(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タンパク質、細胞傷害剤、薬物及びポリマーから選択される1つ以上の部分に前記1つ以上の非天然アミノ酸を介してコンジュゲートされる、請求項5〜8のいずれか1項記載の突然変異タンパク質又は抗体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
配列表の配列の簡単な説明
配列番号1:PylRSメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)野生型ヌクレオチド配列
配列番号2:PylRSメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)野生型アミノ酸配列
配列番号3:PylRSメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、Y384F突然変異ヌクレオチド配列
配列番号4:PylRSメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、Y384F突然変異アミノ酸配列
配列番号5:tRNApylメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)
配列番号6:U6 snRNAプロモーター
配列番号7:U6−tRNApylコンストラクト
配列番号8:GFPヌクレオチド配列
配列番号9:GFPアミノ酸配列
配列番号10:GFPY40ヌクレオチド配列
配列番号11:GFPY40アミノ酸配列
配列番号12:抗Her2(4D5)γヌクレオチド配列
配列番号13:抗Her2(4D5)γアミノ酸配列
配列番号14:抗Her2(4D5)γ_K274アンバーヌクレオチド配列
配列番号15:抗Her2(4D5)γ_K274アンバーアミノ酸配列
配列番号16:抗Her2(4D5)κヌクレオチド配列
配列番号17:抗Her2(4D5)κアミノ酸配列
【0018】
発明の詳細な説明
定義
用語「アミド」は−C(=O)−NH−結合を指す。
【0019】
用語「カルバメート」は−O−C(=O)−NH−結合を指す。
【0020】
用語「エステル」は−C−C(=O)−O−C結合を指す。
【0021】
用語「アルキル」は、典型的には1〜6個、例えば1〜4個の炭素原子を含む、且つ直鎖状又は分枝状であってもよい脂肪族の結合又は置換基を指す。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル及びt−ブチルが挙げられる。
【0022】
用語「アルコキシ」は−O−アルキル基を指す。
【0023】
用語「アルケニル」、「アルケン」又は「オレフィン」は、典型的には2〜6個、例えば2〜4個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状であってもよい、且つ少なくとも1つのC=C部分を含む点で不飽和の、脂肪族の結合又は置換基を指す。例としては、エテニル、プロペン−1−イル、プロペン−2−イル、及び2−メチル−プロペン−2−イルが挙げられる。アルケニル基は、例えばハロゲン(例えばCl)又はエーテル基(例えば−O−C
1〜6アルキル)などの1つ以上の(例えば1つの)置換基によって場合により置換されていてもよく、しかしながら置換されていないことが好ましい。
【0024】
用語「アルキニル」又は「アルキン」は、典型的には2〜6個、例えば2〜4個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状であってもよい、且つ少なくとも1つのC≡C部分を含む点で不飽和の、脂肪族の結合又は置換基を指す。例としては、−C≡CH及び−C≡C−CH
3が挙げられる。アルキニル基は、例えばハロゲン(例えばCl)又はエーテル基(例えば−O−C
1〜6アルキル)などの1つ以上の(例えば1つの)置換基によって場合により置換されていてもよく、しかしながら置換されていないことが好ましい。
【0025】
用語「シクロアルキル」は、典型的には3〜8個の環状炭素原子を含む脂環式不飽和化合物を指す。シクロアルキル基は分枝を含み得る。炭素原子の総数は、典型的には3〜10であり得る。例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3−メチル−シクロプロピル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0026】
用語「シクロアルケニル」は、典型的には5〜8個の環状炭素原子を含み、且つ少なくとも1つのC=C部分を含む脂環式化合物を指す。シクロアルケニル基は分枝を含み得る。炭素原子の総数は、典型的には5〜10であり得る。例示的な基としては、シクロペンテニル、3−メチル−シクロプロペニル及びシクロヘキセニルが挙げられる。
【0027】
用語「ヘテロシクリル」は、O、N及びSから選択される1つ以上の(例えば1つ、2つ又は3つ、例えば1つ又は2つ、特に1つの)ヘテロ原子が環に含まれるシクロアルキル又はシクロアルケニル部分を指す。例としては、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、モルホリン及びチオモルホリンが挙げられる。
【0028】
用語「アリール」は、結合の一部又は置換基の一部であり得る芳香環構造を指す。アリール部分は1個の環(例えばフェニル)又は2個の環(例えばナフチル)を含み得る。アリール基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、フルオロアルキル、ハロゲン、アルコキシ、ニトロ及びシアノから選択される1つ以上の(例えば1つ又は2つ、例えば1つの)置換基によって置換されていてもよい。例示的なアリールはフェニルである。
【0029】
用語「ヘテロアリール」は、結合の一部又は置換基の一部であり得るヘテロ芳香環構造を指す。ヘテロ芳香環は、O、N及びSから選択される1〜4個(より通常は1〜3個、例えば1個又は2個の)ヘテロ原子を含み得る。ヘテロアリール部分は1個の環又は2個の環を含み得る。1個の6員環を含む例示的な基としては、ピリジン及びピリミジンが挙げられる。1個の5員環を含む例示的な基としては、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ジアゾール、チアジアゾール及びテトラゾールが挙げられる。2個の環を含むヘテロアリール部分は一方又は両方の環にヘテロ原子を含み得る。例としては、キノリン及びイソキノリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、フルオロアルキル、ハロゲン、アルコキシ、ニトロ及びシアノから選択される1つ以上の(例えば1つ又は2つ、例えば1つの)置換基によって置換されていてもよい。
【0030】
用語「芳香族ハロゲン化物」は、少なくとも1個の(例えば1個の)ハロ基、例えばフッ素、塩化物、臭化物又はヨウ素によって置換されている芳香環(典型的にはフェニル)を指す。前記芳香環は、さらなる置換基、例えばアリールで言及した置換基を含み得る。
【0031】
用語「アジド(azide)」及び「アジド(azido)」は、N=N(+)=N(−)官能基を指す。
【0032】
用語「シクロアルキン」は、環構造に捕捉された炭素−炭素三重結合を含む環状構成の(典型的には6〜9員、特に8〜9員の)炭素原子を指す。例としては、シクロオクチン及びシクロノニンが挙げられる。さらなる例はベンザインである。シクロアルキン基は分枝を含み得る。炭素原子の総数は、典型的には6〜12個、例えば6〜10個であり得る。
【0033】
用語「ケトン」はC−C(=O)−C結合を指す。
【0034】
用語「ピロリシン類似体」は、天然のPylRSか或いは遺伝的に進化したPylRSにより認識されタンパク質にアンバーコドン部位で組み込まれるアミノ酸誘導体を意味する。
【0035】
「20個の天然アミノ酸のうちの1つの側鎖」という表現は、その一文字記号A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W及びYで知られる20個の天然アミノ酸に関係する式HOOC−CHR−NH
2のR基を指す。L又はSのいずれの立体化学も(又はそれらの混合物も)意図され、しかしながらL立体化学が好ましい。
【0036】
本発明はピロリシン類似体を開示する。
【0037】
本発明のいくつかのピロリシン類似体は、式V:
【化1】
[式中
Z=結合、CH
2、CH−NH
2、CH−OH、NH、O、S又はCH−NH
2;
bは0又は整数1〜7であり;及び
FG=アジド、アルケン、アルキン、ケトン、エステル、アリール又はシクロアルキン]
の構造を有する。
【0038】
式VにおいてFGがアリールを表す場合、例は、芳香族ハロゲン化物、例えば4−ヨードフェニルなどの4−ハロフェニルである。
【0039】
部分Z(CH
2)
bFGは、例えば、CO−アリール、例えばCO−フェニル又は−COアルキル、例えば−COMeを表し得る。式Vの例示的化合物は、以下である:
(2S)−2−アミノ−6−{[(2−アジドエトキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸
【化2】
(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸
【化3】
(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−エン−1−イルオキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸
【化4】
(2S)−2−アミノ−6−(3−アジドプロパンアミド)ヘキサン酸
【化5】
(2S)−2−アミノ−6−(ペンタ−4−エナミド)ヘキサン酸
【化6】
(S)−2−アミノ−6((2−オキソ−2−フェニルアセトアミド)ヘキサン酸
【化7】
(S)−2−アミノ−6((2−オキソ−2−プロパンアミド)ヘキサン酸
【化8】
(2S)−2−アミノ−6−(2−アジドアセトアミド)ヘキサン酸
【化9】
【0040】
本発明の非天然アミノ酸として使用するのに好適な代替的ピロリシン類似体は、式VI:
【化10】
[式中
Z=CH
2、CH−NH
2、CH−OH、NH、O又はS;
FG=アジド、アルケン、アルキン、ケトン、エステル、アリール又はシクロアルキン;及び
b=整数1〜4]
の構造を有する。
【0041】
式VIにおいてFGがアリールを表す場合、例は、芳香族ハロゲン化物、例えば4−ヨードフェニルなどの4−ハロフェニルである。
【0042】
好適にはZはNHを表す。別の実施形態においてZはCHを表す。
【0044】
FGは、例えば、−N
3、−CH=CH
2、−C≡CH、−COCH
3、COOCH
3、
ハロゲンによって置換されたフェニル
、又はシクロオクチンを表し得る。
【0045】
式VIの例示的化合物は、以下である:
(2S)−2−アミノ−6−{[(2−アジドエチル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸
【化11】
(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−イン−1−イル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸
【化12】
(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−エン−1−イル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸
【化13】
【0046】
式V及び式VIの構造において、FGがアルケンを表す場合、それは好適には−CH=CH
2又は−CH=CH−CH
3、好ましくは−CH=CH
2を表す。
【0047】
式V及び式VIの構造において、FGがアルキンを表す場合、それは好適には−C≡CH又は−C≡C−CH
3、好ましくは−C≡CHを表す。
【0048】
式V及び式VIの構造において、FGがケトンを表す場合、それは好適には−C(=O)−CH
3又は−C(=O)−CH
2−CH
3、好ましくは−C(=O)−CH
3を表す。
【0049】
式VIの構造において、FGがケトンを表す場合、それは例えば−C(=O)−アリール、例えば−C(=O)−フェニルを表し得る。
【0050】
式V及び式VIの構造において、FGがエステルを表す場合、それは好適には−C(=O)−Oアルキル、例えば−C(=O)−Oメチルを表す。
【0051】
式V及び式VIの構造において、FGが芳香族ハロゲン化物を表す場合、それは好適には、ハロゲン、特にヨウ素によって置換されたフェニル(例えば4−ヨードフェニル)を表す。
【0052】
式V及び式VIの構造において、FGがシクロアルキンを表す場合、それは好適にはシクロオクチン、例えばシクロオクタ−4,5−インを表す。
【0053】
有利には、本発明の式V及び式VIのnnAAは、GFPアッセイにより実証されるとおり良好な組込みを有することが示されている。式VI.1は組込みアッセイとしてのGFPアッセイで式V.1と同程度の翻訳能力を有した。式V及び式VIは両方とも、部位選択的翻訳後修飾に用い得る様々な有用な官能基を組み込むように簡単に修飾される。アルキン及びアルケンが容易に組み込まれる。本明細書に開示されるピロリシン類似体は、様々な方法を用いて作製することができる。反応条件は概して当業者により決定され得る。
【0054】
式V類似体は、α−アミノ基がBoc基、Cbz基、TFA基、アセチル基又はFmoc基などの保護基(「PG」)で保護されているタイプ1の単一保護ジアミノ基質に、クロロホルメート、活性カルボン酸エステル、イソシアネート、活性炭酸塩又はハロゲン化スルホニルなどの活性カルボニル基を付加することにより容易に調製される(スキーム1を参照)。カップリング生成物3は、所望の官能性を設けるためのアジド求核剤によるハロゲン化物の置換など、さらなる修飾を受け得る。他の場合、中間体3を脱保護してα−アミノ酸マスキング基を取り除くことにより、所望の式V類似体が得られる。
【化14】
【0055】
ヒドロキシルアミノ酸9を、活性カルボニル、例えば、カルボン酸エステル、イソシアネート、酸塩化物、活性炭酸塩又はハロゲン化スルホニルを含む基質にコンジュゲートすることにより、式VI類似体を調製した。カップリング生成物11は、ハロゲン化物又は活性アルコールなどの脱離基の置換によるアジド官能基の導入など、さらなる修飾を受けることができる。最終的な脱保護によってα−アミノ酸マスキング基を取り除くことにより、所望のアミノ酸類似体12が得られる。保護基はスキーム1のとおり用いられ得る。スキーム2を参照:
【化15】
【0056】
タンパク質への非天然アミノ酸の組込み
本明細書に開示されるピロリシン類似体は組換えタンパク質に組み込まれ得る。詳細には、アンバーサプレッションを用いて組換えタンパク質への類似体の部位特異的組込みを達成することができ、ここでは組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列中のピロリシン類似体を挿入しようとする部位にナンセンス(アンバー)コドンが挿入される。この突然変異ヌクレオチド配列が、PylRS及びtRNApylをコードする1つ以上のプラスミドと共に、無細胞発現系の細胞に挿入される。
【0057】
宿主細胞は真核細胞株であってもよく、これが前述のとおりのDNAコンストラクトを含むベクターで形質転換される。
【0058】
或いは、無細胞発現系が提供され、ここでは宿主細胞から得られた合成反応ライセートが、ポリペプチドの合成に必要な少なくとも1つの成分を含む。合成反応ライセートは細菌細胞又は真核細胞から得られる。好ましくは、合成反応ライセートは真核細胞から、より好ましくはウサギ網状赤血球又はコムギ胚芽から得られる。
【0059】
好ましくは、無細胞発現系は野生型PylRS及び本発明のtRNApylの発現能を有し、ここでtRNApylは、合成反応ライセートを得るために使用される細胞に本発明のDNAコンストラクトで導入される。
【0060】
本発明での使用に好適な無細胞発現系は、例えば、国際公開第201008110号パンフレット、国際公開第2010081111号パンフレット、国際公開第2010083148号パンフレット(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0061】
ピロリシン類似体が細胞又は発現系に加えられると、前記類似体は組換えタンパク質に特定の位置で組み込まれる。nnAA及びtRNApylにpylRSが結合し、続いてtRNApylがnnAAによってアミノアシル化される。アンバーアンチコドンを含むこのtRNApylがサイトゾルに放出され、そこでアンバー終止コドンに応答してリボソームと相互作用することができ、nnAAが放出されて成長ポリペプチド鎖とペプチド結合を形成する。
【0062】
本発明のピロリシン類似体を組み込むように修飾される組換えタンパク質には、部位特異的翻訳後修飾に適したあらゆる組換えタンパク質、例えば、治療用タンパク質、例えばサイトカイン、抗体及び抗体誘導体(Fab断片、又は一本鎖抗体、例えば単鎖可変断片(scfv)など)、ペプチド、酵素、融合タンパク質、デコイ受容体、タンパク質ワクチン、タンパク質ホルモン、例えばインスリン、成長因子(例えばヒト成長ホルモン、hGH、hGCSF、hFSH、hHCG)が含まれる。本発明のピロリシン類似体によって修飾可能なさらなるタンパク質には、診断用標識、造影用試薬が含まれる。
【0063】
好適には、タンパク質は、本発明の1つ又は2つ以上のnnAA(ピロリシン類似体)を組み込むように部位特異的に修飾され得る。例えば、抗体が本発明のnnAAを重鎖に、又は軽鎖に、又は軽鎖及び重鎖の両方に組み込み得る。
【0064】
組み込まれた非天然アミノ酸を有するタンパク質の部位特異的コンジュゲーション
組み込まれた本発明のピロリシン類似体を有するタンパク質は、機能化タンパク質コンジュゲートの調製に用いられ得る。組み込まれた非天然アミノ酸を有するタンパク質とコンジュゲートされ得る分子には、(i)他のタンパク質、例えば抗体、特にモノクローナル抗体;(ii)ポリマー、例えばPEG基又はその系の半減期を延長させ得る他の基;(iv)細胞傷害剤、例えばアウリスタチンF;及び(v)薬物部分、例えばドキソルビシン及び放射性同位体を含む部分が含まれる。さらにこのような修飾タンパク質を、薬物又はそうした強力な化合物の標的化デリバリー用のヌクレオチドにコンジュゲートしてもよい。
【0065】
特定の実施形態のさらなる詳細を、以下の抗体薬物コンジュゲートに関する考察に提供する。
【0066】
ピロリシン類似体は好都合には、他のアミノ酸と副反応を起こすリスクのない標的化された形でのコンジュゲーションを可能にするユニークな化学基を含み得る。例えば非天然アミノ酸はアジド基又はアルキン基を含み、コンジュゲートしようとする対応するアルキン基又はアジド基を含む分子とのヒュスゲン1,3−双極性環化付加反応を用いた反応を可能にし得る。
【0067】
本発明の好ましいコンジュゲーションケミストリーは、天然20アミノ酸と直交性の反応を含む。かかる反応は天然20アミノ酸と相互作用せず、又はそれとの副反応を生じることなく、その反応に関連する官能基に特異的である。好適には、必要な官能基は本発明のピロリシン類似体によって標的タンパク質に組み込まれる。
【0068】
さらに、前記反応は、タンパク質にとって破壊的でない条件下、例えば水性溶媒下、タンパク質が許容でき且つその溶解度を維持するpH範囲において、タンパク質に有害な影響をもたらさない温度で進行する。
【0069】
タンパク質とリンカーとの間の結合部分の安定性を増加させることが有利であり得る。従来の方法は、マレイミドとの反応によりシステインのチオール基にコンジュゲートしてチオールエーテルを形成する。チオールエーテルは逆反応を起こして抗体からリンカー薬物誘導体を放出させ得る。本発明のある実施形態では、アジドとアルキンとの間で用いられるコンジュゲーションケミストリーにより、大幅に安定性が増した、それほど可逆性を起こし易くない芳香族トリアゾールがもたらされる。
【0070】
加えて、反応の生成物、タンパク質とペイロードとの間の結合は、安定していて、従来の結合(アミド、チオールエーテル)に伴う安定性と等しいか或いはそれより高くなるはずである。コンジュゲーションの妨げではないものの、往々にして、コンジュゲーション反応を天然の条件下で行うことができる場合、それにより余分なリフォールディング処理のステップがなくなるため有利である。
【0071】
本発明のコンジュゲートの作製に好ましい化学的コンジュゲーションには、以下が含まれる:3+2アルキン−アジド環化付加、3+2双極性環化付加、ヒュスゲン(Husigen)3+2環化付加、銅によって促進されるアジド−アルキン環化付加(CuAAC)、ルテニウムによって促進されるアジドアルキン環化付加(RAAC)、金属によって促進されるアジドアルキン環化付加(MAAC)、及び歪みによって促進されるアジドアルキン環化付加(SPAAC)、パラジウムベースのカップリング、例えば、ヘック反応、薗頭反応、鈴木反応、スティルカップリング、檜山/デンマーク反応、オレフィンメタセシス、ディールズ・アルダー反応、ヒドラジン、ヒドラジド、アルコキシアミン又はヒドロキシルアミンとのカルボニル縮合;ニトリル及びニトリル酸化物による歪みによって促進される環化付加;電子によって促進される環化付加;フラグメントエクストルージョン(fragment extrusion)環化付加;アルケン環化付加と、続くβ脱離反応。
【0072】
好ましい一実施形態によれば、組み込まれたアミノ酸はアジド基又はアルキン基を含み、化学修飾方法は、前記アジド基又はアルキン基を、アルキン基又はアジド基を含む試薬と反応させることを含む。想定される反応は、トリアゾール結合の生成をもたらすヒュスゲン1,3−双極性環化付加反応である。アルキン基又はアジド基を含む試薬は、アルキン基又はアジド基を場合によりリンカーを介して有するタンパク質(例えば抗体)又は細胞傷害剤又は薬物又は半減期を延長させるのに好適な物質(例えばPEG基)であり得る。
【0073】
場合により、ヒュスゲン1,3−双極性環化付加反応はCu(I)触媒作用の存在下で実施することができる。
【0074】
好ましくは、銅触媒環化付加反応は、水溶液中システイン及びトリス[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン(TBTA)の存在下、室温で行われる。或いは、銅触媒環化付加反応は、水溶液中アスコルビン酸ナトリウム及びトリス(3−ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA)の存在下、4℃〜50℃で行われる。反応はまた、DMSO、DMF、メタノール、エタノール、t−ブタノール、トリフルオロエタノール、プロピレングリコール、エチレングリコール及びヘキシレングリコールからなる有機成分を含む水/有機混合溶液中で行われてもよい。
【0075】
ある変形例の反応では、組み込まれたアミノ酸がアジド基又はアルケン基を含み、化学修飾方法が、前記アジド基又はアルケン基を、アルケン基又はアジド基を含む試薬と反応させることを含む。アルケン基又はアジド基を含む試薬は、アルキン基又はアルケン基を場合によりリンカーを介して有するタンパク質(例えば抗体)又は毒素又は半減期を延長させるのに好適な物質(例えばPEG基)であり得る。
【0076】
組み込まれたnnAAと標的ペイロードとの間の部位特異的コンジュゲーションは、抗体、抗体断片、及びサイトカインなどの完全に折り畳まれたタンパク質で行うことができる。或いは、コンジュゲーションは、ドデシル硫酸ナトリウム及び尿素などの変性剤の存在下において変性タンパク質上で行うことができる。銅触媒によるアジドアルキン付加は、ジチオスレイトール及び2−メルカプトエタノールなどの変性剤及び還元剤の存在下で行うことができる。
【0077】
2つ以上のnnAAが標的タンパク質(例えば抗体)に組み込まれるとき、化学修飾は同じであっても又は異なってもよい。例えば2つのnnAAが組み込まれる場合に、一方が薬物部分にコンジュゲートされるように修飾されてもよく、且つ一方がPEG部分にコンジュゲートされるように修飾されてもよい。
【0078】
好都合には、異なるが相補的な反応基を有する2つ以上の本発明のnnAAを組み込むと、前記nnAAが互いに反応して分子内連結を生じ得る。
【0079】
ある実施形態では、本発明のコンジュゲーションケミストリーは抗体薬物コンジュゲートの調製に用いられる。このコンジュゲーションケミストリーはまた、抗体−タンパク質コンジュゲート、タンパク質−タンパク質コンジュゲート、例えば抗体断片で構成される二重特異性抗体の構築にも用いられ得る。このコンジュゲーションケミストリーはまた、ポリマー結合薬物コンジュゲートと抗体及び抗体断片などのターゲティング剤とのコンジュゲーションにも用いられ得る。このコンジュゲーションケミストリーはまた、PEGなどのポリマーをタンパク質と結合させることによる薬物動態特性の操作にも用いることができる。
【0080】
PEG部分
標的タンパク質はPEG部分にコンジュゲートされ得る。PEG部分は抗体薬物コンジュゲートに組み込まれ得る。PEG部分は、典型的には0.5kDa〜40kDa、例えば5kDa〜40kDaの範囲の分子量を有し得る。より好ましくは、PEG部分は約20kDaの分子量を有し得る。加えて、PEG部分は100〜2000Daの範囲の分子量を有し得る。PEG部分は直鎖状又は分枝状又はマルチアーム型であってもよい。
【0081】
PEG部分は、末端アルキン、アジド、シアン化物、シクロアルキン、アルケン、ハロゲン化アリールで官能化することができる。PEGは、単官能性、ホモ二官能性、ヘテロ二官能性、及びホモ多官能性となるようにして官能化することができる。
【0082】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)
本発明に係るピロリシン類似体は、抗体当たりの薬物(又は他のコンジュゲートされる分子)の数及び抗体におけるそれらの薬物の位置が明確に制御された均一な性質の抗体薬物コンジュゲート(所与の薬物、典型的には細胞傷害性薬物、或いはタンパク質又はPEG基に合成リンカーによって共有結合した組換え抗体)の作製に特に有用であり、従って組み込まれた非天然アミノ酸を含むモノクローナル抗体が得られ、これは直交化学により薬物部分(又は他のコンジュゲートされる分子)を有するリンカーと部位特異的にコンジュゲートされる。
【0083】
本発明のピロリシン類似体によって得られるADCは、以下のステップを含む方法に従い製造され得る。
1.本発明の安定細胞株に、完全長抗体をコードするDNA配列を有する1つ以上のプラスミドを導入するステップであって、それにより配列内の特定の位置に終止コドンが導入されるステップ
2.ピロリシン類似体(nnAA)が所望の1つ又は複数の位置に導入された修飾抗体を精製するステップ
3.抗体に導入されたnnAAに相補的な官能基を含むように修飾された細胞毒−リンカー誘導体を、相補的な反応基を含む修飾抗体と直交化学によって反応させるステップ
4.得られたADCを精製するステップ
【0084】
従って、本発明はまた、ユニークな反応性官能基を有する非天然アミノ酸を所望の位置に組み込むように抗体成分が修飾されているADCであって、従ってかかる官能基により薬物部分(又はタンパク質又はPEG基)とのコンジュゲーションが可能となるADCも提供する。
【0085】
ある実施形態では、本発明は、タンパク質、薬物及びPEG部分から選択される1つ以上の部分(例えば1つ、2つ、3つ又は4つ、好ましくは1つ又は2つ、特に1つ)とトリアゾール部分を含むリンカーを介してコンジュゲートされる抗Her−2抗体を含む抗体コンジュゲートを提供する。
【0086】
詳細には、トリアゾール部分は、抗Her−2抗体の配列に組み込まれた非天然アミノ酸の側鎖のアジド又はアルキン部分と、タンパク質、薬物又はPEG部分に結合したアルキン又はアジド部分との反応によって形成され得る。
【0087】
一実施形態では、トリアゾール部分は、抗Her−2抗体の配列に組み込まれた非天然アミノ酸の側鎖のアジド又はアルキン部分と、タンパク質、薬物又はPEG部分に結合したアルキン又はアジド部分とのCu(I)触媒作用の条件下における反応によって形成される。
【0088】
Cu(I)触媒作用は、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、チオール化銅、シアン化銅などの天然Cu(I)源のいずれかを使用することにより達成される。Cu(I)種はまた、銅(II)源及び還元剤を使用することによりインサイチューで生成させることもできる。銅(II)源は、硫酸銅、塩化銅(II)、又は酢酸銅であってもよい。還元剤は、アスコルビン酸ナトリウム、ジチオスレイトール、TCEP、b−メルカプトエタノール、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、亜硫酸水素ナトリウム、シスタミン及びシステインであってもよい。
【0089】
好適には、Cu(I)触媒による環化付加は、反応開始時に存在するか、又はアスコルビン酸ナトリウムによる硫酸ナトリウムなど、Cu(II)源の還元によってインサイチューで生じるCu(I)種を安定化させるため、TBTA、THPTA、フェナントロリン誘導体、ピリジルメタンイミン誘導体、ジエチレントリアミン、ビピリジン誘導体、TMEDA、N,N−ビス(2−ピリジルメチル)アミン(BPMA)誘導体、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン(TPEN)誘導体、トリアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、HEPES及びMESを含めたリガンドの存在下で実施される。
【0090】
一実施形態では、銅アジドアルキン環化付加がコンジュゲーションに用いられる。好適には、この反応は、末端アルキンを有するアウリスタチン、アマニチン、タキソール又はドキソルビシンなどの細胞傷害剤を利用する。さらにこの反応は、硫酸銅、酢酸銅、ヨウ化銅又は臭化銅などの銅源;アスコルビン酸ナトリウム、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、亜硫酸水素ナトリウム、ジチオスレイトール、システイン、b−メルカプトエタノールなどの還元剤;トリス[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン(TBTA)又はトリス(3−ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA)などの銅キレートリガンドを用いる。好適には、反応は4〜50℃で実施され得る。好適には、反応時間は0.5〜48時間の範囲である。代替的実施形態では、歪みによって促進されるアジドアルキン環化付加がコンジュゲーションに用いられる。好適には、この反応は、色素、PEGポリマー、又はシクロオクチン(cycloocytne)基を有するアウリスタチンなどの細胞傷害剤を利用する。好適には、反応は室温で0.5〜48時間インキュベートさせる。
【0091】
薬物部分
細胞毒薬物部分などの本発明の薬物部分としては、小分子、天然産物、合成的に誘導された薬物、免疫毒素などのタンパク質、及び放射性核種が挙げられる。
【0092】
ある実施形態では、薬物部分はアウリスタチン部分、例えば、アウリスタチン又はその誘導体、例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)(ベドチン)又はモノメチルアウリスタチンF(MMAF)、アウリスタチンF(AF)、アマニチン、パクリタキセル及びドキソルビシンである。
【0093】
他の薬物部分としては、メイタンシン、パクリタキセル、ドキソルビシン及び免疫毒素、例えば外毒素又はボウガニン(bouganin)など、並びにヨウ素131、イットリウム90、サマリウム135、及びストロンチウム89などの放射性核種が挙げられ、これらもまた有機分子中に組み込まれ得る(例えば:MMAE:Senter,PE,et.al,BLOOD,102,1458−1465。MMAF:Senter,PE,et.al.,Bioconj.Chem.2006,17,114−124。メイタンシン:Lewis−Phillips GD,Cancer Res.,63,9280−9290,2008。ボウガニン(Bouganin):MacDonald GC,et.al,J.Immunotherapy,32 574−84,2009を参照。
【0094】
最も好適には、薬物部分は、ドキソルビシン、パクリタキセル及びアウリスタチン部分から選択される部分である。
【0095】
塩
本明細書に記載されるピロリシン類似体は、場合により塩の形態で用いられ得る。任意のかかる塩が本発明の態様を形成する。カルボン酸の塩には、第1族及び第2族金属と形成される塩、特にナトリウム塩及びカリウム塩などの可溶性塩が含まれ得る。アミンの塩には、HCl、HBr又は酢酸などの弱酸及び強酸と形成される塩が含まれ得る。
【実施例】
【0096】
実施例1.式V及び式VI類似体の調製
(2S)−2−アミノ−6−(ペンタ−4−エナミド)ヘキサン酸(式V.5)の調製
【化16】
25mL丸底フラスコに、ジオキサン(10mL)中に懸濁したN−Boc−リシン(500mg、2.0mmol)を入れた。1M K
2CO
3を添加し(5mL)、溶液を0Cに冷却した。ジオキサン(2mL)中の4−ペンテノイルクロリド(224uL、2.0mmol)をゆっくりと加えた。溶液を0Cで1時間、次に室温で4時間撹拌しておいた。溶液を抽出漏斗に移し、水とエーテルとに分配した。有機層を取り出し、水層をクエン酸で酸性(pH=2)にした。水層を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮した。得られた残渣を次のステップに進めた。
【0097】
粗生成N−Boc−ε−N−4−ペンテノイルアミド−リシンをアセトニトリル(5mL)及びTFA(2mL)と共に50mL丸底フラスコに入れ、2時間磁気撹拌した。混合物を濃縮した。溶液をトルエン(10mL)で処理して濃縮し(2×)、アセトニトリル(10mL)で処理して濃縮した(2×)。残渣を真空下で一晩乾燥させた。残渣をMeOH中に取り、メチル−t−ブチルエーテルで沈殿させた。遠心によって粘稠性の油が単離され、上清は廃棄した。分析的MS:m/z(ES+)予測値229.2(M+H)+、実測値230.3。
【0098】
(S)−2−アミノ−6((2−オキソ−2−フェニルアセトアミド)ヘキサン酸(式V.6)の調製
【化17】
マグネチックスターラ付き50mL丸底フラスコにおいて、ジクロロメタンとDMFとの2:1混合物(20mL)中のピルビン酸(3.5g、23.3mmol)を溶解した。この混合物に、DCC(5.7g、27.6mmol)及びNHS(3.2g、27.6mmol)を添加した。混合物を撹拌しながら50Cに30分間加熱した。この溶液を放冷し、次に別個のマグネチックスターラ付き100mL丸底フラスコ中のDMF(20mL)中N−Boc−リシン(5.2g、21.2mmol)の懸濁液にフィルタに通して添加した。活性化エステルの添加後にトリエチルアミン(8.8mL、63.6mmol)を添加し、混合物を一晩撹拌した。混合物を酢酸エチルとクエン酸とに分配した。これらの層を分離し、水層を酢酸エチルで4回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製すると、最終的なN−Bocリシン誘導体が油として得られた。
【0099】
100mL丸底フラスコに、アセトニトリル(50mL)中のケト−N−Bocリシン誘導体(4g、10.6mmol)を入れた。これに塩酸の溶液(15mL、ジオキサン中4N)を添加した。この溶液を2時間撹拌して濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによる最終的な精製により、目標のアミノ酸が得られた。分析的MS:m/z(ES+)予測値278.1(M+H)+、実測値279.2。
【0100】
(2S)−2−アミノ−6−(2−アジドアセトアミド)ヘキサン酸(式V.8)の調製
【化18】
25mL丸底フラスコに、ジオキサン(5mL)中に懸濁したN−Boc−リシン(500mg、2.0mmol)を入れた。飽和NaHCO
3を添加し(2mL)、溶液を0℃に冷却した。ジオキサン(2mL)中のブロモアセチルクロリド(169uL、2.0mmol)をゆっくりと加えた。溶液を0Cで1時間、次に室温で4時間撹拌しておいた。溶液を抽出漏斗に移し、水とエーテルとに分配した。有機層を取り出し、水層をクエン酸で酸性(pH=2)にした。水層を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮した。得られた残渣を次のステップに進めた。
【0101】
50mL丸底フラスコに、ジオキサン(10mL)中の粗生成N−Boc−ε−2−ブロモアセチル−リシン(740mg、2.0mmol)を入れた。これにナトリウムアジドの溶液(10mL、1M)を添加した。この溶液を60℃で一晩撹拌した。混合物をクエン酸(1M、50mL)と酢酸エチル(100mL)とに分配した。有機層を取り置き、水層をさらに3回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して油にした。
【0102】
粗生成N−Boc−ε−2−アジド−アセチル−リシンをアセトニトリル(10mL)に溶解し、TFA(2mL)を添加した。混合物を2時間撹拌し、次に濃縮した。溶液をトルエン(10mL)で処理して濃縮し(2×)、アセトニトリル(10mL)で処理して濃縮した(2×)。残渣を真空下で一晩乾燥させた。残渣をMeOH中に取り、メチル−t−ブチルエーテルで沈殿させた。遠心によって粘稠性の油が単離され、上清は廃棄した。分析的MS:m/z(ES+)予測値229.1(M+H)+、実測値230.2。
【0103】
ヒドロキシノルロイシン誘導体(式VI.1及び式VI.2)の調製
【化19】
磁気撹拌付き100mL丸底フラスコに、N−Boc−ヒドロキシルノルロイシン(1g、4.1mmol)及びアセトニトリル(50mL)を入れた。混合物を0℃に冷却し、p−クロロギ酸ニトロフェニル(979mg、4.9mmol)及びピリジン(2mL)を添加し、混合物を一晩撹拌した。混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーによって精製した(シリカ、DCM/MeOH勾配)。
【0104】
【化20】
磁気撹拌付き100mL丸底フラスコに、25mLのジオキサン中の2−N−Boc−臭化エチル(1g、4.4mmol)を入れた。これにナトリウムアジド(1M、22.2mmol)の溶液を添加した。この溶液を60Cで一晩撹拌した。混合物を水と酢酸エチルとに分配した。酢酸エチル層を取り置き、水層を酢酸エチルでさらに3回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して油にした。
【0105】
この油をアセトニトリル(35mL)中に取り、ジオキサン中のHCLを添加した(4M、10mL)。混合物を2時間撹拌し、真空下で濃縮した。
【0106】
(2S)−2−アミノ−6−{[(2−アジドエチル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸(式VI.1)の調製
【化21】
50mL丸底フラスコに、ジオキサン(10mL)中のN−Boc−ノルロイシンp−ニトロフェニルカーボネート(503mg、1.2mmoL)を入れた。これにジオキサン(5mL)及びピリジン(pyidine)(1mL)中のアミノ−アジド(105mg、1.2mmol)の溶液を添加した。この溶液を一晩撹拌した。混合物を酢酸エチルと500mMクエン酸とに分配した。酢酸エチル層を取り置き、水層を酢酸エチルでさらに3回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して油にした。この油をフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製した。
【0107】
単離したBoc保護アミノ酸をアセトニトリル(acetontirile)(15mL)に取り、ジオキサン中のHCl(4M、5mL)で処理した。混合物を2時間撹拌し、真空下で濃縮した。
【0108】
(2S)−2−アミノ−6−[[(2−アジドエチル)カルバモイル]オキシ]ヘキサン酸、式VI.1の代替的調製
【化22】
ステップ1:マグネチックスターラ付き4mLバイアルに、Boc−N−6−ヒドロキシノルロイシン(50mg、1eq)及びDMF(1mL)を入れた。これに2−クロロエチルイソシアネート(17.3mg、1.0eq)及びピリジン(32.3uL、2eq)を添加した。バイアルにキャップをし、5時間撹拌しておいた。溶液を抽出漏斗に移し、酢酸エチル及び100mMクエン酸で希釈した。混合物を振盪し、それらの層を分離した。水層を酢酸エチルでさらに2回抽出した。有機層を合わせ、5%塩化リチウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮した。生成物を質量分析法によって同定し、直接次のステップに回した。
【0109】
ステップ2:マグネチックスターラ付き4mLバイアルに、上記からの粗生成クロロ誘導体及びDMSO(1mL)を入れた。ナトリウムアジド(130mg、5eq)及びピリジン(32.3uL、2eq)をこの混合物に添加し、バイアルにキャップをした。混合物を60℃で一晩撹拌した。混合物を抽出漏斗に移し、100mMクエン酸及び酢酸エチルで希釈した。混合物を振盪し、それらの層を分離した。水層を酢酸エチルでさらに2回抽出した。有機層を合わせ、5%塩化リチウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮した。生成物を次のステップに進めた。
【0110】
最終ステップ:20mLバイアルに、粗生成Boc保護アミノ酸及びアセトニトリル(2mL)を入れた。これにジオキサン中の塩酸の溶液(4N、2.5mL)を添加した。この溶液を2時間撹拌し、次に減圧下で濃縮した。混合物を凍結乾燥して半固体にし、翻訳試験で使用した。分析的MS:m/z(ES+)予測値259.1(M+H)+、実測値260.2。
【0111】
(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−イン−1−イル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸(式VI.2)の調製
【化23】
50mL丸底フラスコに、ジオキサン(10mL)中のN−Boc−ノルロイシンp−ニトロフェニルカーボネート(337mg、0.8mmoL)を入れた。これにジオキサン(5mL)中のアミノ−アジド(135mg、2.4mmol)の溶液を添加した。この溶液を一晩撹拌した。混合物を酢酸エチルと500mMクエン酸とに分配した。酢酸エチル層を取り置き、水層を酢酸エチルでさらに3回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して油にした。この油をフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製した。
【0112】
単離したBoc保護アミノ酸をアセトニトリル(acetontirile)(15mL)に取り、ジオキサン中のHCl(4M、5mL)で処理した。混合物を2時間撹拌し、真空下で濃縮した。
【0113】
(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−エン−1−イル)カルバモイル]アミノ}ヘキサン酸、式VI.3の調製
【化24】
マグネチックスターラ付き4mLバイアルに、Boc−N−6−ヒドロキシノルロイシン(50mg、1eq)及びDMF(1.5mL)を入れた。これにアリルイソシアネート(18.0uL、1.0eq)及びピリジン(32.3uL、2eq)を添加した。バイアルにキャップをし、4時間撹拌しておいた。溶液を抽出漏斗に移し、酢酸エチル及び100mMクエン酸で希釈した。混合物を振盪し、それらの層を分離した。水層を酢酸エチルでさらに2回抽出した。有機層を合わせ、5%塩化リチウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮した。生成物を質量分析法によって同定し、直接次のステップに回した。
【0114】
20mLバイアルに、アセトニトリル(2mL)中の粗生成ヒドロキシルロイシン−アリルカルバメート誘導体を入れた。これにジオキサン中の塩酸の溶液(4N、2.5mL)を添加した。この溶液を2時間撹拌し、次に減圧下で濃縮した。混合物を凍結乾燥して半固体にし、翻訳試験で使用した。生成物を質量分析法によって確認した。イオン交換クロマトグラフィー(DOWEX−50)でさらなる精製を行うことができた。分析的MS:m/z(ES+)予測値230.1(M+H)+、実測値231.2。
【0115】
実施例2.GFPアッセイによるnnAAとしての新規ピロリシン類似体の翻訳試験
インビトロ細胞ベースアッセイを開発して、pylRS/tRNA対と本発明のピロリシン類似体(nnAA)の適合性及び標的タンパク質へのnnAAの組込み効率を評価した。このために、pylRS(3H7)を安定に発現するHEK293細胞に、標準的なトランスフェクションプロトコルを用いてtRNApylの発現用プラスミド及びGFPY40をコードするレポーターコンストラクト(アミノ酸残基40番(ここでは1番が開始因子メチオニンである)にチロシンの代わりにアンバーコドンを含む)を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を2mMのnnAAと共に2〜3日間インキュベートした。GFP産生を顕微鏡下目視で観察することによって定性的に分析した。GFP蛍光はAccuriフローサイトメーターを使用したフローサイトメトリーにより定量化し、蛍光細胞の幾何平均を決定した。
【0116】
この細胞ベースのアッセイを用いることにより、種々のnnAAがpylRSの好適な基質であって、標的タンパク質へのその翻訳が可能かどうかを決定した。PylRS/tRNApyl対を発現し、且つGFPY40レポーター遺伝子をコードするベクターを含む細胞を、nnAAの存在下でインキュベートした。PylRS/tRNApyl対によって容易に利用されるnnAAは、GFPのアンバー部位に対するnnAAの翻訳を裏付け、遺伝子のリードスルーを可能にして完全長GFP(蛍光タンパク質)を産生させる。細胞の蛍光強度はnnAAの組込み効率に依存する。従って、十分に利用されないnnAAは弱蛍光又は非蛍光細胞を生じる。顕微鏡観察により、pylRSが使用可能な複数のnnAAを同定した(表1、陽性GFP)。さらに、各試料の相対発現レベルを、pylRSによって効率的に利用されることが知られる基質により生じるレベルと比較した。式V.1(MFI=931,289)、式V.2(MFI=1,676,250)及び式V.3(MFI=2,250,000)(表1を参照のこと)は、幾何平均で高いGFP発現レベルを裏付けた。
【0117】
本発明の類似体、式VI.1及び式VI.3は、使用した実験条件下でGFPレポーター遺伝子に組み込まれ緑色細胞を産生したことが、本発明者らにより見出された。これらのうち、式VI.1の類似体は高いGFP発現レベル(MFI 904206)を裏付けたことから、試験した実験条件下でpylRS/tRNA対によって効率的に利用される類似体に相当する(表2を参照のこと)。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
抗Her2抗体の構築及び発現
2つの非天然アミノ酸(各重鎖に1つずつ)を含む完全長抗Her2抗体(4D5−2AZ ab)を哺乳類細胞で発現させた。nnAA(アジド部分を含む)を選択した部位に組み込み、プロテインA樹脂(GE Healthcare)か或いはIgSelect(GE Healthcare、17096901)を使用するアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。次に精製した材料を濃縮し、コンジュゲーション反応に供した。
【0121】
マウス抗体4D5の重鎖及び軽鎖の両方の可変領域を、ヒトIgGをコードする遺伝子を含むベクターにクローニングすることにより、Her2/neuの細胞外ドメインに特異的な抗体を作成した。4D5の可変領域は、重複オリゴマーを使用する遺伝子合成によって作成し、pFUSE−CHIg−hG1(IgG1重鎖;γ)及びpFUSE−CHLIg−hK(軽鎖;κ;Invivogen)によりコードされるヒトIgG1フレームワークにクローニングして、マウス−ヒトハイブリッドを作成した。アンバーコドンを部位特異的突然変異誘発によって重鎖(γ)のK274位に導入した。DNA配列決定により、アンバーコドンを含むクローンを同定した。組込み用コンストラクトを作成するため、重鎖のプロモーター及びORFをPCR増幅し、制限酵素消化及びライゲーションによってpOptivec(Life Technologies)にクローニングした。軽鎖及びtRNAの単一コピーを、重複オリゴマーを使用する二段階PCR法でつなぎ合わせ、重鎖を含むpOptivecプラスミドの利用可能な部位にクローニングした。次にこのコンストラクトを、pylRS/tRNA対を含むCHO細胞株にトランスフェクトし、高発現のIgGを示す安定にトランスフェクトされた細胞株を選択した。これが、nnAAを含むmAbを安定に発現する細胞株の第2の例に相当し、この手順がmAbの発現における使用に幅広い適用性を有することが示される。この細胞株を利用して、上記に記載したnnAAを含むIgGを作成した。細胞をExcel DHFR培地(Sigma−Aldrich)において1〜2×10
6細胞/mLの密度まで成長させ、nnAAを培養物に1mMの終濃度となるように添加した。細胞を5日間インキュベートし、成長培地からIgGを精製した。上清を回収し、遠心に供することにより懸濁細胞及び他の残屑を収集した。次に上清を0.22umフィルタでろ過して一切の粒子状物質を取り除いた後、クロマトグラフィーカラムにかけた。ろ過した上清を、AKTAクロマトグラフィーシステムを使用して1mL〜5mL充填済みHiTrapプロテインAセファロースに1〜5mL/分の流量で加えた。結合した物質及び樹脂をPBSで洗浄することにより緩く結合したタンパク質を取り除き、結合した物質を100mMグリシン(pH3.0)により1mL/分の流量で溶出させた。標的タンパク質を含むピーク画分を0.1画分容量の1Mトリス−HCl(pH8.0)で中和した。全てのコンストラクトをPBSに対して4℃で16時間透析し、最終的なリン酸緩衝液中に入れた。その重鎖の両方の274位に組み込まれた式VI.1をnnAAとして有する抗体は、「4D5−2AzAb−HC274−(2S)−2−アミノ−6−{[(2−アジドエチル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸」と称される。
【0122】
4D5−2AzAb−HC274−(2S)−2−アミノ−6−{[(2−アジドエチル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸のペグ化
200uL PCRチューブにリン酸緩衝液(5uL、500mM、pH=7.4)を入れた。4D5−2AzAb−HC274−(2S)−2−アミノ−6−{[(2−アジドエチル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸(式VI.1)の溶液(10uL、0.55mg/mL)を添加し、続いて20KPEGシクロオクチンの溶液(3.3、60mg/mL)を添加した。この溶液をボルテクサーで激しく混合した。混合物を一晩静置しておいた。混合物を200uLに希釈し、プロテインA磁気ビーズに加えた。混合物をボルテックスし、回転させてビーズを90分間混合した。ビーズを固定化し、流れ抜ける物質は廃棄した。ビーズをPBS(2×)で洗浄し、次に還元ゲル緩衝液に懸濁した。ボルテックスし、次に95Cに3分間加熱した。懸濁液をSDS−PAGEゲルに直接ロードした。SDS−PAGEゲルのクーマシー(Commassie)染色は、重鎖の選択的なペグ化を示した(
図1、レーン3)。
【0123】
SPAACによる蛍光色素(fluoroscene dye)との4D5−2AzAb−HC274−(2S)−2−アミノ−6−{[(2−アジドエチル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸のコンジュゲーション
200uL PCRチューブにリン酸緩衝液(65uL、50mM、pH=7.4)を入れた。4D5−2AzAb−HC274−(2S)−2−アミノ−6−{[(2−アジドエチル)カルバモイル]オキシ}ヘキサン酸の溶液(30uL、0.55mg/mL)を添加し、続いて溶液DMCO−Fluor 488シクロオクチン(5.4、DMSO中5mM、クリックケミストリーツール)を添加した。この溶液をボルテクサーで激しく混合した。混合物を24時間静置しておいた。混合物をHICクロマトグラフィー(1M硫酸ナトリウムからリン酸緩衝液への勾配を含む東ソーTSKgel Butyl NPR)により分析すると、コンジュゲーションが起こり、1つ又は2つの部位でコンジュゲーションが起こった混合物(概してDAR1種及びDAR2種と称される;ここでDARは薬物対抗体比として定義される)が得られたことが示された(
図2)。
【0124】
配列表
配列番号1
PylRSメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)野生型ヌクレオチド配列
【化25】
配列番号2
PylRS、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)野生型アミノ酸配列
【化26】
配列番号3
PylRSメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)Y384F突然変異ヌクレオチド配列
【化27】
配列番号4
PylRSメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)Y384F突然変異アミノ酸配列
【化28】
配列番号5
tRNApylメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)Go1
【化29】
配列番号6
U6 snRNAプロモーター
【化30】
配列番号7
U6−tRNApylコンストラクト
【化31】
配列番号8
GFPヌクレオチド配列
【化32】
配列番号9
GFPアミノ酸配列
【化33】
配列番号10
GFPY40ヌクレオチド配列
【化34】
配列番号11
GFPY40アミノ酸配列
【化35】
配列番号12
抗Her2(4D5)γヌクレオチド配列
【化36】
配列番号13
抗Her2(4D5)γアミノ酸配列
【化37】
配列番号14
抗Her2(4D5)γ_K274アンバーヌクレオチド配列
【化38】
配列番号15
抗Her2(4D5)γ_K274アンバーアミノ酸配列
【化39】
配列番号16
抗Her2(4D5)κヌクレオチド配列
【化40】
配列番号17
抗Her2(4D5)κアミノ酸配列
【化41】
【0125】
参考文献
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【0126】
本明細書で引用される全ての特許及び特許出願は、全体として参照により組み入れられる。
本発明の実施形態として、例えば以下を挙げることができる。
(1) 式VI:
【化42】
[式中
Z=CH
2、CH−NH
2、CH−OH、NH、O、S;
FG=アジド、アルケン、アルキン、ケトン、エステル、アリール又はシクロアルキン;及び
b=整数1〜4である]
で表されるピロリシン類似体。
(2) ZがNHである、(1)に記載の式VIのピロリシン類似体。
(3) bが1又は2である、(1)又は(2)に記載の式VIのピロリシン類似体。
(4) FGが、−N
3、−CH=CH
2、−C≡CH、−COCH
3、COOCH
3、
ハロゲンによって置換されたフェニル
、又はシクロオクチンを表す、(1)〜(3)のいずれかに記載の式VIのピロリシン類似体。
(5)
【化43】
【化44】
【化45】
から選択される、(1)に記載のピロリシン類似体。
(6)
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
から選択されるピロリシン類似体。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の1つ以上のピロリシン類似体を非天然アミノ酸として含む突然変異タンパク質。
(8) (1)〜(6)のいずれかに記載の1つのピロリシン類似体を非天然アミノ酸として含む、(7)に記載の突然変異タンパク質。
(9) 各重鎖及び/又は軽鎖に(1)〜(6)のいずれかに記載の1つ以上のピロリシン類似体を非天然アミノ酸として含む抗体。
(10) 各重鎖及び/又は軽鎖に(1)〜(6)のいずれかに記載のピロリシン類似体を非天然アミノ酸として含む、(10)に記載の抗体。
(11) タンパク質、細胞傷害剤、薬物及びポリマーから選択される1つ以上の部分に前記1つ以上の非天然アミノ酸を介してコンジュゲートされる、(7)〜(9)のいずれかに記載の突然変異タンパク質又は抗体。
(12) PEG部分にコンジュゲートされる、(11)に記載の突然変異タンパク質。
(13) 抗体部分にコンジュゲートされる、(11)に記載の突然変異タンパク質。
(14) 細胞傷害剤部分にコンジュゲートされる、(11)に記載の突然変異タンパク質。
(15) 薬物部分にコンジュゲートされる、(11)に記載の突然変異タンパク質。
(16) 1つ以上の非天然アミノ酸を含む突然変異タンパク質の製造における(1)〜(6)のいずれかに記載のピロリシン類似体の使用。
(17) 前記タンパク質が抗体である、(16)に記載の使用。