(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321551
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】承認空気流を生成するための装置及び方法、並びに承認空気流中の粒子濃度測定におけるこのような装置の使用
(51)【国際特許分類】
G01N 15/06 20060101AFI20180423BHJP
G01N 27/68 20060101ALI20180423BHJP
G01F 1/74 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
G01N15/06 D
G01N27/68 A
G01F1/74
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-557101(P2014-557101)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公表番号】特表2015-507208(P2015-507208A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】FI2013050135
(87)【国際公開番号】WO2013121094
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2016年2月4日
(31)【優先権主張番号】20125187
(32)【優先日】2012年2月18日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】512221108
【氏名又は名称】ペガソー オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤンカ、カウコ
【審査官】
土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−266772(JP,A)
【文献】
特開昭50−064703(JP,A)
【文献】
特表2008−544294(JP,A)
【文献】
特開2005−268126(JP,A)
【文献】
特表2007−514923(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/109688(WO,A1)
【文献】
特開昭50−091390(JP,A)
【文献】
特開昭50−056293(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/061327(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/027394(WO,A1)
【文献】
特表2011−513742(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/022843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/00〜15/14、27/60〜27/70、27/92、G01F1/56〜1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の空気流(Q)を生成するための装置(1)であって、
a.既知の空気流(Q)の入口及び出口のための端部(3、4)を有する第1の通路(2)と、
b.前記第1の通路(2)の内部に配置された、大気中単極イオン(8)を生成するための放電電極(5)と、
c.前記大気中単極イオン(8)を引き付けるように適合され、それにより大気中単極イオン(8)の正味流(7)が生成され、延いては大気中単極イオン(8)の前記正味流の方向に空気流(Q)が生成されるように前記正味流(7)の下流側に配置された対電極(6)と、
d.感知素子(12、13)であって、前記感知素子(12、13)の出力が前記大気中単極イオン(8、11)の濃度の関数である、感知素子(12、13)と、
e.前記感知素子(12、13)の前記出力に影響を及ぼすパラメータを切り換え、或いは変調するための手段(17)と、
f.前記出力の時間応答に基づいて前記体積流量(Q)を決定するための手段であって、前記切換え又は変調が前記感知素子(12、13)の出力に対して生成する前記時間応答に基づいて体積流量(Q)を決定するための手段と
を備えることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記放電電極(5)として働くように適合されたコロナ針を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記第1の通路(2)の内部に配置された第2の通路(21)を備えることを特徴とする請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記放電電極(5)の上流側に置かれた、前記第2の通路(21)内の粒子除去ユニット(22)を備えることを特徴とする請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
a.前記放電電極(5)の下流側に置かれた、前記既知の空気流(Q)と共に装置(1)に流入する粒子(10)の少なくとも一部を帯電させるための帯電チャンバ(16)と、
b.前記粒子(10)に付着しない大気中単極イオン(8)を除去するためのイオン/粒子トラップ(9)と、
c.荷電粒子(11)によって運ばれる電流を測定するための手段(12、13)と、
d.少なくとも、前記放電電極が少なくとも一部の前記粒子(10)に第1の電荷量を与える第1の帯電段と、前記放電電極が少なくとも一部の前記粒子(10)に第2の電荷量を与える第2の帯電段との間で前記放電ユニット(5)を切り換えるか、或いは変調するための手段(17)と
を備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
装置(1)の伝達関数の実質的なパラメータを決定するための手段を備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
a.計算基準信号を提供するための手段であって、前記感知素子の出力に実質的に影響を及ぼすパラメータを切り換え、或いは変調するための前記手段に接続される、計算基準信号を提供するための手段と、
b.前記感知素子の出力と前記基準信号を比較するための手段と、
c.前記感知素子の出力と前記基準信号の間の最大相関のために前記基準信号を調整するための手段と、
d.最大相関を持つ前記基準信号から装置(1)の前記伝達関数を計算するための手段と、
e.前記計算された伝達関数の少なくともいくつかのパラメータを使用して、装置(1)を通る前記体積流量(Q)を決定するための手段と
を備えることを特徴とする請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記感知素子(12、13)の出力に影響を及ぼすパラメータを切り換え、或いは変調するための前記手段(17)の切換え又は変調周波数を0.01Hzと10Hzの間で調整するための手段を備えることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
超微粒子濃度を決定するための請求項1から8に記載の装置(1)の使用であって、
a.前記時間応答に基づいて時間期間tに対する累積流Qtを決定するステップであって、前記切換え又は変調が前記感知素子の出力に対して生成する前記時間応答に基づいて累積流Qtを決定するステップと、
b.前記時間期間tに対する累積粒子質量Mt又は累積粒子数Ntを決定するステップと、
c.累積粒子質量Mt又は累積粒子数Ntを累積流Qtで割ること、つまりM=Mt/Qt及びN=Nt/Qtによって粒子質量又は個数濃度M又はNを決定するステップと
を特徴とする使用。
【請求項10】
既知の空気流を生成するための方法であって、
a.第1の通路内の放電電極を使用して大気中単極イオンを生成するステップと、
b.前記大気中単極イオンを引き付けて大気中単極イオンの正味流を生成し、それにより大気中単極イオンの前記正味流の方向に空気流を生成するように前記正味流の下流側に配置された対電極を使用するステップと、
c.前記大気中単極イオンの濃度を決定するステップと、
d.前記大気中単極イオンの前記濃度に影響を及ぼすパラメータを切り換えるか、或いは変調するステップと、
e.前記出力の時間応答に基づいて体積流量を決定するステップであって、前記切換え又は変調が大気中電荷の濃度に対して生成する前記時間応答に基づいて体積流量を決定するステップと
を特徴とする方法。
【請求項11】
大気中単極イオンを生成するためにコロナ針を使用するステップを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の通路の内部に配置された第2の通路(21)で前記既知の空気流を分割するステップを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の通路に流入する粒子を実質的に除去するステップであって、粒子の除去が前記放電電極の上流側で実施されるステップを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の通路の流れを第3の通路内で結合するステップを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
a.装置(1)に流入する粒子の少なくとも一部を帯電させるステップと、
b.荷電粒子によって運ばれる電流を測定するステップと、
c.少なくとも、前記放電電極が少なくとも一部の前記粒子に第1の電荷量を与える第1の帯電段と、前記放電電極が少なくとも一部の前記粒子に第2の電荷量を与える第2の帯電段との間で前記放電ユニットを切り換えるか、或いは変調するステップと
を特徴とする請求項10から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
装置(1)の伝達関数の実質的なパラメータを決定するための手段を備えることを特徴とする請求項10から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
a.計算基準信号を提供するステップと、
b.感知素子の出力と前記基準信号を比較するステップと、
c.前記感知素子の出力と前記基準信号の間の最大相関のために前記基準信号を調整するステップと、
d.最大相関を持つ前記基準信号から装置(1)の前記伝達関数を計算するステップと、
e.前記計算された伝達関数の少なくともいくつかのパラメータを使用して、装置(1)を通る前記体積流量を決定するステップと
を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記感知素子の出力に影響を及ぼすパラメータの切換え又は変調の周波数を0.01Hzと10Hzの間で調整するステップを含むことを特徴とする請求項10から17までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知の空気流を生成するための装置に関する。また、本発明は、既知の空気流を生成するための方法に関する。本発明は、さらに、空気流中の粒子濃度を決定する際の、既知の空気流を生成するための上記装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
空気の品質を測定するための様々なセンサにおいて、既知の体積流量の空気をセンサに通過させる必要がある。このようなセンサは、例えば粒子濃度センサ、湿度センサ及び様々なガス・センサを含む。
【0003】
微粒子は、多くの工業プロセス及び燃焼プロセスで形成される。さらに、微粒子は、ダクト及び換気システムを流れる呼吸空気中及び室内空間に存在する。様々な理由でこれらの微粒子が測定される。微粒子の測定は、場合によっては健康に対する微粒子の潜在的な影響のために実施され、また、工業プロセス及び燃焼プロセスの操作を監視するために実施される。また、微粒子は、空気の品質を監視するために換気システム内でも測定される。微粒子を監視するもう1つの理由は、工業プロセスにおけるナノサイズの粒子の使用及び製造の増加である。
【0004】
国際公開第2009109688(A1)号パンフレットに、微粒子を測定するための従来技術による方法及び装置の1つが記載されている。この従来技術による方法では、清浄で、実質的に粒子が存在しないガスが装置に供給され、且つ、主流として、入口チャンバを介して、装置の内部に設けられた排出器に導かれる。この清浄なガスは、さらに、この清浄なガスを入口チャンバに供給する前、及び入口チャンバに供給している間にイオン化される。イオン化された清浄なガスは、場合によっては音速、又は音速に近い速度で排出器に供給されることが好ましい。清浄なガスのイオン化は、例えばコロナ・チャージャを使用して実施することができる。入口チャンバは、さらに、微粒子を有するエアロゾルを備えた通路又は空間と流体連通して配置されたサンプル入口を備えている。清浄なガスの流れ及び排出器があいまってサンプル入口に吸引力をもたらし、それによりダクト又は空間から入口チャンバまで、サンプル・エアロゾルの流れが形成される。従ってサンプル・エアロゾルの流れは、側流として排出器に与えられる。イオン化された清浄なガスによって粒子が帯電する。この荷電粒子は、さらに、エアロゾルを含んだダクト又は空間にもう一度導くことができる。従って帯電した粒子によって運ばれる電荷を監視することによってエアロゾル・サンプルの微粒子が監視される。自由イオンは、さらに、イオン・トラップを使用することによって除去することができる。
【0005】
国際公開第2009109688(A1)号パンフレットに記載されている粒子センサの動作には、清浄な空気源又はガス源が必要である。測定間隔が短いいくつかの特殊な場合、ガス・シリンダ又は等価物を使用して清浄な空気を提供することができるが、ほとんどの場合、必要な体積流量及び動作圧力を生成することができる何らかの種類のポンプを使用することが便利である。すべてのパラメータが実質的に一定を維持する場合、国際公開第2009109688(A1)号パンフレットに記載されている構造は、センサを通る実質的に一定のサンプル流を提供する。しかしながら、動作パラメータ又は他の条件の変化、例えばセンサ中の粒子蓄積の変化などが生じる可能性がある場合、センサを通る体積流量を決定しなければならない。しかしながら国際公開第2009109688(A1)号パンフレットは、この点に関して言及していない。
【0006】
微粒子監視装置に対する重要な要求の1つは、信頼性の高い動作及び有効な動作である。さらに、これらの微粒子監視装置は、微粒子測定を実時間で実施するために、少ないエネルギー消費で連続的に動作させることができることが同じく好ましい。
【0007】
ファン、ポンプ又は圧縮ガスの使用など、センサの動作に必要な流れを生成するための従来の方法が存在しているが、このような解決法は、例えば頻繁な保全が必要であるため、場合によっては便利ではない場合がある。従って長期間にわたって信頼性の高い空気流を提供する方法で流れを生成する必要がある。
【0008】
米国特許公開第4210847号、The United States of America as represented by the Secretary of the Navy、1.7.1980は、可動部品を使用することなく空気噴流を生成するためのデバイスを提供している。高電圧を使用して、高電圧を利用することができる増強冷却用途のために使用することができるダクト化コンパクト携帯用発電機中にコロナ放電対流放電が生成される。
【0009】
センサ中のコロナ放電対流放電(「イオン・ウィンド」、「イオニック・ウィンド」又は「コロナ・ウィンド」とも呼ばれる)を使用する着想は、空気流中の大気中粒子を帯電させる大気中単極イオンを生成するための高電圧放電電極を備えたセンサを記述している、米国特許出願公開第2011/0216317号、KoninklijkePhilips Elelctronics N.V.、8.9.2011に提供されている。生成されたイオンは、さらに、センサの内部の放電電極と対電極の間のイオニック・ウィンドをセットアップするために使用される。イオニック・ウィンドは、センサを通る空気流を維持するための駆動力であり、且つ、可聴雑音が生じないセンサ動作を可能にする。空気流における荷電粒子の存在は、粒子感知セクションに配置された電流計によって測定され、これは、粒子感知セクションの上流側に配置された個別の遮蔽電極によってすべての大気中イオンが空気から除去された後に、析出電極の表面に単位時間当たりに析出する粒子拘束電荷を測定する。
【0010】
コロナ放電ユニットによって生成されるイオン・ウィンドは、清浄な空気と共に、短い時間間隔の間、安定を維持することができるが、イオン・ウィンドには、コロナ形状又はコロナ・チップ汚損の変化によって変化する傾向がある。
【0011】
米国特許公開第3324291号、Xerox Corporation、6.6.1967は、ユニットの中又はユニットの周囲へのほこりの蓄積、つまり堆積を防止することによって浄化作用を提供するために利用される空気流を生成するための、複写機におけるコロナ・ウィンドの使用を記述している。ユニットに流入する空気自体には、蓄積する可能性のあるほこり又は汚物粒子がほとんど存在しないことを保証するために、コロナ・ウィンド生成ユニットの上流側にフィルタが設けられている。これにより空気が清浄な状態に維持されるが、その一方では、フィルタにほこりがたまると、フィルタの両端間の圧力降下が大きくなり、従ってイオニック・ウィンドによって生成される流れが減少する。
【0012】
フィルタが詰まる問題は、静電集塵器を使用して解決することができたとしても、対流放電によって生成される空気流は通常は極めて少なく、また圧力差が小さいため、例えばセンサを通る流れは、センサ環境によって生成される外乱に敏感である、という特徴が依然として存在している。従って対流放電を使用して既知の(つまり識別された)空気流の生成を改良する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2009109688(A1)号パンフレット
【特許文献2】米国特許公開第4210847号
【特許文献3】米国特許公開第3324291号
【特許文献4】PCT出願PCT/FI2011/050730号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、或いは少なくとも軽減する装置を提供することである。本発明の目的は、請求項1の特徴部分による装置によって達成される。また、本発明の目的は、請求項12の特徴部分による方法によって達成される。発明された装置を使用する目的は、請求項11の特徴部分によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の好ましい実施例は従属請求項に開示されている。
【0016】
驚くべきことには、本発明者は、流れを低コストで測定し、或いは監視することにより、上で説明した従来技術の問題を解決する方法を見出した。流れの低コスト測定又は監視については、現在は公開されていない本出願人のPCT出願PCT/FI2011/050730号明細書に詳細に記載されており、この特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0017】
発明された、承認流を生成するための方法は、通路内の放電電極を使用して大気中単極イオンを生成するステップと、前記大気中イオンを引き付けて大気中イオンの正味流を生成し、それにより大気中イオンの正味流の方向に空気流を生成するように適合された対電極を使用するステップと、大気中電荷の濃度を決定するステップと、大気中電荷の濃度に影響を及ぼすパラメータを切り換えるか、或いは変調するステップと、時間応答に基づいて体積流量を決定するステップであって、時間応答の切換え又は変調を大気中電荷の濃度に対して生成するステップとを含む。好ましいことには、コロナ針を使用して大気中単極イオンが生成される。
【0018】
単極イオン生成に基づく粒子センサの濃度測定結果に影響を及ぼすことができる切換え可能なパラメータの数は、ごく限られている。通常、切換え又は変調に有利なパラメータは、粒子荷電効率及び粒子トラッピングであり、また、変調するための実際の手段は、コロナ電圧/電流及びイオン・トラップ電圧である。
【0019】
承認流は、第1の通路と第2の通路の間で分割することができ、第2の通路は、第1の通路の内側に置かれる。第2の通路に流入する粒子は実質的に除去され、粒子の除去は放電電極の上流側で実施される。この方法によれば、少量の、実質的に粒子が存在しない空気流がコロナ針に隣接して通過し、従ってコロナ針の先端は汚損されない。第1及び第2の通路は、第2の通路を通る流れが流れ全体の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満になり、従って承認流生成装置が粒子測定センサと共に使用されても、粒子が除去される第2の通路を使用することによって著しい測定誤差が生じない方法で構築されることが好ましい。第1及び第2の通路の流れは第3の通路内で結合され、この第3の通路は、例えば文書国際公開第2009109688(A1)号パンフレットに記載されているように、承認流を生成するための装置が粒子荷電に基づく粒子測定センサ内で使用される場合、イオン及び粒子のための混合通路としても働く。
【0020】
本発明の一実施例では、発明された方法は、承認流生成装置に流入する粒子の少なくとも一部を帯電させるステップと、荷電粒子によって運ばれる電流を測定するステップと、少なくとも、放電電極が少なくとも一部の粒子に第1の電荷量を与える第1の帯電段と、放電電極が少なくとも一部の粒子に第2の電荷量を与える第2の帯電段との間で放電ユニットを切り換えるか、或いは変調するステップとを含む。
【0021】
本発明の好ましい実施例では、放電ユニットの切換えモード或いは変調モードからの応答は、同期検出によって決定される。同期検出は、アナログ電子工学又はディジタル方式のいずれかを使用することによって実現することができる。ディジタルによる実現は、明らかなように、個別の計算ユニットの中で実施することができ、或いは共通のコントローラ又は計算ユニットに統合することができ、電気衝突式採集器の他の制御機能も同じく実施される。
【0022】
本発明の他の実施例では、発明された方法は、承認流生成装置に流入する粒子の少なくとも一部を帯電させるステップと、荷電粒子によって運ばれる電流を測定するステップと、装置を通過するエアロゾルからイオン、荷電超微粒子又は荷電微粒子を除去するステップと、少なくとも、イオン/粒子トラップが自由イオンを実質的に除去するオフ・モードと、イオン/粒子トラップがd
pより小さい直径を有する粒子を実質的に除去するオン・モードとの間でイオン/粒子トラップを切り換えるか、或いは変調するステップとを含む。自由イオン又は粒子の除去は、イオン・トラップの両端間の電界の強度によって決まる。
【0023】
発明された方法は、承認流生成装置の伝達関数の実質的なパラメータを決定するステップと、装置を通る体積流量を計算するためにこれらの実質的なパラメータを使用するステップとを含む。本発明の一実施例では、発明された方法は、計算基準信号を与えるステップと、感知素子の出力と基準信号を比較するステップと、感知素子の出力と基準信号の間の最大相関のために基準信号を調整するステップと、最大相関を使用して基準信号から装置の伝達関数を計算するステップと、計算された伝達関数の少なくともいくつかのパラメータを使用して、装置を通る体積流量を決定するステップとを含む。計算基準信号は、少なくとも一次低域通過フィルタに従うことができ、その場合、一次低域通過フィルタの遅延時間t
d及び時定数τを決定することにより、t
d、τの逆数、又はそれらの合計t
d+τを使用して、装置を通る体積流量を決定することができる。
【0024】
発明された方法では、感知素子の出力に影響を及ぼすパラメータの切換え/変調周波数は、0.01Hzと10Hzの間にすることができ、従って承認流を速やかに決定することができ、延いてはセンサを通る空気流を必要とするセンサのための正確な基本を提供することができる。
【0025】
さらには、例えばエアロゾル組成の変化が速い場合、必要に応じて連続的に実質的なパラメータを決定することも可能である。短い時間間隔に対する測定環境の変化が顕著ではない場合、また、測定の最大時間応答が必要である場合、より長い時間間隔を使用して実質的なパラメータを決定することができる。
【0026】
以下、本発明について、添付の図面を参照して、好ましい実施例に関連してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本発明による装置の他の実施例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、発明された、承認流Qを生成するための装置1を示したものである。装置1は、承認流Qの入口及び出口のための端部3、4を有する第1の通路2を備えている。第1の通路2は、記述されている流れQとの20Pa未満、より好ましくは10Pa未満、最も好ましくは5Pa未満の圧力差を生成するように設計されることが好ましく、このような圧力レベルは、通常、流れを生成するための対流放電を使用して達成することができる。ほとんどの場合、第1の通路2の端部3、4は、実質的に開放されている。通路2の内部は、絶縁変圧器15を使用して主母線から絶縁されている高電圧源14から電力が供給される放電電極5である。放電電極5は、大気中単極イオン8を生成するように適合されており、また、対電極6は、前記大気中イオン8を引き付けるように適合され、それにより大気中イオン8の正味流7が生成され、延いては大気中イオン8の正味流の方向に空気流Qが生成されるように適合されている。装置1は、さらに、感知素子12、13であって、該感知素子12、13の出力が大気中電荷8、11の濃度の関数である感知素子12、13を備えている。感知素子は、感知素子12に流入する、即ち感知素子12を通過する電荷を測定するように構築することができ、或いは大気中電荷として装置1から漏れる電流を測定する電位計として構築することができる。粒子濃度を測定するためのこのいわゆる「漏れ電流技法」については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている国際公開第2009109688(A1)号パンフレットに詳細に記載されている。装置1は、さらに、感知素子12、13の出力に影響を及ぼすパラメータを切り換え、或いは変調するための手段17と、時間応答に基づいて体積流量Qを決定するための手段(
図1には示されていない)であって、時間応答の切換え又は変調を感知素子12、13の出力に対して生成する手段とを備えている。好ましいことには、体積流量Qは、計算基準信号を提供し、感知素子12、13の出力と基準信号を比較し、感知素子12、13の出力と基準信号の間の最大相関のために基準信号を調整し、最大相関を使用して基準信号から装置1の伝達関数を計算し、且つ、計算された伝達関数の少なくともいくつかのパラメータを使用して、装置1を通る体積流量を決定することによって決定される。本発明の一実施例では、計算基準信号は、少なくとも一次低域通過フィルタに従うことができ、その場合、一次低域通過フィルタの遅延時間t
d及び時定数τを決定することにより、t
d、τの逆数、又はそれらの合計t
d+τを使用して、装置1を通る体積流量Qを決定することができる。
【0029】
本発明の一実施例では、装置1は、放電電極5として働くように適合されたコロナ針を備えている。コロナ針の汚損を回避するために、装置1は、
図2に示されている本発明の一実施例では、第1の通路2の内部に置かれた第2の通路21を備えている。第2の通路は、放電電極5の上流側に置かれた粒子除去ユニット22を備えている。イオン・ウィンドが空気を装置1の中に引きずり込むと、空気流Qの一部がフィルタ22を通過し、この流れの部分から粒子が実質的に除去される。次に、清浄な空気が第2の通路21を通過してコロナ針5の近傍から流出し、従ってコロナ針の汚損が防止される。通路21を通過する流れの部分は、通路2を通過する流れと比較すると少ないため、このような構造を使用しても、例えば装置1を使用して粒子測定センサのための承認流を生成する場合であっても、有害な誤った結果をもたらすことはない。驚くべき発見は、イオン・ウィンドの流れは第2の通路21からの清浄な空気に従わないことである。その場合、流れによって供給される力は、第1の通路2からの流れではなく、主として前記清浄な空気の流れに向かうことになり、従って主として通路21からの清浄な空気の流れを供給する。この種の構造の流速は、撹乱混合を生成するには速度が遅すぎる。しかしながら、上記発見によれば、通路21からのイオン雲は、通路2及び21の流れが合流した流路の断面全体にわたる静電引力のため、効果的に広がる。この理由により、静電界によって生じるイオンに対する力は、それぞれ流路の断面全体に向かって導かれる。また、この特徴によれば、通路2から通過する粒子を第2の通路21から供給されるイオンによって帯電させることができる。通路2からの空気の引き込みを強化するために、対電極6は、大気中イオン8の正味流7がコロナ針5から対電極6に向かって導かれるように設計されており、この設計は、通路21から装置1の端部4に向かうまっすぐな流れ方向を実質的にカバーしていない。
【0030】
本発明の一実施例では、装置1は、放電電極5の下流側に置かれた、承認流Qと共に装置1に流入する粒子10の少なくとも一部を帯電させるための帯電チャンバ16と、粒子10に付着しないイオン8を除去するためのイオン/粒子トラップ9と、荷電粒子11によって運ばれる電流を測定するための手段12、13と、少なくとも、放電電極5が少なくとも一部の粒子10に第1の電荷量を与える第1の帯電段と、放電電極5が少なくとも一部の粒子10に第2の電荷量を与える第2の帯電段との間で放電ユニット5を切り換えるか、或いは変調するための手段17とを備えている。この実施例は、イオン(自由電荷)8よりも荷電粒子の方が空気流Qから除去することが困難であればあるほど、放電ユニット5の変調に対する応答がより正確である、という利点を提供する。放電ユニットは、オン段とオフ段の間でのみ切り換えることができ、その場合、体積流量は、コロナ放電ユニット5と感知ユニット12の間の体積を知ることによって、或いは感知素子13を使用した漏れ電流技法が使用される場合であれば、コロナ放電ユニット5と装置1の出力端4の間の距離を知ることにより、オン段への切換えの応答のみから容易に決定される。他の実施例では、放電ユニット5は、少なくとも2つの電圧の間(及び/又は2つの放電電流の間)で変調され、これらの変調の各々は、装置1を通る空気流を提供する。
【0031】
本発明の他の実施例では、装置1は、前記放電電極5の下流側に置かれた、装置1に流入する粒子10の少なくとも一部を帯電させるための帯電チャンバ16と、荷電粒子11によって運ばれる電流を測定するための手段12、13と、イオン8及び/又はd
pより小さい直径を有する荷電粒子11を除去するためのイオン/粒子トラップ9と、少なくとも、イオン/粒子トラップ9が自由イオン8を実質的に除去するオフ・モードと、イオン/粒子トラップ9がd
pより小さい直径を有する荷電粒子11を実質的に除去するオン・モードとの間でイオン/粒子トラップ9の電源18の出力を切り換えるか、或いは変調するための手段17とを備えている。このような実施例の利点は、流れを決定している間、流れQを実質的に一定に維持することができることである。
【0032】
本発明の一実施例では、装置1は、装置1の伝達関数の実質的なパラメータを決定するための手段を備えている。これらの手段は、当業者には明らかであるように、アナログ手段又はディジタル手段によって構築することができ、また、これらの手段は、1つ又は複数の機能ブロックの中で実現することができる。
【0033】
本発明の一実施例では、装置1は、計算基準信号を与えるための手段であって、感知素子の出力に実質的に影響を及ぼすパラメータを切り換え、或いは変調するための手段に接続される計算基準信号を与えるための手段を備えている。装置1は、さらに、感知素子の出力と基準信号を比較するための手段と、感知素子の出力と基準信号の間の最大相関のために基準信号を調整するための手段と、最大相関を使用して基準信号から装置1の伝達関数を計算するための手段と、計算された伝達関数の少なくともいくつかのパラメータを使用して、装置1を通る体積流量Qを決定するための手段とを備えている。好ましい実施例では、装置1は、少なくとも一次低域通過フィルタに従う計算基準信号を与えるための手段と、一次低域通過フィルタの遅延時間t
d及び時定数τを決定するための手段と、t
d、τの逆数、又はそれらの合計t
d+τを使用して、装置1を通る体積流量を決定するための手段とを備えている。デバイス内の流れの挙動に応じて、遅延及び混合反応器の合計の動的モデルを使用することも可能であることは当業者には明らかである。
【0034】
本発明の一実施例では、装置1は、感知素子12、13の出力に影響を及ぼすパラメータを切り換え、或いは変調するための手段17の切換え/変調周波数を0.01Hzと10Hzの間で調整するための手段を備えている。このような実施例によれば、流れを速やかに決定することができる。
【0035】
また、本発明は、超微粒子濃度を決定するための上記実施例に示されている装置1の使用を含む。装置1のこのような使用は、時間応答に基づいて時間期間tに対する累積流Q
tを決定するステップであって、時間応答の切換え又は変調を感知素子の出力に対して生成するステップと、時間期間tに対する累積粒子質量M
t又は累積粒子数N
tを決定するステップと、累積粒子質量M
t又は累積粒子数N
tを累積流Q
tで割ること、つまりM=M
t/Q
t及びN=N
t/Q
tによって粒子質量又は個数濃度M又はNを決定するステップとを含む。上で説明した構造の重要な利点は、高価な構成要素である感知素子及び放電ユニットのほとんどが、制御された流れの生成及び粒子濃度感知の両方の機能に対して共通であることである。
【0036】
本発明の基本着想は、技術が進歩するにつれて様々な方法で実施することができることは当業者には明らかである。従って本発明及びその実施例は上記実例に限定されず、それらは特許請求の範囲内で変更することができる。