(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321517
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】人孔用金蓋のパッキン、分割部材
(51)【国際特許分類】
E02D 29/14 20060101AFI20180423BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
E02D29/14 C
F16J15/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-210827(P2014-210827)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-79637(P2016-79637A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139573
【氏名又は名称】株式会社愛洋産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岸 洋司
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭45−033783(JP,Y1)
【文献】
特開2014−177972(JP,A)
【文献】
特開平05−278119(JP,A)
【文献】
実開昭51−069464(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/14
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人孔用金蓋と人孔用金蓋の受枠との間に設置される人孔用金蓋のパッキンにおいて、
組み合わせると円形状となる分割部材であって、円弧形状に形成されるとともに、円の軸方向に沿った厚みに対して円の径方向に沿った幅が広い形状に形成された複数の分割部材と、
前記分割部材の円弧の第1端側の厚みをなす面から突設された雄部と、
前記雄部に形成された引掛孔であって、前記円形状の軸方向に垂直な面に形成された引掛孔と、
前記分割部材の円弧の第2端側の厚みをなす面に設けられ、前記雄部を挿入可能な雌部と、
前記分割部材の幅をなす面である幅面のうち、前記分割部材の内部に前記雌部が形成された部分に形成され、前記雌部に通じる孔部と、
前記孔部の底をなす面から、前記孔部の開口側に向かって突設され、前記雄部を前記雌部に挿入する挿入方向に沿った長さが、前記引掛孔に比べ短く形成された突起部と、
を備え、前記雄部を前記雌部に挿入し、前記引掛孔を前記突起部に引っ掛けることで前記分割部材を連結して構成されることを特徴とする人孔用金蓋のパッキン。
【請求項2】
請求項1に記載の人孔用金蓋のパッキンにおいて、
前記突起部は、
前記雌部が前記第2端の厚みをなす面で開口する挿入口の側に向かって先細な形状をなす傾斜部を有することを特徴とする人孔用金蓋のパッキン。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか一項に記載の人孔用金蓋のパッキンにおいて、
前記孔部は、
上下の前記幅面に設けられ、かつ、前記第2端側から前記第1端の側に向かって交互に形成されていることを特徴とする人孔用金蓋のパッキン。
【請求項4】
請求項3に記載の人孔用金蓋のパッキンにおいて、
前記突起部は、
最も前記第1端よりの前記孔部に形成されていることを特徴とする人孔用金蓋のパッキン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の人孔用金蓋のパッキンにおいて、
前記人孔用金蓋を前記受枠に嵌めたときに、前記人孔用金蓋の外周側面と、前記受枠の内周側面とに挟まれる部分であって、前記分割部材の外側の円弧をなす部分から突設された鍔部を備えることを特徴とする人孔用金蓋のパッキン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の人孔用金蓋のパッキンで用いられる前記分割部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人孔用金蓋のパッキン、及び、このパッキンを構成する分割部材に関する。
【背景技術】
【0002】
人孔は、地下の下水道・暗渠・埋設された電気・通信ケーブルなどの管理(点検・修理・清掃・排気など)を目的として作業員が地上から出入りできるように地面にあけられた縦穴である。
【0003】
この人孔は、一般にコンクリートで筒状に形成されており、出入口の開口(以下「出入口用開口」という)が地面で開口するように土中に埋設されている。この開口は、人孔用金蓋で閉じられるが、このための受枠が出入口用開口を形成する人孔の軸方向の一端側の縁部に設けられている。
【0004】
受枠は、筒形状に形成された側面受部と、この側面受部の内側側面に突設された底受部とを有している。この側面受部と底受部とで囲まれた部分に人孔用金蓋を挿入すると、人孔用金蓋が側面受部の内側に嵌り、出入口用開口が閉じられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
人孔では、騒音等の防止のため、人孔用金蓋のパッキンが用いられることが多い。
この場合、人孔用金蓋のパッキンは底受部上に敷がれ、そのパッキン上に人孔用金蓋が載るようにして人孔用金蓋を受枠に嵌め込むことで、出入口用開口が閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平2−37863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、人孔や人孔用金蓋は設計誤差が大きく、設計通りの大きさにパッキンを製作しても、設計通りにパッキンが配置されないことがある。このように設計通りにパッキンが配置されないと、人孔用金蓋を受枠とが当たる確率が高くなるので、騒音抑制が狙い通りに行えない可能性があった。
【0008】
また、これに対応するため、特許文献1のようにパッキンを分割することも考えられる。これは、パッキンを分割すれば、設計誤差に応じてパッキンを配置することができるようになるためである。
【0009】
しかし、人孔用金蓋のパッキンは、経年使用により劣化した場合には取り替える必要がある。
このパッキンの取り替えは、人孔用金蓋をパッキンの取り替えが可能な高さまで持ち上げ、その持ち上げている間に古いパッキンを新しいパッキンに置き換える作業により行われる。
【0010】
このような場合、パッキンが分割されていると、作業員は、その分割されている数だけ、人孔と、持ち上げている人孔用金蓋との間に腕を差し入れなければならなくなり、工程数が多く、しかも危険であった。
【0011】
本発明は、人孔が設計通りの大きさでなかった場合でも、その大きさに合わせて柔軟に径を変えることができ、しかも、少ない工程でパッキンの取り替えが可能な人孔用金蓋のパッキン、及び、このパッキンを構成する分割部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の人孔用金蓋のパッキンは、
人孔用金蓋と人孔用金蓋の受枠との間に設置される人孔用金蓋のパッキンにおいて、組み合わせると円形状となる分割部材であって、円弧形状に形成されるとともに、円の軸方向に沿った厚みに対して円の径方向に沿った幅が広い形状に形成された複数の分割部材と、
分割部材の円弧の第1端側の厚みをなす面から突設された雄部と、雄部に形成された引掛孔であって、円形状の軸方向に垂直な面に形成された引掛孔と、分割部材の円弧の第2端側の厚みをなす面に設けられ、雄部を挿入可能な雌部と、
分割部材の幅をなす面である幅面のうち、分割部材の内部に雌部が形成された部分に形成され、雌部に通じる孔部と、孔部の底をなす面から、孔部の開口側に向かって突設され、雄部を雌部に挿入する挿入方向に沿った長さが、引掛孔に比べ短く形成された突起部と、
を備えるものである。
【0013】
このような構成によると、隣接する分割部材の雄部を雌部に挿入した場合、雄部に設けられた引掛孔が、雌部に設けられた突起部に引っ掛かる。このとき、突起部の長さであって、雄部を雌部に挿入する挿入方向に沿った長さが、引掛孔に比べて短いので、分割部材を円状に組み合わせても、柔軟に径を変えることができる。
【0014】
そのため、この人孔用金蓋のパッキンは、人孔が設計通りの大きさでなかった場合でも、その大きさに合わせて柔軟に径を変えて、人孔受枠等に設置することができる。
また、このような構成によると、パッキンは、雄部を雌部に挿入して、引掛孔を突起部に引っ掛ければ、複数の分割部材をはずれないように組み合わせることができるので、事前に円形状に組み立てておくことができる。
【0015】
そのため、このパッキンは、経年劣化等により取り替えるときでも、一度の工程で取り替えることができる。
また、このパッキンは、円形に組み合わせると、ひとつの分割部材を持っても他の分割部材がはずれない。そのため、このパッキンは、円形に組み合わせても円形を保つことができるので、パッキンの入替作業時などにひとつの分割部材を持って作業をしても、他の分割部材がはずれることがない。
【0016】
突起部は、請求項2に記載したように、雌部が第2端の厚みをなす面で開口する挿入口の側に向かって先細な形状をなす傾斜部を有する形状に形成してもよい。
このような構成によると、パッキンは、分割部材同士を組み合わせるとき、雄部を雌部に挿入するだけで、雄部がこの傾斜部に乗り上げた後、引掛孔が突起部に引っ掛かるので、分割部材同士を簡単に組み合わせることができる。
【0017】
人孔用金蓋のパッキンは、請求項3に記載したように、孔部が、上下の幅面に設けられ、かつ、第2端側から第1端の側に向かって交互に形成されていてもよい。
この場合、孔部は上下の幅面に千鳥に配置される。このように形成したほうが設計上、製造しやすいからである。
【0018】
尚、請求項4に記載したように、突起部は、最も第1端部よりの孔部に形成されていてもよいが、これに限られるものではない。
人孔用金蓋パッキンは、請求項5に記載したように、人孔用金蓋を受枠に嵌めたときに、人孔用金蓋の外周側面と、受枠の内周側面とに挟まれる部分であって、分割部材の外側の円弧をなす部分から突設された鍔部を備えるようにしてもよい。
【0019】
このような構成によると、人孔用金蓋パッキンは、人孔用金蓋と、受枠と間にできる隙間をより多く埋めることができるので、人孔の出入口用開口を人孔用金蓋で確実に閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態の人孔用金蓋のパッキンの斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の人孔用金蓋のパッキンを人孔の受枠に設置し、人孔用金蓋で人孔の出入口用開口を閉じた様子を説明するための説明図であり、人孔の中心軸で切断した断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の人孔用金蓋のパッキンを構成する分割部材の平面図及び一部拡大図で、拡大図は、雄部が設けられた部分の図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の人孔用金蓋のパッキンを構成する分割部材の平面図及び一部拡大図で、拡大図は、雌部が設けられた部分の図である。
【
図5】
図5(a)は、雄部を雌部に挿入する直前の様子を示す説明図で、幅方向の中央で切断した断面図である。
図5(b)は、雄部を雌部に挿入する途中の様子を示す説明図で、幅方向の中央で切断した断面図である。
図5(c)は、雄部の雌部への挿入が完了した様子を示す説明図で、幅方向の中央で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の人孔用金蓋のパッキン1は、
図1に示すように、組み合わせると円形状となる複数の分割部材3を順次連結して組み合わせたものである。
【0022】
分割部材3は、本体部30と、鍔部31とを有している。本体部30は、円弧形状に形成されるとともに、円の軸方向に沿った厚みに対して円の径方向に沿った幅が広い形状に形成されている。鍔部31は、分割部材3の外側の円弧をなす部分から、本体部30の幅方向に沿った側面に対し略垂直に立設されている。このため分割部材3は、本体部30がなす円弧に垂直な断面形状が、
図2に示すように、略L字となるように形成される。
【0023】
このように形成された人孔用金蓋のパッキン1を取り付けた場合、本体部30は、人孔用金蓋90を受枠91に嵌めたときに、人孔用金蓋90の底面900と、受枠91の底受部910との間に挟まれる。そして、鍔部31は、人孔用金蓋90の周囲側面901と、受枠91の側面受部911との間に挟まれる。
【0024】
図3に示すように、分割部材3の円弧の2つの端部のうち第1端側の厚みをなす面300には、舌片形状に形成された雄部40が突設される。
この雄部40は、パッキン1が形成する円の軸方向に垂直な面400を有しており、この面400を貫通して、一対の引掛孔41が形成されている。
【0025】
これら引掛孔41は、面300に沿った方向であって、面300が形成される部分の本体部30の幅方向に沿って並べて形成されている。
図4に示すように、分割部材3の円弧の2つの端部のうち第2端側の厚みをなす面301には、雄部40を挿入可能な孔部である雌部50が形成されている。
【0026】
分割部材3の幅をなす面である幅面302のうち、分割部材3の内部に雌部50が形成された部分には、雌部50に通じる孔部32が形成されている。この孔部32は、上下の幅面302に設けられ、かつ、第2端側から第1端部側に向かって交互に形成されている(
図5参照)。
【0027】
これら複数の孔部32のうち、最も第1端側より(面301から見て最も遠い位置)に位置する孔部32には、その孔部32の底面320から突設された一対の突起部51が突設されている。
【0028】
これら突起部51は、頂部が、これら突起部51が形成された孔部32の開口面に届く高さに形成されている。そして、これら突起部51は、雄部40の雌部50への挿入方向に対し垂直な方向であって、幅面302に平行な方向に沿って並べられている。
【0029】
また、これら突起部51は、雄部40を雌部50に挿入する挿入方向に沿った長さが、引掛孔41に比べ短い形状に形成されている。また、これら突起部51には、雌部50が面301で開口する挿入口の側に向かって先細な形状をなす傾斜部52が形成されている。
【0030】
次に、
図5を用いて、分割部材3の連結について説明する。
隣接する分割部材3を連結するため、ひとつの分割部材3の雄部40をもうひとつの分割部材3の雌部50に挿入する。すると、雄部40に設けられた引掛孔41が、雌部50に設けられた突起部51に引っ掛かる。このとき、突起部51は、雄部40を雌部50に挿入する挿入方向に沿った長さが、引掛孔41に比べて短いので、分割部材3を円状に組み合わせてパッキン1を構成しても、パッキン1の径を柔軟に変更することができる。
【0031】
以上から、この人孔用金蓋のパッキン1は、人孔が設計通りの大きさでなかった場合でも、その大きさに合わせて柔軟に径を変えて、人孔の受枠91等に設置することができる。
【0032】
また、このような構成によると、人孔用金蓋のパッキン1は、雄部40を雌部50に挿入して、引掛孔41を突起部51に引っ掛ければ、複数の分割部材3をはずれないように組み合わせることができるので、事前に円形状に組み立てておくことができる。
【0033】
そのため、この人孔用金蓋のパッキン1は、経年劣化等により取り替えるときでも、一度の工程で取り替えることができる。
また、人孔用金蓋のパッキン1は、突起部51が傾斜部52を備えているので、分割部材3同士を組み合わせるとき、雄部40を50に挿入するとき、雄部40がこの傾斜部52に乗り上げた後、引掛孔41が突起部51に引っ掛かる。すると、連結部材3同士が連結されるので、この人孔用金蓋のパッキン1は、分割部材3同士を簡単に組み合わせることができる
また、人孔用金蓋のパッキン1は、孔部32が、上下の幅面302に、第2端側から前記第部側に向かって交互(いわゆる千鳥)に形成されている。このように形成したほうが設計上、製造しやすいからである。
【0034】
また、人孔用金蓋のパッキン1は、鍔部31を備えているので、人孔用金蓋90と、受枠91と間にできる隙間を確実に埋めることができる。そのため、人孔用金蓋のパッキン1は、人孔の出入口用開口を人孔用金蓋90で確実に閉じることができる。
[他の実施形態]
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲に記載された発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0035】
(1)上記実施形態で説明した人孔用金蓋のパッキン1はあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。
(2)上記実施形態では、突起部51は、最も第1端部よりの孔部32に形成されているが、分割部材3同士の連結が可能であれば、他の孔部32に形成されていてもよい。
【0036】
(3)上記実施形態では、雄部40として、舌片形状に形成された雄部40について説明したが、雄部40の形状はこれに限るものではない。例えば、雄部40は、面301から突設された2本の棒状物でもよい。この場合、引掛孔41は、各棒状物に形成されるようにしてもよい。また、引掛孔41は、雄部40を貫通するものではなく、雄部40の表面を凹ませた形状のものでもよい。尚、雌部50は、雄部40の形状に対応した形状とするとよい、
(4)上記実施形態では、突起部51として、雄部40の雌部50への挿入方向に対し垂直に並んだものについて説明したが、この挿入方向に沿って並べてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1… パッキン 3… 分割部材 30… 本体部 31… 鍔部 32… 孔部
40… 雄部 41… 引掛孔 50… 雌部 51… 突起部 52… 傾斜部
90… 人孔用金蓋 91… 受枠 300… 面 301… 面 302… 幅面
320… 底面 400… 面 900… 底面 901… 周囲側面 910… 底受部
911… 側面受部