特許第6321644号(P6321644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特許6321644多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランク、及び該歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス
<>
  • 特許6321644-多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランク、及び該歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス 図000009
  • 特許6321644-多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランク、及び該歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス 図000010
  • 特許6321644-多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランク、及び該歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス 図000011
  • 特許6321644-多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランク、及び該歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス 図000012
  • 特許6321644-多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランク、及び該歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス 図000013
  • 特許6321644-多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランク、及び該歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321644
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランク、及び該歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/77 20170101AFI20180423BHJP
【FI】
   A61C5/77
【請求項の数】6
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2015-525588(P2015-525588)
(86)(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公表番号】特表2015-528730(P2015-528730A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】US2013053181
(87)【国際公開番号】WO2014022643
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月11日
(31)【優先権主張番号】12179125.5
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ハウプトマン
(72)【発明者】
【氏名】シビレ エス.シュミットナー
(72)【発明者】
【氏名】ガルス シェヒナー
(72)【発明者】
【氏名】ブラント ユー.コルブ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヘルマン
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−055183(JP,A)
【文献】 特開2005−225705(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0248189(US,A1)
【文献】 特表平11−507850(JP,A)
【文献】 特開2011−213572(JP,A)
【文献】 特開2003−238120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/70−77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランクであって、
前記多孔質予備焼結ジルコニア材料が、IUPAC分類に従うIV型等温線のN吸着及び/又は脱着を示し、
前記多孔質予備焼結ジルコニア材料が、25〜150のビッカース硬度を有し、
前記歯科用ミルブランクが、機械加工装置に前記歯科用ミルブランクを可逆的に取り付ける手段を備える、
歯科用ミルブランク。
【請求項2】
前記多孔質予備焼結ジルコニア材料が、次の特徴:
ヒステリシスループを有する窒素吸着及び脱着等温線を示すことと、
IUPAC分類に従うH1型のヒステリシスループを示すことと、
0.70〜0.95のp/p範囲のヒステリシスループを有するN吸着及び脱着等温線を示すことと、
平均連結孔径が、10〜100nmであることと、
平均粒径が、100nm未満であることと、
BET表面積が、10〜200m/gであることと、
二軸曲げ強度が、10〜40MPaであることと、
x、y、z寸法が、少なくとも5mmであることと、
ビッカース強度が、25〜150であることと、
密度が、理論密度の30〜95%であることと、
等方性収縮挙動を有すること
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項1に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項3】
前記多孔質予備焼結ジルコニア材料が、次の特徴:
ZrO含量が、70〜98モル%であることと、
HfO含量が、0〜2モル%であることと、
含量が、1〜15モル%であることと、
Al含量が、0〜1モル%であること
の少なくとも1つによって更に特徴付けられる、請求項2に記載の歯科用ミルブランク。
【請求項4】
エアロゲルを熱処理する工程を含むことによって特徴付けられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクのための多孔質予備焼結ジルコニア材料を製造するプロセス。
【請求項5】
前記エアロゲルが、次の特徴:
2nm〜50nmの範囲の平均一次粒子径を有する結晶質ジルコニア粒子を含むことと、
結晶質ジルコニア粒子の含量が、少なくとも85モル%であることと、
100m/g〜300m/gの範囲の表面積を有することと、
少なくとも3重量%の有機含量を有すること
の少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記エアロゲルが、900〜1100℃の温度に熱処理される、請求項4又は5に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニアセラミック歯科用ミルブランクから歯科用物品を製造するプロセス並びにかかるプロセスによって得られる歯科用物品(例えば、クラウン又はブリッジ若しくはこれらの下部構造の形状)に関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニアベースの高度に審美的な歯科用修復物を製造するための標準的な手法は、正確に画定された収縮を有する予備焼結ジルコニアミルブランクを粉砕し、この加工物を最終密度及び希望される寸法まで焼成することである。粉砕された構造の品質は、典型的には、使用するミルブランクの曲げ強度に依存する。ミルブランクの曲げ強度は、例えば、ISO標準6872に従うパンチオンスリーボール(punch-on-3-balls)試験を用いて測定することができる。
【0003】
例えば、ダイヤモンドバーを用いる研削については、ミルブロックの曲げ強度は、典型的には、60MPaから約110MPa周辺の好ましい上限を有する最大ジルコニアの最終強度までである。研削は、例えば、CEREC(商標)InLab(Sirona Corp.)及びE4D(D4D Corp.)のような研削機で実施することができる。
【0004】
粉砕は、典型的には、ミルブロックの曲げ強度が15〜50MPaの範囲内である場合、実施することができる。粉砕は、例えば、3M ESPEのLava(商標)システムを使用して行うことができる。
【0005】
欧州特許第1 206 223 A1号(3M ESPEによる)では、粉砕について、歯科用ミルブランクの未加工の耐破断性は通常、15MPa〜30MPAの範囲内にあると概要が述べられている。粉砕がこれら範囲外で実施される場合、得られる構造は、適切に粉砕されていないことが多く、チッピングを示すことがある。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0119180 A1号(3M ESPEによる)では、31〜50MPaの未加工の耐破断性を有するミルブランクを用意し、ブランクを粉砕し、粉砕されたブランクを焼結する工程を含む義歯を製造するプロセスが記載されている。
【0007】
米国特許第5,702,650号(Hintersehrによる)では、セラミック歯科補綴物を製造するための方法は、ZrO2、Y2O3、HfO2製の多孔質未完成部品を成形することにより説明され、未完成部品の緻密焼結又は湿潤並びに回転工具を用いて未完成部品を再加工することが記載されている。
【0008】
米国特許出願第61/545,243号(3M IPCによる)では、エアロゲル、焼成されたた結晶質物品及びこれらの製造法が記載されている。本出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0009】
米国特許出願公開第2011/0269618号(Knappらによる)は、ナノ結晶質歯科用セラミックに関し、このナノ結晶は、蒸発によって形成される。
【0010】
しかしながら、特に最近の歯科用材料に対して満たされるべき要求に関して、改善の余地が未だにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現況技術のミルブロックに関する典型的な問題は、乾式粉砕プロセスの際に発生する塵埃の粘着性であり、これは機械部品上並びに粉砕された物品上に付着された塵埃につながる場合がある。粉砕バーへの塵埃の付着は、深刻な状態になる可能性があり、バーの完全な目詰まりにつながり得る。このことは、粉砕された修復物の損傷の原因となり得るる。塵埃を低減し、かつ関連する問題を最小限に抑えるために、一般的には、加圧された空気洗浄が粉砕機で実施される。
【0012】
したがって、歯科用ミルブランクをより好ましい機械加工挙動(例えば、機械加工プロセス中にあまり粉砕塵埃を生じさせないこと、及び/又は粉砕されかつ研削されることができること及び/又はより効率的に機械加工できること)で利用可能にさせることが望ましい。
【0013】
あるいは又はこれに加えて、必要又は所望であれば、機械加工された歯科用物品の形状及び/又は表面が、容易かつ確実な方法で手動で調整され得ることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目標は、次の特徴:
●IUPAC分類に従うIV型等温線のN吸着及び脱着を示すことと、
●約25〜約150又は約25〜140のビッカース硬度を有することと、により特徴付けられる多孔質ジルコニア材料を含み、
機械加工装置に歯科用ミルブランクを可逆的に取り付けるための手段を備える、歯科用ミルブランクによって達成することができる。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、ジルコニア歯科用物品を製造するプロセスを特徴とし、プロセスは、
●本テキストに記載されている多孔質ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランクを用意する工程と、
●歯科用ミルブランクを機械加工装置に配置させる工程と、
●多孔質ジルコニア材料を機械加工する工程と、を含み、
歯科用ミルブランク及びジルコニアセラミック材料は、本テキストに記載されているものである。
【0016】
本発明の更なる実施形態は、本テキストに記載されているプロセスによって得られる歯科用物品を目的とする。
【0017】
用語の定義
用語「歯科用物品」とは、歯科分野又は歯科矯正分野で使用され得る又は使用されることになる物品で、特に歯科用修復物、歯モデル及びこれらの一部を精巣する若しくはこれらとして製造するためのものを意味する。
【0018】
歯科用物品の例としては、クラウン(モノリシッククラウンなど)、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニヤ、前装、コーピング、クラウン・ブリッジフレームワーク、インプラント、橋脚歯、歯科矯正装置(例えば、ブラケット、バッカルチューブ、クリート、及びボタン)及びこれらの一部が挙げられる。
【0019】
歯の表面は、歯科用物品ではないとみなされる。
【0020】
歯科用物品は、患者の健康に有害である構成成分を含有するべきではなく、したがって、歯科用物品から移動する可能性がある有害かつ毒性の構成成分を含まない。
【0021】
「モノリシック歯科用修復物」とは、その表面に前装又はべニアが取り付けられていない歯科用セラミック物品を意味するものとする。すなわち、モノリシック歯科用修復物は、本質的に、1つの材料組成のみからなる。しかしながら、所望される場合、薄いグレージング層が付与される場合もある。
【0022】
「歯科用ミルブランク」とは、歯科用物品、歯科用加工品、歯科用支持構造又は歯科用修復物が、例えば、研削、穿孔等による粉砕に更に加えて任意の減法混色処理で、それから機械加工され得る材料の固体ブロック(3次元物品)を意味する。歯科用ミルブランクは、2つの寸法で約2mm〜約30mmのサイズを有することができ、例えば、この範囲で直径を有してもよく、第3の寸法で特定の長さのものであってもよい。単一のクラウンを作製するためのブランクは、約15mm〜約30mmの長さを有してもよく、ブリッジを作製するためのブランクは、約40mm〜約80mmの長さを有してもよい。単一のクラウンを作製するために使用されるようなブランクの典型的なサイズは、約24mmの直径と約19mmの長さを有する。更に、ブリッジを作製するために使用されるようなブランクの典型的なサイズは、約24mmの直径と約58mmの長さを有する。上述の寸法のほかに、歯科用ミルブランクはまた、立方体、円筒又は立方体様の形状を有してもよい。より大きなミルブランクは、複数のクラウン又はブリッジが1つのブランクから作製されねばならない場合、有益であり得る。このような場合には、円筒状又は立方体様形状のミルブランクの直径又は長さは、厚さが約10〜約30mmの範囲である状態で、約100〜約200mmの範囲であり得る。
【0023】
「ジルコニアセラミック物品」とは、少なくとも1つのx、y、z寸法が少なくとも約5mmである3次元物品を意味するものとし、この物品は、少なくとも約80重量%のジルコニアからなる。
【0024】
「ガラス」とは、熱力学的に過冷却されかつ凍結された溶解物である無機の非金属の非晶質材料を意味する。ガラスは、硬い、脆性の透明な固体を指す。典型的な例としては、ソーダ石灰ガラス及びホウケイ酸ガラスが挙げられる。ガラスは、結晶化することなく剛性状態まで冷却された融合物の無機生成物である。ほとんどのガラスは、それらの主構成要素としてのシリカ及び一定量のガラスフォーマを含有する。
【0025】
本テキストに記載される多孔質セラミック歯科用材料は、ガラスを含有しない。
【0026】
「ガラス−セラミック」とは、この材料が、組み合わせ又は混合物でガラス材料とセラミック材料とを含むように、1つ以上の結晶質相がガラス相によって包囲されている無機の非金属材料を意味する。これは、ガラスとして形成され、次いで熱処理によって部分的に結晶化するよう作製される。ガラスセラミックスは、酸化リチウム、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムの混合物を指す場合がある。
【0027】
本テキストに記載される多孔質歯科用材料は、ガラス−セラミックを含有しない。
【0028】
「ゾル」とは、1nm〜100nmの範囲のサイズを有する別個の粒子を含有する連続性液相を指す。
【0029】
「粉末」とは、振蕩され又は傾けられる際に自由に流動することができる多数の微細な粒子からなる乾燥したバルクを意味する。
【0030】
「粒子」とは、幾何学的に決定され得る形状を有する固体である物質を意味する。この形状は、規則的又は不規則的であり得る。粒子は、典型的には、例えば粒度及び粒度分布に関して分析され得る。
【0031】
「セラミック」とは、熱を加えることによって製造される無機の非金属材料を意味する。セラミックスは、通常、硬く、多孔性かつ脆性であり、ガラス又はガラスセラミックスとは対照的に、本質的に純粋結晶質構造を示す。
【0032】
「結晶質」とは、3次元で周期的なパターンで配置される(すなわち、X線回折により測定される長範囲結晶構造を有する)原子からなる固体を意味する。結晶構造として、正方晶系、単斜晶系、立方晶系ジルコニア及びこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
「密度」とは、物体の体積に対する質量の比を意味する。密度の単位は、一般にはg/cmである。物体の密度は、例えば、その体積を決定し(例えば、計算により又はアルキメデスの原理又は方法を適用することにより)、その質量を測定することによって、算定することができる。
【0034】
試料の体積は、試料の全体の外形寸法に基づいて決定することができる。試料の密度は、測定された試料体積及び試料質量から算定することができる。セラミック材料の総体積は、試料の質量及び使用した材料の密度から算定することができる。試料中のセルの総体積は、試料体積の残部であると想定される(100%マイナス材料の総体積)。
【0035】
「多孔質材料」とは、セラミックスの技術分野における空隙、細孔、又はセルによって形成される部分的体積を含む材料を指す。結果的に、材料の「オープンセル型」構造は、時には、「開多孔質」構造とも呼ばれ、「クローズドセル型」材料構造は、時には、「閉多孔質」構造とも呼ばれる。本技術分野では、用語「セル」の代わりに、時には「細孔」が使用されることも見出され得る。材料構造分類の「オープンセル型」及び「クローズドセル型」は、DIN 66133に従って、異なる材料試料にて測定された異なる多孔性について決定することができる(例えば、Quantachrome Inc.、米国から入手される水銀「Poremaster 60−GT」を使用して)。オープンセル型又は開多孔質構造を有する材料は、例えばガスが通過することが可能である。
【0036】
「オープンセル型」材料についての典型的値は、約15%〜約75%、又は約18%〜約75%、又は約30%〜約70%、又は約34%〜約67%、又は約40%〜約68%、又は約42%〜約67%である。
【0037】
用語「クローズドセル型」は、「閉鎖多孔性」に関連する。クローズドセルは、外側から接近不可能であり、周囲の条件下でガスが侵入することができないようなセルである。
【0038】
「平均連結孔径」は、材料のオープンセル型細孔の平均寸法を意味する。平均連結孔径は、実施例の項で記載される通りに算定することができる。
【0039】
用語「焼成」は、揮発性化学結合成分(例えば、有機媒質)の少なくとも90重量パーセントを除去するために固体材料を加熱する工程を指す(例えば、物理的に結合している水を加熱により除去する乾燥工程と対比される)。焼成は、予備焼結工程の実施に必要とされる温度よりも低い温度で実施される。
【0040】
用語「焼結(sintering)」又は「焼成(firing)」は互換的に使用される。予備焼結済セラミック物品は、焼結工程の間に、すなわち、適切な温度が加えられる場合に、収縮する。加える焼結温度は、選択されるセラミック材料に依存する。ZrO系セラミックスについて、典型的な焼結温度範囲は、約1100℃〜約1550℃である。焼結は、典型的には、多孔質材料のより高い密度を有するより多孔質ではない材料(又はより少ないセルを有する材料)への磁器化を含み、場合によっては、材料の相組成の変更(例えば、結晶質相に向かう非晶質相の部分的変換)も含んでもよい。
【0041】
「ダイアフィルトレーション」は、有機分子を含有する溶液から塩類又は溶媒類を完全に除去する、置き換える、又はこれらの濃度を低減するために、限外濾過膜を使用する手法である。この手法では、透過性(多孔質)の膜フィルタを選択的に利用して、溶液及び懸濁液の構成成分をそれらの分子量に基づき分離する。
【0042】
用語「エアロゲル」は、3次元寸法の低密度(すなわち、理論密度20%未満の)固体を意味するものとする。エアロゾルは、ゲルに由来する多孔質材料であり、ここでは、ゲルの液体構成成分がガスで置き換えられている。この溶媒除去は、しばしば、超臨界条件下で行われる。この工程の間、網状組織は実質的に縮小せず、高多孔質、低密度材料を得ることができる。
【0043】
「機械加工」とは、機械による材料の粉砕、研削、穿孔、切削、削り出し、又は減法式成形を意味する。粉砕は、通常、研削よりも費用対効果が高い。「機械加工可能な物品」は、3次元形状を有し、機械加工されるのに十分な強度を有する物品である。
【0044】
「等方性焼結挙動」とは、焼結プロセス中の多孔質本体の焼結が、方向x、y及びzに関して本質的に不変量で発生することを意味する。「本質的に不変量」とは、方向x、y及びzに関する焼結挙動における差が、+/−5%又は;+/−2%又は+/−1%以下の範囲にあることを意味する。
【0045】
用語「管状反応器」は、加熱される連続性水熱反応器系(すなわち、加熱ゾーン)の部分を指す。管状反応器は、任意の好適な形状であり得る。管状反応器の形状は、多くの場合、管状反応器の所望の長さ及び管状反応器を加熱するために使用される方法に基づいて選択される。例えば、管状反応器は、直線状、U字形状又はコイル状であり得る。管状反応器の内部部分は、空であり得るか、又はバッフル、ボール、又は他の既知の混合技術を備えることができる。
【0046】
「注型成形」とは、それによって、液体材料(例えば、溶液又は分散液)が、所望の形状の中空の空洞部を備える鋳型に注がれ、次いで凝固される製造プロセスを意味する。
【0047】
組成物は、特定の構成成分を「本質的に又は実質的に含まない」(この組成物が該構成成分を本質的な特徴として含有しない場合)。したがって、該構成成分は、それ自体で又は他の構成成分又は他の構成成分の成分と組み合わせてのいずれかで故意に組成物に添加されない。特定の構成成分を本質的に含まない組成物は、通常、全組成物又は材料に関して、約2重量%未満又は約1重量%未満又は0.1重量%未満又は0.01重量%未満の量の該構成成分を含有する。この組成物は、該構成成分を全く含有しなくともよい。しかしながら、時には、不純物のために、少量の該構成成分の存在が回避できないこともある。
【0048】
「周囲条件」とは、本発明の溶液が通常、保管及び取扱いの際に曝される条件を意味する。周囲条件は、例えば、約900〜約1100mbar(約90〜約110kPa)の圧力、約10〜約40℃の温度及び約10〜約100%の相対湿度であってもよい。実験室においては、周囲条件は、約20〜25℃及び約1000〜約1025mbar(約100〜約102.5kPa)に調整される。
【0049】
本明細書で使用するとき、「a(1つの)」、「an(1つの)」、「the(該)」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」は、互換的に使用される。用語「含む、comprises」又は「含有する、contains」及びこれらの変形は、これら用語が説明及び請求項で表示される場合、限定的な意味を有するものではない。更に本明細書では、終点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、等を含む)。
【0050】
用語への「(s)」の付加は、その用語が単数形及び複数形を含むべきであることを意味する。例えば、用語「添加剤(s)」は、1つの添加剤及びそれ以上の数の添加剤(例えば、2、3、4つ等)を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本テキストに記載される多孔質歯科用セラミック材料及び現況技術による多孔質歯科用セラミック材料の硬度及び2軸曲げ強度の依存性を示す。
図2】本テキストに記載される材料(緑色曲線)の粉砕塵埃に対比するLava(商標)Plus材料(赤色曲線)の粉砕塵埃の体積関連粒径分布を示す。
図3】脱塩水中で超音波浴内に沈められ超音波処理された機械加工物品を示す。
図4】その中に収容された粉砕された歯科用修復物(前方の完全輪郭クラウン)を備えるフレームを模式的に示す。
図5】フレームからそれを取り除く場合に得られる中間体の粉砕された歯科用修復物(前歯の完全輪郭クラウン)を模式的に示す。
図6】切縁及び歯頚区域にて個々の改善を有する粉砕された歯科用修復物(前歯の完全輪郭クラウン)を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本テキストに記載される多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、特に機械加工プロセスによって歯科用物品を効率的に製造するための要求に関して施術者の要求を満たすことが判明した。
【0053】
本テキストに記載される材料は、モノリシック歯科用物品を製造するために特に有用である。
【0054】
本テキストに記載される歯科用ミルブランクの多孔質ジルコニア材料は、特徴及び/又はパラメータの有益な組み合わせ、例えば、適切な多孔性及び十分な硬度によって特徴付けられる。
【0055】
驚くべきことに、(IUPAC分類に従う)IV型等温線のN2吸着及び/又は脱着並びに/若しくはヒステリシスループ(特に、0.70〜0.95のp/p範囲で)を有する吸着脱着等温線を示す材料は、審美的歯科用物品を効率的な方法で製造するために特に好適であることが判明した。
【0056】
市販のY−TZPセラミック材料は、典型的には、(IUPAC分類に従う)II型等温線のN2吸着及び/又は脱着を示し、これは、審美的歯科用物品を効率的な方法で製造するために有効性に劣ることが判明した。
【0057】
II型等温線を示す材料は、マクロ−多孔質といわれ、一方IV型等温線を示す材料はメソ−多孔質といわれる。
【0058】
特定の理論にとらわれることを望むものではないが、材料の安定性及び粉砕挙動は細孔のタイプによって影響を受けることが想定される。
【0059】
例えば、縁部安定性を考慮に入れる場合、メソ−多孔質を有する(及びIV型等温線及び/又はヒステリシスループを示す)材料は、マクロ−多孔質を有する(及びII型等温線を示す)材料よりも確実に機械加工され得ることが判明した。
【0060】
本テキストに記載される歯科用ミルブランクは、施術者が、より容易にかつより効率的な方法で歯科用物品を製造することを可能にする。
【0061】
多孔質ジルコニアセラミック材料の機械加工挙動は、2軸曲げ強度よりはむしろビッカース硬度に関連する。
【0062】
本テキストに記載される材料は、歯科用物品に容易に成形されることができる。成形は、機械で又は手動で行うことができる。機械加工は、粉砕のみならず研削によっても行うことができることが判明した。これとは対照的に、市販のジルコニア材料は、通常、粉砕装置を使用して機械加工されるが、研削装置を使用して機械加工されない。
【0063】
所望される場合、本テキストに記載される材料を機械加工した後に得られる歯科用物品は、例えば、やすり、カッター又は削り出し工具を使用して、手作業で更に個別化することができる。材料(焼結前の)は、精密な機械加工を可能にするのに十分に硬いが、手作業による個別化を妨げるほど硬すぎず又は強固すぎない。
【0064】
これとは対照的に、市販のジルコニア材料は、しばしば柔らかすぎるために、予備焼結段階における精密な削り出し又はモデリングを可能としない。
【0065】
本テキストに記載される材料はまた、機械加工装置に可逆的に固定することに容易かつ確実に適応し得る。例えば、これは、ノッチ、凹部又は溝を材料に刻むことによって行うことができる。
【0066】
更に、歯科用ミルブロックの材料を機械加工する際に及び/又は本テキストに記載される機械加工された歯科用物品の手動個別化の際に、機械加工工具及び/又は機械加工された歯科用物品の表面のいずれかに付着する場合がある塵埃がより少量の発生ですむことが判明した。
【0067】
これとは対照的に、現況技術のミルブロックを機械加工する場合、吸引グリッドのような種々の機械部品、粉砕チャンバの内壁、フレームホルダーが粉砕塵埃の薄い層で目に見えるほど覆われることが観察されている。これと対比して、本テキストに記載されるミルブロックの材料を機械加工する場合、付着された粉砕塵埃による機械部品の汚染は、大幅に低減された。
【0068】
特定の理論にとらわれることを望むものではないが、粉砕中の粉砕塵埃の制限された発生に関する好ましい挙動は、その粒径分布に関連し得ると考えられる。
【0069】
現況技術のミルブロックを機械加工する際に得られる粉砕塵埃とは異なり、本テキストに記載される材料を機械加工する際に得られる粉砕塵埃は、1μmよりも小さい粒子を含有しないか又は1μmよりも小さい粒子の低い割合を含有するに過ぎない。
【0070】
更に、機械加工された歯科用物品の表面の手動調整又は修正の際に、本テキストに記載される材料が使用される場合、より少量の粉砕塵埃が機械加工された歯科用物品の表面に付着する(現況技術の材料を使用する場合と比較して)ことが判明した。
【0071】
付着された塵埃を機械加工された物品から取り除くために必要とされる煩雑な洗浄工程(例えば、ブラシ及び/又は加圧空気を使用する)が低減され、又は実施することがより容易かつより迅速であるために、このことは、歯科技工室全体のワークフローの生産性を向上を支援するであろう。
【0072】
歯科用修復物が調製された歯表面に不良な嵌合いになるリスクと相まって、粉砕塵埃を機械加工された物品から十分に取り除くことができないリスク(特に、歯科用修復物の内側で)が低減される。
【0073】
したがって、本テキストに記載される材料を使用することは、1または2以上の高品質歯科用修復物の製造を容易にするであろう。
【0074】
本テキストに記載される材料は、多様なバランスの良い特徴を示す(たとえば、機械加工されるのに十分な強度、手動で個別化されるのに適切な強度、工作機械の摩耗の低減及び/又は機械加工の際の塵埃の発生の軽減)。
【0075】
本テキストに記載される歯科用ミルブランクは、多孔質ジルコニア材料を含む。
【0076】
多孔質ジルコニア材料は、IUPAC分類に従うIV型等温線のN2吸着及び/又は脱着を示す。
【0077】
更に、多孔質ジルコニア材料は、約25〜約150又は約35(HV0.5)〜約150(HV1)のビッカース硬度を有する。
【0078】
歯科用ミルブランクはまた、機械加工装置に歯科用ミルブランクを可逆的に取り付けるための手段も備える。
【0079】
一実施形態によると、多孔質ジルコニア材料は、次の特徴:
(a)ヒステリシスループを有するN吸着及び/又は脱着等温線を示すことと、
(b)IUPAC分類に従うIV型等温線及びヒステリシスループのN吸着及び脱着を示すことと、
(c)IUPAC分類に従うH1型のヒステリシスループを有するIV型のN吸着及び脱着等温線を示すことと、
(d)0.70〜0.95のp/p範囲で、IUPAC分類に従うH1型のヒステリシスループを有するIV型のN吸着及び脱着等温線を示すことと、
(e)平均連結孔径が約10〜約100nm又は約10〜約80nm又は約10〜約70nm又は約10〜約50nm又は約15〜約40であることと、
(f)平均粒径が、約100nm未満又は約80n未満又は約60nm未満若しくは約10〜約100又は約15〜約60nmであることと、
(g)BET表面が、約10〜約200m/g又は約15〜約100m/g又は約16〜約60m/gであることと、
(h)2軸曲げ強度が、約10〜約40又は約15〜約30MPaであることと、
(i)x、y、z寸法が、少なくとも約5mm又は少なくとも約10又は少なくとも約20mmであることと、
(j)ビッカース硬度が、約25(HV0.5)〜約150又は約35〜約140(HV1)であることと、の少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0080】
次の特徴の組み合わせが特に有益であることが判明した:(a)及び(h)、又は(a)及び(b)及び(h)、又は(b)及び(c)、又は(c)、(e)、(g)及び(h)。
【0081】
所望される場合、上記特徴は、実施例の項で記載される通りに決定することができる。
【0082】
驚くべきことに、(IUPAC分類に従う)IV型等温線のN吸着及び/又は脱着並びに/若しくはヒステリシスループ(特に0.70〜0.95のp/p範囲で)を有する吸着脱着等温線を示す材料が特に好適であることが判明した。
【0083】
先行技術に記載される多孔質ジルコニア材料のBET表面は、典型的には、2〜9m/gの範囲内であり、一方、本テキストに記載される多孔質ジルコニア材料のBET表面は、10m/gを超えることが好ましい。
【0084】
本テキストに記載される多孔質ジルコニア物品中のジルコニア粒子の平均粒度は、市販のミルブランクの材料の平均粒度に比べて小さい。
【0085】
小さい粒度は、これが典型的には、より均質の材料(化学的背景から)に導き、このことがより均質の物理的特性ももたらし得るという点で有益であり得る。
【0086】
したがって、本テキストに記載される多孔質ジルコニア物品は、特徴の特殊な組み合わせを有し、このことが、特に縁部安定性に関して高度に審美的なセラミック物品の確実な製造を容易にする。
【0087】
x、y及びz寸法についての有用な範囲として、約5〜約300又は約8〜約200mmが挙げられる。
【0088】
多孔質ジルコニア材料が特定の平均連結孔径を有する場合に、これが特定の特徴に有益であることが判明した。平均連結孔径は、特定の範囲にあるべきである。平均連結孔径は、小さすぎるべきではなく、又は大きすぎるべきではない。
【0089】
本テキストに記載され、歯科用ミルブランクを提供するために使用される多孔質ジルコニア材料は、Tosoh Comp.から入手される3Y−TZP粉末のようなジルコニア粉末を圧縮することによって得られる多孔質ジルコニア材料よりも小さな平均連結孔径を有する。
【0090】
歯科用ミルブランクの多孔質ジルコニアセラミック材料を製造するために使用される材料のナノスケールの粒径及び特定の平均連結孔径のために、本発明の材料は、市販されている歯科用ミルブランク(例えば、3M ESPEから入手されるLAVA(商標)Frame)のジルコニアセラミック材料並びにジルコニア粉末(例えば、Tosoh Comp.から入手可能な3Y−TZPジルコニア粉末)を圧縮することによって典型的に製造される歯科市場で入手可能な他のジルコニアセラミックスに比べて、異なる焼結挙動を有する。
【0091】
この材料のビッカース硬度は、特定の範囲にある。
【0092】
材料のビッカース硬度が低すぎる場合には、可削性は、品質を損ない(加工品の縁部チッピング又は破壊)並びに歯科用修復物又は同様にモノリシック修復物のフレームを個別化するための手動の再加工の容易さを損ない得る。
【0093】
材料のビッカース硬度が高すぎる場合には、工作機械の摩耗が不経済な範囲で増大する場合があるか、又は工作機械が加工品を破断かつ破壊する可能性がある。
【0094】
材料の2軸曲げ強度もまた、一般的には、特定の範囲内にある。
【0095】
材料の2軸曲げ強度が低すぎるならば、粉砕プロセスの際に又は歯科技能者による手作業での仕上げ加工の際に、材料はクラックを生じやすいことが判明した。
【0096】
これに反して、材料の2軸曲げ強度が高すぎるならば、粉砕機による材料の処理加工は、多くの場合、しかるべき努力では不可能である。使用される粉砕工具又は粉砕された材料は、しばしば欠けるか、又は破断する。かかる場合には、材料の成形が、例えばCerec(商標)研削機(Sirona)を用いる研削によって行われねばならない。
【0097】
歯科用ミルブランクの多孔質ジルコニアセラミック材料は、次の特徴:
○ZrO2含量が、約70〜約98モル%又は約80〜97モル%であること;
○HfO2含量が、約0〜約2モル%又は約0.1〜約1.8モル%であること;
○Y2O3含量が、約1〜約15モル%又は約1.5〜約10モル%又は約2〜約5モル%であること;
○Al2O3含量が、約0〜約1モル%又は約0.005〜約0.5モル%又は約0.01〜約0.1モル%であること、の少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0098】
更なる実施形態によると、多孔質ジルコニア物品は、次の特徴:
○ZrO2含量が、約90〜約98モル%であることと、
○HfO2含量が、約0〜約2モル%であることと、
○Y2O3含量が、約1〜約5モル%であることと、
○Al2O3含量が、約0〜約0.1モル%であることと、によって特徴付けられる組成を有する。
【0099】
より高いY2O3含量は、典型的には、材料を最終密度に焼結した後のジルコニアセラミック材料中の立方晶系結晶相の増加につながる。立方晶系結晶相のより高い含量は、良好な半透明性に寄与し得る。
【0100】
特定の実施形態によると、多孔質ジルコニア物品は、次の特徴:
●IUPAC分類に従うIV型等温線のN2吸着を示すことと、
●0.70〜0.95のp/p0範囲でのヒステリシスループを有するN2吸着を示すことと、
●平均連結孔径が、約15〜約60であることと、
●平均粒度が、約100nm未満であることと、
●BET表面が、約15〜約100m/g又は約16〜約60m/gであることと、
●2軸曲げ強度が、約10〜約40MPaであることと、
●x、y、z寸法が、少なくとも約5mmであることと、
ビッカース硬度が、約25〜約150であることと、
密度が、理論密度の約40%〜約60%であることと、によって特徴付けることができる。
【0101】
歯科用ミルブランクの多孔質ジルコニア材料は、通常、ディスク又はブロックの形状(例えば、立方体様、円筒)を有する。
【0102】
歯科用ミルブランクは、機械加工装置に、特に、かかる装置の1または2以上のクランピング装具にブランクを取り付けるための手段を備える。好適な手段としては、1または2以上の溝、1または2以上の凹部、1または2以上のノッチ、1または2以上の型(stamp)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0103】
別の実施形態では、歯科用ミルブランクは、把持具に固定されるか把持具内に収容される。歯科用ミルブランクを収容する把持具は、次いで、ブランクを機械加工装置に取り付けるための手段として機能する。
【0104】
ミルブランクの保持具への固定は、クランピング、ねじ込み、接着及びこれらの組み合わせによって行うことができる。有用な把持具として、フレーム(開閉式)又は自然の歯牙(stump)が挙げられる。
【0105】
把持具を使用することは、機械加工装置による歯科用物品の製造を容易にすることができる。
【0106】
有用な把持具の例は、米国特許第8,141,217 B2号(Gublerらによる)、国際公開第WO 02/45614 A1号(ETH Zurichによる)、独国特許第203 16 004 U1号(Stuehrenbergによる)、米国特許第7,985,119 B2号(Baslerらによる)又は国際公開第WO 01/13862号(3Mによる)に記載されている。把持具の説明に関するこれら文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0107】
別の実施形態によると、多孔質ジルコニア材料は、ジルコニアエアロゲルを熱処理する工程、又は焼成する工程を含むプロセスによって得ることができる。
【0108】
このジルコニアエアロゲルは、典型的には、次の特徴:
a.2nm〜50nm又は約2nm〜約30nm又は約2〜約20又は約2〜約15nmの範囲の平均一次粒径を有する結晶質ジルコニア粒子を含むことと、
b.結晶質ジルコニア粒子の含量が、少なくとも約85モル%であることと、
c.少なくとも3重量%又は約3〜約10重量%の範囲内の有機含量を有することと、
d.x、y、zの寸法が少なくとも約5又は少なくとも約8又は少なくとも約10若しくは少なくとも約20mmであることと、の少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0109】
特徴(a)及び(b)又は(a)及び(c)若しくは(a)、(b)及び(c)の組み合わせが好ましい場合がある。
【0110】
多孔質ジルコニア物品を得るための熱処理は、典型的には、次の条件下で実施される:
●約900〜約1100℃又は約950〜約1090℃、約975〜約1080℃の温度、
●空気又は不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)の雰囲気、
●材料の最終密度の約40〜60%の密度に到達するまでの持続時間。
【0111】
熱処理又は焼成は、1つ以上の工程で実施することができる。
【0112】
第1の熱処理工程では、前のプロセス工程からの全ての有機添加剤を除去し、いわゆる「ホワイトボディ」を得るために、結合剤の焼損を行うことができる。
【0113】
第2の熱処理工程では、ホワイトボディの強度及び/又は硬度が、機械加工などの後続プロセスのニーズに調整され得る。機械加工可能なブランクの場合、焼結プロトコルは、温度と強度及び/又は硬度との相互作用を反映するべきである。
【0114】
温度が低すぎる場合には、結果として生じる物品の硬度及び/又は強度は、低すぎることもある。このことは、例えば、チッピングに関して、その後の機械加工工程中に問題を生じる可能性がある。
【0115】
これに反し、温度が高すぎる場合には、材料の硬度及び/又は強度は、高くなりすぎることもある。このことは、例えば、工作機械の耐久性に関して、同様にその後の機械加工工程中に問題を生じる可能性がある。
【0116】
滞留時間(すなわち、エアロゲルがその温度で保持される時間)は、選択された機械加工技術の特定のニーズに強度及び/又は硬度を調整するために同様に有益である。しかしながら、滞留時間はまた、約0〜約24時間又は約0.1〜約5時間の範囲であり得る。
【0117】
滞留時間が長すぎる場合には、歯科用ミルブランクは、妥当な条件下で機械加工されるためには硬くなりすぎることもある。
【0118】
一実施形態によると、歯科用ミルブランクの多孔質ジルコニア材料又は多孔質ジルコニア物品は、
●結晶質金属酸化物粒子及び溶媒を含むジルコニアゾルを用意する工程と、
●所望によりジルコニアゾルを濃縮して、濃縮ジルコニアゾルを用意する工程と、
●ゾルを重合性有機マトリックスと混合する(例えば、反応性表面改質剤をジルコニアゾルに加え、所望によりジルコニアゾルの表面改質粒子を重合可能にすることができる反応開始剤を加える)工程と、
●所望により、ジルコニアゾルを成形型に注型成形して注型ジルコニアゾルを用意する工程と、
●ジルコニアゾルの重合性有機マトリックスを硬化させてゲルを形成する工程(場合によっては、ゲル化工程とも呼ばれる)と、
●ゲルから溶媒を除去して(例えば、存在する場合、先ず初めに溶媒交換プロセスを介して水を除去して、少なくとも部分的に脱水されたゲルを用意し、その後に残存する溶媒が、例えば超臨界抽出を介して抽出される更なる抽出工程が続く)エアロゲルを用意する工程と、
●所望により、エアロゲルをより小さな断片に切断する工程と、
●エアロゲルを熱処理して、例えば機械加工可能な材料又は物品を得る工程と、を含むプロセスにより得ることができる。
【0119】
多孔質セラミックジルコニア材料を製造するためのプロセスは、典型的には、ZrO2粒子のゾルを準備することで開始する。
【0120】
ZrO2粒子のゾルに、表面改質剤、好ましくは架橋性表面改質剤(例えば、ラジカル反応性表面改質剤)が添加される。
【0121】
架橋性剤で表面改質されたZrO2粒子は、所望される場合、重合化され、架橋されたZrO2粒子を含む組成物を用意することができる。
【0122】
架橋性表面改質剤は、その後、例えば、焼成及び/又は予備焼結工程中に取り除かれることができる。
【0123】
所望される場合、ゾルが成形型に注型される。成形型は、提供される歯科用ミルブロックのネガ型の形状を有してもよい。材料の熱処理により起こり得るサイズ減少のために、成形型のサイズは、典型的には、最終歯科用ミルブランクのサイズよりも大きい。
【0124】
成形型の形状は、特に限定されない。
【0125】
注型ジルコニアゾルは、反応性表面改質剤の重合を開始させるために、典型的には、熱又は放射線で処理される。このプロセスは、通常、ゲルをもたらす。存在し所望される場合、水がゲルから少なくとも部分的に除去されてもよい。
【0126】
上記記載のゾル/ゲルプロセスの残存する溶媒は、例えば、エアロゲル(例えば、ブロック形態での)をもたらす超臨界抽出技術によって、除去される。
【0127】
所望される場合、エアロゲルは、例えば、歯科用ミルブランクの形状を有するより小さな断片に切断されてもよい。
【0128】
ジルコニアゾルは、ジルコニア系セラミック粒子の分散体である。ジルコニア系セラミック粒子中のジルコニアは、結晶質であり、立方晶系、正方晶系、単斜晶系、又はこれらの組み合わせであることが観察されている。立方晶系又は正方晶系相は、x線回折を使用して識別することが難しいために、定量的な目的では、これら2つの相は一般的には合わされ、立方晶系/正方晶系相とも呼ばれる。「立方晶系/正方晶系」又は「C/T」は、立方晶系プラス正方晶系結晶相を指すために互換的に使用される。立方晶系/正方晶系相含有率は、例えば、各相についてx線回折のピーク面積を測定し、等式(I):
%C/T=100(C/T)÷(C/T+M) (I)
【0129】
を用いることにより決定することができる。等式(I)中、C/Tは、立方晶系/正方晶系相についての回折ピークのピーク面積を指し、Mは、単斜晶系相についての回折ピークのピーク面積を指し、%C/Tは、立方晶系/正方晶系相重量%を指す。x線回折測定値の詳細は、以下の実施例の項でより完全に記載されている。
【0130】
典型的には、ジルコニア系粒子の少なくとも50(場合によっては、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、又は少なくとも95)重量%が、立方晶系又は正方晶系結晶構造(すなわち、立方晶系結晶構造、正方晶系結晶構造、又はこれらの組み合わせ)内に存在する。立方晶系/正方晶系相のより高い含量が、多くの場合望ましい。
【0131】
本明細書に記載されるジルコニアゾル中のジルコニア粒子は、典型的には、2nm〜50nm(いくつかの実施形態では、5nm〜50nm、2nm〜25nm、5nm〜25nm、2nm〜15nm、又は更には5nm〜15nm)の範囲の一次粒径を有する。
【0132】
ジルコニア系粒子が調製される方法に応じて、粒子は、無機酸化物に加えて少なくともいくつかの有機材料を含有してもよい。例えば、粒子が水熱アプローチを用いて調製される場合には、ジルコニア系粒子の表面に結合したいくつかの有機材料があってもよい。理論に束縛されようとするものではないが、有機材料は、原材料中に含まれる又は加水分解及び縮合反応の副生成物として形成されたカルボン酸塩種(アニオン、酸、又はこれら双方)に由来する(すなわち、有機材料は、多くの場合、ジルコニア系粒子の表面に吸着されている)と考えられている。例えば、いくつかの実施形態では、ジルコニア系粒子は、粒子の重量を基準として、最大15(いくつかの実施形態では、最大12、10、8、又は更には最大6)重量%の有機材料を含有する。
【0133】
ジルコニア系粒子を準備するために、多様な既知の方法のいずれも使用され得るが、これらは、水熱技術を使用して調製されることが好ましい。1つの例示の実施形態では、ジルコニア系ゾルは、水性金属塩(例えば、ジルコニウム塩、イットリウム塩、及び任意のランタニド元素塩又はアルミニウム塩)溶液、懸濁液又はこれらの組み合わせの水熱処理によって調製される。
【0134】
水中に可溶性であるよう選択される水性金属塩は、典型的には、水性媒質中で溶解される。水性媒質は、水又は水と他の水溶性材料との混合物若しくは水相溶性材料であり得る。加えて、存在し得る水性金属塩及び他の水溶性材料又は水相溶性材料は、典型的には、後続の処理加工工程中で除去可能であり、非腐食性であるよう選択される。
【0135】
原材料中の溶解塩の少なくとも大半は、通常、ハロゲン化物塩、オキシハロゲン化物塩、硝酸塩、又はオキシ硝酸塩よりはむしろカルボン酸塩である。理論に束縛されようとするものではないが、原材料中のハロゲン化物及び硝酸塩アニオンは、より好ましい正方晶系又は立方晶系相よりはむしろ主として単斜晶系相からなるジルコニア系粒子の形成をもたらす傾向があると考えられている。更に、カルボン酸塩及び/又はそれらの酸は、ハロゲン化物及び硝酸塩と比べて、有機マトリックス材料により適合性である傾向がある。いかなるカルボン酸塩アニオンも使用され得るが、このカルボン酸塩アニオンは、多くの場合4つ以下の炭素原子を有する(たとえば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオネート、ブチラート、又はこれらの組み合わせ)。この溶解塩は、多くの場合、酢酸塩である。原材料は、例えば、カルボン酸塩アニオンの対応するカルボン酸を更に含むことができる。例えば、酢酸塩から調製された原材料は、多くの場合、酢酸を含有する。
【0136】
1つの代表的なジルコニウム塩は、ZrO((4−n)/2)n+(CH3COO−)nなどの式で表わされる酢酸ジルコニウムであり、式中、nは1〜2の範囲である。ジルコニウムイオンは、例えば、原材料のpHに応じて、多様な構造で存在してよい。例えば、W.B.Blumenthal著、「The Chemical Behavior of Ziruconium」,311〜338頁,D.Van Nostrand Company,Princeton,NJ(1958)に酢酸ジルコニウムの製造法が記載されている。酢酸ジルコニウムの好適な水性溶液は、例えば、Magnesium Elektron,Inc.,Flemington,NJから市販されていて、これは、例えば、溶液の全重量を基準として、最大17重量%のジルコニウム、最大18重量%のジルコニウム、最大20重量%のジルコニウム、最大22重量%、最大24重量%、最大26重量%、及び最大28重量%のジルコニウムを含有する。
【0137】
同様に、代表的なイットリウム塩、ランタニド元素塩、及びアルミニウム塩は、多くの場合、カルボン酸塩アニオンを有し、市販されている。しかし、これらの塩は、ジルコニア塩よりも非常に低い濃度で典型的には使用されるために、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩)以外の塩もまた有用であり得る(例えば、硝酸塩)。
【0138】
原材料中に溶解された種々の塩の総量は、原材料用に選択された全固形物総含有率を基準として容易に決定することができる。種々の塩の相対的な量が算定され、ジルコニア系粒子のための選択された組成をもたらすことができる。
【0139】
典型的には、原材料のpHは、酸性である。例えば、このpHは、通常は6未満、5未満、又は更には4未満(いくつかの実施形態では、3〜4の範囲)である。
【0140】
原材料の液相は、典型的には、主として水である(すなわち、液相は、水系媒質である)。好ましくは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はこれら双方の原材料への導入を最小限に抑えるために、水は脱イオン水である。所望により、水相溶性有機共溶媒が、例えば、液相の重量を基準として、最大20重量%の量で含まれる。好適な共溶媒として、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンが挙げられる。
【0141】
水熱処理にかけられる際に、原材料中の種々の溶解塩は、加水分解及び縮合反応を受け、ジルコニア系粒子を形成する。これら反応は、多くの場合、酸性副生成物の遊離を伴う。すなわち、この副生成物は、多くの場合、原材料中の任意の他のカルボン酸塩を加えたジルコニウムカルボン酸塩に相当する1つ以上のカルボン酸である。例えば、塩が酢酸塩である場合、酢酸が水熱反応の副生成物として形成される。
【0142】
任意の好適な水熱反応器が、ジルコニア系粒子の調製に使用することができる。この反応器は、バッチ式又は連続式反応器であり得る。バッチ式水熱反応器に比べて、連続式水熱反応器では、加熱時間は一般により短く、温度は一般により高い。水熱処理の時間は、例えば、反応器の型、反応器の温度、及び原材料の濃度に応じて変化し得る。反応器内の圧力は自己生成性であることができ(すなわち、反応器の温度における水の蒸気圧)、液圧式であることができ(すなわち、拘束に対する流体のポンピングによって生じる圧力)、又は窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの付加から生じることができる。好適なバッチ式水熱反応器は、例えば、Parr Instruments Co.,Moline,ILから入手可能である。いくつかの好適な連続式水熱反応器は、例えば、米国特許第5,453,262号(Dawsonらによる)及び同第5,652,192号(Matsonらによる);Adschiriら著,J.Am.Ceram.Soc.,75,1019〜1022(1992);並びにDawson著、Ceramic Bulletin,67(10),1673〜1678(1988)に記載されている。
【0143】
いくつかの実施形態では、原材料は、連続式水熱反応器に送られる。本明細書で使用するとき、水熱反応器システムに関する用語「連続式」とは、原材料が連続的に導入され、溶出液が加熱ゾーンから連続的に取り除かれることを意味する。原材料の導入及び溶出液の取り出しは、一般的には、反応器の異なる場所で実施する。連続的な導入及び取り出しは、一定又はパルス状であり得る。
【0144】
管状反応器の寸法は変化することができ、原材料の流速と共に、管状反応器内部の反応体に好適な滞留時間をもたらすよう選択することができる。滞留時間及び温度が、原材料中のジルコニウムをジルコニア系粒子に変換するのに十分であるという条件の下で、任意の好適な長さの管状反応器を使用することができる。管状反応器は、多くの場合、少なくとも0.5メートル(いくつかの実施形態では、少なくとも1メートル、2メートル、5メートル、10メートル、15メートル、20メートル、30メートル、40メートル、又は更には少なくとも50メートル)の長さを有する。いくつかの実施形態では、管状反応器の長さは、500メートル未満(いくつかの実施形態では、400メートル、300メートル、200メートル、100メートル、80メートル、60メートル、40メートル未満、又は更には20メートル未満)である。
【0145】
比較的小さい内径を有する管状反応器が時には好ましい。例えば、約3センチメートル以下の内径を有する管状反応器は、これらの反応器で達成することができる原材料の迅速な加熱速度のためにしばしば使用される。更に、管状反応器全体の温度勾配は、より大きな内径を有するものに比べてより小さい内径を有する反応器で小さい。管状反応器の内径が大きくなるにつれて、この反応器はバッチ式反応器に似てくる。しかしながら、管状反応器の内径が小さすぎる場合には、反応器の壁への材料の付着から生じる運転中に反応器が閉塞する又は部分的に閉塞するようになる可能性が高い。管状反応器の内径は、多くの場合、少なくとも0.1cm(いくつかの実施形態では、少なくとも0.15cm、0.2cm、0.3cm、0.4cm、0.5cm、又は更には少なくとも0.6cm)である。いくつかの実施形態では、管状反応器の直径は、3cm以下(いくつかの実施形態では、2.5cm、2cm、1.5cm以下、又は更には1cm以下であり;いくつかの実施形態では、0.1〜2.5cm、0.2cm〜2.5cm、0.3cm〜2cm、0.3cm〜1.5cm、又は更には0.3cm〜1cm)である。
【0146】
連続式水熱反応器では、温度及び滞留時間は、典型的には、1回の水熱処理を使用して、原材料中のジルコニウムの少なくとも90モル%をジルコニア系粒子に変換するために、管状反応器と共に選択される。すなわち、連続式水熱反応器システムを1回通過するうちに、原材料中に溶解したジルコニウムの少なくとも90モル%が、ジルコニア系粒子に変換される。
【0147】
あるいは、例えば、複数の段階の水熱プロセスを使用することができる。例えば、原材料は第1の水熱処理を受け、ジルコニウムを含有する中間体及びカルボン酸などの副生成物を形成することができる。第2の原材料は、ジルコニウムを含有する中間体から第1の水熱処理の副生成物の少なくとも一部を取り除くことによって形成することができる。次いで、第2の原材料は第2の水熱処理を受け、ジルコニア系粒子を含有するゾルを形成することができる。このプロセスに関する更なる詳細は、例えば、米国特許第7,241,437号(Davidsonらによる)に記載されている。
【0148】
2段階の水熱プロセスが使用される場合、ジルコニウムを含有する中間体の変換率は、典型的には、40〜75モル%の範囲である。第1の水熱処理で使用される条件は、この範囲内の変換をもたらすよう調整することができる。第1の水熱処理の副生成物の少なくとも一部を除去するために、任意の好適な方法を使用することができる。例えば、酢酸などのカルボン酸は、蒸発、透析、イオン交換、沈殿、及び濾過などの多様な方法によって除去することができる。
【0149】
連続式水熱反応器に言及するとき、用語「滞留時間」とは、原材料が連続式水熱反応器システムの加熱部分内にある時間の平均長さを意味する。
【0150】
滞留時間が溶解されたジルコニウムをジルコニア系粒子に変換するのに十分に長いものである限りにおいて、管状反応器を通る原材料の任意の好適な流速を使用することができる。すなわち、流速は、多くの場合、原材料中のジルコニウムをジルコニア系粒子に変換するために必要とされる滞留時間に基づいて選択される。処理能力を増大させるために、並びに管状反応器の壁への材料の付着を最小限に抑えるために、より速い流速が望ましい。反応器の長さを増加させる場合、又は反応器の長さ及び直径の双方を増加させる場合、より速い流速をしばしば使用することができる。管状反応器を通る流れは、層流又は乱流のいずれかであり得る。
【0151】
いくつかの代表的な連続式水熱反応器では、反応器温度は、170℃〜275℃、170℃〜250℃、170℃〜225℃、180℃〜225℃、190℃〜225℃、200℃〜225℃、又は更には200℃〜220℃の範囲である。温度が約275℃を超えるならば、一部の水熱反応器システムについては、圧力は許容し得ないほど高い場合がある。しかしながら、温度が約170℃未満であるならば、典型的な滞留時間を用いる原材料中のジルコニウムのジルコニア系粒子への変換は、90重量%未満であリ得る。
【0152】
水熱処理の溶出液(すなわち、水熱処理の生成物)は、ジルコニア系ゾルである。このゾルは、水性媒質中に分散した、懸濁した、又はこれらの組み合わせである少なくとも3重量%のジルコニア系粒子を含有する。いくつかの実施形態では、ジルコニア系粒子は、(a)ジルコニア系粒子中の無機酸化物の総モルを基準として、0〜5モル%のランタニド元素酸化物、及び(b)ジルコニア系粒子中の無機酸化物の総モルを基準として、1〜15モル%の酸化イットリウムを含有することができる。ジルコニア系粒子は、結晶質であり、50ナノメートル以下の平均一次粒径を有する。いくつかの実施形態では、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化イッテルビウム、及び/又は酸化カルシウムが、酸化イットリウムに代えて使用されてもよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、水系媒質の少なくとも一部が、ジルコニア系ゾルから除去される。水系媒質を除去するための任意の既知の手段を使用することができる。この水系媒質は水を含有し、原材料中に存在する又は水熱反応器内で発生する反応の副生成物である溶解カルボン酸及び/又はこれらのアニオンを含有することが多い。本明細書で使用するとき、用語「カルボン酸及び/又はこれらのアニオン」とは、カルボン酸、カルボン酸のカルボン酸塩アニオン、又はこれらの混合物を指す。これらの溶解カルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部のジルコニア系ゾルからの除去は、いくつかの実施形態では望ましい場合がある。ジルコニア系ゾルは、例えば、濃縮のために、不純物の除去のために、又はゾル中に存在する他の構成成分と適合させるために、例えば、蒸発、乾燥、イオン交換、溶媒交換、ダイアフィルトレーション、又は透析の少なくとも1つを行うことができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、ジルコニアゾル(水熱プロセス又は他のプロセスで調製された)は、濃縮される。溶出液中に存在する水の少なくとも一部を除去するとともに、濃縮又は乾燥プロセスは、溶解されたカルボン酸の少なくとも一部の蒸発をもたらす場合が多い。
【0155】
他の実施形態では、例えば、ジルコニア系ゾルは、透析又はダイアフィルトレーションを受けることができる。透析及びダイアフィルトレーションは、双方ともに、溶解されたカル分散及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部を除去する傾向にある。透析については、溶出液の試料が、閉じられている膜バッグの内部に配置され、次いで水浴内に置かれることができる。カルボン酸及び/又はカルボン酸塩アニオンは、膜バッグ内部の試料から拡散する。すなわち、これら種は、膜バッグ内部の濃度を水浴内の濃度に等しくするために、膜バッグを通して溶出液から水浴に拡散することになる。水浴内の水は、典型的には、バッグ内の種の濃度を低下させるために数回置き換えられる。膜バッグは、一般的には、カルボン酸及び/又はこれらのアニオンの拡散を可能にするが、ジルコニア系粒子の膜バッグからの拡散を許可しないように選択される。
【0156】
ダイアフィルトレーションについては、試料を濾過するために、透過性膜が使用される。ジルコニア粒子は、フィルターの孔径が適切に選択されるならば、フィルターにより保持され得る。溶解されたカルボン酸及び/又はこれらのアニオンは、フィルターを通過する。フィルターを通過するいかなる液体も新鮮な水で置き換えられる。不連続なダイアフィルトレーションでは、試料は、多くの場合、予め定められた体積に希釈され、次いで、限外濾過により最初の体積に戻るよう濃縮される。希釈及び濃縮工程は、カルボン酸及び/又はこれらのアニオンが除去されるか又は許容し得る濃度レベルまで低下させるまで1回以上繰り返される。一定体積ダイアフィルトレーションとも呼ばれることが多い連続的なダイアフィルトレーションでは、液体が濾過を通して除去されるのと同じ速度で、新鮮な水が添加される。溶解されたカルボン酸及び/又はこれらのアニオンは、除去される液体中にある。
【0157】
存在する場合、イットリウム及びランタニドの大部分は、結晶質ジルコニア粒子に組み込まれているが、ダイアフィルトレーション又は透析プロセスの間に除去され得るこれら金属のフラクションが存在する。ダイアフィルトレーション後のゾルの実際の組成は、透析前のものとは異なってもよい。
【0158】
ジルコニア系ゾルは、水性/有機マトリックス中に分散し及び/又は懸濁した(すなわち、分散し、懸濁し、又はこれらの組み合わせで存在する)ジルコニア系粒子を含む。いくつかの実施形態では、ジルコニア系粒子は、いかなる他の表面改質なしに、有機マトリックス中に分散し及び/又は懸濁することができる。有機マトリックスは、ジルコニア系ゾルに直接添加することができる。更に、例えば、有機マトリックスは、水の少なくとも一部を除去するための処理後に、カルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部を除去するための処理後に、又は両処理後に、ジルコニア系ゾルに添加することができる。添加される有機マトリックスは、その後重合され及び/又は架橋されてゲルを形成する重合可能な組成物をしばしば含有する。
【0159】
いくつかの実施形態では、ジルコニア系ゾルは、溶媒交換プロセスにかけられることができる。水よりも高い沸点を有する有機溶媒を、溶出液に添加することができる。溶媒交換法における使用に好適である有機溶媒の例として、1−メトキシ−2−プロパノール及びN−メチルピロリドンが挙げられる。次いで、蒸留、回転蒸発、又はオーブン乾燥などの方法により水を除去することができる。水を除去するために使用される条件に応じて、溶解されたカルボン酸及び/又はこれらのアニオンを除去することができる。他の有機マトリックス材料を処理された溶出液に添加することができる(すなわち、他の有機マトリックス材料を、溶媒交換プロセスにおいて使用される有機溶媒中に懸濁したジルコニア系粒子に添加することができる)。
【0160】
いくつかの実施形態では、ジルコニア系ゾルは、有機マトリックス材料との相溶性を改良するために、表面改質剤で処理される。表面改質剤は、式A−Bにより表わされることができ、式中A基は、ジルコニア系粒子の表面に結合することができ、Bは相溶性基である。基Aは、吸着、イオン結合の形成、共有結合の形成、又はこれらの組み合わせによって、表面に結合することができる。基Bは、反応性又は非反応性であり得、有機溶媒に、別の有機マトリックス材料(例えば、モノマー、オリゴマー、又はポリマー材料)に、若しくはこれら双方に相溶性(すなわち、混和性)であるジルコニア系粒子に特性を付与する傾向がしばしばある。例えば、溶媒が非極性である場合、基Bは、典型的には、同様に非極性であるよう選択される。好適なB基としては、芳香族、脂肪族、又は芳香族と脂肪族の双方である直鎖又は分岐鎖炭化水素が挙げられる。表面改質剤として、カルボン酸及び/又はこれらのアニオン、スルホン酸及び/又はこれらのアニオン、リン酸及び/又はこれらのアニオン、ホスホン酸及び/又はこれらのアニオン、シラン、アミン、及びアルコールが挙げられる。好適な表面改質剤は、例えば、その開示が参照により本明細書に援用される、PCT出願公開第WO 2009/085926号(Kolbらによる)に更に記載されている。
【0161】
表面改質剤は、従来の技術を用いて、ジルコニア系粒子に添加することができる。表面改質剤は、ジルコニア系粒子からのカルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部の任意の除去の前後で添加することができる。表面改質剤は、ジルコニア系ゾルからの水の除去の前後で添加することができる。有機マトリックスは、表面改質の前後に、又は表面改質と同時に添加することができる。表面改質剤を添加する種々の方法は、例えば、その開示が参照により本明細書に援用される、国際公開第2009/085926号(Kolbらによる)に更に記載されている。
【0162】
表面改質反応は、室温(例えば、20℃〜25℃)で、又は高温(例えば、最大約95℃)で行うことができる。表面改質剤が、カルボン酸などの酸である場合、ジルコニア系粒子は、典型的には、室温で表面改質され得る。表面改質剤がシランである場合、ジルコニア系粒子は、典型的には、高温で表面改質され得る。
【0163】
有機マトリックスは、一般的には、ポリマー材料、若しくは重合可能な基を有するモノマー又はオリゴマーなどのポリマー材料への前駆物質、並びに溶媒を含む。ジルコニア系粒子は、従来の技術を用いて、有機マトリックスと組み合わせることができる。例えば、有機マトリックスが、ポリマー材料への前駆物質である場合、ジルコニア系粒子は、重合反応の前に添加することができる。ポリマー材料の前駆物質を含有する複合材料は、重合前にしばしば成形されることがある。
【0164】
モノマーの代表的な例として、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、及びエポキシ系モノマーが挙げられる。反応性オリゴマーの代表的な例として、(メタ)アクリレート基を有するポリエステル、(メタ)アクリレート基を有するポリウレタン、(メタ)アクリレート基を有するポリエーテル、又はアクリル樹脂が挙げられる。ポリマー材料の代表的な例として、ポリウレタン、ポリ(メタ9アクリレート、及びポリスチレンが挙げられる。
【0165】
ジルコニア系ゾルは、一般には、ゲル化によって凝固される。好ましくは、ゲル化プロセスは、クラックがなく形成される大きなゲル及びクラックを誘発することなく更に加工され得るゲルを可能にする。例えば、好ましくは、ゲル化プロセスは、溶媒が除去される際にへこむことがない構造を有するゲルに導く。このゲル構造は、多様な溶媒中及び超臨界抽出に必要とされ得る条件で両立し、かつ安定である。更に、ゲル構造は、超臨界抽出流体(例えば、超臨界CO2)と両立する必要がある。換言すれば、ゲルは、安定なゲルを製造し、クラックを誘発することなく加熱され有機物を焼損し、予備焼結され、高密度化され得る材料を得るために、乾燥に耐えるのに十分に安定かつ強固であるべきである。好ましくは、得られるゲルは、低い焼結温度でそれらを高密度に焼結する際に補助するために、比較的小さく均一の孔径を有する。しかしながら、好ましくは、ゲルの細孔は、ゲルのクラッキングに繋がることなく、焼損して逃避する有機物のガスの産生を可能にするのに十分に大きい。更には、ゲル化工程は、得られるゲルの密度の制御が、超臨界抽出、有機物焼損、及び焼結などの後続の処理において補助することを可能にする。ゲルは、最小限の量の有機材料又はポリマー改質剤を含有することが好ましい。
【0166】
本明細書に記載されるゲルは、ジルコニア系粒子を含有する。いくつかの実施形態では、ゲルは、結晶質相、組成、又は孔径で異なる少なくとも2つの型のジルコニア系粒子を含有する。微粒子系ゲルは、更なる処理加工に際に、有意かつ複雑な縮合及び結晶化反応を受けるアルコキシドから製造されたゲルに比べて、より少ない収縮に進む場合があることが判明した。結晶質の性質は、ナノスケールでの異なる結晶相の組み合わせを可能にする。本出願者は、これら反応性粒子の重合を通してのゲルの形成は、強固で弾力性のあるゲルをもたらすことを観察した。本出願者はまた、ゾルと結晶質粒子との混合物の使用は、更なる処理加工のためにより強固でより弾力性のあるゲルの形成を可能にすることができることも見出した。例えば、本出願者は、立方晶系及び正方晶系ジルコニア粒子の混合物を含むゲルは、超臨界抽出及び有機物焼損工程の間にクラッキングを受けにくいことを観察した。
【0167】
このゲルは、有機材料と結晶質金属酸化物粒子とを含み、この結晶質金属酸化物粒子は、ゲルの総体積を基準として、3〜20体積%の範囲で存在し、結晶質金属酸化物の少なくとも70モル%(いくつかの実施形態では、少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98、又は更には99モル%;70〜99、75〜99、80〜99、又は更には85〜99モル%)が、ZrO2である。所望により、ゲルは、非晶質の非結晶質酸化物供給源を含んでもよい。
【0168】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるゲルについては、結晶質金属酸化物粒子は、5ナノメートルから50ナノメートルの範囲の(いくつかの実施形態では、5ナノメートル〜25ナノメートル、5ナノメートル〜15ナノメートル、又は更には5ナノメートル〜10ナノメートルの範囲の)平均一次粒径を有する。一般的に、平均一次粒径は、X線回折手技を使用することにより測定される。好ましくは、粒子は凝集していないが、ある程度の凝集を有する粒子が有用であり得ることも可能である。
【0169】
ZrO2、Y3O3、La2O3、及びAl2O3の例示の供給源として、任意の好適な手段によって調製された結晶質ジルコニア系ゾルが挙げられる。上記記載のゾルは、特に適している。Y2O3、La2O3、及びAl2O3は、ジルコニア系粒子中に存在することができ、及び/又は別個のコロイド粒子又は可溶性塩として存在することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるゲルについて、結晶質金属酸化物粒子は、第1の複数の粒子と、第2の、異なる複数の粒子(すなわち、平均組成、相(複数可)、微小構造、及び/又はサイズによって識別可能であるもの)とを含む。
【0171】
一般には、本明細書に記載されるゲルは、ゲルの全重量を基準として、少なくとも3重量%(いくつかの実施形態では、少なくとも4、5、10、15、又は更には少なくとも20重量%)である有機含量を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるゲルは、ゲルの全重量を基準として、3〜30、10〜30、又は更には10〜20重量%の範囲の有機含量を有する。
【0172】
所望により、本明細書に記載されるゲルは、Y2O3(例えば、結晶質金属酸化物の1〜15、1〜9、1〜5、6〜9、3.5〜4.5、又は更には7〜8モル%の範囲はY2O3である)、La2O3(例えば、最大5モル%のLa2O3)、又はAl2O3(例えば、最大0.5モル%のAl2O3)の少なくとも1つを含む。
【0173】
1つの例示の実施形態では、結晶質金属酸化物は、1〜5モル%の範囲のY2O3と、0〜2モル%の範囲のLa2O3と、93〜97モル%の範囲のZrO2とを含む。別の例示のゲルでは、結晶質金属酸化物は、6〜9モル%の範囲のY2O3と、0〜2モル%の範囲のLa2O3と、89〜94モル%の範囲のZrO2とを含む。別の例示のゲルでは、結晶質金属酸化物は、3.5〜4.5モル%の範囲のY2O3と、0〜2モル%の範囲のLa2O3と、93.5〜96.5モル%の範囲のZrO2とを含む。別の例示のゲルでは、結晶質金属酸化物は、7〜8モル%の範囲のY2O3と、0〜2モル%の範囲のLa2O3と、90〜93モル%の範囲のZrO2とを含む。本明細書に記載されるゲル中に存在し得る他の任意の酸化物としては、CeO2、Pr2O3、Nd2O3、Pm2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、Fe2O3、MnO2、Co2O3、Cr2O3、NiO、CuO、Bi2O3、Ga2O3、又はLu2O3のうちの少なくとも1つが挙げられる。得られたクラックを含まない結晶質金属酸化物に所望の色彩を付加することができる添加剤としては、Fe2O3、MnO2、Co2O3、Cr2O3、NiO、CuO、Bi2O3、Ga2O3、Er2O3、Pr2O3、Eu2O3、Dy2O3、Sm2O3、又はCeO2のうちの少なくとも1つが挙げられる。いくつかの実施形態では、任意の1または2以上の酸化物の量は、約10ppm〜20,000ppmの範囲の量である。クラックを含まない結晶質金属酸化物物品が歯の色彩を有するように、十分な酸化物を存在させることが望ましい。
【0174】
本明細書に記載されるゲルを製造するための1つの例示の方法は、15ナノメートル以下の(いくつかの実施形態では、5ナノメートル〜15ナノメートルの範囲の)平均一次粒径を有する結晶質金属酸化物粒子を含む第1のジルコニアゾルを用意する工程を含み、ここでは結晶質金属酸化物の少なくとも70モル%(いくつかの実施形態では、少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98、又は更には少なくとも99モル%;70〜99、75〜99、80〜99、又は更には85〜99モル%)はZrO2である。このゾルは、所望により、濃縮され、濃縮ジルコニアゾルをもたらす。
【0175】
共溶媒、表面改質剤及び任意のモノマーが、撹拌しながら加えられ、十分に分散したゾルを得る。更に、ラジカル反応開始剤(たとえば、紫外線(UV)又は熱反応開始剤)が、ラジカル重合性の表面改質されたジルコニアゾルに加えられる。
【0176】
得られたゾルは、酸素を除去するために、必要に応じてN2でパージされる。得られたゾルは、ラジカル反応開始剤を含むラジカル表面改質されたジルコニアゾルを重合させてゲルを形成するために十分な時間にわたって化学線で放射するか、又は少なくとも1つの温度で加熱することによりゲル化させることができる。一般には、得られたゲルは強固な、半透明のゲルである。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエアロゲルを製造するためのゾルは、ラジカル重合性表面処理剤/改質剤で表面改質されているジルコニア系粒子を含む。
【0178】
例示のラジカル重合性表面改質剤として、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、及びモノ−2−(メタクリルオキシエチル)スクシネートが挙げられる。極性及び反応性の双方をジルコニア含有ナノ粒子に付与するための例示の改質剤は、モノ(メタクリロキシポリエチレングリコール)スクシネートである。例示の重合性表面改質剤は、ヒドロキシル含有重合性モノマーと無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水蓋フタル酸などの環式無水物との反応生成物であり得る。例示の重合性ヒドロキシル含有モノマーとして、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレートが挙げられる。アシロキシ及びメタクリロキシ官能性ポリエチレンオキシド、及びポリプロピレンオキシドもまた、重合性ヒドロキシル含有モノマーとして使用されてもよい。例示の重合性シランとして、アルキルトリアルコキシシラン、メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン又はアクリロキシアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−(メタクリロキシ)プロピルトリエトキシシラン;同様に3−(メタクリロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、及び3−(アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン);メタクリロキシアルキルジアルキルアルコキシシラン又はアクリロキシアルキルジアルキルアルコキシシラン(例えば、3−(メタクリロキシ)プロピルジメチルエトキシシラン);メルカプロアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン);アリールトリアルコキシシラン(例えば、スチリルエチルトリメトキシシラン);ビニルシラン(例えば、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン)が挙げられる。
【0179】
表面改質剤をジルコニア含有ナノ粒子に添加するための方法は、当該技術分野において既知である。表面改質剤は、例えば、カルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部をジルコニア含有ゾルから任意に除去する前後で添加することができる。表面改質剤は、例えば、水をジルコニア含有ゾルから任意に除去する前後で添加することができる。有機マトリックスは、例えば、表面改質後に、又は表面改質と同時に添加することができる。
【0180】
1つの例示の実施形態では、ゲルは、表面改質粒子及び任意のモノマーのラジカル重合によって形成される。
【0181】
重合は、熱反応開始剤、化学放射又はUV反応開始剤などの任意の好適な手段によって反応開始され得る。代表的な熱反応開始剤として、(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(例えば、商品名「VAZO 67」で、E.I du Pont de Nemours and Company、Wilmington,DEから入手可能)、アゾビスイソブチロニトリル)(例えば、商品名「Vazo 64」で、E.I du Pont de Nemours and Companyから入手可能)、2,2’−アゾジ−(2,4−ジメチルバレロニトリル(例えば、商品名「Vazo 52」でE.I du Pont de Nemours and Companyから入手可能)、及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル(例えば、商品名「Vazo 88」で、E.I du Pont de Nemours and Companyから入手可能)が挙げられる。ペルオキシド及びヒドロペルオキシド(たとえば、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウリル)もまた有用であり得る。反応開始剤の選択は、例えば、溶媒の選択、溶解度及び所望の重合温度によって影響を受け得る。好ましい反応開始剤は、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(商品名「VAZO 67」で、E.I du Pont de Nemours and Companyから入手可能)である。
【0182】
代表的なUV反応開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(例えば、商品名「IRGACURE 184」で、Ciba Specialty Chemicals Corp.,Tarrytown,NYから入手可能)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例えば、商品名「IRGACURE 2529」で、Ciba Specialty Chemicals Corp.から入手可能)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェン(例えば、商品名「DAROCURE D111」でCiba Specialty Chemicals Corp.から入手可能)及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(例えば、商品名「IRGACURE 819」で、Ciba Specialty Chemicals Corp.から入手可能)が挙げられる。
【0183】
ゲル中の液体又は溶媒は、第2の液体で交換することができる(例えば、ゲルを第2の液体中に、交換が発生させるのに十分な時間にわたって浸漬させることにより)。例えば、ゲル中に存在する水は、乾燥溶媒(例えば、乾燥エタノール)中にゲルを浸漬させることによって除去することができる。
【0184】
本明細書に記載されるエアロゲルは、過度の収縮なく(たとえば、約10%以下)、本明細書に記載されるジルコニアゲルから溶媒を除去することによって形成される。このゲル構造は、乾燥(溶媒除去)の際に、少なくとも一部の収縮及びクラッキングに耐えるのに十分に強固であるべきである。
【0185】
エアロゲルは、超臨界抽出を介してゲルを乾燥することにより調製することができる。いくつかの実施形態では、ゲルの調製において使用した溶媒の超臨界条件下でゲルを乾燥することによって調製される。
【0186】
本明細書に記載されるエアロゲルのいくつかの実施形態では、結晶質金属酸化物粒子は、2nm〜50nmの範囲(いくつかの実施形態では、5nm〜50nm、2nm〜25nm、5nm〜25nm、2nm〜15nm、又は更には5nm〜15nmの範囲)の平均一次粒径を有する。
【0187】
典型的には、本明細書に記載されるエアロゲルは、エアロゲルの全重量を基準として、少なくとも3(いくつかの実施形態では、少なくとも4、5、10、15、又は更には少なくとも20)重量%である有機含量を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエアロゲルは、エアロゲルの全重量を基準として、3〜30、10〜30、又は更には10〜20重量%の範囲の有機含量を有する。
【0188】
所望により、本明細書に記載されるエアロゲルは、Y2O3(例えば、結晶質金属酸化物の1〜15、1〜9、1〜5、6〜9、3.5〜4.5、又は更には7〜8モル%の範囲はY2O3である)、La2O3(例えば、最大5モル%のLa2O3)、又はAl2O3(例えば、最大0.5モル%のAl2O3)の少なくとも1つを含む。1つの例示のエアロゲルは、結晶質金属酸化物の1〜5モル%の範囲のY2O3と、結晶質金属酸化物の0〜2モル%の範囲のLa2O3と、結晶質金属酸化物の93〜99モル%の範囲のZrO2とを含む。別の例示のエアロゲルは、結晶質金属酸化物の6〜9モル%の範囲のY2O3と、結晶質金属酸化物の0〜2モル%の範囲のLa2O3と、結晶質金属酸化物の89〜94モル%の範囲のZrO2とを含む。別の例示のエアロゲルでは、結晶質金属酸化物は、3.5〜4.5モル%の範囲のY2O3と、結晶質金属酸化物の0〜2モル%の範囲のLa2O3と、93.5〜96.5モル%の範囲のZrO2とを含む。別の例示のエアロゲルでは、結晶質金属酸化物は、7〜8モル%の範囲のY2O3と、結晶質金属酸化物の0〜2モル%の範囲のLa2O3と、90〜93モル%の範囲のZrO2とを含む。本明細書に記載されるエアロゲル中に存在し得る他の任意の酸化物としては、CeO2、Pr2O3、Nd2O3、Pm2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、Fe2O3、MnO2、Co2O3、Cr2O3、NiO、CuO、Bi2O3、Ga2O3、又はLu2O3のうちの少なくとも1つが挙げられる。得られたクラックを含まない結晶質金属酸化物に所望の色彩を付加することができる添加剤としては、Fe2O3、MnO2、Co2O3、Cr2O3、NiO、CuO、Bi2O3、Ga2O3、Er2O3、Pr2O3、Eu2O3、Dy2O3、Sm2O3、又はCeO2のうちの少なくとも1つが挙げられる。いくつかの実施形態では、任意の1または2以上の酸化物の量は、約10ppm〜20,000ppmの範囲の量である。いくつかの実施形態では、クラックを含まない結晶質金属酸化物物品が歯の色彩を有するために、十分な酸化物を存在させること望ましい。
【0189】
本明細書に記載されるエアロゲルは、3〜20(いくつかの実施形態では、3〜15、3〜14、又は更には8〜14)%の範囲の酸化物の体積%を有する。酸化物のより低い体積%を有するエアロゲルは、超臨界乾燥又は後続の処理加工中に非常に脆弱になり、クラックを形成する可能性が高い。より高い酸化物含量を有するエアロゲルは、揮発性副生成物が高密度構造から逃避することがより難しいために、有機物焼損の際にクラックを形成する可能性が高い。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエアロゲルは、100m2/g〜300m2/g(いくつかの実施形態では、150m2/g〜250m2/g)の範囲の表面積と、10nm〜20nmの範囲の連続性細孔チャネルサイズとを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエアロゲルの構造は、3nm〜10nm(いくつかの実施形態では、4nm〜8nm)のサイズの酸化物粒子と、酢酸塩基及び重合モノマーからなる有機物との複合材料である。有機物の量は、一般には、エアロゲルの10〜20重量%である。
【0191】
本明細書に記載されるエアロゲルは、例えば、最大50nm(いくつかの実施形態では、2nm〜50nm、5nm〜25nm、2nm〜15nm、又は更には5nm〜15nm)の平均一次粒径を有する結晶質金属酸化物粒子を含む第1のジルコニアゾルを用意することによって製造することができ、結晶質金属酸化物の少なくとも70%(いくつかの実施形態では、少なくとも75、80、90、95、96、97、98、又は更には99%;70〜99、75〜99、80〜99、又は更には85〜99%の範囲)がZrO2である。次いで、第1のジルコニアゾルは、所望により濃縮され、濃縮ジルコニアゾルをもたらす。共溶媒、表面改質剤及び任意のモノマーが、撹拌しながら加えられ、十分に分散したゾルを得る(この共溶媒は任意である)。
【0192】
ラジカル反応開始剤(例えば、紫外線(UV)又は熱反応開始剤)が、ラジカル重合性の表面改質されたジルコニアゾルに加えられる。所望により、得られたゾルは、酸素を除去するために、N2でパージされる。次いで、得られたゾルは、ラジカル反応開始剤を含むラジカル表面改質されたジルコニアゾルを重合するのに十分な時間にわたって化学線で放射するか又は少なくとも1つの温度で加熱することによってゲル化され、ゲルを形成する。一般には、得られたゲルは、強固な半透明のゲルである。次いで、存在する場合、水が、アルコール交換を介してゲルから除去され、少なくとも部分的に脱水されたゲルをもたらす。次いで、超臨界抽出を介して、存在する場合、アルコールを部分的に脱水されたゲルから除去することにより、ゲルをエアロゲルに変換し、エアロゲルをもたらす。
【0193】
1つの例示の実施形態では、第1の液体溶媒を少なくとも部分的に脱水されたゲルから除去することは、第1の液体溶媒を第2の液体溶媒で置き換え、次いで、第2の溶媒についての超臨界条件が得られるまで、少なくとも部分的に脱水されたゲルの温度及び圧力をゆっくりと上昇させ、次いで、圧力を約1バールまでゆるめて、モノリシックエアロゲルをもたらすことを含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、第1の溶媒の第2の溶媒による完全な交換は、超臨界条件下で行われる。いくつかの実施形態では、第1の液体溶媒は、第2の溶媒と混和性である。この方法は、少なくとも部分的に脱水されたゲルを、ゲルを完全に浸すために第1の液体溶媒の十分な体積を有する圧力容器に配置し、第2の溶媒の臨界圧力を超える圧力に到達するまで、第2の溶媒の臨界温度よりも高い温度で、第2の溶媒をオートクレーブに送り込み、溶媒交換を完全に行うのに十分な時間にわたって圧力容器内の臨界圧力を維持し(これは、第1及び第2の溶媒の混合物をセパレータ容器に同時にガス抜きしながら、第2の溶媒の追加量を圧力容器に送りこむことによる)、次いで、圧力をゆっくりと1バールまでゆるめて、モノリシックエアロゲルをもたらすことを含む。一般的には、第2の溶媒は二酸化炭素である。
【0195】
多孔質予備焼結ジルコニア材料は、少なくとも5mm(いくつかの実施形態では、少なくとも10mm、15mm、20mm、又は更には少なくとも25mm)のx、y、z寸法と、理論密度の少なくとも30%(いくつかの実施形態では、少なくとも35、40、50、95%;30〜95%の範囲)の密度と、10nm〜100nm(いくつかの実施形態では、10nm〜60nm、10nm〜50nm、10nm〜40nm、又は更には10nm〜30nm)の範囲の平均連結孔径とを有することができ、金属酸化物の少なくとも70%(いくつかの実施形態では、少なくとも75、80、90、95、96、97、98、又は更には99%;70〜99、75〜99、80〜99、又は更には85〜99%の範囲)は結晶質ZrO2であり、この結晶質ZrO2は、100nm未満(いくつかの実施形態では、20nm〜100nm、30nm〜100nm、又は更には30nm〜70nmの範囲)の平均粒度を有する。
【0196】
所望により、本明細書に記載される多孔質予備焼結ジルコニア材料は、Y2O3(例えば、1〜15、1〜5、6〜9、3.5〜4.5、又は更には7〜8モル%の範囲の)、La2O3(例えば、最大5モル%)、Al2O3(例えば、最大0.5モル%)のうちの少なくとも1つを含む。
【0197】
1つの例示の多孔質予備焼結ジルコニア材料は、1〜5モル%の範囲のY2O3と、0〜2モル%の範囲のLa2O3と、93〜99モル%の範囲のZrO2とを含む。
【0198】
別の例示の多孔質予備焼結ジルコニア材料は、6〜9モル%の範囲のY2O3と、0〜2モル%の範囲のLa2O3と、89〜94モル%の範囲のZrO2とを含む。
【0199】
別の例示の多孔質予備焼結ジルコニア材料は、3.5〜4.5モル%の範囲のY2O3と、0〜2モル%の範囲のLa2O3と、93.3〜96.5モル%の範囲のZrO2とを含む。
【0200】
別の例示の多孔質予備焼結ジルコニア材料は、7〜8モル%の範囲のY2O3と、0〜2モル%の範囲のLa2O3と、90〜93モル%の範囲のZrO2とを含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、多孔質予備焼結ジルコニア材料は、5ppm未満の硫酸塩当量及び/又は5ppm未満の塩化物当量を有する。ジルコニアゾルを調製するために使用される原材料は、多くの場合、塩化物及び硫酸塩不純物を含有する。これらイオンの重量で数千ppmが焼成金属酸化物物品中に存在する場合がある。取り除かれない場合、これら不純物は、焼結に使用される温度で揮発し、焼結された本体内に気孔として捕捉されるようになり得る。塩化物及び硫酸塩不純物は、例えば、予備焼結本体を水中のアンモニア溶液で浸潤させ、これを一晩静置させて、次いでアンモニア溶液を水で数回交換させることによって、焼結前に除去することができる。この処置の間に、アンモニアは塩化物及び硫酸塩不純物と反応し、可溶性アンモニア塩を形成する。これらは、水への拡散によって取り除かれる。予備焼結物品又は焼成物品を形成するために使用された熱処理において十分な揮発が発生するように、加熱プロファイルを調節することによって、これらの不純物を取り除くことが可能である。
【0202】
本明細書に記載される予備焼結ジルコニア材料は、本明細書に記載されるエアロゲルを、多孔質予備焼結済ジルコニア材料をもたらすのに十分な時間及び少なくとも1つの温度で加熱する工程を含む方法により製造することができる。
【0203】
典型的には、エアロゲルは、5℃/時から20℃/時の範囲の速度で、600℃までゆっくりと加熱され、有機物を除去する。600℃以下の低速の加熱は、例えば、揮発性生成物の不均一な収縮又は内部圧のために、本体にクラックを生じることなく有機物を揮発させるために一般に必要とされる。熱重量分析及び膨張率測定は、異なる加熱速度で発生する重量喪失及び収縮を追跡するために使用することができる。次いで、有機物が取り除かれるまで、異なる温度範囲での加熱速度は、低速で重量喪失及び収縮のほぼ一定速度を維持するよう調節され得る。有機物除去の注意深い制御が、クラックを含まない本体を得るために重要である。有機物が一旦除去されると、温度は800℃〜1100℃の範囲の温度に、より高速で(例えば、100℃/時から600℃/時)上昇させて、この温度で最大5時間保持されることができる。これら温度では、材料の強度は追加の焼結によって増大するが、開細孔構造は保持される。塩化物及び硫酸塩不純物を取り除くためにイオン交換処理が使用される場合、焼成本体を加熱するために使用される温度及び時間は、アンモニア溶液の浸潤と関連付けられている毛管力に耐えるのに十分に確実なものである。一般に、これは、理論密度の40%を超える(好ましくは45%を超える)相対密度を必要とする。粉砕されることになる物品については、温度をあまりに高くすること及び/又は時間をあまりに長くすることは、粉砕を困難にする場合がある。場合によっては、有機物焼損を別個に行うことが好都合であり得るが、この場合には、より高い温度処理の前に大気からの水分の吸着を防止するために、注意が必要になり得る。エアロゲルは、600℃に加熱した直後に非常に脆弱であり得、水分の不均一な吸着がクラッキングをもたらし得る。
【0204】
ジルコニアセラミック歯科用物品を製造するプロセスは、
a)多孔質ジルコニアセラミック材料を含む歯科用ミルブランクを用意する工程と、
b)歯科用ミルブランクを機械加工装置内に定置させる工程と、
c)多孔質ジルコニアセラミック材料を機械加工して、機械加工された多孔質ジルコニアセラミック歯科用物品を得る工程と、を含む。
【0205】
機械加工工程は、典型的には、粉砕装置又は研削装置で、又はこれらを用いて行われている。これらの装置は、例えば、3M ESPA(LAVA(商標)Form)又はSirona(CEREC(商標)inLab CAD/CAM)から入手可能である。
【0206】
有用な粉砕パラメータとして:
−粉砕工具の回転速度:5,000〜40,000リビジョン/分、
−供給速度:20〜5,000mm/分、
−粉砕カッター直径:0.8〜4mm、が挙げられる。
【0207】
ジルコニアセラミック歯科用物品を製造するプロセスは、多孔質ジルコニアセラミック歯科用ミルブランクを機械加工することによって得られる物品を焼結する工程を更に含む。
【0208】
焼結は、結晶質金属酸化物物品とも呼ばれることがある、ジルコニアセラミック歯科用物品をもたらすことになる。
【0209】
実施される場合、焼成又は焼結工程は、許容し得る歯に似た色(たとえば、Vita(商標)シェードガイドに適合する色)を有する歯科用セラミック物品をもたらす条件下で行われるべきである。
【0210】
有用な焼結条件は、次のパラメータ:
−温度:約900〜約1500℃又は約1000〜約1400℃又は約1100℃〜1350℃又は約1200℃〜約1400℃又は約1300℃以上〜約1400℃又は約1320℃以上〜約1400℃又は約1340℃〜約1350℃、
−雰囲気:空気又は不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)、
−持続時間:材料の最終密度の約95又は約98若しくは約99〜約100%に到達するまで、
−滞留時間:約1〜約24時間又は約2〜約12時間、
−圧力:周囲気圧、のうちの1つ以上により特徴付けることができる。
【0211】
使用することができる炉は、市販のLava(商標)Therm(3M ESPE)である。
【0212】
焼成プロセスの際に、多孔質歯科用セラミック物品は、その最終形状まで焼結され、これによって、寸法、密度、硬度、曲げ強度及び/又は粒度に関して変化が起きる。
【0213】
滞留時間(すなわち、物品がその温度で保持される間の時間)は実際には重要ではない。滞留時間は0である場合もある。しかしながら、滞留時間は、約0〜24時間又は約0.1〜約5時間の範囲でもあり得る。
【0214】
焼成温度と滞留時間(すなわち、特定の温度が保持される間の時限)には、相関性が認められる。概して、より高い温度は、短い滞留時間のみを必要とする。したがって、滞留時間は、約0(例えば、焼成温度が約1550℃の場合)〜約10時間(焼成温度が約1100℃の場合)又は約0.1〜約8時間続いてもよい。
【0215】
概して、焼結又は焼成条件は、焼結された歯科用セラミック物品が、理論的に達成可能な密度に比べて、約98%以上の密度を有するように調整される。
【0216】
本明細書に記載されるジルコニアセラミック歯科用物品は、少なくとも3mm(いくつかの実施形態では、少なくとも5mm、10mm、15mm、20mm、又は更には25mm)のx、y、z寸法と、理論密度の少なくとも98.5%(いくつかの実施形態では、99、99.5、99.9、又は更には少なくとも99.99%)の密度とを有することができ、結晶質金属酸化物の少なくとも70モル%はZrO2であり、このZrO2は、400ナノメートル未満(いくつかの実施形態では、300ナノメートル、200ナノメートル、150ナノメートル、100ナノメートル未満、又は更には80ナノメートル未満)の平均粒度を有する。
【0217】
所望により、本明細書に記載されるジルコニアセラミック歯科用物品は、Y2O3(例えば、結晶質金属酸化物の1〜15、1〜5、6〜9、3.5〜4.5又は更には7〜8モル%の範囲のY2O3)、La2O3(例えば、最大5モル%のLa2O3)、Al2O3(例えば、最大0.5モル%のAl2O3)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0218】
1つの例示のジルコニアセラミック歯科用物品は、結晶質金属酸化物の1〜5モル%の範囲がY2O3であり、結晶質金属酸化物の0〜2モル%の範囲がLa2O3であり、結晶質金属酸化物の93〜97モル%の範囲がZrO2であるように含む。この一般的な組成は、高い2軸曲げ強度及び良好な光学透過率の組み合わせを生じることを観察した。
【0219】
別の例示のジルコニアセラミック歯科用物品は、6〜9モル%の範囲のY2O3、0〜2モル%のLa2O3、及び89〜94モル%の範囲のZrO2を含む。この一般的な組成範囲は、良好な2軸曲げ強度及び高い光学透過率の組み合わせを生じることを観察した。
【0220】
別の例示のジルコニアセラミック歯科用物品は、3.5〜4.5モル%の範囲のY2O3、0〜2モル%のLa2O3、及び93.5〜96.5モル%の範囲のZrO2を含む。この一般的な組成は、特に高い2軸曲げ強度及び良好な光学透過率の組み合わせを生じることを観察した。
【0221】
別の例示のジルコニアセラミック歯科用物品は、7〜8モル%の範囲のY2O3、0〜2モル%のLa2O3、及び90〜93モル%の範囲のZrO2を含む。この一般的な組成範囲は、良好な2軸曲げ強度及び特に高い光学透過率の組み合わせを生じることを観察した。
【0222】
低い酸化イットリウム組成物は、高強度が必要とされ、中程度の光学透過率で十分な場合により望ましいと考えられる。高酸化イットリウム組成物は、高い光学透過率が必要とされ、中程度の強度で十分である場合により望ましいと考えられる。
【0223】
別の態様では、本開示は、ジルコニアセラミック歯科用物品の製造法を提供し、方法は、本明細書に記載される焼成金属酸化物物品を、結晶質金属酸化物物品をもたらすのに十分な時間及び少なくとも1つの温度で加熱する工程を含む。
【0224】
典型的には、この加熱は、900℃〜1500℃(いくつかの実施形態では、1000℃〜1400℃、1000℃〜1350℃、又は更には1200℃〜1300℃)の範囲の少なくとも1つの温度で行われる。典型的には、1000℃以上での全ての加熱は、24時間未満、典型的には約2〜約24時間の範囲で行われる。典型的には、1000℃以上での全ての加熱は、1.25気圧(126.66kPa)未満の圧力で行われる。典型的には、目標温度への加熱速度は、50℃/時間〜600℃/時間の範囲である。加熱は、従来の炉、好ましくはプログラム可能な加熱処理能力を備えたものの内部で行うことができる。加熱されることになる材料は、例えば、アルミナるつぼ内に定置させることができる。
【0225】
ジルコニアセラミック歯科用物品のいくつかの実施形態では、ZrO2は、全てが立方晶系ZrO2である。いくつかの実施形態では、ZrO2は、全て正方晶系である。いくつかの実施形態では、ジルコニアは、正方晶系及び立方晶系の混合物である。理論に束縛されようとするものではないが、ZrO2及びY2O3の平衡状態図に基づくと、立方晶系及び正方晶系相の混合物は、Y2O3含量が2〜8モル%の範囲にあり、材料が約1200℃〜約1250℃の範囲で焼結される場合が想定されることになる。
【0226】
正方晶系及び一部の立方晶系構造の混合物を備える約3.5〜4.5モル%のY2O3を有する実施形態は、強度及び光学透過率の例外的な組み合わせを呈する。一例では、平均粒度は、156nmであった。これら材料が、長時間にわたって焼結温度で保持される場合、粒度は168nmまで増加し、材料の良好な透過率は、実質的に低減した。同様なやり方で、焼結温度を約1500℃に上昇させて、2時間保持した場合、粒径は444nmまで増大し、良好な光学透過率は喪失した。この組成の粒度を175nmより小さく維持することは、良好な光学透過率のために有用であると考えられる。
【0227】
立方晶系及び一部の正方晶系構造を備える、約7〜8モル%のY2O3を含有する実施形態は、最適な透過率を呈し、より低い強度が容認され得る用途で特に有用であり得る。これは、驚くべきことで、なぜなら、立方晶系相から完全に構成される組成物は、光を散乱するための正方晶系相が存在しないために、最適な透過を呈することが予想されていたからである。
【0228】
本発明はまた、本テキストに記載されるプロセスによって得られる又は得た歯科用物品を目的とする。
【0229】
歯科用セラミック物品は、クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニヤ、前装、コーピング、クラウン・ブリッジフレームワーク、インプラント、橋脚歯、歯科矯正装置(例えば、ブラケット、バッカルチューブ、クリート及びボタン)、並びにこれらの一部の形状を有し得る。
【0230】
焼結ジルコニアセラミック物品を得るための熱処理は、典型的には、次の条件下で行われる:
●温度:約900℃〜約1500℃又は約1000℃〜約1400℃又は1100℃〜1350℃又は約1200℃〜約1400℃又は約1300℃〜約1400℃又は約1320℃〜約1400℃又は約1340℃〜約1350℃、
●雰囲気:空気又は不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン)、
●圧力:周囲気圧、
●滞留時間:材料の最終密度の約95〜約100%の密度に到達するまで。
【0231】
滞留時間(すなわち、物品がその温度で保持される間の時間)は、実際には重要ではない。滞留時間は0である場合もある。しかしながら、滞留時間は、更に約0〜約24時間又は約0.1〜約5時間の範囲であり得る。
【0232】
焼結工程後のセラミック歯科用物品は、通常、次の特徴:
−密度:理論密度の少なくとも約98.5(いくつかの実施形態では、99、99.5、99.9、又は更には少なくとも99.99)%の完全焼結密度、
−ビッカース硬度:約450MPa〜約2200MPa、又は約500MPa〜約1800MPa.HV(2)、
−正方晶系相の相含量;約1〜約100重量%又は約10〜約100重量%;立方晶系相の相含量;約30〜約100重量%又は約50〜約90重量%、
−2軸曲げ強度:約450MPa〜約2200MPa、又は約500MPa〜約2000MPa、の少なくとも1つにより特徴付けることができる。
【0233】
本テキストに記載される歯科用物品は、一般的に、本発明で達成され得る意図する目的に悪影響を及ぼす構成成分又は添加剤を含有しない。したがって、歯の色に着色されていない歯科用物品を最終的にもたらす量で加えられる構成成分又は添加剤は、通常、この歯科用物品には含まれない。典型的には、その物品が当業者に既知であるVita(商標)カラーコードシステムからの色に割り当てることができない場合には、物品は歯の色に着色されていないとみなされる。その上、機械的損傷が起こる所で、歯科用修復物の機械的強度を多少なりとも低減することになる構成成分もまた、通常、歯科用物品には含まれない。
【0234】
ジルコニアセラミック歯科用物品は、ガラス、ガラスセラミック材料、二ケイ酸リチウムセラミック材料、又はこれらの組み合わせを通常含有しない。
【0235】
本テキストに記載されるジルコニア材料の製造はまた、静水圧圧縮成形工程(HIP)の適用を一般に必要としない。
【0236】
本明細書で引用される特許、特許文献、及び刊行物の内容全体は、あたかもそれぞれが個々に組み込まれるように、その全体が参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0237】
以下の実施例は、本テキストに記載される本発明を例示するために示される。
【0238】
別途記載のない限り、全ての部及びパーセンテージは重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、別途記載のない限り、全ての実施例は、周囲条件(23℃;1013mbar(101.3kPa))で行われた。
【0239】
歯科用ミルブランクを製造するために使用された材料
【0240】
【表1】
【0241】
ZrO(88モル%)/Y(12モル%)ゾルの調製
ゾルをどのように製造するかの有用な説明を以下に示す。全てのゾルを、使用された構成成分の含量を変化させることによって調製した。ゾル組成物は、無機酸化物のモル・パーセントで示されている。
【0242】
水熱反応器を、ステンレス・スチール製の編んだ平滑管ホース(0.64cmの内径、0.17cmの肉厚;商品名「DUPONT T62 CHEMFLUOR PTFE」でSaint−Gobain Performance Plastics,Beaverton,MIから入手)から調製した。この管を、所望の温度に加熱されたピーナッツオイル浴中に浸した。次の反応器管、ステンレス・スチール製の編んだ平滑管ホース(「DUPONT T62 CHEMFLUOR PTFE」;0.64cmの内径、0.17cmの肉厚)の追加の3メートルのコイルに、0.64cmの直径及び0.089cmの肉厚を備えた0.64cmのステンレス・スチールの管をつなぎ、これを氷水浴中に浸して、材料を冷却し、背圧調整弁を使用して、2.76MPaの出口圧を維持した。
【0243】
酢酸ジルコニウム溶液(2.000グラム)を脱イオン水(2205.3グラム)と合わせることにより、前駆体溶液を調製した。酢酸イットリウム(327.8グラム)を、完全に溶解するまで、混合しながら加えた。得られた溶液の固体含量を重力測定的に測定し(120℃/時、強制空気オーブン)、22.16重量%であった。脱イオン水(718グラム)を加え、最終濃度を19重量%に調整した。この手順を3回繰り返し、合計で約15.115グラムの前駆体材料を得た。得られた溶液を、水熱反応器を通して11.48ml/分の速度で送り込んだ。温度は225℃であり、平均滞留時間は42分であった。清澄で安定なジルコニアゾルを得た。
【0244】
表2は、ゾルC1と同様な方法で製造された他のゾルについて使用した組成及びプロセス条件の概要である。
【0245】
【表2】
【0246】
ゾル濃度及びダイアフィルトレーション
得られたゾルを先ず初めに、膜カートリッジ(商品名「M21S−100−01P」の商品名でSpectrum Laboratories Inc.,Rancho Dominguez,CAから入手)を使用して、ダイアフィルトレーションを介して、次いで、同じ膜カートリッジを使用して、一定体積ダイアフィルトレーションを介して濃縮(20〜35重量%固形物)した。次いで、得られたゾルを、回転蒸発を介して更に濃縮した。
【0247】
ゲルの調製
ゾルを混合して所望の酸化物組成を得て、ダイアフィルトレーション、蒸留又はこれらの組み合わせを介して酸化物、酢酸及び溶媒組成を調製することによって、ゲルを調製した。アクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及び反応開始剤を加え、このゾルを成形型に配置し、50℃で4時間にわたって熱硬化させた。典型的な手順は、以下の実施例G1の1つのゲルについて示されている。全てのゲルの組成が、表3に示されている(溶媒は、水及びエタノールからなる)。
【0248】
実施例G1:ゾルC1(上記記載の通りに調製され、ダイアフィルトレーションされ、濃縮されたもの、35.34重量%の酸化物及び4.14重量%の酢酸)の試料90.46g及びゾルT1(上記記載の通りに調製され、ダイアフィルトレーションされ、濃縮されたもの、33.46重量%の酸化物及び2.78重量%の酢酸)の256.82gを、1000mlのRBフラスコ中に充填した。水(169.38g)を、回転蒸発を介して取り除き、粘稠ないくらか乾燥した材料を得た。エタノール(82.58g)、アクリル酸(11.52g)、HEMA(5.90g)を、このフラスコに加えた。内容物を一晩撹拌し、得られたものは、流動性の半透明のゲルである。2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(「VAZO 67」)(0.601g)を加え、溶解するまで撹拌した。次いでフラスコの内容物を、Nガスで6分間パージした。試料(半透明で低粘度)を、円筒状容器(29mmの直径)に充填した。各容器は、容積が約18mlであり、それぞれを両端で密封した(頂部と液体との間にごくわずかなエアギャップだけが残った)。試料を約1時間静置させて、次いでオーブン内で硬化させた(50℃、4時間)。これにより、清澄な半透明の青色ゲルを得た。ゲルを容器から取り出し、473mlの広口瓶内に配置した(1つの瓶当たり3つのゲル)。瓶をエタノール(275g、変性エタノール)で満たした。試料を24時間浸漬し、次いでエタノールを新鮮なエタノールで交換した。試料を24時間浸漬し、次いで、このエタノールを3バッチの新鮮なエタノールで交換した。超臨界抽出が行われるまで試料を浸漬させた。上記操作は、ゲルが空気にさらされる時間量を最小限に抑えながら行った。
【0249】
表3は、実施例G1と同様な方法で製造された他のゲルについて使用したゲル製造条件の概要である。
【0250】
【表3】
【0251】
抽出方法
ゲルを超臨界抽出器に充填した。湿ったZrO系ゲルを、エタノール浴から別々に取り出し、秤量し、小さいキャンバスパウチの内側に個々に配置し、次いで、10Lの抽出器容器に充填する前に、別のエタノール浴内で一時的に保管した。実施例G1のゲルの抽出については、約3500mlの200プルーフのエタノールを、実験室スケールの超臨界流体抽出器ユニットの10Lの抽出器に加えた。湿ったジルコニア系ゲルを収容するキャンバスバッグを、湿ったゲルがジャケット付き抽出器容器の内部の液体エタノール中に完全に浸るように、エタノール浴から10Lの抽出器に移し、これを60℃に加熱し、この温度を維持した。抽出器容器を定位置で密封し、液体二酸化炭素を冷却したピストンポンプ(設定値:−12.5℃)により送り込み、熱交換器を通してCO2を60℃に加熱し、10Lの抽出器容器に入れ、11.0MPaの内部圧に到達させた。これらの条件において、二酸化炭素は超臨界状態にある。11MPa及び60℃の抽出器の動作条件が一旦満たされたら、抽出器の溶出液に多孔質の316Lステンレススチールフリット(Model # 1100S−5,480 DIA−062−10−AとしてMott Corporationから入手)を通過させるために、PID制御ニードルバルブが、開閉することによって抽出器容器の内部の圧力を調節し、次いで、熱交換器を通して溶出液を30℃に冷却し、最終的に、室温及び5.5MPa未満の圧力で維持された5−Lサイクロンセパレータ容器に送られ、ここでは、リサイクル及び再利用のために、抽出サイクル全体にわたって抽出されたエタノール及び気相のCO2が分離、回収された。超臨界二酸化炭素(scCO2)は、動作条件が達成された時点から7時間にわたって、10−L抽出器容器を通じて連続的に送り込まれた。7時間の抽出サイクルの後に、蓋が開けられる前に、抽出器容器は、11MPaから大気圧に16時間にわたってサイクロンセパレータへベントされ、エアロゲルを収容する乾燥したキャンバスパウチを取り出した。乾燥エアロゲルをそれらのキャンバスパウチから取り出し、保管用にティッシュペーパーで包まれた237mlのガラス瓶に移した。
【0252】
乾燥エアロゲルは、水色がかった半透光性であった。
【0253】
焼損/脱結合剤プロセス
上記実施例G1からの抽出されたエアロゲル試料を、それらの密封容器から取り出し、酸化アルミニウムシリンダーで暗きょされた酸化アルミニウムプレート上に設置し、チャンバ炉(「Nabertherm 60リットル」)内で次のスケジュールに従って燃焼させた:i−18℃/時の速度で20℃から220まで加熱;ii−1℃/時の速度で220℃から244℃まで加熱;iii−6℃/時の速度で244℃から400℃まで加熱;iv−60℃/時の速度で400℃から900℃まで加熱;v−900℃で2時間保持;並びにvi−600℃/時の速度で900℃から20℃まで冷却。
【0254】
焼損プロセス後に、試料はクラックを含まなかった。実施例G2〜G4からの全てのエアロゲルを、実施例G1について記載されたものと同様な方法で、脱結合剤化した。
【0255】
予備焼結プロセス
実施例G1〜G4の脱結合剤化試料を、酸化アルミニウムプレート上に設置し、チャンバ炉(「Nabertherm 1リットル」)内で次のスケジュールに従って燃焼させた:i−10℃/分の速度で20℃から900℃まで加熱;ii−2℃/分の速度で900℃からTx℃まで加熱、iii−Txでy時間にわたって保持、並びにiv−1時間以内にTxから600℃まで冷却。予備焼結工程は、炉が室温まで冷却された時点で終了した。異なる温度Tx及び滞留時間yは、表5に示されている。
【0256】
測定法
N2収着等温線、BET表面積、細孔体積、平均連結孔径の測定方法
試料に対し、QUANTACHROME AUTOSORB−1 BET解析器(Quantachrome Instruments(Boynton Beach,FL))又はBELSORP−mini(BEL Japan Inc.,大阪、日本)による測定を行った。試料を計量し、200℃で2日間脱気した後、適切な回数及び測定時点の分布で、N吸着工程を行った(例えば、1×10〜1のp/p範囲で55回の吸着時点及び20回の脱着時点を設定し、0.05に戻し、完全な等温線を得る)。比表面積Sを、BET法により算定した(計算に関する詳細は、Autosorb−1操作説明書第1.51IV版、Theory and Discussion;Quantachrome Instruments,Inc.を参照)。総細孔体積Vliqは、細孔がその後液体吸着質で満たされると仮定することにより、1に近い相対圧力(1に最も近いp/p)で吸着された蒸気の量に由来する(計算に関する詳細は、Autosorb−1操作説明書第1.51IV版、Theory and Discussion;Quantachrome Instruments,Inc.を参照)。平均孔径(d)は、表面積(S)及び総細孔体積(Vliq)から算定される。
【0257】
【数1】
【0258】
平均粒度
所望される場合、平均粒度は、直線切片分析を用いて決定することができる。70,000倍の倍率を有するFESEM顕微鏡写真が、粒度測定に使用される。焼結本体の異なる区域から撮られた3枚又は4枚の顕微鏡写真を、各試料について使用する。各顕微鏡写真の高さに対してほぼ等しい間隔で離れて配置される10本の水平線を引く。各直線上で観察した結晶粒界切片の数を計測し、切片間の平均距離を算定するために使用する。各直線についての平均距離に1.56を乗じて粒度を決定し、この値を、各試料の全ての顕微鏡写真の全ての直線にわたって平均化する。
【0259】
粒径
粒径測定は、光の633nmの波長を有する赤色レーザーを装備した光散乱粒径分析計(Malvern Instruments Inc.,Westborough、MAから商品名「ZETA SIZER−Nano Series,Model ZEN3600」で入手)を使用して行われた。各試料は、1平方センチメートルのポリスチレン試料用キュベット内で分析した。試料用キュベットを1gの脱イオン水で満たし、次いで数滴(約0.1グラム)のジルコニア系ゾルを加えた。各試料用キュベット内の組成物(例えば、試料)を、清浄なピペットで組成物を吸い込み、組成物を試料用キュベットに戻すことを数回行うことで、混合した。次いで試料用キュベットを計器内に配置し、25℃で平衡化した。計器パラメータを次のように設定した:分散剤屈折率1.330、分散剤粘度1.0019MPa−秒、材料屈折率2.10、及び材料吸着値0.10単位。次いで自動サイズ測定手順を実行した。計器は、粒径の最適な測定値を得るために、レーザービーム位置及び減衰器設定を自動的に調整した。
【0260】
光散乱粒径分析計は、レーザーで試料を照射し、173度の角度で粒子から散乱された光の強度変動を分析した。この計器で光子相関分光法(PCS)を用いて、粒径を算定した。PCSは、変動する光の強度を使用して、液体中の粒子のブラウン運動を測定する。次いで、粒径は、測定された速度で移動する球体の直径として算定される。
【0261】
粒子による光散乱の強度は、粒子直径の6乗に比例する。Z−平均サイズ又はキュムラント平均値は、強度分布から算出された平均値であり、この計算は、粒子がモノモーダル、単分散、及び球状であるという仮定に基づく。変動する光散乱から算出される関連機能は、強度分布及びその平均である。強度分布の平均値は、粒子が球状であるという仮定に基づいて算出される。Z−平均サイズ及び強度分布平均値の両者は、小さい粒子よりも大きな粒子に対して感度に優れる。
【0262】
体積分布は、所定のサイズ範囲における粒子に相当する粒子の総体積のパーセンテージを提供する。体積−平均サイズは、体積分布の平均値に相当する粒子のサイズである。粒子の体積は、直径の3乗に比例するために、この分布は、Z−平均サイズよりも大きな粒子に対して感度で劣る。したがって、体積−平均は、一般的に、Z平均サイズよりも小さな値になる。
【0263】
密度
所望される場合、予備焼結された又は焼結された材料の密度は、アルキメデス技法により測定することができる。この測定は、密度測定キット(Mettler Instrument Corp.から「ME 33360」の名称)を用いて、精密天びん(Mettler Instrument Corp.,Hightstown,NJから「AE 160」の名称)上で行われる。
【0264】
予備焼結済材料の密度を測定するために、試料が先ず空気中で秤量される(A)。次いで、試料を真空を用いて一晩水中に浸す。浸した試料を空気中で秤量し(B)、次いで水中で秤量する(C)。水を蒸留し、脱イオン化させる。湿潤剤(Dow Chemical Co.,Danbury,CTから商品名「TERGITOL−TMN−6」で入手)の1滴を水250mlに加える。式ρ=(A/(B−C))ρ0を用いて算出する(式中、ρ0は水の密度である)。
【0265】
焼結済み材料の密度を測定するために、試料を先ず空気中で秤量し(A)、次いで水中に浸し(B)、この水を蒸留し脱イオン化させる。湿潤剤(Dow Chemical Co.,Danbury,CTから商品名「TERGITOL−TMN−6」で入手)の1滴を水250mlに加える。式ρ=(A/(A−B))ρ0を用いて算出する(式中、ρ0は水の密度である)。
【0266】
相対密度は、材料の理論密度(ρt)を参照することにより、算出することができる(ρrel=(ρ/ρt)100)。
【0267】
ビッカース硬度
所望される場合、ビッカース硬度は、以下の修正で、ISO 843−4に従って決定することができる:試料の表面を、炭化ケイ素研磨紙(P400及びP1200)を使用して研削される。試験荷重を、試料の高度レベルに調整する。使用された試験荷重は、0.2kgと2kgの間であり、それぞれの凹部に15秒間適用された。最小限10個の凹部が測定され、平均ビッカース硬度を決定する。試験は、硬度計Leco M−400−G(Leco Instrumente GmbH)で実施することができる。
【0268】
2軸曲げ強度
所望される場合、2軸曲げ強度は、以下の修正で、ISO 6872(2008)に従って決定することができる:乾式又は湿式カットソーを用いて、試料を1〜2mmの厚さのウェハーに切断する(試料の直径は、12mmと20mmの間であるべきである)。各ウェハーを、3つの鋼球の支持体上の中心に置く。この支持体の直径は、試料の直径に応じ、最大14mmを有するべきであり、試料直径よりも少なくとも1mm小さくなくてはならない。ウェハーに接触するパンチの直径は3.6mmである。パンチが、0.1mm/分の速度でウェハーの上に押される。最小限6個の試料が測定され、平均強度を決定する。この試験は、Instron 5566汎用試験機(Instron Deutschland GmbH)で実施することができる。
【0269】
試験
A 可削性
歯科用ミルブランクの可削性を、次の通りに決定した:
異なる硬度を示すミルブロックを、上記の予備焼結工程に従って熱処理条件を変化させることにより製造した(例えば、900℃と1090℃の間の温度の変動及び0と2時間の間の滞留時間の変動)。
【0270】
粉砕試験を実施するために、予備焼結済ミルブロックを、好適な粉砕フレームの中間で接着させた。ミルブランクを、Lava(商標)粉砕装置(Lava(商標)CNC 500、3M Deutschland GmbH;3M ESPE)内に配置した。ミルブランクを粉砕し、機械加工された歯科用物品を得た。いくつかの例では、Lava(商標)CNC 500の標準粉砕パラメータが使用された。いくつかの他の例では、粉砕工具の回転速度及び供給速度は、標準パラメータの45%の速度に低下された。歯科用物品として、前歯又は臼歯コーピング若しくはモノリシック臼歯が粉砕された。
【0271】
研削試験を実施するために、予備焼結ミルブランクをCerec(商標)試料用ホルダー上に接着させて、Cerec(商標)粉砕装置(inlab MCXL,Sirona GmbH,Bensheim−ドイツ)内に配置した。モノリシック臼歯は、Cerec(商標)ソフトウェア(3.8、inlab 3D)で設計した。歯を、標準化粉砕パラメータ(ParadigmC(商標)粉砕パラメータ、左バー:円筒状ステップバー12、右側バー:円筒状先細バー12)でブロックから粉砕した。
【0272】
ミルブランクの可削性は、歯科技工士によって評価された。粉砕工具の破断又は粉砕された歯科用物品の不良な粉砕品質は、評価「可削性なし」の結果となった。
【0273】
比較のために、Tosoh Comp.から得たジルコニア粉末を圧縮することによって製造された歯科用ミルブランクも分析した。
【0274】
この目的のために、レディ・トゥ・プレス粉末型Tz−3Y SB−E(Tosoh Company:日本)を、3.2〜3.15g/cmの目標密度まで軸方向圧縮成形機で圧縮した。その後、結合剤焼損を、Tmax=450℃で実施した。予備焼結工程を、所望される温度まで100K/時の加熱速度で実施し、表5に列挙される滞留温度を示した。予備焼結後のブロック寸法は、およそ19.2×18.9×23.9mmであった。
【0275】
【表4】
【0276】
結果:
ビッカース硬度、2軸曲げ強度、及び可削性に関する結果が、表5及び図1に示されている。
【0277】
本テキストに記載される歯科用ミルブランクは、Lava(商標)Frame Multi材料(3M ESPE)及び市販のジルコニア粉末を圧縮することにより製造された歯科用ミルブランクと比べて、より高いビッカース硬度及びより低い強度で機械加工され得ることが判明した。
【0278】
本テキストに記載される材料を使用して歯科用修復物を研削するための実験の第1のセットは、同様に優れた結果を示した。
【0279】
図1において、本テキストに記載される多孔質歯科用セラミック材料及び現況技術による多孔質歯科用セラミック材料の硬度及び2軸曲げ強度の依存性が示されている。
【0280】
【表5】
【0281】
B 粉砕塵埃分析
粉砕塵埃の付着を可視化するための方法は、水中で粉砕された部品(例えば、クラウン)を超音波処理することである。
【0282】
発明の歯科用ミルブランク及び比較の歯科用ミルブランク(市販のLava(商標)Plusミルブロック;3M Deutschland GmbH;3M ESPE Dental Division)を、Lava(商標)Design 7.2ソフトウェア・パッケージによって動作するLava(商標)CNC 500粉砕機上で粉砕し、クラウンを得た。発明の試料として、2時間の滞留時間で1020℃にて予備焼結された実施例G2からのミルブランクを用いた。
【0283】
Lava(商標)CNC 500機上で本発明及び比較のミルブランクを粉砕する際に生じた粉砕塵埃をクラウンの粉砕(上記記載の通りに)の後に回収した。
【0284】
体積関連粒径分布を、粒径分析器(CILAS 1064、Fa.Quantacrome GmbH&Co KG.)を用いて分析した。塵埃は、水中で湿式モードで測定され、固体粒子は、超音波処理(60秒)により分散させた。体積関連粒径分布は、100のセクションに分割された0.04と500μmとの間で分析された。結果は、密度分布q3で示される。この結果並びに本発明のブロック(太い曲線)と比較されたLava(商標)Plusミルブロック(細い曲線)の差が図2に示されている。
【0285】
1μmより小さい粒子の体積は、本発明の材料を粉砕する際に回収された塵埃内よりもLava(商標)Plus材料を粉砕する際に回収された塵埃内に多く存在することがわかる。Lava(商標)Plus材料の1μmよりも小さい粒子の体積は約28.5%であり、これとは正反対に、本発明の材料では、1μmよりも小さい粒子の体積は、わずか約6.3%である。
【0286】
所望される場合、本発明のミルブロック及び比較ミルブロックの材料を機械加工する際に得られる塵埃の塵埃付着は、次のように可視化することもできる:
機械加工された物品を、50mlのガラスビーカー中で20mlの脱塩水に浸漬させ、室温にて20秒間超音波浴中で超音波処理する(Sonorex RK100H装置、Bandelin comp.)。結果として生じた水の濁度を、付着した塵埃の量についての直接度量として用いることができる。
【0287】
上記記載のクラウンは、次の結果を生じた:本発明のミルブロックの材料:本質的に清澄な水(図3の右側の写真を参照);比較ミルブロックの材料:本質的に濁った懸濁液(図3の左側の写真を参照)。
【0288】
C 手動の研削及び粉砕工具を使用するクラウンの形状の調節
発明の試料として、1020℃にて2時間の滞留時間で予備焼結された実施例G2からのミルブランクを使用した。比較材料として、Lava(商標)Plusの20mmのミルブランク(3M ESPE)を使用した。
【0289】
粉砕された歯科用修復物(前歯の全輪郭クラウン、図4参照)を、ハンドピース(「K4」、KaVo comp.)内に固定されたクロスカットカーバイドバー(「Figure 198−Cut40」、Horico comp.)で、連結するスプルーを20,000rpmで注意深く切断することによって、それぞれのミルブロックから取り外し(i)、中間体粉砕クラウンを得た(図5参照)。続いて、クラウンの表面上に残っているスプルーの残物を、同じ工具で、同一の回転速度にて平坦かつ滑らかにした(ii)。切縁及び歯頚区域における輪郭の微細な特徴を個人の特徴に調整するために、同一の工具及び回転速度を使用し(iii)、所望の最終的な高度に画定された形状を有するクラウンをもたらした(図6参照)。
【0290】
手動調節プロセス工程(i)〜(iii)を行う際に、本発明のミルブロックの材料は、取り扱いやすく、修復物の所望の形状及び表面特徴に調整しやすかった。
【0291】
本発明のミルブランクの材料は、再加工中に彫刻加工可能なステアタイト(石鹸石)に整合する類似性を示したが、一方比較のミルブロックの材料は、より粉っぽい整合性を呈した。
【0292】
工具を用いて比較ミルブロックから得た歯科用修復物の表面を手動成形することは、本発明のミルブロックの材料の成形に比べてより困難であった。例えば、再現可能な方法で所望の特徴を得るために手で加えられた力を調整することはより困難であった。
【0293】
このように、未経験の歯科技工士であっても、現況技術の材料を使用する場合よりも本発明のミルブランクの材料を使用する場合に、歯科修復物の高度に画定された表面を得ることは容易かった。
【0294】
本発明のミルブランクの材料の改善された適応性は、条件を標準化して切込みを行う際の、溝/ノッチの小さくなった深さによっても立証することができる。この差を定量化するために、次の実験が行われた。
【0295】
比較材料として、Lava(商標)Plusの20mmのミルブランク(3M ESPE)を使用した。
【0296】
実施例G4からのミルブロックを、上記の予備焼結手順に従って、1025℃で2時間予備焼結した。このミルブロックを、17mmの直径及び1.7mmの高さのディスクに鋸切断した。付加重りなく試料の表面を15秒間運転するレーザーブレード(Martor 37/0.1mm型式)を用いて、ノッチを形成させた。使用した装置は、ノッチング装置(EXAKT Apparatebau GmbH、6010型、シリーズ番号0012)であり、適用されたノッチング速度は、装置速度スケールのステージ1であった。
【0297】
研削されたノッチのノッチ深さ及び半径を測定するために、レーザー走査顕微鏡(Keyence VK9710)を使用した。VK−9710は、レーザービーム及びX−Yスキャン光学系を用いて、顕微鏡の視野を走査する。受光素子は、視野内の各ピクセルからの反射光線を検出する。Z軸内の対物レンズを駆動させ、繰り返し走査することで、Z位置に基づいて反射光線強度を得る。ピーク位置にピント合わせしながら、高さ情報が得られ、反射光線強度が検出される。単一面内の各ピクセル(1024×768ピクセル)が、Z位置に基づいて反射光線強度(強度)についてデータを得る。Z位置における反射光線強度及びその色情報が得られ、3D−データに組み合わされる。
【0298】
試料の走査は、次のパラメータで行われた:50倍の光学倍率、「スーパーファイン」の品質、「表面分布」のモード、及び0.5μmのz−ステージ。測定線は、ノッチに対して垂直に位置合わせされた。測定線は、ノッチの断面形を表す。ノッチ深さを、試料の表面レベル及びノッチ断面形のノッチの最も深いレベルを示す2点をマーキングすることによって測定した(セクタ法)。ノッチ研削半径を、上述のノッチ断面形の上に円を嵌合することによって(3点法)決定した。研削されたノッチのノッチ深さ及び半径は、全ての試料について3回決定された。測定は、ノッチの異なる位置で3回繰り返された。結果は表6に示されている。
【0299】
【表6】

発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[14]に記載する。
[1]
多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランクであって、
前記多孔質予備焼結ジルコニア材料が、IUPAC分類に従うIV型等温線のN吸着及び/又は脱着を示し、
前記多孔質予備焼結材料が、約25〜約150のビッカース硬度を有し、
前記歯科用ミルブランクが、機械加工装置に前記歯科用ミルブランクを可逆的に取り付ける手段を備える、
歯科用ミルブランク。
[2]
前記多孔質予備焼結ジルコニア材料が、次の特徴:
ヒステリシスループを有する窒素吸着及び脱着等温線を示すことと、
IUPAC分類に従うH1型のヒステリシスループを示すことと、
0.70〜0.95のp/p範囲のヒステリシスループを有するN吸着及び脱着等温線を示すことと、
平均連結孔径が、約10〜約100nmであることと、
平均粒径が、約100nm未満であることと、
BET表面積が、約10〜約200m/gであることと、
二軸曲げ強度が、約10〜約40であることと、
x、y、z寸法が、少なくとも約5mmであることと、
ビッカース強度が、約25〜約150であることと、
密度が、理論密度の約30〜約95%であることと、
等方性収縮挙動を有することと、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、項目1に記載の歯科用ミルブランク。
[3]
前記多孔質予備焼結ジルコニア材料が、次の特徴:
ZrO含量が、約70〜約98モル%であることと、
HfO含量が、約0〜約2モル%であることと、
含量が、約1〜約15モル%であることと、
Al含量が、約0〜約1モル%であることと、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、項目1又は2に記載の歯科用ミルブランク。
[4]
ディスク又はブロックの形状を有する、項目1〜3のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[5]
機械加工装置に前記歯科用ミルブランクを可逆的に取り付けるための前記手段が、1または2以上の溝、1または2以上のノッチ、1または2以上の凹部、1または2以上の型、1または2以上のフレーム、1または2以上の自然の歯牙、及びこれらの組み合わせから選択される、項目1〜4のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[6]
前記多孔質予備焼結ジルコニア材料が、エアロゲルを熱処理する工程を含むプロセスにより得られる、項目1〜5のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[7]
前記エアロゲルが、次の特徴:
約2nm〜約50nmの範囲の平均一次粒子径を有する結晶質ジルコニア粒子を含むことと、
結晶質ジルコニア粒子の含量が、少なくとも約85モル%であることと、
100m/g〜300m/gの範囲の表面積を有することと、
少なくとも約3重量%の有機含量を有することと、
の少なくとも1つにより特徴付けられる、項目1〜6のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[8]
前記エアロゲルが、約900〜約1100℃の温度に熱処理されている、項目6又は7に記載の歯科用ミルブランク。
[9]
前記多孔質ジルコニア材料が、
結晶質金属酸化物粒子を含むジルコニアゾルを用意する工程と、
所望により前記第1のジルコニアゾルを濃縮して、濃縮ジルコニアゾルを用意する工程と、
ラジカル反応性表面改質剤を前記ジルコニアゾルに加えて前記ジルコニアゾルの表面改質粒子を用意し、ラジカル反応開始剤を前記ジルコニアゾルの前記ラジカル重合性表面改質粒子に加える工程と、
前記ジルコニアゾルを成形型に注型成形して注型ジルコニアゾルを用意する工程と、
前記ジルコニアゾルのラジカル重合性表面改質粒子を硬化させてゲルを形成する工程と、
所望により、存在する場合、水を溶媒交換を介して前記ゲルから除去して、少なくとも部分的に脱水された、溶媒含有ゲルを用意する工程と、
存在する場合、溶媒を、好ましくは超臨界抽出により前記ゲルから除去して、エアロゲルを用意する工程と、
所望により、前記エアロゲルをより小さな断片に切断する工程と、
前記エアロゲルを熱処理する工程と、
を含むプロセスにより得られる、項目1〜8のいずれかに記載の歯科用ミルブランク。
[10]
ジルコニア歯科用物品を製造するプロセスであって、
項目1〜9のいずれかに記載される多孔質予備焼結ジルコニア材料を含む歯科用ミルブランクを用意する工程と、
前記歯科用ミルブランクを機械加工装置内に配置する工程と、
前記多孔質ジルコニア材料を機械加工する工程と、を含むプロセス。
[11]
前記機械加工工程が、フライス削り装置、穿孔装置、切削装置、削り出し装置、又は研削装置で行われる、項目10に記載のプロセス。
[12]
前記機械加工された多孔質ジルコニア材料を焼結する追加の工程を含む、項目10又は11に記載のプロセス。
[13]
項目10〜12のいずれかに記載のプロセスによって得られる歯科用物品。
[14]
クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、べニア、前装、コーピング、クラウン・ブリッジフレームワーク、インプラント、橋脚歯、歯科矯正装置、並びにこれらの一部の形状を有する、項目13に記載の歯科用物品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6