(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321638
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】原子力発電所、ヒューズ装置を備える安全システム、および、ヒューズ装置
(51)【国際特許分類】
G21C 15/18 20060101AFI20180423BHJP
G21C 1/00 20060101ALI20180423BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
G21C15/18 W
G21C15/18 L
G21C1/00 D
B66B5/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-522129(P2015-522129)
(86)(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公表番号】特表2015-524559(P2015-524559A)
(43)【公表日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】ES2012070551
(87)【国際公開番号】WO2014013095
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】514277684
【氏名又は名称】セルベクス テクノロヒア イ バローレス,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ラリオン,ハビエール
【審査官】
藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−136097(JP,A)
【文献】
特開昭61−084588(JP,A)
【文献】
特開平02−201290(JP,A)
【文献】
米国特許第03712851(US,A)
【文献】
特開2010−085282(JP,A)
【文献】
特開昭64−028592(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3171567(JP,U)
【文献】
特開平05−142380(JP,A)
【文献】
特開2002−156485(JP,A)
【文献】
特開昭60−235092(JP,A)
【文献】
特開昭62−148890(JP,A)
【文献】
特開平06−230166(JP,A)
【文献】
特開平04−115189(JP,A)
【文献】
特開2004−331231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 1/00
G21C 15/18
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に原子炉(1,2)を備える格納建屋(6)と、
タービンおよび他の発電設備を備える発電建屋(7)と、
放射性廃棄物あるいは核燃料を貯蔵する核物質建屋あるいは倉庫(9)とを有する原子力発電所であって、
前記格納建屋(6)と、前記発電建屋(7)と、前記核物質建屋あるいは倉庫(9)とは埋設されており、
前記発電建屋(7)を除く、前記格納建屋(6)と、前記核物質建屋あるいは倉庫(9)とは、水が前記格納建屋(6)と、前記核物質建屋あるいは倉庫(9)とを冷却あるいは浸水する必要がある際に、重力により水が落下するように、海(16)と連通し、海水面(16)より下方に位置する、少なくとも1つの冷却水タンク(8)を上方に備える冷却パイプ(13)により接続しており、
少なくとも前記格納建屋(6)を始点とし、前記冷却水タンク(8)を終点とする、蒸気を排出するためのパイプ(14)と、
前記冷却水タンク(8)の水面を一定の高さに保つバルブ手段および浮遊システムとをさらに備え、
前記格納建屋(6)は、内側に反応容器(2)を有し、
前記反応容器(2)の内部には、炉心(1)を格納する炉心容器(1)が配置され、少なくとも前記格納建屋(6)の壁および前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の壁のうち、少なくとも一方の壁には、冷却パイプ(13)と接続し、原子炉が過熱した際に溶融し開放され共晶合金材からなるハッチ(32)を備えたヒューズ装置(3)を備え、
前記ハッチ(32)は、前記格納建屋(6)または前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の内部と接触しており、
断熱材(33,34)は、前記冷却パイプ(13)の水と接触するように配置され、
前記格納建屋(6)または前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の過熱によって引き起こされる、共晶合金の溶融が起こっていない間において、前記断熱材(33,34)は、パイプの内部の水の蓄熱を防止することを特徴とする原子力発電所。
【請求項2】
前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の内部と、前記冷却水タンク(8)とを前記ヒューズ装置(3)を介して接続し、蒸気を排出するためのパイプ(15)を備え、
上記蒸気を排出するためのパイプ(14)は、安全バルブ(4)を介して前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)と前記冷却水タンク(8)とを接続していることを特徴とする請求項1に記載の原子力発電所。
【請求項3】
前記冷却水タンク(8)はホウ酸水を格納していることを特徴とする請求項1に記載の原子力発電所。
【請求項4】
地表に設置され、生成した電力を送信するために前記発電建屋(7)の設備と電気的に接続された、制御および送電建屋(5)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の原子力発電所。
【請求項5】
前記格納建屋(6)、前記発電建屋(7)、前記核物質建屋あるいは倉庫(9)は、地下水平トンネル(11)により互いに接続しており、
前記地下水平トンネル(11)は、それぞれの建屋を互いに隔離するための手動ハッチ(12)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の原子力発電所。
【請求項6】
地表と、前記格納建屋(6)、前記発電建屋(7)、前記核物質建屋あるいは倉庫(9)または前記地下水平トンネル(11)とを接続する垂直トンネル(10)を備えていることを特徴とする請求項5に記載の原子力発電所。
【請求項7】
前記垂直トンネル(10)は、重力エレベーター(100)および電気エレベーターを備えていることを特徴とする請求項6に記載の原子力発電所。
【請求項8】
内側に反応容器(2)を有する原子炉格納建屋(6)と、海(16)と連通し、海水面(16)より下方に位置する、少なくとも1つの冷却水タンク(8)と、を備え、
前記反応容器(2)は、炉心(1)を収容する炉心容器(1)を備え、
前記原子炉格納建屋(6)と前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)との壁のうちの、少なくとも前記原子炉格納建屋(6)の壁の少なくとも1つは、原子炉が過熱した際に溶融し開放され共晶合金材からなるハッチ(32)を備えたヒューズ装置(3)を備え、
前記ヒューズ装置(3)は、
前記壁に組み込まれており、
他端が前記冷却水タンク(8)と接続している冷却パイプ(13)の一端と接続しており、
前記原子炉格納建屋(6)の内側、および/または、前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の内側と、前記冷却水タンク(8)とを前記ヒューズ装置(3)を介して接続する、蒸気を排出するためのパイプ(15)を備え、
前記ハッチ(32)は、前記原子炉格納建屋(6)または前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の内部と接触しており、
断熱材(33,34)は、前記冷却パイプ(13)の水と接触するように配置され、
前記原子炉格納建屋(6)または前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の過熱によって引き起こされる、共晶合金の溶融が起こっていない間において、前記断熱材(33,34)は、パイプの内部の水の蓄熱を防止することを特徴とする原子力発電所のための安全システム。
【請求項9】
前記冷却水タンク(8)は、前記原子炉格納建屋(6)の上方に位置していることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記冷却水タンク(8)は、前記海(16)、および、ホウ酸溶液を貯蔵する、少なくとも1つの第2プール(82)と接続したホウ酸水のメインプール(8)を少なくとも1つ備え、
両方のプール(8,82)は、海水面よりも下方にあることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記原子炉格納建屋(6)の壁の内部、反応容器(2)の壁の内部、および、炉心容器(1)の壁の内部には、前記ヒューズ装置(3)が備えられていることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
請求項8から11の何れか1項に記載の原子力発電所の安全システムとして使用される、ヒューズ装置(3)であって、前記ヒューズ装置(3)は少なくとも前記原子炉格納建屋(6)の壁および前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の壁のうち少なくとも一方の壁に備えられ、
前記安全システムにおける原子力発電所は、前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)の内部と、前記冷却水タンク(8)とを前記ヒューズ装置(3)を介して接続し、蒸気を排出するためのパイプ(15)、及び該パイプ(15)と接続した低圧バルブ(31)を備えており、
前記ヒューズ装置(3)は、
密封シーリングとして、共晶合金ハッチ(32)と、
前記低圧バルブ(31)を格納する特定のハウジングをさらに備え、
前記共晶合金ハッチ(32)は、一方の端部が前記壁の内側に対応し、他方の端部で前記断熱材(33,34)としての断熱プラグ(33)に続き、さらに前記断熱材(33,34)としての断熱カバー(34)に続き、前記他方の端部を介して、冷却水を含むパイプ(13)と接続しており、
前記低圧バルブ(31)は、水が前記炉心容器(1)、前記反応容器(2)または前記原子炉格納建屋(6)の内部の熱い部材と接触し、最初に蒸気が生成された際に開くことを特徴とするヒューズ装置(3)。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の目的〕
本発明は、原子力発電所ならびにヒューズ装置を備える安全システムであって、安全システムを備える地下原子力発電所に関し、ヒューズ装置および重力エレベーターもまた本発明の際立った目的である。
【0002】
特に、本発明の目的である原子力発電所、ヒューズ装置を備える安全システム、および、重力エレベーターにおいては、汚染にさらされる発電所の建屋は、海面およびホウ酸水プールより下方に埋設され、発電所は、可能性として考えられるアクシデントの際でも動作するように、電気部品および電子部品を必要としない、安全システムを備え、特に、発電所の建屋を浸水させる熱ヒューズ、および、作業員が緊急時に避難するための重力エレベーターを備える。
【0003】
それゆえ、本発明は原子力産業分野においても利益をもたらすであろう。
【0004】
〔従来技術の状況〕
原子力発電所の安全上の主要な問題として、任意の時間で原子炉を冷却することができず、原子炉の温度が上昇し、燃料の反応を制御できなくなることがよく知られている。
【0005】
アクシデントの際には、冷却が不十分となり、原子炉の核燃料が溶融し、コリウムと呼ばれるものを形成する。コリウムは、炉心溶融物に起因するマグマであり、本質的には、核燃料と、核燃料を被覆している部品(ジルコニウム合金等)と、炉心と接触する炉心の種々の構成要素(ロッド(棒)、チューブ(管)、支持部材、クランプ等)との混合物により構成されている。
【0006】
これは発生する可能性がある最も深刻なアクシデントの内の1つであり、核分裂物質の反応の拡散を防止し、閉じ込め防壁からの放出を防止するために、原子炉を冷却する必要があり、一般的には、原子炉は反応容器であり、閉じ込め防壁は、格納容器である。
【0007】
さらに、燃料棒、制御棒およびその他の反応容器の部品が一体となって溶融する過程において、爆発を引き起こすガスが生成される。
【0008】
この種の状況を封じ込めるためには、熱により生じる蒸気の噴出を弱め、過程で生成するガスを希釈するホウ酸水による冷却が必要である。
【0009】
直面する問題の1つとして、冷却水の注入ポンプの動作不全や動作のための電力の供給不足によって、時には冷却水が該当箇所まで届かないという事が有る。
【0010】
それゆえ、可能な解決策としては、ポンプを必要とせずに冷却流体を注入することができるような発電所を設計することであり、そのため、冷却水タンクは、冷却される建屋よりも高い場所に位置しなければならない。
【0011】
今回改良された、ヒューズ装置冷却装置を備える原子力発電所の構造は、従来の原子力発電所における前述の安全上の問題を十分に解決する進歩を伴う。
〔先行技術文献〕
〔特許文献〕
〔特許文献1〕米国特許第3712851号明細書
〔特許文献2〕国際公開第96/20486号
〔特許文献3〕米国特許第4696791号明細書
〔特許文献4〕米国特許出願公開第2002/122526号明細書
〔特許文献5〕仏国特許発明第2840100号明細書
〔特許文献6〕国際公開第2012/025589号
【0012】
〔発明の説明〕
以下に述べる本発明の目的である、原子力発電所およびヒューズ装置を備える安全システムは、所定の深さで埋設された、新しい発電所の構造によって作り上げられ、これにより、非常事態のための冷却水タンクによって、アクシデントの際に冷却が可能となり、好ましくは、冷却水タンクは、海水を貯蔵しており、発電所の地上に設置され、そのため冷却水を、ポンプを必要とせず重力によって循環させることが可能となる。地面に発電所を収容するための、開放坑を掘った後には、対応する建築基準を備える原子力発電所が建設され、また、原子力発電所を格納するための耐震基準を有するコンクリートの区画が建設される。その後、接続傾斜路を掘った際に取り除いた土壌の一部を用いて埋設される。このような配置により、発電所の運転期間が終了した際に、現在地表に設置されている原子力発電所のように発電所を撤去する必要が無くなる。
【0013】
安全システムを備える原子力発電所は、主として、電気および電子部品を非常に少なくした、異なる安全装置を組み合わせた、原子力発電所を構成する構成要素の特別な配置に基づくものであり、最も関連する安全装置は、受動熱ヒューズ装置の配置および使用であり、これにより、原子炉の温度が予め設定された温度に達した際に、原子炉心に水が自動的に浸入することが可能となる。
【0014】
原子力発電所は、安全性を向上するために無尽蔵の水源である海に近い場所に埋設された、原子力プラントのそれぞれの設備あるいは装置の、特別で特徴的な配置を有し、同様に、発電所の安全性を向上させるためのそれぞれの設備あるいは装置備える。本発明の目的である原子力発電所は、特に、3つの基本的な設備を備え、すなわち、地下に設けられた原子炉格納建屋と、同様に地下に設けられたタービンもしくは発電建屋と、少なくとも1つの廃棄物および/または核燃料倉庫とである。地表には、変圧器、および、高圧電線との接続部に加えて、発電所制御建屋をさらに備えている。
【0015】
本発明に係る建屋の配置により、それぞれの建屋は、互いに分離されており、必要に応じて隔離することができ、格納建屋、ならびに、廃棄物あるいは核燃料倉庫および/または埋設建屋を浸水させることができる。特に、地下の建屋は、独立して埋設されていてもよく、好ましくは、非常事態が発生した際には、それぞれの建屋の入り口および/または出口のそれぞれに配置された爆薬リングを使用することで独立する。この配置に伴い、職員は、発電所の最も危険な建屋を隔離した状態で制御することができ、アクシデントが発生した際には、汚染された建屋の埋設あるいは浸水を引き起こし、職員は、放射線から遠くに留まることができる。上述したように、発電所は、少なくとも1つの放射性廃棄物および/あるいは核燃料倉庫を備え、これらは埋設されており、恒久的に設置される原子炉と接続しており、それゆえ、燃料を発電所の外に移動させる必要がない。前述の倉庫が満杯となれば、永遠に浸水および/または埋設され、発電所の残りの設備から隔離される。核倉庫の数は、発電所の運転期間の間に生成される廃棄物を貯蔵しておくのに必要な数である。未使用の核燃料を貯蔵しておくための、1つあるいはいくつかの倉庫がまた、当該倉庫あるいは建屋の間に配置される。
【0016】
少なくとも1つのホウ酸水プールは、海と海岸との間に配置され、埋設された発電所の一部よりも上方にあり、海と接続しており、非常時に発電所のそれぞれの設備を冷却する、および/または、浸水させる、ことができる。
【0017】
さらに、上述したように発電所の安全システムは、原子力発電所のためのヒューズ装置を備え、より詳しくは、原子力発電所の原子炉のためであり、高温の際に原子炉を浸水させる熱ヒューズの設置である。あるヒューズは、反応容器の中に設置されていてもよく、別のヒューズは、炉心容器の中に設置されていてもよく、これは、予め設定された、あるいは、所定の温度にそれぞれのヒューズが達した際に浸水させることを目的としており、第3のヒューズもまた同様に、コンクリート格納建屋を浸水させることを目的として配置される。安全ヒューズは、他の電気あるいは電子機械に組み込まれておらず、完全に受動的であり、自律しており、一度所定の温度に達すると、(共晶合金が)完全かつ突然に溶融し、これにより、原子炉より上方にあるプールあるいはタンクに貯蔵されたホウ酸水が重力により浸入する(静水圧補償システムを備えていることによりホウ酸冷却水の柱は浸水パイプを通じて排出されない)。浸水システムは、特定の温度で溶融するカバーまたはハッチで形成されており、アクシデントの際に所定あるいは予め設定された温度に達すると溶融し、開いた状態となる。
【0018】
1つ以上の重力エレベーターで形成された、非常時に地下にいる作業員のための避難システムや、建屋のうちの1つが浸水した後に乾燥させるためのポンプシステムや、また、アクシデントが管理下になった際に、パイプの流量を測定する洗浄システムや、フロートあるいは荷重バネの何れかによって特定の圧力で動作する受動バルブ等の、その他の安全システムもまた設置が考慮されている。
【0019】
それゆえ、本発明の第1の目的は、請求項1から8に係る原子力発電所である。
【0020】
本発明の第2の目的は、請求項8から13に係るヒューズ装置を備える安全システムである。
【0021】
本発明の第3の目的は、請求項14のヒューズ装置である。
【0022】
本発明の第4の目的は、請求項15から26に係る作業員を脱出させるための非常重力エレベーターである。
【0023】
上述したように、発電所は、原子炉、原子炉容器、格納および発電建屋、ならびに、ヒューズ装置および廃棄物タンクあるいは貯蔵庫が、冷却水タンクよりも下方に、すなわち海面よりも下方に、原子炉の特徴点および設計動力の大きさに係る、所定の設計深度で位置しており、動的な原子力部分は、地下に位置している。地下に位置していることにより、テロリストによる攻撃の可能性を大いに制限することができるというという効果だけではなく、プラントがこれ以上使用されなくなった時、アクシデントの後、または、残っている安全装置が動かなくなった時に、すべての出入り口に配置された爆薬リングにより、恒久的に発電所を埋設することができるという効果もある。
【0024】
今日の技術によれば、環境および周囲で生活している人の健康に影響があるような、深刻なアクシデントの発生確率が実質的にゼロである原子力発電所の建造が可能である。そのため、本発明は、以下の特徴を考慮に入れている。
−発電所を海の近くに配置し、
−(地震の起きやすい地域を避けて)原子炉を地下に配置し、地震の起きやすい地域であっても、本発明において提案されている設計は、耐震基準を考慮して設計されていれば有効である。
【0025】
本発明は特に、原子炉内の燃料の質量が制限された、500MW未満の第4世代の原子炉を想定しており、これにより、炉心溶融の際に、原子炉の燃料塊を容易に取り出すことができる。
【0026】
さらに、故障の可能性を低くするために、制御設備の設計は単純化され、そのため、電子機器は、外装被覆放射線(armor-clad radiation)、温度、地震波観測装置等に制限され、前述の設備が削減され、これにより故障の可能性が低くなる。
【0027】
上述したように、冷却流体は、メインホウ酸水タンクから冷却水を取水するバルブおよびフロート開放システムによって特定の一定高度で維持される。メインプールは、海面よりも下方に、埋設された建屋よりも上方に建設され、フロートを用いる水供給システムをさらに備え、フロートは、海水および濃縮ホウ素溶液が浸入できるように、ゲートバルブを開放する。前記ホウ酸溶液は、第2プールに格納され、第2プールは、フロートが備えるゲートバルブを介して当該溶液をメインプールに流す。発電所の基本的な冷却材である、ホウ酸水の連続的かつ無尽蔵の供給はまた、原子炉の安全を保障している。
【0028】
ホウ素の総量は、プールに直接溶液を注入することで、当該第2の濃縮ホウ素溶液プールによって維持される。プールは、海面よりも下方に位置しているため、プールの内容物が海に流入することは無い。また、前述のことが発生しないのを保証するために、メインプールと第2プールとの両方は、格納している水の上に浮いているカバーあるいはプレートを組み込んでおり、前記プレートは、水の蒸発を防止し、海水と他の成分との混合を最小限にするために、プールの底面に繋ぎ止められている。前記プールは、全表面を覆う固定された構造物をさらに備えていてもよい。
【0029】
前記プールは、地下発電所のそれぞれの建物および構成要素に対して、主として原子炉に対して、冷却水を供給する責任がある。メインプールは、ホウ酸水を格納し、また、アクシデントの際に、底面においては、例えば原子炉や、炉心容器や、コンクリート建屋や、廃棄物および核燃料貯蔵建屋といった、それぞれの容器または建屋で生成された気体のための排気あるいは蒸気パイプを受け入れる。排気あるいは蒸気ガスは、プールに達した際に凝縮され、プールの中で希釈される。前記ダクトあるいはパイプは、コンクリート原子炉格納建屋の壁面、反応容器、および、原子炉容器に設置された高圧及び高温安全バルブが始点である。
【0030】
本発明の目的である発電所は、原子炉でのアクシデントの際に、基本的な安全装置が人の動作を必要とせず動作し、また、電気および電子部品の関与を最小限にすることを目的としている。そのために、当該発電所は、メイン安全装置として冷却ヒューズ装置を備え、原子炉が予め設定された高温に達した結果である、アクシデントや機能不全の際には、冷却ヒューズあるいは熱ヒューズに備えられる、ハッチまたはカバーが溶融し、前記ハッチが溶融すると、原子炉は、メインプールから原子炉へと冷却ホウ酸水を導水する冷却ダクトまたはパイプと連通する。
【0031】
ヒューズ装置の内側に備えられたハッチまたはカバーは、特定の温度に達すると溶融する共晶合金でできており、原子炉格納建屋、原子炉容器、および/または、炉心容器への冷却ダクトまたはパイプに包含される冷却水の移動を可能としており、そのため、燃料棒または原子炉の他の要素の溶融に伴って生成されるガスの冷却および希釈が可能となっている。
【0032】
共晶合金は、液体状態では、ゆっくり冷却すると、共晶温度と呼ばれる凝固温度に達したところで、共晶反応と呼ばれる、液体→α固溶体+β固溶体の反応が起こる。ヒューズ装置は、原子炉格納建屋の壁の中、原子炉容器の壁の中、および/または、炉心容器の壁の中に配置されていてもよく、これにより、合金は、固体状態において、配置される壁に要求される機械的特性を保つことが可能であるが、液体へと変化する特定の温度を超えると、溶融し、原子炉のそれぞれの装置の中へ、冷却ホウ酸水を流すことができる。
【0033】
高圧高温安全バルブは、格納建屋、原子炉容器、および、炉心容器に設置され、ホウ酸水が格納建屋、原子炉容器、および、炉心容器に浸入し始めたすぐ後に発生するであろう高圧サージを噴出する機能を備えている。入水パイプおよび噴出パイプの数は、生成されるガスを噴出させるのに十分であり、同時に、冷却水にとっても十分であり、そのため、水が浸入し、水が蒸発し、噴出パイプを介して排出される温度においては、冷却水がさらに浸入することが可能である。安全性の余剰の実現を試みるために、パイプの数は、冷却水の浸水を保証するのに必要な数である。
【0034】
炉心の温度が、安全バルブの所定あるいは予め設定した温度を超えた際には、それぞれの安全ヒューズは、炉心が冷却されるまでの以下の順で動作する。浸水させるために、まず、炉心容器に設置されたヒューズが動作し、次に、反応容器に設置されたヒューズが動作し、最後に、格納建屋に設置されたヒューズが動作する。
【0035】
発電所の各部への浸水を伴う原子力災害または非常事態が制御下に置かれた際には、プラントは、冷却水を抜き取る方法によって復旧されてもよく、冷却水を抜き取るポンプ施設は、その目的のために設置され、汚染されたホウ酸水を、原子炉(格納建屋、反応容器および炉心容器)のガス排気パイプを介してホウ酸水プールへと運ぶ。
【0036】
上述したように、本発明の目的である発電所のそれぞれの建屋は、埋設され、また、水平および垂直トンネルのネットワークにより接続しており、水平および垂直トンネルは、発電所が通常操業時には、作業員の連絡路として機能し、可能性のある原子力災害の際には、避難経路として機能する。前記水平トンネルは、それぞれの場所に設置され、概してそれに対して接続する場所に、手動で、好ましくは釣合錘の助けを借りて、作動し、アクシデントの際に垂直連絡避難および安全トンネルの中間領域を隔離することができる、鉄扉および鉛板がある。
【0037】
発電所は、地下の建屋およびトンネルに接続する前記垂直トンネルにエレベーターを備え、当該エレベーターは、2つのタイプであってもよく、一方は、通常操業時に作業員が上昇及び下降ができる電気作動するタイプであり、もう一方は、電気を必要としない重力エレベーターであり、上昇のみが可能で、発電所の内部から避難するような非常事態にのみ使用される。重力エレベーターは、詳しくは、非常エレベーターに相当し、上昇のみに限られた作動に電力を必要とせず、好ましくは、普段使用されるエレベーターに対して平行に、避難トンネルの内部に設置され、モーターおよび電力を使用せずに動作するように設計されており、つまり、重力を用いた受動的な上昇により動作する。当該エレベーターは、避難に上昇が必要な設備および状況で使用されてもよい。
【0038】
重力エレベーターは、本発明の第4の目的であり、すべての安全装置を含む、他のエレベーターの典型的な構成要素をすべて備えるが、モーターを備えておらず、さらに、電気および電子部品も備えておらず、1回上昇するために1回のみ使用されるエレベーターである。エレベーターの箱は、緊急上昇が実行されるように、拘束ケーブルによって地面に固定されており、拘束ケーブルは、非常時にエレベーターを使用するために、内側から切断することが可能となっている。頂部では、エレベーターの箱は、メインケーブルによって固定されており、メインケーブルの逆側の端部は、メイン滑車の周りを輪で囲んだ後に、メイン釣合錘が配置され、拘束ケーブルが切断されると、重力によって、箱の内側にいる人を伴う、箱の受動的な上昇を引き起こす。
【0039】
好ましくは爆発型切断装置である切断装置の存在は、前記拘束ケーブルの切断を意図したものであって、手動鋏の存在は、標準体型の人が手動でケーブルを切断するのに使用することができるように、適当なサイズとなるように意図したものである。それゆえ、好ましくは二重填装置である、爆発ケーブル切断装置を動作させ、点火装置が二回とも動作不全であった場合には、前記鋏によりケーブルを手動で切断することができる。さらに、手動でケーブルを切断することを可能とし、かつ、内側からケーブル切断装置を動作させることを可能とするために必要な、すべてのキャビティーおよび作動装置はエレベーターの箱の中に配置される。
【0040】
メイン釣合錘によって作用する張力あるいは重量は、空の箱の重量とメインケーブルの重量との和よりも約20%程大きく、そのため、もし、1人あるいは2人が箱に入り、拘束ケーブルを切断すると、箱の中に入った人は、垂直方向に一定な上昇張力を保持しているメイン釣合錘の過剰重量の重力による牽引力によって、地表に向かって上昇を開始する。
【0041】
さらに、本発明の非常エレベーターは、第2釣合錘のシステムの存在を企図している。それゆえ、上昇し、地表に避難するために多数の人間がエレベーターの箱に入ることは、メイン釣合錘の張力が箱を上昇させるのに十分ではないことを意味しており、第2釣合錘および地盤アンカーに結び付けられた第2ケーブルが箱に取り付けられる。必要な第2ケーブルが固定されると、第2釣合錘の重量が対応する補完的な上昇張力を伝達するように、前記第2ケーブルの地盤アンカーが切断される。これは、上昇が開始するまで発生する。
【0042】
すべての場合において、箱が上昇を開始すると、上昇速度は、追加の安全および上昇制御システムによって制御され、安全および上昇制御システムは、安全性を目的として設置されており、2つ設置されていることが好ましい。前記システムは、以下の物を備えていてもよい。
−上昇速度を制御するための、上昇経路に沿って設置された摩擦軌道と接触する摩擦ブロックに、標準体型の人が十分な力が加わるように押すことができる、適当なサイズである、ブレーキレバー。
−上昇速度を制御するための速度計。
−経路に沿って設置された歯ざおを備え、標準体型の人が手動の力を加えることでエレベーターを上昇させることができる大きさである、内側からのギアホイール噛み合いのシステム。上昇するために、エレベーターの箱は、重量の不釣り合いにより常にバランスを失っている。
−経路の端部(上方および下方)に設置され、慣性に逆らうことでエレベーターを減速し、血管損傷等の傷害を乗員が受けないようにする、慣性ダンパーのシステム。
−2重点火システム、あるいは、標準体型の人のための大きさであり、ケーブルの周りを近くでクランプ(clamp)しており、例えば内側がコランダム粉末で塗装されたような、滑り止めシステムを備えるレバーシステム、を用いる第2牽引ケーブルアンカーシステム。
−小型酸素ボンベおよびマスク。
【0043】
最後に、すべての鋼鉄ケーブルは、油が塗られているが、さらに、第2釣合錘の拘束ケーブルは、張力無しに上昇し、切断された際に生じる、危険である急な引っ張りや、引っかかりを防止するために、鋼管で被覆されている。
【0044】
さらに、本発明は、外部への接続のための安全トンネルも考慮に入れられており、また、敷設は、好ましくは垂直であって、すなわち、常に垂直に配置される、それぞれのパイプのセットによる実装である。
【0045】
同様に、すべての出入り口は、復旧不可能な故障の際に、発電所を密封することができる爆薬リングによって保護されている。
【0046】
最後に、送電網および配電網に電力を送るために、発電所は、地下の建屋に位置する高圧低圧交流発電機から出され、外部に位置する高圧変換器に取り込まれる、生成した電力のための送電線を備えている。当該電線は、交流発電機と、地表に位置する高圧変換器との間の損失を減らすために、超導電体のケーブルを備える。
【0047】
〔図面の説明〕
添付の本発明に係る明細書は、図面とセットであり、図面は、非限定的な例である、本発明の本質的な特徴点の基本的な変更を伴わない、細部における種々の変更が可能な好ましい実施形態を示している。
【0048】
図1は、本発明に係る原子力発電所に埋設される主要な建屋を示す平面概略図である。
【0049】
図2は、原子力発電所の主要な設備を示す側面概略図である。
【0050】
図3は、熱ヒューズおよび関連設備と共に、反応容器および原子炉心を示す側面概略図である。
【0051】
図4は、原子炉格納建屋ならびに熱ヒューズおよび関連設備を示す側面概略図である。
【0052】
図5は、本発明の目的である非常エレベーターの実施形態を示す立面図であり、図中に示すような形状および配置である、主要部および構成要素を備える。
【0053】
図6は、追加の上昇速度制御装置を備えるエレベーターの箱を示す立面図である。
【0054】
〔本発明の好ましい実施形態〕
本発明に係る原子力発電所およびヒューズ装置を備える安全システムに関する好ましい実施形態の詳細な説明を以下に述べる。
【0055】
図1は、発電所の構造に関する平面図で例示した、埋設されるであろう、発電所の主要な建屋および場所を示しており、ここで開放坑が、接続傾斜路40によって埋設平面および主要建屋に向かって掘られており、主要建屋とは、格納建屋6、発電建屋7、それぞれ異なる廃棄物および核燃料建屋あるいは貯蔵庫9であり、トンネル11は、それぞれの建屋互いに水平に接続しており、前記水平トンネル11と表面で接続している垂直トンネル10が続けて設けられている。
【0056】
既に建設された発電所を示す
図2のように、送電および発電所制御建屋5を除くすべての発電所の設備は埋設されており、特に、原子炉および炉心を有する格納建屋6、発電建屋7、ならびに、燃料および廃棄物建屋または貯蔵庫9は埋設されている。地表に位置する制御および送電建屋5は、発電された電力を送電するために発電建屋(7)の設備と電気的に接続している。
【0057】
埋設された設備は、メイン冷却水タンクまたはプール8よりも下層に位置しており、メイン冷却水タンクまたはプール8は、例えば海16のような無尽蔵の水源と接続し、原子炉1の特徴および設計動力の大きさに応じた、十分な設計深度を有するように配置され、動的な原子力部分は地下にあり、送電網と接続し、生成したエネルギーを送電網に送信するする送電基幹施設5のみが補助設備に加えて地表に配置されている。
【0058】
発電所を海水面16よりも下に配置するために、地下発電所が配置される地面が掘削され、コンクリート部材で構成されたような、建築基準に適し、耐震基準が考慮されたプラントが地面に建設された後は、掘削された土壌の一部が発電所を埋設するために使用され、これは、メインプール8に加えて、メイン冷却タンクの階層より下に、すなわち海16より下方に、前記発電所を埋設するためである。
【0059】
格納建屋6は、原子炉心1を有する炉心容器が内側に位置する原子炉容器2を内部に備えている。炉心1は、原子炉であり、核分裂燃料により形成されており、温度が制御不能になり、原子力アクシデントが発生した際には、溶融し、核燃料と、核燃料を被覆している部品と、接触することになる炉心の構成部品の残部とからなるコリウムと呼ばれる炉心1の構成要素の溶融により生じるマグマが形成される。炉心容器1は、20から25cmの厚さを有する炭素鋼、および、他の内側を被覆する鋼で作られた圧力容器であり、コリウムの流出に対する第1の防壁である。反応容器2は、原子炉の炉心1の第2の安全容器であり、少なくとも20センチ以上の厚さを有する特殊鋼で作られている。格納建屋6は、アクシデント時におけるコリウムに対する最後の障壁であり、内側が鉛で被覆された、少なくとも150cmの厚さの高強度のコンクリートで建造されている。この建屋は、発電建屋7ならびに核燃料および廃棄物貯蔵庫9と接続している。
【0060】
地下の部屋あるいは建屋のそれぞれは、水平トンネル11により互いに接続されており、また、外部と垂直トンネル10により接続しており、これにより、それぞれの建屋間および外部に作業員を移動させることができる。水平トンネル11はまた、好ましくは手動で作動する安全ハッチ12を備えており、非常時に安全ハッチ12により互いの場所を隔離することができ、これは、メインタンクあるいはプール8から冷却水をそれぞれの場所に注入することができるようにするためである。垂直トンネル11は、非常時に作業員の脱出を容易にするために発電所の異なる場所に配置されている。前記垂直トンネル11は、発電所が通常操業している間に使用する電気エレベーターと、非常時に作業員を非難させるために上昇だけすることができる、電力を必要とせず重力エレベーター100を備えていることが好ましい。
【0061】
1回の上昇にだけ使用することが可能で、好ましくは通常使用されるエレベーターに平行に配置された、重力エレベーター100に関して、
図4および
図5は、前記エレベーターの内の1つのダイアグラムを示している。当該エレベーター100は、一般的に、頂部がケーブル130によって固定された箱120を備えており、ケーブル130は、メイン滑車140の周りを輪で囲み、逆側の端部で釣合錘150に組み込まれており、特に、前記箱120は、拘束ケーブル160によって地盤に固定されており、釣合錘150の重量は、空の箱120の重量にメインケーブル130の重量を加えたものよりも約20パーセント程度大きく、これにより、1人あるいは2人が箱の中に入り、拘束ケーブルを切断した際に、重力による釣合錘の落下に起因して箱が上昇する。
【0062】
エレベーターは、拘束ケーブル160を切断するための、好ましくは鋏(図示せず)を有する手動切断装置に加えて、二重装填(dual charge)起爆装置からなる爆発切断装置を備える。箱120は、拘束ケーブルを切断するための切断装置を内側から駆動させる、作動装置(図示せず)をさらに備え、また、切断装置にアクセス可能な穴、および、以下に述べる、組み込まれていてもよい他の追加の上昇制御装置を備えている。
【0063】
さらに、エレベーター100は、箱の収容能力を増加させることができる第2釣合錘170のシステムを備えている。第2釣合錘170のそれぞれは、第2ケーブル180に固定されており、第2ケーブル180は、第2滑車190の周りで輪を描き、一方の端部が地盤アンカー110に固定されており、それに対し、他端は、箱120に備えられる留め具111に固定する手段を備えている。
【0064】
エレベーター100に備えられる、前記釣合錘および第2ケーブルの数は、これより多くても少なくてもよく、対応する地盤アンカーおよび箱の中の留め具は、それぞれの場合の必要に応じて備えられていてもよい。
図4には、いくつかの第2釣合錘170を示しているが、第2釣合錘170のうちの1つだけを地盤アンカー11と共に完全な形で示している。
【0065】
さらに、安全システムおよび上昇速度制御システムとしてエレベーターは以下の物を備えていてもよい。
−上昇経路に沿って設置された軌道114上を移動する摩擦ブロック113を動作させるブレーキレバー112。
−速度計。
−経路にそって設置されたラック(rack)116とかみ合うギアホイール115。
−経路の端部に設置された慣性ダンパー117。
【0066】
さらに、第2ケーブル180のアンカーを切断するための、2重爆発切断装置あるいは、手動レバー装置(図示せず)をまた備えている。
【0067】
地盤アンカー110に固定された前記第2ケーブルの端部が、張力が無い状態で上昇しているときの動き(jerk)を防止する保護システムである鋼管118に被覆されていることは特に重要である。箱120はまた、小型酸素ボンベ及びマスク(図示せず)を備えている。
【0068】
発電所の説明を続けると、冷却水タンク8は、ホウ酸水を備える主要プールであり、無地蔵の水源である海16と接続しており、冷却源であり、また、少なくとも1つ以上のホウ酸水溶液が貯蔵された第2プール82と接続している。前記プールは、海水面16よりも下方に位置し、埋設された建屋よりも上方に位置しており、水を供給することができ、自身の高さを維持することができるゲートバルブを開放するフロートによって海および他のプールと互いに接続している。メインプール8、または、地下付属物81は、冷却パイプ13によってそれぞれの建屋と接続しており、冷却パイプ13は、ホウ酸水を前記プール8から重力によって輸送し、ポンプを必要としない。同様に、パイプの出口は、アクシデントの際に異なる建屋からの、主として格納建屋1からの、蒸気排出口14、15として使用され、端部は、前記プール8の底部にあり、これにより汚染された蒸気がプール8の水と接触することで凝縮される。
【0069】
メインプール8および第2プール82は、内部に格納された水の上に浮いているカバーあるいはプレート83を備えており、前記プレート83は、プール8,82の底部に固定されている。前記プレートは、好ましくは、ポリマー発泡体に覆われたステンレス鋼の格子によって作られていることが好ましく、ポリマー発泡体の厚さはプレートを浮遊させるのに十分な厚さであり、水を蒸発させる太陽放射線に抵抗し、海水による腐食に抵抗する。当該プレートまたはカバー83は、ケーブル84によりプール8,82の底部に固定されており、ケーブル84は、海水で高い引っ張り強さを示し、長さがそれぞれのプール8,82の壁の最大高さと等しい。これらの浮遊プレート83は、海水および他の元素とプール8,82のホウ酸水との混合を最小限にする。プールはまた、図示しない表面を覆っている固定された構造物を組み込んでいてもよい。
【0070】
冷却パイプ13は、格納建屋6の壁に組み込まれたヒューズ装置3を介して、格納建屋6の反応容器2および炉心容器1と接続している。格納建屋6、反応容器2および炉心容器1が備える壁のうち、何れか1つにだけヒューズ装置3が配置されていてもよいことは明らかである。それぞれのヒューズ装置3は、原子炉が過熱した際に自動的に開放されるハッチ32を備えており、ハッチ32は、原子炉のそれぞれの構成要素である、炉心容器1、反応容器2、および、格納建屋6を互いに分離している壁と似た特徴を有する共晶合金材32で形成されているが、過熱状態においては溶融可能であり、それぞれの構成要素1,2,6は、少なくとも1つ、好ましくは1つを超える数の冷却パイプ13で連結しており、安全性の余剰の実現を試みるために、それぞれはまた、メインプール8と接続している方が好ましい。
【0071】
原子炉は、2重の鋼鉄容器を有し、少なくとも2つのヒューズ3.1,3.2を備え、炉心容器1である内側容器、および、反応容器2である外側容器のそれぞれは、独立したホウ酸水ダクト13.1,13.2と接続しており、ホウ酸水ダクト13.1,13.2のそれぞれは、外側容器と内側容器との間でホウ酸水を循環させることが可能である。上述したように、原子炉は、格納建屋6に囲まれており、好ましくは、格納建屋6もまた、冷却ホウ酸水の浸入が可能な、第3パイプ13.3と接続する第3ヒューズ3.3を備えている。
【0072】
上述したように、ヒューズ3は、特定の温度に到達すると溶融するセラミックあるいは金属の密封シーリングであり、容器1,2あるいは格納建屋6の壁に統合されている。特に、頑丈な留め具に溶接あるいはネジ止めされることで、前記壁に統合されており、前記壁と同様の特徴、すなわち、壁、炉心容器1または反応容器2、もしくは、格納容器6の他の部分と等しい機械的強度、を備えているため壁の一部を形成している。
【0073】
ヒューズ3は、容器1,2または格納建屋6の内部にホウ酸水を注入し、冷却するための通路を形成するために所定の温度で突然溶融する。ヒューズ3は、共晶合金材32でできたカバーを備え、ヒューズ3は、所定あるいは目標温度に達した時に、断熱材33および断熱カバー34に続いて溶融するように設計されている。共晶合金材の融点は、2000〜2500℃の範囲であり、一度融点に達すると、急に溶融する。
【0074】
前記共晶カバー32が配置された後方には、断熱プラグ33が有り、断熱プラグ33の後方には、断熱カバー34が配置される。これらの2つの部材は、発電所の通常運転時において、
共晶合金材からなるハッチ32の熱が、ヒューズ装置3と接続しているパイプ13に包含されているホウ酸水に伝わるのを防ぐことができる。なお、パイプ13に包含されているホウ酸水が加熱された場合、パイプ13内での危険な圧力上昇が引き起こされるおそれがある。
【0075】
炉心1が過熱し、共晶合金が炉心1の融点未満である共晶合金の融点に達すると、共晶カバー32は、急に溶融し、ホウ酸水プール8と接続するパイプ13の水柱の静水圧による断熱カバー34の断熱プラグ33への押圧を引き起こし、炉心1へと浸入し、原子炉を冷却するための格納建屋6あるいは容器1,2へのホウ酸水の流通路を開放する。
【0076】
ヒューズ3は、下部に低圧パイプ15と接続する低圧バルブ31を格納する特定のハウジングを備えていることが好ましく、低圧パイプ15は、ホウ酸水が容器1,2あるいは建屋6の熱い部材と接触した際に、最初に蒸発ガスが生成されると開放される。カバー32の共晶合金は、水柱の静水圧の効果により突然溶融し、それゆえ、上述の低圧除去バルブ31は、水柱がプール8の上方あるいは下方へと押圧するのを即座に予防し、最初に容器1,2または建屋6に水が浸入する。
【0077】
原子炉はまた、炉心1および炉心容器2へのホウ酸水の浸入に伴って発生する高圧サージを噴出するための高圧パイプ14と接続した、高圧高温安全バルブ4を備えている。
【0078】
一方で、発電所は、反応ガス排出口あるいは排気パイプ(炉心および炉心容器)を通じて、冷却水をホウ酸水プールに引き抜くことによりプラントを復旧するポンプステーションを備えている。
【0079】
ホウ酸水を用いた冷却システムは、原子炉1,2および格納建屋6へと伸びているだけではなく、他の建物、例えば、タービンおよび交流発電機を格納している発電建屋6や、燃料貯蔵建屋9や、アクシデントの際に浸水させ冷却する必要がある放射性物質を備える他の部屋にも伸びている。
【0080】
一方で、発電所ならびにすべての発電所の入り口および出口は、アクシデントの際にプラントを爆破し、恒久的に密閉するための爆薬リングによって囲まれている。
【0081】
最後に、形状、材料および寸法は変更可能であり、一般に、上述した改良点の本質を改変、変更または修正せずに、補助的で従属的な範囲内において、変更可能である。
【0082】
なお、本発明は、以下の発明を包含する。
【0083】
1.内部に原子炉(1,2)を備える格納建屋(6)と、
タービンおよび他の発電設備を備える発電建屋(7)と、
放射性廃棄物あるいは核燃料を貯蔵する核物質建屋あるいは倉庫9とを有する原子力発電所であって、
前記格納建屋(6)と、前記発電建屋(7)と、前記核物質建屋あるいは倉庫9とは埋設されており、
前記発電建屋(7)を除く、前記格納建屋(6)と、前記核物質建屋あるいは倉庫9とは、水が前記建屋(6,7,9)を冷却あるいは浸水する必要がある際に、重力により水が落下するように、少なくとも1つの貯水タンク(8)を上方に備える冷却パイプ(13)により接続しており、
前記貯水タンク(8)は、海(16)と連通し、海水面(16)よりも下方に位置することを特徴とする原子力発電所。
【0084】
2.原子炉格納建屋(6)は、内側に反応容器(2)を有し、
前記反応容器(2)の内部には、炉心(1)を格納する炉心容器(1)が配置され、少なくとも前記格納建屋(6)の壁および前記容器(1、2)の壁のうち、少なくとも一方の壁には、冷却パイプ(13)と接続したヒューズ装置(3)を備えていることを特徴とする1.に記載の原子力発電所。
【0085】
3.格納建屋(6)の内部および容器(1,2)の内部と、冷却水の前記タンク(8)とを接続し、蒸気を排出するためのパイプ(14,15)を備えていることを特徴とする2.に記載の原子力発電所。
【0086】
4.前記タンク(8)はホウ酸水を格納していることを特徴とする1.に記載の原子力発電所。
【0087】
5.地表に設置され、生成した電力を送信するために発電建屋(7)の設備と電気的に接続された、制御および送電建屋(5)を備えていることを特徴とする1.に記載の原子力発電所。
【0088】
6.前記埋設された建屋は、地下水平トンネル(11)により互いに接続しており、
前記地下水平トンネル(11)は、それぞれの建屋を互いに隔離するための手動ハッチ(12)を備えていることを特徴とする1.に記載の原子力発電所。
【0089】
7.地表と、埋設された建屋または水平トンネル(11)とを接続する垂直トンネル(10)を備えていることを特徴とする1.または6.に記載の原子力発電所。
【0090】
8.前記垂直トンネル(11)は、重力エレベーター(100)および電気エレベーターを備えていることを特徴とする7.に記載の原子力発電所。
【0091】
9.内側に反応容器(2)を有する原子炉格納建屋(6)を備え、
前記反応容器(2)は、炉心(1)を収容する炉心容器(1)を備え、
前記格納建屋(6)と前記容器(1,2)との壁のうちの、少なくとも前記格納建屋(6)の壁の少なくとも1つは、ヒューズ装置(3)を備え、
前記ヒューズ装置(3)は、
前記壁に組み込まれており、
他端が冷却水タンク(8)と接続している冷却パイプ(13)の一端と接続していることを特徴とする原子力発電所のための安全システム。
【0092】
10.ヒューズ(3)を介して、格納建屋(6)の内側、および/または、容器(1,2)の内側と、冷却水タンク(8)とを接続し、蒸気を排出するためのパイプを備えることを特徴とする9.に記載のシステム。
【0093】
11.タンク(8)は、格納建屋の上方に位置していることを特徴とする9.に記載のシステム。
【0094】
12.タンクは、海(16)、および、ホウ酸溶液を貯蔵する、少なくとも1つの第2プール(82)と接続したホウ酸水のメインプール(8)を少なくとも1つ備え、
両方のプール(8,82)は、海水面よりも下方にあることを特徴とする9.に記載のシステム。
【0095】
13.ヒューズ装置(3)は、カバーまたはハッチ(32)を内部に備え、共晶合金材からなり、
前記カバー(32)は、建屋(6)または容器(1,2)の内部と接触しており、
断熱材(33,34)は、冷却パイプ(13)の水と接触するように配置され、
建屋(6)または容器(1,2)の過熱によって引き起こされる、共晶合金の溶融が起こっていない間において、断熱材(33,34)は、パイプの内部の水の蓄熱を防止することを特徴とする9.に記載のシステム。
【0096】
14.格納建屋(6)の壁の内部、反応容器(2)の壁の内部、および、炉心容器(1)の壁の内部には、ヒューズ(3)が備えられていることを特徴とする9.に記載のシステム。
【0097】
15.共晶合金カバー(32)、断熱プラグ(33)および断熱カバー(34)を備え、
格納建屋(6)、反応容器(2)または炉心容器(1)の内部と、共晶カバー(32)の一方の端部で接続し、他方の端部では、冷却水を格納しているパイプ(13)と接続していることを特徴とする原子力発電所の安全装置として使用される、ヒューズ(3)。
【0098】
16.水が容器(1,2)または建屋(6)の内部の熱い部材と接触し、最初に蒸気が生成された際に開く低圧バルブ(31)を格納する特定のハウジングを備えることを特徴とする15.に記載のヒューズ(3)。
【0099】
17.1回だけ使用可能な垂直トンネルのための上昇エレベーターであって、
メインケーブル(130)によって頂部が固定された箱(120)を備え、
前記メインケーブル(130)は、メイン滑車(140)の周りを輪で囲み、反対側の端部は、メイン釣合錘に組み込まれており、これにより、電力を必要とせず、重力のみを使用して動作し、
−前記箱(120)は、拘束ケーブル(160)により地面に固定されており、
−前記メイン釣合錘の重量は、箱(120)が空の状態の重量に、メインケーブル(130)の重量を加えたもののよりも大きく、
−拘束ケーブル(160)を切断するための、少なくとも1つの爆発切断装置、および、少なくとも1つの手動切断装置を備えることを特徴とするエレベーター。
【0100】
18.箱(120)は、内側から拘束ケーブル(160)を切断する装置を作動させる作動装置を備えることを特徴とする17.に記載のエレベーター。
【0101】
19.安全装置および上昇速度制御装置を備えることを特徴とする17.に記載のエレベーター。
【0102】
20.メイン釣合錘(150)の重量は、空の箱(120)の重量と、メインケーブル(130)の重量との和よりも少なくとも20%大きいことを特徴とする17.に記載のエレベーター。
【0103】
21.爆発切断装置は、二重装填起爆装置であることを特徴とする17.または18.に記載のエレベーター。
【0104】
22.手動切断装置は、鋏であることを特徴とする17.または18.に記載のエレベーター。
【0105】
23.少なくとも1つの第2釣合錘(170)を備え、
前記第2釣合錘は、第2ケーブル(180)に固定されており、
前記第2ケーブルは、
第2滑車(190)の周りを輪で囲み、
一端は地盤アンカー(110)に固定されており、
他端は箱(120)に備えられる留め具に固定されるための手段を備えていることを特徴とする17.に記載のエレベーター。
【0106】
24.箱(120)は、第2ケーブル(180)のアンカーを切断するための切断装置を備えていることを特徴とする23.に記載のエレベーター。
【0107】
25.上昇経路に沿って設置された軌道(114)上を移動する摩擦ブロック(113)を少なくとも1つ動作させる、少なくとも1つのブレーキレバー(12)を備えることを特徴とする19.に記載のエレベーター。
【0108】
26.少なくとも1つの速度計を備えることを特徴とする19.に記載のエレベーター。
【0109】
27.経路に沿って設置されたラック(116)と噛み合うギアホイール(115)を備えることを特徴とする19.に記載のエレベーター。
【0110】
28.経路の端部に設置された慣性ダンパー(117)を備えることを特徴とする19.に記載のエレベーター。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】
図1は、本発明に係る原子力発電所に埋設される主要な建屋を示す平面概略図である。
【
図2】
図2は、原子力発電所の主要な設備を示す側面概略図である。
【
図3】
図3は、熱ヒューズおよび関連設備と共に、反応容器および原子炉心を示す側面概略図である。
【
図4】
図4は、原子炉格納建屋ならびに熱ヒューズおよび関連設備を示す側面概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の目的である非常エレベーターの実施形態を示す立面図であり、図中に示すような形状および配置である、主要部および構成要素を備える。
【
図6】
図6は、追加の上昇速度制御装置を備えるエレベーターの箱を示す立面図である。