特許第6321661号(P6321661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321661タンジェンシャルフロー灌流システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321661
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】タンジェンシャルフロー灌流システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   C12M1/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-534432(P2015-534432)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公表番号】特表2015-530110(P2015-530110A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】SE2013051110
(87)【国際公開番号】WO2014051503
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月20日
(31)【優先権主張番号】1251091-3
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ゲバウアー,クラウス
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0111486(US,A1)
【文献】 特開昭62−224286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 − 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の灌流培養システム(1、31、51)であって、当該システムが、
(a)1以上のバイオリアクター(2、32、52)と、
(b)保持液入口(4、34、54)と、保持液出口(5、5、55)と、1以上の透過液出口ポート(6、36、56)とを備える1以上のフィルターユニット(3)と、
(c)保持液入口に流体接続されている1以上の往復ポンプ(7、37、57)と
を備えており、
保持液入口が、バイオリアクターから保持液入口への方向の流れを許容するが逆方向の流れを防ぐように構成された入口逆止弁(8、38、58)を介してバイオリアクターに流体接続され、保持液出口が、保持液出口からバイオリアクターへの方向の流れを許容するが逆方向の流れを防ぐように構成された出口逆止弁(9、39、59)を介してバイオリアクターに流体接続されており、
入口逆止弁及び出口逆止弁が各々チューブ分岐点(10、40、60)に流体接続され、分岐点がさらに、一本のチューブの所定の長さ部分(11、41、61)を介してバイオリアクターに接続されている、システム。
【請求項2】
往復ポンプがダイヤフラムポンプであり、システムが、往復ポンプ(37)内の駆動流体圧力を測定するように構成された駆動流体圧力変換器(46)を備える、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
さらに、入口逆止弁(8、38、58)と分岐点(10、40、60)との間に入口制御弁(42、63)及び/又は出口逆止弁(9、39、59)と分岐点(10、40、60)との間に出口制御弁(43、64)を備える、請求項1又は請求項2記載のシステム。
【請求項4】
さらに、保持液入口の圧力を測定するように構成された入口圧力変換器(44)を備え保持液出口の圧力を測定するように構成された出口圧力変換器(45)を備える、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
さらに、入口圧力変換器(44)及び出口圧力変換器(45)のうちの少なくとも1つから受信した圧力データにより、往復ポンプ(37)、入口制御弁(42)及び出口制御弁(43)のうちの少なくとも1つを制御するように構成された、1以上の制御ユニット(47)を備えており、制御ユニットが入口圧力変換器から受信した圧力データにより、入口制御弁及び往復ポンプのうちの少なくとも1つを制御するように構成されている、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
さらに1以上の制御ユニット(47)に接続された、透過液ポンプ(50)及び透過液圧力変換器(49)を備える、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のシス
テム。
【請求項7】
細胞の灌流培養方法であって、
(a)請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のシステム(1、31、51)を準備するステップ、
(b)細胞培地と細胞をバイオリアクター(2、32、52)に添加するステップ、
(c)撹拌下、バイオリアクター内で細胞を培養するステップ、
(d)培養中、往復ポンプ(7、37、57)を運転して、(i)バイオリアクターから液体を一本のチューブの所定の長さ部分(11、41、61)、分岐点(10、40、60)及び入口逆止弁(8、38、58)を介してフィルターユニット(3、33、53)の保持液入口(4、34、54)へと引き出し、(ii)液体をフィルターユニットの保持液出口(5、35、55)から出口逆止弁(9、39、59)、分岐点(10、40、60)及び一本のチューブの所定の長さ部分(11、41、61)を介してバイオリアクター(2、32、52)に戻すステップ、及び
(e)透過液を透過液出口ポート(6、36、56)から回収するステップ
を含む方法。
【請求項8】
フィルターユニットが、精密濾過膜を備えていて透過液が細胞により発現された目的物質を含んでいるか、或いは限外濾過膜を備えていて細胞により発現された目的物質を保持液中に保持したままバイオリアクターに戻す、請求項7記載の方法。
【請求項9】
さらに、i)往復ポンプ(37、57)及び入口制御弁(42、63)のうちの少なくとも1つを制御して、往復ポンプ(37、57)の外側ストローク中、入口圧力変換器(44)の圧力読み値を所定範囲内に維持すること、及び/又はii)入口圧力変換器(44)及び出口圧力変換器(45)から得られるデータから膜差圧を計算し、往復ポンプ(57)及び/又は入口制御弁(42)及び出口制御弁(43)のうちの少なくとも1つを制御して、膜差圧を予め設定した上限値と下限値との間に維持することを含む、請求項7又は請求項8記載の方法。
【請求項10】
さらに、透過液ポンプ(50)を逆方向に運転してフィルター膜の逆フラッシュを生じさせ透過液圧力変換器(49)からの入力データを用いて制御ユニット(47)で制御することを含む、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオリアクターシステムに関し、より詳細には往復ポンプを用いる灌流培養のバイオリアクターシステムに関する。本発明は細胞を灌流培養する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子工学及び生物工学分野における変革により、近年細胞培養に大きな関心が寄せられている。細胞を培養して、例えば治療、研究、診断目的でタンパク質、受容体、ワクチン、抗体を作製する。
【0003】
灌流培養は、細胞培養としては経済性が比較的高いことが以前から認められている。この操作では、細胞はバイオリアクター内に保持され、産物は有害な代謝副産物とともに常時回収される。バイオリアクターには栄養分を含む供給液が間断なく添加される。灌流培養操作では細胞を高密度で培養することができ、さらに重要なことには細胞を何週間も高増殖性状態に維持できる。このため収量は大幅に増加するが、バイオリアクターに必要な寸法は縮小される。この手法は、初代細胞又は他の成長の遅い細胞の培養にも便利である。
【0004】
ここ近年で灌流操作は一段と開発が進んでいる。米国特許第6,544,424号に開示の灌流システムでは、往復ダイヤフラムポンプが、外側ストローク中にバイオリアクターから培養液を中空糸フィルターを通じて引き出し、内側ストローク中にこの液体を該フィルターを通じてバイオリアクターに押し戻す。外側ストローク中に透過液が生じ、内側ストローク中にフィルターは逆フラッシュされて細胞による閉塞が軽減される。この手法のさらなる開発例が、バイオリアクターと灌流ユニットを合わせて1つの装置とすることに関する国際公開第2012/026978号、及び灌流ユニットを出入りする流れをバイオリアクター内の撹拌の補足にも利用する米国特許公開第2011/0111486号に記載されている。しかし、これらのシステムの濾過効率は最良とはいえず、また、やはり膜の閉塞やファウリング(汚損)に影響されやすい。
【0005】
したがって、濾過をより良好に制御できる、灌流システムの改良された設計が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/077742号
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、濾過を制御しやすい灌流システムを提供することである。これは、請求項1において定義されるシステムを用いて達成される。
【0008】
利点の一つは、閉塞とファウリングが防止できることである。他の利点としては、このシステムはスケーラブルであること、搖動タイプのバイオリアクターに対応すること、また、この灌流ユニットは一体型ハウジングの内蔵ユニットとして容易に収容できること、がある。
【0009】
本発明の第2の態様は、濾過を制御しやすい灌流培養の方法を提供することである。これは、請求項において定義される方法を用いて達成される。
【0010】
本発明の第3の態様は、予滅菌灌流システムを提供することである。これは、請求項において定義されるシステムを用いて達成される。
【0011】
本発明のさらなる好適な実施形態が、従属項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による灌流システムを示す図である。
図2図1に示すシステムのフィルターユニット、ポンプ、及び流体コネクタの拡大図である。
図3】制御弁と、圧力変換器と、制御ユニットとを備える本発明による灌流システムを示す図である。
図4】無菌コネクタと、ユニットハウジングとを備える本発明による灌流システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一態様では、細胞を灌流培養するためのシステム1、31、51を開示する。システムは、
(a)1以上のバイオリアクター2、32、52と、
(b)保持液入口4、34、54と、保持液出口5、35、55と、1以上の透過液出口ポート6、36、56とを備える1以上のフィルターユニット3、33、53と、
(c)保持液入口に流体接続されている1以上の往復ポンプ7、37、57とを備える。
【0014】
保持液入口は入口逆止弁8、38、58を介してバイオリアクターに流体接続され、この弁は、バイオリアクターから保持液入口への方向の流れを許容するが逆方向の流れを防ぐように構成されている。保持液出口は出口逆止弁9、39、59を介してバイオリアクターに流体接続され、この弁は、保持液出口からバイオリアクターへの方向の流れを許容するが逆方向の流れを防ぐように構成されている。
【0015】
さらに、入口逆止弁及び出口逆止弁は各々チューブ分岐点10、40、60に流体接続され、この分岐点は、チューブの所定の長さ部分11、41、61、例えば可撓性チューブの所定の長さ部分を介してバイオリアクターにも接続されている。好適には、チューブ分岐点とバイオリアクターとは、一本のチューブの所定の長さ部分を介して接続されている。こうすると、バイオリアクターのポート数が最小限でよく、また、バイオリアクター周りの一連の配管が複雑にならないので、都合がよい。後者は例えば、可動チューブの数を最小限に抑える必要がある搖動するバッグ型の可動バイオリアクターにとって、特に重要である。しかしながら、入口逆止弁8、38、58と出口逆止弁9、39、59を、分岐点10、40、60なしにチューブの別々の所定の長さ部分(図示せず)を介して個別にバイオリアクターに流体接続させることが代替として可能である。入口と出口の配管が別であれば、バイオリアクターとデバイス間のチューブ内の液体が、バイオリアクターとデバイス間のチューブ内での処理量(ポンプの内側ストロークと外側ストロークの量差)のホールドアップ量に対する比率に関係なく、完全に一過式処理されるという好ましい状態が確保できる。別の代替は、バイオリアクターとデバイスが流体接続している中間点に分岐点を配置することであり、そうすることで処理量及びホールドアップ量が占められ、パフォーマンスも最適化される。
【0016】
バイオリアクターは、好適には、内容積12、48、62を有する容器と、この内容積の内側及び/又は外側に位置する撹拌手段(図示せず)とを備えることができる。撹拌手段は、例えば、内容積の外側のモータによって直接又は磁気方式で駆動される、内容積の内側のインペラーであり得る。撹拌手段はまた、その上に容器が置かれる可動式支持体でもあり得、搖動及び/又は振動の動きを容器に伝えることができる。
【0017】
フィルターユニットは、例えば中空糸カートリッジ又は平板カセットなど、複数の膜が保持液側と透過液側とを画定しているタンジェンシャルフロー濾過用のフィルターであり得る。図2に示すようにフィルターユニットが中空糸カートリッジである場合、保持液入口は、中空糸束の一端側で糸内腔13に隣接して接続でき、保持液出口は中空糸束の他端側で糸内腔14に隣接して接続できる。この場合、透過液出口ポートは、束における中空糸シェル側24を取り囲む容積、つまり透過液区画15と接続可能であり、この容積は束の糸内腔から密封絶縁されている。フィルターユニットは、透過液出口ポートを2つ備えることもでき、その場合は、透過液を透過液区画内で糸に沿って、好適には内腔を流れる保持液の循環方向の反流(逆)方向に循環させることが可能である。フィルターユニットは、細長い(例えば筒状)ハウジング16内に収容することができ、中空糸束は該ハウジングの中心部に配置され、シール17が透過液区画15を保持液入口区画18及び保持液出口区画19から仕切っている。保持液入口区画は、ジョイント20のところで往復ポンプに直接接続され得る。
【0018】
往復ポンプは、好適には、例えばダイヤフラム、膜(メンブレン)、又はピストンなどの往復動部材21を備えることができる。往復動部材は、ポンプ室22(動部材がピストンの場合はシリンダとも呼ばれる)に対して前後運動することができ、動部材の内側ストローク中に流体(例えば培養液)をポンプ室から押し出し、外側ストローク中に流体(例えば培養液)をポンプ室に吸い込む。往復ポンプのストローク量は、各ストローク中にポンプ室から出し入れされる流体(培養液)の量に相当する。往復ポンプは、例えば、図1図3に示されるように、流体駆動式ダイヤフラムポンプであり得、ポンプ室22と駆動流体で満たされた駆動室23とが、往復動部材を構成する可撓性ダイヤフラム21で隔てられている。駆動流体は、気体例えば空気、又は液体であり得る。駆動流体供給ライン25を介して駆動室に流体圧力がかかると、ダイヤフラムは、内側ストロークで液体をポンプ室から追い出し、流体圧力が解除されると、ダイヤフラムは、撓んで戻り、外側ストロークで液体をポンプ室に引き込む。ポンプ室は、例えば、ジョイント20のところでフィルターユニットの保持液入口区画に直接接続され得る。あるいは、ポンプ室は、液流を妨げないよう直径が十分に大きく、容積が往復ポンプのストローク量よりもかなり小さい(例えばストローク量の10%未満又は5%未満などストローク量の20%未満)チューブの短片などの流体コネクタ(図示せず)を介して、任意には無菌コネクタを介して、接続され得る。
【0019】
保持液入口と分岐点との接続並びに保持液出口と分岐点との接続は、例えば、可撓性チューブなどのチューブによって実現でき、入口逆止弁と出口逆止弁はチューブに沿って配置されるか、分岐点又は入口/出口に隣接して配置される。分岐点10、40、60は、例えば三方チューブコネクタ又はマニホールドであり得る。分岐点とバイオリアクターとの接続部は、可撓性チューブなどのチューブの所定の長さ部分11、41、61としての一本のラインであり得る。このチューブの所定の長さ部分は、バイオリアクター容器の内容積に容器壁のポートを通じて接続され得る。入口逆止弁及び出口逆止弁は、例えばフラップ弁、ボール弁、スリットディスク弁など、任意の適当な逆止弁タイプのものであってよい。
【0020】
往復ポンプの外側ストローク中、培養液は、バイオリアクターからチューブの所定の長さ部分11、41、61及び分岐点10、40、60を介してフィルターユニット3、33、53の保持液入口4、34、54へと引き出される。同時に、外側ストロークによりフィルターユニットの保持液側に陰圧が生じ、ある量の透過液がフィルター膜を逆フラッシュすることになるので、膜を閉塞している細胞や他の物質は洗い流される。往復ポンプの内側ストローク中、培養液はフィルターユニットの保持液側を押し通され、回収され得る透過液を生じさせ、さらに保持液出口5、35、55、分岐点10、40、60、及びチューブの所定の長さ部分11、41、61を介してバイオリアクターに戻される。この流路には、以前開示された諸流路と比較していくつかの利点がある。
【0021】
(i)内側ストローク及び外側ストローク中に個別の圧力制御が可能。外側ストローク中、陰圧を制御して脱ガス及び気泡形成を防止し逆フラッシュを最適化できる。内側ストローク中、フィルターユニットの膜差圧を最適化してフィルター膜上の物質輸送を最大限化できる。後者は、フィルターユニットが後に記載するように代謝物を回収するための限外濾過膜を備える場合に特に重要であるが、フィルターユニットが精密濾過膜を備える場合でもファウリングや閉塞を軽減するのに重要である。個別制御によりさらに、一般的に頑健性及び再現可能性が高まるだけでなく、細胞及び/又は感受性の高いタンパク質に与える機械的損傷を最小限に抑えた灌流培養法が可能になる。
【0022】
(ii)個別の圧力制御はまた、流れと圧力の組合せ、変形、及び制御による新規の方法の可能性を提供する。一例として、入口制御弁(以下に記載)で保持液入口への流れを減じ、往復ポンプの緩速な外側ストロークと合わせて、非常に長い逆フラッシュサイクルを生じることができる。
【0023】
(iii)外側ストローク中、膜の圧力差は基本的に一定なので、逆フラッシュを均一に良好に制御できるようになる。
【0024】
(iv)チューブの直径や長さ並びにバイオリアクター内の圧力及びバイオリアクターとフィルターユニット間の垂直方向の距離による静水圧にかかわらず膜の圧力及び圧力差を一定に保つことができるので、システムのスケーラビリティが相当向上する。
【0025】
システムで使用される構成材料は、好適には、例えばガンマ線照射及び/又はオートクレーブ処理などの一般的に使用される滅菌方法に対応可能である。再利用可能な構成要素についてはステンレス鋼(例えば少なくとも316L相当の耐食性のあるもの)又はポリスルホン、PEEKなどの産業用プラスチックが使用でき、使い捨ての構成要素については、例えばポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン又はエチレンコポリマーなどのプラスチックが使用できる。
【0026】
細胞培養液の感染を防止するため、バイオリアクター及び培養流体に接触する全構成要素を、好適には培養前に滅菌する。システム又はシステムの部品を組み立ててからオートクレーブ処理又は照射により滅菌してもよいし、又は、1又は複数の構成要素を事前に滅菌してから無菌システムとして組み立ててもよい。組立を容易にするために、滅菌済システム部品又は構成要素は、例えばReadyMate(GEヘルスケア社)タイプの無菌コネクタを備えていてもよい。あるいは滅菌済システム部品/構成要素を無菌包装しておいて、無菌クリーンルーム内で組み立ててもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、チューブの所定の長さ部分11、41、61は、往復ポンプのストローク量の50%以下の、例えば20%又は10%以下の内容積を有する。このことには、液体をフィルターユニットを介してバイオリアクターから輸送し、またバイオリアクターへと戻すのに、ストローク量の大部分が利用されるという利点がある。
【0028】
いくつかの実施形態では、透過液出口ポート36は透過液ポンプ50に接続されている。透過液ポンプは、透過液をフィルターユニットから回収するのに使用でき、また、フィルターユニットにおける膜差圧の制御にも利用できる。透過液ポンプは、例えば蠕動ポンプであり得る。透過液ポンプ50は、2つの流れ方向、例えば、透過液を透過液出口からストレージ又は廃棄容器(図示せず)へ、もしくはさらなる処理操作部(図示せず)へと送る順方向と、フィルター膜を透過液で逆フラッシュするための逆方向とに運転するようにすることができる。
【0029】
図3及び図4によって示される、ある実施形態では、システムは、保持液入口34、54と分岐点40、60との間に入口制御弁42、63を備える。この入口制御弁は、保持液入口と入口逆止弁との間か、又は入口逆止弁と分岐点との間に配置され得る。入口制御弁は、入口逆止弁の内蔵部品を構成することもできる。入口制御弁は、好適には、バイオリアクターと保持液入口との流体接続部の流れ及び/又は圧力降下を調節することができ得る。
【0030】
図3及び図4によって示されるいくつかの実施形態では、システムは、保持液出口35、55と分岐点40、60との間に出口制御弁43、64を備える。この出口制御弁は、保持液出口と保持液出口逆止弁との間か、又は保持液出口逆止弁と分岐点との間に配置され得る。出口制御弁は、出口逆止弁の内蔵部品を構成することもできるし、又は、1又は複数の逆止弁を1又は複数の制御弁と組み合わせて一体型弁区画としてもよい。出口制御弁は、好適には、バイオリアクターと保持液出口との流体接続部の流れ及び/又は圧力降下を調節することができ得る。入口制御弁及び出口制御弁は、液流調節に適したどのようなタイプの弁であってもよく、可撓性チューブの外側に取り付けられる、例えばピンチ弁やホース締めクランプなどの締め具であってもよい。制御弁は、手動で調節できるようにしてもよいし、制御ユニットからの信号にしたがい調節できるようにしてもよい。そのような信号は、例えば電子式、電磁式、光学式、又は空気圧式のものであり得る。
【0031】
図3によって示される、ある実施形態では、システムは、保持液入口の圧力を測定するように構成された入口圧力変換器44を備える。この圧力変換器は、フィルターユニット33の保持液入口のところか、又は保持液入口と入口制御弁の間の任意の点に配置され得る。入口制御弁がない実施形態では、保持液入口と分岐点の間の任意の点に配置され得る。システムはまた(もしくは代わりに)、保持液出口の圧力を測定するように構成された出口圧力変換器45を備えることができる。この圧力変換器は、フィルターユニット33の保持液出口のところか、又は保持液出口と出口制御弁の間の任意の点に配置され得る。出口制御弁がない実施形態では、保持液出口と分岐点の間の任意の点に配置され得る。圧力変換器は、手動式に読み取り可能なマノメーターであるか、又は圧力データを例えば電子式、電磁式、もしくは光学式手段によって制御ユニットに送信するように構成された変換器であり得る。出口圧力変換器45は、例えば、フィルターユニット及び膜の膜差圧を各々正確に決定するために使用され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、透過液出口ポート36は透過液圧力変換器49を備える。透過液圧力変換器はフィルターユニットの透過液側の圧力を測定することができ得、これを入口圧力変換器及び/又は出口圧力変換器からのデータと合わせてフィルターユニットの膜差圧を計算するのに使うことができる。透過液圧力変換器はまた、透過液ポンプ50の運転又は他の何らかの透過液圧力制御手段(例えば静水圧制御)により膜差圧を制御するためのフィードバックループにおいても使用され得る。変換器49はまた、往復ポンプの外側ストローク中に逆フラッシュサイクルを制御するのにも便利である。
【0033】
図3によって示されるいくつかの実施形態では、往復ポンプ37は流体駆動式ダイヤフラムポンプであり、システムは、例えば駆動流体供給ラインに取り付けられて、往復ポンプ内の駆動流体圧力を測定するように構成された駆動流体圧力変換器46を備える。駆動流体圧力変換器は、手動式に読み取り可能なマノメーターであるか、又は圧力データを例えば電子式、電磁式、もしくは光学式手段によって制御ユニットに送信するように構成された変換器であり得る。駆動流体は、気体(例えば空気)又は液体であり得る。
【0034】
ある実施形態では、往復ポンプ37は気体駆動式ダイヤフラムポンプであり、システムは、例えば気体供給ラインに取り付けられて、ポンプ内の気体圧力を測定するように構成された気体圧力変換器46を備える。具体的には気体は空気であり得、その場合気体(駆動流体)供給源は圧縮空気供給源である。
【0035】
いくつかの実施形態では、往復ポンプ7、37、57は、高可撓性ダイヤフラム、例えば柔軟なシリコーンゴムのダイヤフラムを備えるダイヤフラムポンプとして設計されているので、往復ポンプの流体供給ライン側からフィルターユニット3、33、53側及びその保持液入口4、34、54に向かう間の機械的エネルギー損が少なくなる。その結果、フィルターユニット33の入口側の圧力は、流体供給ライン46側で圧力変換器が測定した圧力と等しくなる。したがって、バイオリアクター流体の保持液入口側の流体圧力及び、それに伴い濾過処理及び膜差圧は、バイオリアクター流体とは接触しない駆動流体圧力変圧器46を用いることにより、有効に測定及び制御され得る。この設計は、バイオリアクター流体と接触する使い捨て構成要素を備えるシステムを設計する場合に有利である。駆動流体圧力変圧器46は再利用可能であり滅菌する必要もないので、コスト及び複雑さが低減される。したがって、滅菌不可の高性能センサーも使用することができ、滅菌可能な高性能センサーを使用する場合も滅菌処理後の再較正は不要である。
【0036】
図3によって示される、ある実施形態では、システムは、入口圧力変換器及び出口圧力変換器のうちの少なくとも1つから受信した圧力データにより、往復ポンプ、入口制御弁、及び出口制御弁のうちの少なくとも1つを制御するように構成された、1以上の制御ユニット47を備える。制御ユニットは、好適には、往復ポンプ、入口制御弁、及び出口制御弁のうちの少なくとも1つと、入口圧力変換器及び出口圧力変換器のうちの少なくとも1つとに、電子式、電磁式(例えば無線通信による)、光学式(例えば光ファイバーを介して)、又は空気圧式に接続され得る。制御ユニットは、例えば、コンピューター、プログラマブルロジックコントローラー、又は(a)1又は複数の圧力変換器からの入力信号を受信でき、(b)その入力信号から所定の方法にしたがい1又は複数の出力パラメータを計算でき、(c)その出力パラメータを信号として1又は複数の制御弁及び/又はポンプに送信できる任意の類似のデバイスであり得る。制御ユニットは、往復ポンプ及び入口制御弁及び/又は出口制御弁の両方を制御するように構成された単一の一体型制御ユニットであり得、又は、システムは主制御ユニット(又は弁制御ユニット)とポンプ制御ユニット(図示せず)とを備えていてもよい。ポンプ制御ユニットは、例えば、ストローク周波数、ストローク長、及び内側ストローク及び外側ストローク中の動部材の速度のうちの1又は複数を介して往復ポンプによって生じる流れ及び圧力のプロファイルを制御するように構成され得る。流体駆動式ダイヤフラムポンプの場合、ストローク周波数、ストローク長、及びダイヤフラム速度は、例えば駆動流体供給ライン上の1又は複数の弁を介して制御され得る。上述したように、ポンプ制御ユニットの要素は主制御ユニットに内蔵されていてもよいし、又はその逆、つまり制御弁は一体型ポンプ制御ユニットによって制御されてもよい。あるいは、制御弁をプリセットするか又は手動で調節して、ポンプ制御ユニットだけが必要であるようにしてもよい。
【0037】
制御ユニットは、透過液ポンプ50及び/又は透過液圧力変換器49にも接続して、膜差圧を制御することもできる。
【0038】
いくつかの実施形態では、フィルターユニットは中空糸カートリッジ又は平板カセットである。上記では中空糸カートリッジが記載されているが、一般的なタンジェンシャルフロータイプの平板カセットを使うことも可能である。この場合は、保持液入口開口が保持液入口側の糸内腔端部に相当し、保持液出口開口が保持液出口側の内腔端部に相当し、透過液開口が透過液出口に相当する。
【0039】
ある実施形態では、バイオリアクターは、可動式支持体上に載置される膨張可能な可撓性のバッグを備え、チューブの所定の長さ部分11、41、61は可撓性のチューブの所定の長さ部分である。本発明のシステムは、バイオリアクター容器(例えば膨張可能な可撓性のバッグ)全体を動かすことによって撹拌されるバイオリアクターに特に適しているが、それはバイオリアクターとの接続に必要なチューブの所定の長さ部分が1本だけなので容器に接続される可動要素の数が抑えられ、それらの絡まりが減少するからである。
【0040】
いくつかの実施形態では、システムの一部又は全部は使い捨て構成要素で構成され、これらの要素は好適には事前に例えばガンマ線照射やオートクレーブ処理で滅菌されてから、例えばReadyMate(GEヘルスケア社)などの無菌コネクタにより互いに連結される。無菌コネクタ65と、無菌であってもなくてもよいコネクタ66とを備える、そのようなシステム51の一例を図4に示す。図4に示すように、フィルターユニット53、逆止弁58、59、及び制御弁63、64並びに入口圧力変換器及び出口圧力変換器(図示せず)を外側ハウジング67内に収容することも可能である。往復ポンプ57を同じハウジング又は別のハウジング68に収容することも可能である。往復ポンプ57は、使い捨てでも再利用可能であってもよく、ポンプ室及びダイヤフラムを備える使い捨て部と、駆動室及び駆動流体圧力変換器を備える駆動流体供給ラインを備える再利用可能部とから組み立てることもできる。往復ポンプの使い捨て部は、この場合は、フィルターユニットと一体化することもできる。
【0041】
往復ポンプ7、37、57はフィルターユニット3、33、53の下方に配置されて図示されているが、例えば往復ポンプをフィルターユニットの上方に配置するなど他の位置づけも等しく可能である。具体的な位置づけは、例えば用途に応じてのスペースや距離といった事項並びに静水圧の利用により得る。
【0042】
第2の態様では、本発明は、細胞を灌流培養する方法を開示し、該方法は、
(a)上記のシステム1、31、51を準備するステップ、
(b)細胞培地と細胞をバイオリアクター2、32、52に添加するステップ、
(c)撹拌下バイオリアクター内で細胞を培養するステップ、
(d)培養中、往復ポンプ7、37、57を運転して、(i)バイオリアクターから液体をチューブの所定の長さ部分11、41、61、分岐点10、40、60、及び入口逆止弁8、38、58を介してフィルターユニット3、33、53の保持液入口4、34、54へと引き出し、(ii)液体をフィルターユニットの保持液出口5、35、55から出口逆止弁9、39、59、分岐点10、40、60、及びチューブの所定の長さ部分11、41、61を介してバイオリアクター2、32、52に戻すステップ、及び
(e)透過液を透過液出口ポート6、36、56から回収するステップを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1種類の流体、例えば細胞培地などを、培養中にバイオリアクターに添加することを含む。このことには、フィルターユニットを介して除去された培養液を再充填し、培養液に新鮮な栄養分及び他の試薬が供給できる、という利点がある。
【0044】
ある実施形態では、フィルターユニットは精密濾過膜を備え、透過液には細胞により発現された目的物質が含まれる。こうして、例えば免疫グロブリンなどのタンパク質であり得る目的物質の継続的回収が可能になる。
【0045】
いくつかの実施形態では、フィルターユニットは限外濾過膜を備え、細胞により発現された目的物質は保持液中に保持されたままバイオリアクターに戻される。こうして、細胞培養液から有毒その他望ましくない低分子量の老廃物/代謝物を継続的に除去しながら、培養が終了すると培養液から目的物質、例えば免疫グロブリンなどのタンパク質を回収することが可能になる。
【0046】
ある実施形態では、方法は、往復ポンプ及び入口制御弁のうちの少なくとも1つを制御して、往復ポンプの外側ストローク中、入口圧力変換器の圧力読み値を所定範囲内に維持することを含む。例えばマノメーター読み値から弁を手動で調節して手動式に制御することもできるし、制御ユニットに圧力変換器からの信号にしたがい制御させることもできる。この方法の利点は、外側ストロークで生じる陰圧によるフィルターユニットの逆フラッシュを制御し最適化して、高効率の膜洗浄が得られること、また任意に、逆フラッシュした透過液で保持液が希釈されるのを最小限に抑えられることである。より複雑なアルゴリズムにしたがって圧力を制御し、例えば外側ストローク中に所望の圧力対時間プロファイルを作成することも可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法は、入口圧力変換器及び出口圧力変換器から得られるデータ又は入口圧力変換器、出口圧力変換器及び透過液圧力変換器のうちの1以上のデータから膜差圧を計算し、往復ポンプ、透過液ポンプ、入口制御弁、及び出口制御弁のうちの少なくとも1つを制御して、膜差圧を予め設定した上限値と下限値との間に維持することを含む。このことには、フィルター膜の両端間での物質輸送が最大限化され得、ファウリングと濃度分極が最小限化され得るという利点がある。より複雑なアルゴリズムにしたがって圧力を制御し、例えば内側ストローク中と外側ストローク中両方で所望の膜間差圧対時間プロファイルを作成することも可能である。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は、往復ポンプの外側ストローク中は膜差圧を第1の範囲内に維持し、往復ポンプの内側ストローク中は膜差圧を第2の範囲内に維持することを含む。
【0049】
ある実施形態では、方法は、透過液ポンプ50を逆方向に運転してフィルター膜の逆フラッシュを生じさせることを含む。透過液ポンプを逆フラッシュの唯一の発生源としてもよいし、又は往復ポンプの外側ストローク中に透過液ポンプをそのように運転して逆フラッシュを補助させ、逆フラッシュサイクル中所望の圧力/流れプロファイルを作成してもよい。透過液ポンプは、例えば透過液圧力変換器49からの入力データにしたがい1又は複数の制御ユニット47により制御され得る。
【0050】
システムが使い捨て構成要素で構成されている場合、使用後に全構成要素を廃棄しても経済的に引き合う。上述のシステムは特に使い捨て用途に適しているが、一般的な交互(alternating)タンジェンシャルフローシステムを使い捨て方式で用いることも可能である。
【0051】
第3の態様では、本発明は、細胞を灌流培養するための予滅菌システムを開示し、該システムは、
(a)1以上のバイオリアクター(2、32、52)と、
(b)1以上の往復ポンプ(7、37、57)と、
(c)1以上の無菌コネクタを介して該往復ポンプに流体接続され、該バイオリアクターに流体接続される1以上のフィルターユニット(3)とを備える。
【0052】
システムを、密封包装された事前に滅菌済のシステムとして提供することにより、一般的な交互タンジェンシャルフローシステムの組立、洗浄、及び滅菌並びにこれらの工程各々の検証が省略できる。さらに、滅菌済み(使い捨て)バイオリアクターとの流体接続を設定する前にオートクレーブ処理すなわち蒸気処理をして滅菌しなければならない一般的な交互タンジェンシャルフローシステムの接続の複雑さは、例えばReadyMate(GEヘルスケア社)などが使用できる、容易に入手できる無菌コネクタとして予滅菌システムを提供することにより、大幅に減少する。
【0053】
いくつかの実施形態では、予滅菌システムは、1又は複数の無菌コネクタを介して2以上の予滅菌モジュールから組み立てられる。予滅菌使い捨て交互タンジェンシャルフロー濾過システムは、使用時に、そのようなシステムを形成する予滅菌使い捨てモジュールから、モジュール間の各インターフェースに無菌コネクタを用いることにより、組み立てることができる(図4を比較のこと)。したがって、システムが利用されるバイオリアクター及び工程に適した容量及び性能に見合うフィルター寸法及びポンプ寸法又は他の構成要素を選択し組み立てることによって、予滅菌使い捨て交互タンジェンシャルフロー濾過システムの容量の寸法決めにおける柔軟性が高まる。
【0054】
この明細書では、最良の形態も含め本発明を開示するために、また、あらゆる当業者が、あらゆるデバイスやシステムを作製し利用し、あらゆる組み入れた方法を実施することを含め本発明を実施することを可能にするために、諸例を用いている。本発明の特許可能な範囲は、請求項により定められ、当業者が想到する他の例も含み得る。そのような他の例は、それらが請求項の文言と差異のない構造的要素を備える場合、又は請求項の文言と実質的に差異のない均等な構造的要素を含む場合は、請求項の範囲内とする。なお、別々の実施形態及び態様の要素同士を組み合わせて新しい実施形態を構成することができる。
図1
図2
図3
図4