特許第6321642号(P6321642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321642ポリマー材料シート上にスクリーン印刷可能な着色組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321642
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】ポリマー材料シート上にスクリーン印刷可能な着色組成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20180423BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20180423BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20180423BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20180423BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B32B27/30 102
   B32B27/20 A
   C09D11/10
   B41M1/12
   C03C27/12 N
   C03C27/12 D
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-524825(P2015-524825)
(86)(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公表番号】特表2015-531699(P2015-531699A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】FR2013051760
(87)【国際公開番号】WO2014020261
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】1257429
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ウェリー
(72)【発明者】
【氏名】ウロディー デュクールティアル
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ラミ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ バルビエール
(72)【発明者】
【氏名】カミーユ ダッソンビル
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリーク モレル
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−515315(JP,A)
【文献】 特開2003−237209(JP,A)
【文献】 特開2009−144086(JP,A)
【文献】 特開2011−173943(JP,A)
【文献】 特開昭60−084368(JP,A)
【文献】 特開2005−002168(JP,A)
【文献】 特表2008−531457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09D 11/10−11/54
B41M 1/00− 1/42
C03C 27/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のものを含む組成物、すなわち、
・10〜15重量%のポリビニルブチラールと、
・32〜45重量%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルで主として構成される少なくとも1種の溶媒と、
・20℃における当該組成物のブルックフィールド粘度が9Pa・sと13Pa・sの間となるように選択された量及び比表面積の少なくとも1種の白色顔料と、
を含む組成物を用いて、スクリーン印刷によりカラー印刷されたポリマー材料シートを含む積層グレージング材。
【請求項2】
前記組成物のポリビニルブチラールが、ポリスチレン当量で最大90,000に等しく、好ましさが増大する順に最大で80,000、70,000、60,000及び50,000に等しい値を中心とする、ゲル浸透クロマトグラフィによって評価される分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の積層グレージング材。
【請求項3】
前記組成物のポリビニルブチラールが、ポリスチレン当量で少なくとも20,000、好ましくは30,000に等しい値を中心とする、ゲル浸透クロマトグラフィによって評価される分子量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層グレージング材。
【請求項4】
前記組成物のポリビニルブチラールの[OH]含有率が、17%と22%の間のポリビニルアルコール重量百分率に相当することを特徴とする、請求項1〜3の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項5】
前記少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルが、コハク酸エステル、グルタル酸エステル及びアジピン酸エステルから選択されることを特徴とする、請求項1〜4の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項6】
前記少なくとも1種の白色顔料が二酸化チタンを含むことを特徴とする、請求項1〜5の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項7】
前記少なくとも1種の白色顔料がルチル型二酸化チタンを含むことを特徴とする、請求項1〜6の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項8】
前記少なくとも1種の白色顔料の量が、前記組成物の32重量%と42重量%の間であることを特徴とする請求項1〜7の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項9】
前記少なくとも1つの溶媒が、少量の、グリコールエーテルで構成されることを特徴とする、請求項1〜8の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項10】
前記少なくとも1つの溶媒が、少量の、トリエチレングリコールジメチルエーテルで構成されることを特徴とする、請求項1〜9の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項11】
前記組成物が0.5〜3重量%のカーボンブラックを含有することを特徴とする、請求項1〜10の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項12】
前記組成物が湿潤剤として有効量の可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1〜11の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項13】
前記組成物がシリコーンを含有しない有効量の界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜12の一項に記載の積層グレージング材。
【請求項14】
請求項1〜13の一項に記載の積層グレージング材の一部となるように意図されたポリマー材料シートにスクリーン印刷により印刷する方法であって、スクリーン印刷用スクリーンを通して当該シートに適用されるのが、次のものを含む組成物、すなわち、
・10〜15重量%のポリビニルブチラールと、
・32〜45重量%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルで主として構成される少なくとも1種の溶媒と、
・20℃における当該組成物のブルックフィールド粘度が9Pa・sと13Pa・sの間となるように選択された量及び比表面積の少なくとも1種の白色顔料と、
を含む組成物であることを特徴とする、ポリマー材料シートにスクリーン印刷により印刷する方法。
【請求項15】
前記組成物の適用によって形成した湿潤層の厚みが10μmと50μmの間であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜13の一項に記載の積層グレージング材の一部となるように意図され、次のものを含む組成物、すなわち、
・10〜15重量%のポリビニルブチラールと、
・32〜45重量%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルで主として構成される少なくとも1種の溶媒と、
・20℃における当該組成物のブルックフィールド粘度が9Pa・sと13Pa・sの間となるように選択された量及び比表面積の少なくとも1種の白色顔料と、
を含む組成物を用いて、スクリーン印刷により印刷されている、ポリマー材料シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
・ポリビニルブチラール又はエチレン/酢酸ビニルコポリマーのシートなどのプラスチック中間層を用いて互いに接着された2枚のガラスシート、又は、
・ポリウレタンの層間シートにより互いに接着された1枚のガラスシートと1枚のポリカーボネートシート、又は、
・ポリウレタンシートなどが接着されている無機ガラス又はポリカーボネートの単一シート、
で一般に構成された、積層グレージング材の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスなどとして使用される積層グレージング材には、数多くの用途がある。すなわち、車室内の計器板温度及び周囲温度を低下させることのできる太陽熱線反射層、車内バックミラーの支持体、特にITO層又は電熱線ネットワーク用の電流給電母線、太陽光をフィルターにかけるための、所望によりグラデーションカラーを備えた上部ストリップ、雨滴検出器などである。したがって積層グレージング材は、さまざまな目的、すなわち、下にある接着剤を紫外線放射から保護し車体構成部品又はシールを車外の観察者の視野から隠すために全周囲にわたり不透明化されたグレージング材の縁部、メーカー又はさまざまな規格に関するマーキング、車内バックミラーのベースを車外の観察者の視野から隠すための不透明化された表面、といった目的のために、印刷が施される。
【0003】
平面ガラスシート上に、つまり該当する場合には曲げ加工前に、このような印刷を施すことが普通である(これは、湾曲した表面への印刷がはるかに困難なためである)。1つの好ましい方法は、エナメルのスクリーン印刷であり、これは求められる光学的品質、すなわち優れた被覆性、不透明度及び解像度を提供でき、容易に工業化できる。
【0004】
平面ガラスシート上へのスクリーン印刷には欠点がないわけではない。積層品において、エネメルは、外側への配置を意図された、すなわち大気と接触するガラスシートの面2と呼ばれる内側面上に、及び/又は、内側への配置を意図された、すなわち内部雰囲気、特に輸送車両の車室空間と接触するガラスシートの面4と呼ばれる外側面上に、スクリーン印刷される。
【0005】
組立てられた積層品の構造において内側の面2をエナメル塗装することの欠点は、以下のように説明できる。ガラスシートは、1対ずつのその曲げ加工の間、粉末中間層の存在にも関わらず互いに、又は曲げ加工設備の機械的構成要素と、物理的に接触する。この物理的接触のため、硬化及び乾燥が不充分である印刷表面が不利な影響を受けるのを防止する目的で、例えば、粉末中間層による分離にも関わらず2枚のガラスシートが結合したり、未硬化のエナメル表面に欠陥が発生したりするのを防止する目的で、印刷された組成物のアニーリングのために追加の炉を前もって使用することが必要となる。このアニーリングは、生産ラインにおける追加コストを発生させる追加の処理工程である。
【0006】
組立てられた積層品の構造内において外側の面4のエナメル塗装では、エナメルの硬化が公知のようにして光学的欠陥(ドイツ語で「Brennlinie」)の発生を招く。
【0007】
面2及び4のこれらのエナメル塗装に共通の欠点は、他にも存在する。
【0008】
第1に、エナメルはガラスと同量の熱を吸収しないことから、一方ではエナメル塗装されたゾーンそして他方ではエナメル塗装されていないゾーンのために完全に適応し差別化された加熱を規定する必要がある。したがって、加熱は、雨滴検出器、光検出器などを備えたフロントガラス及び備えないフロントガラスのグレージング材の各構成ごとに変更されなければならない。
【0009】
さらに、硬化後の黒色エナメルの密度はおよそ3である。しかしながら、この値よりもわずかに大きい光学密度が求められる場合があり、これは、被着されるエナメルの厚みを増大させることによってのみ得ることができる。
【0010】
これらの問題は、ガラスシート上ではなく、ポリビニルブチラールシートのような中間接着層などの、積層グレージング材の構成内に含まれるポリマー材料シート上にスクリーン印刷をすることによって解決することができた。
【0011】
明らかに、方法のこの変更は、いずれの場合でも、機械的強度又は経年劣化の観点からのみならず美観的観点から見ても、標準規格及び顧客の仕様との整合性という、最終製品の仕様に対して不利な影響を及ぼすことがあってはならない。特に以下の点、すなわち、
・ピンホール数が少ないことによって発現される、透明度に受入れがたいほどの影響を及ぼすことのない良好な被覆率、
・X−Rite 341装置などにより測定される、少なくとも3に等しい、好ましくは4に等しい光学密度に相当する所要不透明度、
・顧客にとって許容可能な、すなわちガラス上のエナメル塗装のものと同様の、印刷の解像度及び外観、
を指摘しておくべきである。
【0012】
その上、本発明は、より詳細にはカラー印刷を対象としており、ここでカラー印刷というのは、黒以外の印刷、特にグレー、白、青、緑、赤、黄色などの印刷を意味し、この印刷は、美的観点又は技術的観点から見た車両の個性化という益々増大する需要に応えるものであり、1つの特定の色で例えば電気自動車を表わすことなどが可能である。しかしながら、「エナメル」技術は、複数の理由から、自動車の問題に応えることを可能にするものではない。赤、オレンジ色又は黄色の色調については、標準的なエナメルがこれらの明るい色を得る目的でカドミウムを含んでいることから、EHS(環境、健康及び安全性)の問題のために、これらの使用は今後禁止されている。カドミウムを含まない赤、オレンジ色又は黄色のエナメルは存在するが、パステル調の色合いであり、3をはるかに下回る光学密度しか有していない。
【0013】
青又は緑色のメタリックの色合いに関しては、光学密度が不充分である。3という光学密度を保証するためには、着色エナメルの背後に黒色印刷する2重印刷を実施する必要がある。こうして、処理工程は複雑になり、コストは増大する(原料価格、あるいはさらに生産ラインの効率損失の可能性)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、上述の利点の組合せを有し、30分を上回らない、好ましくは10分、とりわけ5分を上回らない「タッチドライ」時間で単一パスで特に実施可能な、積層グレージング材のポリマー材料シート上へのカラースクリーン印刷方法を提供することにある。上述の面2及び4へのエナメル塗装に関連する欠点、特にアニーリング炉を使用する追加工程(面2)の必要性及び面4上の光学的欠陥の発生は、排除されなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、積層グレージング材の一部となるように意図されたポリマー材料シートのスクリーン印刷によるカラー印刷に好適な組成物であって、
・10〜15重量%のポリビニルブチラールと、
・32〜45重量%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルで主として構成される少なくとも1種の溶媒と、
・20℃における組成物のブルックフィールド粘度が9Pa・sと13Pa・sの間となるように選択された量及び比表面積の少なくとも1種の白色顔料と、
を含む組成物を1つの対象とする本発明によって達成される。
【0016】
この組成物は、スクリーン印刷用スクリーン及びポリマー材料基材に関して、特に10℃〜25℃、好ましくは12℃〜15℃、そして20%〜70%、好ましくは最高で30%の湿度などの作業雰囲気条件下で、それを方法にとって完全に好適なものにし、かつ平面ガラス上への印刷と等価の印刷結果を保証するレオロジー及び親和性(表面張力)を有する。このように開発されたインクは、単一のスクリーン印刷パスで高い光学的品質、特に上述のピンホールの存在しないこと及び充分な光学密度と同時に、インラインプロセスに適合する短いタッチドライ時間を得ることを可能にする。その上、この組成物を用いたスクリーン印刷により印刷されたポリマー材料シートを含む積層グレージング材の構成要素の結合力、つまりは相互接着力のため、この組成物はあらゆる国において施行されている基準を満たすことができる。印刷されたポリマー材料シート(特に中間接着剤層)を有する積層品の密着性は、メーカーの仕様及び標準規格により規定される閾値によって、ねじり試験及びボール落下試験を含めたさまざまな機械的試験により認証される。
【0017】
ポリマー材料シートは、2枚のガラスシート間の、例えばポリビニルブチラール又はエチレン/酢酸ビニルなどでできた中間接着剤層、又は1枚のガラスシートと例えば1枚のポリカーボネート又はアクリル(ポリメチルメタクリレートなどの)シートとの間の、例えばポリウレタン製の中間接着剤層であるか、あるいは、他の任意のタイプの透明なポリマー材料、例えばポリカーボネート、アクリル、イオノマー樹脂などで構成される。
【0018】
印刷されたポリマー材料シートはまた、積層グレージング材において、経年劣化/塩水噴霧耐性、耐酸性さらには耐紫外線に関する規制を満たし、こうして、その使用条件の如何に関わらず完成品の耐久性を保証する。
【0019】
この組成物によって得られる印刷色は、各々例えばおよそ数重量%程度の選択された量の1種以上の対応する顔料を添加することにより、白、グレーのあらゆる色調、カラーインデックスPB15:3の青、カラーインデックスPG7の緑など、さまざまになる。
【0020】
本発明の組成物の好ましい特徴によると、
・組成物が含有するポリビニルブチラールは、ポリスチレン当量で最大90,000に等しく、好ましさが増大する順に最大で80,000、70,000、60,000及び50,000に等しく、少なくとも20,000、好ましくは30,000に等しい値を中心とする、ゲル浸透クロマトグラフィによって評価される分子量を有し、
・組成物が含有するポリビニルブチラールの[OH]含有率は、17%と22%の間のポリビニルアルコール重量百分率に相当し、
・前記少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸ジエステルは、特にジ(C1〜C6アルキル)、好ましくはジメチル、ジエチル、ジプロピル又はジブチル、そして特に好ましくはジメチルのコハク酸エステル、グルタル酸エステル及びアジピン酸エステルから選択され、これらのジエステルの複数種が混合物の形で含有されていることも可能であり、
・前記少なくとも1種の白色顔料は二酸化チタン、好ましくはルチル型二酸化チタンを含み、
・前記少なくとも1種の白色顔料の量は32重量%と42重量%の間であり、
・前記少なくとも1種の溶媒は、少量の、グリコールエーテル、例えばトリエチレングリコールジメチルエーテルなどで構成され、
・組成物は0.5〜3重量%のカーボンブラックを含有し、この構成成分は光学密度の増加を可能にし、
・組成物は、湿潤剤として有効量の可塑剤、例えば5〜12重量%の安息香酸エステル、フタル酸エステル及び/又はその誘導体、アジピン酸エステル及び/又はその誘導体、脂肪酸エステル、トリメリット酸トリオクチル、トリアセチン、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はトリメチルペンタンジオールジイソブチレートを、単独で又はその複数種の混合物として含み、
・組成物は、シリコーンを含有しない有効量の界面活性剤、特に0.5〜2重量%のポリアクリレートを含む。
【0021】
さらに、本発明のその他の対象は、以下のもの、すなわち、
・積層グレージング材の一部となるように意図されたポリマー材料シートにスクリーン印刷により印刷するための方法であって、上述の組成物を、好ましくは10μmと50μmの間、特に好ましくは少なくとも20μmに等しい湿潤層の厚みでスクリーン印刷用スクリーンを通して当該シートに塗布し(この方法の工業的な処理可能性は、特にこの湿潤厚みが単一のスクリーン印刷パスで好ましく達成されるという事実によって実証される)、積層グレージング材において中間層として働くポリマー材料シートのために、インクの化学的組成が、小さい被着厚みでの中間層への印刷が積層グレージング材を得るための必須の工程を構成する良好な脱気とオートクレーブ処理特性を保証することを目的に最適化されている、印刷方法、
・積層グレージング材の一部をなすように意図され、かつ上述の組成物を用いてスクリーン印刷によって印刷されたポリマー材料シートであって、好ましくはポリビニルブチラール又はエチレン/酢酸ビニル、又は他の任意の透明なポリマー材料、例えばポリウレタン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート又は他のアクリル、イオノマー樹脂などで構成されているポリマー材料シート、及び、
・このようなポリマー材料シートを含む積層グレージング材、
である。
【0022】
次に、本発明を以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0023】
〔例1〕
ポリビニルブチラールの中間層シートに下表で詳細に説明される組成のインクを用いてスクリーン印刷することによって、ソーダ石灰フロートガラスの2枚のシートとともに組立てた後に、上述の通りの高い光学品質のグレー印刷を施した高い機械的品質の積層グレージング材が得られる。10分という「タッチドライ」時間は短時間であり、連続インライン工業プロセスとの相性がよい。
【0024】
下表では、全ての割合は重量百分率で示されている。
【0025】
【表1】
【0026】
ポリビニルブチラールの分子量は、以下の方法で評価される。テトラヒドロフラン中に3g/lのポリビニルブチラール粉末の液剤を調製し、次にWaters StyragelのHR4Eタイプのゲル浸透クロマトグラフィカラム中に、1ml/minのテトラヒドロフランで注入する。蒸発光散乱検出器を用いてクロマトグラムを作成する。7〜7.1分で観察される幅広いピークは、PS当量で46,000〜55,000、すなわち事実上約50,000を中心とする分子量を示している。
【0027】
ポリビニルブチラールの[OH]含有率は、18%というポリビニルアルコール重量百分率に相当する。
【0028】
湿潤剤は可塑剤としても作用し、すなわちそれは、印刷されたインク皮膜が光学特性の劣化なしにより大きく変形できるようにする。ここでは、それはフタル酸ジメチルシクロヘキシルである。
【0029】
カーボンブラックの比表面積は65m2/gであり、40〜150m2/gの値が概して好適である。
【0030】
ジエステルは、60重量%のグルタル酸ジメチル、20重量%のコハク酸ジメチル及び20重量%のアジピン酸ジメチルの混合物である。
【0031】
グリコールジエーテル溶媒は、トリエチレングリコールジメチルエーテルである。
【0032】
界面活性剤は、2−エチルヘキシルアクリレートのコポリマーであり、それはシリコーンを含有していない。
【0033】
20℃のインクのブルックフィールド粘度は11Pa・sであり、本発明の枠内では9Pa・sと13Pa・sの間の値が好適である。この測定は、以下の要領で実施される。インク中でローラーを少なくとも8時間回転させることにより、インクの粘度を安定した値まで低下させる。インクの試料を採取し、コーンプレート粘度計を用いてその粘度を測定する。
【0034】
X−Rite 341装置を用いて、積層グレージング材上の印刷されたグレーのパターンについて3を上回る光学密度が測定される。したがって、所要の不透明度が得られる。
【0035】
印刷したパターンの解像度は満足のいくものである。
【0036】
刷した層間積層品の密着性は、車両について、及び車両への取付け及び/又は車両での使用が可能な機器及び部品についての一律の技術的規定の採用とこれらの規定に基づいて付与される承認の相互認証の条件とに関するE/ECE/324、E/ECE/TRANS/505協定の規則第43号、附則42にしたがった「ボール落下」試験を満たすことにより、実証される。
本発明の代表的な態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
次のものを含む組成物、すなわち、
・10〜15重量%のポリビニルブチラールと、
・32〜45重量%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルで主として構成される少なくとも1種の溶媒と、
・20℃における当該組成物のブルックフィールド粘度が9Pa・sと13Pa・sの間となるように選択された量及び比表面積の少なくとも1種の白色顔料と、
を含む組成物を用いて、スクリーン印刷によりカラー印刷されたポリマー材料シートを含む積層グレージング材。
《態様2》
前記組成物のポリビニルブチラールが、ポリスチレン当量で最大90,000に等しく、好ましさが増大する順に最大で80,000、70,000、60,000及び50,000に等しい値を中心とする、ゲル浸透クロマトグラフィによって評価される分子量を有することを特徴とする、態様1に記載の積層グレージング材。
《態様3》
前記組成物のポリビニルブチラールが、ポリスチレン当量で少なくとも20,000、好ましくは30,000に等しい値を中心とする、ゲル浸透クロマトグラフィによって評価される分子量を有することを特徴とする、態様1又は2に記載の積層グレージング材。
《態様4》
前記組成物のポリビニルブチラールの[OH]含有率が、17%と22%の間のポリビニルアルコール重量百分率に相当することを特徴とする、態様1〜3の1つに記載の積層グレージング材。
《態様5》
前記少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルが、コハク酸エステル、グルタル酸エステル及びアジピン酸エステルから選択されることを特徴とする、態様1〜4の1つに記載の積層グレージング材。
《態様6》
前記少なくとも1種の白色顔料が二酸化チタンを含むことを特徴とする、態様1〜5の1つに記載の積層グレージング材。
《態様7》
前記少なくとも1種の白色顔料がルチル型二酸化チタンを含むことを特徴とする、態様1〜6の1つに記載の積層グレージング材。
《態様8》
前記少なくとも1種の白色顔料の量が、前記組成物の32重量%と42重量%の間であることを特徴とする態様1〜7の1つに記載の積層グレージング材。
《態様9》
前記少なくとも1つの溶媒が、少量の、グリコールエーテルで構成されることを特徴とする、態様1〜8の1つに記載の積層グレージング材。
《態様10》
前記少なくとも1つの溶媒が、少量の、トリエチレングリコールジメチルエーテルで構成されることを特徴とする、態様1〜9の1つに記載の積層グレージング材。
《態様11》
前記組成物が0.5〜3重量%のカーボンブラックを含有することを特徴とする、態様1〜10の1つに記載の積層グレージング材。
《態様12》
前記組成物が湿潤剤として有効量の可塑剤を含むことを特徴とする、態様1〜11の1つに記載の積層グレージング材。
《態様13》
前記組成物がシリコーンを含有しない有効量の界面活性剤を含むことを特徴とする、態様1〜12の1つに記載の積層グレージング材。
《態様14》
態様1〜13の1つに記載の積層グレージング材の一部となるように意図されたポリマー材料シートにスクリーン印刷により印刷する方法であって、スクリーン印刷用スクリーンを通して当該シートに適用されるのが、次のものを含む組成物、すなわち、
・10〜15重量%のポリビニルブチラールと、
・32〜45重量%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルで主として構成される少なくとも1種の溶媒と、
・20℃における当該組成物のブルックフィールド粘度が9Pa・sと13Pa・sの間となるように選択された量及び比表面積の少なくとも1種の白色顔料と、
を含む組成物であることを特徴とする、ポリマー材料シートにスクリーン印刷により印刷する方法。
《態様15》
適用される組成物の湿潤層の厚みが10μmと50μmの間であることを特徴とする、態様14に記載の方法。
《態様16》
態様1〜13の1つに記載の積層グレージング材の一部となるように意図され、次のものを含む組成物、すなわち、
・10〜15重量%のポリビニルブチラールと、
・32〜45重量%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸ジエステルで主として構成される少なくとも1種の溶媒と、
・20℃における当該組成物のブルックフィールド粘度が9Pa・sと13Pa・sの間となるように選択された量及び比表面積の少なくとも1種の白色顔料と、
を含む組成物を用いて、スクリーン印刷により印刷されている、ポリマー材料シート。