【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[合成例1]Ap1の合成
【化7】
【0049】
<第一段階>
100mlナスフラスコに42%テトラフルオロほう酸水溶液15.0ml(94.0mmol)、4−アミノピリジン0.478g(5.08mmol)を加え氷冷で攪拌した。その中に、亜硝酸ナトリウム0.357g(5.17mmol)をゆっくり加え、更に、N,N−ジメチルアニリン1.21g(9.99mmol)をゆっくり滴下し、室温で16時間攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを約12にし、オレンジ色の結晶を析出させた後、吸引ろ過を行い、結晶を得た。これをクロロホルムに溶かしてろ過をした。ろ液を100mlナスフラスコに取り、エバポレーターで溶媒を留去して粗結晶を得た。この粗結晶をトルエン:ヘキサンで再結晶を行ったところ、オレンジ色の結晶化合物1が0.441g(1.95mmol)得られた(収率:38%)。得られた結晶化合物1のスペクトルデータを以下に示す。
【0050】
1H−NMR(CDCl
3 270MHz)δ:3.13(s,6H),6.76(dd,J
1=2.2Hz,J
2=8.1Hz,2H),7.63(dd,J
1=1.5Hz,J
2=5.4Hz,2H),7.91(dd,J
1=2.2Hz,J
2=8.1Hz,2H),8.71(dd,J
1=1.5Hz,J
2=5.4Hz,2H)
【0051】
<第二段階>
耐圧チューブに化合物1を49.6mg(0.219mmol)、3−ブロモプロピルトリエチルアンモニウムブロミドを46.6mg(0.154mmol)、アセトニトリルを1.22ml加えて5分間N
2バブリングし、80℃で23時間加熱攪拌した。反応溶液を50mlナスフラスコに移して、溶媒を留去した。酢酸エチル、アセトンでそれぞれデカンテーションした。これを蒸留水100mlに溶かして分液ロートに移し、100mlの酢酸エチルで洗浄する操作を3回行った。水をエバポレータで留去すると、紫色固体のAp1が37.5mg(70.9mmol)得られた(収率:46%)。得られたAp1のスペクトルデータを以下に示す。
【0052】
1H−NMR(CDCl
3 270MHz)δ:1.50(t,J=7.2Hz,9H),2.85−2.98(m,2H),3.25(s,6H),3.44(q,J=7.2Hz,6H),3.84(t,J=8.0Hz,2H),5.23(t,J=7.8Hz,2H),6.80(d,J=9.4Hz,2H),7.98(d,J=9.4Hz,2H),8.04(d,J=7.0Hz,2H),10.0(d,J=7.0Hz,2H)
【0053】
[合成例2]Ap2の合成
【化8】
【0054】
<第一段階>
二口フラスコにアニリン1.72g(18.5mmol)、無水DMF50ml、炭酸ナトリウム3.43g(32.4mmol)、1−ヨードブタン7.00ml(59.8mmol)を加えて窒素置換した。95℃で還流させて20時間過熱攪拌した後、室温まで放冷した。水100mlを加えて分液ロートに移し、酢酸エチル100mlで2回抽出した。酢酸エチル層を水50mlで2回、飽和食塩水50mlで1回洗浄し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM:hex=1:9、v/v)で精製し、透明の油状液体3.09g(15.0mmol)を得た(収率:81%)。得られた油状液体のスペクトルデータを以下に示す。
【0055】
1H−NMR(CDCl
3 270MHz)δ:0.95(t,J=7.3Hz,6H),1.35(tq,J
1=7.3Hz,J
2=7.6Hz,4H),1.56(tt,J
1=7.6Hz,J
2=7.7Hz,4H),3.25(t,J=7.7Hz,4H),6.59(d,J=7.2Hz,1H),6.63(d,J=8.1Hz,2H),7.19(dd,J
1=7.2Hz,J
2=8.1Hz,2H)
【0056】
<第二段階>
100mlナスフラスコに42%テトラフルオロほう酸水溶液14.6ml(91.5mmol)、4−アミノピリジン0.235g(2.49mmol)を加え氷冷攪拌した。30ml三角フラスコに、N,N−ジブチルアニリン1.01g(4.93mmol)、エタノール11.0ml、42%テトラフルオロほう酸11.0ml(68.9mmol)を加えて氷冷攪拌した。氷冷攪拌していた100mlナスフラスコ中の溶液に亜硝酸ナトリウム0.171g(2.48mmol)をゆっくり加えた。ここに氷冷攪拌していた30ml三角フラスコ中の溶液をゆっくり滴下していった後、室温で15時間攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを約12にし、飽和食塩水25mlを加えた後、その溶液を分液ロートに移し、酢酸エチル150mlで2回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水300mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を留去した。更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EA:hex=1:3、v/v)で精製して、赤褐色の粘性固体の化合物2を0.185g(0.589mmol)得た(収率:24%)。得られた化合物2のスペクトルデータを以下に示す。
【0057】
1H−NMR(CDCl
3 270MHz)δ:0.99(t,J=7.3Hz,6H),1.40(tq,J
1=7.3Hz,J
2=15Hz,4H),1.61−1.70(m,4H),3.38(tt,J=7.7Hz,4H),6.69(dd,J
1=2.1Hz,J
2=7.2Hz,2H),7.62(dd,J
1=1.6Hz,J
2=4.7Hz,2H),7.87(dd,J
1=2.1Hz,J
2=7.2Hz,2H),8.70(dd,J
1=1.6Hz,J
2=4.7Hz,2H)
【0058】
<第三段階>
耐圧チューブに化合物2を48.9mg(0.158mmol)、3−ブロモプロピルトリエチルアンモニウムブロミドを51.4mg(0.170mmol)、アセトニトリルを0.80ml加えて5分間N
2バブリングし、100℃で24時間加熱攪拌した。反応溶液を50mlナスフラスコに移して、溶媒を留去した後、トルエンでデカンテーションした。紫色固体のAp2が96.1mg(0.157mmol)得られた(収率:99%)。得られたAp2のスペクトルデータを以下に示す。
【0059】
1H−NMR(CDCl
3 270MHz)δ:1.01(t,J=7.3Hz,6H),1.36−1.51(m,17H),2.80−2.97(m,2H),3.41−3.80(m,10H),3.83(t,J=7.7Hz,2H),5.18(t,J=7.9Hz,2H),6.75(d,J
1=9.3Hz,2H),7.94(d,J=9.3Hz,2H),8.01(d,J=6.7Hz,2H),9.87(d,J=6.7Hz,2H)
【0060】
[合成例3]Ap3の合成
【化9】
【0061】
<第一段階>
30mlナスフラスコに42%テトラフルオロほう酸水溶液2.30ml(14.4mmol)、4−アミノピリジン38.4mg(0.408mmol)を加え氷冷攪拌した。10ml三角フラスコに、N,N−ジヘキシルアニリン0.208g(0.794mmol)、エタノール1.70ml、42%テトラフルオロほう酸1.70ml(10.7mmol)を加えて氷冷攪拌した。氷冷攪拌していた30mlナスフラスコ中の溶液に亜硝酸ナトリウム30.3mg(0.439mmol)をゆっくり加えた。ここに氷冷攪拌していた10ml三角フラスコ中の溶液をゆっくり滴下し、室温で19時間攪拌した。水酸化ナトリウムを加えてpHを約12にし、飽和食塩水5mlを加えた後、その溶液を分液ロートに移し、酢酸エチル25mlで2回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水80mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を留去した。更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EA:hex=1:3、v/v)で精製して、赤褐色の粘性固体の化合物3[(E)―N,N−dihexyl−4−(pyridin−4−yldiazenyl)aniline]を22.3mg(0.0608mmol)得た(収率:15%)。得られた化合物3のスペクトルデータを以下に示す。
【0062】
1H−NMR(CDCl
3 270MHz)δ:0.91(t,J=6.7Hz,6H),1.28−1.43(m,12H),1.55−1.71(m,4H),3.37(t,J=7.7Hz,4H),6.68(dd,J
1=1.9Hz,J
2=6.3Hz,2H),7.62(dd,J
1=1.6Hz,J
2=4.6Hz,2H),7.87(dd,J
1=1.9Hz,J
2=6.3Hz,2H),8.70(dd,J
1=1.6Hz,J
2=4.6Hz,2H)
【0063】
<第二段階>
耐圧チューブに化合物3を51.8mg(0.141mmol)、3−ブロモプロピルトリエチルアンモニウムブロミドを29.7mg(98.0μmol)、アセトニトリルを1.22ml加えて5分間N
2バブリングし、80℃で23時間加熱攪拌した。反応溶液を50mlナスフラスコに移して、溶媒を留去した後、酢酸エチルでデカンテーションした。これを蒸留水100mlに溶かして抽出ロートに移し、100mlの酢酸エチルで洗浄する操作を8回行った。水をエバポレーターで留去すると、紫色固体のAp3が51.6mg(77.1μmol)得られた(収率:79%)。得られたAp3のスペクトルデータを以下に示す。
【0064】
1H−NMR(CDCl
3 270MHz)δ:0.92(t,J=6.62Hz,6H),1.42−1.25(m,12H),1.50(t,J=7.0Hz,9H),1.60−1.77(m,8H),2.83−2.98(m,2H),3.45(q,J=7.2Hz,6H),3.83(t,J=8.0Hz,2H),5.20(t,J
1=7.8Hz,2H),6.74(d,J=9.4Hz,2H),7.94(d,J=9.4Hz,2H),8.00(d,J=6.8Hz,2H),9.90(d,J=6.8Hz,2H)
【0065】
上記Ap1〜Ap3及び市販のSHGイメージング用色素FM4−64を用い、以下の手順に従って、SHGイメージングをおこなった。FM4−64は下記構造を有す化合物である。
【化10】
【0066】
<比較例1>
FM4−64を100μM含有する緩衝液を作成し、培養したヒトの正常な星状細胞にピペットを用いて導入した。細胞に導入された色素は時間と共に細胞体全体に広がる。
【0067】
測定には、市販のレーザー走査型共焦点顕微鏡に波長可変型フェムト秒モード同期赤外レーザーを光源として組み込むことにより、SHGイメージングやTPFイメージングが可能な多光子顕微鏡を用いた。1,000nmの励起光を照射することにより、色素から波長500nmのSHGシグナル光が、赤外パルスレーザーが進行する方向と同方向に発生する。シグナルはレーザー光進行方向側に設けた光電子増倍管にて検出することができる。又、同様の励起光を照射して、TPFシグナル光の後方散乱成分を観察する。
図1に、得られたSHG及びTPFイメージ像を示す。
【0068】
<比較例2,3及び実施例1>
色素としてAp1〜Ap3を用いるほかは比較例1と同様にしてSHG及びTPFイメージングを行い、それぞれ比較例2,3及び実施例1とした。
図2に比較例3(Ap2を用いた場合)、
図3に実施例1(Ap3を用いた場合)において得られたイメージ像をそれぞれ示す。ここで、Ap1を用いた比較例2による像は、SHGシグナル光を観察することができなかったため記載していない。
【0069】
図1のFM4−64を用いた例では、SHGシグナル以外にTPFシグナルも同様に観察される。これに対し、Ap2を用いた
図2は、SHGシグナルはほとんどみられない。TPFシグナルも、非常に弱いものであった。
【0070】
これに対し、本発明の光第二高調波発生色素であるAp3を用いた場合は、
図3から明らかなようにSHGシグナルを観察できる一方、TPFシグナルについては観察されていない。
【0071】
更に、表1に示される、アニオン性、中性、双性、ジカチオン性の色素を用いて、それぞれ、緩衝液への溶解性、毒性、培養細胞(CHO細胞)に適用した際のSHG及びTPFシグナルの有無を評価した。ここで、#1〜5の色素は、本発明の範囲外の光第二高調波発生色素であり、#6及び7の色素は、本発明の範囲内の光第二高調波発生色素である。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に記した上記光第二高調波発生色素のうち、#6、7の双性イオン性色素の合成法について、以下に説明する。
【0074】
[合成例4]色素#6[(E)−3−(4−((4−(dihexylamino)phenyl)diazenyl)pyridin−1−ium−1−yl)propane−1−sulfonate]の合成:
【化11】
【0075】
1,3−プロパンスルトン122mg(1.0mmol)と、上記合成例3の第一段階で合成された化合物3[(E)−N,N−dihexyl−4−(pyridin−4−yldiazenyl)aniline]を50mg(0.14mmol)とをジクロロメタン(2mL)に溶かした溶液を室温で24時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン/メタノール=5/1)で精製し、32mg(0.06mmol)の色素#6を得た(収率:45%)。得られた化合物の
1H−NMR及びHRMS(高分解能マススペクトロスコピー)による分析結果を以下に示す。
【0076】
1H−NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ:0.88(t,J=7.0Hz,6H),1.31(bs,12H),1.60(bs,4H),2.22(m,2H),2.46(t,J=7.0Hz,2H),3.52(t,J=7.1Hz,4H),4.66(t,J=7.0Hz,2H),6.95(d,J=4.7Hz,2H),7.91(d,J=4.7Hz,2H),8.10(d,J=3.5Hz,2H),8.97(d,J=3.5Hz,2H)
【0077】
HRMS(ESI):計算値[C
26H
40N
4O
3S(M+Na)
+]:511.27133、実測値:511.27059
【0078】
[合成例5]色素#7[(E)−3−(4−((4−(dioctylamino)phenyl)diazenyl)pyridin−1−ium−1−yl)propane−1−sulfonate]の合成:
<第一段階>
【化12】
【0079】
4−アミノピリジン201mg(2.1mmol)に42%テトラフルオロホウ酸2.1gを0℃で加え攪拌すると乳濁状の液体が得られた。これに硝酸ナトリウム138mg(2.0mmol)を5mLの水に溶かした水溶液をゆっくり加え更に0℃で攪拌した。そこに、N,N−ジヘキシルアニリン1.3g(5.0mmol)と酢酸(3mL)の混合物を加えた後、更にTHF(5mL)を加え、室温で3時間攪拌した。その後、2N水酸化ナトリウム溶液(50mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン/メタノール=15/1)で精製し、目的物を220mg(0.6mmol)得た(収率:30%)。得られた化合物4[(E)−N,N−dioctyl−4−(pyridin−4−yldiazenyl)aniline]の
1H−NMRによる分析結果を以下に示す。
【0080】
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)δ:0.89(t,J=6.8Hz,6H),1.29−1.34(m,20H),1.64(bs,4H),3.37(t,J=7.7Hz,4H),6.68(d,J=4.5Hz,2H),7.62(d,J=3.0Hz,2H),7.87(d,J=4.5Hz,2H),8.70(d,J=3.0Hz,2H)
【0081】
<第二段階>
【化13】
【0082】
1,3−プロパンスルトンを122mg(1.0mmol)と、化合物4を42mg(0.1mmol)とをジクロロメタン(2mL)に溶かした溶液を室温で24時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン/メタノール=5/1)で精製し、42mg(0.074mmol)の色素#7を得た(収率:74%)。得られた化合物の
1H−NMR及びHRMS(高分解能マススペクトロスコピー)による分析結果を以下に示す。
【0083】
1H−NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ:0.86(t,J=7.0Hz,6H),1.31(m,20H),1.60(bs,4H),2.24(m,2H),2.46(t,J=7.0Hz,2H),3.52(t,J=7.6Hz,4H),4.66(t,J=6.9Hz,2H),6.95(d,J=4.8Hz,2H),7.91(d,J=4.8Hz,2H),8.10(d,J=3.6Hz,2H),8.96(d,J=3.6Hz,2H)
【0084】
HRMS(ESI):計算値[C
30H
48N
4O
3S(M+Na)
+]:567.33393、実測値:567.33375
【0085】
#1〜7の光第二高調波発生色素及び上記で検討したAp3の溶解性、細胞毒性、CHO細胞に適用した際のSHG及びTPFシグナルの有無を、表2に示す。ここで、本発明外の色素#1〜5を使用した試験を、それぞれ比較例4〜8とした。これに対し、本発明内の色素#6、7及びap3を使用した試験を、それぞれ実施例2〜4とした。
【0086】
[色素の溶解性評価]
合成された表2の色素群(色素♯1〜♯7)に対しDMSO(Dimethyl Sulfoxide)を色素の濃度が約100mMとなるように加え、溶解を試みた。色素♯1、♯2及び♯3が容易に溶解したのに対し、色素♯6及び♯7は一部難溶性が認められ、色素♯4、♯5に関しては全く溶解が見られなかった。
【0087】
[色素のSHG及びTPFシグナル評価]
色素♯1〜♯3、♯4、♯5及びAp3のDMSO溶液を、細胞外液(Artificial Cerebrospinal Fluid)を用いて1,000倍希釈し、すべて解けたとして最終濃度が約100μMとなるようにした。
【0088】
観測の対象としてはカバーガラスの上で培養したCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞を用い、これを上記の色素溶液に浸す事で細胞膜の染色を試み、そのまま数分のうちに顕微鏡下で観測を行った。
【0089】
観測には超短フェムト秒レーザー(Newport社製MaitaiHP)を搭載した多光子レーザー顕微鏡システム(オリンパス社製FV1000MPE)を用い、1,000nmのパルスレーザー照射後のSHG及び2光子蛍光(Two−Photon Fluorescence:TPF)を各色素同じ検出条件にて観測した。各色素につき視野を変えて3枚ずつの画像を取得し、各色素間のシグナル強度を定性的に比較した。上記検討で得られた画像のうち、各色素について一枚ずつを
図4〜8に示す。それぞれ、
図4〜6は比較例4〜6の画像、
図7、8は実施例2、3の画像である。
【0090】
なお、色素の溶解が不可能であった色素♯4、♯5に関してはSHG、TPFともにシグナルが全く得られなかったため、評価できない(not applicable:n/a)ものとした。
【0091】
[色素の細胞毒性評価]
色素による細胞毒性の評価のため、近赤外光を用いた微分干渉像により染色前後の細胞の形態を確認した。特に、細胞の生理状態が悪化すると、1)細胞外基質との相互作用により伸びた構造を持っていた細胞がその接着を失う事でカバーガラスから離れ丸くなること、2)滑らかな様相を呈していた細胞膜が不均一で凸凹した形態になること、の2点に着目し、細胞毒性を評価した。
【0092】
【表2】
【0093】
本発明内の色素#6、7及びap3を使用した実施例2〜4は、緩衝液への溶解性や毒性に問題はなかった。これらの色素#6、7及びap3を細胞に適用した場合、TPFシグナルは観察されず、SHGシグナルのみが観察された。
図6、7に、実施例2、3のSHG及びTPFのシグナルを示す。以上の検討から、本発明の色素を細胞に導入することによって、無蛍光SHGイメージングが可能である事が確認され、膜電位の測定や可視化が可能となることが示唆された。