特許第6321648号(P6321648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321648単純ヘルペスウイルス1と2を検出するための組成物と方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321648
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】単純ヘルペスウイルス1と2を検出するための組成物と方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20180423BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20180423BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   C12Q1/68ZNA
   C12Q1/70
   C12N15/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-526990(P2015-526990)
(86)(22)【出願日】2013年8月15日
(65)【公表番号】特表2015-532590(P2015-532590A)
(43)【公表日】2015年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2013067087
(87)【国際公開番号】WO2014027066
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】13/588,943
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】シャオニン ウー
(72)【発明者】
【氏名】カレン ヤング
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−079576(JP,A)
【文献】 特表平04−500007(JP,A)
【文献】 国際公開第02/061390(WO,A1)
【文献】 AB070848,DDBJ,2002年 8月 3日
【文献】 AB009258,DDBJ,2007年11月12日
【文献】 AB009261,DDBJ,2007年11月12日
【文献】 AB442016,DDBJ,2009年 2月10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
UniProt/GeneSeq/DDBJ
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の核酸の存在または不在を検出する方法であって、
- サンプルを複数セットのHSV-1特異的オリゴヌクレオチド・プライマーおよびHSV-2特異的オリゴヌクレオチド・プライマーと接触させ、HSV-1および/またはHSV-2の核酸がそのサンプル中に存在する場合に1種類以上の増幅産物を生成させる増幅ステップを実施し;
- その1種類以上の増幅産物を、複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよびHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブと接触させるハイブリダイゼーション・ステップを実施し;
- その1種類以上の増幅産物の存在または不在を検出する操作を含んでいて、その1種類以上の増幅産物の存在は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2の核酸が存在していることを示し、その1種類以上の増幅産物の不在は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2の核酸が存在していないことを示しており、
前記複数セットのHSV-1特異的オリゴヌクレオチド・プライマーおよびHSV-2特異的オリゴヌクレオチド・プライマーは、
- HSV-1 DNAポリメラーゼB(HSV-1 Pol)遺伝子標的とHSV-1チミジンキナーゼC(HSV-1 TK)遺伝子標的を特異的に増幅する少なくとも2セットのHSV-1特異的オリゴヌクレオチド・プライマーと;
- HSV-2チミジンキナーゼC(HSV-2 TK)遺伝子標的とHSV-2糖タンパク質B(HSV-2 gB)遺伝子標的を特異的に増幅する少なくとも2セットのHSV-2特異的オリゴヌクレオチド・プライマーを含んでいて、
前記複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよびHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブは、
- HSV-1 Pol増幅産物とHSV-1 TK増幅産物に特異的な少なくとも2つのHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブと;
- HSV-2 TK増幅産物とHSV-2 gB増幅産物に特異的な少なくとも2つのHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブを含んでいる方法。
【請求項2】
- HSV-1 Pol遺伝子標的を増幅するための前記HSV-1特異的プライマーのセットが、配列番号1と2を含む核酸配列、またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;
- HSV-1 TK遺伝子標的を増幅するための前記HSV-1特異的プライマーのセットが、配列番号4と5を含む核酸配列、またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;
- HSV-2 TK遺伝子標的を増幅するための前記HSV-2特異的プライマーのセットが、配列番号7と8を含む核酸配列、またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;
- HSV-2 gB遺伝子標的を増幅するための前記HSV-2特異的プライマーのセットが、配列番号10と11を含む核酸配列、またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;
- HSV-1 Pol増幅産物を検出するための前記検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブが、配列番号3を含む核酸配列、またはその相補配列を持ち;
- HSV-1 TK増幅産物を検出するための前記検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブが、配列番号6を含む核酸配列、またはその相補配列を持ち;
- HSV-2 TK増幅産物を検出するための前記検出可能なHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブが、配列番号9を含む核酸配列、またはその相補配列を持ち;
- HSV-2 gB増幅産物を検出するための前記検出可能なHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブが、配列番号12を含む核酸配列、またはその相補配列を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよびHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブのそれぞれに、ドナー蛍光部分とそれに対応するアクセプタ蛍光部分を標識し;前記検出ステップが、1つ以上のHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよび/またはHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブのドナー蛍光部分とアクセプタ蛍光部分の間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の存在または不在を検出する操作を含んでいて、蛍光の存在または不在が、サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の核酸の存在または不在を示している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記増幅ステップで5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドナー蛍光部分と前記アクセプタ蛍光部分が、前記オリゴヌクレオチド・プローブ上で互いにヌクレオチド5個以内の距離に存在する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記HSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよび/またはHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブが、二次構造の形成を可能にする核酸配列を含んでいて、その二次構造が形成される結果として前記ドナー蛍光部分と前記アクセプタ蛍光部分が空間的に近接する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アクセプタ蛍光部分が消光物質である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
HSV-1および/またはHSV-2の核酸の存在または不在を検出するため、
- HSV-1 Pol遺伝子標的およびHSV-1 TK遺伝子標的の増幅と、HSV-2 TK遺伝子標的およびHSV-2 gB遺伝子標的の特異的増幅のための複数セットのHSV-1特異的オリゴヌクレオチド・プライマーおよびHSV-2特異的オリゴヌクレオチド・プライマーと;
- HSV-1 Pol増幅産物およびHSV-1 TK増幅産物の検出と、HSV-2 TK増幅産物およびHSV-2 gB増幅産物の検出に特異的な複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよびHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブを備えるキット。
【請求項9】
HSV-1 Pol遺伝子標的を増幅するための前記HSV-1特異的プライマーのセットが、配列番号1と2を含む核酸配列、またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;HSV-1 TK遺伝子標的を増幅するための前記HSV-1特異的プライマーのセットが、配列番号4と5を含む核酸配列、またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;HSV-2 TK遺伝子標的を増幅するための前記HSV-2特異的プライマーのセットが、配列番号7と8を含む核酸配列、またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;HSV-2 gB遺伝子標的を増幅するための前記HSV-2特異的プライマーのセットが、配列番号10と11を含む核酸配列、またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み、
HSV-1 Pol増幅産物を検出するための前記検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブが、配列番号3を含む核酸配列またはその相補配列を持ち;HSV-1 TK増幅産物を検出するための前記検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブが、配列番号6を含む核酸配列またはその相補配列を持ち;HSV-2 TK増幅産物を検出するための前記検出可能なHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブが、配列番号9を含む核酸配列またはその相補配列を持ち;そしてHSV-2 gB増幅産物を検出するための前記検出可能なHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブが、配列番号12を含む核酸配列またはその相補配列を持つ、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよびHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブの各オリゴヌクレオチド・プローブが、ドナー蛍光部分とそれに対応するアクセプタ蛍光部分を備える、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記アクセプタ蛍光部分が消光物質である、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
ヌクレオシド三リン酸と、核酸ポリメラーゼと、その核酸ポリメラーゼが機能する上で必要な緩衝液とをさらに備える、請求項9〜11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
配列番号1及び2、又はその相補配列の核酸配列を有するHSV-1 Pol遺伝子の増幅のためのプライマーセット;
配列番号4及び5、又はその相補配列の核酸配列を有するHSV-1 TK遺伝子の増幅のためのプライマーセット;
配列番号7及び8、又はその相補配列の核酸配列を有するHSV-2 TK遺伝子の増幅のためのプライマーセット;及び
配列番号10及び11、又はその相補配列の核酸配列を有するHSV-2 gB遺伝子の増幅のためのプライマーセット
を含む組成物。
【請求項14】
100以下のヌクレオチドを有し、かつ
配列番号3及び6を有する核酸配列、又はその相補配列;及び
配列番号9及び12を有する核酸配列、又はその相補配列
を含む検出可能に標識されたオリゴヌクレオチドプローブをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドプローブが、40個以下のヌクレオチドを有する、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスを診断する分野に関するものであり、より詳細には、単純ヘルペスウイルス1および/または2の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
単純ヘルペスウイルス1と2(HSV-1とHSV-2)は、ヒト・ヘルペスウイルス1と2(HHV-1とHHV-2)としても知られており、エンベロープに囲まれた二本鎖DNAウイルスであって、ヘルペスウイルスのファミリーであるヘルペスウイルス科に属する。一般に、HSVウイルスは、ヒトの皮膚または口の粘膜(HSV-1)と生殖器(HSV-2)に感染する。HSVウイルスは、最初に感染した後に生涯にわたって潜伏感染状態を確立していて、潜伏状態から再活性化して新たな突発を起こすことができる。HSVに感染すると、一般に、皮膚または粘膜の表面にわずかな水疱が出現し、その後ウイルスが眠った状態になって感染した領域の神経細胞の中に留まる。ウイルスは再活性化のサイクルを経る間に神経繊維を通って移動して皮膚に戻り、皮膚の以前に感染したのと同じ領域に水疱を生じさせる。水疱が形成されないケースもある。
【0003】
HSVはさまざまな疾患(例えば失明、脳炎)の原因である。脳炎では、治療しないままにしておくと死亡率が70%にも達するのに対し、治療を受けた人では死亡率はわずかに19%である。治療を受けた患者の約38%が完全に治癒する。これは、初期段階でHSV感染を診断することの重要性を示している。HSV-1はたいてい成人の脳炎の原因であるのに対し、HSV-2は新生児の脳炎の原因となることがより一般的である。後者には母親の生殖器からの感染が関係している。さらに、HSV-2は、社会で最も一般的な性感染病の原因の1つである。HSVに関連する脳炎の死亡率は、他のどのタイプの脳炎の死亡率よりも大きく、1年に百万人当たり1〜4人である。症状は多彩であり、発熱、頭痛、てんかん、意識レベルの変化、性格の変化などが挙げられる。
【0004】
伝統的に、HSV-1は口部感染症の原因であるのに対し、HSV-2は生殖器感染症の原因であると考えられている。しかしHSV-1は原発性陰部ヘルペスの原因であることのほうが多く、多くの先進国ではHSV-2と同時に感染することがしばしばある。その結果、両方のウイルスを同時に検出して識別することが可能なPCRアッセイを実施できることが非常に重要になっている。この新しいHSVアッセイは、単一の反応試験管の中で実現できる設計にされる。
【0005】
HSV-1および/またはHSV-2(HSV-1/2)に感染したことの診断は、通常は、適切な臨床試料に関する細胞培養を利用してなされるが、これは時間を要するとともに労働集約的である。それに加え、HSV-1/2感染の血清学的診断には十分な感度と特異度がない。したがってこの分野では、両方のタイプのHSVを感度よく特異的に検出するための迅速かつ信頼性のある方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施態様は、生物サンプル中または非生物サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の核酸の存在または不在を迅速に検出する方法(例えば単一の試験管内でのリアル-タイム・ポリメラーゼ連鎖反応によるHSV-1および/またはHSV-2の核酸の多重検出)に関する。実施態様には、HSV-1および/またはHSV-2の核酸の存在または不在を検出するための方法として、増幅ステップとハイブリダイゼーション・ステップを含むことができる少なくとも1つのサイクリング・ステップを実施する操作を含む方法が含まれる。さらに、実施態様には、オリゴヌクレオチド・プライマーと、オリゴヌクレオチド・プローブと、HSV-1とHSV-2の一方だけの感染、またはHSV-1とHSV-2の同時感染を単一の試験管の中で検出する設計のキットが含まれる。検出法は、HSV-1のウイルスDNAポリメラーゼB(HSV-1 Pol)とHSV-1のチミジンキナーゼC(HSV-1 TK)の遺伝子を標的にすると同時に、HSV-2のチミジンキナーゼC(HSV-2 TK)とHSV-2の糖タンパク質B(HSV-2 gB)の遺伝子も標的にするように設計されている。そうすることで、1回だけの試験でHSV-1および/またはHSV-2の感染を検出して識別することが可能になる。
【0007】
一実施態様では、サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の核酸の存在または不在を検出する方法が提供される。この方法は、複数セットのHSV-1オリゴヌクレオチド・プライマーとHSV-2オリゴヌクレオチド・プライマーをサンプルに接触させ、HSV-1および/またはHSV-2の核酸が少しでもそのサンプル中に存在する場合には1種類以上の増幅産物を生成させる増幅ステップを実施し;その1種類以上の増幅産物に複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブとHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブを接触させるハイブリダイゼーション・ステップを実施し;その1種類以上の増幅産物の存在または不在を検出する操作を含んでいて、その1種類以上の増幅産物の存在は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2の核酸が存在していることを示し、その1種類以上の増幅産物の不在は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2の核酸が存在していないことを示している。この方法では、複数セットのHSV-1オリゴヌクレオチド・プライマーとHSV-2オリゴヌクレオチド・プライマーは、HSV-1 Pol遺伝子標的とHSV-1 TK遺伝子標的を増幅するHSV-1オリゴヌクレオチド・プライマーのセットと;HSV-2 TK遺伝子標的とHSV-2 gB遺伝子標的を増幅するHSV-2オリゴヌクレオチド・プライマーのセットを含んでいて、複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブとHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブは、HSV-1 Pol増幅産物とHSV-1 TK増幅産物に特異的な少なくとも2つのHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブと;HSV-2 TK増幅産物とHSV-2 gB増幅産物に特異的な少なくとも2つのHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブを含んでいる。
【0008】
一実施態様では、HSV-1 Pol遺伝子標的を増幅するためのオリゴヌクレオチド・プライマーのセットは、配列ID番号1と2を含む核酸配列またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;HSV-1 TK遺伝子標的を増幅するためのオリゴヌクレオチド・プライマーのセットは、配列ID番号4と5を含む核酸配列またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;HSV-2 TK遺伝子標的を増幅するためのオリゴヌクレオチド・プライマーのセットは、配列ID番号7と8を含む核酸配列またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含み;HSV-2 gB遺伝子標的を増幅するためのオリゴヌクレオチド・プライマーのセットは、配列ID番号10と11を含む核酸配列またはその相補配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含んでいる。さらに、HSV-1 Pol増幅産物を検出するための検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブは、配列ID番号3を含む核酸配列またはその相補配列を持ち;HSV-1 TK増幅産物を検出するための検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブは、配列ID番号6を含む核酸配列またはその相補配列を持ち;HSV-2 TK増幅産物を検出するための検出可能なHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブは、配列ID番号9を含む核酸配列またはその相補配列を持ち;HSV-2 gB増幅産物を検出するための検出可能なHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブは、配列ID番号12を含む核酸配列またはその相補配列を持つ。この方法の別の一実施態様では、複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブとHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブのそれぞれに、ドナー蛍光部分とそれに対応するアクセプタ蛍光部分が標識されていて;検出ステップは、HSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよび/またはHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブのうちの1つ以上のプローブのドナー蛍光部分とアクセプタ蛍光部分の間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の存在または不在を検出する操作を含んでおり、蛍光の存在または不在は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2の核酸が存在すること、または存在しないことを示す。
【0009】
本発明の別の実施態様により、配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12いずれかの核酸配列またはその相補配列から選択した核酸配列を含むかその核酸配列からなるオリゴヌクレオチドが提供される。このオリゴヌクレオチドは100個以下のヌクレオチドを有する。別の1つの特徴では、本発明により、配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12のいずれか、またはその相補配列との配列一致度が少なくとも70%(例えば少なくとも75%、80%、85%、90%、95%など)であるオリゴヌクレオチドが提供される。このオリゴヌクレオチドは100個以下のヌクレオチドを有する。一般に、これらオリゴヌクレオチドを、これらの実施態様においてプライマーの核酸やプローブの核酸などに用いることができる。これら実施態様のいくつかでは、オリゴヌクレオチドは40個以下のヌクレオチド(例えば35個以下のヌクレオチド、または30個以下のヌクレオチド、など)を有する。いくつかの実施態様では、オリゴヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドを少なくとも1個含んでいる。それは、例えば、修飾されていないヌクレオチドと比べて核酸のハイブリダイゼーションの安定性を変えるためである。場合によっては、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つ以上の検出可能な標識を含んでいる。いくつかの実施態様では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの標識部分および/または少なくとも1つ消光物質部分を含んでいる。いくつかの実施態様では、オリゴヌクレオチドは、保存的修飾をされた変異を少なくとも1つ含んでいる。ある特定の核酸配列の“保存的修飾をされた変異”またはより簡単に“保存的変異”は、同じか実質的に同じアミノ酸配列をコードしている核酸を意味し、核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合には、実質的に同じ配列を意味する。当業者であれば、コードされた配列中の単一のアミノ酸またはわずかな割合(典型的には5%未満、より典型的には4%未満、2%未満、1%未満)のアミノ酸を変化させる個々の置換、欠失、付加は、“保存的修飾をされた変異”であることがわかるであろう。その変異の結果として、1個のアミノ酸の欠失、または1個のアミノ酸の付加、または化学的に似た1個のアミノ酸による1個のアミノ酸の置換が起こる。
【0010】
本発明の別の実施態様により、HSV-1 DNAポリメラーゼB(HSV-1 Pol)遺伝子標的とHSV-1チミジンキナーゼC(HSV-1 TK)遺伝子標的から1種類以上の増幅産物を生成させるのに適していて、配列ID番号1、2、4、5、またはその相補配列から選択した核酸配列を含むかその核酸配列からなるオリゴヌクレオチド・プライマーのセットを含む組成物が提供される。これらオリゴヌクレオチド・プライマーは100個以下のヌクレオチドを有する。本発明の別の一実施態様では、HSV-2チミジンキナーゼC(HSV-2 TK)遺伝子標的とHSV-2糖タンパク質B(HSV-2 gB)遺伝子標的から1種類以上の増幅産物を生成させるのに適していて、配列ID番号7、8、10、11、またはその相補配列から選択した核酸配列を含むかその核酸配列からなるオリゴヌクレオチド・プライマーのセットを含む組成物が提供される。これらオリゴヌクレオチド・プライマーは100個以下のヌクレオチドを有する。いくつかの実施態様では、組成物は、配列ID番号1、2、4、5、7、8、10、11、またはその相補配列から選択した核酸配列を含むかその核酸配列からなるオリゴヌクレオチド・プライマーのセットを含んでいる。これらオリゴヌクレオチド・プライマーは100個以下のヌクレオチドを有する。本発明のさらに別の一実施態様では、HSV-1 DNAポリメラーゼB(HSV-1 Pol)増幅産物とHSV-1チミジンキナーゼC(HSV-1 TK)増幅産物の検出に適していて、配列ID番号3と6、またはその相補配列を含む核酸配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチド・プローブのセットを含む組成物が提供される。これらオリゴヌクレオチド・プローブは100個以下のヌクレオチドを有する。さらに別の一実施態様では、HSV-2チミジンキナーゼC(HSV-2 TK)増幅産物とHSV-2糖タンパク質B(HSV-2 gB)増幅産物の検出に適していて、配列ID番号9と12、またはその相補配列を含む核酸配列を有する検出可能なオリゴヌクレオチド・プローブのセットを含む組成物が提供される。これらオリゴヌクレオチド・プローブは100個以下のヌクレオチドを有する。いくつかの実施態様では、組成物は、配列ID番号3、6、9、12またはその相補配列から選択した核酸配列を含むかその核酸配列からなるオリゴヌクレオチド・プローブのセットを含んでいる。これらオリゴヌクレオチド・プローブは100個以下のヌクレオチドを有する。
【0011】
1つの特徴では、増幅において、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を用いることができる。例えば第1と第2の蛍光部分は、オリゴヌクレオチド・プローブ上で互いにヌクレオチド5個以内の距離に存在することができる。別の1つの特徴では、HSV-1オリゴヌクレオチド・プローブとHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブは、二次構造の形成を可能にする核酸配列を含んでいる。そのような二次構造の形成によって一般に第1の蛍光部分と第2の蛍光部分が空間的に近接する。この方法のいくつかの実施態様では、オリゴヌクレオチド・プローブ上の第2の蛍光部分を消光物質にすることができる。
【0012】
さらに別の特徴では、本発明により、個人からの生物サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の存在または不在を検出する方法が提供される。このような方法は、一般に、増幅ステップと染料結合ステップを含む少なくとも1つのサイクリング・ステップを実施する操作を含んでいる。典型的には、増幅ステップは、サンプルをHSV-1/2プライマーの複数のペアと接触させ、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2の核酸分子が存在している場合には1種類以上のHSV-1/2増幅産物を生成させる操作を含んでおり、染料結合ステップは、HSV-1/2増幅産物を二本鎖DNA結合染料と接触させる操作を含んでいる。このような方法は、増幅産物への二本鎖DNA結合染料の結合の存在または不在を検出する操作も含んでおり、結合の存在は、サンプル中にHSV-1/2が存在することを示しており、結合の不在は、サンプル中にHSV-1/2が存在しないことを示している。代表的な二本鎖DNA結合染料は臭化エチジウムである。それに加え、このような方法は、HSV-1/2増幅産物と二本鎖DNA結合染料の間の融解温度を求める操作も含むことができる。融解温度により、HSV-1および/またはHSV-2の存在または不在が確認される。
【0013】
さらに別の一実施態様では、HSV-1および/またはHSV-2の1つ以上の核酸の存在または不在を検出するキットが提供される。このキットは、HSV-1 Pol遺伝子標的およびHSV-1 TK遺伝子標的の増幅と、HSV-2 TK遺伝子標的およびHSV-2 gB遺伝子標的の増幅に特異的な複数セットのHSV-1オリゴヌクレオチド・プライマーおよびHSV-2オリゴヌクレオチド・プライマーと;HSV-1 Pol増幅産物およびHSV-1 TK増幅産物の検出と、HSV-2 TK増幅産物およびHSV-2 gB増幅産物の検出に特異的な複数の検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブおよびHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施態様では、キットは、配列ID番号1と2、またはその相補配列を含む核酸配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含む、HSV-1 Pol遺伝子標的を増幅するためのプライマー・セットと;配列ID番号4と5、またはその相補配列を含む核酸配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含む、HSV-1 TK遺伝子標的を増幅するためのプライマー・セットと;配列ID番号7と8、またはその相補配列を含む核酸配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含む、HSV-2 TK遺伝子標的を増幅するためのプライマー・セットと;配列ID番号10と11、またはその相補配列を含む核酸配列を有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含む、HSV-2 gB遺伝子標的を増幅するためのプライマー・セットと;配列ID番号3またはその相補配列を含む核酸配列を持つ、HSV-1 Pol増幅産物を検出するための検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブと;配列ID番号6またはその相補配列を含む核酸配列を持つ、HSV-1 TK増幅産物を検出するための検出可能なHSV-1オリゴヌクレオチド・プローブと;配列ID番号9またはその相補配列を含む核酸配列を持つ、HSV-2 TK増幅産物を検出するための検出可能なHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブと;配列ID番号12またはその相補配列を含む核酸配列を持つ、HSV-2 gB増幅産物を検出するための検出可能なHSV-2オリゴヌクレオチド・プローブを含んでいる。
【0015】
1つの特徴では、キットは、ドナー蛍光部分とそれに対応するアクセプタ蛍光部分ですでに標識されたオリゴヌクレオチド・プローブを含むこと、またはプローブを標識するための蛍光体部分を含むことができる。いくつかの特徴では、アクセプタ蛍光部分は消光物質である。キットは、ヌクレオシド三リン酸と、核酸ポリメラーゼと、その核酸ポリメラーゼが機能する上で必要な緩衝液も含むことができる。キットは、オリゴヌクレオチド・プライマーとオリゴヌクレオチド・プローブと蛍光体部分を用いてサンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の核酸の存在または不在を検出するための包装挿入物と指示書も含むことができる。
【0016】
特に断わらない限り、この明細書で用いるあらゆる技術用語と科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味である。本発明の実施または試験にはこの明細書に記載したのと似ているか同等な方法と材料を使用できるが、適切な方法と材料を以下に記載する。それに加え、材料、方法、実施例は、単なる例示であり、本発明を制限する意図はない。
【0017】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細を添付の図面と以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、利点は、それらの図面および詳細な説明からと、請求項から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】HSV-1 TK-C領域でうまく機能したプライマーを用いた実験のPCR増殖曲線を示す。
図1B】HSV-2 TK-C領域でうまく機能したプライマーを用いた実験のPCR増殖曲線を示す。
図2】HSV TK-C領域に関するPCR産物のゲル電気泳動を示す。
図3A】HSV-1 TK-B領域のためのプライマーを用いた実験のPCR増殖曲線を示す。
図3B】HSV-2 TK-B領域のためのプライマーを用いた実験のPCR増殖曲線を示す。
図4】HSV TK-B領域に関するPCR産物のゲル電気泳動を示す。
図5】1回のPCRにつき10vp(ウイルス粒子)の場合の3通りのHSV-1アッセイ(Pol-B、TK-A、TK-C)の増殖曲線を示す。
図6】1回のPCRにつき10vp(ウイルス粒子)の場合の3通りのHSV-2アッセイ(gB3、Pol-B、TK-C)の増殖曲線を示す。
図7】Probit分析による3つの独立なHSV-1アッセイ(Pol-B、TK-A、TK-C)のアッセイ分析感度を示す。
図8】Probit分析による3つの独立なHSV-2アッセイ(gB3、Pol-B、TK-C)のアッセイ分析感度を示す。
図9A】両方の標的が存在しているときの共通PCRプライマーと標的の競合を示す。
図9B】両方の標的が存在しているときの共通PCRプライマーと標的の競合を示す。
図10A】両方の標的が存在しているときの単一の共通PCRプライマーと標的の競合を示す。
図10B】両方の標的が存在しているときの単一の共通PCRプライマーと標的の競合を示す。
図11A】両方の標的が存在しているときの型特異的PCRプライマーと標的の競合を示す。
図11B】両方の標的が存在しているときの型特異的PCRプライマーと標的の競合を示す。
図12A】HSV-1プラスミドを用いた二重標的HSV-1/2アッセイの交差反応性分析を示す。
図12B】HSV-1プラスミドを用いた二重標的HSV-1/2アッセイの交差反応性分析を示す。
図13A】HSV-2プラスミドを用いた二重標的HSV-1/2アッセイの交差反応性分析を示す。
図13B】HSV-2プラスミドを用いた二重標的HSV-1/2アッセイの交差反応性分析を示す。
図14】密接に関係した他のヘルペスウイルスを用いたHSV-1/2アッセイの交差反応性の表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
核酸の増幅によってHSV-1および/またはHSV-2の感染を診断することで、ウイルス感染を迅速かつ正確に検出するための方法が提供される。サンプル中のHSV-1/2を検出するためのリアル-タイム・アッセイをこの明細書で説明する。HSV-1/2を検出するためのプライマーとプローブが、そのようなプライマーとプローブを含む製品またはキットとして提供される。リアル-タイムPCRでのHSV-1/2の検出感度が他の方法と比較して向上していると同時に、リアル-タイムPCRの特徴が改善されている(サンプル含有量、増幅された産物のリアル-タイム検出など)ため、この技術を実現して臨床実験室でHSV-1/2感染を定型作業で診断することが可能になる。
【0020】
この方法は、サンプルからのHSV-1 PolとHSV-1 TKという核酸分子遺伝子標的の1つ以上の部分と、HSV-2 TKとHSV-2 gBという核酸分子遺伝子標的の1つ以上の部分を、複数ペアのプライマー(HSV-1 Polプライマー、HSV-1 TKプライマー、HSV-2 TKプライマー、HSV-2 gBプライマーが含まれる)を用いて増幅する操作を含む少なくとも1つのサイクリング・ステップを実行する操作を含むことができる。この明細書では、“HSV-1 Polプライマー”、“HSV-1 TKプライマー”、“HSV-2 TKプライマー”、“HSV-2 gBプライマー”は、それぞれHSV-1 Pol、HSV-1 TK、HSV-2 TK、HSV-2 gBをコードしている核酸配列に特異的にアニーリングして適切な条件下で合成を開始させる出発点となるオリゴヌクレオチド・プライマーを意味する。上記のHSV-1プライマーとHSV-2プライマーのそれぞれは、HSV-1 Pol標的核酸分子、HSV-1 TK標的核酸分子、HSV-2 TK標的核酸分子、HSV-2 gB標的核酸分子それぞれの内部にある標的、またはこれら各標的核酸分子に近接した標的にアニーリングするため、各増幅産物の少なくとも一部が、各標的に対応する核酸配列を含む。サンプル中にHSV-1 Polの核酸、HSV-1 TKの核酸、HSV-2 TKの核酸、HSV-2 gBの核酸のうちの1種類以上が存在していると、HSV-1 Pol増幅産物、HSV-1 TK増幅産物、HSV-2 TK増幅産物、HSV-2 gB増幅産物のうちの1種類以上が生成するため、HSV-1 Pol増幅産物、HSV-1 TK増幅産物、HSV-2 TK増幅産物、HSV-2 gB増幅産物のうちの1種類以上の存在は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2の核酸が存在していることを示す。増幅産物は、HSV-1 Pol、HSV-1 TK、HSV-2 TK、HSV-2 gBの検出が可能な1種類以上のプローブと相補的な核酸配列を含んでいるはずである。各サイクリング・ステップは、増幅ステップと、ハイブリダイゼーション・ステップと、検出ステップを含んでおり、これらのステップの間にサンプルをHSV-1 Pol、HSV-1 TK、HSV-2 TK、HSV-2 gBの検出が可能な1種類以上のプローブと接触させて、サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の存在または不在を検出する。
【0021】
HSV-1/2検出法の実施態様により、単一のPCR用試験管の中でHSV-1とHSV-2の両方の型のウイルスを検出して識別することに加え、標的を検出するための二重標的アプローチを利用することができる。この二重標的アプローチにより、いくつかの利点が提供される。例えばHSV-1/2プライマーとHSV-1/2プローブが結合する部位に未知の突然変異が起こる可能性がある。そのためHSV-1/2検出アッセイの性能が損なわれる可能性がある。本発明の実施態様では、そのようなリスクを最小にするため、HSV-1とHSV-2の両方の型のウイルスで2つの別々の遺伝子領域をPCR標的として選択する。すなわちHSV-1についてはHSV-1 PolとHSV-1 TKであり、HSV-2についてはHSV-1 TKとHSV-1 gBである。別々の2つの遺伝子領域のプライマー結合部位とプローブ結合部位に同時に未知の突然変異が起こる確率は極めて小さいため、本発明の二重標的HSV-1/2検出法のアッセイの性能は、未知の突然変異によるマイナスの影響を受ける可能性がより少ない。
【0022】
この明細書に記載した方法では、単一のPCR反応においてHSV-1とHSV-2の両方を同時に検出してその両者を識別することができる。この方法では、単一のサンプル中にHSV-1とHSV-2の両方が共存しているがウイルスの力価が異なっているとき、標的の競合を回避できるウイルス型特異的なプライマーとプローブを使用することができる。HSV-1/2の検出に用いるプライマーとプローブは、HSV-1とHSV-2というウイルス型の間だけでなく、密接に関連した他のヘルペスウイルスとも相互反応性がない。さらに、本発明のHSV-1/2検出法の実施態様で利用する二重標的アプローチでは、プライマー結合部位とプローブ結合部位における未知の突然変異が原因でアッセイの性能に潜在的なマイナスの影響が及ぶことを最小にできる。
【0023】
この明細書では、“増幅する”という用語は、鋳型核酸分子(例えばHSV-1 DNA Pol、HSV-1 TK、HSV-2 TK、HSV-2 gBという核酸分子)の一方または両方の鎖と相補的な核酸分子を合成するプロセスを意味する。核酸分子の増幅には、典型的には、鋳型核酸を変性させ、プライマーをそのプライマーの融解温度よりも低い温度で鋳型核酸にアニーリングさせ、そのプライマーから酵素で伸長させて増幅産物を生成させる操作が含まれる。増幅には、典型的には、デオキシリボヌクレオシド三リン酸と、DNAポリメラーゼ酵素(例えばPlatinum(登録商標)Taq)と、そのポリメラーゼ酵素の活性を最適にするための適切な緩衝液および/または共因子(例えばMgCl2および/またはKCl)の存在が必要とされる。
【0024】
この明細書では、“プライマー”という用語は当業者に知られている意味で使用され、オリゴマー化合物を意味する。それは主にオリゴヌクレオチドだが、鋳型依存性DNAポリメラーゼによってDNAの合成を“開始させる”ことのできる修飾されたオリゴヌクレオチドも意味する。すなわち、例えばオリゴヌクレオチドの3’末端が自由な3’-OH基を提供し、その位置に、鋳型依存性DNAポリメラーゼによってさらなる“ヌクレオチド”が付着して3’→5’ホスホジエステル結合が確立されることで、デオキシヌクレオシド三リン酸が使用され、ピロリン酸が放出される。したがって本発明では、おぞらく想定する機能以外は、“プライマー”、“オリゴヌクレオチド”、“プローブ”の間に基本的な違いはない。
【0025】
“ハイブリダイズする”という用語は、1つ以上のプローブが増幅産物にアニーリングすることを意味する。ハイブリダイゼーションの条件には、典型的には、プローブの融解温度よりも低いだけでなくてプローブの非特異的なハイブリダイゼーションも回避する温度が含まれる。
【0026】
“5’→3’エキソヌクレアーゼ活性”という用語は、典型的には核酸の鎖の合成に付随する核酸ポリメラーゼの活性を意味し、この活性によってヌクレオチドが核酸の鎖の5’末端から除去される。
【0027】
“熱安定ポリメラーゼ”という用語は、熱に対して安定なポリメラーゼ酵素を意味する。すなわちこの酵素は、鋳型と相補的なプライマー伸長産物の形成を触媒し、二本鎖鋳型核酸を変性させるのに必要な時間にわたって高温に曝露されたとき不可逆的に変性することはない。一般に、合成は、各プライマーの3’末端から始まり、鋳型の鎖に沿って5’から3’の方向に進む。熱安定ポリメラーゼは、Thermus fiavus、T. ruber、T. thermophilus、T. aquaticus、T. lacteus、T. rubens、Bacillus stearothermophilus、Methanothermus fervidusから単離されている。しかし熱安定性ではないポリメラーゼも、この酵素が補充されるのであれば、PCRで使用できる。
【0028】
“その相補配列”という用語は、所与の核酸と長さが同じでその核酸と完全に相補的な核酸を意味する。
【0029】
“延長”と“伸長”いう用語は、核酸に関して用いるときには、追加のヌクレオチド(または類似した他の分子)が核酸分子に組み込まれることを意味する。例えば核酸は、生物触媒(例えば核酸の3’末端にヌクレオチドを一般に付加するポリメラーゼ)を組み込んだヌクレオチドによって伸長することがある。
【0030】
2つ以上の核酸配列の文脈における“同一の”またはパーセント“一致度”という用語は、例えば当業者が入手できる配列比較アルゴリズムの1つを用いた測定によって、または目視によって比較して対応が最大になるようにアラインメントしたとき、2つ以上の配列または部分配列が同じであるか、ヌクレオチドの特定の割合が同じであることを意味する。パーセント配列一致度と配列類似度を求めるのに適したアルゴリズムの例はBLASTプログラムであり、それは例えば、Altschul他(1990年)「基本的な局所的アラインメント検索ツール」、J. Mol. Biol.、第215巻:403〜410ページ;Gish他(1993年)「データベース類似性検索によるタンパク質コード領域の同定」、Nature Genet.、第3巻:266〜272ページ;Madden他(1996年)「ネットワークBLASTサーバの応用」、Meth. Enzymol.、第266巻:131〜141ページ;Altschul他(1997年)「ギャプ式BLASTとPSI-BLAST:タンパク質データベース検索プログラムの新世代」、Nucleic Acids Res.、第25巻:3389〜3402ページ;Zhang他(1997年)「PowerBLAST:対話式または自動式の配列分析と注釈付けのための新しいネットワークBLASTアプリケーション」、Genome Res.、第7巻:649〜656ページに記載されている。
【0031】
オリゴヌクレオチドの文脈における“修飾されたヌクレオチド”は、オリゴヌクレオチド配列中の少なくとも1つのヌクレオチドが、そのオリゴヌクレオチドに望む特性を与える異なるヌクレオチドで置換された変異を意味する。この明細書に記載したオリゴヌクレオチドの中で置換することのできる修飾されたヌクレオチドの例として、例えば、C5-メチル-dC、C5-エチル-dC、C5-メチル-dU、C5-エチル-dU、2,6-ジアミノプリン、C5-プロピニル-dC、C5-プロピニル-dU、C7-プロピニル-dA、C7-プロピニル-dG、C5-プロパルギルアミノ-dG、C5-プロパルギルアミノ-dU、C7-プロパルギルアミノ-dA、C7-プロパルギルアミノ-dG、7-デアザ-2-デオキシキサントシン、ピラゾロピリミジン類似体、擬-dU、ニトロピロール、ニトロインドール、2’-0-メチルリボ-U、2’-0-メチルリボ-C、N4-エチル-dC、N6-メチル-dAなどがある。本発明のオリゴヌクレオチドの中で置換することのできる他の多くの修飾されたヌクレオチドは、この明細書に言及されているか、この分野では公知である。いくつかの実施態様では、修飾されたヌクレオチドで置換することにより、オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)が、対応する修飾されていないオリゴヌクレオチドの融解温度と比べて変化する。さらに説明すると、本発明のいくつかの実施態様では、修飾されたヌクレオチドでのいくつかの置換によって非特異的な核酸の増幅を減らし(例えばプライマー二量体の形成などを最少にする)、目的とする標的アンプリコンの収率などを大きくすることができる。これらのタイプの核酸修飾の例は、例えばアメリカ合衆国特許第6,001,611号に記載されている。
【0032】
HSV-1とHSV-2の核酸とオリゴヌクレオチド
【0033】
本発明により、例えばHSV-1 PolおよびHSV-1 TKの核酸配列と、HSV-2 TKおよびHSV-2 gBの核酸配列のうちの1つ以上の一部を増幅することによってHSV-1および/またはHSV-2を検出する方法が提供される。HSV-1および/またはHSV-2からの核酸配列は入手可能である(例えばHSV-1 PolについてはGenBank登録番号M10792;HSV-1 TKについてはJ02224;HSV-2 TKについてはHQ123137;HSV-2 gBについてはHM011358を参照のこと)。具体的には、HSV-1 PoおよびHSV-1 TKの核酸分子標的と、HSV-2 TKおよびHSV-2 gBの核酸分子標的を増幅して検出するためのプライマーとプローブが、本発明の実施態様によって提供される。
【0034】
HSV-1および/またはHSV-2を検出するため、HSV-1ポリメラーゼとHSV-1 TKの核酸配列を増幅するためのプライマーおよびプローブと、HSV-2 TKとHSV-2 gBの核酸分子を増幅するためのプライマーおよびプローブが提供される。この明細書に例示した以外のHSV-1/2核酸もサンプル中のHSV-1/2を検出するのに使用できる。例えば当業者は、定型的な方法を利用して機能性変異体の特異度および/または感度を評価することができる。代表的な機能性変異体として、例えば、この明細書に開示したHSV-1/2の核酸中の1つ以上の欠失、および/または挿入、および/または置換が挙げられる。
【0035】
より具体的には、本発明のオリゴヌクレオチドの実施態様は、それぞれ、配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12から選択した配列を有する核酸、またはそれと実質的に同一で、配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12のうちの1つとの配列一致度が少なくとも例えば80%、90%、95%である変異体、または配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12とその変異体の相補配列を有する変異体を含んでいる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
本発明の一実施態様では、HSV-1および/またはHSV-2のプライマーとプローブの上記の4つのセットを用い、HSV-1/2を含むことが疑われる生物サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2を検出する。プライマーとプローブのこのセットは、HSV-1 Pol核酸配列およびHSV-1 TK核酸配列と、HSV-2 TK核酸配列およびHSV-2 gB核酸配列に特異的なプライマーとプローブを含むか、これらプライマーとプローブからなる。なおこれらの核酸配列は、配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12の核酸配列を含むか、これら核酸配列からなる。本発明の別の一実施態様では、HSV-1標的とHSV-2標的のためのプライマーとプローブは、配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12のプライマーいずれかの機能的に活性な変異体を含むか、その変異体からなる。
【0041】
配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12のあらゆるプライマーおよび/またはプローブの機能的に活性な変異体は、本発明の方法におけるプライマーおよび/またはプローブを用いて同定することができる。配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12いずれかのプライマーおよび/またはプローブの機能的に活性な変異体は、本発明の方法またはキットにおいて、配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12の各配列と比べて同等かより大きな特異度と感度を提供するプライマーである。
【0042】
この変異体は、例えば、配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12の配列と比べて1個以上のヌクレオチドの付加、または欠失、または置換(例えば配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12の各配列の5’末端および/または3’末端における1個以上のヌクレオチドの付加、または欠失、または置換)がある点が異なっている可能性がある。上に詳述したように、プライマー(および/またはプローブ)は、化学的に修飾されていてもよい。すなわちプライマーおよび/またはプローブは、修飾されたヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物を含んでいてもよい。そのときプローブ(またはプライマー)は、修飾されたオリゴヌクレオチドである。“修飾されたヌクレオチド”(または“ヌクレオチド類似体”)は、天然の“ヌクレオチド”とは何らかの修飾が異なっているが、それでも塩基化合物または塩基様化合物、ペントフラノシル糖化合物またはペントフラノシル糖様化合物、リン酸部分またはリン酸様部分、またはこれらの組み合わせからなる。例えば“標識”を“ヌクレオチド”の塩基部分に取り付けることができ、そのことによって“修飾されたヌクレオチド”が得られる。“ヌクレオチド”の中の天然の塩基を例えば7-デアザプリンで置換することもでき、そのことによってやはり“修飾されたヌクレオチド”が得られる。“修飾されたヌクレオチド”または“ヌクレオチド類自体”という用語は、この明細書では同じ意味で用いる。“修飾されたヌクレオシド”(または“ヌクレオシド類似体”)は、“修飾されたヌクレオチド”(または“ヌクレオチド類似体”)に関して上に概説したのと同様、何らかの修飾がなされている点が、天然のヌクレオシドと異なっている。
【0043】
HSV-1 PolとHSV-1 TKの核酸配列とHSV-2 TKとHSV-2 gBの核酸配列をコードしている核酸分子(例えばHSV-1 PolとHSV-1 TK、HSV-2 TKとHSV-2 gBの別の部分をコードしている核酸)を増幅するオリゴヌクレオチド(修飾されたオリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチド類似体を含む)は、例えばOLIGO(Molecular Biology Insigts社、カスケード、コロラド州)などのコンピュータ・プログラムを用いて設計することができる。増幅用プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドを設計するときの重要な特徴として、(例えば電気泳動による)検出が容易になるよう増幅産物が適切なサイズであること、一対のプライマーのメンバー同士が似た融解温度を持つこと、各プライマーの長さ(すなわちプライマーは、配列特異性を持ってアニーリングして合成を開始するのに十分な長さでなければならないが、オリゴヌクレオチドの合成中に忠実度が低下するほど長いものはダメである)が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、オリゴヌクレオチド・プライマーは、長さがヌクレオチド8〜50個(例えば長さが8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、22個、24個、26個、28個、30個、32個、34個、36個、38個、40個、42個、44個、46個、48個、50個いずれかのヌクレオチド)である。
【0044】
本発明の方法では、プライマーのセットに加え、1つ以上のプローブを用いてHSV-1および/またはHSV-2の存在または不在を検出することができる。“プローブ”という用語は、合成によって作製された核酸(DNAまたはRNA)、または生物が産生した核酸を意味し、それは、設計または選択により、所定の厳しい条件下で“標的核酸”(ここではHSV-1および/またはHSV-2(標的)の核酸)と特異的に(すなわち選択的に)ハイブリダイズすることを可能にする特定のヌクレオチド配列を含んでいる。“プローブ”は、“検出プローブ”と呼ぶことができる。それは、このプローブが標的核酸を検出することを意味する。
【0045】
本発明のいくつかの実施態様では、記載したHSV-1および/またはHSV-2プローブに少なくとも1つの蛍光標識を標識することができる。一実施態様では、HSV-1および/またはHSV-2プローブにドナー蛍光部分(例えば蛍光染料)とそれに対応するアクセプタ蛍光部分(例えば消光物質)を標識することができる。
【0046】
一実施態様では、プローブは、蛍光部分を含むか蛍光部分からなり、核酸配列は、配列ID番号3、6、9、12(標識なしで示す)の配列を含むかその配列からなる。
【0047】
ハイブリダイゼーション用プローブとして用いるオリゴヌクレオチドの設計は、プライマーの設計と同様にして実施できる。本発明の実施態様では、増幅産物の検出に単一のプローブまたは一対のプローブを用いることができる。実施態様によっては、プローブの使用に少なくとも1つの標識部分および/または少なくとも1つの消光物質部分が含まれていてもよい。プライマーと同様、プローブは通常は互いに似た融解温度を持ち、各プローブは、配列特異的なハイブリダイゼーションが起こるのに十分な長さでなければならないが、合成中に忠実度が低下するほど長いものはダメである。オリゴヌクレオチド・プローブは、一般に長さがヌクレオチド15〜30個(例えば16個、18個、20個、21個、22個、23個、24個、25個のいずれか)である。
【0048】
本発明のコンストラクトは、各ベクターがHSV-1 Pol、HSV-1 TK、HSV-2 TK、HSV-2 gBの核酸分子(例えば配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12)を含有する複数のベクターを含むことができる。本発明のコンストラクトは、例えば対照鋳型核酸分子として用いることができる。本発明で用いるのに適したベクターは、市場で入手する、および/または本分野における定型的な組み換え核酸技術の方法で作製する。HSV-1および/またはHSV-2の核酸分子は、例えば化学合成によって、またはHSV-1とHSV-2からの直接的なクローニングによって、またはPCR増幅によって得ることができる。
【0049】
本発明の方法で用いるのに適したコンストラクトは、典型的には、HSV-1および/またはHSV-2の核酸分子(例えば配列ID番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12のうちの1つ以上の配列を含む核酸分子)に加え、望むコンストラクトおよび/または形質転換体を選択するための選択マーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)をコードしている配列と、複製起点とを含んでいる。ベクター系の選択は、通常は、いくつかの因子に依存する。因子として、宿主細胞の選択、複製効率、選択可能性、誘導可能性、回収の容易さなどがあるが、これらに限定されない。
【0050】
HSV-1および/またはHSV-2の核酸分子を含む本発明のコンストラクトは、宿主細胞の中で増殖させることができる。この明細書では、宿主細胞という用語には、原核生物と真核生物(例えば酵母細胞、植物細胞、動物細胞)が含まれるものとする。原核生物の宿主には、大腸菌、ネズミチフス菌、霊菌、枯草菌が含まれる。真核生物の宿主には、酵母(例えばS. cerevisiae、S. pombe、Pichia pastoris)、哺乳動物の細胞(例えばCOS細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞)、昆虫細胞、植物細胞(例えばシロイヌナズナ、タバコ)が含まれる。本発明のコンストラクトは、当業者に知られている一般的な任意の技術を利用して宿主細胞の中に導入することができる。例えばリン酸カルシウム沈降、電気穿孔、熱ショック、リポフェクション、微量注入、ウイルスを媒介とした核酸移行が、核酸を宿主細胞の中に導入する一般的な方法である。それに加え、裸のDNAを細胞に直接送達することもできる(例えばアメリカ合衆国特許第5,580,859号と第5,589,466号を参照)。
【0051】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
【0052】
アメリカ合衆国特許第4,683,202号、第4,683,195号、第4,800,159号、第4,965,188号に、従来のPCR技術が開示されている。PCRでは、典型的には、選択された核酸鋳型(例えばDNAまたはRNA)に結合する2つのオリゴヌクレオチド・プライマーを使用する。本発明の実施態様で有用なプライマーとして、HSV-1/2核酸配列(例えば配列ID番号1、2、4、5、7、8、10、11)の中で核酸合成の開始点として機能することのできるオリゴヌクレオチドが挙げられる。プライマーは、従来法によって制限消化から精製すること、または合成によって作製することができる。プライマーは、増幅の効率が最大となるよう一本鎖であることが好ましいが、二本鎖でもよい。二本鎖のプライマーは、最初に変性させる。すなわち鎖を互いに分離する処理を行なう。二本鎖の核酸を変性させる1つの方法は、加熱である。
【0053】
鋳型核酸が二本鎖である場合には、それをPCRで鋳型として使用できるようにするには2本の鎖を分離する必要がある。鎖の分離は、適切な任意の変性法(例えば物理的手段、化学的手段、酵素による手段)によって実現できる。核酸の鎖を互いに分離する1つの方法は、核酸の大半が変性する(例えば50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超が変性する)まで加熱する操作を含んでいる。鋳型核酸を変性させるのに必要な加熱条件は、例えば緩衝液の塩の濃度と、変性させる核酸の長さおよびヌクレオチド組成に依存することになろうが、典型的には、反応の特徴(例えば温度と核酸の長さ)に依存した時間にわたって約90℃〜約105℃の範囲にするというものである。変性は、典型的には、約30秒間〜4分間(例えば1分間〜2分30秒間、または1.5分間)実施される。
【0054】
二本鎖鋳型核酸を熱によって変性させる場合、反応混合物を放置して冷却し、各プライマーがHSV-1/2の核酸分子上の標的配列にアニーリングするのを促進する温度に到達させる。アニーリングの温度は、通常は、約35℃〜約65℃(例えば約40℃〜約60℃;約45℃〜約50℃)である。アニーリング時間として約10秒間〜約1分間(例えば約20秒間〜50秒間;約30秒間〜40秒間)が可能である。次に反応混合物を、ポリメラーゼの活性が向上するか最適化される温度、すなわちアニーリングされたプライマーからの延長が起こって鋳型核酸と相補的な産物が生成するのに十分な温度に調節する。温度は、鋳型核酸にアニーリングされた各プライマーから延長産物を合成するのに十分でなければならないが、延長産物がその相補的な鋳型から変性するほど高温であってはならない(例えば延長の温度は一般に約40℃〜約80℃の範囲(例えば約50℃〜約70℃;約60℃)である)。延長時間は、約10秒間〜約5分間(例えば約30秒間〜約4分間;約1分間〜約3分間;約1分30秒間〜約2分間)が可能である。
【0055】
PCRアッセイでは、HSV-1/2の核酸(RNAまたはDNA(cDNA))を使用できる。鋳型核酸は精製する必要がない。鋳型核酸として、複合混合物(例えばヒト細胞に含まれるHSV-1/2の核酸)のわずかな一部が可能である。HSV-1/2の核酸分子は、生物サンプルから定型的な技術によって抽出することができる。そうした技術は、例えば『診断分子微生物学:原理と応用』(Persing他(編)、1993年、アメリカ微生物学会、ワシントンD.C.)に記載されている。核酸は、任意の数の供給源(例えばプラスミド)や天然の供給源(例えば細菌、酵母、ウイルス、オルガネラ、より高等な生物(植物や動物など))から得ることができる。
【0056】
プライマーの延長を誘導する反応条件下でオリゴヌクレオチド・プライマー(例えば配列ID番号1、2、4、5、7、8、10、11)をPCR試薬と組み合わせる。例えば鎖延長反応物は、典型的には、50mMのKCl、10mMのトリス-HCl(pH 8.3)、15mMのMgCl2、0.001%(w/v)のゼラチン、0.5〜1.0μgの変性した鋳型DNA、50ピコモルの各オリゴヌクレオチド・プライマー、2.5UのTaqポリメラーゼ、10%のDMSOを含んでいる。反応物は、通常、dATP、dCTP、dTTP、dGTPのそれぞれ、またはその1種類以上の類似体を150〜320μM含んでいる。
【0057】
新たに合成された鎖は、反応のその後のステップで使用できる二本鎖分子を形成する。鎖分離ステップ、アニーリング・ステップ、伸長ステップは、標的となるHSV-1/2の核酸分子に対応する増幅産物を望む量だけ生成させるのに必要な回数繰り返すことができる。反応における制限因子は、反応物の中に存在するプライマーの量、熱安定酵素、ヌクレオシド三リン酸である。サイクリング・ステップ(すなわち変性、アニーリング、延長)は、少なくとも1回繰り返すことが好ましい。検出で使用する場合のサイクリング・ステップの数は、例えばサンプルの性質に依存するであろう。サンプルが核酸の複合混合物である場合には、検出に十分な標的配列を増幅するのにより多くのサイクリング・ステップが必要になろう。一般に、サイクリング・ステップは少なくとも約20回繰り返すが、40回、60回、それどころか100回繰り返してもよい。
【0058】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)
【0059】
FRET技術(例えばアメリカ合衆国特許第4,996,143号、第5,565,322号、第5,849,489号、第6,162,603号を参照のこと)は、ドナー蛍光部分とそれに対応するアクセプタ蛍光部分が互いに所定の距離内に位置しているとき、これら2つの蛍光部分の間でエネルギー移動が起こり、それを可視化することが可能である、または別の方法で検出および/または定量することが可能であるという考え方に基づいている。ドナーは、適切な波長の光照射によって励起されると、一般にエネルギーをアクセプタに移動させる。アクセプタは、一般に、移動したエネルギーを異なる波長の発光の形態で再放出する。
【0060】
一例では、オリゴヌクレオチド・プローブは、ドナー蛍光部分とそれに対応する消光物質を含むことができる。消光物質は、移動したエネルギーを光以外の形態で散逸させる。プローブが完全な状態であるとき、エネルギー移動は一般に2つの蛍光部分の間で起こるため、ドナー蛍光部分からの蛍光放出が阻止される。ポリメラーゼ連鎖反応の延長ステップの間、増幅産物に結合したプローブは、例えばTaqポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によって開裂するため、ドナー蛍光部分の蛍光放出はもはや阻止されない。この目的のプローブの例は、例えばアメリカ合衆国特許第5,210,015号、第5,994,056号、第6,171,785号に記載されている。一般に用いられているドナー-アクセプタのペアは、FAM-TAMRAペアを含んでいる。一般に用いられている消光物質は、DABCYLとTAMRAである。一般に用いられている暗い消光物質は、BlackHole Quenchers(登録商標)(BHQ)(Biosearch Technologies社、ノバート、カリフォルニア州)、Iowa Black(登録商標)(Integrated DNA Tech社、コラルヴィル、アイオワ州)、BlackBerry(登録商標)Quencher 650(BBQ-650)(Berry & Assoc.社、デキスター、ミシガン州)を含んでいる。
【0061】
別の一例では、2つのオリゴヌクレオチド・プローブ(それぞれが蛍光部分を含んでいる)を、HSV-1/2の核酸に対するそれらオリゴヌクレオチド・プローブの相補性によって決まる特定の位置で、増幅産物にハイブリダイズさせることができる。オリゴヌクレオチド・プローブが増幅産物の核酸に適切な位置でハイブリダイズすると、FRET信号が発生する。ハイブリダイゼーションの温度は、約10秒間〜約1分間にわたって約35℃〜約65℃の範囲にすることが可能である。
【0062】
蛍光分析は、例えばフォトンを数える落射顕微鏡システム(特定の範囲で蛍光発光をモニタするため適切な二色性ミラーとフィルタを備える)、またはフォトンを数える光増倍管システム、または蛍光計を用いて実施することができる。エネルギー移動を開始させるための励起は、アルゴン・イオン・レーザー、高強度水銀(Hg)ランプ、光ファイバー光源、励起のため望む範囲で適切にフィルタされる他の高強度光源のいずれかを用いて実現できる。
【0063】
この明細書では、ドナー蛍光部分とそれに対応するアクセプタ蛍光部分に関する“対応する”は、ドナー蛍光部分の励起スペクトルと重複する発光スペクトルを持つアクセプタ蛍光部分を意味する。アクセプタ蛍光部分の発光スペクトルの最大波長は、ドナー蛍光部分の励起スペクトルの最大波長よりも少なくとも100nm大きくなければならない。したがって効率的な非放射性エネルギー移動が両者の間で起こることができる。
【0064】
ドナー蛍光部分とそれに対応するアクセプタ蛍光部分は、一般に、(a)大きな効率のフォルスター・エネルギー移動;(b)最終的に大きなストークス・シフト(100nm超);(c)可視スペクトルの赤色部分にできるだけ多く入る発光のシフト(600nm超);(d)ドナーの励起波長で励起によって発生するラマン水蛍光発光よりも大きな波長への発光のシフト、となるように選択する。例えばドナー蛍光部分は、その励起最大値がレーザー線(例えばヘリウム-カドミウム442nmまたはアルゴン488nm)の近くにあること、消衰係数が大きいこと、量子収率が大きいこと、蛍光発光が対応するアクセプタ蛍光部分の励起スペクトルとよく重複していることを満たすように選択できる。対応するアクセプタ蛍光部分は、消衰係数が大きいこと、量子収率が大きいこと、励起がドナー蛍光部分の発光とよく重複していること、可視スペクトルの赤色部分(600nm超)に発光があることを満たすように選択できる。
【0065】
FRET技術においてさまざまなアクセプタ蛍光部分とともに使用できる代表的なドナー蛍光部分として、フルオレセイン、ルシファー・イエロー、B-フィコエリトリン、9-アクリジンイソチオシアネート、ルシファー・イエローVS、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン、1-ピレンブチル酸スクシンイミジル、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸誘導体が挙げられる。代表的なアクセプタ蛍光部分として、使用するドナー蛍光部分に応じ、LCレッド640、LCレッド705、Cy5、Cy5.5、リサミンローダミンB塩化スルホニル、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、ローダミンxイソチオシアネート、エリスロシンイソチオシアネート、フルオレセイン、五酢酸ジエチレントリアミン、ランタノイド(例えばユーロピウム、テルビウム)イオンの他のキレートが挙げられる。ドナー蛍光部分とアクセプタ蛍光部分は、例えばMolecular Probes社(ジャンクション・シティ、オレゴン州)またはSigma Chemical社(セントルイス、ミズーリ州)から入手することができる。
【0066】
ドナー蛍光部分とアクセプタ蛍光部分は、リンカー・アームを通じて適切なオリゴヌクレオチド・プローブに取り付けることができる。各リンカーの長さが重要である。なぜならリンカー・アームは、ドナー蛍光部分とアクセプタ蛍光部分の間の距離に影響を与えるからである。本発明の目的のためのリンカー・アームの長さは、ヌクレオチド塩基から蛍光部分までの距離(単位はオングストローム(Å))である。一般に、リンカー・アームは約10Å〜約25Åである。リンカー・アームとしてWO 84/03285に記載されているタイプのものが可能である。WO 84/03285には、リンカー・アームを特定のヌクレオチド塩基に取り付ける方法と、蛍光部分をリンカー・アームに取り付ける方法も開示されている。
【0067】
アクセプタ蛍光部分(例えばLCレッド640-NHS-エステル)は、C6-ホスホロアミダイト(ABI社(フォスター・シティ、カリフォルニア州)またはGlen Research社(スターリング、ヴァージニア州)から入手できる)と組み合わせて例えばLCレッド640-ホスホロアミダイトにすることができる。ドナー蛍光部分とのカップリングに頻繁に使用されるリンカーとして、チオ尿素リンカー(FITCに由来するもので、例えばGlen Research社またはChemGene社(アッシュランド、マサチューセッツ州)のフルオレセイン-CPG)、アミド・リンカー(フルオレセイン-NHS-エステルに由来するもので、例えばBioGenex社(サン・ラモン、カリフォルニア州)のフルオレセイン-CPG)、オリゴヌクレオチド合成後にフルオレセイン-NHS-エステルのカップリングを必要とする3’-アミノ-CPGが挙げられる。
【0068】
単純ヘルペスウイルス1および/または2の検出
【0069】
本発明により、生物サンプル中または非生物サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の存在または不在を検出する方法が提供される。本発明によって提供される方法では、サンプルの汚染、偽の陰性、偽の陽性が回避される。この方法は、サンプルからのHSV-1および/またはHSV-2の標的核酸分子の一部を、HSV-1 Polプライマー、HSV-1 TKプライマー、HSV-2 TKプライマー、HSV-2 gBプライマーの複数のペアを用いて増幅するステップと、FRETで検出するステップとを含む少なくとも1つのサイクリング・ステップを実施する操作を含んでいる。本発明の方法は、HSV-1プライマー、HSV-1プローブ、HSV-2プライマー、HSV-2プローブを用いて実施し、HSV-1および/またはHSV-2を検出することができる。HSV-1および/またはHSV-2の検出は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2が存在することを示す。
【0070】
この明細書に記載してあるように、増幅産物は、FRET技術を利用した標識ハイブリダイゼーション・プローブを用いて検出することができる。1つのFRET形式では、TaqMan(登録商標)技術を利用して増幅産物の存在または不在、したがってHSV-1および/またはHSV-2の存在または不在を検出しており、TaqMan(登録商標)技術では、2つの蛍光部分で標識した一本鎖ハイブリダイゼーション・プローブを用いる。第1の蛍光部分を適切な波長で励起すると、吸収されたエネルギーがFRETの原理に従って第2の蛍光部分に移動する。第2の蛍光部分は、一般に消光物質分子である。PCR反応のアニーリング・ステップの間に、標識したハイブリダイゼーション・プローブが標的DNA(すなわち増幅産物)に結合し、その後の伸長段階の間に、Taqポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。その結果、励起された蛍光部分と消光物質部分が空間的に互いに離れることになる。その帰結として、消光物質がない状態で第1の蛍光部分が励起されると、第1の蛍光部分からの蛍光発光を検出することができる。例として、ABI PRISM(登録商標)7700配列検出システム(Applied Biosystems社)ではTaqMan(登録商標)技術が利用されており、このシステムは、この明細書に記載した方法を実行してサンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の存在または不在を検出するのに適している。
【0071】
本発明のリアル-タイムPCR法を利用して増幅産物の存在を検出するのに、FRETと組み合わせた分子ビーコンも使用できる。分子ビーコン技術では、第1の蛍光部分と第2の蛍光部分で標識したハイブリダイゼーション・プローブを用いる。第2の蛍光部分は一般に消光物質であり、蛍光標識は、典型的にはプローブの各端部に位置する。分子ビーコン技術では、二次構造(例えばヘアピン)の形成を可能にする配列を有するプローブ・オリゴヌクレオチドを用いる。プローブ内で二次構造が形成される結果として、プローブが溶液中にあるときには両方の蛍光部分が空間的に近接する。プローブが標的核酸(すなわち増幅産物)にハイブリダイズした後に二次構造は破壊されて蛍光部分が互いに分離されるため、適切な波長の光で励起すると、第1の蛍光部分の発光を検出することができる。
【0072】
FRET技術の別の一般的な形式では、2つのハイブリダイゼーション・プローブを用いる。各プローブは異なる蛍光部分で標識することができ、一般に、標的DNA分子(例えば増幅産物)内で互いに近接してハイブリダイズするように設計される。ドナー蛍光部分(例えばフルオレセイン)は、LightCycler(登録商標)装置の光源によって470nmで励起される。FRETの間、フルオレセインは自らのエネルギーをアクセプタ蛍光部分(例えばLightCycler(登録商標)-レッド640(LC Red 640)またはLightCycler(登録商標)-レッド705(LC Red 705))に移動させる。するとアクセプタ蛍光部分はより長い波長の光を放出し、それがLightCycler(登録商標)装置の光学検出システムによって検出される。効率的なFRETは、蛍光部分が直近に位置していて、ドナー蛍光部分の発光スペクトルがアクセプタ蛍光部分の吸収スペクトルと重複している場合にだけ起こる。発生する信号の強度は、元の標的DNA分子の数(例えばHSV-1/2ゲノムの数)と相関させることができる。HSV-1/2の標的核酸の増幅が起こって増幅産物が生成すると、ハイブリダイゼーション・ステップの結果として、ペアになったプローブのメンバー間でのFRETに基づく検出可能な信号が発生する。
【0073】
一般に、FRETの存在は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2が存在することを示し、FRETの不在は、サンプル中にHSV-1および/またはHSV-2が存在しないことを示す。しかし試料の不十分な回収、輸送の遅延、不適切な輸送条件、ある種の回収スワブ(アルギン酸カルシウムまたはアルミニウム・シャフト)の使用はすべて、試験結果の成功および/または正確さに影響を与える可能性がある。この明細書に開示した方法を利用すると、例えば45回以内のサイクリング・ステップでのFRETの検出は、HSV-1および/またはHSV-2に感染したことを示している。
【0074】
本発明の方法を実施する際に使用できる代表的な生物サンプルとして、皮膚スワブ、鼻スワブ、傷スワブ、血液培養物、皮膚感染部、軟組織感染部などが挙げられるが、これらに限定されない。生物サンプルの回収法と保管法は当業者に知られている。生物サンプルを(例えば本分野で知られている核酸抽出法および/またはキットで)処理してHSV-1/2の核酸を放出させることができる。あるいはいくつかのケースでは、生物サンプルをPCR反応成分と適切なオリゴヌクレオチドに直接接触させることができる。
【0075】
融解曲線分析は、サイクリング・プロファイルに含めることのできる追加ステップである。融解曲線分析は、DNAが、融解温度(Tm)と呼ばれる特徴的な温度で融解するという事実に基づいている。融解温度は、DNAの二本鎖の半分が分離して単一の鎖になる温度と定義される。DNAの融解温度は、主に、そのヌクレオチド組成に依存する。例えばGヌクレオチドとCヌクレオチドが豊富なDNA分子は、AヌクレオチドとTヌクレオチドが豊富なDNA分子よりもTmが高い。信号が消える温度を検出することにより、プローブの融解温度を求めることができる。同様に、信号が発生する温度を検出することにより、プローブのアニーリング温度を求めることができる。HSV-1増幅産物および/またはHSV-2増幅産物から求まるHSV-1プローブとHSV-2プローブの融解温度により、サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2の存在または不在を確認することができる。
【0076】
サーモサイクラーを1回試行している間に対照サンプルもサイクルさせる。陽性対照サンプルは、例えば対照プライマーと対照プローブを用いて(記載した標的遺伝子の増幅産物以外の)HSV-1/2核酸対照鋳型を増幅させることができる。陽性対照サンプルは、例えば、HSV-1/2の核酸分子を含むプラスミド・コンストラクトも増幅することができる。そのような対照プラスミドは、内部(例えばサンプル中)で増幅させること、または患者のサンプルと並行して試行する別のサンプル中で増幅させることができる。サーモサイクラーの1回の試行には、例えばHSV-1/2鋳型DNAが欠けた陰性対照も含めることができる。そのような対照は、増幅、および/またはハイブリダイゼーション、および/またはFRET反応の成功または失敗の指標である。したがって対照反応により、例えばプライマーが配列特異的にアニーリングして伸長を開始する能力や、プローブが配列特異的にハイブリダイズしてFRETが起こる能力を容易に判断することができる。
【0077】
一実施態様では、本発明の方法は、汚染を回避するステップを含んでいる。サーモサイクラーの1回の試行と次の試行の間の汚染を減らすかなくすため、例えばウラシル-DNAグルコシラーゼを用いた酵素法が、アメリカ合衆国特許第5,035,996号、第5,683,896号、第5,945,313号に記載されている。
【0078】
FRET技術と組み合わせた従来のPCR法を利用して本発明の方法を実施することができる。一実施態様では、LightCycler(登録商標)装置を用いる。以下の特許出願、すなわちWO 97/46707、WO 97/46714、WO 97/46712に、LightCycler(登録商標)技術で用いられるリアル-タイムPCRが記載されている。
【0079】
LightCycler(登録商標)は、PCワークステーションを用いて操作することができ、Windows NTオペレーティング・システムを利用できる。サンプルからの信号は、機械が光学ユニットの上方にキャピラリーを順番に位置させるときに得られる。ソフトウエアは、各測定の直後に蛍光信号をリアル-タイムで表示することができる。蛍光取得時間は10〜100ミリ秒である。各サイクリング・ステップの後、蛍光とサイクル数の間の定量的表示を全サンプルについて連続的に更新することができる。生成したデータを蓄積してさらに分析することができる。
【0080】
FRETの代わりとして、二本鎖DNA結合染料(例えばSYBR(登録商標)GreenまたはSYBR(登録商標)Gold(Molecular Probes社))を用いて増幅産物を検出することができる。そのような蛍光DNA結合染料は、二本鎖核酸と相互作用したとき、適切な波長の光で励起した後に蛍光信号を放出する。核酸相互作用染料などの二本鎖DNA結合染料も使用できる。二本鎖DNA結合染料を用いるとき、通常は融解曲線分析を実施して増幅産物の存在を確認する。
【0081】
本発明の実施態様は、市販されている1つ以上の装置の構成に制限されないことを理解されたい。
【0082】
製品/キット
【0083】
本発明の実施態様により、HSV-1および/またはHSV-2を検出するための製品またはキットがさらに提供される。製品は、HSV-1および/またはHSV-2を検出するためのプライマーおよびプローブとともに、適切な包装材料を含むことができる。HSV-1および/またはHSV-2を検出するための代表的なプライマーとプローブは、HSV-1および/またはHSV-2の標的核酸分子とハイブリダイズすることができる。それに加え、キットは、DNAの固定化、ハイブリダイゼーション、検出に必要な適切に包装された試薬と材料(例えば固体支持体、緩衝液、酵素、基準DNA)も含むことができる。プライマーとプローブを設計する方法はこの明細書に開示されており、HSV-1および/またはHSV-2の標的核酸分子を増幅するためのプライマーと、HSV-1および/またはHSV-2の標的核酸分子にハイブリダイズさせるためのプローブの代表例が提示されている。
【0084】
本発明の製品は、プローブを標識するための1つ以上の蛍光部分も含むことができる。あるいはキットとともに供給されるプローブに標識することができる。例えば製品は、HSV-1プローブおよび/またはHSV-2プローブを標識するためのドナー蛍光部分および/またはアクセプタ蛍光部分を含むことができる。適切なFRET用ドナー蛍光部分とそれに対応するアクセプタ蛍光部分は上に示してある。
【0085】
製品は、サンプル中のHSV-1および/またはHSV-2を検出するためにHSV-1プライマーおよび/またはHSV-2プライマーを使用する際の指示を表面に有する包装挿入物または包装ラベルも含むことができる。製品はさらに、この明細書に開示した方法を実行するための試薬(例えば緩衝液、ポリメラーゼ酵素、共因子、汚染を阻止する薬剤)を含むことができる。このような試薬は、市場で入手できるこの明細書に記載した装置の1つに専用のものが可能である。
【0086】
以下の実施例で本発明の実施態様をさらに説明する。これら実施例が、請求項に記載した本発明の範囲を制限することはない。
【実施例】
【0087】
以下の実施例と図面は、本発明の理解を助けるために提示したのであり、本発明の真の範囲は添付の請求項に記載されている。
【0088】
実施例1
HSV PCR標的領域の決定と、HSVプライマーおよびHSVプローブの設計
HSV-1は1988年に配列が完全に決定され(McGeoch他、J. Gen. Virol.、1988年7月;第69巻(Pt7):1531〜1574ページ)、HSV-2は1998年に配列が完全に決定された(Dolan他、J. Virol.、1998年3月;第72巻(3):2010〜2021ページ)。互いに最も近いこれら2種類のヘルペスウイルスは、ゲノム構造と遺伝子の数が同じである。HSV-1はG+Cの含有量が68.3%であるのに対し、HSV-2はG+Cの含有量がそれよりもわずかに多い70.4%である。しかしこれらウイルスの非コード領域のG+Cの含有量(RLとRS;約72〜80%)は、コード領域のG+Cの含有量(ULとUS;約64〜69%)よりもはるかに多い。これら2つのタイプのウイルスの間の相同配列は、領域によって異なる。例えばRL領域とRS領域は配列がより多彩であるのに対し、UL領域とUS領域は相同配列が多い(83%)。
【0089】
PCR標的領域を選択する基準は多数ある。第1に、標的領域中のG+Cの含有量をバランスの取れた値(約50%)にして、特にPCR熱サイクリング条件が比較的低温に固定されているときにPCRプライマーが容易に標的領域に近づけるようにするとともに、標的の増幅が容易になるようにすることが理想的である。第2に、公共ドメインで公開されている比較的多数の標的配列を入手してアッセイの包括性を最大にすることが好ましい。第3に、アッセイの条件によるが、1回のアッセイで異なる遺伝型または株をカバーする必要があるときには相同性が大きい領域を選択すべきであり、1回のアッセイで異なる遺伝型または株を識別する必要があるときには相同性が小さい領域を選択すべきである。
【0090】
新しいHSV PCRアッセイでは、単一のPCR反応でHSV-1とHSV-2の両方を増幅してそれらを識別する必要がある。したがってPCRで標的とする遺伝子または領域は、G+Cの含有率が小さい必要がある。HSV-1/2ゲノム中のG+Cの含有率は大きいため、それを見いだすことは容易でない。さらに、型の異なるウイルス間で標的とする遺伝子中または領域中の配列相同性が小さい必要がある。すると交差反応性のない型特異的なプライマーとプローブの設計が可能になる。残念なことに、HSVゲノム中のいくつかの遺伝子または領域ではG+Cの含有率が小さいにもかかわらず、これら2つの型のウイルス間の配列相同性は常に大きい。したがって、HSV PCR標的を選択するときには上記の2つの条件を注意深くバランスさせることを考える必要がある。このような考察に基づき、3つのHSV遺伝子をPCR標的遺伝子として選択する。すなわち糖タンパク質B(gB、UL27)、DNAポリメラーゼ(Pol、UL30)、チミジンキナーゼ(TK、UL23)である。これら遺伝子はUL領域に位置している。
【0091】
これら3つの標的遺伝子のG+Cの含有率は小さいとはいえ、それら標的遺伝子の配列中にG+Cが一様に分布して含まれているわけではない。したがって2つの型のウイルス間の配列相同性が大きいことが理由で、両方の型のHSVウイルスの遺伝子配列全体を注意深く調べてPCR標的領域となる可能性のある領域を探した。それに加え、GまたはCが続いている領域を回避した。なぜならプライマーが交差反応する可能性があり、オリゴヌクレオチドの合成が技術的に難しいからである。
【0092】
二次構造が増幅効率に影響を与える可能性がある。そこで、提案されているPCR条件下でPCRモデル化プログラム(ヴィジュアルOMPTM、DNA Software社、334イースト・ワシントン・ストリート、アン・アーバー、ミシガン州48104)を用い、選択したすべての領域で形成される可能性のある二次構造をシミュレーションした。いくつかの領域(例えばgB5、Pol-C、TK-A、TK-B)は広範なヘアピン構造を有する。そのため増幅が困難になる可能性があるのを阻止できる。
【0093】
上記の3つのHSV遺伝子の中でPCR標的領域となる可能性のある領域を選択した後、PCRプライマーとPCRプローブを注意深く設計した。単一のPCR反応で両方の型のHSVを増幅して識別するプライマーとプローブを設計するのに異なる2つの方法がある。一方は、それぞれの型のHSVについて、完全に独立かつ特異的なPCRプライマーとPCRプローブを設計するという方法である。この方法の利点は、PCR増幅と検出がそれぞれの型に非常に特異的になることである。しかしPCR反応にはるかに多くのプライマーが必要となる。それは特に、二重標的PCRアッセイに当てはまる。別の方法では、両方の型のウイルスを増幅する共通プライマーを設計するが、両方の型のウイルスを検出して識別するのにウイルス型特異的プローブを用意する。この方法で必要とされるPCRプライマーはより少ないが、標的の競合問題が起こる可能性がある。HSVプライマーとHSVプローブを設計するときには、両方の方法を利用した。
【0094】
合計で160を超えるプライマーとプローブを設計して評価した。ウイルス型特異的な方法では、可能なときには常に、2つのウイルス型の間でミスマッチが最も多く存在する位置でプライマーとプローブを設計したが、共通プライマーの方法では、プライマーを2つのウイルス型の間の相同配列の下に位置させ、プローブを非相同配列の下に位置させた。HSV-1とHSV-2を識別する能力を最大にするため、プライマー中のミスマッチは3’末端の近くに位置させたのに対し、プローブ中のミスマッチはレポータ染料と消光染料の間に位置させた。ウイルス型の間でプライマーとプローブの下のミスマッチの数を最大にするため、新しいプライマーとプローブを手作業で設計した。増幅の特異性を向上させるため、アルカリ基(例えばt-ブチル-ベンジル部分)を1つ以上のヌクレオチド(通常はプライマーの3’末端またはその近傍にあるAヌクレオチドまたはCヌクレオチド)に付加した。HSV-1とHSV-2の同定を容易にするため、ウイルス特異的プローブに異なる蛍光レポータ染料(HSV-1ではFAM、HSV-2ではHEX)に非蛍光消光染料BHQ-2またはRDQ-2を組み合わせて標識した。
【0095】
実施例2
HSVプライマーとHSVプローブのスクリーニング
クリーンなシステムの中で、培養して熱で不活化したHSVウイルスから抽出した完全長ゲノムDNAを用いて各領域で多数のプライマーとプローブを設計し、それらすべてをスクリーニングして評価した。それに加え、以前のHSVアッセイを対照として利用した。プライマーとプローブを選択する基準として、初期のCt値、蛍光の大きな増加、非特異的増幅のない特異的PCR増幅産物が挙げられる。図1A図1Bに、HSV TK-C領域でうまく機能したプライマーの選択の一例を示してあるのに対し、図3A図3Bには、成功しなかったHSV TK-B領域でうまく機能しなかったプライマーの選択の一例を示してある。
【0096】
図1Aに示してあるように、HSV-1 TK-C領域では、F6-R5組み合わせプライマー(F6:配列ID番号4;R5:配列ID番号5)が、F6-R6組み合わせプライマー(F6:配列ID番号4;R6:配列ID番号8)および対照よりもうまく機能した。図1Bに示してあるように、HSV-2では、F5-R6の組み合わせ(F5:配列ID番号7;R6:配列ID番号8)が、F6-R6の組み合わせ(F6:配列ID番号4;R6:配列ID番号8)よりもうまく機能した。図2は、HSV-1 TK-C領域に関するPCR産物のゲル電気泳動の結果を示している。矢印は、正しいサイズのアンプリコン産物を示す。HSV-1 ではF6-R5組み合わせプライマー(F6:配列ID番号4;R5:配列ID番号5)が、HSV-2ではF5-R6組み合わせプライマー(F5:配列ID番号7;R6:配列ID番号8)が、明確で正しいサイズの産物を生成させたが、他の組み合わせプライマーだと多数の非特異的産物になった。
【0097】
図3Aに示したHSV-1 TK-B領域に対するプライマーを用いてさらに実験を行なった。図3Bは、HSV-2 TK-B領域に対するプライマーを用いたPCR増殖曲線実験を示している。HSV-1 TK-B領域(図3A)とHSV-2 TK-B領域(図3B)では、どの組み合わせのプライマーも対照ほどうまくいかなかった(HSV-1用、F7:配列ID番号10;R3:配列ID番号16;R4:配列ID番号17。HSV-2用、F4:配列ID番号18;R3:配列ID番号19;R4:配列ID番号20)。図4は、HSV TK-B領域のPCR産物のゲル電気泳動を示している。矢印は、正しいサイズの増幅産物を示す。HSV-1では、プライマーのいくつかの組み合わせ(F7-R3(F7:配列ID番号10;R3:配列ID番号16)とF7-R4(F7:配列ID番号10;R4:配列ID番号17))で明確な単一の増幅産物が得られたが、その増殖曲線は満足すべきものではなかった。HSV-2では、正しいサイズの産物以外に多数の非特異的産物が得られた。
【0098】
上述のように、8つの領域でプライマーとプローブのあらゆる組み合わせを徹底的に評価した。HSV-1とHSV-2という各ウイルス型で3つの領域におけるプライマーとプローブの1つの組み合わせを選択し、アッセイの性能(例えばアッセイの分析感度)の評価と比較をさらに実施した。次に、二重標的HSVアッセイのため、各ウイルス型で最適な2つの組み合わせ(HSV-1ではPol-BとTK-C;HSV-2ではgB3とTK-C)を最終的に選択した。図5に、HSV-1 Pol-B、F11:配列ID番号1;R8:配列ID番号2の増殖曲線と、HSV-1 TK-A、F2:配列ID番号21;R1:配列ID番号22の増殖曲線と、HSV-1 TK-C、F6:配列ID番号4;R5:配列ID番号5の増殖曲線を示す。図6に、HSV-2 TK-C、F5:配列ID番号7;R6:配列ID番号8の増殖曲線と、HSV-2 Pol-B、F9:配列ID番号23;R6:配列ID番号24の増殖曲線と、HSV-2 gB3、F7:配列ID番号10;R7:配列ID番号11の増殖曲線を示す。
【0099】
分析感度を分析するため、別々の複数の実験を行なった。図7は、3回の独立したHSV-1アッセイ(Pol-B、TK-A、TK-C)の結果を示している。Probは確率を示し、vp/PCRはPCRごとの検出限界を示す。l95_concとu95_concは、それぞれ95%下方信頼限界と95%上方信頼限界を示す。図8は、3回の独立したHSV-2アッセイ(gB3、Pol-B、TK-C)の結果を示している。Probは確率を示し、vp/PCRはPCRごとの検出限界を示す。l95_concとu95_concは、それぞれ95%下方信頼限界と95%上方信頼限界を示す。
【0100】
HSV-1とHSV-2で最終的に選択された4つの領域は、これらの領域に関するコンピュータ分析の結果とよく一致していた。例えば全部で8つの領域のうち、最終的に選択された4つの領域はG+Cの含有率が最も少なく、長いヘアピン状二次構造が他の領域よりも少ない。そのため固定されたPCR熱プロファイルのもとではこれらの領域に非常にアクセスしやすい。
【0101】
実施例3
標的の競合
すでに言及したように、HSV-1ウイルスとHSV-2ウイルスを検出して識別するのに異なる2通りの方法を利用してHSVプライマーとHSVプローブを設計することができる。両方のウイルス標的を増幅する共通PCRプライマーを最初にHSV Pol-B領域で設計した。ウイルスの型の識別は、ウイルス型特異的プローブによって実現した。しかしプライマーを評価しているとき、両方のウイルス標的が単一のPCR反応に存在していると、コピー数がより少ない標的が、コピー数がより多い標的と競合して排除される可能性のあることが見いだされた。この現象の原因ははっきりしないが、共通PCRプライマーが標的のこのアンバランスな増幅の原因となっている可能性があると考えられる。図9A図9Bは、この現象を示している(HSV-1とHSV-2のPol-B用、F4:配列ID番号25;R5:配列ID番号5)。PCR反応において、共通プライマーを使用し、両方の型のHSVウイルスが存在していると、コピー数が少ないほうの標的(1回のPCRにつきウイルス粒子10個)は、コピー数が多い方の別の標的(1回のPCRにつきウイルス粒子1000個)と競合して排除された。2つの共通プライマーの一方(ここでは逆プライマー)がウイルス型特異的プライマーで置換されるとき、標的の競合は相変わらず存在するが、程度がより少ない(図10A図10B)(HSV-1 Pol-B用、F4:配列ID番号27;R8:配列ID番号2。HSV-2 Pol-B用、F4:配列ID番号27;R6:配列ID番号8)。同じ領域において両方の共通プライマーがウイルス型特異的プライマーで完全に置換されるとき、これらの反応において標的の濃度差が10,000倍まで標的の競合は観察されなかった(図11A図11B)(HSV-1 Pol-B用、F12:配列ID番号29;R8:配列ID番号2。HSV-2 Pol-B用、F9:配列ID番号23;R6:配列ID番号24)。
【0102】
単一のPCR反応で標的の競合なしにHSV-1とHSV-2の両方を検出して識別しているため、これまで市場で報告されている他のHSV PCRアッセイよりもアッセイの性能が優れたものになる。本発明のアッセイは、1つの反応用試験管と単一のサンプルを使用しているだけでなく、感度がよくてウイルスの型に特異的である。その結果、すべてのHSV標的増幅用プライマーと検出用プローブを設計し、ウイルス型特異的なものを選択した。
【0103】
実施例4
交差反応性
HSV-1とHSV-2の間の配列相同性の程度が大きいため、特異性を最大にするウイルス型特異的なプライマーとプローブを設計することは困難な課題であった。プライマーとプローブの潜在的な交差反応性を調べる実験を行なった。その実験において、プライマーとプローブを、他方のウイルス型の標的領域を含む高濃度のプラスミドを用いて試験した。図12A図12Bに示してあるように、HSV-1 Pol-B領域とHSV-1 TK-C領域をそれぞれ含む(Hind IIIで切断した)2つのプラスミド(pHSV-1 Pol-B-2とpHSV-1 TK-C)を、新たに設計したHSV二重標的アッセイによって増幅した。予想通り、陽性信号はFAMチャネルでだけ観察され(図12A)、HEXチャネルでは観察されなかった(図12B)。同様に、HSV-2 gB3領域とHSV-2 TK-C領域をそれぞれ含む(Hind IIIで切断した)2つのHSV-2プラスミドを、新たに設計したHSV二重標的アッセイによって増幅した。予想通り、陽性信号はHEXチャネルでだけ観察され(図13B)、FAMチャネルでは観察されなかった(図13A)。
【0104】
ウイルス型HSV-1とHSV-2の間の潜在的な交差反応性に加え、新たに設計した二重標的HSV-1/2アッセイを、同じファミリーからの他の密接に関連したヘルペスウイルスを高濃度にしたものも用いて試験した。図14に示したように、この新たなHSV-1/2アッセイは、他の密接に関連したヘルペスウイルスとの交差反応性を持たない。
【0105】
明確にするためと理解のため、本発明をいくぶん詳細に記載してきたが、この明細書を読んだ当業者には、本発明の真の範囲を逸脱することなく、形態と詳細をさまざまなに変更できることが明らかであろう。例えば上に記載したあらゆる技術と装置は、さまざまな組み合わせで用いることができる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]