(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態で示す例に限られない。
【0039】
まず、本実施形態に係る物品の製造方法(以下、「本製造方法」と記す。)について説明する。
【0040】
本製造方法は、その一部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートを含む物品の製造方法であり、前記樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートであり、前記樹脂製シートの接合される一部の少なくとも一方が前記多孔質シートである部分を、次の(a)〜(c)により、前記樹脂製シートの前記一部同士を接着するように接合する、工程を含むことを特徴とする:(a)前記多孔質シートの接合される前記一部に、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を接触させること;、(b)前記第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、前記多孔質シートの接合される前記一部を加熱すること;、及び(c)前記第一のフッ素樹脂の多孔質の第一の層と、前記第二のフッ素樹脂の第二の層と、前記第一の層と前記第二の層との間にある前記第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の第三の層と、を含む接合部を形成すること。
【0041】
まず、本製造方法では、物品に含まれる樹脂製シートの一部同士を接合する。すなわち、例えば、上記樹脂製シートが1枚の場合、1枚の当該樹脂製シートの一部と、他の一部とを接合することとなる。また、樹脂製シートが2枚以上の場合、例えば、一対の樹脂製シートの一方の一部と、他方の一部とを接合することとしてもよい。
【0042】
接合される上記一部は、当該樹脂製シートの一部であれば、部位は特に限られない。例えば、接合される一部は、上記樹脂製シートの端部であることとしてもよい。この場合、例えば、上記樹脂製シートの端部と、他の端部とを接合することとしてもよい。また、例えば、上記樹脂製シートの端部と、端部以外の部分とを接合することとしてもよい。また、上記樹脂製シートの端部以外の部分と、端部以外の部分とを接合することとしてもよい。
【0043】
上記樹脂製シートが一枚の場合、上記樹脂製シートは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである。上記樹脂製シートが2枚以上の場合、上記樹脂製シートは、すべて第一のフッ素樹脂製の多孔質シートであってもよい。また、上記樹脂製シートは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートと、第一のフッ素樹以外の樹脂のシートとを含んでいてもよい。この場合、第一のフッ素樹脂以外の樹脂は、例えば、上述の第二のフッ素樹脂であることとしてもよく、第二のフッ素樹脂以外の樹脂であることとしてもよい。
【0044】
また、上記多孔質シートは、複数の孔が形成された第一のフッ素樹脂製のシートである。上記複数の孔は、連通孔であることとしてもよく、独立孔であることとしてもよい。また、上記孔は、上記多孔質シートの厚さ方向に貫通していてもよい。
【0045】
上記孔の孔径は特に限られないが、例えば、0.01〜10μmであることとしてもよく、0.3〜1.5μmであることとしてもよい。また、多孔質シートの空孔率は、例えば、50%以上であることとしてもよく、60%以上であることとしてもよい。また、上記空孔率は90%以下であることとしてもよく、80%以下であることとしてもよい。
【0046】
第一のフッ素樹脂は、多孔質シートを構成できるフッ素樹脂であれば特に限られない。例えば、上記第一のフッ素樹脂は、その融点が160℃以上であることとしてもよく、230℃以上であることとしてもよく、310℃以上であることとしてもよく、320℃以上であることとしてもよい。高い耐熱性が要求される物品に使用する場合には、特に融点が高いことが好ましい。第一のフッ素樹脂の融点の上限は特に限られないが、例えば350℃以下であることとしてもよい。
【0047】
具体的には、第一のフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)からなる群より選択されるフッ素樹脂であることとしてもよい。
【0048】
第二のフッ素樹脂は、当該第二のフッ素樹脂の融点が、上記第一のフッ素樹脂の融点よりも低いものであれば、特に限られない。すなわち、例えば、第二のフッ素樹脂の融点は、150℃以上であることとしてもよく、220℃以上であることとしてもよい。また、第二のフッ素樹脂の融点は、340℃以下であることとしてもよく、330℃以下であることとしてもよく、310℃以下であることとしてもよい。
【0049】
具体的には、上記第二のフッ素樹脂は、例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択されるフッ素樹脂であることとしてもよい。具体的には、第二のフッ素樹脂は、例えば、FEPであることとしてもよい。
【0050】
また、第二のフッ素樹脂は、第一のフッ素樹脂と比べて融点が小さいものであれば、例えば、第一のフッ素樹脂と同一組成のものであってもよい。すなわち、第一のフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、第二のフッ素樹脂は、第一のフッ素樹脂と比べて融点が小さいポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることとしてもよい。なお、同一組成の樹脂であっても、重合度、結晶性等の違いにより融点を異なるものとすることができる。
【0051】
第一のフッ素樹脂と第二のフッ素樹脂の組み合わせは特に限られないが、例えば、当該第一のフッ素樹脂の融点と当該第二のフッ素樹脂の融点との差が、10℃以上であることとしてもよく、50℃以上としてもよく、100℃以上であることとしてもよい。すなわち、例えば、第一のフッ素樹脂はその融点が320℃以上のフッ素樹脂(例えば、PTFE)で、且つ第二のフッ素樹脂の融点が第一のフッ素樹脂の当該融点よりも10℃以上低くてもよく、50℃以上低くてもよく、100℃以上低くてもよい。
【0052】
なお、第一のフッ素樹脂及び第二のフッ素樹脂は、上記物品の種類を問わず、上述のものを任意に組み合わせて使用することができる。
【0053】
本製造方法は、上記樹脂製シートの接合される一部の少なくとも一方が上記多孔質シートである部分(すなわち、その少なくとも一方が上記多孔質シートである、上記樹脂シートの接合される一部)を、次の(a)〜(c)により、当該樹脂製シートの当該一部同士を接着するように接合する工程を含む:(a)前記多孔質シートの接合される前記一部に、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を接触させること、(b)前記第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、前記多孔質シートの接合される前記一部を加熱すること、及び(c)前記第一のフッ素樹脂の多孔質の第一の層と、前記第二のフッ素樹脂の第二の層と、前記第一の層と前記第二の層との間にある前記第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の第三の層と、を含む接合部を形成すること。
【0054】
上記工程においては、まず、上記多孔質シートの接合される一部に、上記第二のフッ素樹脂を接触させる。接触させる方法は特に限られないが、例えば、上記多孔質シートの接合される一部に、第二のフッ素樹脂のシートを接触させることとしてもよい。また、上記多孔質シートの接合される一部に、粉末状の第二のフッ素樹脂を塗布することとしてもよい。また、上記多孔質シートの接合される一部に、第二のフッ素樹脂を溶剤に溶かして得られた組成物(例えば、ワニス)を塗布することとしてもよい。
【0055】
上述のように、上記多孔質シートの接合される一部に上記第二のフッ素樹脂を接触させた後、当該第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、上記多孔質シートの接合される一部を加熱し、上記第一のフッ素樹脂の多孔質の第一の層と、当該第二のフッ素樹脂の第二の層と、当該第一の層と前記第二の層との間にある当該第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の第三の層と、を含む接合部を形成する。
【0056】
上記加熱温度は、第二のフッ素樹脂の融点以上であれば特に限られない。すなわち、例えば、上記第二のフッ素樹脂の融点以上、上記第一のフッ素樹脂の融点未満であることとしてもよい。また、上記加熱温度は第一のフッ素樹脂の融点以上であることとしてもよい。加熱温度が第一のフッ素樹脂の融点以上である場合には、特に接合強度の大きい接合部を形成できる。
【0057】
具体的には、加熱温度は、例えば、150℃以上であることとしてもよく、260℃以上であることとしてもよく、280℃以上であることとしてもよく、310℃以上であることとしてもよく、330℃以上であることとしてもよく、360℃以上であることとしてもよい。また、加熱温度は500℃以下であることとしてもよい。すなわち、加熱温度は、150℃〜500℃であることとしてもよく、260℃〜500℃であることとしてもよく、310℃〜500℃であることとしてもよく、330℃〜500℃であることとしてもよく、360℃〜500℃であることとしてもよい。より具体的には、加熱温度は150〜200℃であることとしてもよく、260〜300℃であることとしてもよく、310〜330℃であることとしてもよく、330〜350℃であることとしてもよい。
【0058】
次に、上記接合部の形成について詳しく説明する。上記接合部は、上記第一のフッ素樹脂の多孔質の第一の層と、上記第二のフッ素樹脂の第二の層と、当該第一の層と前記第二の層との間にある当該第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の第三の層と、を含む接合部である。当該接合部は、上述の通り、上記多孔質シートの接合される一部に、上記第二のフッ素樹脂を接触させて、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートと、第二のフッ素樹脂とを、当該第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で加熱することにより形成される。
【0059】
このように、当該多孔質シートの接合される一部に第二のフッ素樹脂を接触させた状態で、当該多孔質シートの接合される一部を第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で加熱しているため、上記第二のフッ素樹脂は溶融することとなる。
【0060】
この場合、第二のフッ素樹脂の少なくとも一部は溶融し、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートの孔に入り込むと考えられる。そして、その後加熱された一部が冷えると、当該第一のフッ素樹脂は孔に第二のフッ素樹脂が入り込んだまま収縮し、アンカー効果により強固な接合が形成されると考えられる。すなわち、この場合、第一のフッ素樹脂の多孔質の第一の層と第二のフッ素樹脂の層との間には、第二のフッ素樹脂が第一のフッ素樹脂の細孔に入り込むことで形成された、第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の第三の層が形成されると考えられる。
【0061】
また、上述の多孔質シートの接合される一部を、第一のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で加熱した場合、第一のフッ素樹脂及び第二のフッ素樹脂の分子運動は第一のフッ素樹脂の融点未満の加熱温度の場合に比べ、より活発となり、当該第二のフッ素樹脂と当該第一のフッ素樹脂とが溶融する。溶融した上記第一のフッ素樹脂と上記第二のフッ素樹脂は、混合し、絡み合い、加熱が終わると冷えて収縮する。加熱された当該部分が冷える際に、第一のフッ素樹脂は、加熱温度が第一のフッ素樹脂の融点未満の場合に比べ、収縮の度合いが大きい。その結果、第一のフッ素樹脂の融点未満の加熱温度の場合に比べ、接合の強度はさらに高まる。なお、加熱温度が、第一のフッ素樹脂の融点以上であっても、本製造方法に係る接合部は、第二のフッ素樹脂が第一のフッ素樹脂の細孔に入り込むことで形成された第三の層を含んでいてもよい。
【0062】
本実施形態に係る物品(以下、「本物品」と記す)は、上記第一のフッ素樹脂の多孔質の第一の層と、当該第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂の第二の層と、当該第一の層と当該第二の層との間にある前記第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の第三の層と、を含む接合部、を含む。すなわち、本物品に係る物品は、上述の本製造方法に係る接合部と同様の構成を有する接合部である。よって、本物品は、上述の本製造方法により、好ましく製造される。
【0063】
すなわち、本物品に係る第一のフッ素樹脂及び第二のフッ素樹脂は、上述の本製造方法で述べたものを任意に組み合わせて採用することができる。第一のフッ素樹脂及び第二のフッ素樹脂の融点についても上述の本製造方法に係るものと同様とすることができる。
【0064】
ここで、上記接合部について、具体的に、図面を参照しながら説明する。
図13及び
図14は、本物品に係る接合部の断面を走査型電子顕微鏡で撮影した画像である。すなわち、
図13及び
図14に係る接合部は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔質シートを使用した例である。第二のフッ素樹脂としては、第二のフッ素樹脂の非多孔質シートを用いた。より具体的には、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の非多孔質シートを用いた。加熱温度は
図13においては約400℃、
図14においては約350℃である。
【0065】
上記接合部は、
図13及び
図14で示すように、第一のフッ素樹脂の多孔質の第一の層1と、当該第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂の第二の層2と、当該第一の層と当該第二の層との間にある当該第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の第三の層3と、を含む。
【0066】
上記接合部に含まれる第一の層1は、上述のように第一のフッ素樹脂の多孔質の層である。すなわち、
図13及び
図14で示すように、第一の層1には、複数の孔110が形成されている。本物品が上述の本製造方法により製造される場合、上記接合部は、多孔質シートの接合される一部に、上記第二のフッ素樹脂を接触させ、当該第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、当該多孔質シートの接合される当該一部を加熱して形成される。すなわち、第一の層は、上記多孔質シート由来の層であって、当該多孔質シートの一部が多孔質構造を維持したまま形成された層であるといえる。
【0067】
次に、第二の層2は、第二のフッ素樹脂の層である。上述の通り、本製造方法では、上記接合部を、第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で加熱して形成する。従って、第二のフッ素樹脂は溶融し、第二の層2は
図13及び
図14のように中実構造の層となっている。すなわち、第二の層2は非多孔質であるともいえる。
【0068】
次に、第三の層3は、第一の層1と第二の層2との間にある上記第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の層である。第三の層3は、非多孔質であり、
図13及び
図14で示すように、上述の第一の層1における孔110のような孔が形成されていない層である。
【0069】
ここで、第三の層3について詳しく説明する。
図17及び
図18は、比較のために用意した非多孔質PTFEの走査型電子顕微鏡の画像である。すなわち、
図17及び
図18は、PTFE粉末を圧縮成形したものを、それぞれ370℃及び390℃で10時間加熱し焼成して得られた非多孔質のPTFE樹脂の電子顕微鏡画像である。
【0070】
図17及び
図18が示すように、PTFE樹脂を焼成して得られた非多孔質PTFEには特有の非直線的で、複雑に入り組んだしわ模様がある。ここで、
図13及び
図14の第一の層1及び第三の層3と、
図17及び
図18の焼成PTFEとを比べると、第一の層1及び第三の層3には、上述の非多孔質の焼成PTFEのしわ模様に類似した非直線的で、複雑に入り組んだ模様があることが分かる。ここで、多孔質の第一の層1は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート由来であることから、当該第一の層は第一のフッ素樹脂の層である。第三の層3は、
図17及び
図18、並びに
図13及び
図14の第一の層1と同様の模様があることから、第一のフッ素樹脂を少なくとも含んでいると考えられる。一方、第二の層2には上記模様が見られない。そのため、第一のフッ素樹脂以外で構成されていると考えられる。つまり、第一のフッ素樹脂以外で用いたのは、第二のフッ素樹脂であるから、第二の層2は、第二のフッ素樹脂の層である。
【0071】
図19は、第三の層が第一のフッ素樹脂の孔に第二のフッ素樹脂が入り込んで形成された場合の接合部の模式図である。すなわち、
図19においては、第三の層3は、第一のフッ素樹シート100の孔110に第二のフッ素樹脂103が入り込んで、第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の層が形成されている。このように、第三の層は第一のフッ素樹脂の孔に第二のフッ素樹脂が入り込んで形成されたこととしてもよい。すなわち、第一のフッ素樹脂を含む非多孔質の層は、第一のフッ素樹脂の孔に第二のフッ素樹脂が入り込んで形成された層である場合を含む概念である。
【0072】
本物品は、内包物と、前記内包物を包む外装材と、を含むこととしてもよい。この場合、当該外装材は、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、当該樹脂製シートのうちの1つは、上記第一のフッ素樹脂製の多孔質シートであり、当該樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が当該多孔質シートである部分(すなわち、その少なくとも一方が当該多孔質シートである、当該樹脂製シートの接合される端部)は、上記接合部を含み当該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0073】
本物品が、内包物と前記内包物を包む外装材とを含む場合、上述の本製造方法に係る上記工程は、上記樹脂製シートで上記内包物を包んだ後、上記樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が上記多孔質シートである部分を、上記(a)〜(c)により当該樹脂製シートの当該端部同士を接着するように接合する工程であることとしてもよい。
【0074】
上記内包物は、例えば、断熱材であってもよい。断熱材は、熱の流出入を抑制できるものであれば特に限られないが、断熱材は、例えば、繊維、粉末成形体、発泡体、真空断熱材及び気体断熱材からなる群より選択される1以上を用いることができる。繊維としては、例えば、無機繊維又は有機繊維を用いることができる。無機繊維としては、例えば、ロックウール、ガラス繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維及びシリカアルミナ繊維からなる群より選択される1種以上を用いることができる。有機繊維としては、例えば、セルロースファイバーを用いることができる。粉末成形体としては、例えば、アルミナ粒子、ムライト粒子、コーディライト粒子、シリカ粒子及びケイ酸カルシウムから選択される1種以上の粉末成形体を用いることができる。また、発泡体としては、例えば、樹脂発泡体を用いることができる。樹脂発泡体としては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム及びポリイミドフォームからなる群より選択される1以上を用いることができる。気体断熱材は、袋に気体を充填したものであってもよい。気体は、例えば窒素や空気であってもよい。すなわち、断熱材は、空気断熱材であってもよい。
【0075】
また、断熱材は、例えば、150℃における熱伝導率が0.061W/(m・K)以下である断熱材であることとしてもよい。すなわち、例えば、断熱材は、繊維、粉末成形体、発泡体、真空断熱材及び気体断熱材からなる群より選択される1以上であって、かつ150℃における熱伝導率が0.061W/(m・K)以下である断熱材であることとしてもよい。
【0076】
内包物が断熱材である場合、本物品は、断熱性製品であることとしてもよい。具体的には、断熱性製品は、保温材又は保冷材であることとしてもよい。保温材の断熱材としては、例えば、上述の繊維成形体、粉末成形体が好ましく用いられる。また、保冷材の断熱材としては、発泡体を好ましくも用いることができ、特に、ウレタンフォームを好ましく用いることができる。
【0077】
また、内包物は、発熱材であってもよい。発熱材は、例えば、発熱線であってもよい。
【0078】
上記内包物が断熱材の場合、本製造方法は、断熱性製品の製造法であることとしてもよい。具体的には、本製造方法は、保温材の製造方法であることとしてもよく、また保冷材の製造方法であることとしてもよい。また、上記内包物が発熱材の場合、本製造方法はジャケットヒータの製造方法であることとしてもよい。
【0079】
本製造方法は、上記工程を含んでいればよく、例えば、上記工程以外の工程を含むこととしてもよい。具体的には、例えば、上記工程を第一の工程とすると、本製造方法は、当該第一の工程の前に、上記多孔質シートを、上記内包物の外観形状に対応する形状に予め立体的に成形する第二の工程を更に含むこととしてもよい。すなわち、この場合、本物品に係る上記多孔質シートは、上記内包物の外表面の形状に対応する形状に、当該多孔質シートの上記端部が接合される前に、予め立体的に成形された多孔質シートである。具体的には、例えば、上記多孔質シートは、その端部が接合される前に、上記内包物の外表面の形状に対応する形状の型にプレスされることにより得られた、当該内包物の外表面の形状に対応する形状を有する多孔質シートであってもよい。このように、外装材を構成する多孔質シートは、内包物の外観形状に対応する形状に予め立体的に成形されているため、内包物を包んだ後当該内包物と当該多孔質シートとを一体的に成形する場合にくらべ、生産効率がよい。また内包物の破損や崩れを効果的に防止できる。
【0080】
なお、上記物品は、上述の接合部を含んでいれば、上述の物品に限られない。すなわち、例えば、上記物品は、衣類、フィルター、防水シート、目地材、保冷材やガスケットなどであってもよい。
【0081】
以下、本物品が、保温材又はジャケットヒータである場合について、具体的に説明する。なお、以下の第一乃至第六の実施形態においては、接合部について、第二のフッ素樹脂が第一のフッ素樹脂の孔の内部に入り込んで当該接合部を形成している場合を例示しているが、本発明に係る接合部は、上述の第一の層と第二の層と、当該第一の層と当該第二の層との間にある第三の層を有していればよく、当該実施形態で示すものに限られない。
【0082】
[第一の実施形態]
本発明に係る保温材は、断熱材と、前記断熱材を包む外装材と、を含み、前記外装材は、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、前記樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートであり、前記樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が前記多孔質シートである部分は、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が前記多孔質シートの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0083】
本発明の第一の実施形態に係る保温材について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る保温材を配管に使用した例を示す一部切欠斜視図である。
【0084】
図1に示すように、第一の実施形態に係る保温材10(10A、10B)は、断熱材101と、断熱材101を包む外装材102と、を含み、外装材102は、その端部同士が接合される第一のフッ素樹脂製の多孔質シート102a、102bから構成され、多孔質シート102a、102bの接合される端部同士は、多孔質シート102a及び多孔質シート102bと第二のフッ素樹脂とで形成される接合部を含み、当該端部同士を接着するように接合されている。
【0085】
すなわち、
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る保温材10(10A、10B)は、断熱材101と、前記断熱材101を包む外装材102と、を含み、前記外装材102は、その端部同士が接合される第一のフッ素樹脂製の多孔質シート102a、102bから構成され、前記多孔質シート102a、102bの接合される端部同士は、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が前記多孔質シートの接合される端部同士の間に介在して前記多孔質シートの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0086】
本発明に係る保温材に含まれる断熱材101は、例えば、無機成形体によって構成されていることとしてもよい。ここで、無機成形体とは、例えば、ロックウール、ガラス繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などの無機繊維、又は、セラミックス粉体(例えば、アルミナ、ムライト、コーディライト、シリカなど)から形成される成形体であることとしてもよい。さらには、上記繊維とセラミックス粉体とを2種以上組み合わせてなる成形体であることとしてもよい。また、その他にもケイ酸カルシウムから形成される無機質の成形体であることとしてもよい。
【0087】
また、本発明に係る保温材10に含まれる外装材102は、
図1に示すように、断熱材101を外装材102の外部に露出することがないように内包している。外装材102は、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである。すなわち、外装材の一部又は全部は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートで構成されている。
【0088】
このように、外装材102が、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである場合、外装材内部の空気が熱によって暖められても、該外装材が膨張し形状が変形しない程度に、多孔質シートの孔を通じて外装材内部の空気が外部に排出されるため、外装材内部の圧力を保つこととなる。よって、配管500等に取り付けられた本発明に係る保温材10は、該配管500等から脱落するおそれが低減されることとなる。
【0089】
ここで、第一のフッ素樹脂とは、融点が320℃以上のフッ素樹脂であり、例えば、第一のフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることとしてもよい。
【0090】
外装材102に用いられる多孔質シート102a、102bは、内包される断熱材101を密封し、例えば、断熱材101がセラミックス粉体等によって形成された場合においても、該粉体が保温材10の外部に飛散しないサイズの孔が形成されている。例えば、外装材102に用いられる多孔質シート102a、102bは、例えば、孔径0.01〜10μmの孔が形成されていることとしてもよく、0.3〜1.5μmの孔が形成されていることとしてもよい。
【0091】
また、外装材102に用いられる多孔質シート102a、102bの空孔率は50%以上であることとしてもよい。空孔率が60%以上である場合、本発明の効果を更に高めることとなる。また、空孔率の上限値に関しては特に規定がないが、空孔率は90%以下であることとしてもよく、80%以下であることとしてもよい。なお、本発明における多孔質シートの孔は該シートの厚さ方向に貫通する孔である。
【0092】
ここで、本発明に係る保温材10は配管500等の保温または加熱対象物の外形に応じた立体的形状を有するものである。そのため、保温材10に含まれる断熱材101、外装材102もまた立体的な形状を有しており、該外装材102は複数の樹脂製シートを貼り合わせて形成されている。なお、本発明に係る保温材は配管のみならず、フランジ、継手、バルブ等に対しても好適に用いることができる。
【0093】
保温材10の外装材102を構成する多孔質シート102a、102bは、該外装材102に内包される断熱材101の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されていることとしてもよい。この場合、例えば多孔質シート102a、102bは、第一のフッ素樹脂によって形成された平面状のフッ素樹脂シートを、延伸等して孔を形成し、その後、内包される断熱材101の外表面の形状に対応する形状にプレス加工等をして、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されることとしてもよい。
【0094】
本発明の保温材10における外装材102を構成する少なくとも1以上の樹脂製シートはその端部同士を接合している。そして、樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである部分は、上述の接合部を含み、当該端部同士を接着するように接合されている。第一の実施形態においては、後述の
図2Bで示すように、樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである部分は、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が該多孔質シートの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0095】
ここで、第二のフッ素樹脂とは、融点が310℃以下のフッ素樹脂であり、例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ETFE、PCTFE、PFA、ECTFE及びPVDFからなる化合物群から選択されるフッ素樹脂であることとしてもよい。また、第二のフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)であることとしてもよい。
【0096】
また、第二のフッ素樹脂は、第一のフッ素樹脂と比べて融点が小さいものでありさえすれば、同一組成のものであってもよい。例えば、第一のフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、第二のフッ素樹脂は、第一のフッ素樹脂と比べて融点が小さいポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることとしてもよい。第一のフッ素樹脂及び第二のフッ素樹脂それぞれのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、分子量、重合量、あるいは結晶性等の違いによって融点をそれぞれ異なるものとしてもよい。
【0097】
第一の実施形態に係る保温材10の外装材102は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート102a、102bから構成されているため、該多孔質シート102a、102bの接合される全ての端部同士は、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が前記多孔質シートの接合される端部同士の間に介在して前記多孔質シート102a、102bの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとなる。
【0098】
第一の実施形態に係る保温材10に含まれる、外装材102を構成する多孔質シート102a、102bの接合について、以下に詳細に説明を行う。
図2Aは、本発明の第一の実施形態に係る保温材の外装材を構成する、多孔質シートの接合部分の断面図である。また、
図2Bは、
図2Aにおける破線Bにて囲まれた部分の拡大図である。
【0099】
図2A、2Bに示されるように、第一の実施形態に係る保温材10の外装材102は、第一のフッ素樹脂製の二つの多孔質シート102a、102bから構成されている。そして、外装材102は、断熱材101を内部に内包している。また、二つの多孔質シート102a、102bの接合される端部同士は、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂103が二つの多孔質シート102a、102bの接合される端部同士の間に介在して、二つの多孔質シート102a、102bの孔110の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0100】
外装材102を構成する多孔質シート102a、102bはフッ素樹脂によって形成されており、フッ素樹脂は親水、親油性に乏しいため一般的な石油系の接着剤を用いた接着は困難である。したがって、本発明では端部における接合をより確実なものとするために、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を用いている。
【0101】
ここで、外装材を構成する多孔質シートの端部の接合方法についてより詳細に説明を行う。第一の実施形態に係る保温材の製造方法は、樹脂製シートで断熱材を包んだ後、当該樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が多孔質シートである部分を当該樹脂製シートの端部同士を接着するように接合する、工程を含む:(a)当該多孔質シートの接合される端部に上述の第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を接触させること、(b)第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、当該多孔質シートの接合される端部を加熱すること、及び(c)上述の接合部を形成すること。なお、後述するように当該保温材の製造方法が第二の工程を含む場合、上記工程は第一の工程である。
【0102】
上記加熱温度は、第二のフッ素樹脂の融点以上であれば特に限られないが、例えば、第一のフッ素樹脂の融点未満であることとしてもよい。また、上記加熱温度は、第一のフッ素樹脂の融点以上であることとしてもよい。
【0103】
すなわち、本発明に係る保温材の外装材は、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、前記樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートであり、本実施形態に係る保温材の製造方法は、前記樹脂製シートで前記断熱材を包んだ後、前記樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が前記多孔質シートである部分は、前記多孔質シートの接合される端部に、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を接触させ、前記第一のフッ素樹脂の融点未満、前記第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、前記多孔質シートの接合される端部を加熱して、前記第二のフッ素樹脂を溶かして、前記多孔質シートの孔の内部に前記第二のフッ素樹脂が入り込んで、該樹脂製シートの端部同士を接着するように接合する、第一の工程を含むこととしてもよい。
【0104】
また、第一の実施形態に係る保温材の外装材10は、その端部同士を接合する少なくとも1以上の多孔質シート(102a、102b)のみから構成されているため、該多孔質シート102a、102bで断熱材101を包んだ後、該多孔質シート102a、102bの接合される端部に、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂103を接触させ、第一のフッ素樹脂の融点未満、第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、該多孔質シート102a、102bの接合される端部を加熱して、第二のフッ素樹脂103を溶かして、多孔質シート102a、102bの孔の内部に第二のフッ素樹脂103が入り込んで、該多孔質シート102a、102bの端部同士を接着するように接合する、第一の工程を、該第一の実施形態に係る保温材の製造方法は含むこととなる。
【0105】
このように、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を用いて多孔質シートの端部同士を接着するように接合することによって、該端部同士の密着性は向上し、本発明の効果を高めることとなる。また、
図2Bで示されるように、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が二つの多孔質シート102a、102bの接合される端部同士の間に介在して、二つの多孔質シート102a、102bの孔110の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合することによって、多孔質シート102a、102bの端部同士の接合は、アンカー効果により強固なものとなる。
【0106】
図2Bで示されるように、外装材102を構成する多孔質シートの端部の接合は、多孔質シートを構成する第一のフッ素樹脂の融点未満、第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、多孔質シートの接合される端部を加熱することによって、第二のフッ素樹脂を溶かし、多孔質シートの孔の内部に第二のフッ素樹脂が入り込んで、該多孔質シートの端部同士を接着するように接合している。このため、第一のフッ素樹脂で形成される多孔質シートの孔を、加熱によって消失させないように、第一のフッ素樹脂の融点と、前記第二のフッ素樹脂の融点との差が離れているほうが好ましい。
【0107】
例えば、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、10℃以上であることとしてもよい。この様に、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差が、10℃以上となるように材料を選択することによって、アンカー効果により多孔質シートの端部同士の接合が強固なものとなることが確実なものとなり、本発明の効果を更に高めることとなる。
【0108】
また、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、50℃以上であることは好ましく、100℃以上であることは更に好ましい。
【0109】
また、前述した第一の工程に用いられる第二のフッ素含有樹脂は、シート状であることとしてもよいし、粉状であることとしてもよいし、ワニス状であることとしてもよい。
図2Aには、シート状である第二のフッ素含有樹脂について示されている。例えば、フッ素含有樹脂は、シート状である場合、多孔質シート102a、102bの接合部分の間隔を一定とすることができ好ましい。多孔質シート102a、102bの接合部分の間隔を一定とすることによって、本発明の効果は更に高まることとなる。
【0110】
保温材10の外装材102を構成する多孔質シート102a、102bは、該外装材102に内包される断熱材101の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されていることとしてもよい。この場合、例えば多孔質シート102a、102bは、第一のフッ素樹脂によって形成された平面状のフッ素樹脂シートを、延伸等して孔を形成し、その後、内包される断熱材101の外表面の形状に対応する形状にプレス加工等をして、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されることとしてもよい。
【0111】
また、多孔質シートが外装材に内包される断熱材の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されている場合、前述した第一の工程の前に、多孔質シートを、内包物である断熱材の外表面の形状に対応する形状に予め立体的に成形する、第二の工程を更に含むこととしてもよい。
【0112】
[第二の実施形態]
次に、本発明に係るジャケットヒータについて説明を行う。本発明に係るジャケットヒータは、発熱材と、当該発熱材を包む外装材と、を含み、当該外装材は、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、当該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートであり、当該樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が当該多孔質シートである部分は、上述の接合部を含み、当該端部同士を接着するように接合されていることを特徴とする。
【0113】
すなわち、本発明に係るジャケットヒータは、発熱材と、前記発熱材を包む外装材と、を含み、前記外装材は、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、前記樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートであり、前記樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が前記多孔質シートである部分は、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が前記多孔質シートの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0114】
本発明の第二の実施形態に係るジャケットヒータについて、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の第二の実施形態に係るジャケットヒータを配管に使用した例を示す一部切欠斜視図である。
【0115】
本発明の第二の実施形態に係るジャケットヒータは、本発明の第一の実施形態に係る保温材の断熱材101を発熱材105に置き換えた構成を有するものである。
【0116】
図3に示すように、本発明の第二の実施形態に係るジャケットヒータ11(11A、11B)は、発熱材151と、発熱材151を包む外装材102と、を含み、外装材102は、その端部同士が接合される第一のフッ素樹脂製の多孔質シート102a、102bから構成され、多孔質シート102a、102bの接合される端部同士は、多孔質シート102a及び多孔質シート102bと、第二のフッ素樹脂とで形成される上述の接合部を含み、当該端部同士を接着するように接合されている。
【0117】
すなわち、
図3に示すように、本発明の第二の実施形態に係るジャケットヒータ11(11A、11B)は、発熱材151と、前記発熱材151を包む外装材102と、を含み、前記外装材102は、その端部同士が接合される第一のフッ素樹脂製の多孔質シート102a、102bから構成され、前記多孔質シート102a、102bの接合される端部同士は、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が前記多孔質シート102a、102bの接合される端部同士の間に介在して前記多孔質シート102a、102bの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0118】
本発明に係るジャケットヒータ11に含まれる発熱材151は、発熱線から構成されるものであることとしてもよい。なお、発熱線には、リード線152を介して電源接続用コネクタ153が取り付けられることとなる。また、発熱材は、断熱クロス等の断熱材に絶縁被覆された発熱線によって構成されることとしてもよいし、断熱クロス等の断熱材に絶縁被覆された発熱線を更に無機繊維製シートのガラスクロスに縫い糸で縫い付けられたもので構成されることとしてもよい。
【0119】
更に、上記の発熱材151は不燃難燃繊維製シートを含むこととしてもよい。ここで、不燃難燃繊維製シートは、無機繊維製シート、有機繊維製シートを使用でき、無機質繊維製シートは、ガラスファイバー,セラミックファイバー,シリカファイバーなどの無機繊維材にニードル加工を施してコロイダルシリカ,アルミナゾル,ケイ酸ソーダなどの無機質バインダーでシート状に形成させたものが好ましい。また、アラミド,ポリアミド,ポリイミドなどの有機繊維製シートも使用できる。
【0120】
また、本発明に係るジャケットヒータ11に含まれる外装材102は、
図3に示すように、発熱材151を外装材102の外部に露出することがないように内包している。外装材102は、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである。すなわち、外装材の一部又は全部は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートで構成されている。
【0121】
このように、外装材102が、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである場合、外装材内部の空気が熱によって暖められても、該外装材が膨張し形状が変形しない程度に、多孔質シートの孔を通じて外装材内部の空気が外部に排出されるため、外装材内部の圧力を保つこととなる。よって、配管500等に取り付けられた本発明に係るジャケットヒータ11は、該配管500等から脱落するおそれが低減されることとなる。
【0122】
ここで、第一のフッ素樹脂とは、融点が320℃以上のフッ素樹脂であり、例えば、第一のフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることとしてもよい。
【0123】
外装材102に用いられる多孔質シート102a、102bは、内包される発熱材151を密封し、例えば、発熱材151がセラミックス粉体等によって形成された断熱材を包含する場合においても、該粉体がジャケットヒータの外部に飛散しないサイズの孔が形成されている。例えば、外装材102に用いられる多孔質シート102a、102bは、例えば、孔径0.01〜10μmの孔が形成されていることとしてもよく、孔径0.3〜1.5μmの孔が形成されていることとしてもよい。
【0124】
また、外装材102に用いられる多孔質シート102a、102bの空孔率は50%以上であることとしてもよい。空孔率が60%以上である場合、本発明の効果を更に高めることとなる。また、空孔率の上限値に関しては特に規定がないが、空孔率は90%以下であることとしてもよく、80%以下であることとしてもよい。なお、本発明における多孔質シートの孔は該シートの厚さ方向に貫通する孔である。
【0125】
ここで、本発明に係るジャケットヒータ11は配管500等の保温または加熱対象物の外形に応じた立体的形状を有するものである。そのため、ジャケットヒータ11に含まれる発熱材151、外装材102もまた立体的な形状を有しており、該外装材102は複数の樹脂製シートを貼り合わせて形成されている。
【0126】
ジャケットヒータ11の外装材102を構成する多孔質シート102a、102bは、該外装材102に内包される発熱材151の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されていることとしてもよい。この場合、例えば多孔質シート102a、102bは、第一のフッ素樹脂によって形成された平面状のフッ素樹脂シートを、延伸等して孔を形成し、その後、内包される発熱材の外表面の形状に対応する形状にプレス加工等をして、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されることとしてもよい。
【0127】
本発明のジャケットヒータ11における外装材102を構成する少なくとも1以上の樹脂製シートはその端部同士を接合している。そして、樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである部分は、上述の接合部を含み、該端部同士を接着するように接合されている。第二の実施形態においては、後述の
図4Bで示すように、樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が第一のフッ素樹脂製の多孔質シートである部分は、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が該多孔質シートの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0128】
ここで、第二のフッ素樹脂とは、融点が310℃以下のフッ素樹脂であり、例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ETFE、PCTFE、PFA、ECTFE及びPVDFからなる化合物群から選択されるフッ素樹脂であることとしてもよい。また、第二のフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)であることとしてもよい。
【0129】
また、第二のフッ素樹脂は、第一のフッ素樹脂と比べて融点が小さいものでありさえすれば、同一組成のものであってもよい。例えば、第一のフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、第二のフッ素樹脂は、第一のフッ素樹脂と比べて融点が小さいポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることとしてもよい。第一のフッ素樹脂及び第二のフッ素樹脂それぞれのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、分子量、重合量、あるいは結晶性等の違いによって融点をそれぞれ異なるものとしてもよい。
【0130】
第二の実施形態に係るジャケットヒータ11の外装材102は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート102a、102bから構成されているため、該多孔質シート102a、102bの接合される全ての端部同士は、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が前記多孔質シート102a、102bの接合される端部同士の間に介在して前記多孔質シート102a、102bの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとなる。
【0131】
第二の実施形態に係るジャケットヒータ11に含まれる、外装材を構成する多孔質シート102a、102bの接合について、以下に詳細に説明を行う。
図4Aは、本発明の第二の実施形態に係るジャケットヒータの外装材を構成する、多孔質シートの接合部分の断面図である。また、
図4Bは、
図4Aにおける破線Bにて囲まれた部分の拡大図である。
【0132】
図4A、4Bに示されるように、第二の実施形態に係るジャケットヒータ11の外装材102は、第一のフッ素樹脂製の二つの多孔質シート102a、102bから構成されている。そして、外装材102は、発熱材151を内部に内包している。また、二つの多孔質シート102a、102bの接合される端部同士は、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂103が二つの多孔質シート102a、102bの接合される端部同士の間に介在して、二つの多孔質シート102a、102bの孔110の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0133】
外装材102を構成する多孔質シート102a、102bはフッ素樹脂によって形成されており、フッ素樹脂は親水、親油性に乏しいため一般的な石油系の接着剤を用いた接着は困難である。したがって、本発明では端部における接合をより確実なものとするために、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を用いている。
【0134】
ここで、外装材102を構成する多孔質シート102a、102bの端部の接合方法についてより詳細に説明を行う。第二の実施形態に係るジャケットヒータの製造方法は、樹脂製シートで発熱材を包んだ後、当該樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が上記多孔質シートである部分を、次の(a)〜(c)により当該樹脂製シートの端部同士を接着するように接合する工程を含む:(a)当該多孔質シートの接合される端部に、上記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を接触させること、(b)当該第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、当該多孔質シートの接合される端部を加熱すること、(c)上述の接合部を形成すること。なお、後述するように、当該ジャケットヒータの製造方法が、第二の工程を含む場合、上記工程は、第一の工程となる。
【0135】
上記加熱温度は、第二のフッ素樹脂の融点以上であれば特に限られない。例えば、上記加熱温度は、第一の実施形態に係る断熱材の製造方法と同様とすることができる。
【0136】
すなわち、本発明に係るジャケットヒータは、外装材は、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、前記樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートであり、当該ジャケットヒータの製造方法は、前記樹脂製シートで前記発熱材を包んだ後、前記樹脂製シートの接合される端部の少なくとも一方が前記多孔質シートである部分は、前記多孔質シートの接合される端部に、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を接触させ、前記第一のフッ素樹脂の融点未満、前記第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、前記多孔質シートの接合される端部を加熱して、前記第二のフッ素樹脂を溶かして、前記多孔質シートの孔の内部に前記第二のフッ素樹脂が入り込んで、該樹脂製シートの端部同士を接着するように接合する、第一の工程を含むこととしてもよい。
【0137】
また、第二の実施形態に係るジャケットヒータの外装材20は、その端部同士を接合する少なくとも1以上の多孔質シート102a、102bのみから構成されているため、該多孔質シート102a、102bで発熱材を包んだ後、該多孔質シート102a、102bの接合される端部に、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂103を接触させ、第一のフッ素樹脂の融点未満、第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、該多孔質シート102a、102bの接合される端部を加熱して、第二のフッ素樹脂103を溶かして、多孔質シート102a、102bの孔110の内部に第二のフッ素樹脂103が入り込んで、該多孔質シート102a、102bの端部同士を接着するように接合する、第一の工程を、該第二の実施形態に係るジャケットヒータの製造方法は含むこととなる。
【0138】
このように、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を用いて多孔質シート102a、102bの端部同士を接着するように接合することによって、該端部同士の密着性は向上し、本発明の効果を高めることとなる。また、
図4Bで示される接合部のように、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が二つの多孔質シート102a、102bの接合される端部同士の間に介在して、二つの多孔質シート102a、102bの孔110の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合することによって、多孔質シート102a、102bの端部同士の接合は、アンカー効果により強固なものとなる。
【0139】
上記のように、外装材102を構成する多孔質シートの端部の接合は、多孔質シートを構成する第一のフッ素樹脂の融点未満、第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、多孔質シートの接合される端部を加熱することによって、第二のフッ素樹脂103を溶かし、多孔質シートの孔110の内部に第二のフッ素樹脂103が入り込んで、該多孔質シートの端部同士を接着するように接合している。このため、第一のフッ素樹脂で形成される多孔質シートの孔110を、加熱によって消失させないように、第一のフッ素樹脂の融点と、前記第二のフッ素樹脂の融点との差が離れているほうが好ましい。
【0140】
例えば、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、10℃以上であることとしてもよい。この様に、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差が、10℃以上となるように材料を選択することによって、アンカー効果により多孔質シートの端部同士の接合が強固なものとなることが確実なものとなり、本発明の効果を更に高めることとなる。
【0141】
また、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、50℃以上であることは好ましく、100℃以上であることは更に好ましい。
【0142】
また、前述した第一の工程に用いられる第二のフッ素含有樹脂は、シート状であることとしてもよいし、粉状であることとしてもよいし、ワニス状であることとしてもよい。
図4Aには、シート状である第二のフッ素含有樹脂について示されている。例えば、フッ素含有樹脂は、シート状である場合、多孔質シート102a、102bの接合部分の間隔を一定とすることができ好ましい。多孔質シート102a、102bの接合部分の間隔を一定とすることによって、本発明の効果は更に高まることとなる。
【0143】
また、多孔質シートが外装材に内包される発熱材の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されている場合、前述した第一の工程の前に、多孔質シートを、内包物である発熱材の外表面の形状に対応する形状に予め立体的に成形する、第二の工程を更に含むこととしてもよい。
【0144】
[第三の実施形態]
次に、本発明の第三の実施形態に係る保温材について、図面を参照して説明する。
図5は、本発明の第三の実施形態に係る保温材を配管に使用した例を示す一部切欠斜視図である。
【0145】
第三の実施形態に係る保温材は、第一の実施形態に係る保温材の外装材102を、他の外装材202に置き換えた他は第一の実施形態に係る保温材と同様である。なお、第三の実施形態に係る保温材における断熱材101は、第一の実施形態に係る保温材にて用いられた断熱材101と同様である。
【0146】
図5に示すように、第三の実施形態に係る保温材20(20A、20B)は、断熱材101と、断熱材101を包む外装材202とを含み、外装材202は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aと、当該第一のフッ素樹脂よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bから構成され、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとは、外装材202において、それぞれの端部同士が接合されており、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとが接合される端部は、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとで形成される接合部を含み、当該端部同士を接着するように接合されている。
【0147】
すなわち、本発明の第三の実施形態に係る保温材20(20A、20B)は、断熱材と、前記断熱材101を包む外装材202と、を含み、前記外装材202は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aと、前記第一のフッ素樹脂よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bから構成され、前記多孔質シート202aと前記フッ素樹脂シート202bとは、前記外装材202において、それぞれの端部同士が接合されており、前記多孔質シート202aと前記フッ素樹脂シート202bとが接合される端部は、前記多孔質シート202aの孔の内部に、前記第二のフッ素樹脂が入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0148】
すなわち、第三の実施形態に係る保温材20(20A、20B)の外装材202は、孔が備えられた第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aと、孔が備えられていない第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bと、から構成されている。
【0149】
第三の実施形態に係る保温材20においても、外装材202が、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aであるため、外装材内部の空気が熱によって暖められても、該外装材が膨張し形状が変形しない程度に、多孔質シート202aの孔を通じて外装材内部の空気が外部に排出される、外装材内部の圧力を保つこととなる。よって、配管500等に取り付けられた本発明に係る保温材20は、該配管500等から脱落するおそれが低減されることとなる。
【0150】
なお、第一のフッ素樹脂とは、上記第一の実施形態にて説明したものと同様に、PTFE等のフッ素樹脂にて形成されることとしてもよい。また、外装材202に用いられる多孔質シート202aには、内包される断熱材101を密封し、例えば、断熱材101がセラミックス粉体等によって形成された場合においても、該粉体が保温材10の外部に飛散しないサイズの孔が形成されている点についても同様である。また、例えば、多孔質シート202aの孔径、空孔率についても上記第一の実施形態にて説明をおこなったものと同様である。
【0151】
なお、第二のフッ素樹脂も上記第一の実施形態にて説明したものと同様に、FEP等のフッ素樹脂にて形成されることとしてもよい。なお、第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シートが、保温等の対象物(例えば
図5における配管500)と接する側に備えられる場合、第二のフッ素樹脂の融点は、250℃以上であることが好ましい。
【0152】
第三の実施形態に係る保温材20の外装材202を構成する多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとは、該外装材202において、それぞれの端部同士が接合されており、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとが接合される端部は、多孔質シート202aの孔の内部に、フッ素樹脂シート202bの第二のフッ素樹脂が入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0153】
第三の実施形態に係る保温材20に含まれる、外装材202を構成する多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとの接合について、以下に詳細に説明を行う。
図6Aは、本発明の第三の実施形態に係る保温材の外装材を構成する、多孔質シートとフッ素樹脂シートとの接合部分の断面図である。また、
図6Bは、
図6Aにおける破線Bにて囲まれた部分の拡大図である。
【0154】
図6A、
図6Bに示されるように、第三の実施形態に係る保温材20の外装材202は、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとから構成されている。そして、外装材202は、断熱材101を内部に内包している。また、二つのシート(多孔質シート202a、フッ素樹脂シート202b)の接合される端部同士は、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有するフッ素樹脂シート202bの第二のフッ素樹脂が、多孔質シート202aの孔110の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0155】
ここで、第三の実施形態における外装材202を構成する二つのシート(多孔質シート202a、フッ素樹脂シート202b)の端部の接合方法についてより詳細に説明を行う。第三の実施形態に係る保温材の外装材は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートと、前記第一のフッ素樹脂よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シートから構成され、前記多孔質シートと前記フッ素樹脂シートとは、前記外装材において、それぞれの端部同士が接合されているため、第三の実施形態に係る保温材の製造方法は、当該多孔質シート及び当該フッ素樹脂シートで当該断熱材を包んだ後、次の(a)〜(c)により、当該端部同士を接着するように接合する工程を含むこととなる:(a)当該多孔質シート及び当該フッ素樹脂シートの接合される端部同士を接触させること、(b)当該第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、当該多孔質シート及び当該フッ素樹脂シートの接合される端部を加熱すること、(c)上述の接合部を形成すること。なお、後述するように、当該保温材の製造方法が第二の工程を含む場合、上記工程は、第一の工程である。
【0156】
上記加熱温度は、第二のフッ素樹脂の融点以上であれば特に限られない。例えば、上記加熱温度は、第一の実施形態に係る断熱材の製造方法と同様のものを採用することができる。
【0157】
すなわち、例えば、第三の実施形態に係る保温材の製造方法は、前記多孔質シート及び前記フッ素樹脂シートで前記断熱材を包んだ後、前記多孔質シート及び前記フッ素樹脂シートの接合される端部同士を接触させ、前記第一のフッ素樹脂の融点未満、前記第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、前記多孔質シート及び前記フッ素樹脂シートの接合される端部を加熱して、前記第二のフッ素樹脂を溶かして、前記多孔質シートの孔の内部に前記第二のフッ素樹脂が入り込んで、該端部同士を接着するように接合する、第一の工程を、該第三の実施形態に係る保温材の製造方法は含むこととしてもよい。
【0158】
このように、外装材202に一部に、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bを用いて、多孔質シート202aとの端部同士を接着するように接合することによって、該端部同士の密着性はアンカー効果によって向上し、本発明の効果を高めることとなる。
【0159】
図6Bで示すように、外装材を構成する多孔質シートの端部の接合は、第一のフッ素樹脂の融点未満、第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、多孔質シートの接合される端部を加熱することによって、第二のフッ素樹脂を溶かし、多孔質シートの孔の内部に第二のフッ素樹脂が入り込んで、該多孔質シートの端部同士を接着するように接合している。このため、第一のフッ素樹脂で形成される多孔質シートの孔を、加熱によって消失させないように、第一のフッ素樹脂の融点と、前記第二のフッ素樹脂の融点との差が離れているほうが好ましい。
【0160】
例えば、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、10℃以上であることとしてもよい。この様に、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差が、10℃以上となるように材料を選択することによって、アンカー効果により多孔質シートの端部同士の接合が強固なものとなることが確実なものとなり、本発明の効果を更に高めることとなる。
【0161】
また、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、50℃以上であることは好ましく、100℃以上であることは更に好ましい。
【0162】
また、外装材202において、第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bは、保温等行う対象物(例えば
図5の場合、配管500)と接する側に備えられることとしてもよい。
【0163】
また、多孔質シートが外装材に内包される断熱材の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されている場合、前述した第一の工程の前に、多孔質シートを、内包物である断熱材の外表面の形状に対応する形状に予め立体的に成形する、第二の工程を更に含むこととしてもよい。
【0164】
[第四の実施形態]
次に、本発明の第四の実施形態に係るジャケットヒータについて、図面を参照して説明する。
図7は、本発明の第四の実施形態に係るジャケットヒータを配管に使用した例を示す一部切欠斜視図である。
【0165】
第四の実施形態に係るジャケットヒータは、第二の実施形態に係るジャケットヒータの外装材102を、他の外装材202に置き換えた他は第二の実施形態に係るジャケットヒータと同様である。なお、第四の実施形態に係るジャケットヒータにおける発熱材151は、第二の実施形態に係る保温材にて用いられた発熱材151と同様である。
【0166】
図7に示すように、本発明の第四の実施形態に係るジャケットヒータ21(21A、21B)は、発熱材と、発熱材151を包む外装材202と、を含み、外装材202は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aと、第一のフッ素樹脂よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bから構成され、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとは、外装材202において、それぞれの端部同士が接合されており、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとが接合される端部は、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとで形成される上記接合部を含み、当該端部同士を接着するように接合されている。
【0167】
すなわち、本発明の第四の実施形態に係るジャケットヒータ21(21A、21B)は、発熱材と、前記発熱材151を包む外装材202と、を含み、前記外装材202は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aと、前記第一のフッ素樹脂よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bから構成され、前記多孔質シート202aと前記フッ素樹脂シート202bとは、前記外装材202において、それぞれの端部同士が接合されており、前記多孔質シート202aと前記フッ素樹脂シート202bとが接合される端部は、前記多孔質シート202aの孔の内部に、前記第二のフッ素樹脂が入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0168】
すなわち、第四の実施形態に係るジャケットヒータ21(21A、21B)の外装材202は、孔が備えられた第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aと、孔が備えられていない第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bと、から構成されている。
【0169】
第四の実施形態に係るジャケットヒータ21においても、外装材202が、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aであるため、外装材内部の空気が熱によって暖められても、該外装材が膨張し形状が変形しない程度に、多孔質シート202aの孔を通じて外装材内部の空気が外部に排出される、外装材内部の圧力を保つこととなる。よって、配管500等に取り付けられた本発明に係るジャケットヒータ21は、該配管500等から脱落するおそれが低減されることとなる。
【0170】
なお、第一のフッ素樹脂とは、上記第一の実施形態にて説明したものと同様に、PTFE等のフッ素樹脂にて形成されることとしてもよい。また、外装材202に用いられる多孔質シート202aには、内包される発熱材151を密封し、例えば、発熱材151がセラミックス粉体等によって形成された場合においても、該粉体がジャケットヒータ10の外部に飛散しないサイズの孔が形成されている点についても同様である。また、例えば、多孔質シート202aの孔径、空孔率についても上記第一の実施形態にて説明をおこなったものと同様である。
【0171】
なお、第二のフッ素樹脂も上記第一の実施形態にて説明したものと同様に、FEP等のフッ素樹脂にて形成されることとしてもよい。なお、第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シートが、保温等の対象物(例えば
図7における配管500)と接する側に備えられる場合、第二のフッ素樹脂の融点は、250℃以上であることが好ましい。
【0172】
第四の実施形態に係るジャケットヒータ21の外装材202を構成する多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとは、外装材202において、それぞれの端部同士が接合されており、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとが接合される端部は、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとで形成される上述の接合部を含み、当該端部同士を接着するように接合されている。
【0173】
すなわち、第四の実施形態に係るジャケットヒータ21の外装材202を構成する多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとは、該外装材202において、それぞれの端部同士が接合されており、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとが接合される端部は、多孔質シート202aの孔の内部に、フッ素樹脂シート202bの第二のフッ素樹脂が入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0174】
第四の実施形態に係るジャケットヒータ21に含まれる、外装材202を構成する多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとの接合について、以下に詳細に説明を行う。
図8Aは、本発明の第四の実施形態に係るジャケットヒータの外装材を構成する、多孔質シートとフッ素樹脂シートとの接合部分の断面図である。また、
図8Bは、
図8Aにおける破線Bにて囲まれた部分の拡大図である。
【0175】
図8A、8Bに示されるように、第四の実施形態に係るジャケットヒータ21の外装材202は、多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとから構成されている。そして、外装材202は、発熱材151を内部に内包している。また、二つのシート(多孔質シート202a、フッ素樹脂シート202b)の接合される端部同士は、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有するフッ素樹脂シート202bの第二のフッ素樹脂が、多孔質シート202aの孔110の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0176】
ここで、第四の実施形態における外装材202を構成する二つのシート(多孔質シート202a、フッ素樹脂シート202b)の端部の接合方法についてより詳細に説明を行う。第四の実施形態に係るジャケットヒータの外装材は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートと、前記第一のフッ素樹脂よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シートから構成され、前記多孔質シートと前記フッ素樹脂シートとは、前記外装材において、それぞれの端部同士が接合されているため、第四の実施形態に係るジャケットヒータの製造方法は、多孔質シート202a及びフッ素樹脂シート202bで発熱材151を包んだ後、次の(a)〜(c)により、当該端部同士を接着するように接合する工程を含むこととなる:(a)多孔質シート202a及びフッ素樹脂シート202bの接合される端部同士を接触させること、(b)当該第一のフッ素樹脂の融点未満、当該第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、多孔質シート202a及びフッ素樹脂シート202bの接合される端部を加熱すること、(c)多孔質シート202aとフッ素樹脂シート202bとで上述の接合部を形成すること。なお、後述するように、当該ジャケットヒータの製造方法が、第二の工程を含む場合、上記工程は第一の工程である。
【0177】
上記加熱温度は、第二のフッ素樹脂の融点以上であれば特に限られない。例えば、上記加熱温度は、第一の実施形態に係る断熱材の製造方法と同様とすることができる。
【0178】
すなわち、前記多孔質シート及び前記フッ素樹脂シートで前記発熱材を包んだ後、前記多孔質シート及び前記フッ素樹脂シートの接合される端部同士を接触させ、前記第一のフッ素樹脂の融点未満、前記第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、前記多孔質シート及び前記フッ素樹脂シートの接合される端部を加熱して、前記第二のフッ素樹脂を溶かして、前記多孔質シートの孔の内部に前記第二のフッ素樹脂が入り込んで、該端部同士を接着するように接合する、第一の工程を、該第四の実施形態に係るジャケットヒータの製造方法は含むこととなる。
【0179】
このように、外装材202に一部に、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bを用いて、多孔質シート202aとの端部同士を接着するように接合することによって、該端部同士の密着性はアンカー効果によって向上し、本発明の効果を高めることとなる。
【0180】
上記のように、外装材を構成する多孔質シートの端部の接合は、第一のフッ素樹脂の融点未満、第二のフッ素樹脂の融点以上の温度で、多孔質シートの接合される端部を加熱することによって、第二のフッ素樹脂を溶かし、多孔質シートの孔の内部に第二のフッ素樹脂が入り込んで、該多孔質シートの端部同士を接着するように接合している。このため、第一のフッ素樹脂で形成される多孔質シートの孔を、加熱によって消失させないように、第一のフッ素樹脂の融点と、前記第二のフッ素樹脂の融点との差が離れているほうが好ましい。
【0181】
例えば、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、10℃以上であることとしてもよい。この様に、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差が、10℃以上となるように材料を選択することによって、アンカー効果により多孔質シートの端部同士の接合が強固なものとなることが確実なものとなり、本発明の効果を更に高めることとなる。
【0182】
また、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、50℃以上であることは好ましく、100℃以上であることは更に好ましい。
【0183】
また、外装材202において、第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bは、保温等行う対象物(例えば
図7の場合、配管500)と接する側に備えられることとしてもよい。このようにすることによって発熱材からの熱がより均一に配管500に伝わることとなり好ましい。
【0184】
また、多孔質シートが外装材に内包される発熱材の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されている場合、前述した第一の工程の前に、多孔質シートを、内包物である発熱材の外表面の形状に対応する形状に予め立体的に成形する、第二の工程を更に含むこととしてもよい。
【0185】
[第五の実施形態]
次に、本発明の第五の実施形態に係る保温材について、図面を参照して説明する。
図9は、本発明の第五の実施形態に係る保温材を配管に使用した例を示す一部切欠斜視図である。
【0186】
第五の実施形態に係る保温材は、第一の実施形態に係る保温材の外装材102を、他の外装材302に置き換えた他は第一の実施形態に係る保温材と同様である。なお、第五の実施形態に係る保温材における断熱材101は、第一の実施形態に係る保温材にて用いられた断熱材101と同様である。
【0187】
図9に示すように、本発明の第五の実施形態に係る保温材30(30A、30B)は、断熱材101と、断熱材101を包む外装材302と、を含み、外装材302は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート302aと、樹脂シート302bから構成され、多孔質シート302aと樹脂シート302bとは、外装材302において、それぞれの端部同士が接合されており、多孔質シート302aと樹脂シート302bとが接合される端部は、多孔質シート302aと第二のフッ素樹脂103とで形成される上述の接合部を含み、当該端部同士を接着するように接合されている。
【0188】
すなわち、
図9に示すように、本発明の第五の実施形態に係る保温材30(30A、30B)は、断熱材101と、前記断熱材101を包む外装材302と、を含み、前記外装材302は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート302aと、樹脂シート302bから構成され、前記多孔質シート302aと前記樹脂シート302bとは、前記外装材302において、それぞれの端部同士が接合されており、前記多孔質シート302aと前記樹脂シート302bとが接合される端部は、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が前記多孔質シート302aの接合される端部同士の間に介在して前記多孔質シート302aの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0189】
すなわち、第五の実施形態に係る保温材30(30A、30B)の外装材302は、孔が備えられた第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aと、孔が備えられていない樹脂シート302bと、から構成されている。
【0190】
第五の実施形態に係る保温材30においても、外装材302が、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート302aであるため、外装材内部の空気が熱によって暖められても、該外装材が膨張し形状が変形しない程度に、多孔質シート302aの孔を通じて外装材内部の空気が外部に排出される、外装材内部の圧力を保つこととなる。よって、配管500等に取り付けられた本発明に係る保温材30は、該配管500等から脱落するおそれが低減されることとなる。
【0191】
なお、第一のフッ素樹脂とは、上記第一の実施形態にて説明したものと同様に、PTFE等のフッ素樹脂にて形成されることとしてもよい。また、外装材302に用いられる多孔質シート302aには、内包される断熱材101を密封し、例えば、断熱材101がセラミックス粉体等によって形成された場合においても、該粉体が保温材10の外部に飛散しないサイズの孔が形成されている点についても同様である。また、例えば、多孔質シート302aの孔径、空孔率についても上記第一の実施形態にて説明をおこなったものと同様である。
【0192】
なお、多孔質シート302a及び樹脂シート302bの接合される端部同士の間に介在する第二のフッ素樹脂も上記第一の実施形態にて説明したものと同様に、FEP等のフッ素樹脂にて形成されることとしてもよい。
【0193】
第五の実施形態において用いられる樹脂シート302bは、PTFE(ポリテトラフォルオロエチレン),PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体),FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などが好ましく、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン),ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体),ECTFE(クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体),PVDF(ポリビニリデンフロライド)なども使用できる。また、上記以外に、ポリアミド,ポリカーボネイト,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,変性ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンサルファイド,ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ポリアリレート,ポリエーテルエーテルケルトン,ポリフタエミド,ポリイミド,ポリエーテルイミド,ポリメチルペンテンなどの熱可撓性樹脂であることとしてもよい。
【0194】
ここで、第五の実施形態において用いられる樹脂シート302bが、保温等の対象物(例えば
図9における配管500)と接する側に備えられる場合、該樹脂シート302bを構成する材料の融点は、250℃以上であることが好ましい。また、該樹脂シート302bを構成する材料は、後に説明をおこなう第二のフッ素樹脂と高い密着性を維持するためにも、融点が第二のフッ素樹脂と近いものが採用されることが好ましい。例えば、樹脂シート302bと、第二のフッ素樹脂と、の融点の差は10℃未満であることは好適である。
【0195】
第五の実施形態に係る保温材30の外装材302を構成する多孔質シート302aと樹脂シート302bとは、該外装材302において、それぞれの端部同士が、第二のフッ素樹脂103を介して接合されており、多孔質シート302aと樹脂シート302bとが接合される端部は、多孔質シート302a及び樹脂シート302bと、第二のフッ素樹脂103とで上述の接合部を形成し、当該端部同士を接着するように接合されている。すなわち、多孔質シート302aと樹脂シート302bとが接合される端部は、多孔質シート302aの孔の内部に、二つのシート(多孔質シート302a、樹脂シート302b)の間に介在する第二のフッ素樹脂が入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0196】
第五の実施形態に係る保温材30に含まれる、外装材302を構成する多孔質シート302aと樹脂シート302bとの接合について、以下に詳細に説明を行う。
図10Aは、本発明の第五の実施形態に係る保温材の外装材を構成する、多孔質シートと樹脂シートとの接合部分の断面図である。また、
図10Bは、
図10Aにおける破線Bにて囲まれた部分の拡大図である。
【0197】
図10A、10Bに示されるように、第五の実施形態に係る保温材30の外装材302は、多孔質シート302aと樹脂シート302bとから構成されている。そして、外装材302は、断熱材101を内部に内包している。
また、二つのシート(多孔質シート302a、フッ素樹脂シート302b)の接合される端部同士の間には、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂103が、多孔質シート302aの孔110の内部に入り込んで、二つのシート(多孔質シート302a、フッ素樹脂シート302b)の該端部同士を接着するように接合されている。
【0198】
ここで、第五の実施形態における外装材302を構成する二つのシート(多孔質シート302a、樹脂シート302b)の端部の接合方法についてより詳細に説明を行う。第五の実施形態に係る保温材の外装材は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート302aと、樹脂シート302bから構成され、前記多孔質シート302aと前記樹脂シート302bとは、前記外装材302において、それぞれの端部同士が接合されているため、第五の実施形態に係る保温材の製造方法は、多孔質シート302a及び樹脂シート302bで断熱材101を包んだ後、次の(a)〜(c)により、当該第二のフッ素樹脂103と樹脂シート302bとが一体となって、当該端部同士を接着するように接合する工程を含むこととなる:(a)多孔質シート302a及び樹脂シート302bの接合される端部同士の間に、当該第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を挟むこと、(b)当該第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、多孔質シート302の接合される端部を加熱すること、(c)多孔質シート302aと当該第二のフッ素樹脂とで上述の接合部を形成すること。なお、後述するように、当該保温材の製造方法が、第二の工程を含む場合、上記工程は、第一の工程となる。
【0199】
上記加熱温度は、第二のフッ素樹脂の融点以上であれば特に限られない。例えば、上記加熱温度は、第一の実施形態に係る断熱材の製造方法と同様のものを採用することができる。
【0200】
すなわち、前記多孔質シート302a及び前記樹脂シート302bで前記断熱材を包んだ後、前記多孔質シート302a及び前記樹脂シート302bの接合される端部同士の間に、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を挟み、前記第一のフッ素樹脂の融点未満、前記第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、前記多孔質シートの接合される端部を加熱して、溶融した前記第二のフッ素樹脂が、前記多孔質シートの孔の内部に入り込んで、かつ、前記樹脂シートと一体となって、該端部同士を接着するように接合する、第一の工程を、該第五の実施形態に係る保温材の製造方法は含むこととなる。
【0201】
このように、外装材302の一部に、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bを用いて、多孔質シート202a及び樹脂製シート302bの端部同士を接着するように接合することによって、該端部同士の密着性はアンカー効果によって向上し、本発明の効果を高めることとなる。
【0202】
上記のように、外装材を構成する多孔質シートの端部の接合は、第一のフッ素樹脂の融点未満、第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、多孔質シートの接合される端部を加熱することによって、第二のフッ素樹脂を溶かし、多孔質シートの孔の内部に第二のフッ素樹脂が入り込んで、該多孔質シートの端部同士を接着するように接合している。このため、第一のフッ素樹脂で形成される多孔質シートの孔を、加熱によって消失させないように、第一のフッ素樹脂の融点と、前記第二のフッ素樹脂の融点との差が離れているほうが好ましい。
【0203】
例えば、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、10℃以上であることとしてもよい。この様に、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差が、10℃以上となるように材料を選択することによって、アンカー効果により多孔質シートの端部同士の接合が強固なものとなることが確実なものとなり、本発明の効果を更に高めることとなる。
【0204】
また、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、50℃以上であることは好ましく、100℃以上であることは更に好ましい。
【0205】
また、前述した第一の工程に用いられる第二のフッ素含有樹脂は、シート状であることとしてもよいし、粉状であることとしてもよいし、ワニス状であることとしてもよい。例えば、フッ素含有樹脂は、シート状である場合、多孔質シート102a、102bの接合部分の間隔を一定とすることができ好ましい。多孔質シート102a、102bの接合部分の間隔を一定とすることによって、本発明の効果は更に高まることとなる。
【0206】
また、多孔質シートが外装材に内包される断熱材の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されている場合、前述した第一の工程の前に、多孔質シートを、内包物である断熱材の外表面の形状に対応する形状に予め立体的に成形する、第二の工程を更に含むこととしてもよい。
【0207】
また、
図10Cは、
図10Aにおける破線Bにて囲まれた部分の他の一例の拡大図である。
図10Cにて示されるように、外装材30を構成する樹脂シート302bの接合される端部は、凹部303が形成されている。該凹部303の内部に、溶融した前記第二のフッ素樹脂が入り込んで備えられることによって、本発明の効果を更に高めることとなる。このような凹部303は、例えば、やすり等を用いて表面をあらすことによって形成されることとしてもよい。
【0208】
[第六の実施形態]
次に、本発明の第六の実施形態に係るジャケットヒータについて、図面を参照して説明する。
図11は、本発明の第六の実施形態に係るジャケットヒータを配管に使用した例を示す一部切欠斜視図である。
【0209】
第六の実施形態に係るジャケットヒータは、第二の実施形態に係るジャケットヒータの外装材102を、他の外装材302に置き換えた他は第二の実施形態に係るジャケットヒータと同様である。なお、第六の実施形態に係るジャケットヒータにおける発熱材151は、第二の実施形態に係る保温材にて用いられた発熱材151と同様である。
【0210】
図11に示すように、第六の実施形態に係るジャケットヒータ30(30A、30B)は、発熱材101と、前記発熱材151を包む外装材302と、を含み、前記外装材302は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート302aと、樹脂シート302bから構成され、前記多孔質シート302aと前記樹脂シート302bとは、前記外装材302において、それぞれの端部同士が接合されており、前記多孔質シート302aと前記樹脂シート302bとが接合される端部は、当該第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂103が多孔質シート302aの接合される端部同士の間に介在し、多孔質シート302aと当該第二のフッ素樹脂103とで上述の接合部を形成し、当該端部同士を接着するように接合されている。
【0211】
すなわち、
図11に示すように、本発明の第六の実施形態に係るジャケットヒータ30(30A、30B)は、発熱材101と、前記発熱材151を包む外装材302と、を含み、前記外装材302は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート302aと、樹脂シート302bから構成され、前記多孔質シート302aと前記樹脂シート302bとは、前記外装材302において、それぞれの端部同士が接合されており、前記多孔質シート302aと前記樹脂シート302bとが接合される端部は、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂が前記多孔質シート302aの接合される端部同士の間に介在して前記多孔質シート302aの孔の内部に入り込んで、該端部同士を接着するように接合されていることとしてもよい。
【0212】
すなわち、第六の実施形態に係るジャケットヒータ30(30A、30B)の外装材302は、孔が備えられた第一のフッ素樹脂製の多孔質シート202aと、孔が備えられていない樹脂シート302bと、から構成されている。
【0213】
第六の実施形態に係るジャケットヒータ30においても、外装材302が、その端部同士を接合する、少なくとも1以上の樹脂製シートから構成され、該樹脂製シートのうちの1つは、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート302aであるため、外装材内部の空気が熱によって暖められても、該外装材が膨張し形状が変形しない程度に、多孔質シート302aの孔を通じて外装材内部の空気が外部に排出される、外装材内部の圧力を保つこととなる。よって、配管500等に取り付けられた本発明に係るジャケットヒータ30は、該配管500等から脱落するおそれが低減されることとなる。
【0214】
なお、第一のフッ素樹脂とは、上記第一の実施形態にて説明したものと同様に、PTFE等のフッ素樹脂にて形成されることとしてもよい。また、外装材302に用いられる多孔質シート302aには、内包される発熱材151を密封し、例えば、発熱材151がセラミックス粉体等によって形成された場合においても、該粉体がジャケットヒータ10の外部に飛散しないサイズの孔が形成されている点についても同様である。また、例えば、多孔質シート302aの孔径、空孔率についても上記第一の実施形態にて説明をおこなったものと同様である。
【0215】
なお、多孔質シート302a及び樹脂シート302bの接合される端部同士の間に介在する第二のフッ素樹脂も上記第一の実施形態にて説明したものと同様に、FEP等のフッ素樹脂にて形成されることとしてもよい。
【0216】
第六の実施形態において用いられる樹脂シート302bは、PTFE(ポリテトラフォルオロエチレン),PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体),FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などが好ましく、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン),ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体),ECTFE(クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体),PVDF(ポリビニリデンフロライド)なども使用できる。また、上記以外に、ポリアミド,ポリカーボネイト,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,変性ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンサルファイド,ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ポリアリレート,ポリエーテルエーテルケルトン,ポリフタエミド,ポリイミド,ポリエーテルイミド,ポリメチルペンテンなどの熱可撓性樹脂であることとしてもよい。
【0217】
ここで、第六の実施形態において用いられる樹脂シート302bが、保温等の対象物(例えば
図11における配管500)と接する側に備えられる場合、該樹脂シート302bを構成する材料の融点は、250℃以上であることが好ましい。また、該樹脂シート302bを構成する材料は、後に説明をおこなう第二のフッ素樹脂と高い密着性を維持するためにも、融点が第二のフッ素樹脂と近いものが採用されることが好ましい。例えば、樹脂シート302bと、第二のフッ素樹脂と、の融点の差は10℃未満であることは好適である。
【0218】
第六の実施形態に係るジャケットヒータ30の外装材302を構成する多孔質シート302aと樹脂シート302bとは、該外装材302において、それぞれの端部同士が、第二のフッ素樹脂を介して接合されており、多孔質シート302aと樹脂シート302bとが接合される端部は、多孔質シート302aと第二のフッ素樹脂103とで上述の接合部を形成し、当該端部同士を接着するように接合されている。すなわち、多孔質シート302aと樹脂シート302bとが接合される端部は、多孔質シート302aの孔の内部に、二つのシート(多孔質シート302a、樹脂シート302b)の間に介在する第二のフッ素樹脂が入り込んで、該端部同士を接着するように接合されている。
【0219】
第六の実施形態に係るジャケットヒータ30に含まれる、外装材302を構成する多孔質シート302aと樹脂シート302bとの接合について、以下に詳細に説明を行う。
図12Aは、本発明の第六の実施形態に係るジャケットヒータの外装材を構成する、多孔質シートと樹脂シートとの接合部分の断面図である。また、
図12Bは、
図12Aにおける破線Bにて囲まれた部分の拡大図である。
【0220】
図12A、12Bに示されるように、第六の実施形態に係るジャケットヒータ30の外装材302は、多孔質シート302aと樹脂シート302bとから構成されている。そして、外装材302は、発熱材151を内部に内包している。また、二つのシート(多孔質シート302a、フッ素樹脂シート302b)の接合される端部同士の間には、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂103が、多孔質シート302aの孔110の内部に入り込んで、二つのシート(多孔質シート302a、フッ素樹脂シート302b)の該端部同士を接着するように接合されている。
【0221】
ここで、第六の実施形態における外装材302を構成する二つのシート(多孔質シート302a、樹脂シート302b)の端部の接合方法についてより詳細に説明を行う。第六の実施形態に係るジャケットヒータの外装材302は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シート302aと、樹脂シート302bから構成され、多孔質シート302aと樹脂シート302bとは、外装材302において、それぞれの端部同士が接合されている。そのため、第六の実施形態に係るジャケットヒータの製造方法は、多孔質シート302a及び樹脂シート302bで発熱材151を包んだ後、多孔質シート302a及び樹脂シート302bの接合される端部同士の間に、当該第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂103を挟み、当該第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、多孔質シート302aの接合される端部を加熱して、多孔質シート302aと第二のフッ素樹脂103とで上述の接合部を形成し、かつ、第二のフッ素樹脂103と樹脂シート301bとが一体となって、当該端部同士を接着するように接合する工程を含むこととなる。
【0222】
上記加熱温度は、第二のフッ素樹脂の融点以上であれば特に限られない。例えば、上記加熱温度は、第一の実施形態に係る断熱材の製造方法の場合と同様とすることができる。
【0223】
すなわち、第六の実施形態に係るジャケットヒータの外装材は、第一のフッ素樹脂製の多孔質シートと、樹脂シートから構成され、前記多孔質シートと前記樹脂シートとは、前記外装材において、それぞれの端部同士が接合されているため、前記多孔質シート及び前記樹脂シートで前記発熱材を包んだ後、前記多孔質シート及び前記樹脂シートの接合される端部同士の間に、前記第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂を挟み、前記第一のフッ素樹脂の融点未満、前記第二のフッ素樹脂の融点以上の温度で、前記多孔質シートの接合される端部を加熱して、溶融した前記第二のフッ素樹脂が、前記多孔質シートの孔の内部に入り込んで、かつ、前記樹脂シートと一体となって、該端部同士を接着するように接合する、第一の工程を、該第六の実施形態に係るジャケットヒータの製造方法は含むこととしてもよい。
【0224】
このように、外装材302の一部に、第一のフッ素樹脂の融点よりも低い融点を有する第二のフッ素樹脂製のフッ素樹脂シート202bを用いて、多孔質シート202a及び樹脂製シート302bの端部同士を接着するように接合することによって、該端部同士の密着性はアンカー効果によって向上し、本発明の効果を高めることとなる。
【0225】
上記のように、外装材を構成する多孔質シートの端部の接合は、第一のフッ素樹脂の融点未満、第二のフッ素樹脂の融点以上の加熱温度で、多孔質シートの接合される端部を加熱することによって、第二のフッ素樹脂を溶かし、多孔質シートの孔の内部に第二のフッ素樹脂が入り込んで、該多孔質シートの端部同士を接着するように接合している。このため、第一のフッ素樹脂で形成される多孔質シートの孔を、加熱によって消失させないように、第一のフッ素樹脂の融点と、前記第二のフッ素樹脂の融点との差が離れているほうが好ましい。
【0226】
例えば、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、10℃以上であることとしてもよい。この様に、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差が、10℃以上となるように材料を選択することによって、アンカー効果により多孔質シートの端部同士の接合が強固なものとなることが確実なものとなり、本発明の効果を更に高めることとなる。
【0227】
また、第一のフッ素樹脂の融点と、第二のフッ素樹脂の融点との差は、50℃以上であることは好ましく、100℃以上であることは更に好ましい。
【0228】
また、前述した第一の工程に用いられる第二のフッ素含有樹脂は、シート状であることとしてもよいし、粉状であることとしてもよいし、ワニス状であることとしてもよい。例えば、フッ素含有樹脂は、シート状である場合、多孔質シート102a、102bの接合部分の間隔を一定とすることができ好ましい。多孔質シート102a、102bの接合部分の間隔を一定とすることによって、本発明の効果は更に高まることとなる。
【0229】
また、多孔質シートが外装材に内包される発熱材の外表面の形状に対応する形状に、該多孔質シートの端部が接合される前に、予め立体的に成形されている場合、前述した第一の工程の前に、多孔質シートを、内包物である発熱材の外表面の形状に対応する形状に予め立体的に成形する、第二の工程を更に含むこととしてもよい。
【0230】
また、
図12Cは、
図12Aにおける破線Bにて囲まれた部分の他の一例の拡大図である。
図12Cにて示されるように、外装材30を構成する樹脂シート302bの接合される端部は、凹部303が形成されている。該凹部303の内部に、溶融した前記第二のフッ素樹脂が入り込んで備えられることによって、本発明の効果を更に高めることとなる。このような凹部303は、例えば、やすり等を用いて表面をあらすことによって形成されることとしてもよい。
【0231】
次に、本実施形態に係る接合部の接合強度を評価した実施例について説明する。
【実施例1】
【0232】
[接合部の形成]
第一のフッ素樹脂としてPTFEを、第二のフッ素樹脂としてFEPを使用して、接合部を形成した。すなわち、まず、長さ300mm、幅60mmの多孔質PTFEシート(二軸延伸シート、融点327℃、空孔率71%のもの)2枚と、非多孔質FEPシート(融点270±5℃)1枚を用意した。2枚の多孔質PTFEシートの間に上記FEPシートを挟み、当該PTFEシートの長辺の端部から3〜5mmの部位を、圧力をかけながら約400℃の加熱温度で加熱して接合部を形成し、2枚の多孔質PTFEシートの長辺の一方同士を接合した。
【0233】
[加熱温度の測定]
加熱温度は、熱電対を用いて多孔質PTFEシートとFEPシートの界面の温度を測定することで評価した。すなわち、多孔質PTFEシートとFEPシートの間であって、加熱されて接合される部分に、0.1mm径のK熱電対を20mm間隔で7つ配置し、PTFEとFEPの界面の温度を測定した。このようにして得られた各熱電対の温度の平均値を加熱温度とした。
【実施例2】
【0234】
加熱温度が約350℃である以外は、実施例1と同様の方法で接合部を形成し、2枚のPTFEシートを接着させた。
【実施例3】
【0235】
加熱温度が約327℃である以外は、実施例1と同様の方法で接合部を形成し、2枚のPTFEシートを接着させた。
【実施例4】
【0236】
加熱温度が約300℃である以外は、実施例1と同様の方法で接合部を形成し、2枚のPTFEシートを接着させた。
【0237】
[接合強度の評価方法]
上述の実施例1乃至4で得られたシートの接合体について、接合強度をオートグラフによる剥離試験により評価した。すなわち、実施例1乃至4で得られた接合されたシートを30mm幅に切断したものを、オートグラフ(AG−50kGN、株式会社島津製作所)を用いて、接合された2枚の多孔質PTFEシートを剥離させるように200mm/分の速度で引っ張った。そして、当該2枚の多孔質PTFEシートが剥離した際の引張強度(N/30mm)を接合強度として記録した。
【0238】
[評価結果]
上述のオートグラフによる方法で評価した実施例1乃至実施例3の接合強度は、それぞれ約70N/30mm、約60N/30mm、約40N/30mmであった。なお、実施例4における接合強度は、上述のオートグラフによる試験は実施していないものの、人がシートを剥離させて強度を評価する官能試験によれば、実施例3よりも接合強度は小さく20〜30N/30mm程度と推測された。このように、接合強度は、約400℃で加熱した実施例1が最も高く、次いで、約350℃で加熱した実施例2、約327℃で加熱した実施例3、そして約300℃で加熱した実施例4の順であった。第一のフッ素樹脂の融点以上の場合には、特に強度が高かった。加熱温度が高いほど強度が高くなった理由としては、第三の層が形成されることによるアンカー効果が考えられる他、多孔質PTFEシート自体の強度が増大したことも要因と考えられる。なお、実施例1乃至4の接合は、いずれも容易に剥離することはなく、十分な強度を有していた。
【0239】
図14は実施例2に係る接合部の断面の走査型電子顕微鏡画像である。前述の通り、
図14の点線で挟まれた領域には、
図13の第三の層の模様と同様のしわ模様が確認できる。
【0240】
図15及び16は、それぞれ実施例3及び実施例4に係る接合部の断面の走査型電子顕微鏡画像である。
図15、
図16は上述のしわ模様がある層は見えていないものの、上述のように実施例3及び4の接合も、容易には剥離しない十分な強度を有していることから、第三の層が形成されていると考えられる。
図15及び16では、多孔質PTFEの層とFEPの層との間に形成される第三の層が極薄いため、当該倍率では明確には見えなかったものと考えられる。