(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321674
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】型押しによる高速成形のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/10 20060101AFI20180423BHJP
B30B 1/42 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
B21D22/10 B
B30B1/42
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-548480(P2015-548480)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-500340(P2016-500340A)
(43)【公表日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2013077084
(87)【国際公開番号】WO2014095996
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】1262673
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1354406
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515168802
【氏名又は名称】エイディエム28・エスアーエルエル
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】プラウ,エラン
【審査官】
貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−056736(JP,A)
【文献】
米国特許第03583187(US,A)
【文献】
米国特許第03730039(US,A)
【文献】
特開昭51−107575(JP,A)
【文献】
特表2002−526264(JP,A)
【文献】
特開2000−008641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/10
B30B 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した金属シート(14)を型押しすることによって成形するための装置であって、
−変形可能で、且つ実質的に非圧縮性の材料から成るパンチ(11)と、
−長手方向軸(Z)に沿って前記パンチ(11)を打撃することに適合したハンマー(12)と、
を備える装置において、
前記装置は、
−この方向(Z)における前記金属シート(14)の塑性変形を可能にする速度(VZ)を前記ハンマー(12)に与えることに適合した磁界を発生するための手段(13)と、
−長手方向軸(Z)の周りに実質的に回転対称である所定形状のダイ(10)と、
を備え、
前記パンチ(11)は、前記長手方向軸(Z)の周りに回転対称であり、且つ前記ダイ(10)に面して配置されることに適合し、それによって、前記パンチ(10)は、前記金属シート(14)と前記ダイ(10)との間にゼロでない所定距離Gを有することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記パンチ(11)は、前記長手方向軸に垂直な、自身の半径方向の寸法(R)と同じ桁数の大きさの長手方向の寸法(H)を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記金属シート(14)の塑性変形を可能にする最小の軸方向速度(VZ_min)よりも大きいか、又は最小の軸方向速度(VZ_min)と等しい軸方向速度(VZ)を前記ハンマー(12)に与えるための手段を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記軸方向速度(VZ)は、20m/sよりも大きいことを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記パンチ(11)は、0.5に近いポアソン比を有する非圧縮性のゴム状弾性体から成ることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ダイ(10)の端部壁(15)は、前記パンチ(11)の前面に対するストッパを形成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の成形装置を用いて、湾曲した金属シート(14)を型押しすることによって変形させるための方法であって、以下のステップである、即ち、
−前記ダイ(10)の中に前記金属シート(14)を配置するステップと
−前記金属シート(14)の内側に前記パンチ(11)を配置するステップと、
−この方向(Z)における前記金属シート(14)の塑性変形を可能にする最小速度(VZ_min)よりも大きな速度(VZ)を前記ハンマー(12)に与える磁界を発生するステップと、
−前記長手方向軸(Z)に沿って、前記パンチ(11)に対して前記ハンマー(12)を打撃するステップと、
−前記金属シート(14)の塑性変形を得るのに十分な半径方向衝撃速度VRで、前記パンチ(11)を半径方向に変形させるステップと、
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記ダイ(10)は、前記金属シート(14)と前記ダイ(10)との間に、ゼロでない距離Gを有するように具現化されることを特徴とする、請求項7に記載の、型押しによる変形のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料成形の分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、型押しによって金属部品を成形するための装置及び方法を狙いとする。
【背景技術】
【0003】
主導産業(航空、宇宙及び自動車の分野、又は他の製造産業)において、部品を整形する際、要求されると共に必要である精度は、高くなる可能性があり、且つこれらの要求を満足するために適所に投入される技術は、ますます複雑になっている。
【0004】
金属部品を整形しようとする場合、型押しは、極めて頻繁に選択される方法である。その理由は、この方法は信頼性があり、且つ非常に容易に制御できるからである。型押しの本質は、圧力の作用下での、板材料の塑性変形にあり、それによって、板に所定の型の形状を付与する。その技術は、一般に金属材料(鋼鉄、アルミニウムなど)に使用されるものの、該技術はまた、PVC、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのような多くのプラスチック材料にも適用可能である。
【0005】
型押しによる成形を実行するための異形例の1つは、弾性成形(ゲーリンプロセス,Guerin process)として知られるプロセスである。弾性成形の原理は、ゴム状弾性体に(例えば、ラムによって)応力を加えるものであり、ゴム状弾性体は、その場合、パンチ又はダイの機能を実行する。ゴム状弾性体は、自身が受ける圧力を、変形させるべき板に伝達する。型押し動作の間に、板はゴム弾性体の形状に沿う。
【0006】
特許文献1(アイソフォーム、1988)は、プランジャーの作用の下で変形可能なパンチを備えた、シート材料を型押しするための方法及び装置に関するが、この分野では特に知られた特許文献である。
【0007】
しかしながら、この方法の1つの欠点は、小さな厚さの軽量金属(例えば、アルミニウム)において、浅い型押し作業を実行することだけが可能だという事実にある。実際に、その方法は、1.5mmのシート金属厚さに限られる。
【0008】
この整形方法の別の欠点は、弾性復帰という欠点であり、弾性復帰は、成形されるべき部品が緩和した後に生じる。この効果は、問題とする材料に依存して、多かれ少なかれ存在する。そして、この問題は、期待した精度を考慮する際、もはや無視できない場合に、問題であることが証明されるかもしれない。
【0009】
特許文献2は、実質的に平坦な形状の変形可能なパンチを備えた、平坦なシート材料を型押しするための方法及び装置を開示するが、この特許文献も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0376808号明細書
【特許文献2】米国特許第7954357号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特に、弾性復帰を著しく減少させると共に、弾性成形の原理を、鋼鉄又はインコネル、及び/又は大きな厚さを有するなどの金属に適用するための、有効な解決法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第一に、湾曲した金属シートを型押しすることによって成形するための装置を狙いとし、前記装置は、
−変形可能で、且つ実質的に非圧縮性の材料から成るパンチと、
−長手方向軸(Z)に沿ってパンチを打撃することに適合したハンマーと、
を備える。
【0013】
本装置は、磁界を発生させるための手段を備え、該磁界は、この方向(Z)における所定値よりも大きな速度(V
Z)をハンマーに与えることに適合している。
【0014】
本装置は、長手方向軸(Z)の周りに実質的に回転対称である所定形状のダイを備える。そしてパンチは、長手方向軸(Z)の周りに回転対称であり、且つダイに面して配置されることに適合し、それによって、パンチは、金属シートとダイとの間に、ゼロではない所定距離Gを有する。
【0015】
前記ゼロではない所定距離Gは、金属シート14が移動中に設定され得ることを保証できるようにする。具体的には、前記金属シート14は、有利なことに、ダイ10といかなる点でも接触しないように位置決めされ、これによって、金属シート14の高い衝撃速度を得ることが可能になる。この高い衝撃速度は、金属シート14の動的変形、即ち、高速変形を可能にする。この高速変形は、より効率的な成形、及び更には弾性復帰における減少を可能にする。1つの特別な実施形態において、パンチは、長手方向軸に垂直な、自身の半径方向の寸法(R)よりも大きいか、又は半径方向の寸法(R)に等しいか、若しくは半径方向の寸法(R)と同じオーダーの大きさの長手方向の寸法(H)を有する。
【0016】
このように、前記パンチは、ハンマーによって軸方向に打撃されるのに続いて、少なくとも半径方向に変形され、且つ、従って、特に前記パンチの周辺上に配置された金属シートを成形することが可能である。
【0017】
これは、型押しによる成形用の、現存する装置で起こることと反対である。現存する装置では、パンチは、ハンマーの軸方向の衝撃に続いて軸方向に変形され、且つ前記パンチの長手方向の端部に沿ってのみ配置される金属シートを成形する。
【0018】
磁界を発生するための手段は、高い打撃速度を発生させるために、限られた持続時間の間、事前に選択された強度のパンチに加速度を伝達する。
【0019】
理解されることであろうが、この装置の効果は、パンチに圧力を高速で印加することを可能にし(生成される力の電磁気的性質によって可能になる)、その結果、パンチは、前記シートが適用されるダイの形状に対応して金属シートを非常に急速に変形させる。
【0020】
本装置は、有利なことに、金属シートの塑性変形を得るための最小軸方向速度(V
Z_min)よりも大きいか、又は最小軸方向速度(V
Z_min)に等しい軸方向速度(V
Z)をハンマーに与えるための手段を備える。軸方向速度(V
Z)は、1つの特別な実施形態では、20m/sよりも大きい。1つの特別な実施形態では、パンチは、0.5に近いポアソン比を有する非圧縮性のゴム状弾性体から成る。
【0021】
具体的には、驚くべきこととして観察されてきたことであるが、ゴム状弾性体が、高速で移動するハンマー(打撃手段)によって応力を加えられる場合、ゴム状弾性体は粘弾性的挙動を有し、この粘弾性的挙動は、一方で、部品をより効率的に成形すること(即ち、ダイに対してより順応すること)に帰着し、他方で、成形された部品の弾性復帰を減少させることに帰着する。
【0022】
変形可能で、且つ実質的に非圧縮性の材料は、ゴム状弾性体タイプの材料を意味すると理解され、ゴム状弾性体タイプの材料は、弾性成形パッドとしての使用に適合する。別の実施形態において、変形可能で、且つ非圧縮性の材料は、フレキシブルな外被によって囲まれた液体によって構成できるであろう。そのような材料は、本技術分野の当業者には良く知られている。
【0023】
1つの特別な実施形態において、ダイの端部壁は、パンチの前面に対するストッパを形成する。
【0024】
本発明は、第2態様の下で、説明されるような成形装置と、長手方向軸(Z)の周りに実質的に回転対称である所定形状のダイとを備える成形アセンブリを狙いとし、シートとダイとの間の距離Gがゼロでないことを特徴とする。
【0025】
具体的には、ダイに対する、パンチ/金属シート・アセンブリの半径方向打撃速度V
Rは、この距離Gの3乗に比例する。半径方向速度が十分である場合、金属シートは可塑性的挙動を有し、且つダイの内側面の形状に完全に沿う。
【0026】
本発明は、別の態様の下で、上で説明されたようなアセンブリを用いて、湾曲した金属シートの型押しによる変形のための方法を狙いとし、該方法は以下のステップである、即ち、
−ダイの中に金属シートを配置するステップと、
−金属シートの内側にパンチを配置するステップと、
−この方向(Z)における所定値よりも大きな速度(V
Z)をハンマーに与える磁界を発生させるステップと、
−長手方向軸(Z)に沿って、パンチに対してハンマーを打撃するステップと、
−金属シートの可塑性変形を得るのに十分な半径方向打撃速度V
Rで、パンチを半径方向に変形させるステップと、
を備える。
【0027】
有利なことに、ダイは、ゼロではない、金属シートとダイとの間の距離Gを有するように具現化される。
【0028】
本発明の特徴及び利点は、続いて行われる説明によってより良く認識されるであろう。該説明は、非限定的な応用例によって発明の特徴を提示し、添付された図面に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】
図1aは、第1実施形態による、成形前の、中空ダイと共に使用される弾性成形装置に含まれる要素の概略図を示す。
【
図2】
図2は、成形の過程における、これら同じ要素の図を示す。
【
図3】
図3は、成形後の、これら同じ要素の図を示す。
【
図4】
図4は、別の実施形態による、成形前の、中空ダイと共に使用される弾性成形装置に含まれる要素の概略図を示す。
【
図5】
図5は、これら同じ要素の断面における平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図が原寸に比例していないことは、第一に注目されるであろう。説明の残りの部分で、用語「金属シート」は、成形されるべき部品を表すために使用されるが、しかし本発明は、より一般には、プラスチック、金属又は他の材料から成る薄板を狙いとする。板が薄いと呼ばれるのは、その寸法の1つが、他の2つよりも著しく小さい場合、典型的には少なくとも大きさが一桁小さい場合である。
【0031】
装置の1つの典型的な実施形態において、装置はダイ10と関連付けられる。装置は、ゴム状弾性体パンチ11と、ハンマー12と、磁界を発生するための装置13(これのコイルだけが、図に描かれている)とを更に備える。この装置は、ハンマー12において強い加速度を発生させることが可能な強力な磁界を生成することに適合し、その結果として、ハンマーは高速でパンチを打撃する。有利なことに、ハンマー12は、磁界を発生させるための装置13とは独立している。
【0032】
ダイ10、パンチ11及びハンマー12は、ここでは、長手方向軸Zの周りに回転対称であると仮定される。ダイ10は、実質的に中空円筒の形状を有し、該中空円筒の上端部は端部壁15によって閉じられる。そしてダイ10は、横方向には、ここでは三角形断面の溝部16を備える。パンチ11は、ダイ10の半径よりも僅かに小さな半径を備えた円筒容積によって、図解的に表示される。ここでのハンマー12は、パンチ11の半径と全体的に同一と仮定される半径を有し、且つパンチの下面17を圧迫する。
【0033】
ここでは円筒形で、その上端部が閉じられている金属シート14が、ダイ10の中に挿入され、且つその内側容積の中にパンチ11を受け入れる。換言すれば、金属シート14の形状は、管形状に対応していない。閉じられた円筒形状の金属シートの変形は、その上端部で閉じられていることによって影響される。理解されることであろうが、より一般的には、ダイの中に配置された金属シート14は、単純な曲率で湾曲され、ダイは、軸Zの周りに回転対称性を備えた凹形状であり、且つパンチは、実質的に相補の形状である。
【0034】
金属シート14は、
図1aにおいて、パンチ11の端部の形状に沿うものとして表される。1つの異形例の実施形態において、金属シートは閉じた円筒形状であり、且つパンチ11の側面部分だけに沿う。
図4に例示される別の異形例において、金属シート14は、その上端部で開いた円筒形状である。
図5に例示される別の異形例において、金属シート14は、開いた円筒形状であり、且つパンチ11の外側面の部分だけに沿う。
【0035】
注目されるべきことであるが、この典型的な実施形態において、成形装置が動作に入る前に、パンチ11は、金属シート面の主要部分の上を覆って、金属シート14と接触している。金属シート14は、ゼロではない距離Gだけ、ダイ10から間隔をあけて配置される(
図1bに例示される)。
【0036】
それほど有利でない実施形態の異形例において(図示せず)、金属シート14は、成形装置を動作させる前に、ダイ10と接触し、且つゼロではない距離だけ、パンチ11から間隔をあけて配置される。
【0037】
パンチ11は、ここでは非圧縮性のゴム状弾性体(0.5に近いポアソン比)から成ると仮定され、即ち、その変形は一定体積で生じる。その上、金属シート14は、パンチ11の変形に影響を及ぼさないように、十分に薄いことが仮定される。
【0038】
この典型的な実施形態において、且つ
図1aで見ることができるように、ダイ10の端部壁15は、パンチ11の前面に対するストッパを形成する。それが意味するのは、この端部壁15は、貫通開口部を有していないことである。
【0039】
ハンマー12は、材料及び特性が本技術分野の当業者に既知のものであり、且つ、それ故に、ここではより詳細に説明されない。
【0040】
磁界を発生させるための装置13のコイルは、ハンマー12をゴム状弾性体パンチ11に向けて移動させる磁界を発生させる。それ故に、パンチ11は軸方向に圧縮されるであろう。そして、その非圧縮性及びダイの端部壁15によって、その後、半径方向に、且つ一様に変形するように束縛されるであろう。これによって、パンチ11とダイ10との間に配置された金属シート14を成形することが可能になる。
【0041】
1つの非限定的な典型的実施形態において、成形されるべき金属シート14は、38mmの直径を備えた15−5PH鋼鉄円筒の形態をとる。パンチ11は、半径R=19mm及び高さH=15mmを備えたゴム状弾性体(90ショアAポリウレタン)から成る円筒である。型、即ち、ダイ10の内側面は、21mmの半径を有する。ダイ10と金属シート14との間の距離Gは、G=2mmである(
図1b参照)。
【0042】
ゴム状弾性体に対するハンマー12の軸方向衝撃速度V
Zは、34m/sと測定されている。この軸方向衝撃速度V
Zは、幾何学的条件に、且つ金属シート14を構成する材料の特性に適合される。軸方向衝撃速度V
Zは、前記金属シート14の可塑化を可能とするように計算される。
【0043】
次の決定式である式(1)を用いて、ダイ10に対する、パンチ11/金属シート14・アセンブリの半径方向衝撃速度V
R(半径方向打撃速度)を見積もることが可能である。
【0045】
式(1)において、V
Rは半径方向速度を表し、V
Zは軸方向移動速度(ハンマー12によって与えられる)を表し、R/Hはパンチ11のアスペクト比を表し、且つG/Rは、パンチ11の半径Rに対する(金属シート14とダイ10との間の)距離Gの比を表す。ハンマー12に伝達されるべき最小の軸方向速度V
Z_minは、これによって、金属シート14の可塑性変形(金属シートの「可塑化」)を得るのが可能になるものである。
【0046】
成形装置は、それ故に、成形されるべき金属シート14の厚さの関数として、この軸方向速度V
Zを制御するための手段を備え、その制御方法によれば、ハンマーのこの軸方向速度V
Zは、このように決定された最小の軸方向速度V
Z_minよりも大きい。
【0047】
注目されるべきことであるが、半径方向の衝撃速度V
Rは、軸方向速度V
Zに直接比例し、且つ前に述べた見解は、それ故に、半径方向速度にも同様に当てはまる。
【0048】
30m/sという推定の半径方向衝撃速度V
Rが、この例の数値データと共に得られる。V
RとV
Zとの間の比率は、その場合、88%である。
【0049】
ゴム状弾性体に対するハンマー12の衝撃の間、衝撃によって、動的圧力波が発生され、ゴム状弾性体におけるこの波の伝搬の速度は、衝撃速度V
Rよりも著しく大きい。金属シートは、その場合、パンチの半径方向変形によって、ダイ10の内側面に向けて押される。
【0050】
更に、金属シート14が、パンチ11の変形の効果の下で、ダイ10と最初に接触する場合、型(特に溝部16)と接触していない、ある一定のゾーンが残存する。これは、特に、ダイ10が比較的大きな深さの幾何形状を有するゾーンに対して当てはまる(例えば、装飾的エッチング又は機能的幾何形状)。ゴム状弾性体パンチ11及び金属シート14は、局所的に変形し続け、且つ、衝撃の間、それらの変形速度は、半径方向変形速度V
Rよりも著しく大きい可能性がある。
【0051】
金属シート14の塑性変形は、衝撃の際に発生される圧力が、ユゴニオ(Hugoniot)弾性限界よりも大きい場合に観察される。金属シート14は、その場合、ダイ10の形状に、特に溝部16の形状に完全に沿う。金属シート14のこの塑性変形は、半径方向の打撃速度V
Rが、次の方程式を立証する場合に生じる。
【0053】
式(2)において、σ
ELは金属シート14の弾性限界であり、Z
eはダイ10の音響インピーダンスであり、Z
fは金属シート14の音響インピーダンスであり、v
fは金属シート14のポアソン比であり、sは、1よりも大きいか、又は1に等しい安全因子である(この非限定的な典型的実施形態では1.1に等しい)。
【0054】
この塑性変形基準は、(式(1)を用いることによって)パンチ11に対する衝撃の瞬間における、ハンマー12の軸方向速度V
Zに関する条件に解釈される。
【0055】
磁界を発生させるための手段は、それ故に、ハンマー12に、この閾値よりも大きな軸方向打撃速度V
Zを与えるように寸法取りされる。速度V
Zは、それ故に、好ましくは、20m/sと200m/sとの間にあるだろう。
【0056】
湾曲した金属シート14の型押しによる変形の方法は、現在の非限定的な典型的実施形態において、以下のステップである、即ち、
−ダイ10の中に金属シート14を配置するステップと、
−金属シート14の内側にパンチ11を配置するステップと、
−この方向(Z)における所定値よりも大きな速度(V
Z)をハンマー12に与える磁界を発生させるステップと、
−長手方向軸(Z)に沿って、パンチ11に対してハンマー12を打撃するステップと、
−金属シート14の塑性変形を得るのに十分な半径方向衝撃速度V
Rで、パンチ11を半径方向に変形させるステップと、
を備える。
【0057】
換言すれば、距離G、即ち、金属シート14とダイ10との間の距離は、有利なことに、ゼロでない値に選択され、それによって、高速で移動中に金属シート14を設定することが可能である。この高速変形は、より効率的な成形、及び弾性復帰における減少を可能にする。
【0058】
そのような装置は、従って、弾性復帰の現象をかなり減少させる利点を有し、且つ、1.5mmよりも大きな厚さを有するシート金属部品を、弾性成形によって成形することを可能にする。これは、ハンマーに伝達される速度が、半径方向衝撃速度を得ることを可能にする限りにおいてであり、そのような条件では、金属シートを、自身の可塑変形範囲内にもたらすことが可能である。
【0059】
前述の例は、例証として与えられてきたものであり、且つ網羅的なものではない。特に、ダイ10の寸法と実質的に同一である寸法を有する金属シート14を成形することによって本発明を実行することは、可能かもしれない。パンチとシートの間でゼロでない距離を維持するためには、ゴム状弾性体パンチ11は、この場合、実質的にはより小さな寸法を有するであろう。