特許第6321543号(P6321543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321543
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】ナノ粒子をガラスに結合する方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/25 20060101AFI20180423BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   C03C17/25 A
   C03C21/00 101
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-541218(P2014-541218)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-533233(P2014-533233A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】US2012064037
(87)【国際公開番号】WO2013070830
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】61/557,490
(32)【優先日】2011年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,ダナ クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】エリソン,アダム ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャナキラマン,ウママヘスワリ
(72)【発明者】
【氏名】セナラトネ,ワジーシャ
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−516216(JP,A)
【文献】 特開2006−076829(JP,A)
【文献】 特開2002−234754(JP,A)
【文献】 特表2009−526727(JP,A)
【文献】 特表2010−509175(JP,A)
【文献】 特開昭54−091514(JP,A)
【文献】 特開平05−170488(JP,A)
【文献】 特開昭58−145642(JP,A)
【文献】 特公昭47−005559(JP,B1)
【文献】 特表2011−510904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0142150(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01818693(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0197048(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0101649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00 − 17/44
C03C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ガラスまたはガラスセラミックを含む支持要素と、
b.ナノ粒子層と、
c.結合剤と、
d.前記結合剤および前記ナノ粒子層の上に配置され、ペルフルオロポリエーテルシランを有するキャッピング層と、
を含む構造であって、
前記結合剤は本質的に、二酸化ケイ素およびアルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩、アルカリリン酸塩またはその組合せを含む無機網状組織構造から成り、
前記網状組織構造はガラスとして固結するものであり、
前記網状組織構造の前記ガラスはイオン交換プロセスによる圧縮応力を有するものである、
ことを特徴とする、構造。
【請求項2】
二酸化ケイ素と、アルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩との比が0.05:1〜20.0:1であることを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記結合剤が0.1〜40.0重量パーセントの二酸化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
a)ガラスまたはガラスセラミックを含む支持要素を提供するステップと、
b)前記支持要素上にナノ粒子層を形成するステップと、
c)前記支持要素上に、二酸化ケイ素とアルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩とを含む結合剤を形成するステップと、
d)前記結合剤および前記ナノ粒子層上に、ペルフルオロポリエーテルシランを有するキャッピング層を形成するステップと、
e)前記ナノ粒子層、前記結合剤および必要に応じて前記キャッピング層を含む前記支持要素を、前記結合剤が網状組織構造を形成できる温度まで加熱するステップであって、当該網状組織構造は、本質的に二酸化ケイ素並びに、アルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩、またはアルカリリン酸塩から成り、ガラスとして固結するものである、ステップと、
f)前記網状組織構造の前記ガラスを、当該ガラスが圧縮応力を有するようにイオン交換プロセスに付すステップ、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の構造を形成する方法。
【請求項5】
前記結合剤の形成ステップまたは前記ナノ粒子層の形成ステップが、ディップコーティング、スピンコーティング、スロットコーティング、ラングミュア・ブロジェット被着、エレクトロスプレーイオン化、直接ナノ粒子被着、蒸着、化学蒸着、真空濾過、フレーム溶射、エレクトロスプレー、噴霧堆積法、電着、スクリーン印刷、クローズスペース昇華法、ナノインプリントリソグラフィ、インサイチュ成長法、マイクロ波援用化学蒸着、レーザーアブレーション、アーク放電または化学エッチングを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、内容全体が依拠され、参照により本明細書中に援用されている2011年9月11日出願の米国仮特許出願第61/557,490号明細書の米国法典第35編第119条に基づく優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、表面上に安定化された粒子を含む構造および粒子を接着させる方法に関する。詳細には、本明細書中で開示されている構造、方法およびプロセスは、特有のまたは改善された特性を有するコーティングされた表面を提供するためにガラスまたはガラスセラミック製表面に接着されるナノ粒子に関する。修飾されたガラス表面は、光起電、反射防止、抗菌および防指紋などのさまざまな技術のために有用である。
【背景技術】
【0003】
表面に対するナノ粒子の接着は、表面またはナノ粒子の化学的修飾(チオールを介して接着させられる金粒子の場合など)または表面修飾(概して接触および接着力の増大を導く表面粗度の増加)などの多数の機序を介して達成されてきた。しかしながら、これらの方法の多くは、接着強度の相次ぐ問題と共にそれに付随する表面再現不能性の問題および、表面が容易に損傷を受けその結果採算性のある製品が得られないという問題に悩まされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス表面の場合、熱焼結ステップを介してガラスにナノ粒子を接着させることが可能であることが示されてきた。焼結プロセスでは、ガラス構造は、例えば表面に対するナノ粒子の接着を可能にする軟化点近くの温度で加熱処理された。典型的には、選択されたナノ粒子は、構造ガラスよりも高いTまたはTsoftを有し、構造に対するナノ粒子の焼結量に関する非常に優れた制御が可能となり、かつ粒径の2分の1以上までガラス構造内にナノ粒子を埋込むことが可能になっていた。しかしながら、一部の実施形態において、焼結温度は粒径の関数として有意な形で変動し、粒径が大きくなれば、より高い温度が必要となった。例えば、コーニングガラスコード2318上におけるシリカの100〜120nmのナノ粒子の単層は、ガラス表面内に直径の2分の1までナノ粒子を焼結させるのに725〜750℃の温度を必要としたのに対し、250nmのナノ粒子の単層は750〜770℃の温度を必要とした。さらに、接着はガラスの焼鈍温度よりも高い温度で起こることから、結果としてガラスは軟化し、これにより変形および反りが起こり得るかもしれない。したがってナノ粒子で修飾された表面の所望の化学的および物理的属性を保持する堅牢な表面を提供する、表面に対し粒子を接着させる新規の方法を発見する必要性がひき続き存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の1つの態様は、高い耐久性を有しかつ機械的強度を付与するためにイオン交換が可能であるナノテクスチャー加工されたガラス表面を提供するための、支持要素と結合剤とナノ粒子層とを含む構造を提供することにある。1つの実施形態は、支持要素と、ナノ粒子層と結合剤とを含む構造において、結合剤がアルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩を含んでいる構造を含む。一部の実施形態では、アルカリケイ酸塩はSiOおよびAlkOを含み、ここでAlkはLi、NaまたはKを、約0.05:1〜約20.0:1のSiO:AlkO比で含んでいる。一部の実施形態では、アルカリホウ酸塩は、R(HAlkO)・Bを含み、nは0以上2未満であり、ここでRは約0.05〜約20.0であり、Alkは、約0.05:1〜約20.0:1のSiO:R(HAlkO)B比でLi、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOおよびHAlk3−nPOを含み、ここでnは0以上3未満であり、Alkは約0.05:1〜約20.0:1のSiO:HAlk3−nPO比で、Li、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤は約0.1〜約40.0重量パーセントのSiOを含む。一部の実施形態において、結合剤の厚みは、前記ナノ粒子の平均直径の約4分の1または2分の1未満または平均直径を構成する。
【0006】
一部の実施形態において、ナノ粒子層は、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、ポリマー、金属、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属リン酸塩、固体ナノ粒子、量子ドット、無機複合材料、有機複合材料、無機/有機複合材料、フラーレン、ナノチューブ、ナノ繊維、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノシェルまたはそれらの組合せを含むナノ粒子を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアまたはそれらの組合せを含むナノ粒子を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、平均直径約5nm〜約10,000nmのナノ粒子を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、平均直径約5nm〜約500nmのナノ粒子を含む。
【0007】
一部の実施形態において、構造は、イオン交換プロセスに付されたガラスを含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層と結合剤を含む構造表面の圧縮応力は、イオン交換プロセスに付された支持要素の圧縮応力とほぼ等価である。一部の実施形態において、ナノ粒子層と結合剤を含む構造表面の層深さは、イオン交換プロセスに付された支持要素の層深さとほぼ等価である。
【0008】
一部の実施形態において、構造はさらに、キャッピング層を含む。一部の実施形態において、キャッピング層は、疎水性および疎油性を有する化学調合物を含む。一部の実施形態において、キャッピング層は、ケイ酸塩、シロキサン、シルセスキオキサンまたはシランを含む。
【0009】
別の態様は、高い耐久性を有しかつ機械的強度を付与するためにイオン交換可能であるナノテクスチャー加工されたガラス表面を提供するため、支持要素と結合剤とナノ粒子層とを含む構造を形成する方法を提供することにある。一実施形態において、方法は、支持要素を提供するステップと、前記支持要素上にナノ粒子層を形成するステップと、前記支持要素上にアルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩を含む結合剤を形成するステップと、前記結合剤がガラスを形成できる温度まで前記ナノ粒子層と前記結合剤の両方を含む前記支持要素を加熱するステップとを含み、ここで結合剤はアルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩を含んでいる。一部の実施形態では、アルカリケイ酸塩はSiOおよびAlkOを含み、ここでAlkはLi、NaまたはKを、約0.05:1〜約20.0:1のSiO:AlkO比で含んでいる。一部の実施形態では、アルカリホウ酸塩は、R(HAlkO)・Bを含み、nは0以上2未満であり、ここでRは約0.05〜約20.0であり、Alkは、約0.05:1〜約20.0:1のSiO:R(HAlkO)・B比(nは0以上2未満)でLi、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOおよびAlkPOを含み、ここでAlkは約0.05:1〜約20.0:1のSiO:HAlk3−nPO比(nは0以上3未満)で、Li、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤は約0.1〜約40.0重量パーセントのSiOまたはBを含む。一部の実施形態において、結合剤の厚みは、前記ナノ粒子の平均直径の約4分の1または2分の1未満または平均直径を構成する。一部の実施形態において、方法はさらに、構造をイオン交換プロセスに付すステップを含む。
【0010】
一部の実施形態において、結合剤の形成ステップは、ディップコーティング、スピンコーティング、ラングミュア・ブロジェット(Langmuir−Blodgett)被着、スロットコーティング、エレクトロスプレーイオン化、直接ナノ粒子被着、蒸着、化学蒸着、真空濾過、フレーム溶射、エレクトロスプレー、噴霧堆積法、電着、スクリーン印刷、クローズスペース昇華法、ナノインプリントリソグラフィ、インサイチュ成長法、マイクロ波援用化学蒸着、レーザーアブレーション、アーク放電または化学エッチングを含む。
【0011】
一部の実施形態において、ナノ粒子層の形成ステップは、ディップコーティング、スピンコーティング、スロットコーティング、ラングミュア・ブロジェット被着、エレクトロスプレーイオン化、直接ナノ粒子被着、蒸着、化学蒸着、真空濾過、フレーム溶射、エレクトロスプレー、噴霧堆積法、電着、スクリーン印刷、クローズスペース昇華法、ナノインプリントリソグラフィ、インサイチュ成長法、マイクロ波援用化学蒸着、レーザーアブレーション、アーク放電または化学エッチングを含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、ポリマー、金属、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属リン酸塩、固体ナノ粒子、量子ドット、無機複合材料、有機複合材料、無機/有機複合材料、フラーレン、ナノチューブ、ナノ繊維、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノシェルまたはそれらの組合せを含むナノ粒子を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアまたはそれらの組合せを含むナノ粒子を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、平均直径約5nm〜約10,000nmのナノ粒子を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、約5nm〜約10,000nmの厚みを有する単層または多層を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、平均直径約5nm〜約500nmのナノ粒子を含む。
【0012】
実施形態は、例えば、商業的使用に耐えかつ/または優れた再現性を有することのできる耐久性ある構造を提供することから、防指紋、抗菌、分光および防幻技術において有用である。さらに、構造は同様に、ナノ粒子と支持要素が共にボンディングされている場合に、支持要素とナノ粒子層の間の熱膨張係数(CTE)の不整合の結果として接着または変形の問題が発生するかもしれない場合であっても、利点を提供し得る。このような場合には、支持要素のCTEにより密に整合するCTEを有する結合剤の使用は、これらの問題を最小限におさえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】シリカ表面上の単層としての100nmのシリカナノ粒子とそれに続く2つの異なる濃度の無機結合剤コーティング(SiO/NaO、wt%比2.5:1)のSEM画像。図1Aは、溶液が1重量%のSiOと0.4重量%のNaOであった無機結合剤の厚い方のコーティングを示している(LCSD4)。この実験において、構造は、630℃で1時間熱処理された。クロックメーター(AATCC Crockmeter CM−5、SDL−Atlas)による試験は、マイクロファイバークロス(382ZZ−100、Photodon.com)で1000回の拭取後および3000回の拭取後の両方において、両方の構造について優れたコーティング耐久性を示した。
図1B】シリカ表面上の単層としての100nmのシリカナノ粒子とそれに続く2つの異なる濃度の無機結合剤コーティング(SiO/NaO、wt%比2.5:1)のSEM画像。図1Bは、溶液が0.2重量%のSiOと0.08重量%のNaOであった無機結合剤の薄い方のコーティングを示している(LCSD7)。両方の実験において、構造は、630℃で1時間熱処理された。クロックメーター(AATCC Crockmeter CM−5、SDL−Atlas)による試験は、マイクロファイバークロス(382ZZ−100、Photodon.com)で1000回の拭取後および3000回の拭取後の両方において、両方の構造について優れたコーティング耐久性を示した。
図2A】一実施形態の耐久性試験画像。図2Aでは、ナノ粒子および結合剤でコーティングされた構造上に、硬度3Bの黒鉛鉛筆でマークをつけた。図2Aを見ればわかるように、鉛筆は、表面に黒鉛を転写させた。
図2B】一実施形態の耐久性試験画像。図2Bにおいて、いかなるスクラッチまたは損傷もナノ粒子層中にはっきりと見えない。
図3A】一実施形態の耐久性試験の画像。ナノ粒子および結合剤でコーティングされた表面上に、硬度5Hの黒鉛鉛筆でマークをつけた(図3A)。
図3B】一実施形態の耐久性試験の画像。図3B中の画像は、相対的に高硬度の鉛筆を用いると構造にスクラッチをつけることができたということを示している。
図4】キャッピング層を伴うケイ酸ナトリウム(NaSil)コーティング(2つのディップコーティング速度での調合物5−4および5−5)を用いて試験された100nmおよび250nmの両方の粒子が、クロックメータースワイピング試験の前後の接触角により測定される3000回拭取耐久性に付された場合に、試験に耐えたことを示している。
図5】ナノ粒子/結合剤組成物のイオン交換能を表現するコーティング側と非コーティング側上のCSおよびDOLデータを表わす。
図6】NaSilコーティングを用いて試験した100nmの粒子を含む2つの異なる実施形態を比較している。
図7】HAZE−GARD PLUS(登録商標)コーティング(BYK Additives and Instruments,Inc)由来のさまざまな異なる直径のナノ粒子/結合剤コーティングについて得た曇り度および透過率%を列挙する。
図8】さまざまなサイズのシリカナノ粒子層と多層コーティングとを含む多数の異なる実施形態の特性を表わしている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、以下の詳細な説明、図面、実施例およびクレームそしてそれらについての以上および以下の記述を参照することによって、より容易に理解することができる。しかしながら、これらの組成物、物品、装置および方法の開示および説明に先立ち、この開示が、別段の規定の無いかぎり開示されている特定の組成物、物品、装置および方法に限定されるものではなく、したがって、当然変動し得るものであることを理解すべきである。同様に、本明細書中で使用されている用語が、単に特定の態様を説明することのみを目的としたものであり、限定的であるものとして意図されていないということも理解すべきである。
【0015】
以下の説明は、実現用教示として提供される。このために、当業者であれば、これらの実施形態の有益な結果をなおも得ながら、本明細書中に記述された開示のさまざまな態様に対し多くの変更を加えることが可能であることを認識し評価するものである。同様に、所望される利益の一部は、本明細書中で開示されている特徴の一部を選択し他の特徴は使用せずに得ることができるものであることも明らかである。したがって、当業者であれば、多くの修正および適応が可能であり、或る種の状況下では望ましいことであり得、それらは本開示の一部をなすものであることを認識するものである。したがって以下の説明は、原理を限定するものとしてではなく、それを例証するものとして提供される。
【0016】
ここでは、開示された方法および組成物のために使用可能であるか、それらと併用され得るかそれらの調製のために使用可能であるか、またはそれらの実施形態である材料、化合物、組成物および構成要素が開示される。これらの材料および他の材料は、本明細書中で開示されており、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示されている場合、これらの化合物の各々のさまざまな個別のおよび集合的な組合せおよび置換に対する特定の言及は明示的に開示されていないかもしれないものの、各々は本明細書中に具体的に企図され記述されているものと理解される。したがって、一類の置換基A、BおよびCが一類の置換基D、E、およびFと同様に開示され、組合せ実施形態の例A−Dが開示されている場合には、各々が個別的にかつ集合的に企図される。したがって、この例において、各々の組合せA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fが具体的に企図され、A、BおよびC;D、EおよびF;そして組合せ例A−Dの開示から開示されたものとみなされなければならない。同様にして、これらの任意のサブセットまたは組合せも同様に、具体的に企図され開示される。こうして例えば、A−E、B−FおよびC−Eのサブグループは具体的に企図され、A、BおよびC;D、EおよびF;そして組合せ例A−Dの開示から開示されたものと理解されるべきである。この概念は、組成物の任意の構成要素および開示された組成物の製造および使用方法中の任意のステップを含めた(ただしこれらに限定されない)本開示の全ての態様にあてはまる。したがって、実施可能なさまざまな追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップは、開示された方法の任意の特定の実施形態または複数の実施形態の組合せを用いて実施可能であること、そしてこのような組合せの各々が具体的に企図され、開示されたものとみなされるべきであることが理解される。
【0017】
定義
本明細書および以下のクレーム中においては、多くの用語が言及されており、これらの用語は以下の意味を有するものとして定義される。
【0018】
「〜を含む(「include」、「includes」)」などの用語は、包含するものの限定されないこと、すなわち排他的ではなく包含的であることを意味する。
【0019】
「約」という用語は、特に明記のないかぎり、その範囲内の全ての項に言及する。例えば、約1、2または3は、約1、約2または約3と等価であり、さらに約1〜3、約1〜2、約2〜3を含む。組成物、構成要素、成分、添加剤などの態様そしてそれらの範囲について開示された特定のおよび好ましい値は、単なる一例にすぎず、定義された範囲内の他の値または他の定義された値を排除するものではない。開示の組成物および方法には、本明細書中に記載されている任意の値または値の任意の組合せ、特定的な値、より特定的な値および好ましい値を有するものが含まれる。
【0020】
本明細書中で使用される単数形は、別段の規定の無いかぎり、少なくとも1つまたは1つ以上を意味する。
【0021】
「支持要素」という用語は、ナノ粒子層および結合剤を支持するために使用される固体層を意味し、概して結合剤およびナノ粒子層を支持するのに充分な機械的特性を有する任意の材料を含んでいてもよい。
【0022】
「ナノ粒子層」という用語は、約1nm〜約10,000nmの規模の特徴を伴う材料コーティングを意味する。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、約5nm〜約500nmである少なくとも1つの寸法を有する特徴を有する材料コーティングを意味する。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、約5nm〜約500nmの平均直径を有する特徴を有する材料コーティングを意味する。本明細書中に記載されているフィーチャーは、個別粒子、例えばナノ粒子、粒子の組合せを含む表面に対する修飾を含んでいてもよく、あるいはより大きい物体上の修飾であってもよい。ナノ粒子層は、個別の粒子または特徴の単層未満、単層または多層を含んでいてもよい。
【0023】
「ナノ粒子」という用語は、最短軸に沿った平均直径が約1〜約10,000nmの間である粒子/構成要素を意味する。ナノ粒子はさらに、他のナノスケール組成物、例えばナノクラスタ、ナノ粉末、ナノ結晶、固体ナノ粒子、ナノチューブ、量子ドット、ナノ繊維、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノシェル、フラーレンおよび大規模分子構成要素、例えばポリマーおよびデンドリマーならびにそれらの組合せを含む。ナノ粒子は、実施形態と相容性ある任意の材料、例えば非限定的に金属、ガラス、セラミック、無機または金属酸化物、ポリマーまたは有機分子またはそれらの組合せを含んでいてもよい。一部の実施形態において、ナノ粒子は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアまたはそれらの組合せを含む。
【0024】
「結合剤」という用語は、少なくとも部分的に支持要素にナノ粒子層をボンディングするために使用されてもよい材料を意味する。結合剤はアルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩を含むが、支持要素に対するナノ粒子層のボンディングが使用される実施形態においてこのボンディングと相容性あるあらゆる材料をさらに含んでいてもよい。例えば、結合剤は、さらにコーティング特性を改善するための界面活性剤を含んでいてもよい。ナノ粒子層は、結合剤に化学的、機械的または物理的にボンディングされかつ/または結合剤内に埋込まれてもよい。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、結合剤中に埋込まれさらに支持要素中に埋込まれかつ/または支持要素にボンディングされてもよい。
【0025】
「埋込む」または「埋込まれる」という用語は、結合剤および/または支持要素のいずれかの中へのナノ粒子層の個別の構成要素の包含を意味し、結合剤および/または支持要素に対してナノ粒子層を化学的、機械的または物理的にボンディングすることを含んでいてもよい。埋込まれた場合、ナノ粒子層の構成要素はその個別の構造を保持し、結合剤および/または支持要素内に混合、溶解または他の形で分散されない。
【0026】
「アルカリケイ酸塩」という用語は、一般的構造X(SiO)・(Alk)の化合物を含み、ここでAlkはアルカリ金属であり、nは1〜4であり、mは1〜7であり、Xは約0.05〜約20.0を含む。アルカリケイ酸塩という用語は、ウォーターガラスおよび可溶ガラスを含む。アルカリケイ酸塩の例としては、オルトケイ酸塩(AlkSiO)、メタケイ酸塩(AlkSiO)、ジケイ酸塩(AlkSi)およびテトラケイ酸塩(AlkSi)がある。
【0027】
「アルカリホウ酸塩」という用語は、一般的構造X(AlkO)・Bの化合物を含み、ここでAlkはアルカリ金属であり、Xは約0.05〜約20.0を含む。アルカリホウ酸塩を製造するための1つの手順は、(全体が参照により本明細書に援用されている)Banerjee et al.,Structural Studies of Solution−Made High Alkali Content Borate Glasses,352 J.NON−CRYSTALLINE SOLIDS,674〜678(2006)中に記載されている。
【0028】
「アルカリリン酸塩」という用語は、一般的構造HAlk3−nPOの化合物を含み、ここでAlkはアルカリ金属である。
【0029】
一つの態様において、実施形態は、イオン交換可能でかつアルカリケイ酸塩/ホウ酸塩/リン酸塩タイプの結合剤を使用する耐久性あるナノ加工表面を含む。ナノ粒子でコーティングされた表面の使用は、反射防止コーティングとして低い全反射率(450〜650nm1%以下)を有する表面を得るため、あるいは、疎油性(油静的接触角>90°)または超疎油性(>150°)そして疎水性(水静止接触角>90°)または超疎水性(>150°)であるペルフルオロポリエーテルシラン(例えばDow Corning DC2634)またはフルオロアルキルシラン(例えばヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン(C17(CHSi(OMe))、Gelest)またはヒドロカルボンシラン(例えばオクタデシルトリメトキシシラン、Gelest)コーティングで修飾された場合防指紋表面として有益であることが示されてきた。疎油性という用語は、室温(22〜25℃)で90°以上のオレイン酸静的接触角を有する表面を意味する。疎水性という用語は、室温(22〜25℃)で90°以上の水静的接触角を有する表面を意味する。一部の実施形態において、接触角は、ゴニオメータ(例えばDrop Shape Analyzer DSA100、Kruss GmbH、Germany)を用いて測定される。ナノ粒子を使用することが有利であるかもしれない他の利用分野としては、光起電力表面、抗菌コーティングおよび触媒の利用分野が含まれる。本実施形態は、はるかに耐久性が高くその上イオン交換能があり、構造形成後に表面強化手順を実施することができる構造を生産することによって、多くの新規利用分野においてこれらの特有の表面特性を使用する可能性を増大させる。
【0030】
一実施形態において、構造は支持要素と、ナノ粒子層と結合剤とを含み、結合剤はアルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩を含む。支持要素は、概して、結合剤とナノ粒子層とを支持するのに充分な機械的特性を有する任意の材料を含んでいてもよい。支持要素として考えられる材料の例としては、ガラス、ガラスセラミック、無機または金属酸化物、金属、ポリマー、紙、木材および黒鉛が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態において、支持要素はガラス、ガラスセラミック、セラミックまたは無機酸化物を含む。支持要素は概して、商業向けまたは実験室向け用途のために実用的なものとなるようなサイズおよび形状のものであってもよいが、任意のサイズまたは形状を含んでいてもよい。
【0031】
一部の実施形態において、結合剤は少なくとも1つの無機酸化物、例えばSiOまたはSiOを含む。一部の実施形態において、結合剤は、ウォーターガラス、ケイ素アルコキシドまたはシルセスキオキサン(SSQ)を含む。本明細書中で使用する「シルセスキオキサン」という用語は、化学実験式RSiO1.5を有する化合物を意味し、ここでRは水素またはアルキル、アルケン、アリールまたはアリーレン基のいずれかである。
【0032】
一部の実施形態において、結合剤は、アルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩を含む。一部の実施形態において、結合剤はアルカリケイ酸塩を含む。一部の実施形態において、アルカリケイ酸塩はSiOおよびAlkOを含み、ここでAlkは、約0.05:1〜約20.0:1の比でLi、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOおよびAlkOを含み、ここでAlkは、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0、1.5、1.7、1.9、2.0、2.2、2.5、2.8、3.0、3.5、4.0、5.0、7.0、10.0、13.0、15.0、17.0または20.0のSiO:AlkO比でLi、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、アルカリケイ酸塩結合剤は、約0.1〜約40.0重量パーセントのSiOを含む。一部の実施形態において、アルカリケイ酸塩結合剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12、14、16、18、20、25、30、35または40重量パーセントのSiOを含む。
【0033】
一部の実施形態において、結合剤はアルカリホウ酸塩を含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOとX(HAlk2−nO)・Bを含み、ここでn<2であり、Xは約0.05〜約20.0であり、Alkは、Li、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOおよびX(HAlk2−nO)・Bを含み、ここでAlkは、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0、1.5、1.7、1.9、2.0、2.2、2.5、2.8、3.0、3.5、4.0、5.0、7.0、10.0、13.0、15.0、17.0または20.0のSiO:X(HAlk2−nO)・B比で、Li、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、アルカリホウ酸塩結合剤は、約0.1〜約40.0重量パーセントのSiOを含む。一部の実施形態において、アルカリホウ酸塩結合剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12、14、16、18、20、25、30、35または40重量パーセントのSiOを含む。
【0034】
一部の実施形態において、結合剤はアルカリリン酸塩を含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOとHAlk3−nPOを含み、ここでn<3であり、AlkはLi、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOとHAlk3−nPOを含み、ここでAlkは、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0、1.5、1.7、1.9、2.0、2.2、2.5、2.8、3.0、3.5、4.0、5.0、7.0、10.0、13.0、15.0、17.0または20.0のSiO:HAlk3−nPO比で、Li、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、アルカリリン酸塩結合剤は約0.1〜約40.0重量パーセントのSiOを含む。一部の実施形態において、アルカリリン酸塩結合剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12、14、16、18、20、25、30、35または40重量パーセントのSiOを含む。
【0035】
一部の実施形態において、結合剤は、組成物から水が完全に除去され、ガラスを形成するための網状組織構造の圧密を可能にする温度で、熱処理される。一部の実施形態において、結合剤は約500〜約700℃の温度で熱処理され、一部の実施形態において、熱処理は、約300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃または750℃までの加熱を含む。一部の実施形態において、結合剤は約530℃〜約630℃の温度で熱処理され、ここでアルカリケイ酸塩またはアルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩は、網状組織構造に転換される。一部の実施形態において、結合剤は約400℃〜約750℃の温度で熱処理され、ここでアルカリケイ酸塩またはアルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩は網状組織構造に転換される。別の実施形態において、結合剤は少なくとも約300℃の温度で加熱または焼鈍され、ここでアルカリケイ酸塩またはアルカリホウ酸塩は、ナノ粒子層に対し全く影響を及ぼすことなく、ガラスに転換される。
【0036】
一部の実施形態において、結合剤は、ディップコーティング、スピンコーティング、スロットコーティング、ラングミュア・ブロジェット被着、エレクトロスプレーイオン化、直接ナノ粒子被着、蒸着、化学蒸着、真空濾過、フレーム溶射、エレクトロスプレー、噴霧堆積法、電着、スクリーン印刷、クローズスペース昇華法、ナノインプリントリソグラフィ、インサイチュ成長法、マイクロ波援用化学蒸着、レーザーアブレーション、アーク放電、グラビア印刷、ドクターブレード法、スプレーコーティング、スロットダイコーティングまたは化学エッチングにより適用される。一部の実施形態において、結合剤はスピンコーティング、ディップコーティング、ラングミュア・ブロジェット被着、グラビア印刷、ドクターブレード法、スプレーコーティングまたはスロットダイコーティングによって適用される。一部の実施形態において、結合剤の厚みには、コーティング速度という関数が含まれる。一部の実施形態において、厚みには結合剤の濃度という関数が含まれる。一部の実施形態において、結合剤はさらに、ポリマー、ガラス、ゾルゲル、樹脂、セラミック、ガラスセラミック、無機または有機酸化物、ウォーターガラス、金属または金属酸化物を含む。一部の実施形態において、結合剤はさらにナノ粒子を含む。
【0037】
一部の実施形態において、結合剤は、約1nm〜約10μmまたは約1nm、2nm、3nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μmまたは10μmの厚みを有する。一部の実施形態において、結合剤は、およそナノ粒子層内の粒子のサイズである厚みを有する。
【0038】
一部の実施形態において、結合剤は、多数の結合剤を含み、必要に応じてナノ粒子層が各結合剤の間に形成されていてもよい。
【0039】
一部の実施形態において、ナノ粒子層は微小粒子あるいは、固体ナノ粒子、ナノチューブ、量子ドット、ナノ繊維、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノシェル、フラーレン、ナノクラスタ、ナノ粉末、ナノ結晶、固体ナノ粒子、ナノチューブ、量子ドット、ナノ繊維、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノシェル、フラーレンおよび大規模分子構成要素、例えばポリマーおよびデンドリマーまたはそれらの組合せを含むナノ粒子を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、ポリマー、半導体、金属、金属酸化物、混合型金属酸化物、金属塩、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属リン酸塩、無機ナノ粒子、有機ナノ粒子、無機酸化物、黒鉛、フラーレンまたはナノチューブおよびそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、サファイア、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ガラスフリット、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、単元素または多元素系酸化物、例えばAl、Bi、Co、CoFe、MnFeまたはBaFe1219、またはAIN、BN、LaF、SiC、SiまたはTiCなどの化合物を含む。ナノ粒子層の組成は、変動可能であり、ナノ粒子層中の全ての粒子が同じ組成を含む必要はない。
【0040】
ナノ粒子は、開示されている実施形態と相容性ある任意の材料を含んでいてもよい。一部の実施形態において、ナノ粒子は、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、ポリマー、半導体、金属、金属酸化物、混合型金属酸化物、金属塩、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属リン酸塩、無機ナノ粒子、有機ナノ粒子、無機酸化物、黒鉛、フラーレンまたはナノチューブおよびそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、ナノ粒子は金属、金属酸化物、ガラス、セラミックまたは無機酸化物を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子は、サファイア、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ガラスフリット、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、単元素、または多元素系酸化物、例えばAl、Bi、Co、CoFe、MnFeまたはBaFe1219、あるいはAIN、BN、LaF、SiC、SiまたはTiCなどの化合物を含む。任意の1つ以上のナノ粒子の組成は、変動可能であり、全てのナノ粒子が同じ組成を含む必要はない。ナノ粒子は任意の形状および表面特徴を有していてもよい。ナノ粒子の構造および幾何形状は、変動可能であり、開示は、任意の特定の幾何形状および/または構造に限定されるよう意図されていない。実施形態は、複数のナノ粒子を含み、各々の個別のナノ粒子またはナノ粒子群は、他のナノ粒子と同じまたは異なる構造および/または幾何形状を有することができる。例えば、一部の実施形態において、ナノ粒子は球形、長円、多面体、フレークであってもよく、あるいは結晶タイプの構造を呈していてもよい。一部の実施形態において、ナノ粒子表面は、平滑面、粗面、秩序表面、無秩序平面あるいはパターン化表面であってもよい。
【0041】
実施形態において使用し得るナノ粒子の例としては、イソプロパノール中10〜200nmのコロイドシリカ分散(Organosilicasol、Nissan Chemical、USA)から、水中の10〜200nmのコロイドシリカ分散(SNOWTEX(登録商標)、Nissan Chemical、USA)、水中の100〜500nmのコロイドシリカ分散(Corpuscular Inc.)までの市販のシリカナノ粒子、アルミナ分散(DISPERAL(登録商標)、DISPAL(登録商標)、Sasol Germany GmbHおよびAERODISP(登録商標)、Evonik Degussa、USA)、ジルコニア分散(NanoUse ZR、Nissan Chemical、USA)、およびチタニア分散(AERODISP(登録商標)、VP Disp.、Evonik Degussa、USA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
ナノ粒子の粒子サイズは、分布特性であり得ることを理解すべきである。さらに、一部の実施形態において、ナノ粒子は、異なるサイズまたは分布あるいは2つ以上のサイズまたは分布を有していてもよい。したがって、粒子サイズは、個別の粒子サイズの分布に関係する平均粒子直径または半径を意味し得る。一部の実施形態において、使用されるナノ粒子のサイズは、励起源の波長により左右される。一部の実施形態において、ナノ粒子のサイズは、分析物により左右される。一部の実施形態において、ナノ粒子層のナノ粒子は、約5nm〜約10000nm、約5nm〜約7500nm、約5nm〜約5000nm、約5nm〜約2500nm、約5〜約2000、約5〜約1500、約5〜約1250、5nm〜約1000nm、約5nm〜約750nm、約5nm〜約500nm、約5nm〜約250nm、約5〜約200、約5〜約150、約5〜約125、約5〜約100、約5〜約75、約5〜約50、約5〜約25、約5〜約20、約10nm〜約1000nm、約10nm〜約750nm、約10nm〜約500nm、約10nm〜約250nm、約10〜約200、約10〜約150、約10〜約125、約10〜約100、約10〜約75、約10〜約50、約10〜約25、約10〜約20、約20nm〜約1000nm、約20nm〜約750nm、約20nm〜約500nm、約20nm〜約250nm、約20〜約200、約20〜約150、約20〜約125、約20〜約100、約20〜約75、約20〜約50、約20〜約25、約50nm〜約1000nm、約50nm〜約750nm、約50nm〜約500nm、約50nm〜約250nm、約50〜約200、約50〜約150、約50〜約125、約50〜約100、約50〜約75、約100nm〜約1000nm、約100nm〜約750nm、約100nm〜約500nm、約100nm〜約250nm、約100〜約200、約100〜約150、または約5nm、10nm、20nm、25nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、250nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、750nm、800nm、900nm、1000nm、1250nm、1500nm、2000nm、2500nm、5000nm、7500nmまたは10,000nmの平均直径を有する。
【0043】
一部の実施形態において、ナノ粒子層の粗度は、ナノ粒子の形態、サイズ、充填パターンおよび高さを介して制御される。一部の実施形態において、ナノ粒子層の形態は、構造の所望の特性に不可欠である。一部の実施形態において、形態には、ナノ粒子層の表面粗度が含まれる。一部の実施形態において、表面粗度は、表面高さの絶対値の算術平均Rにより表現される。一部の実施形態において、表面粗度は、表面高さ値の2乗平均平方根、Rにより表現されるかもしれない。一部の実施形態において、表面粗度には、ナノ粒子間隙、互いに極く近接して存在する多数の粒子によって作り出される湾曲した領域が含まれる。一部の実施形態において、表面粗度には、ナノ粒子の間隙が含まれる。一部の実施形態において、近接性には、最短寸法に沿った平均ナノ粒子サイズの半径の約100、75、50、25、20、15、10、8、7、6、5、4、3、2.5、2、1.5、1、0.75、0.5、0.25または0倍以内が含まれる。
【0044】
ナノ粒子層は、任意の構造形成を含んでいてもよい。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、ナノ粒子のおよそ1つの単層から多層までを含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層はナノ粒子のおよそ1つの単層を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、ナノ粒子の多層を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、秩序層、無秩序層、ランダム層、充填層、例えば最密充填層、あるいは例えば表面修飾を介して配列された層である。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、クラスタ化した、凝集した、または孤立した群に秩序化されたナノ粒子を含む。概して、高密度充填または最密充填は、非高密度充填に比べて単位表面積あたりより多くのナノ構造化された部位を提供する。充填密度の限界は、粒子サイズにより影響される。一部の実施形態において、有用な平均ピーク間距離(隣接するナノ粒子の頂点から頂点まで測定されたもの)は、約10nm〜約10,000nmの範囲内のナノ粒子サイズについては約15nm〜15,000nmの範囲内にある。一部の実施形態において、平均ピーク間距離には、約15、30、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900または1000nmの粒子サイズで、約15、30、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900または1000nmが含まれる。一部の実施形態において、平均ピーク間距離には、最短寸法に沿った平均ナノ粒子サイズの半径の約100、75、50、25、20、15、10、8、7、6、5、4、3、2.5または2倍が含まれる。
【0045】
実施形態は、結合剤にボンディングされたナノ粒子層を含む。一実施形態において、ボンディングは、結合剤および/または支持要素の加熱などの熱機序を介して発生する。一部の実施形態において、ボンディングには、結合剤中にナノ粒子を埋め込むことが含まれる。他の実施形態において、ボンディングには、ナノ粒子層を結合剤でコーティングすることが含まれる。
【0046】
一部の実施形態において、ナノ粒子は部分的に結合剤および/または支持要素中に埋込まれて、支持要素にナノ粒子を固定、ボンディングまたは接着する。あるいは、一部の実施形態において、ナノ粒子層を支持要素にボンディングするステップには、粒子間の空間を結合剤で部分的に充填することが含まれる。
【0047】
一部の実施形態において、ナノ粒子層中の粒子の大部分は、結合剤および/またはそれが載っている支持要素の表面よりも上にその体積の一部分を有している。一部の実施形態において、この部分は、粒子の体積の4分の3未満である。一実施形態において、この部分は、粒子の体積の3分の2未満、2分の1未満、例えば3分の1未満である。一部の実施形態において、ナノ粒子層は、ナノ粒子層の直径または主要寸法の約半分未満(すなわち約50%未満)の深さまで固定化層内に埋込まれている。他の実施形態において、深さは、ナノ粒子層の直径の約8分の3未満(すなわち約37.5%未満)である。さらに他の実施形態において、深さは、ナノ粒子層の直径の約4分の1未満(すなわち約25%未満)である。
【0048】
必要に応じて、構造はさらに、キャッピング層を含む。キャッピング層は、結合剤およびナノ粒子構造上に追加される1つの構成要素、および環境効果のための保護コーティングを含む。一部の実施形態において、キャッピング層は、ナノ粒子および/または結合剤構造と共有結合反応するアルカリケイ酸塩、例えばSiOおよびAlkO(ここでAlkは約0.05:1〜約20.0:1のSiO:AlkO比で、Li、NaまたはKを含む)、ペルフルオロポリエーテルシラン(例えばDow Corning(登録商標)DC2634)、フルオロアルキルシラン(例えばヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)、トリメトキシシラン(例えばC17(CHSi(OMe))、またはヒドロカルボンシラン(例えばオクタデシルトリメトキシシラン)を含む。一部の実施形態において、キャッピング層はハイブリッド結合剤、例えばシロキサンまたはシルセスキオキサン(SSQ)を含む。本明細書中で使用されるシロキサンはRSiOであり、ここでRはアルキル、アルケン、アリールまたはアリーレン基を含む。本明細書中で使用される「シルセスキオキサン」という用語は、実験化学式RSiO1.5を有する化合物を意味し、ここでRは水素またはアルキル、アルケン、アリールまたはアリーレン基のいずれかを含む。
【0049】
一部の実施形態において、構造はイオン交換プロセスに付されたガラスを含む。ガラスのイオン交換を行うためのプロセスは、例えば、その全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第3,630,704号明細書中に見い出すことができる。一部の実施形態において、ナノ粒子層および結合剤を含む構造表面の圧縮応力は、イオン交換プロセスに付された支持要素の圧縮応力とほぼ等価である。一部の実施形態において、ナノ粒子層および結合剤を含む構造表面の層深さは、イオン交換プロセスに付された支持要素の層深さとほぼ等価である。
【0050】
第2の態様は、実施された構造を形成する方法を提供することにある。1つの実施形態は、a)支持要素を提供するステップと、b)前記支持要素上にナノ粒子層を形成するステップと、c)前記支持要素上に、アルカリケイ酸塩またはアルカリホウ酸塩を含む結合剤を形成するステップと、d)前記ナノ粒子層と前記結合剤の両方を含む前記支持要素を、前記結合剤がガラスを形成できる温度まで加熱するステップとを含む、構造を形成する方法を含む。一部の実施形態において、結合剤は、アルカリケイ酸塩、アルカリホウ酸塩またはアルカリリン酸塩を含む。一部の実施形態において、アルカリケイ酸塩はSiOおよびAlkOを含み、ここでAlkは、約0.05:1〜約20.0:1の比でLi、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOおよびAlkOを含み、ここでAlkは、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0、1.5、1.7、1.9、2.0、2.2、2.5、2.8、3.0、3.5、4.0、5.0、7.0、10.0、13.0、15.0、17.0または20.0のSiO:AlkO比でLi、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、アルカリケイ酸塩結合剤は、約0.1〜約40.0重量パーセントのSiOを含む。一部の実施形態において、アルカリケイ酸塩結合剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12、14、16、18、20、25、30、35または40重量パーセントのSiOを含む。
【0051】
一部の実施形態において、結合剤はアルカリホウ酸塩を含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOとX(HAlk2−nO)・Bを含み、ここでn<2であり、Xは約0.05〜約20.0であり、Alkは、Li、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOおよびX(HAlk2−nO)・Bを含み、ここでAlkは、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0、1.5、1.7、1.9、2.0、2.2、2.5、2.8、3.0、3.5、4.0、5.0、7.0、10.0、13.0、15.0、17.0または20.0のSiO:X(HAlk2−nO)・B比で、Li、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、アルカリホウ酸塩結合剤は、約0.1〜約40.0重量パーセントのSiOを含む。一部の実施形態において、アルカリホウ酸塩結合剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12、14、16、18、20、25、30、35または40重量パーセントのSiOを含む。
【0052】
一部の実施形態において、結合剤はアルカリリン酸塩を含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOとHAlk3−nPOを含み、ここでn<3であり、AlkはLi、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、結合剤はSiOとHAlk3−nPOを含み、ここでAlkは、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0、1.5、1.7、1.9、2.0、2.2、2.5、2.8、3.0、3.5、4.0、5.0、7.0、10.0、13.0、15.0、17.0または20.0のSiO:HAlk3−nPO比で、Li、NaまたはKを含む。一部の実施形態において、アルカリリン酸塩結合剤は約0.1〜約40.0重量パーセントのSiOを含む。一部の実施形態において、アルカリリン酸塩結合剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12、14、16、18、20、25、30、35または40重量パーセントのSiOを含む。
【0053】
一部の実施形態において、結合剤を形成するステップには、ディップコーティング、スピンコーティング、スロットコーティング、ラングミュア・ブロジェット被着、エレクトロスプレーイオン化、直接ナノ粒子被着、蒸着、化学蒸着、真空濾過、フレーム溶射、エレクトロスプレー、噴霧堆積法、電着、スクリーン印刷、クローズスペース昇華法、ナノインプリントリソグラフィ、インサイチュ成長法、マイクロ波援用化学蒸着、レーザーアブレーション、アーク放電、グラビア印刷、ドクターブレード法、スプレーコーティング、スロットダイコーティングまたは化学エッチングが含まれる。一部の実施形態において、コーティングの厚みには、コーティング速度という関数が含まれる。一部の実施形態において、厚みには結合剤の濃度という関数が含まれる。
【0054】
一部の実施形態において、ナノ粒子層は結合剤中に埋込まれる。一部の実施形態において、結合剤形成ステップは、ナノ粒子層形成ステップの前に行われる。一部の実施形態において、ナノ粒子層形成ステップは、結合剤形成ステップの前に行われる。
【0055】
一部の実施形態において、ナノ粒子層の形成にはディップコーティング、スピンコーティング、スロットコーティング、ラングミュア・ブロジェット被着、エレクトロスプレーイオン化、直接ナノ粒子被着、蒸着、化学蒸着、真空濾過、フレーム溶射、エレクトロスプレー、噴霧堆積法、電着、スクリーン印刷、クローズスペース昇華法、ナノインプリントリソグラフィ、インサイチュ成長法、マイクロ波援用化学蒸着、レーザーアブレーション、アーク放電または化学エッチングが含まれる。一部の実施形態において、コーティングの厚みには、コーティング速度という関数が含まれる。一部の実施形態において、厚みにはナノ粒子層の濃度という関数が含まれる。
【0056】
一実施形態において、ナノ粒子層は、自己集合プロセスの使用、煤堆積または接着剤で形成された単層の使用により形成されてもよい。自己集合方法は、例えば、シランを用いて粒子を機能化し、機能化された粒子を水の上に展延させて単層を形成し、単層を通して構造を置き構造上に粒子を被着させるもの、あるいは当該技術分野において公知の他の自己集合方法によるものであり得る。煤堆積法は、例えば、バーナーなどに反応物質を通過させて煤粒子を生成し、煤粒子を構造上に堆積させるもの、あるいは当該技術分野において公知の他の煤堆積法によるものであり得る。接着剤単層形成法は例えば、接着剤を構造に塗布し、接着剤がコーティングされた構造に粒子を適用し、余剰の粒子を除去して構造上に粒子の単層を形成するもの、あるいは当該技術分野において公知の他の接着剤単層形成法によるものであり得る。プロセスは、構造ガラスのタイプに特定的ではない。一部の実施形態において、炉内で、試料上に錘を置いた状態で構造をその軟化点より低い温度まで加熱し、その後冷却してもよい。
【0057】
一実施形態において、ナノ粒子層は、ディップコーティングにより形成される。一実施形態において、ディップコーティングは、液体担体およびナノ粒子を含む懸濁液または分散を用いて行われる。液体担体は、概して、それが副相上に蓄積しないような特性を有するように選択される。副相液体上に蓄積しない液体担体の能力に関連する可能性のある特性としては、液体担体と副相の混和性および液体担体の蒸気圧が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、液体担体は、副相中で混和性または少なくとも部分的混和性を有するように選択され得る。一実施形態において、液体担体は比較的高い蒸気圧を有するように選択され得る。液体担体は同様に、副相から容易に回収可能なものとしても選択され得る。液体担体は同様に、環境的にまたは職業的に危険であるかまたは望ましくないとみなされることのないものとしても選択され得る。別の実施形態において、液体担体は、以上で指摘した特性の1つ、2つ以上さらには全てに基づいて選択され得る。一部の場合において、本明細書中で論述されているもの以外の特性が、液体担体の選択に関係する場合もある。
【0058】
一実施形態において、液体担体は例えば、単一の溶媒、複数の溶媒の混合物、または他の非溶媒構成成分を有する溶媒(単一溶媒または溶媒混合物)であり得る。利用可能な例示的溶媒としては、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、ケトンおよび類似の物質またはそれらの混合物、例えば2−プロパノール(イソプロパノール、IPAまたはイソプロピルアルコールとも呼ばれる)、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール、クロロホルム、アセトン、ブタノール、オクタノール、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、副相が極性液体(例えば水)である場合、利用可能な例示的液体担体には、例えば2−プロパノール、テトラヒドロフランおよびエタノールが含まれるが、これらに限定されない。液体担体を形成するために溶媒に添加可能である非溶媒構成成分としては、分散剤、塩および粘度調整剤が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態によると、液体副相は、水、重水(DO)、塩水溶液またはそれらの組合せから選択される材料を含む。
【0059】
必要に応じて、構造はさらに、キャッピング層を含む。キャッピング層は、結合剤およびナノ粒子構造上に追加される1つの構成要素、および環境効果のための保護コーティングを含む。一部の実施形態において、キャッピング層は、ナノ粒子および/または結合剤構造と共有結合反応するアルカリケイ酸塩、例えばSiOおよびAlkO(ここでAlkは約0.05:1〜約20.0:1のSiO:AlkO比で、Li、NaまたはKを含む)、ペルフルオロポリエーテルシラン(例えばDow Corning(登録商標)DC2634)、フルオロアルキルシラン(例えばヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)、トリメトキシシラン(例えばC17(CHSi(OMe))、またはヒドロカルボンシラン(例えばオクタデシルトリメトキシシラン)を含む。一部の実施形態において、キャッピング層はハイブリッド結合剤、例えばシロキサンまたはSSQを含む。
【0060】
一部の実施形態において、構造はさらに、イオン交換プロセスに付される。一部の実施形態において、構造は、イオン交換プロセスに付されたガラスを含む。ガラスをイオン交換するためのプロセスは、例えばその全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第3,630,730号明細書中に見い出すことができる。
【実施例】
【0061】
実施例1:結合剤組成物
可溶性ケイ酸塩は、概してさまざまな割合のアルカリ金属とSiOから製造された水溶性ガラスである。表1および2に示されているのは、SiO:NaO比が2.00〜3.22で変動しているケイ酸ナトリウム(「NaSil」)である(PQ Corporation、Sigma−Aldrich)。約2.5以上のSiO/NaO比を有するNaSilは、ナノ粒子接着力に関し優れた性能を示した。26.5%のSiO百分率と2.5のSiO/NaO比を有するケイ酸ナトリウム(5−xシリーズ)は、Sigma Aldrich製であり、27.2%のSiO百分率と3.2のSiO/NaO比を有するケイ酸ナトリウムE(56−Xシリーズ)は、PQ製である。恒常で安定したpH(11〜12)を確保しながら異なるNaSilを異なる濃度まで希釈し、コーティング方法の中で使用する。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
実施例2:粒子の被着および結合剤被着
図4は、100〜250nmのシリカナノ粒子でコーティングされた表面について使用された異なる重量百分率のアルカリ結合剤(調合物5−2〜5−5)を示す(例えばIPA ST−ZL(70〜100nm)Nissan Chemical USA;250nmのシリカ粉末、Fiber optic center;約120〜150nmの水中シリカ分散、microspheres−nanospheres.com製)。一次シリカナノ粒子層は典型的に、1〜5重量%のシリカ/水またはIPA分散液を用いてディップ/スピンコーティングする。濃度、引抜速度およびスピン速度などを変動させることにより、単層コーティングを得る。一次層の乾燥後、結合剤を表面上にディップコーティングする。さまざまな濃度およびディップ引抜速度およびコーティング時間を用いて、結合剤の厚みを変動させる。図1Aおよび1Bは、同じ速度でディップコーティングした2つの異なる濃度の結合剤のSEMを示し、図5はこれらの試料についての対応するデータを示す。
【0065】
実施例3:結合剤熱処理
次に、試料を500℃から630℃まで変動する温度で1時間熱処理する。Dow Corning(登録商標)DC2634を用いてキャッピング層で表面をコーティングした後に、耐久性を測定する。ナノ粒子/結合剤コーティングは、疎油性(>90°)でなければならず、コーティングが拭取試験を乗り切った場合疎油性を保ち続けなければならない。接触角測定のために使用されるゴニオメータは、Drop Shape analyzer DSA100、Kruss GmbH、Germanyとして公知である。
【0066】
図5および6は、それぞれ630℃/1hおよび530℃/0.5hでの結合剤接着力を示し、それに続いてマイクロファイバークロス(382ZZ−100、Photodon.com)を用いた3000/5000回超の拭取後のクロックメーター(AATCC Crockmeter CM−5、SDL−Atlas)の耐久性データと共にキャッピング層を示す。
【0067】
図4は、キャッピング層を伴うケイ酸ナトリウム(NaSil)コーティング(2つのディップコーティング速度での5−4および5−5調合物)を用いて試験された100nmおよび250nmの両方の粒子が、クロックメータースワイピング試験の前後の接触角により測定される3000回拭取耐久性に付された場合に、試験に耐えたことを示している。使用したディップコーターは、KSV NIMA(NIMA technology,UK)製である。接触角の明らかな変化は全く見られなかった。調合物5−2および5−3は、結果としてシリカナノ粒子上により厚いNaSilコーティングをもたらし、これがコーティングの粗度を削減し、ひいては接触角を低減させる。圧縮応力(「CS」)および層深さ(「DOL」)は、コーティングされた側とされていない側の測定に基づく基準試料値の範囲内にあると思われる。
【0068】
図6は、NaSilコーティングを用いて試験された100nmの粒子を比較している。キャッピング層を伴う複数の調合物(25mm/分で5−4および5−5の調合物)は、クロックメータースワイピング試験の前後の接触角によって測定された5000回拭取耐久性に関して有望性を示した。これらの実験において、全ての試料を、接触角測定に先立ちキャッピング用ペルフルオロポリエーテルシランのキャッピング層でコーティングした。透過率%および曇り度%を、BYK Gardner Haze−guard plusを用いて測定する。
【0069】
実施例4:圧縮応力および層深さ
ナノ粒子および結合剤の被着および熱処理の後、試料を、その特定的ガラス組成について確立されたIOX手順に付す。図5は、ナノ粒子/結合剤組成物のイオン交換能を表わすコーティング側と非コーティング側上のCSおよびDOLデータを示す。CSおよびDOLの値は、KNOを用いてイオン交換されている基準2318に匹敵するものである。
【0070】
実施例5:鉛筆硬度データ
図7は、HAZE−GARD PLUS(登録商標)(BYK Additives and Instruments,Inc)由来の異なる直径のナノ粒子/結合剤コーティングについて得た曇り度および透過率%を列挙する。この実施例中で使用されたNaSil結合剤は、SiO/NaO比が3.2の異なるケイ酸ナトリウムである。図は同様に、耐スクラッチ性データも列挙している。耐スクラッチ性は、鉛筆硬度キットを用いて測定し、典型的に耐スクラッチ性は、5B<4B<3B<…B<HB<1H<2H…<9Hの通りに増大する。耐スクラッチ性は、透過率%に不利な影響を及ぼさないような形でより大きな粒子サイズ上により厚い結合剤を付加することによって改善されている。図2および3は、鉛筆スクラッチ試験を行った場合の画像を示す。図2は、3B鉛筆(軟質)の使用を示す画像であり、ここで黒鉛のマークは構造上に転写されているが、スクラッチの形跡は全く無く、図3は5H鉛筆での画像を示し、ここでははっきりとスクラッチマークが見える。
【0071】
実施例6:2重結合剤
ナノ粒子の表面上にアルカリケイ酸塩の結合剤と共にペルフルオロポリエーテルシランのキャッピング層(例えばDow Corning(登録商標)DC2634)を使用することにより、図8で示されている通り、鉛筆スクラッチデータが著しく改善されるように思われた。この実施例では、NaSil結合剤は、キャッピング層に対するプライマ層として作用した。アルカリケイ酸塩を単独で使用すると、鉛筆硬度試験においてナノ粒子層上で測定された場合に、「hb」硬度を用いた時に見られるスクラッチが結果としてもたらされた。しかしながら、アルカリケイ酸塩とキャッピング層を組合せると、結果として、はるかに高い硬度でのスクラッチ発生がもたらされ、表面は8hの鉛筆硬度での試験に合格している。このような実験で使用された有機結合剤は、キャッピング層のように作用するかもしれず、一次層中にナトリウムを添加することで、さらに急速に硬化されるかもしれない。この方法は、試料のイオン交換の前後いずれにおいて使用してもよい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8