特許第6321539号(P6321539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321539
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】構造化粒子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20180423BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180423BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20180423BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180423BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20180423BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20180423BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20180423BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20180423BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20180423BHJP
   C01B 32/15 20170101ALI20180423BHJP
   C01B 32/182 20170101ALI20180423BHJP
【FI】
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 E
   H01M4/587
   H01M4/62 Z
   H01M4/134
   H01M4/133
   H01M4/1395
   H01M4/1393
   C01B33/02 Z
   C01B32/15
   C01B32/182
【請求項の数】20
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-516447(P2014-516447)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2014-523066(P2014-523066A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】GB2012051475
(87)【国際公開番号】WO2012175998
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】1110785.1
(32)【優先日】2011年6月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513311929
【氏名又は名称】ネクソン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEXEON LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100175606
【弁理士】
【氏名又は名称】上利 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】クリス フレンド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェームス マクリン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン ユイシオーン
(72)【発明者】
【氏名】マンドー エルセイド アブダルサラム
(72)【発明者】
【氏名】リウ フオンミーン
(72)【発明者】
【氏名】フィル レイナー
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−311207(JP,A)
【文献】 特表2012−505505(JP,A)
【文献】 特表2010−533637(JP,A)
【文献】 特表2012−527069(JP,A)
【文献】 特開2007−335198(JP,A)
【文献】 特開2006−164960(JP,A)
【文献】 特開2004−178922(JP,A)
【文献】 特開2004−296161(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02464158(GB,A)
【文献】 国際公開第2010/130975(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/068066(WO,A1)
【文献】 特開2008−166013(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/040985(WO,A1)
【文献】 特開2009−123695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00−4/62
C01B32/00
C01B33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン電池の活性成分として用いられるピラー化粒子を含む粉末であって、該ピラー化粒子は粒子コアおよび該粒子コアから延びる複数のピラーを含み、前記粒子コアのアスペクト比は少なくとも2:1であり、前記ピラーはシリコン、ゲルマニウム、又はスズを含み、前記粉末のBET値が200m/g未満である、粉末。
【請求項2】
前記ピラー化粒子が、電気化学的に活性であるグラファイト、グラフェン、ハードカーボン、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、スズ、アルミニウム、鉛、インジウム、アンチモン、ビスマス、これらの酸化物、窒化物または水素化物、これらの混合物、これらの元素を含有する混合物または複合合金ならびにカルコゲン化物およびセラミックスのような電気活性材料を含む、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
前記ピラーがシリコンを含む、請求項1または2に記載の粉末。
【請求項4】
前記コアがシリコンまたは炭素を含む、請求項1、2または3に記載の粉末。
【請求項5】
前記コアが、ハードカーボン、グラファイト又はグラフェンである、請求項4に記載の粉末。
【請求項6】
前記ピラーの体積が複数の前記ピラー化粒子の総体積の少なくとも20%である、請求項1〜5のいずれかに記載の粉末。
【請求項7】
前記ピラー化粒子のBET値が100m/g未満である、請求項1〜6のいずれかに記載の粉末。
【請求項8】
前記粒子コア上のピラーの平均ピラー密度が10〜80%の範囲内である、請求項1から7のいずれかに記載の粉末。
【請求項9】
平均ピラー径が80nm未満である、請求項1〜8のいずれかに記載の粉末。
【請求項10】
前記ピラー化粒子の対向表面がピラーを有する、請求項1〜9のいずれかに記載の粉末。
【請求項11】
前記ピラー化粒子の2つの対向表面のうち1つのみがピラーを有する、請求項1〜9のいずれかに記載の粉末。
【請求項12】
前記ピラー化粒子が実質的に互いに離れている、請求項1〜11のいずれかに記載の粉末。
【請求項13】
前記粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する粒子からなる、請求項1〜12のいずれかに記載の粉末。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の粉末および少なくとも1つのさらなる成分を含み、
前記少なくとも1つのさらなる成分が、下記(i)〜(iii)の少なくともいずれかを含む、組成物。
(i)少なくとも1つのさらなる活性成分;
(ii)少なくとも1つの導電性、非活性成分;又は
(iii)バインダー。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の粉末および溶媒を含む、組成物。
【請求項16】
前記組成物が、少なくともピラーの体積の2倍および粒子コアの体積の1.2倍の合計により得られる値である、複合体の総体積の割合としての、複合多孔度を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
アノード、カソードおよび該アノードとカソードとの間の電解質を備える金属イオン電池であって、該アノードは請求項1〜13のいずれか1項に記載の粉末または請求項14〜16のいずれかに記載の組成物を含む、金属イオン電池。
【請求項18】
請求項15に記載の組成物を堆積させ、溶媒を蒸発させることによりアノードを形成するステップを含む、請求項17で規定された金属イオン電池の形成方法。
【請求項19】
出発材料粉末の粒子をエッチングし、ピラー化粒子を形成するステップを含み、該出発材料粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる、請求項1〜13のいずれかに記載の粉末の形成方法。
【請求項20】
ピラーの平均長さが5ミクロン未満である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアおよび該コアから延びるピラーを含む粒子、該粒子の製造方法ならびに該粒子の再充電可能な金属イオン電池における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能リチウムイオン電池は、携帯電話およびノートパソコンのような携帯用電子装置に広く用いられ、電気またはハイブリッド電気自動車における用途が増加している。しかしながら、より大きな単位質量当たりおよび/または単位体積当たりのエネルギーを貯蔵する電池を提供するという継続的なニーズがある。
【0003】
従来のリチウムイオン再充電可能電池の構造は図1に示す。電池は単一の電池を含むが、2つ以上の電池を含むこともできる。他の金属イオンの電池、例えばナトリウムイオンおよびマグネシウムイオン電池も知られ、本質的に同じ電池構造を有する。
【0004】
電池は、アノード10の集電体、例えば銅、およびカソード12の集電体、例えばアルミニウムを含み、これらは必要に応じて負荷または再充電源に外部接続可能である。複合アノード層14は集電体10を覆い、リチウム含有金属酸化物系複合カソード層16は集電体12を覆う(いずれの疑念も回避するため、「アノード」および「カソード」の語は、本明細書において用いられる場合、電池が負荷に配置されるという意味で用いられる―この意味で正極はアノードと称され、負極はカソードと称される)。
【0005】
カソードは、リチウムイオンを放出および再吸収することができる材料、例えばリチウム系金属酸化物またはリン酸塩、LiCoO、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnNiCo1−2xまたはLiFePOを含む。
【0006】
多孔性プラスチックスペーサーまたはセパレーター20は、グラファイト系複合アノード層14とリチウム含有金属酸化物系複合カソード層16との間に備えられる。液体電解質材料は、多孔性プラスチックスペーサーまたはセパレーター20、複合アノード層14および複合カソード層16内に分散している。いくつかの場合、多孔性プラスチックスペーサーまたはセパレーター20はポリマー電解質材料により置き換えることができ、こうした場合、ポリマー電解質材料は両方の複合アノード層14および複合カソード層16内に存在する。ポリマー電解質材料は固体ポリマー電解質またはゲル型ポリマー電解質とすることができ、セパレーターを組み込むことができる。
【0007】
電池が完全に充電された場合、リチウムはリチウム含有金属酸化物カソード層16から電解質によってアノード層14中に移動している。グラファイト系アノード層の場合、リチウムはグラファイトと反応し、化合物、LiCを生成する。複合アノード層において電気化学的に活性な材料であるグラファイトは、372mAh/gの最大容量を有する。(「活性材料」または「電気活性材料」とは、本明細書において用いられる場合、電池の充電フェーズおよび放電フェーズそれぞれの間に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムのような金属イオンをその構造に挿入し、そこから放出することができる材料を意味する。好適には材料はリチウムを挿入および放出することができる。)
【0008】
シリコン系活性アノード材料の使用も当技術分野において知られている。シリコンはグラファイトより実質的に高い最大容量を有する。しかしながら、金属イオンの挿入および放出中に実質的に不変のままである活性グラファイトとは違い、金属イオンのシリコンへの挿入のプロセスは実質的な膨張を伴う実質的な構造変化をもたらす。例えば、リチウムイオンのシリコンへの挿入はSi−Li合金の形成をもたらす。Liイオン挿入のアノード材料に対する効果については、例えば、“Insertion Electrode Materials for Rechargeable Lithium Batteries”,Winter et al,Adv.Mater.1988,10,No.10,pages 725−763に記載されている。
【0009】
第WO2009/010758号は、リチウムイオン電池において用いられるシリコン材料を製造するためのシリコン粉末のエッチングについて開示する。得られるエッチングされた粒子はそれらの表面上にピラーを含有する。ピラー化粒子は10〜1000ミクロンの初期サイズを有する粒子をエッチングすることにより製造することができる。
【0010】
第WO2010/040985号は、5〜500ミクロンの範囲内の平均粒径を有する粒子をエッチングする方法について開示する。
【0011】
第US7402829号は、シリコン基質のエッチングによる該シリコン基質から延びる多数のシリコンピラーの形成について開示する。
【0012】
第JP2004281317号は、リチウムイオン電池アノードにおいて用いられる基質上での気相堆積によるシリコンナノワイヤーの成長について開示する。
【0013】
第US2010/0285358号は、リチウムイオン電池において用いられる基質上で成長させたシリコンナノワイヤーについて開示する。
【0014】
第US2010/0297502号は、リチウムイオン電池において用いられる炭素粒子上で成長させたシリコンナノワイヤーについて開示する。
【0015】
第US2008/0261112号は、リチウムイオン電池アノードにおいて用いられるシリコン粒子をつなぐ絡まったシリコンナノワイヤーのネットワークについて開示する。
【0016】
第WO2011/117436号は、カーボンナノファイバーの表面から延びる複数の結晶ウィスカーを含むカーボンナノファイバーについて開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1態様では、本発明は金属イオン電池の活性成分として用いられるピラー化粒子を含む粉末を提供し、該ピラー化粒子は粒子コアおよび該粒子コアから延びる複数のピラーを含み、該ピラー化粒子は出発材料粉末から形成され、該出発材料粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。
【0018】
任意で、ピラーは、使用時、金属イオン電池の金属イオンの材料への完全な挿入後少なくとも10%の体積膨張が起こる材料から形成される。
【0019】
任意で、ピラーはシリコンを含む。
【0020】
任意で、コアはシリコンまたは炭素を含む。
【0021】
任意で、ピラーの体積は複数の粒子の総体積の少なくとも20%、任意で少なくとも40%である。
【0022】
任意で、ピラー化粒子のBET値は200m/g未満、任意で100m/g未満、任意で60m/g未満、任意で35m/g未満である。
【0023】
任意で、粒子コアのアスペクト比は少なくとも2:1である。
【0024】
任意で、粒子コア上のピラーの平均ピラー密度は10〜80%の範囲内である。
【0025】
任意で、平均ピラー径は80nm未満である。
【0026】
任意で、粒子の対向表面はピラーを有する。
【0027】
任意で、ピラーの平均長さは5ミクロン未満、任意で4ミクロン未満である。
【0028】
任意で、粒子の2つの対向表面のうち1つのみがピラーを有する。
【0029】
任意で、ピラーの平均長さは10ミクロン未満、任意で8ミクロン未満である。
【0030】
任意で、粒子は実質的に互いに離れている。
【0031】
任意で、出発材料粉末の総体積の少なくとも50%は、15ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。
【0032】
任意で、出発材料粉末の総体積の少なくとも90%は、25ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。
【0033】
任意で、粒子サイズは、測定される粒子が球形であると考えられ、粒子サイズが球体積相当径で表される、レーザー回析法により測定される。
【0034】
粉末は本質的にピラー化粒子で構成されていてもよく、または1つ以上のさらなる成分を含む組成物の一部であってもよい。
【0035】
従って第2態様では、本発明は、第1態様による粉末、および少なくとも1つのさらなる成分を含む組成物を提供する。
【0036】
任意で第2態様によると、少なくとも1つのさらなる成分は少なくとも1つのさらなる活性成分、任意で活性炭素、任意でグラファイトを含む。
【0037】
任意で第2態様によると、少なくとも1つのさらなる成分は少なくとも1つの導電性、非活性成分、任意で導電性、非活性炭素を含む。
【0038】
任意で第2態様によると、少なくとも1つのさらなる成分はバインダーを含む。
【0039】
任意で第2態様によると、組成物は、少なくともピラーの体積の2倍および粒子コアの体積の1.2倍の合計により得られる値である、複合体の総体積の割合としての、複合多孔度を有する。
【0040】
任意で第2態様によると、少なくとも1つのさらなる成分は溶媒を含む。
【0041】
第3態様では、本発明は、アノード、カソードおよび該アノードとカソードとの間の電解質を備える金属イオン電池を提供し、該アノードは第1態様による粉末または第2態様による組成物を含む。
【0042】
任意で第3態様によると、金属イオン電池はリチウムイオン電池である。
【0043】
第4態様では、本発明は、第2態様による組成物を堆積させ、溶媒を蒸発させることによりアノードを形成するステップを含む、第3態様による金属イオン電池の形成方法を提供する。
【0044】
第5態様では、本発明は、出発材料粉末の粒子をエッチングし、ピラー化粒子を形成するステップを含む、第1態様による粉末の形成方法を提供する。
【0045】
任意で第5態様によると、ピラーの平均長さは5ミクロン未満である。
【0046】
第6態様では、本発明は、ピラーを出発材料粉末の粒子上で成長させるステップを含む、第1態様による粉末の形成方法を提供する。
【0047】
任意で第6態様によると、ピラーは出発材料粉末の粒子の1つの表面上のみで成長させる。
【0048】
第7態様では、本発明は、金属イオン電池の活性成分として用いられるピラー化粒子を含む粉末を提供し、該ピラー化粒子は粒子コアおよび該粒子コアから延びる複数のピラーを含み、該粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する粒子からなる。
【0049】
第7態様のピラー化粒子の粉末は、第1態様のピラー化粒子を含む粉末を参照して記載される、限定なく、ピラーおよび粒子コアの材料;ピラーの体積割合;粉末のBET値;粒子のアスペクト比;平均ピラー密度;ならびにピラー化粒子のサイズ分布を含む、任意の特徴のいずれかを有することができる。
【0050】
第7態様のピラー化粒子の粉末は、該粉末および少なくとも1つのさらなる成分の組成物の一部を形成することができる。1つ以上のさらなる成分は第2態様において記載されるものであってもよい。
【0051】
第7態様の粉末、または該粉末を含有する組成物は、第3態様のどこかに記載されるように、金属イオン電池、任意でリチウムイオン電池のアノードに備えることができる。この金属イオン電池は第4態様のどこかに記載されるように形成することができる。第7態様の粉末は本発明の第5または第6態様のどこかに記載されるように形成することができる。
【0052】
第8態様では、本発明は金属イオン電池の活性成分として用いられる粒子を提供し、該粒子は粒子コアおよび該粒子コアから延びるピラーを含み、該粒子コアのアスペクト比は少なくとも2:1である。
【0053】
第8態様の粒子は、本発明の第1態様に関して記載される任意の特徴のいずれかを、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0054】
本発明の第8態様の粒子は、出発材料粉末から形成されるピラー化粒子の粉末を形成することができ、該出発材料粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。この場合、任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも50%は15ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも90%は25ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で、粒子サイズは、測定される粒子が球形であると考えられ、粒子サイズが球体積相当径として表される、レーザー回析法により測定される。この粉末は本質的にピラー化粒子で構成されていてもよく、または1つ以上のさらなる成分を含んでいてもよい。
【0055】
第8態様の粒子は第7態様のどこかに記載されるように粉末を形成することができる。
【0056】
第8態様の粒子は、第2態様を参照して記載されるように1つ以上のさらなる成分を含む組成物の一部を形成することができる。
【0057】
金属イオン、任意でリチウムイオン電池のアノードは、第8態様の粒子を含む粉末または組成物を含むことができる。この金属イオン電池のアノードは、溶媒中の前記組成物を堆積させ、該溶媒を蒸発させることにより形成することができる。
【0058】
第8態様の粒子は、第5態様または第6態様を参照して記載されるように形成することができる。
【0059】
第9態様では、本発明は金属イオン電池の活性成分として用いられる粒子を提供し、該粒子は粒子コアおよび該粒子コアから延びるピラーを含み、該粒子の少なくとも1つの寸法は10ミクロン未満である。
【0060】
第9態様の粒子は、本発明の第1態様に関して記載される任意の特徴のいずれかを、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0061】
本発明の第9態様の粒子は、出発材料粉末から形成されるピラー化粒子の粉末を形成することができ、該出発材料粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。この場合、任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも50%は15ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも90%は25ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で、粒子サイズは、測定される粒子が球形であると考えられ、粒子サイズが球体積相当径として表される、レーザー回析法により測定される。この粉末は本質的にピラー化粒子で構成されていてもよく、または1つ以上のさらなる成分を含んでいてもよい。
【0062】
第9態様の粒子は、第7態様のどこかに記載されるように粉末を形成することができる。
【0063】
第9態様の粒子は、第2態様を参照して記載されるように1つ以上のさらなる成分を含む組成物の一部を形成することができる。
【0064】
金属イオン、任意でリチウムイオン電池のアノードは、第9態様の粒子を含む粉末または組成物を含むことができる。この金属イオン電池のアノードは、溶媒中の前記組成物を堆積させ、該溶媒を蒸発させることにより形成することができる。
【0065】
第9態様の粒子は、第5態様または第6態様を参照して記載されるように形成することができる。
【0066】
第10態様では、本発明は、金属イオン電池の活性成分として用いられる粒子コアおよび該粒子コアから延びるピラーを有する粒子を含む粉末を提供し、該粒子のBET値は200m/g未満、任意で100m/g未満、任意で60m/g未満、任意で35m/g未満である。
【0067】
第10態様の粒子は、本発明の第1態様に関して記載される任意の特徴のいずれかを、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0068】
本発明の第10態様の粒子は、出発材料粉末から形成されるピラー化粒子の粉末を形成することができ、該出発材料粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。この場合、任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも50%は15ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも90%は25ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で、粒子サイズは、測定される粒子が球形であると考えられ、粒子サイズが球体積相当径として表される、レーザー回析法により測定される。この粉末は本質的にピラー化粒子で構成されていてもよく、または1つ以上のさらなる成分を含んでいてもよい。
【0069】
第10態様の粒子は、第7態様のどこかに記載されるように粉末を形成することができる。
【0070】
任意で第10態様によると、ピラー化粒子のピラー質量分率PMFは10〜60%、好適には20〜60%の範囲内であり:
PMF=[(粒子コアから延びるピラーの総質量)/(ピラー化粒子の総質量)]×100である。
【0071】
任意で第10態様によると、BET/PMF比は3未満、任意で2未満、任意で1.5未満、任意で1未満であり、BETはm/gで表される。
【0072】
任意で第10態様によると、BET/PMF比は1.75未満である。
【0073】
任意で第10態様によると、粒子コアおよびピラーは実質的に同じ密度を有し、PVF=PMFであり:
PVF=[(粒子コアから延びるピラーの総体積)/(ピラー化粒子の総体積)]×100である。
【0074】
第10態様の粒子は、第2態様を参照して記載されるように1つ以上のさらなる成分を含む組成物の一部を形成することができる。
【0075】
金属イオン、任意でリチウムイオン電池のアノードは、第10態様の粒子を含む粉末または組成物を含むことができる。この金属イオン電池のアノードは、溶媒中の前記組成物を堆積させ、該溶媒を蒸発させることにより形成することができる。
【0076】
第10態様の粉末は、第5態様または第6態様を参照して記載されるように形成することができる。
【0077】
第11態様では、本発明は金属イオン電池の活性成分として用いられる粒子を提供し、該粒子は粒子コアおよび該粒子コアから延びるピラーを含み、該ピラーの体積は該粒子の総体積の少なくとも20%、任意で少なくとも40%である。
【0078】
第11態様の粒子は、本発明の第1態様に関して記載される任意の特徴のいずれかを、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0079】
本発明の第11態様の粒子は出発材料粉末から形成されるピラー化粒子の粉末を形成することができ、該出発材料粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。この場合、任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも50%は15ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも90%は25ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で、粒子サイズは、測定される粒子が球形であると考えられ、粒子サイズが球体積相当径として表される、レーザー回析法により測定される。この粉末は本質的にピラー化粒子で構成されていてもよく、または1つ以上のさらなる成分を含んでいてもよい。
【0080】
第11態様の粒子は、第7態様のどこかに記載されるように粉末を形成することができる。
【0081】
第11態様の粒子は、第2態様を参照して記載されるように1つ以上のさらなる成分を含む組成物の一部を形成することができる。
【0082】
金属イオン、任意でリチウムイオン電池のアノードは、第11態様の粒子を含む粉末または組成物を含むことができる。この金属イオン電池のアノードは、溶媒中の前記組成物を堆積させ、該溶媒を蒸発させることにより形成することができる。
【0083】
第11態様の粒子は、第5態様または第6態様を参照して記載されるように形成することができる。
【0084】
第12態様では、本発明は、金属イオン電池の活性成分として用いられるピラー化粒子を含む粉末を提供し:
該ピラー化粒子は粒子コアおよび該粒子コアから延びる複数のピラーを含み;
該ピラー化粒子のBET/PMF比は3未満、任意で2未満、任意で1.5未満、任意で1未満であり:
BETはm/gで表され、
PMF=[(粒子コアから延びるピラーの総質量)/(ピラー化粒子の総質量)]×100である。
【0085】
任意で第12態様によると、複数の粒子の粉末のBET値は200m/g未満、任意で100m/g未満、任意で60m/g未満、任意で35m/g未満である。
【0086】
任意で第12態様によると、ピラー質量分率PMFは10〜60%、好適には20〜60%の範囲内である。
【0087】
任意で第12態様によると、BET/PMF比は1.75未満である。
【0088】
第12態様の粉末は、本発明の第1態様に関して記載される任意の特徴のいずれかを、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0089】
本発明の第12態様の粒子は出発材料粉末から形成されるピラー化粒子の粉末を形成することができ、該出発材料粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。この場合、任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも50%は15ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも90%は25ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で、粒子サイズは、測定される粒子が球形であると考えられ、粒子サイズが球体積相当径として表される、レーザー回析法により測定される。この粉末は本質的にピラー化粒子で構成されていてもよく、または1つ以上のさらなる成分を含んでいてもよい。
【0090】
第12態様の粒子は、第7態様のどこかに記載されるように粉末を形成することができる。
【0091】
第12態様の粒子は、第2態様を参照して記載されるように1つ以上のさらなる成分を含む組成物の一部を形成することができる。
【0092】
金属イオン、任意でリチウムイオン電池のアノードは、第12態様の粒子を含む粉末または組成物を含むことができる。この金属イオン電池のアノードは、溶媒中の前記組成物を堆積させ、該溶媒を蒸発させることにより形成することができる。
【0093】
第12態様の粒子は、第5態様または第6態様を参照して記載されるように形成することができる。
【0094】
第13態様では、本発明は、粒子コアおよび該粒子コアから延びる複数のピラーを含む電気活性ピラー化粒子を含む複合電極層を提供し、該複合電極は初めて3,000mAh/gまで充電した場合150%未満、好適には125%未満で膨張し、容量は該複合電極中の電気活性材料1グラム当たりで表される。
【0095】
任意で第13態様によると、初めて2,000mAh/gまで充電後の電極厚さの膨張は60%未満、より好適には50%未満である。
【0096】
任意で第13態様によると、初めて1,500mAh/gまで充電後の電極厚さの膨張は35%未満、より好適には30%未満である。
【0097】
任意で第13態様によると、電気活性ピラー化粒子はシリコン電気活性ピラー化粒子である。
【0098】
任意で第13態様によると、複合電極はバインダー、さらなる電気活性材料および非電気活性導電性材料から選択される1つ以上の材料をさらに含む。
【0099】
任意で第13態様によると、ピラー化粒子は組成物中の唯一の電気活性材料である。
【0100】
第13態様の複合電極の粒子は、本発明の第1または第2態様に関して記載される任意の特徴のいずれかを、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0101】
本発明の第13態様の粒子は出発材料粉末から形成されるピラー化粒子の粉末を形成することができ、該出発材料粉末の総体積の少なくとも10%は10ミクロン以下の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。この場合、任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも50%は15ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で出発材料粉末の総体積の少なくとも90%は25ミクロン未満の粒子サイズを有する出発材料粒子からなる。任意で、粒子サイズは、測定される粒子が球形であると考えられ、粒子サイズが球体積相当径として表される、レーザー回析法により測定される。この粉末は本質的にピラー化粒子で構成されていてもよく、または1つ以上のさらなる成分を含んでいてもよい。
【0102】
第13態様の粒子は第7態様のどこかに記載されるように粉末を形成することができる。
【0103】
第13態様の粒子は第2態様を参照して記載されるように1つ以上のさらなる成分を含む組成物の一部を形成することができる。
【0104】
金属イオン、任意でリチウムイオン電池のアノードは、第13態様の粒子を含む粉末または組成物を含むことができる。この金属イオン電池のアノードは、溶媒中の前記組成物を堆積させ、該溶媒を蒸発させることにより形成することができる。
【0105】
第13態様の粒子は第5態様または第6態様を参照して記載されるように形成することができる。
【0106】
前述の態様のいずれかによる1つの実施形態では、コアは活性グラファイトコアであってもよい。コアは活性グラフェン、例えば本発明の第8、第9、第10、第11、第12または第13態様のいずれか1つに記載されるようにピラー化粒子のグラフェンコアであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
本発明についてここで図面を参照してより詳細に説明する。
図1】リチウムイオン電池の概略図である。
図2A】本発明のある実施形態によるピラー化粒子のピラーを概略的に示す。
図2B】本発明のある実施形態によるピラー化粒子のピラーを概略的に示す。
図2C】本発明のある実施形態によるピラー化粒子のピラーを概略的に示す。
図2D】本発明のある実施形態によるピラー化粒子のピラーを概略的に示す。
図2E】本発明のある実施形態によるピラー化粒子のピラーを概略的に示す。
図2F】本発明のある実施形態によるピラー化粒子のピラーを概略的に示す。
図2G】本発明のある実施形態によるピラー化粒子のピラーを概略的に示す。
図3A】本発明のある実施形態によるエッチングプロセスによるピラー化粒子の形成を概略的に示す。
図3B】本発明のある実施形態による成長プロセスによるピラー化粒子の形成を概略的に示す。
図4A】エッチングプロセスにより形成される本発明のある実施形態による、第1平均長さのピラーを有するピラー化粒子を概略的に示す。
図4B】エッチングプロセスにより形成される本発明のある実施形態による、第1平均長さのピラーを有するピラー化粒子を概略的に示す。
図5A】本発明のある実施形態によるピラー化粒子を概略的に示す。
図5B】本発明のある実施形態によるピラー化粒子を概略的に示す。
図5C】本発明のある実施形態によるピラー化粒子を概略的に示す。
図5D】本発明のある実施形態によるピラー化粒子を概略的に示す。
図5E】本発明のある実施形態によるピラー化粒子を概略的に示す。
図6】本発明のある実施形態による出発材料粉末のサイズ分布のグラフである。
図7】本発明のある実施形態による粉末の第1SEM画像である。
図8図7の粉末の第2SEM写真である。
図9】本発明のある実施形態によるピラー化粒子粉末のサイズ分布のグラフである。
図10】比較的小さな粒子を含有する2つのリチウムイオン電池および比較的大きな粒子を含有する1つのリチウムイオン電池の放電容量対放電サイクル数のプロットである。
図11】ピラー化粒子のピラーのSEM画像である。
図12】比較的小さなピラー化粒子を含有するリチウムイオン電池のさまざまな放電速度での電池電圧対放電容量/充電容量のプロットである。
図13】比較的大きなピラー化粒子を含有するリチウムイオン電池のさまざまな放電速度での電池電圧対放電容量/充電容量のプロットである。
図14】小さなピラー化粒子のピラーのSEM画像である。
図15】さまざまなピラー化粒子サイズを含有するリチウムイオン電池およびピラーを有さない粒子を含有する電池の充電容量対電池電極厚さ変化のプロットである。
図16A】高アスペクト比コアを有する第1ピラー化粒子のSEM画像である。
図16B】高アスペクト比コアを有する第2ピラー化粒子のSEM画像である。
図17】ピラーを有さないエッチングされたシリコンを含有する粉末のSEM画像である。
図18】エッチングされたシリコンピラー化粒子のBET対平均第1サイクル損失のプロットである。
図19】ピラー化シリコン粒子を含有する粉末のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
本発明について本明細書ではリチウムイオン電池ならびにリチウムイオンの挿入および脱離を参照して説明するが、本発明は他の金属イオン電池、例えばナトリウム、カリウムまたはマグネシウムイオン電池に適用可能であり得ることが理解されるだろう。
【0109】
ピラー化粒子構造
「ピラー化粒子」とは、本明細書において用いられる場合、粒子コアおよびそこから延びる間隔をおいた複数のピラーを含む粒子を意味する。ピラーは粒子コアから延びるワイヤー、ナノワイヤー、ロッド、カラム、フィラメント、スレッド、チューブ、コーンまたはその他の細長い構造であってもよいことも理解されるべきである。
【0110】
ピラー化粒子は、電気化学的に活性であるグラファイト、グラフェン、固体炭素、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、スズ、アルミニウム、鉛、インジウム、アンチモン、ビスマス、これらの酸化物、窒化物または水素化物、これらの混合物、これらの元素を含有する混合物または複合合金ならびにカルコゲン化物およびセラミックスのような電気活性材料を含む。活性材料の1つの例としては、リチウムイオンを挿入および放出することができるシリコンがある。リチウムイオンのシリコンまたは別の電気活性材料への挿入はリチウム化と記載することができ、リチウムの除去は脱リチウム化と記載することができる。ピラー化粒子中の複数のピラーの少なくともいくつかは電気活性材料を含む。コアおよびピラーの組成物は同じまたは異なっていてもよい。ピラーおよびコアが異なる組成物を有する場合、ピラーおよびコアの両方は電気活性材料を含むことができる。あるいはピラーのみが電気活性材料を含むことができる。ピラーのみが電気活性材料を含み、コアが非電気活性材料から形成される場合、コアは好適には電気的に導電性の材料を含む。
【0111】
活性材料は金属イオンの挿入中に膨張が起こる材料であってもよい。膨張は、活性材料および金属イオンの合金、例えばシリコンによるリチウムイオンの挿入により形成されるSi−Li合金の形成により引き起こされるアノードの構造変化のためであり得る。スズは金属イオン挿入後に膨張する活性材料の別の例である。メタレーション、例えばリチウム化後の活性材料のその最大容量までの体積は、実質的にメタレーションしていない場合のその体積より少なくとも10%大きくなり得る。少なくとも10%の膨張が起こる材料の例としてはシリコンおよびスズが挙げられる。メタレーション後の活性材料のその最大容量までの体積変化はコンピューターモデリングにより決定することができる。
【0112】
コアは単一ドープまたは非ドープ材料、例えばpドープ、nドープもしくは非ドープシリコンであってもよく、または2つ以上の材料を含んでいてもよい。例えば、コアは、異なる第2材料から形成される電気活性シェルでコーティングされた、電気活性であってもなくてもよい、第1材料をコア中心に含むことができる。例えば、コアは、シリコンシェルでコーティングされた炭素中心を含むことができる。コーティングは、コア中心の材料を部分的にまたは完全に覆うコア表面を提供することができる。コア材料が炭素である場合、コアの例としては固体炭素、グラファイトおよびグラフェンが挙げられる。
【0113】
ピラーは、コアまたはコア表面を形成する材料と同じ材料または異なる材料であってもよい。ピラーおよびコアが同じ材料である場合、ピラーはコア表面と一体化していてもよい。複数のピラーは、規則もしくは不規則、秩序もしくは無秩序配列で、またはランダムな散乱分布で、粒子コアの1つ以上の表面上に形成もしくは製造する、またはこれに付着させることができる。
【0114】
図2Aを参照して、ピラー205はコア207の表面に一端で付着し、その表面に実質的に垂直に外側に延びることができ、または図2Bに示されるように実質的に90度未満である角度θで延びることができる。好適には角度θは15〜90度、より好適には40〜90度である。
【0115】
各ピラーは、図2Cに示されるように、ピラーから分岐する1つ以上のブランチを有することができる。
【0116】
ピラーは、図2Dに示されるように、1つ以上のよじれまたは方向の変化を含むことができる。
【0117】
複数のピラーは、図2Eに示されるように、リンテル209を有することができる。このリンテルは、以下でより詳細に記載されるように、エッチングされ、ピラー化粒子を形成した出発材料のアーティファクトとして残る多孔性構造であってもよい。ピラーは固体もしくは多孔性であってもよく、または多孔性外面を有する固体コアを含んでいてもよい。ピラーの表面は滑らかまたは粗くてもよい。
【0118】
ピラーは実質的に円形である断面を有することができ、または他の実質的に規則的もしくは不規則的な形状を形成することができる。規則的な形状の断面の例としては、正方形、長方形、ひし形、星形、またはピラーの面がまっすぐな面ではなく凸面もしくは凹面を有する、こうした形状の変形が挙げられる。不規則的な断面形状としては、例えば、前述の実質的に規則的な断面形状の組み合わせから形成される形状を挙げることができる。
【0119】
ピラーの端部はコア表面から間隔をおいてもよい。
【0120】
1つ以上のピラーの端部は接合されていてもよい。この端部の接合は、毛細管現象および表面張力により隣接ピラーを互いに付着させるように、ピラーを溶液中で形成した、および/またはピラーを製造後に洗浄し、乾燥する、ピラー化粒子の形成方法のアーティファクトであってもよい。
【0121】
ピラーの幅はピラーの長さの少なくとも一部に沿って実質的に一定であってもよく、またはピラーの幅はそれらの長さに沿って異なってもよい。例えば、ピラーは、図2Fに示されるように、その底部の幅W1が底部から離れた幅W2より大きなテーパー構造であってもよい。
【0122】
ピラーは粒子上で間隔をおいている。リチウムイオン電池のアノードにおける動作において(すなわち電池の充電および/または放電中)、リチウムイオンは充電(リチウム化とも称される)中にはピラー化粒子の電気活性ピラーに挿入され、電池の放電(脱リチウム化とも称される)中には放出される。充電中にはリチウムイオンの取り込みによる電気活性ピラーの体積の顕著な膨張があり、放電中には脱リチウム化からのピラー体積の対応する収縮がある。充電中の電気活性ピラーの体積膨張は実質的に半径から横方向であり、例えば、直径は増加したが高さは比較的不変または比較的小さく変化するピラーをもたらすことが観察された。ピラーの間隔をおくことは、電気活性ピラーが互いに妨げることなく膨張および収縮することができる空間を提供し、これはそうでなければリチウムの挿入および脱離の繰り返しからのピラーの亀裂、剥離および/または崩壊を引き起こし得る、ピラーが経験する機械的応力を低減する。充電中のピラーのそれらの間の空間への半径膨張量は、ピラーに含有される電気活性材料のタイプ、ピラーに挿入される金属イオンの最大量、ピラーの多孔度、それらの形状および他の要因によって決まり得る。
【0123】
好適には、本明細書に記載されるピラー化粒子を含有する複合電極層の厚さ(いずれの基質または集電体も除く)は、初めて(すなわち予備リチウム化なく)3,000mAh/gまで充電され、容量がアノード中のシリコン1グラム当たりで表される場合、150%未満、好適には125%未満で膨張する。
【0124】
他の活性材料、例えば活性炭素が複合電極中に存在する場合、容量は活性材料1グラム当たりで表すことができる。好適には、(本質的にシリコンで構成される材料の形態で、またはその表面にシリコンを有する複合材料として)活性材料の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも50重量%はシリコン活性材料である。
【0125】
「複合電極」とは、本明細書において用いられる場合、少なくとも1つの活性材料および1つ以上のさらなる材料の組成物を意味する。1つ以上のさらなる材料は、限定なく、バインダー、さらなる活性材料、例えば活性炭素、および非活性導電性材料、例えばカーボンブラックから選択することができる。複合電極は、集電体または電解質のような、使用時に複合電極が接触し得る電池構成要素を含まない。複合電極は固体組成物である。固体複合電極の構成成分は1つ以上の溶媒中に分散させ、スラリーを形成することができ、これは表面、とくに集電体層上に堆積させることができ、その後1つ以上の溶媒の蒸発を行い、複合電極層を形成する。
【0126】
任意で、ピラー化粒子は複合電極の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも50重量%または少なくとも60重量%を構成する。
【0127】
好適には2,000mAh/gまで充電後の電極厚さの膨張は60%未満、より好適には50%未満である。
【0128】
好適には1,500mAh/gまで充電後の電極厚さの膨張は35%未満、より好適には30%未満である。
【0129】
電気化学電池における電極の厚さの変化は、電池を充電(第1サイクル)しながら、20℃の温度制御室内部に配置されたEl−Cell(登録商標)電気化学膨張計ECD−nanoで測定することができる。
【0130】
さらに、複数の間隔をおいたピラーは、電池において電解質と接触することができるピラー化粒子中の電気活性材料の表面積を増加させる。これはリチウム(または他の金属イオン)が電気活性材料に挿入することができる速度を増加させ、活性材料全体を通して金属イオンの均一な挿入密度を補助する。加えて、液体電解質を有する電池において、ピラー間に十分な空間を提供することにより、完全に膨張した場合その周りに空間が残り、電解質は押し出されることなくピラーおよびコア表面と接触したまま残ることができ、サイクル中のリチウム損失を低減することができる。例えば、ピラー間に充電中のピラーの完全膨張を収容するのに十分な空間がない場合、液体電解質は粒子表面から押し出され、ピラーまたはコアの表面とはもう接触していないだろう。この場合、放電中にすべてのリチウムを放出するのはより困難であり得、いくらかはピラーおよび/または粒子コア中に捕捉されたままとなり得る。また、金属イオンの放出の速度が粒子全体を通して異なる場合、収縮時のピーク機械的応力は増加し、電気活性材料の破壊をもたらし得る。
【0131】
1つの形態では、実質的にすべてのピラーは互いに間隔をおいている。別の形態では、ピラー化粒子は、図2Gに示されるように、少なくともいくつかのピラーのクラスターを含むことができる。ピラー化粒子はピラーのクラスターおよび間隔をおいたピラーの両方を含むことができる。ピラーおよび/またはピラーのクラスターの間の間隔は規則的または不規則的であってもよい。好適には、ピラーまたはピラークラスターとその隣接ピラーまたはピラークラスターとの間の平均距離は、ピラーまたはピラークラスターの幅の少なくとも半分である。より好適には、隣接ピラーまたはピラークラスター間の平均距離は少なくともピラーまたはピラークラスターの幅である。ピラーの幅は、実質的に円筒形のピラーの場合、ピラー直径である。
【0132】
1つの好適な形態では、ピラー化粒子のピラーの少なくともいくつかは、粒子コアの1つ以上の表面に実質的に垂直であり;非分岐であり;実質的に直線である。
【0133】
粒子コア上のピラーの平均ピラー密度は約0.1〜80%、任意で10〜80%の範囲内であってもよい。これらの範囲は、リチウム挿入に利用可能な電気活性ピラーの最大数と、ピラー化粒子の亀裂を回避する、および電解質が粒子表面から押し出されるのを回避するため空間を提供するピラー数の低減との間にバランスを提供することができる。
【0134】
被覆率は、式A/(A+B)×100%により得られる平均ピラー密度により定義することができ、式中、Aはピラーにより占められる粒子コアの表面の面積であり、Bはピラーにより占められていない同じ表面の面積である。平均ピラー密度は、粒子コアの単一の表面、いくつかの表面またはすべての表面について計算することができる。一般的には、とくに記載されない限り、本明細書において引用される平均ピラー密度はピラーにより占められる表面の面積を用いて計算され、いずれのピラーも含有しない粒子コアの個別の表面は計算に含まれないことが理解されるべきである。
【0135】
ピラー化粒子中の電気活性ピラーの適当な質量を達成するため、平均ピラー密度は少なくとも0.1%、好適には少なくとも1%、より好適には少なくとも5%、もっとも好適には少なくとも10%であってもよい。前記の理由で、平均ピラー密度が高すぎる、好適には80%以下である、より好適には60%以下である、もっとも好適には50%以下である場合、不利となり得る。
【0136】
ピラーは0.2または1ミクロンから約4ミクロンまで、任意で約2ミクロンまでの範囲内の長さを有することができる。ピラー長さは好適には10ミクロン未満である。
【0137】
ピラーの平均厚さは少なくとも10nm、任意で少なくとも20nmであってもよく、1μm未満であってもよい。平均厚さは、実質的に円形の断面を有するピラーの場合、ピラー直径であってもよい。ピラー化粒子が実質的に非円形または不規則的な断面形態を有するピラーを含む場合、平均ピラー厚さは断面形状の最小寸法に関することが理解されるだろう。
【0138】
平均ピラー厚さは、約10〜250nm、任意で約30〜150nmの範囲内であってもよい。ピラーは80nm未満の平均ピラー厚さを有していてもよい。ピラー化粒子がクラスター化ピラーを含む場合、平均ピラー厚さは、ピラークラスターの厚さではなく、個別のピラーの厚さに関することが理解されるだろう。これらの直径を有する細長い構造またはピラーは、亀裂、破壊または崩壊なく、充電および放電中の膨張および収縮に耐えるのに理想的に適している。直径が小さくなりすぎる、例えば10nm未満の場合、ピラーの高い表面積対体積比は、電池の動作中のシリコンの表面上での表面電解質界面(SEI)層の形成からの過度に高いリチウム損失に寄与し、電池の寿命を低減する。
【0139】
ピラー化粒子は、少なくとも1つの(サイズ測定においてコアおよびピラーを含むピラー化粒子の単一の方向に沿って測定される)10μm未満の第1寸法を有することができる。第1寸法に直交であってもよいピラー化粒子の別の寸法はより長くてもよいが、好適には50μm以下であり、好適には25μm以下、もっとも好適には20μm以下である。
【0140】
ピラーの長さおよび厚さを含む、ピラー化粒子の寸法は、走査電子顕微鏡法または透過電子顕微鏡法により測定することができる。平均長さおよび厚さは、ピラー化粒子材料の試料中の複数のピラーの長さおよび厚さ測定することにより得ることができる。
【0141】
複数のピラー化粒子を含む組成物または粉末は、リチウムイオン電池のアノードの形成において用いられる。複数のピラー化粒子はサイズ分布を有することができる。組成物中の実質的にすべてのピラー化粒子は、少なくとも1つの10μm以下の寸法を有することができる。あるいは、組成物は、少なくとも1つの10μm以下の寸法を有さないピラー化粒子を含むことができる。
【0142】
ピラー化粒子を形成するのに用いられる出発材料粒子の粉末の粒子サイズの分布は、測定される粒子が一般的には球形であると考えられ、粒子が、例えばMalvern Instruments Ltd.から市販のMastersizer(商標)粒径分析器を用いて球体積相当径で表される、レーザー回析法により測定することができる。球体積相当径は、測定される粒子と同じ体積を有する球の直径である。測定される粉末中のすべての粒子が同じ密度を有する場合、球体積相当径は、測定される粒子の質量と同じ質量を有する球の直径である球体積相当径に等しい。測定のため、粉末は一般的には粉末材料の屈折率とは異なる屈折率を有する媒体中に分散させる。本発明の粉末に適した分散媒は水である。異なるサイズ寸法を有する粉末について、こうした粒径分析器は球体積相当径分布曲線を提供する。
【0143】
この方法で測定される粉末中の粒子のサイズ分布は直径値Dnとして表すことができ、粉末の体積の少なくともn%はD以下の測定球体積相当径を有する粒子から形成される。
【0144】
出発材料粒子の粉末の好適なサイズ分布は以下の1つ以上を含む:
D10≦10μm
D50≦25μm、任意で≦15μm、任意で≦10μm
D90≦25μm、任意で≦15μm
D10≧0.5μm、任意で≧1μm。
【0145】
ピラー化粒子が、例えば以下の図3Aを参照して記載されるように、出発材料粒子をエッチングすることにより、またはピラーを出発材料粒子から成長させることにより形成される場合、得られるピラー化粒子の粒子コアは出発材料粒子より小さくなることが理解されるだろう。
【0146】
ピラー化粒子が、例えば図3Bを参照して記載されるように、ピラーを出発材料粒子の表面上に成長および付着させることにより形成される場合、得られるピラー化粒子の粒子コアは出発材料粒子と実質的に同じサイズとなることが理解されるだろう。
【0147】
従って、出発材料粒子が≦10μmのD10値を有する場合、この出発材料粉末を用いて形成される生成物粉末中のピラー化粒子の粒子コアも、ピラー化粒子が出発材料粉末の粒子のエッチングにより、または出発材料粉末の粒子へのピラーの成長もしくは付着により形成されるかにかかわらず、≦10μmのD10値を有さなければならないことが理解されるだろう。
【0148】
生成物の最大可能サイズ分布を決定するのに出発材料のサイズ分布を用いる代わりに、ピラー化粒子のDnサイズ分布値を直接測定することができる。ピラー化粒子のDn値は、剛性ピラー、例えば出発材料のシリコンをエッチングすることにより形成されるピラーを有するピラー化粒子の場合、コアおよびピラーを含む表面を有する球の直径に関し得、または柔軟性ピラーを有するピラー化粒子の場合、コアのみを含む表面を有する球の直径に実質的に関し得る。ピラー化粒子生成物の好適なサイズ分布は出発材料について上述したとおりである。
【0149】
デジタル画像処理を有する光学顕微鏡またはSEMを用いてピラー化粒子の粉末または出発材料粒子の粉末中の粒子の形状および寸法を測定するための測定システムの例としては、同様にMalvern Instruments Ltd.から市販のMorphologi(商標)がある。この技術では、各粒子の領域の2D投影が撮像され、粒子寸法および形状を測定および分類することができる。
【0150】
少なくとも1つの10μm未満の寸法を有するピラー化粒子は、本明細書に記載される理由で、より容易に分散させ、高容量アノードの複合層に組み込むことができる。加えて、粒子コアが動作中に大きな体積膨張および収縮が起こる電気活性材料を含む場合、より小さなコアサイズは、より大きなピラー化粒子が用いられる場合起こり得るコアの亀裂または破壊なく、粒子コアがより多くのリチウム(または他の金属イオン)を挿入および放出することを可能にすることができる。活性材料としてこれらのピラー化粒子を用いる電池は、より大きな単位質量当たり、または単位体積当たりのピラー化粒子を含む電池より高容量まで、安定性のわずかな損失でまたはその損失なく、充電することができる。
【0151】
少なくとも1つの10μm未満の寸法を有するピラー化粒子または粒子コアのD10値が10μm未満であるピラー化粒子の粉末は、少なくとも1つの10μm未満の寸法を有さないピラー化粒子から形成されるアノードより薄いアノード層の形成も可能にすることができる。
【0152】
本発明者らは、このサイズのピラー化粒子を用い、均一な厚さおよび均質に分散した成分を有する薄い複合アノードコーティング、例えば60μm未満の平均厚さを有するコーティングを調製することはより容易であることを見出した。薄いアノードコーティング(または層)は、一般的にはシリコンのような電気活性材料を含むアノードよりかなり低い体積充電容量を有する電池においてカソードとのバランスをとるのに必要であり得る。その厚さは、ミクロトームを用いて生成されるアノードコーティングの断面を観察することにより測定することができる。アノードコーティング中の成分の密度および質量比がコーティング多孔度とともに知られている場合、平均厚さも、単位面積当たりのアノードコーティングの質量を測定することにより計算することができる。
【0153】
ピラーが、以下でより詳細に記載されるように、出発材料上でのナノワイヤーの成長により形成される場合、ナノワイヤーコアおよびピラーは上述した寸法を有することができるが、ナノワイヤーピラーはコアの平均サイズの10倍以下の平均長さを有することができる。
【0154】
ピラー化粒子の単位質量当たりの表面積は、BETおよびレーザー回析法を含むさまざまな技術により測定することができる。BET(ブルナウアー、エメットおよびテラー)法を用いて測定される比表面積は200m/g未満であってもよい。好適には100m/g未満であり、より好適には60m/gより未満または50m/g未満であり、もっとも好適には35m/g未満である。BET法を用いて測定される比表面積は0.1m/gより大きくてもよく、好適には1m/gより大きく、より好適には5m/gより大きい。より高い比表面積は、金属イオンの活性材料との相互作用を促進し、活性材料全体を通して金属イオンの均一な挿入密度を補助し、より速い充電/放電速度を可能にする。しかしながら、比表面積が大きすぎる場合、単位質量当たりの充電容量および/またはサイクル寿命は、活性材料の表面上での酸化物および/またはSEI層の過剰形成によって低減され得る。比表面積は、例えば、ピラーのサイズおよび密度、ピラーの多孔度または表面粗さならびに粒子コアのサイズによって決まり得る。
【0155】
好適には複合体を形成するのに用いられる粉末中の複数のピラー化粒子は、実質的に互いに離れている。「離れたピラー化粒子」とは、本明細書に記載される場合、別のピラー化粒子に接合または結合されていないピラー化粒子を意味する。複数のピラー化粒子を含む複合アノードにおいて、好適には充電/放電中、各ピラー化粒子の電気活性材料の膨張および収縮からの相対運動は、他の近くのピラー化粒子の膨張および収縮からの運動から実質的に独立している。好適には、異なるピラー化粒子のピラーは実質的にもつれ、または絡まっていない。上述した好適な寸法を有するピラーを有するピラー化粒子は、それらの短い長さのため、およびピラーがそれらの短い長さの結果として比較的非柔軟性であるため、もつれを回避することができる。実質的に互いに離れたままであり、および/または充電/放電中に実質的に互いに独立した相対運動を経験するピラー化粒子を含有する組成物の使用は、活性材料の単一のブロックまたは相互接続した集合体から形成されるアノードの膨張からもたらされる「リフト」または「ヒーブ」の現象を低減または削減することができる。さらに、アノードにおける離れた粒子の使用は、ピラー化粒子と電解質との間の良好な接触を提供することができる。電解質にとって絡まった集合体中の活性ピラーの表面を湿潤することはより困難であり得る。ピラー化粒子が実質的に離れていない、または絡まった粒子の凝集のため絡まった場合、活性粒子を電極スラリーまたは複合体内で均一に分散することもより困難であり得る。粉末または組成物の離れたピラー化粒子は、互いにおよび/または他の成分、例えばバインダーもしくは電解質と物理的に接触し得る離れたピラー化粒子を含有することができ、離れたピラー化粒子はバインダーまたは他のマトリックス材料により定義されるマトリックス内に含有することができることが理解されるだろう。ピラー化粒子は、コーティングまたは複合体の形成後、互いに接合させることができ、例えば、ピラー化粒子の層の焼結を行い、自己支持型焼結複合体を提供することができる。
【0156】
ピラー質量分率およびピラー体積分率
ピラー化粒子のピラー質量分率(PMF)は以下の式により得られる:
PMF=[(粒子コアに付着し、そこから延びるピラーの質量)/(ピラー化粒子の総質量)]×100%。
【0157】
従って、シリコン活性ピラー化粒子材料の場合、PMFは粒子全体の質量で割ったシリコンピラーの質量であることが理解されるだろう。
【0158】
PMFはさまざまな方法により決定することができる。ピラーを粒子コア上で成長させる、その上に堆積させる、またはそれに付着させる場合、PMFは、成長または付着前の複数の粒子コアの質量および成長または付着後のピラー化粒子の質量を測定し、上記式においてピラーの質量を計算するため一方を他方から引くことにより、計算することができる。
【0159】
ピラー化粒子が、シリコン粒子をエッチングし、粒子コアの表面上にシリコンピラーを形成することにより製造される場合、PMFは酸化法により決定することができる。これは、まず多数のピラー化粒子の質量を測定し、例えばピラー化粒子を酸素含有雰囲気中で加熱することによる、例えば空気中で1040℃まで加熱することによる酸化中、多数のピラー化粒子の質量の時間に伴う変化を測定するステップを含む。ピラーはまず完全に酸化され、(質量増加の速度の比較的速い増加として示される)比較的速い速度で酸化する。ピラーの酸化は、質量増加の速度が低減し、時間と線形となったことが観察される場合、完了したと考えられる。この時間から、質量増加の速度はシリコンの粒子コアへの安定な酸化のみによる。この点までの観察された質量の増加はほぼピラーの酸化のためであり、シリコンと酸化シリコンとの間の密度の差を用い、酸化前のピラーの質量、およびよってPMFを決定することができる。幅広いサイズ分布を有する粉末試料について、より小さなピラー化粒子の粒子コアはさらに酸化することができ、コア酸化を考慮するため補正因子を適用する必要がある場合もあり得る。補正因子は、ピラーが存在しない、または除去された粒子コアを含む試料の測定を行うことにより推定することができる。この方法はシリコンピラーを有するピラー化粒子にとくに適している。
【0160】
PMFはまた、多数のピラー化粒子の質量を測定し、例えば機械的撹拌(例えば超音波処理)、擦過または化学エッチングによりピラーを粒子コアから外し、剥離されたピラーを粒子コアから離し、多数の粒子コアの質量および/または剥離されたピラーの質量を測定することにより決定することができる。この方法は、いずれの材料のピラー化粒子にも適用することができるため、好ましい。
【0161】
PMFは、例えば、ピラーの平均長さ、それらの多孔度およびピラーによる粒子コアの被覆率(ピラー密度)により影響され得る。
【0162】
PMFは好適には5%以上、より好適には少なくとも10%、もっとも好適には少なくとも20%である。PMFは好適には95%以下、より好適には80%以下である。もっとも好適にはPMFは20〜60%、とくに25〜50%である。より高いPMF値は、高容量活性ピラーが電極の活性質量により大きく寄与し、より高い単位質量当たりの全体容量を得ることができることを意味する。しかしながら、PMF値が高すぎる場合、ピラー化粒子の製造コストが増加し得るため電極材料のコスト対性能比は非競争的となり、ピラーは密集しすぎ得、および/またはコア接続に対するピラーの機械的/電気的完全性は弱くなり得る。
【0163】
粒子コアの材料がピラーを形成する材料の密度とは顕著に異なる密度を有する場合、ピラー体積分率(PVF)はPMFの代わりに測定することができるが、PVFはコアおよびピラー密度が実質的に同じである場合(PVF値がPMF値と実質的に同じとなる場合)ならびにコアおよびピラー密度が顕著に異なる場合に適用可能であることが理解されるだろう。PVFは以下の式により得られる:
PVF=[(粒子コアから延びるピラーの総体積)/(ピラー化粒子の総体積)]×100%。
【0164】
PMFを測定するのに用いられるものと同様の方法を用い、PVFを測定することができる。また、PVFは、コア材料およびピラー材料の密度の比を用いるPMF測定から誘導することができる。ピラーおよびピラー化粒子の体積は、開気孔の体積を含まない体積である。コアまたはピラーの容積内に完全に含まれる閉気孔またはボイドは体積に含まれる。従って、ピラーまたはコアが多孔性である場合、多孔度を測定する必要があり得る。多孔度を測定するのに用いることができる技術の例としては、水銀多孔度測定法およびバレット−ジョイナー−ハレンダ(BJH)分析が挙げられる。
【0165】
ピラーおよびピラー化粒子の体積は、上述したように、MasterSizerシステムまたは他の同様のレーザー回析装置を用いて測定することができる。例となるプロセスでは、ピラー化粒子の体積が測定され;ピラーがピラー化粒子から超音波処理のような機械的プロセスにより剥離され;ピラーの体積が測定される。多孔性ピラーまたはコアの場合、多孔度が決定され、測定体積が調節される。例えば、多孔度が5%である場合、測定体積を0.95倍に調節し、固体体積を得る。体積は、上述したように、Morphologiのような2Dデジタル撮像システムを用いて測定することもできるが、それらは一般的には0.5μm未満の寸法を有する粒子を解像することはできない。
【0166】
PVFは、例えば、ピラーの平均長さ、ピラーによる粒子コアの被覆率(ピラー密度)ならびに粒子コアおよびピラー材料の密度により影響され得る。PVFは好適には5%以上、より好適には少なくとも10%、もっとも好適には少なくとも20%である。PVFは好適には95%以下、より好適には80%以下である。もっとも好適にはPVFは20〜60%、とくに25〜50%である。より高いPVF値は、高容量活性ピラーが電極の活性質量により大きく寄与し、より高い単位体積当たりの全体容量を得ることができることを意味する。しかしながら、PVF値が高すぎる場合、ピラー化粒子の製造コストが増加し得るため電極材料のコスト対性能比は非競争的となり、ピラーは密集しすぎ得、および/またはコア接続に対するピラーの機械的/電気的完全性は弱くなり得る。
【0167】
好適には、ピラー化粒子の粉末のBET/PMF比は3未満、2未満、1.5未満または1未満であり、BETはm/g単位のピラー化粒子の比表面積であり、PMFは上記式と同様に割合として表される。
【0168】
好適には、BET/PMF比は0.1より大きい。
【0169】
BET/PMF比はピラー化粒子粉末中のピラー化粒子の平均値であることが理解されるだろう。
【0170】
PMFの増加はBETを増加させ得るが、PMFとBETとの間の関係は線形ではない(例えばピラーおよびコアの表面粗さまたは多孔度により影響され得る)。本発明者らは、上述したように、上記BET/PMF比は、PMFおよびBETの1つが高すぎ、または低すぎ、低すぎるまたは高すぎるPMFまたはBET値の不利点をもたらす材料を除外することができることを見出した。
【0171】
ピラー化粒子の比充電容量
ピラー化粒子は好適には、ピラー化粒子質量1グラム当たり少なくとも500mAhの比可逆充電容量を有する。可逆充電容量は、完全充電サイクル後の電池のアノードにおけるピラー化粒子の放電によりもたらされる充電である。より好適には、ピラー化粒子は少なくとも800mAh/g、もっとも好適には少なくとも1,000Ah/g、とくに少なくとも1,800mAh/gの可逆充電容量を有する。好適にはこれらの可逆充電容量は少なくとも50回の充電/放電サイクル、より好適には少なくとも100回の充電/放電サイクル、もっとも好適には少なくとも200回の充電/放電サイクル、とくに少なくとも300回の充電/放電サイクルの間維持される。
【0172】
粒子コアの出発材料
粒子コアの出発材料は好適には粒状形態、例えば粉末であり、出発材料の粒子はいずれの形状を有していてもよい。例えば、出発材料粒子は、直方体、直方体形、実質的に球形もしくは回転楕円体または薄片状の形状であってもよい。粒子表面は滑らか、粗くまたは角ばっていてもよく、粒子は多面的であってもよく、または単一の連続曲面を有していてもよい。粒子は多孔性または非多孔性であってもよい。
【0173】
直方体、多面的、薄片状、実質的に球形または回転楕円体の出発材料は、前駆体材料、例えば後述するようなドープまたは非ドープシリコンを研削し、次に研削された前駆体材料をふるいにかける、または分類することにより得ることができる。研削方法の例としては、動力研削、ジェット粉砕またはボール粉砕が挙げられる。前駆体材料のサイズ、形状および形態に応じて、異なる粉砕プロセスは、異なるサイズ、形状および表面平滑性の粒子を製造することができる。薄片状粒子は前駆体材料のフラットシートを粉砕/研削することにより製造することもできる。出発材料はあるいは、膜または粒子層を基質上に堆積させ、該膜または粒子層を該基質から除去し、必要に応じてより小さな粒子に研削することにより、各種堆積、熱プラズマまたはレーザーアブレーション法により製造することもできる。
【0174】
出発材料粒子の試料または粉末は、上述したようにD90、D50および/またはD10値を有することができる。
【0175】
ピラー化粒子が少なくとも1つの10ミクロン未満の寸法を有する粒状出発材料をエッチングすることにより形成される場合、製造されるピラー化粒子の少なくとも1つの寸法は同様に10ミクロン以下となることが理解されるだろう。エッチングの程度およびタイプに応じて、ピラー化粒子の1つ以上の寸法は、出発材料の対応する寸法未満であり得る。ピラー化粒子がエッチングにより形成される場合、出発材料は上述したような電気活性材料を含む。好適には、これは金属イオン電池の金属イオンの材料による完全挿入後少なくとも10%の体積膨張が起こる電気活性材料を含む。
【0176】
出発材料は実質的に同じサイズの粒子を含むことができる。あるいは、出発材料は粒子サイズの分布を有することができる。いずれの場合も、ふるいおよび/または分類器を用い、所望のサイズ限界外の最大または最小サイズを有する出発材料のいくつかまたはすべてを除去することができる。
【0177】
ピラー化粒子がシリコンを含む材料をエッチングすることにより形成される場合、出発材料はp型もしくはn型非ドープシリコンもしくはドープシリコン、または混合物、例えばゲルマニウム、リン、アルミニウム、銀、ホウ素および/または亜鉛をドープしたシリコンであってもよい。非ドープシリコンと比較してエッチングプロセス中シリコンの導電性を向上させるので、シリコンはいくつかのドーピングを有することが好ましい。出発材料は任意で1019〜1020キャリア/ccを有するpドープシリコンである。
【0178】
ピラー化粒子を形成するのに用いられるシリコン粒子は、90.00質量%以上、例えば95.0質量%〜99.99質量%、任意で98質量%〜99.98質量%のシリコン純度を有することができる。
【0179】
出発材料は、粒子に形成された半導体産業において用いられる比較的高純度のシリコンウエハであってもよい。あるいは、粒子は、市販され、少なくとも98%のシリコン純度を有することができる、比較的低純度の冶金グレードシリコンであってもよく;冶金グレードシリコンは、(半導体産業において用いられるシリコンウエハと比較して)比較的低いコストおよび比較的高い欠陥密度のため、とくに適切である。これは、ピラー粒子または繊維が再充電可能な電池においてアノード材料として用いられる場合有利である、低い抵抗率およびよって高い導電性をもたらす。冶金グレードシリコン中に存在する不純物としては、鉄、アルミニウム、ニッケル、ホウ素、カルシウム、銅、チタン、バナジウム、酸素、炭素、マンガンおよびリンを挙げることができる。Al、C、Cu、PおよびBのような特定の不純物は、ドーピング元素を備えることにより出発材料の導電性をさらに向上させることができる。こうしたシリコンは上記のように粉砕およびグレード付けすることができる。こうしたシリコンの例としてはノルウェイのElkemからの「Silgrain(商標)」があり、これは粉砕し、(必要に応じて)ふるいにかけ、直方体形および/または回転楕円体形であってもよいシリコン粒子を製造することができる。
【0180】
エッチングに用いられる粒子は、必要なピラー高さ以上の結晶子サイズを有する結晶、例えば単結晶または多結晶であってもよい。多結晶粒子はいずれかの数、例えば2つ以上の結晶を含むことができる。
【0181】
ピラー化粒子が後述するような成長技術により製造される場合、出発材料は上述したような電気活性材料を含むことができる。この場合、出発材料は金属または炭素系粒子を含むこともできる。炭素系出発材料はソフトカーボン、固体炭素、天然および合成グラファイト、酸化グラファイト、フッ化グラファイト、フッ素層間グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、炭素繊維ならびにマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)を含むことができる。
【0182】
グラフェン系出発材料は、複数のグラフェンナノシート(GNS)および/または酸化グラフェンナノシート(ox−GNS)またはナノグラフェンプレートレット(NGP)からなる粒子を含むことができる。グラフェン粒子の製造方法としては、剥離技術(物理的、化学的または機械的)、MWCNTまたはCNTのアンジッピング、CVDによるエピタキシャル成長および糖の還元が挙げられる。ピラー化粒子のコアの出発材料として用いられるグラフェン系粒子は、好適にはグラフェン粒子1グラム当たり少なくとも400mAh、より好適には少なくとも500mAh/g、もっとも好適には少なくとも800mAh/g、とくに少なくとも1,000mAh/gの(第1完全充電サイクル時の)初期可逆充電容量を有する。
【0183】
ピラー化粒子形成方法
図3Aは、出発材料をエッチングし、ピラー化粒子を形成し、出発材料301を出発材料の表面での選択的エッチングのためエッチング剤に曝露し、コア305およびピラー307を有するピラー化粒子303を製造する、第1のピラー化粒子形成方法を示す。
【0184】
この方法により形成されるピラー化粒子の粒子コアの体積は出発材料の体積より小さく、コアの表面はピラーと一体化していることが理解されるだろう。ピラー化粒子のサイズは出発材料のサイズと同じまたはこれより小さくてもよい。
【0185】
その表面にシリコンを有する材料をエッチングするための適切なプロセスは、シリコンの表面上に無電解堆積する銀イオンの供給源であるフッ化水素および例えば硝酸イオンの供給源である酸化剤での出発材料の処理を含む、金属補助化学エッチング(別名ガルバニック交換エッチングまたはガルバニックエッチング)である。適切なエッチングプロセスのさらなる詳細については、例えば、Huang et al.,Adv.Mater.23,pp285−308(2011)において見ることができる。
【0186】
エッチングプロセスは、銀ナノクラスターが出発材料のシリコン表面上に形成される核生成ステップおよびエッチングステップを含む、2つのステップを含むことができる。還元することができるイオンの存在はエッチングステップに必要である。この目的に適したカチオンの例としては、銀、鉄(III)、アルカリ金属およびアンモニウムの硝酸塩が挙げられる。ピラーの形成は、銀ナノクラスターの下にある領域において選択的に行われるエッチングの結果としてであると考えられる。シリコンの金属補助エッチングは(例えばC.Chartier et al.,Electrochimica Acta 2008,53,p5509に記載されるように)多孔性壁を有するピラーを製造することができ、多孔度のレベルはドーパントレベルおよびエッチング溶液中の成分の比率によって決まることも知られる。
【0187】
核生成およびエッチングステップは単一の溶液中で行ってもよく、または2つの別々の溶液中で行ってもよい。
【0188】
銀は再利用のため反応混合物から回収することができる。
【0189】
ピラー化粒子の形成に適したエッチングプロセスの例は、第WO2009/010758号および第WO2010/040985号において開示されている。
【0190】
用いることができる他のエッチングプロセスとしては、任意でピラー配列を定義するリソグラフィーを用いる、反応性イオンエッチング、および他の化学または電気化学エッチング法が挙げられる。
【0191】
ピラー化粒子がそのコア中心に第2材料から形成されるシェルを有する第1材料、例えば上述したようにシリコンをコーティングした炭素を含む場合、この粒子は、複合炭素/シリコンコアを有するピラー化粒子を形成するため、シリコンをコーティングした炭素のシリコンシェルの厚さ未満の深さまでのエッチングにより形成することができる。
【0192】
ピラーは、ピラーのコア上での成長、接着もしくは融着またはピラーのコアからの成長のような方法を用い、粒子コア上に形成またはこれに付着することもできる。図3Bは、ピラー307、例えばナノワイヤーをシリコンまたは炭素(例えばグラファイトまたはグラフェン)出発材料のような出発材料301上で成長させる、またはこれに付着させる、第2のピラー化粒子形成方法を示す。得られるピラー化粒子303の粒子コア305の体積は、出発材料301の体積と実質的に同じであってもよい。換言すると、出発材料の表面は、そこからピラー307が延びる、粒子コア305の表面であってもい。
【0193】
ピラーを成長させるための方法の例としては、化学気相堆積(CVD)および流動床反応器を用いる気体−液体−固体(VLS)法が挙げられる。VLS法は、ワイヤーを成長させる出発材料表面上に液体合金液滴を形成するステップ、および次の液体中に拡散するピラーを形成する物質の気体形態での導入ステップを含む。液体/固体界面での過飽和および核生成は軸方向結晶成長をもたらす。液体合金液滴を形成するのに用いられる触媒材料としては、例えば、Au、NiまたはSnを挙げることができる。
【0194】
ナノワイヤーは出発材料の1つ以上の表面上で成長させることができる。
【0195】
ピラーは、熱プラズマまたはレーザーアブレーション法を用い、出発材料の表面上に製造することもできる。
【0196】
ピラーは、固体−液体−固体成長法のような方法を用い、出発材料からのナノワイヤー成長により形成することもできる。1つの例では、シリコンまたはシリコン系出発材料粒子を触媒粒子(例えばNi)でコーティングし、加熱し、別の元素を含有する気体を導入しながら、液体合金液滴を表面上に形成する。気体は出発材料を含有する生成物および気体からの他の元素の縮合を誘導し、出発材料からのナノワイヤーの成長をもたらす。プロセスは、出発材料のすべてがナノワイヤー中に含まれ、ピラー化粒子を生成する前に停止させる。この方法では、ピラー化粒子のコアは出発材料より小さくなる。
【0197】
出発材料上でまたはこれから成長させるシリコンピラーは、非ドープシリコンとして成長させることができ、またはナノワイヤー成長中もしくは成長後処理ステップ中にドーパントを導入することによりドープすることができる。
【0198】
粒子コア
図3および4に示される粒子コアは実質的に球形であるが、粒子コアは、実質的に球形、回転楕円体形(偏平および偏長)、および不規則的または規則的な多面形状(実質的に立方体および立方体形状を含む)を含む、いずれの形状を有することもできる。そこからピラーが延びる粒子コア表面は、滑らか、粗くもしくは角ばっていてもよく、多面的であってもよく、または単一の連続曲面を有していてもよい。粒子コアは多孔性または非多孔性であってもよい。立方体形コアは、コアが2つの主な表面のみを有するように、その長さまたは幅より実質的に小さな厚さを有する、薄片の形態であってもよい。
【0199】
長さL、幅Wおよび厚さTの寸法を有するピラー化粒子コアのアスペクト比は、コアの長さL対厚さT(L:T)または幅W対厚さT(W:T)の比であり、厚さTは粒子コアの3つの寸法のうち最も小さいと考えられる。アスペクト比は完全に球形のコアの場合1:1である。偏長もしくは偏平回転楕円体、立方体形または不規則形状コアは、好適には少なくとも1.2:1、より好適には少なくとも1.5:1およびもっとも好適には少なくとも2:1のアスペクト比を有する。薄片状コアは少なくとも3:1のアスペクト比を有することができる。
【0200】
実質的に球形のコアの場合、ピラーはコアの1つまたは両方の半球上に備えることができる。多面的コアの場合、ピラーはコアの(すべてを含む)1つ以上の表面上に備えることができる。例えば、薄片コアの場合、ピラーは薄片の主な表面の1つのみまたは両方の主な表面上に備えることができる。
【0201】
コア材料は、比較的高い導電性の材料、例えばピラーより高い導電性を有する材料となるように選択することができ、コア材料の少なくとも1つの表面はピラーで覆われないままであってもよい。導電性コア材料の少なくとも1つの露出表面は、すべての表面がピラーで覆われている粒子と比較して、ピラー化粒子を含む複合アノード層のより高い導電性を提供することができる。
【0202】
図5Aは、コア505が比較的高い導電性の材料、例えばグラファイト粒子、グラフェンシートまたは2つ以上のグラフェンシートを含むグラフェン粒子から形成され、シリコンナノワイヤー507をコアの1つの表面上で成長させた実施形態を示す。あるいは、コアはドープシリコン材料を含むことができる。アスペクト比、すなわち長さL対厚さTの比は、この例では3:1より大きい。
【0203】
図5Bは、ピラーがグラフェンコアまたはシリコン薄片のようなコアの対向表面上に備えられた実施形態を示す。
【0204】
図5Cは、コアが偏平回転楕円体である実施形態を示す。
【0205】
図5Dは、コアが多面的であり、不規則形状を有する実施形態を示す。ピラーはいくつかの面上のみに備えられる。
【0206】
図5Eは、ピラーが柔軟性である実施形態を示す。ピラーの柔軟性は、ピラー長さ、ピラー直径、ピラー材料およびピラーが製造される方法の1つ以上によって決まり得る。図5Eの実施形態では、コアは不規則形状を有する多面的コアであるが、柔軟性ピラーを有するコアは本明細書に記載されるいずれの粒子コア形状を有することもできることが理解されるだろう。
【0207】
より高アスペクト比を有する粒子コアは、複合電極層および/または集電体におけるピラー化粒子の他の元素との結合の数を増加させ、これにより電極導電性を向上させることができる。この導電性は、コアの1つ以上の表面または1つの表面の一部がその上にピラーを有さない場合、さらに向上させることができる。
【0208】
高アスペクト比を有する粒子コアは、少なくとも1つの10ミクロン未満である寸法を有するピラー化粒子を提供しながら、より高いPMFまたはPVF値を得ることを可能にすることができる。
【0209】
ピラー化粒子がシリコン出発材料をエッチングすることにより製造される場合、より高アスペクト比のコアは、回転楕円体形出発材料での収率と比較して、出発材料の質量に対する製造されたピラー化粒子の質量の比に関して、ピラー化粒子の製造収率を増加させることができる。エッチングプロセスが用いられる場合、収率の増加はPMFまたはPVF値の減少に関するが、このピラー化粒子の最大リチウム化容量の潜在的な低減は、粒子コアが粉砕なくより高度までリチウム化することができるように十分に薄く製造される場合オフセットすることができる。
【0210】
好適には、粒子コアは少なくとも0.2μm、より好適には少なくとも0.5μmの最小寸法を有する。
【0211】
粒子コアが電気活性材料を含む、例えばコアがシリコンを含む場合、コアは好適には少なくとも1つの6μm未満、より好適には5μm未満、もっとも好適には4μm未満、とくに3μm未満の寸法を有する。
【0212】
より小さなコア寸法は、コアの亀裂のリスクなく、コアにおける活性材料のより高いリチウム化を可能にし、ピラー化粒子の潜在的な容量を増加させる。金属イオンの拡散長さを低減させながら、高容量アノードの達成可能な充電速度を増加させることもできる。
【0213】
ピラー化粒子は低い抵抗率を有することが好ましい―これはそれらを含有する複合体の導電性を増加させ、金属イオン電池のサイクル性能および充電速度を向上させる。シリコンのようないくつかの高容量電気活性材料は、グラファイトのようなより低容量の電気活性材料または銅のような非活性金属材料と比較して比較的高い抵抗率を有するが、良好な電極設計について、中範囲の抵抗率値を有するピラー化粒子を用いることができる。好適にはピラー化粒子は1000Ωcm以下、より好適には100Ωcm以下、もっとも好適には10Ωcm以下、とくに1Ωcm以下の抵抗率を有する。ピラー化粒子は少なくとも1×10−5Ωcm、例えば少なくとも1×10−4Ωcmまたは少なくとも5×10−4Ωcmの抵抗率を有することができる。
【0214】
ピラーは、好適には100Ωcm以下、より好適には10Ωcm以下、とくに1Ωcm以下の抵抗率を有する。ピラーは少なくとも1×10−4Ωcm、例えば少なくとも1×10−3Ωcmまたは少なくとも1×10−2Ωcmの抵抗率を有することができる。
【0215】
粒子コアが電気活性材料を含む場合、好適には100Ωcm以下、より好適には10Ωcm以下、とくに1Ωcm以下の抵抗率を有する。電気活性材料を含む粒子コアは、少なくとも1×10−4Ωcm、例えば少なくとも1×10−3Ωcmまたは少なくとも1×10−2Ωcmの抵抗率を有することができる。
【0216】
粒子コアが電気活性材料を含まない場合、好適には10Ωcm以下、より好適には1Ωcm以下、もっとも好適には0.1Ωcm以下、とくに0.01Ωcm以下の抵抗率を有する。粒子コアが電気活性でない場合、5×10−3Ωcm未満の抵抗率を有することがとくに好ましい。
【0217】
ピラー長さ
図4Aおよび4Bは、ピラー化粒子を製造する出発材料のエッチングを示す。この例では、出発材料401およびピラー化粒子コア405の両方は表示しやすさのため実質的に球形であるが、出発材料およびピラー化粒子コアの両方はいずれの形状を有することもできることが理解されるだろう。
【0218】
図4Aでは、出発材料をエッチングし、長さL1のピラー407を製造する。図4Bでは、出発材料401をエッチングし、長さL2のより短いピラー407を製造する。図4Aのより長いピラーはより高いPMFを有するピラー化粒子をもたらし、図4Bのより短いピラーより高いリチウムを挿入する活性材料の単位質量当たりの容量を提供することができる。図4Aのより長いピラーはより大きな比表面積を有するピラー化粒子も提供し、電解質の活性材料の表面との接触を促進する。しかしながら、エッチングプロセスでは、製造されたピラー化粒子の質量の出発材料の質量に対する比に関する収率はピラー長さが増加するにつれ低減し、電極材料の製造コストを増加させ得る。加えて、図4Aにおけるピラー化粒子のより高い比表面積は電極において形成されるSEI層の量を増加させ得、達成することができる充電/放電サイクルの潜在的な回数を低減し得る。
【0219】
すべての寸法が10ミクロン未満であるピラー化粒子を提供することはピラーの最大長さを限定し得るが、複合体内のピラー化粒子の均一な厚さおよび均一な分布を有する複合電極層を形成すること、および複合体の適切な密度を達成することはより容易である。
【0220】
加えて、シリコン材料の充電容量はグラファイト材料よりかなり大きいので、電池が活性材料の顕著な割合がピラー化粒子である(例えば活性材料の少なくとも20wt%がピラー化粒子である)複合アノード層を含む場合、電池におけるアノードのカソードに対する容量のバランスをとることは、アノード層を薄く、例えば30μm厚未満に製造しなければならないことを意味し得る。これに関して、少なくとも1つの10μm未満の寸法を有するピラー化粒子を用いることは、こうした薄い層を最小限の厚さのばらつきで製造することをより容易にする。
【0221】
さらに、粒子コアが電気活性材料を含む場合、より高い体積分率の小さなピラー化粒子のより小さなコアを安定してリチウム化および脱リチウム化する能力は、より短いピラーからの容量のいずれの低減も少なくとも部分的にオフセットすることができる。
【0222】
平均ピラー長さは好適には5ミクロン未満であり、0.5〜5ミクロンの範囲内であってもよい。しかしながら、ピラーがピラー化粒子の2つの対向表面の1つの上のみに備えられる場合、平均長さはより長く、任意で8ミクロン未満であってもよい。
【0223】
用途
本明細書に記載されるピラー化粒子は、図1を参照して記載されるような構造を有する、金属イオン電池、好適にはリチウムイオン電池の電極、好適にはアノードまたは負極の、活性成分として用いることができる。
【0224】
ピラー化粒子のピラーを剥離し、同様にリチウムイオン電池のアノードの成分として用いることができる繊維を形成することができる。シリコン繊維は、擦過、(とくに超音波振動による)撹拌または化学エッチングの1つ以上によりピラーをピラー化粒子から剥離することにより製造することができる。
【0225】
本質的にピラー化粒子で構成される粉末は、例えば前述のプロセスのいずれかにより提供することができる。この粉末を他の材料と混合し、金属イオン電池のアノードの形成に用いるのに適した組成物を形成することができる。
【0226】
この組成物の他の材料としては、限定なく:ピラー化粒子を含有するスラリーを形成するための溶媒または溶媒混合物(当業者により理解されるように、溶媒または溶媒混合物はピラー化粒子を溶解せず、「溶媒」の語は本明細書において用いられる場合そのように解釈されるべきである);他の活性材料;導電性、非活性材料、例えば導電性、非活性炭素繊維;バインダー;粘度調節剤;充填剤;架橋促進剤;結合剤および接着促進剤の1つ以上を挙げることができる。
【0227】
ピラー化粒子はアノードの唯一の活性成分として用いることができる、または1つ以上の他の活性成分と組み合わせて用いることができる。1つの実施形態では、ピラー化粒子のピラー、および任意でコアは、シリコンであり、ピラー化粒子は別の材料、例えばグラファイトから形成される活性成分と混合される。
【0228】
活性グラファイト電極は、容量の顕著な損失なく、活性シリコン電極より大きな数の充電/放電サイクルを提供することができるが、シリコン電極はグラファイト電極より高い容量を提供することができる。従って、シリコン含有活性材料およびグラファイト活性材料の組成物は、高い容量および大きな数の充電/放電サイクルの両方の利点を有するリチウムイオン電池を提供することができる。本明細書に記載されるように少なくとも1つの10ミクロン未満の寸法を有するピラー化粒子の使用は、より大きなピラー化粒子と比較してこうしたピラー化粒子のより大きな体積当たりの容量または質量当たりの容量の観点でとくに有利であり得る。
【0229】
グラファイトおよびシリコンを含むピラー化粒子の組成物は、少なくとも5重量%のシリコン、任意で少なくとも10重量%のシリコンを含有することができる。
【0230】
電池のアノードを形成するため、溶媒または溶媒混合物中にピラー化粒子を含有するスラリーを導電性材料、例えば銅から形成されるアノード集電体上に堆積させた後、該溶媒を蒸発させることができる。スラリーはアノードにおいて用いられるバインダー材料およびその他の活性材料を含有することができる。バインダーの例としては、ポリアクリル酸(PAA)、ポリイミド(PI)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)およびこれらの金属イオン塩のようなポリマーバインダーが挙げられる。バインダーはまた1つ以上のポリマーの混合物であってもよい。スラリー中に備えることができる他の材料としては、限定なく、粘度調節剤、充填剤、架橋促進剤、結合剤および接着促進剤が挙げられる。複合体の成分材料は適切に混合され、基質または集電体にコーティングとして用い、該基質または集電体に接着した複合電極層を形成することができる、均質な電極組成物を形成する。
【0231】
ピラー化粒子を含有する複合電極は、電解質による活性材料の湿潤化を可能にし、充電中に活性材料の膨張を収容し、電極の膨潤を防止するための空間を提供する、多孔性であってもよい。複合多孔度は、複合材料層により占められる総体積の割合として、いずれの電解質も複合電極に添加され、これと接触させる前の、未充電状態の複合電極における気孔、ボイドおよび空間の総体積と定義することができる。例えば、水銀または窒素多孔度測定法により測定することができる。
【0232】
しかしながら、多孔度が高すぎる場合、電極の機械的完全性は影響され得、単位体積(または質量)当たりの充電容量は低減され得る。適切なレベルの多孔度は、これらに限定されないが、組成物、粒径、電解質/バインダーのタイプ、層厚、電池タイプ/設計を含む、いくつかの因子によって決まり得る。多孔度の少なくともいくらかは、ピラー化粒子のピラー間のボイド空間により提供されるだろう。好適には、未充電状態の複合体の多孔度は少なくとも10%、より好適には少なくとも20%、とくに30%である。好適には未充電状態の複合体の多孔度は80%以下、より好適には60%以下である。
【0233】
好適には、複合材料の多孔度は、複合材料層により占められる総体積の割合として複合体中に含有されるピラー化粒子のピラーの体積の比率の少なくとも2倍である。これはとくにコアの表面が活性材料ではない、またはコアが完全リチウム化後10%以下で膨張する場合に適用され、この場合最小気孔体積は好適には2×ピラーの体積である。好適にはこの場合、最大気孔体積は4×ピラーの体積+1.1×コア体積である。
【0234】
複合材料が電気活性材料、好適には完全リチウム化後10%より大きく膨張する電気活性材料を含む粒子コアを有するピラー化粒子を含有する場合、多孔度は、リチウム化した場合の粒子コアの膨張をさらに収容するためにより高くてもよい。この場合、適切な最小複合多孔度は、複合材料層の総体積の割合として、ピラーの体積の2倍および粒子コアの体積の1.2倍の合計により得ることができる。
【0235】
好適には、ピラー化粒子によりもたらされる最大気孔体積=4×(ピラー体積+コア体積)=4×ピラー化粒子の体積である。
【0236】
適切な最小または最大複合多孔度は、前述の気孔体積から、複合層の総体積で割った気孔体積×100%により計算される。
【0237】
多孔度は、限定なく、複合電極のピラー間の空間、および粒子間の空間によりもたらされる多孔度を含むことができる、複合体全体のものである。
【0238】
電池において用いられる多孔度は、電気活性材料の電解質間の良好な表面接触を可能にし、充電中の電極の全体的な膨張を最小化する緩衝空間を提供する高い多孔度と、全体的な体積容量/電池の評価に影響を及ぼす電極の単位体積当たりの電気活性材料の適当な密度とともに、複合電極の良好な結合およびアノード集電体との良好な接着を提供する十分に低い多孔度との間のバランスである。本明細書に記載されるようなピラー化粒子は、複合電極に多孔性を、シリコンの高い比容量および関連する充電後のシリコンの高い膨張度のためシリコン含有アノードにとくに有益である、最適レベルの多孔度で導入する効果的な方法を提供する。
【0239】
アノード複合材料層はいずれかの適切な厚さであってもよい。本発明のピラー化粒子は、(集電体の厚さを含まず)60μm未満または30μm未満の平均厚さを有する複合層を製造するのにとくに有利である。好適には複合層厚さは少なくとも10μm厚、より好適には少なくとも12μm厚である。アノードは集電体の一方または両方の面上に堆積/付着させた複合層を含むことができる。
【0240】
適切なカソード材料の例としては、LiCoO、LiCo0.99Al0.01、LiNiO、LiMnO、LiCo0.5Ni0.5、LiCo0.7Ni0.3、LiCo0.8Ni0.2、LiCo0.82Ni0.18、LiCo0.8Ni0.15Al0.05、LiNi0.4Co0.3Mn0.3、LiNi0.33Co0.33Mn0.34、LiFePO、LiVPOF、LiMn、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、xLiMnO(1−x)LiMO、LiFeS、酸化バナジウムおよび硫黄系化合物が挙げられる。カソード集電体は一般的には3〜500μmの厚さを有する。カソード集電体として用いることができる材料の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンおよび焼結炭素が挙げられる。
【0241】
電解質は好適にはリチウム塩を含有する非水性電解質であり、限定なく、非水性電解質溶液、固体電解質および無機固体電解質を含むことができる。用いることができる非水性電解質溶液の例としては、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、メチルホルメート、メチルアセテート、リン酸トリメスター、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホランおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリドンのような非プロトン性有機溶媒が挙げられる。
【0242】
有機固体電解質の例としては、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、硫化ポリエステル、ポリビニルアルコール、フッ化ポリビニリデンおよびイオン性解離基を含有するポリマーが挙げられる。
【0243】
無機固体電解質の例としては、LiNI、LiN、LiI、LiSiO、LiSiS、LiSiO、LiOHおよびLiPOのようなリチウム塩の窒化物、ハロゲン化物および硫化物が挙げられる。
【0244】
リチウム塩(または塩の混合物)は適切には選択された溶媒または溶媒の混合物中に可溶性である。適切なリチウム塩の例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB1020、LiPF、LiCFSO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)およびCFSOLiが挙げられる。
【0245】
電解質が非水性有機溶液である場合、電池はアノードとカソードとの間にセパレーターをはさんで備える。セパレーターは一般的には、高いイオン透過性および高い機械強度を有する絶縁材料で形成される。セパレーターは一般的には0.01〜100μmの気孔径および5〜300μmの厚さを有する。適切な電極セパレーターの例としては、微小多孔性ポリエチレン膜が挙げられる。
【0246】
リチウムイオン電池に加えて、本明細書に記載されるようなピラー化粒子は太陽電池(太陽蓄電器を含む)、蓄電器、フィルター、燃料電池、検出器およびセンサーにおいて用いることができる。
【実施例】
【0247】
ピラー化粒子形成
ピラー化粒子の3つの粉末試料A、BおよびCを、表1に挙げられるD10、D50およびD90サイズ分布値を有するシリコン粒子出発材料をエッチングすることにより調製した。粒子サイズをMasterSizer(商標)2000バージョン5.60を水分散媒で用いて測定した。シリコンピラー化粒子を製造するエッチングを第WO2010/040985号に記載されるように行った。表1は各ピラー化粒子試料のBET、PMFおよび平均ピラー長さを挙げる。すべての3つの試料の平均ピラー直径は50〜150nmの範囲内だった。平均ピラー長さは複数のピラー長さのSEM測定から決定することができる。一般的なピラー密度は25〜40%だった。
【0248】
【表1】
【0249】
図6は、粉末Cの出発材料粒子の球体積相当径のサイズ分布を示す。D50値は9.9ミクロンであり、出発材料粒子の体積の50%(および質量の50%)が9.9ミクロン以下の球体積相当径を有することを示す。
【0250】
図7は、粉末C(実施例2)のピラー化粒子のSEM写真である。粉末は少なくとも1つの10ミクロン未満である寸法を有する粒子、および10ミクロン以上の寸法を有する粒子を含むことがわかるが、粒子のサイズ分布は粒子の少なくとも50%が10ミクロン未満の寸法を有するものである。
【0251】
図8は、粉末C(実施例2)のピラー化粒子のさらなるSEM写真である。ピラー化粒子は約2ミクロンの長さを有するピラーを含む。
【0252】
出発材料および生成物のDnサイズ分布は実質的に同じであってもよい。Elkemから市販の冶金グレードシリコン出発粉末(Silgrain HQ)を、「ピラー化粒子形成」下で上述したように金属補助エッチングを用いてエッチングした。出発材料はそれぞれ2.8、4.6および7.9ミクロンのD10、D50およびD90値を有した。粉末生成物Dと称される生成物は、両方Malvern Mastersizerを用いて測定される、それぞれ2.8、4.6および7.6ミクロンのD10、D50およびD90値を有し、ピラー化粒子のコアおよびピラーを含む球の効果的な球径を有する粒子の体積分布は、出発材料を含む球体の効果的な球体直径の体積分布と実質的に同じままであり得ることを示す。
【0253】
ピラー化粒子生成物の体積分布は図9に示す。
【0254】
電極および電池製造
アノード調製
所望の量のピラー化粒子組成物を脱イオン水中でビーズ粉砕した導電性炭素混合物に添加した。得られた混合物を次にIKAオーバーヘッド攪拌機を用い、1200rpmで約3時間処理した。この混合物に、所望の量の溶媒または水中のバインダーを添加した。全体的な混合物を最後にThinky(商標)ミキサーを用いて約15分間処理した。混合物の粘度は一般的には20rpmで500〜3000mPasだった。
【0255】
生成物粉末Aは、15〜25μmの平均寸法および14.7μmのD10値を有するシリコン粒子の出発材料から製造されたピラー化粒子を含んだ。この出発材料から製造されたピラー化粒子は、30〜35%のピラー体積分率、45m/gのBET値、2〜3μmの平均長さおよび50〜150nmの直径のピラーを有した。複合アノードDは70質量%のこれらのピラー化粒子、15質量%のNa−PAAバインダーおよび15質量%の導電性炭素で構成した。
【0256】
生成物粉末B(実施例1)は、少なくとも1つの10μm未満の寸法および8.2μmのD10値を有する粒子を含むシリコン粒子の出発材料から製造されたピラー化粒子を含んだ。この出発材料から製造されたピラー化粒子は、34%のピラー体積分率、32.9m/gのBET値、1.8〜2μmの平均長さおよび50〜150nmの直径のピラーを有した。複合アノードEは70質量%のこれらのピラー化粒子、15質量%のNa−PAAバインダーおよび15質量%の導電性炭素で構成した。
【0257】
生成物粉末C(実施例2)は、少なくとも1つの10μm未満の寸法および6μmのD10値を有する粒子を含むシリコン粒子の出発材料から製造されたピラー化粒子を含んだ。この出発材料から製造されたピラー化粒子は、24%のピラー体積分率、4.5m/gのBET値、1.6〜1.8μmの平均長さおよび50〜150nmの直径のピラーを有した。複合アノードFは70質量%のこれらのピラー化粒子、15質量%のNa−PAAバインダーおよび15質量%の導電性炭素で構成した。
【0258】
複合アノード混合物を、ドクターブレード法を用いて10μm厚の銅箔(集電体)に塗布し、20〜35μm厚のコーティング層(14〜15gsmのコーティング重さ)をもたらした。得られた電極を次に乾燥させた。
【0259】
カソード調製
試験電池において用いられたカソード材料は、市販のステンレス鋼集電体上のリチウム混合金属酸化物(MMO)電極材料(例えばLi1+xNi0.8Co0.15Al0.05)だった。
【0260】
電解質
すべての電池において用いられた電解質は、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネート(体積比3:7)の混合物中に溶解され、15wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、および3wt%のビニレンカーボネート(VC)添加物を含有する、ヘキサフルオロリン酸リチウムだった。電解質はまた、電池に配置する前に、溶解COガスで飽和させた。
【0261】
電池構造および試験
試験電池を、複合アノードD、EおよびFを用い、以下のように製造した:
・直径12mmのアノードおよびカソードディスクを調製し、真空下で一晩乾燥させた。
・アノードディスクをSwagelok(登録商標)部品から製造された2電極電池に配置した。
・直径12.8mmおよび厚さ16μmの2つのTonen(登録商標)セパレーターをアノードディスク上に配置した。
・40μlの電解質を電池に添加した。
・カソードディスクを湿潤したセパレーター上に配置し、電池を完成した。
・バネを含有する直径12mmのプランジャーを次にカソード上に配置し、最後に電池を密封した。バネ圧は電極と電解質との間の密接界面を維持した。
・電解質を電極中に30分間浸漬させた。
【0262】
組み立て後、各電池をArbin(商標)電池サイクル装置に接続し、以下のように連続CC充電および放電サイクルを試験した。初期サイクルについて、電池をシリコン1グラム当たり2000mAhの最大容量まで、または電圧が0.005Vまで減少するまで、どちらかが先に起こるまで充電した。5分放置後、電池を次にリチウムに対して1.0Vの電圧まで放電した。電池を次に30分間放置する。電池をその後、電池をシリコン1グラム当たり1200mAh(もしくは複合アノードEを有する電池について約1300mAh/g)または0.005Vまで、どちらかが先に起こるまで充電し、5分間放置し、次にリチウムに対して1.0Vまで一定電流放電し、30分間放置した後、次の充電を開始することにより、C/5速度で充電/放電する。
【0263】
図10は、複合アノードD(比較的大きな粒子の粉末を含有する)、EおよびFを含有する電池の、比放電容量対充電/放電サイクル数をプロットする。少なくとも1つの10μm未満の寸法および10μm未満のD10値を有するピラー化粒子を含む複合アノードEおよびFはより大きなピラー化粒子を含む複合アノードDより多い充電/放電サイクルを提供することがわかる。
【0264】
実施例2
ElkemからSilgrain HQとして市販される異なるサイズ分布を有する冶金グレードシリコン粉末を、「ピラー化粒子形成」下で上述した方法を用いてエッチングし、ピラー化粒子を形成した。電池を実質的に「電極および電池製造」下で上述したように形成した。材料および電池の詳細は表2に示す。
【0265】
【表2】
【0266】
粉末Eは10ミクロンより大きなD10値を有するが、粉末Fは10ミクロンより小さなD10値を有する。
【0267】
図11は、粉末Fを形成するのに用いられる出発材料をエッチングすることにより形成されるピラー化粒子のピラーのSEM画像である。
【0268】
C/5(5時間で完全放電)での放電容量の割合としての2C(30分で完全放電)での放電容量は、粉末Eより小さな粒子についてより高い。
【0269】
粉末EおよびFから形成された電池をそれぞれ速度C/2で完全容量まで充電し、速度C/5、C/2、Cおよび2Cで放電したが、Cは完全充電または放電容量が60分の時間で達成される速度である。図12(粉末F電池)および図13(粉末E電池)を参照して、放電容量/充電容量比は、とくにより高い放電速度で、より小さな粉末Fを含有する電池についてより高い。これは、1.5未満のBET/PMF比を有するより小さなピラー化粒子を含む電池がより大きな粒子を含む電池より良好な速度性能を有することを示す。
【0270】
実施例3
シリコン粒子サイズの電池膨張に対する効果を評価するため、シリコン粉末を含有する複合電極、対電極としてのリチウム箔および液体電解質を有する半電池を製造した。シリコン含有複合電極を上述したように製造した。電解質は実施例1に記載したとおりだった。シリコン含有複合電極層(集電体を除く)の厚さの増加を、電池を充電(第1サイクル)しながら、20℃の温度制御室内に配置されたEl−Cell(登録商標)電気化学膨張計ECD−nanoで測定した。
【0271】
電極は70:14:16重量%のシリコン粒子:NaPAAバインダー:炭素添加物を含有した。炭素添加物はグラファイト薄片およびカーボンブラックのような導電性炭素の混合物だった。各電極は以下の表3に記載するように異なるシリコン材料を含有した:粉末生成物G、およびHはそれぞれ粉末AおよびBに用いられたシリコン出発材料粉末をエッチングすることにより製造されたピラー化粒子だった。粉末生成物Jは粉末生成物Dに用いられたのと同じ出発材料をエッチングすることにより製造されたピラー化粒子だった。粉末HbおよびJbは、それぞれ粉末生成物HおよびJに用いられたのと同じ出発材料の試料であるが、エッチングされずに残った非ピラー化粒子だった。
【0272】
結果は表3に示す。容量はシリコン1グラム当たりである。
【0273】
【表3】
【0274】
図14は、粉末Jを形成するのに用いられた出発材料をエッチングすることにより形成されたピラー化粒子粉末のSEM画像であり、このとくに小さなピラー化粒子材料を示す。
【0275】
図14において見ることができるように、すべての粒子コアのすべての面がピラーを有するわけではなく、本明細書に記載されるようなピラー化粒子はそれぞれ複数の面を有する表面を有することができ、これらの面のすべて、いくつかまたは1つのみはピラーを有することができることが理解されるだろう。粉末はその上にピラーが形成されていない粒子を含有することができるが、好適には(SEMにより観察されるように)ピラー化粒子の粉末の粒子の少なくとも50%、少なくとも75%または少なくとも90%はピラーを有することがさらに理解されるだろう。
【0276】
図15および表3を参照して、出発材料を含有する電極の厚さは、出発材料から形成されるピラー化生成物を含有するものよりかなり大きな程度まで膨張する。さらに、両方とも10ミクロンより小さなD10値を有する粉末HおよびJは、10ミクロンより大きなD10値を有する粉末Gより小さく膨張する。
【0277】
実施例4
出発材料は、冶金グレードシリコンまたはドープシリコンウエハから製造される、平均厚さ5μmおよび約10μmの幅/長さ寸法のシリコン薄片である。薄片をエッチングし、各薄片の両方の主な表面上にシリコンピラー(ナノワイヤー)を製造し、ピラーは80nmの平均直径、1.5〜2μmの長さおよび10〜40%または20〜40%の平均ピラー密度を有する。残った粒子コアは1〜2μmの厚さを有する。
【0278】
こうして製造されたピラー化粒子は25〜70%のPVF(=PMF)値、5〜30m/gのBET値および10〜40%のエッチング収率を有する。粒子コア厚さの低い値は、破壊なくコアの実質的なリチウム化を可能にし、粒子の全体的な比充電容量を向上させ、高アスペクト比形状はピラー体積分率と収率との間で良好なバランスを得ることを可能にする。とくに、>30%のPVF(およびPMF)と組み合わされた>30%の収率は、40%の平均ピラー密度および1.5μmの長さのピラーを有する薄片について達成される。複数のこうしたピラー化粒子は、成分割合の合計が100%となるように、60〜80wt%の複合アノード、8〜20wt%のポリマーバインダー、0〜20wt%のグラファイト粒子および5〜20%の導電性(非活性)炭素添加物を含むことができる。こうした複合体は非常に高い容量を有するので、例えば25μm未満の、薄い複合層はアノードをカソードと釣り合わせるのに必要であり得る(例えばカソード層の厚さは、アノード層を10〜25%超えた放電容量を有し、達成することができるサイクル数を増加するように決定することができる)。少なくとも1つの10μm未満の寸法を有する小さなサイズのピラー化粒子は、集電体上にこうした薄いアノード層をコーティングすることをより容易にする。
【0279】
ピラー化粒子がシリコン薄片をエッチングすることにより製造される場合得られる収率における利点をさらに示すため、以下の表4は、異なるアスペクト比(5μmで割った正方形の辺の長さ)の5μm厚正方形シリコン薄片をエッチングし、高さ1.5μmおよび直径80nmのピラーを含む粒子を上面および底面上に25%のPMFをもたらすのに十分な密度で製造する場合の最大収率を示す。BET値はアスペクト比により強く影響されないだろう(例えば滑らかな表面を有する固体ピラーについて、BET値、例えば2a〜2dは5.9〜6.4であり、0.24〜0.27のBET/PMF比をもたらす。粗い、または多孔性のピラー表面はBETを適宜増加するだろう)。しかしながら、アスペクト比が増加すると、収率は顕著に増加する。好適にはアスペクト比は、少なくとも10%のピラー密度で、少なくとも1.5:1である。
【0280】
【表4】
【0281】
図16Aは、薄い、高アスペクト比コア、56m/gのBET値、33%のPMFおよび1.7のBET/PMF比を有するシリコンピラー化粒子を示す。
【0282】
図16Bは、薄い、高アスペクト比コア、13m/gのBET値、21%のPMFおよび0.62のBET/PMF比を有するシリコンピラー化粒子を示す。ピラー長さは約1.5ミクロンである。
【0283】
実施例5
実施例2に記載されたピラー化粒子はグラファイト系アノード複合体への高容量活性添加物として用いることもできる。こうした電池の単位体積当たりの充電容量はアノード活性材料の大部分がシリコンを含む場合1未満であってもよいが、特定の電池設計について、より厚いコーティングを複合アノードに用いることができるので、電極の釣り合いをより容易にすることができる。シリコン含有粒子が活性材料の大部分がグラファイトである複合体において添加物として用いられる場合、グラファイトおよびシリコンの異なる電気化学的電位のため、シリコン含有粒子はグラファイトのリチウム化が開始される前に完全にリチウム化することができ、従ってピラー化粒子のコアおよびピラーの両方を多数のサイクルをかけて劣化なく実質的に完全にリチウム化することができる場合有利である。実施例2に記載された複数のピラー化粒子は、成分割合の合計が100%となるように、5〜25wt%の複合アノード、8〜20wt%のポリマーバインダー、50〜80wt%のグラファイトおよび/またはグラフェン粒子ならびに5〜20wt%の導電性(非活性)炭素添加物を含むことができる。
【0284】
実施例6
出発材料は、少なくとも1つの8μm未満、好適には約5μmのより小さな寸法および20μm以下のより小さな寸法に直交する寸法を有するグラファイトおよび/または導電性炭素粒子である。出発材料は、Malvern Mastersizerシステムにより水中に分散した粉末試料について測定されるように、10μm未満のD10値を有する。
【0285】
グラファイト粒子は基質上に配置し、Au、NiまたはSn触媒粒子でコーティングする。シリコンナノワイヤーは、グラファイトの露出表面上、触媒粒子がCVD補助VLSプロセスによって配置される点で成長させる(例えばPECVD、LPCVDまたはPPCVDシステムを用いることができる)。シリコンナノワイヤーは30〜60nmの直径および少なくとも4μm、例えば4〜10μmの長さを有する。基質と接触したグラファイト/炭素粒子の表面はピラーで覆われていなくてもよい。あるいは、出発材料は溶液からの触媒粒子および流動床反応器中で成長させたナノワイヤーでコーティングし、粒子コアのすべての表面上にピラーを形成することができる。ピラー化粒子を、試験するため基質(または反応器)から取り出す、または複合アノード層を製造するためスラリーに添加する。ピラー化粒子は5〜15%のPVF値を有し、BET値は30m/g未満であり、平均ピラー密度は0.5〜5%である。複合アノード材料は、成分割合の合計が100%となるように、ピラー化粒子65〜85wt%、バインダー8〜15wt%および導電性添加物5〜20wt%のそれぞれの質量割合でのピラー化粒子、バインダーおよび追加の導電性添加物(例えば炭素)の混合物を含む。こうした混合物は、3〜13wt%の活性シリコン材料および55〜80wt%の活性グラファイト材料を含むだろう。あるいは、シリコンおよびグラファイトの質量割合をこれらの範囲内に維持しながら、ピラー化粒子のいくつかはベアグラファイト粒子により置き換えることができる。
【0286】
実施例7
ピラー化粒子は、グラファイト粒子のいくつかまたはすべてを少なくとも4つのグラフェンシートを含むグラフェン粒子により置き換える以外、実施例5に記載されるように製造する。グラフェン粒子は、1μm未満の厚さおよび15μm未満の長さ/幅寸法での高アスペクト比を有する。好適にはグラフェン粒子のBET値は200m/g未満、より好適には100m/g未満である。より薄いコアは、顕著により高い導電性(より低い抵抗率)をもたらすと同時に、10μm未満のD10値を維持し、例えば40%を超えてPVF値を増加(すなわち比充電容量を増加)させながら、より長いピラーを成長させることができることを意味する。しかしながら、グラファイトコアピラー化粒子のより高いBET値は第1サイクル損失を増加させ得、グラファイトコアピラー化粒子をグラフェンコアピラー化粒子と9:1〜7:3の比で混合することが好ましい。複合アノード混合物は、成分割合の合計が100%となるように、8〜15wt%のバインダー、5〜20wt%の導電性添加物、5〜20wt%のシリコンならびに50〜80wt%のグラファイトおよび/またはグラフェンを含む。
【0287】
実施例8
ピラー化粒子を、ノルウェイのElkemから市販の粉末を用い、「ピラー化粒子形成」下で上述したように調製した。電池を「電池構成および試験」下で上述したように調整した。
【0288】
ピラー化粒子の特徴は表5Aおよび5Bに示す。
【0289】
【表5A】
【0290】
【表5B】
【0291】
上の表において、FCLとは、第1サイクルにおける充電容量の割合としての第1充電/放電サイクル中のリチウムの不可逆損失を表す、第1サイクル損失である。リチウム損失のいくつかはカソード(正極)に起因し得るが、残りは第1充電サイクル中の負極における電気活性材料の表面上でのSEI層の形成からもたらされる。
【0292】
粉末K〜Oを含有する電池を、シリコンの約900mAh/gの充電容量に対応する固定電池電圧上限と下限との間でサイクルさせた。
【0293】
粉末KおよびLは粉末MおよびNより小さく、より大きな粉末MおよびNより多いサイクルの出発容量の80%より大きな容量を維持する。
【0294】
比較の目的のため、銀核生成の密度が制御され、シリコンのエッチングされた表面から延びるピラーではなく、シリコン出発材料の表面中に延びる相互接続気孔を形成した、粉末Mを調製した。図17は、コア表面の大部分の上のシリコンコアの表面から延びる離れたピラーではなく、シリコンの表面中に延びる気孔を示す、粉末MのSEM画像である。
【0295】
粉末Mの性能はピラー化粒子を含有する粉末K〜Nのいずれかより顕著に劣ることがわかる。
【0296】
粉末PおよびQを含有する電池をシリコンの1200mAh/gの一定容量で、放電終了電圧が4.3Vに達し、1200mAh/gの容量を維持することができなくなるまでサイクルさせた。粉末PおよびQを参照して、1.4のBET/PMF比を有する粉末Pは1200mAh/gの容量で、3より高いBET/PMF比を有する粉末Qのサイクル数の2倍サイクルすることができることがわかる。
【0297】
図18を参照して、本発明者らは、エッチングされたシリコンピラー化粒子の第1サイクル損失とBETとの間に線形関係を見出した。いずれの理論にも縛られることを望むことなく、単位質量当たりの表面積が大きすぎる場合、単位質量当たりの充電容量および/またはサイクル寿命は、活性材料の表面上での酸化物および/またはSEI層の過剰形成によって低減し得ると考えられる。本発明者らは、BETとPMFとの間の非線形関係、および好適なBET/PMF比は3より小さいことを見出した。
【0298】
実施例9
コアおよびピラーの両方を完全にリチウム化した場合の活性シリコンの機械的応力を最大化するため、電池を(前実施例のように)固定電圧上限と下限との間または固定充電容量ではなく、各サイクルで最大充電/放電容量までリチウム化および脱リチウム化した以外、実施例8と同様にピラー化粒子、該粒子を含有する複合電極および該電極を含有する電池を調製および試験した。
【0299】
結果は表6に示す。
【0300】
【表6】
【0301】
比較の目的のため、粉末Oを用いた。上述したように、銀核生成の密度を制御し、シリコンのエッチングされた表面からの延びるピラーではなく、シリコン出発材料の表面中に延びる相互接続気孔を有する粒子を含有する粉末Oを形成した。
【0302】
図19は、粒子コアから延びるピラーを示す、粉末SのSEM画像である。
【0303】
実施例6と同様に、多孔性、非ピラー化粒子(粉末O)は、ピラー化粒子より実質的に劣る性能を提供する。
【0304】
粉末Wの初期容量の70%まで低下するサイクル数は非ピラー化粉末Oより小さいが、容量の60%まで低下するサイクル数はピラー化粉末Wよりかなり高い。いずれの理論に縛られることも望むことなく、この比較的小さな容量の70%まで低下するサイクル数は、粉末Wの比較的大きな粒子のコアのリチウム化のためであると考えられる。
【0305】
実施例10
実施例8と同様にピラー化粒子を調製し、装置を調製および試験し、電池をシリコンの1200mAh/gの固定容量でサイクルさせた。異なるBET/PMF比を有するピラー化粒子を粉末Bに用いられたのと同じ出発材料から調製した。
【0306】
表7に示すように、3より高いBET/PMF比を有する粉末Xと比較して、3より低いBET/PMF比を有する粉末YおよびZについて、第3〜第50充電−放電サイクルの平均効率はより高く、第1サイクル容量損失はより低い。
【0307】
【表7】
【0308】
本発明は特定の典型的な実施形態に関して記載されたが、本明細書において開示される特徴の各種変更、変形および/または組み合わせは、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかであることが理解されるだろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19