規制可能な成形型に前記混合液を加圧注入する注入工程と、を含み、前記注入工程では、中空の前記成形型の内部に前記混合液を加圧注入し、前記成形型は、複数の外側面を有する形状に形成され、各前記外側面に、前記成形型内から排出される液体が通過する貫通孔が形成され、何れの前記外側面においても、前記貫通孔が前記成形型の外部の空間に開放されている。
【0009】
この構成によると、混合液を成形型に加圧注入することで、混合液中の原料が成形型内に加圧状態で積層され、混合液中の液体成分は、成形型から排出される。これにより、成形型内において、原料は、加圧されることによって、より圧縮された状態で積層される。よって、断熱材のかさ密度をより高くできる。また、混合液に生じる液圧によって原料がより均等に加圧されるので、原料に損傷が生じることを抑制できる。このように、断熱材のかさ密度を高めるためにプレス機でせん断力を生じるように断熱材を加圧させる必要が無いので、プレス加工に起因する原料の損傷が生じずに済む。よって、断熱材の強度について、高い強度を確保できる。以上の次第で、本発明によると、かさ密度と強度の双方が高い断熱材を得ることができる。
【0010】
(2)好ましくは、前記注入工程は、空気中に配置された前記成形型に前記混合液を加圧注入する。
【0011】
この構成によると、成形型を混合液中に浸す必要がない。これにより、成形型を混合液に浸すための液体貯留槽が不要であり、この液体貯留槽のメンテナンスの手間をなくすことができる。
【0012】
(3)好ましくは、前記準備工程は、前記原料として所定の第1原料を含む前記混合液としての第1混合液を前記槽としての所定の第1槽に準備するとともに、前記原料として所定の第2原料を含む前記混合液としての第2混合液を前記槽としての所定の第2槽に準備する工程を含み、前記注入工程は、前記第1混合液を前記成形型に加圧注入し、次いで、前記第2混合液を前記成形型に加圧注入する。
【0013】
この構成によると、第1原料が成形型の内面側に積層され、その後、第2原料が第1原料の内側に積層される。これにより、断熱材の外郭部は第1原料で形成され、断熱材の内側は第2原料で形成される。このような構成であれば、断熱材の外郭部と内側部のそれぞれにより適した材料を用いることができる。たとえば、第2原料として廃材を用いることで、断熱材の製造コストをより低減でき、且つ、断熱材の更なる省資源化を達成できる。
【0016】
)好ましくは、前記断熱材は、当該断熱材の外郭部と、この外郭部の内側部に配置される内側部と、を含み、前記注入工程が実行されることで、前記外郭部および前記内側部、それぞれ、前記原料として互いに異なる前記第1原料および前記第2原料を用いて形成されている。
【0017】
この構成によると、断熱材の外郭部と内側部のそれぞれにより適した材料を用いることができる。たとえば、第2原料として廃材を用いることで、断熱材の製造コストをより低減でき、且つ、断熱材の更なる省資源化を達成できる。
【0018】
)好ましくは、前記断熱材のかさ密度が3g/cm以上となるように構成されている。
【0019】
たとえば、混合液槽内に成形型を沈めた状態でこの成形型の内部を吸引する真空成形では、かさ密度は3g/cm以上にするのが困難であり、断熱性能を高くする余地が大きく残されている。一方、上述した加圧成形によると、断熱材のかさ密度を3g/cm以上とすることで、断熱材の断熱性能を十分に確保できる。
【0020】
)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる断熱材の製造装置は、原料、および、バインダーが混合された混合液を貯めるための槽と、液体透過性を有し、且つ、前記原料の通過を規制可能な成形型と、前記混合液を前記成形型に加圧注入するための加圧部と、を備え、前記成形型は、複数の外側面を有する形状に形成され、各前記外側面に、前記成形型内から排出される液体が通過する貫通孔が形成され、何れの前記外側面においても、前記貫通孔が前記成形型の外部の空間に開放されている。
【0021】
この構成によると、混合液を成形型に加圧注入することで、混合液中の原料が成形型内に加圧状態で積層され、混合液中の液体成分は、成形型から排出される。これにより、成形型内において、原料は、加圧されることによって、より圧縮された状態で積層される。よって、断熱材のかさ密度をより高くできる。また、混合液に生じる液圧によって原料がより均等に加圧されるので、原料に損傷が生じることを抑制できる。このように、断熱材のかさ密度を高めるためにプレス機でせん断力を生じるように断熱材を加圧させる必要が無いので、プレス加工に起因する原料の損傷が生じずに済む。よって、断熱材の強度について、高い強度を確保できる。以上の次第で、本発明によると、かさ密度と強度の双方が高い断熱材を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、かさ密度と強度の双方が高い断熱材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る断熱材の製造装置の模式図である。
図2】製造装置の主要部および断熱材を拡大して示す断面図である。
図3】断熱材の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態にかかる断熱材の製造装置の模式図である。
図5】製造装置の主要部および断熱材を拡大して示す断面図である。
図6】断熱材の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図7】変形例の主要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、断熱材の製造方法、断熱材、および、断熱材の製造装置として広く適用することができる。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る断熱材100の製造装置1の模式図である。図2は、製造装置1の主要部および断熱材100を拡大して示す断面図である。
【0026】
図1および図2を参照して、製造装置1は、溶媒にバインダーおよび原料を混合することで形成された混合液2を成形型8に加圧注入することで、断熱材100を形成する。
【0027】
製造装置1は、ミキシング槽3と、ミキサー4と、スラリー管5と、加圧ポンプ(加圧部)6と、圧力計7と、成形型8と、ホワイトウォーター受け9と、戻し管10と、フィルタ12と、を有している。
【0028】
ミキシング槽3は、成形型8に供給される混合液2を貯めるために設けられている。ミキシング槽3は、たとえば、上面が開放された箱形に形成されている。ミキシング槽3には、ミキサー4が設置されている。ミキサー4は、たとえば、電動モータの出力軸に撹拌羽根が取り付けられた構成を有しており、ミキシング槽3内の混合液2を撹拌する。これにより、混合液2中の固形状の成分の沈殿を抑制している。
【0029】
混合液2は、溶媒と、バインダーと、原料とが混合されることで形成された混合液である。本実施形態では、溶媒として、純水が用いられる。また、本実施形態では、バインダーとして、コロイダルシリカ(S)が用いられる。また、本実施形態では、原料として、ファイバー材が用いられる。
【0030】
本実施形態では、このファイバー材は、たとえば、アルミナ(Al)とシリカ(S)とを含むセラミックファイバー(繊維材料)である。なお、原料は、アルミナおよびシリカに限定されず、純水に混合可能で、且つ、成形型8内で積層されることが可能な原料であればよい。混合液2は、ミキシング槽3内においてミキサー4で所定時間以上撹拌されることによって、十分に撹拌される。この混合液2は、ミキシング槽3からスラリー管5を介して成形型8に供給される。
【0031】
スラリー管5は、ミキシング槽3と成形型8に接続されており、混合液2(スラリー)を、ミキシング槽3から成形型8に搬送するために用いられる。スラリー管5は、混合液2を通過させることが可能な内径を有している。スラリー管5の内径は、成形型8へ供給される混合液2の圧力などに応じて適宜設定される。スラリー管5の途中には、加圧ポンプ6が設置されている。加圧ポンプ6は、混合液2を加圧可能なポンプであればよく、具体的な構造は限定されない。加圧ポンプ6は、混合液2を成形型8に加圧注入するために用いられる。
【0032】
スラリー管5において、加圧ポンプ6から供給された混合液2の圧力を検出するための圧力計7が設けられている。圧力計7で表示される圧力に応じて、成形型8内で形成される断熱材100のかさ密度が決まる。加圧ポンプ6は、スラリー管5内の混合液2を加圧することで、混合液2を大気圧よりも高い圧力にして成形型8へ加圧注入する。たとえば、断熱材100のかさ密度が3g/cmに設定される場合、混合液2の圧力は、略0.13MPa以上で且つ略0.3MPa以下の範囲で調整するのが好ましい。混合液2の圧力は、断熱材100のかさ密度に応じて適宜選択される。
【0033】
成形型8は、断熱材100が形成される部分として設けられている。成形型8は、複数(本実施形態では、2つ)の分割型8a,8bを組み合わせることで形成されている。成形型8の内面は、断熱材100の外形形状(外表面の形状)に対応する形状に形成されている。この内面で形成されたキャビティ11内に混合液2が加圧注入される。
【0034】
成形型8は、空気中に設置されており、混合液2が貯められた槽内に浸される構成ではない。成形型8の各分割型8a,8bは、たとえば、パンチングメタルを用いて形成されており、金属板などの板部材に多数の貫通孔8cが形成された構成を有している。この貫通孔8cの直径は、適宜設定されている。貫通孔8cは、各分割型8a,8bに略等間隔に配置されている。この構成により、成形型8は、分割型8a,8bが組み合わされた状態において、液体透過性を有し、且つ、原料の通過を規制可能である。
【0035】
成形型8のたとえば一側面に、スラリー管5が接続されている。分割型8a,8bが互いに突き合わされることで、キャビティ11が形成され、且つ、スラリー管5からキャビティ11内への混合液2の注入が可能となる。そして、キャビティ11内に混合液2が加圧注入されると、混合液2中の原料は、成形型8の内面(キャビティ11)に受けられて、順次積層される。一方、混合液2中の液体成分、および、成形型8内において積層されなかった原料を含む液としてのホワイトウォーターは、成形型8に形成された多数の貫通孔8cを通って成形型8の外部に排出される。
【0036】
そして、一定時間以上、成形型8へ混合液2が加圧注入されると、成形型8のキャビティ11内に原料が満遍なく行き渡り、断熱材100が形成される。断熱材100は、成形型8の分割型8a,8bから分離された後、乾燥されることで、製品として完成する。なお、本実施形態では、キャビティ11への混合液2の加圧注入に先立ち、キャビティ11内にインサート101が配置されている。
【0037】
インサート101は、たとえば、電熱発生用のコイルである。インサート101は、蛇行した形状に形成されている。インサート101の両端部は、成形型8内において、キャビティ11の底面に支持されている。本実施形態では、キャビティ11内にインサート101が配置された状態で、混合液2が成形型8のキャビティ11内に加圧注入される。これにより、インサート101を内蔵した断熱材100(モルダサームヒータ)が形成される。
【0038】
断熱材100は、高温(たとえば、1000℃以上)で使用される、高温用の断熱材である。断熱材100は、たとえば、ブロック状に形成されている。断熱材100の外表面の形状は、成形型8の内面の形状に相当する形状である。断熱材100は、略均等なかさ密度を有する断熱材である。
【0039】
本実施形態では、断熱材100のかさ密度は、3g/cm以上に設定されている。断熱材100のかさ密度が上記のように設定されていると、上記の高温時における、断熱材100の断熱性能を格段に向上することができる。断熱材100のかさ密度は、4g/cm以上であることが、より好ましい。
【0040】
成形型8の下方には、ホワイトウォーター受け9が設けられている。ホワイトウォーター受け9は、成形型8の貫通孔8cから排出されたホワイトウォーターを受けるために設けられている。ホワイトウォーター受け9は、上面が開放された箱形形状に形成されており、成形型8から排出されて落下したホワイトウォーターを受ける。
【0041】
ホワイトウォーター受け9は、戻し管10を介してミキシング槽3に接続されている。これにより、成形型8からのホワイトウォーターは、ホワイトウォーター受け9、および、戻し管10を介して、ミキシング槽3に戻される。戻し管10には、たとえば、フィルタ12が設置されており、ホワイトウォーター内の原料が除去される。これにより、成形型8から排出されたホワイトウォーターのうちの少なくとも液体成分が、ミキシング槽3に戻され、再利用される。ミキシング槽3においては、混合液2中の溶媒、原料およびバインダーの濃度が一定の範囲内に収まるよう、適宜、溶媒、原料およびバインダーが、図示しない供給部から供給される。
【0042】
次に、製造装置1を用いた断熱材100の製造方法の一例を説明する。図3は、断熱材100の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、フローチャートを参照して説明する場合、フローチャート以外の図も適宜参照しながら説明する。
【0043】
図3を参照して、断熱材100を製造する際には、まず、成形型8のキャビティ11にインサート101が設置される(ステップS11)。なお、断熱材100にインサート101が設けられない場合には、ステップS11は省略される。次に、混合液2が準備される(ステップS12、準備工程)。具体的には、溶媒、原料、および、バインダーがミキシング槽3に投入されることで混合液2が形成されている。そして、この混合液2が、ミキサー4で混合される。
【0044】
ミキサー4が所定時間以上混合液2を混合し、混合液2が十分に撹拌された後、混合液2は、成形型8に加圧注入される(ステップS13)。この場合、加圧ポンプ6によって、ミキシング槽3内の混合液2が、スラリー管5を介して成形型8に加圧注入される。すなわち、空気中に配置された成形型8に混合液2が加圧注入される。これにより、成形型8のキャビティ11内に混合液2中の原料が積層されつつ、混合液2の液体成分が成形型8の貫通孔8cから成形型8の外部に排出される。その結果、キャビティ11に断熱材100が形成される。
【0045】
断熱材100が形成された後、成形型8の分割型8a,8bが開かれた状態で、断熱材100は、成形型8から取り出され、その後、乾燥される(ステップS14)。その後、断熱材100は、当該断熱材100の形状を整えるための仕上げ加工(切削加工)を施される(ステップS15)。なお、この仕上げ加工は、行われなくてもよい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によると、混合液2を成形型8に加圧注入することで、混合液2中の原料が成形型8内に加圧状態で積層され、混合液2中の液体成分は、成形型8から排出される。これにより、成形型8内において、原料は、加圧されることによって、より圧縮された状態で積層される。よって、断熱材100のかさ密度をより高くできる。また、混合液2に生じる液圧によって原料がより均等に加圧されるので、原料に損傷が生じることを抑制できる。このように、断熱材100のかさ密度を高めるためにプレス機でせん断力を生じるように断熱材100を加圧させる必要が無いので、プレス加工に起因する原料の損傷が生じずに済む。よって、断熱材100の強度について、高い強度を確保できる。以上の次第で、かさ密度と強度の双方が高い断熱材100を得ることができる。
【0047】
また、本実施形態によると、空気中に配置された成形型8に混合液2が加圧注入される。この構成によると、成形型8を混合液2中に浸す必要がない。これにより、成形型8を混合液2に浸すための液体貯留槽が不要であり、この液体貯留槽のメンテナンスの手間をなくすことができる。
【0048】
また、本実施形態によると、断熱材100のかさ密度は、3g/cm以上にできる。たとえば、混合液槽内に成形型を沈めた状態でこの成形型の内部を吸引する真空成形では、かさ密度は3g/cm以上にするのが困難であり、断熱性能を高くする余地が大きく残されている。一方、本実施形態の加圧成形によると、断熱材100のかさ密度を3g/cm以上とすることで、断熱材100の断熱性能を十分に確保できる。
【0049】
また、本実施形態によると、加圧ポンプ6からの吐出圧力を増減することで、断熱材100のかさ密度を容易に制御することができる。これにより、断熱材100の使用温度に適したかさ密度を容易に設定できる。
【0050】
また、本実施形態によると、プレス加工を施すこと無く、断熱材100のかさ密度を高くできるので、断熱材100に収容されているインサート101がプレス加工に起因して損傷することを防止できる。
【0051】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態にかかる断熱材100Aの製造装置1Aの模式図である。図5は、製造装置1Aの主要部および断熱材100Aを拡大して示す断面図である。なお、以下では、第1実施形態の構成と異なる構成について主に説明し、第1実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
第2実施形態では、ミキシング槽3に代えて、第1ミキシング槽21、および、第2ミキシング槽22が設けられている。
【0053】
第1ミキシング槽21および第2ミキシング槽22は、それぞれ、成形型8に供給される第1混合液31および第2混合液32を貯めるために設けられている。各ミキシング槽21,22は、たとえば、上面が開放された箱形に形成されている。第1ミキシング槽21および第2ミキシング槽22には、それぞれ、ミキサー4が設置されている。各ミキサー4は、対応するミキシング槽21,22内の第1混合液31および第2混合液32を撹拌する。これにより、各混合液31,32中の固形状の成分の沈殿を抑制している。
【0054】
第1混合液31は、第1実施形態の混合液2と同じ構成である。第2混合液32では、原料(第2原料)として、他の断熱材100Aの乾燥後に行われる切削加工などの仕上げ加工の際に生じた屑が用いられている。本実施形態では、第2混合液32の溶媒が純水であり、且つ、バインダーがコロイドシリカである点、第1混合液31と同様である。
【0055】
また、第2実施形態では、スラリー管5Aの他端は、2本に分岐している。この分岐部分には、弁ユニット40が設置されている。弁ユニット40は、第1ミキシング槽21の第1混合液31と第2ミキシング槽22の第2混合液32とを択一的にまたは同時に成形型8に供給するために設けられている。
【0056】
弁ユニット40は、第1弁41と、第2弁42と、を有している。
【0057】
第1弁41および第2弁42は、たとえば、電磁弁であり、図示しない制御装置の制御によって開閉制御される。なお、第1弁41および第2弁42は、作業員の手作業によって開閉操作されてもよい。
【0058】
第1弁41は、第1ミキシング槽21と成形型8とをスラリー管5Aを介して接続するために設けられている。第1弁41が開くことにより、第1ミキシング槽21内の第1混合液31は、スラリー管5Aに送られる。一方、第1弁41が閉じることにより、第1ミキシング槽21内の第1混合液31は、スラリー管5Aには送られなくなる。
【0059】
第2弁42は、第2ミキシング槽22と成形型8とをスラリー管5Aを介して接続するために設けられている。第2弁42が開くことにより、第2ミキシング槽22内の第2混合液32は、スラリー管5Aに送られる。一方、第2弁42が閉じることにより、第2ミキシング槽22内の第2混合液32は、スラリー管5Aには送られなくなる。
【0060】
本実施形態では、第1弁41と第2弁42とが択一的に開かれることで、第1混合液31と第2混合液32とが、択一的に成形型8に供給される。なお、第1弁41が閉じられる動作と第2弁42が開かれる動作とは時間的に重複されてもよい。この場合、成形型8への第1混合液31の供給停止と、成形型8への第2混合液32への供給開始とが、同時に行われる。
【0061】
断熱材100Aは、略均等なかさ密度を有する断熱材である。断熱材100Aは、外郭部102と、この外郭部102の内側に配置される内側部103と、を有している。そして、外郭部102および内側部103は、それぞれ、原料として互いに異なる第1原料および第2原料を用いて形成されている。
【0062】
外郭部102は、第1混合液31が成形型8に加圧注入されることで形成される。外郭部102は、断熱材100Aの外表面の大部分を含む、当該断熱材100Aの外郭部分を形成している。断熱材100Aの外表面からの外郭部102の厚みは、適宜設定される。内側部103は、外郭部102の内側の空間を埋めるように配置されている。
【0063】
内側部103は、第2混合液32が成形型8に加圧注入されることで形成される。すなわち、外郭部102は、第1原料としてのセラミックファイバー材で形成されているのに対して、内側部103は、他の断熱材100Aの表面の切削加工時に生じる屑を含む、第2原料としての再生ファイバー材で形成されている。内側部103は、断熱材100Aの外表面の一部と、断熱材100Aの内側部分を形成している。本実施形態では、内側部103は、断熱材100の外表面のうち、スラリー管5Aとの接続部近傍の一側面104の一部を形成している。上記の構成により、内側部103は、外郭部102内に配置されつつ、スラリー管5Aの近傍においては断熱材100Aの外部に露呈している。
【0064】
第1混合液31が成形型8に供給されることで生じるホワイトウォーター、および、第2混合液32が成形型8に供給されることで生じるホワイトウォーターは、貫通孔8cから排出されてホワイトウォーター受け9で受けられた後、ドレン管43に排出され、廃棄される。
【0065】
次に、製造装置1Aを用いた断熱材100Aの製造方法の一例を説明する。図6は、断熱材100Aの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0066】
図6を参照して、断熱材100Aを製造する際には、まず、第1混合液31および第2混合液32が準備される(ステップS21、準備工程)。具体的には、溶媒としての純水、第1原料としてのセラミックファイバー、および、バインダーが第1ミキシング槽21に投入されることで、第1混合液31が形成される。
【0067】
そして、この第1混合液31が、第1ミキサー4で混合される。また、溶媒としての純水、他の断熱材100Aの表面の切削加工によって生じた第2原料としての再生ファイバー材、および、バインダーが第2ミキシング槽22に投入されることで、第2混合液32が形成される。そして、この第2混合液32が、第2ミキサー4で混合される。
【0068】
このように、準備工程は、第1原料を含む第1混合液31を第1ミキシング槽21に準備するとともに、第2原料を含む第2混合液32を第2ミキシング槽22に準備する工程を含んでいる。次に、ステップS22,S23は、本発明の「注入工程」の一例であり、第1混合液31を成形型8に加圧注入し、次いで、第2混合液32を成形型8に加圧注入する工程である。
【0069】
より具体的には、各ミキシング槽21,22で混合液31,32が十分に撹拌された後、まず、第1弁41が開かれ、且つ、第2弁42が閉じられる。この状態で、第1混合液31が所定時間、成形型8に加圧注入される(ステップS22)。
【0070】
この場合、加圧ポンプ6によって、第1ミキシング槽21内の第1混合液31が、スラリー管5Aを介して成形型8に加圧注入される。これにより、成形型8のキャビティ11内の内面寄りに第1混合液31中のセラミックファイバーが積層されつつ、第1混合液31中の液体成分が成形型8の貫通孔8cから成形型8の外部に排出される。
【0071】
次に、第2弁42が開かれ、且つ、第1弁41が閉じられた状態で、第2混合液32が成形型8に加圧注入される(ステップS23)。この場合、加圧ポンプ6によって、第2ミキシング槽22内の第2混合液32が、スラリー管5Aを介して成形型8に加圧注入される。これにより、成形型8のキャビティ11内の中心寄りに第2混合液32中の再生ファイバー材が積層されつつ、第2混合液32中の液体成分が成形型8の貫通孔8cから成形型8の外部に排出される。
【0072】
この際、第2混合液32は、キャビティ11(スラリー管5A)の液圧が、所定の圧力に達するまで、成形型8に供給され続ける。これにより、再生ファイバー材は、セラミックファイバー材の内部で積層されつつ、セラミックファイバー材を押し出すように加圧され、スラリー管5Aと成形型8との接続部周辺で積層される。その結果、キャビティ11に断熱材100Aが形成される。
【0073】
断熱材100Aが形成された後、成形型8の分割型8a,8bが開かれた状態で、断熱材100Aは、成形型8から取り出され、その後、乾燥される(ステップS24)。その後、断熱材100Aは、当該断熱材100Aの形状を整えるための仕上げ加工(切削加工)を施される(ステップS25)。なお、この仕上げ加工は、行われなくてもよい。
【0074】
以上の次第で、本実施形態によると、セラミックファイバー(第1原料)が成形型8の内面側に積層され、その後、再生ファイバー(第2原料)がセラミックファイバーの内側に積層される。これにより、断熱材100Aの外郭部102はセラミックファイバーで形成され、断熱材100Aの内側部103は再生ファイバーで形成される。このような構成であれば、断熱材100Aの外郭部102と内側部103のそれぞれにより適した材料を用いることができる。本実施形態では、廃材であった再生ファイバーを用いることで、断熱材100Aの製造コストをより低減でき、且つ、断熱材100Aの更なる省資源化を達成できる。
【0075】
また、たとえば、原料として再生ファイバーのみを用いた場合、断熱材の外表面の品質は低くなり、当該断熱材の外表面を綺麗に仕上げることが困難である。これに対して、本実施形態によると、断熱材100Aの内側部103は再生ファイバーで形成されているけれども、断熱材100Aの外表面の大部分がセラミックファイバーで形成されている。これにより、断熱材100Aの外表面の品質を高くでき、当該断熱材100Aの外表面を綺麗に仕上げることができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0077】
(1)上記実施形態では、成形型8とスラリー管5(5A)との接続位置が固定である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、図7に示すように、成形型8に対するスラリー管5(5A)の一端の位置を変更可能な構成が採用されてもよい。この場合、スラリー管5は、成形型8内において原料が積層されるに従い、成形型8から引き抜かれる方向(矢印A方向)に変位される。これにより、断熱材100(100A)のかさ密度をより均等にすることができる。
【0078】
(2)また、上述の実施形態では、成形型8への混合液2(混合液31,32)の注入の圧力が、一定である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、成形型8への混合液2の圧力を、混合液2の注入開始時には低くしておき、その後、高くしてもよい。この場合も、成形型8のうちスラリー管5との接続部から遠い箇所と、近い箇所のそれぞれにおける断熱材100(100A)のかさ密度をより均等にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、断熱材の製造方法、および、断熱材の製造装置として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,1A 断熱材の製造装置
2 混合液
3 ミキシング槽(槽)
6 加圧ポンプ(加圧部)
8 成形型
21 第1ミキシング槽(第1槽)
22 第2ミキシング槽(第2槽)
31 第1混合液
32 第2混合液
100,100A 断熱材
102 外郭部
103 内側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7