(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321679
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの油圧負荷を温度に従って制御するための弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/64 20060101AFI20180423BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20180423BHJP
F16K 3/24 20060101ALI20180423BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
F16K31/64
F16K11/07 J
F16K3/24 D
F15B11/02 C
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-551140(P2015-551140)
(86)(22)【出願日】2013年12月21日
(65)【公表番号】特表2016-502058(P2016-502058A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013003936
(87)【国際公開番号】WO2014106535
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】102013000121.8
(32)【優先日】2013年1月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515183399
【氏名又は名称】ハイダック ドライブ センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141081
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 庸良
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ボッシュ
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第03407747(DE,A1)
【文献】
特開昭50−128835(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102010007247(DE,A1)
【文献】
特開平10−212951(JP,A)
【文献】
特表2000−506953(JP,A)
【文献】
特開2005−163920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00−11/24
F16K 31/64−31/72
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
G05D 23/02
F01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの油圧負荷を温度に従って制御するための弁(10)であって、
少なくとも1つのタンク接続端(T)、少なくとも1つの作動油接続端(A)、及び、少なくとも1つの給油接続端(P)、を備えた、弁ハウジング(12)と、
接続端(A、P、T)を制御するために弁ハウジング(12)内に摺動可能に配置された、作動ばね(74)のような蓄勢装置によって付勢された、制御ピストン(30)と、
予め定めることができる温度(TFluid)を有する流体を供給することができ、前記制御ピストン(30)と作用上結合された、サーモエレメント(62)と、
を有し、
前記制御ピストンが、前記給油接続端(P)を支配する制御圧によって動かすことができ、この場合に、前記サーモエレメント(62)が、前記蓄勢装置(74)とともに働き、前記サーモエレメントが、前記制御ピストン(30)に作用する付勢力の、温度に依存する変化をもたらし、
前記給油接続端(P)と前記タンク接続端(T)との間の通路断面を、その側面によって絞る、絞りピストン(50)が、前記サーモエレメント(62)又はサーモエレメントのアクチュエータ部分(64)の温度に依存する移動運動によって、前記弁ハウジング(12)内で動くことができ、移動運動の関数として、給油接続端(P)とタンク接続端(T)との間の通路断面を開くように摺動し、温度が上昇すると通路断面を増加させる、ことを特徴とする、
弁。
【請求項2】
少なくとも1つの油圧負荷を温度に従って制御するための弁(10)であって、
少なくとも1つのタンク接続端(T)、少なくとも1つの作動油接続端(A)、及び、少なくとも1つの給油接続端(P)、を備えた、弁ハウジング(12)と、
接続端(A、P、T)を制御するために弁ハウジング(12)内に摺動可能に配置された、作動ばね(74)のような蓄勢装置によって付勢された、制御ピストン(30)と、
予め定めることができる温度(TFluid)を有する流体を供給することができ、前記制御ピストン(30)と作用上結合された、サーモエレメント(62)と、
を有し、
前記制御ピストンが、前記給油接続端(P)を支配する制御圧によって動かすことができ、この場合に、前記サーモエレメント(62)が、前記蓄勢装置(74)とともに働き、前記サーモエレメントが、前記制御ピストン(30)に作用する付勢力の、温度に依存する変化をもたらし、
前記給油接続端(P)と前記タンク接続端(T)との間の通路断面を、その側面によって絞る、絞りピストン(50)が、一方で前記サーモエレメント(62)のアクチュエータ部分(64)に、他方では作動ばね(74)の一方の端部に添接し、前記作動ばねの他方の端部は、付勢力を発生させるために、前記制御ピストン(30)に添接する、ことを特徴とする、
弁。
【請求項3】
前記絞りピストン(50)が、一方で前記サーモエレメント(62)のアクチュエータ部分(64)に、他方では作動ばね(74)の一方の端部に添接し、前記作動ばねの他方の端部は、付勢力を発生させるために、前記制御ピストン(30)に添接する、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の弁。
【請求項4】
前記給油接続端(P)を通って流れる流体を絞るために、少なくとも1つの入口絞り(106;31、33)が設けられている、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の弁。
【請求項5】
前記サーモエレメント(62)の、前記制御ピストン(30)から遠い側の端部が、過負荷エレメント、好ましくは圧縮ばね(68)、によって支持されている、ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の弁。
【請求項6】
少なくとも1つの油圧負荷を温度に従って制御するための弁(10)であって、
少なくとも1つのタンク接続端(T)、少なくとも1つの作動油接続端(A)、及び、少なくとも1つの給油接続端(P)、を備えた、弁ハウジング(12)と、
接続端(A、P、T)を制御するために弁ハウジング(12)内に摺動可能に配置された、作動ばね(74)のような蓄勢装置によって付勢された、制御ピストン(30)と、
予め定めることができる温度(TFluid)を有する流体を供給することができ、前記制御ピストン(30)と作用上結合された、サーモエレメント(62)と、
を有し、
前記制御ピストンが、前記給油接続端(P)を支配する制御圧によって動かすことができ、この場合に、前記サーモエレメント(62)が、前記蓄勢装置(74)とともに働き、前記サーモエレメントが、前記制御ピストン(30)に作用する付勢力の、温度に依存する変化をもたらし、
前記制御ピストン(30)が、差動ピストンとして、共通のピストンロッド(32)上に、メインピストン部分(36)と、メインピストン部分(36)に対して異なる有効なピストン面を備えた第2のピストン部分(38)と、を有し、これらが互いの間に第1の流体室(26)を画成し、前記第1の流体室内へ給油接続端(P)が連通しており、
前記メインピストン部分(36)が、制御用エッジ又は制御用切り欠きによって、前記第1の流体室(26)と前記作動油接続端(A)との間の通路断面を制御する、
ことを特徴とする、
弁。
【請求項7】
前記制御ピストン(30)が、差動ピストンとして、共通のピストンロッド(32)上に、メインピストン部分(36)と、メインピストン部分(36)に対して異なる有効なピストン面を備えた第2のピストン部分(38)と、を有し、これらが互いの間に第1の流体室(26)を画成し、前記第1の流体室内へ給油接続端(P)が連通しており、
前記メインピストン部分(36)が、制御用エッジ又は制御用切り欠きによって、前記第1の流体室(26)と前記作動油接続端(A)との間の通路断面を制御する、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の弁。
【請求項8】
少なくとも1つの油圧負荷を温度に従って制御するための弁(10)であって、
少なくとも1つのタンク接続端(T)、少なくとも1つの作動油接続端(A)、及び、少なくとも1つの給油接続端(P)、を備えた、弁ハウジング(12)と、
接続端(A、P、T)を制御するために弁ハウジング(12)内に摺動可能に配置された、作動ばね(74)のような蓄勢装置によって付勢された、制御ピストン(30)と、
予め定めることができる温度(TFluid)を有する流体を供給することができ、前記制御ピストン(30)と作用上結合された、サーモエレメント(62)と、
を有し、
前記制御ピストンが、前記給油接続端(P)を支配する制御圧によって動かすことができ、この場合に、前記サーモエレメント(62)が、前記蓄勢装置(74)とともに働き、前記サーモエレメントが、前記制御ピストン(30)に作用する付勢力の、温度に依存する変化をもたらし、
前記弁ハウジング(12)内に、第1の流体室(26)から、前記給油接続端(P)と前記タンク接続端(T)との間の通路断面を、その側面によって絞る、絞りピストン(50)への接続ライン(76)と、前記絞りピストンから前記タンク接続端(T)へ通じる分岐ライン(78、82)と、が設けられており、
前記接続ライン(76)と前記分岐ライン(78、82)との間の流体通路が、前記絞りピストン(50)によって制御することができる、
ことを特徴とする、
弁。
【請求項9】
前記弁ハウジング(12)内に、第1の流体室(26)から前記絞りピストン(50)への接続ライン(76)と、前記絞りピストンから前記タンク接続端(T)へ通じる分岐ライン(78、82)と、が設けられており、
前記接続ライン(76)と前記分岐ライン(78、82)との間の流体通路が、前記絞りピストン(50)によって制御することができる、
ことを特徴とする、請求項1から5、及び7のいずれか1項に記載の弁。
【請求項10】
前記弁ハウジング(12)内に、第1の流体室(26)から、前記給油接続端(P)と前記タンク接続端(T)との間の通路断面を、その側面によって絞る、絞りピストン(50)への接続ライン(76)と、前記絞りピストンから前記タンク接続端(T)へ通じる分岐ライン(78、82)と、が設けられており、
前記接続ライン(76)と前記分岐ライン(78、82)との間の流体通路が、前記絞りピストン(50)によって制御することができる、
ことを特徴とする、請求項6に記載の弁。
【請求項11】
前記サーモエレメント(62)の温度(TFluid)を設定する流体のために、前記弁ハウジング(12)内に、外側の流体ポート(22、24)の間に流体通路が形成されており、
前記サーモエレメント(62)が、この流体通路内に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の弁。
【請求項12】
少なくとも1つの油圧負荷を温度に従って制御するための弁(10)であって、
少なくとも1つのタンク接続端(T)、少なくとも1つの作動油接続端(A)、及び、少なくとも1つの給油接続端(P)、を備えた、弁ハウジング(12)と、
接続端(A、P、T)を制御するために弁ハウジング(12)内に摺動可能に配置された、作動ばね(74)のような蓄勢装置によって付勢された、制御ピストン(30)と、
予め定めることができる温度(TFluid)を有する流体を供給することができ、前記制御ピストン(30)と作用上結合された、サーモエレメント(62)と、
を有し、
前記制御ピストンが、前記給油接続端(P)を支配する制御圧によって動かすことができ、この場合に、前記サーモエレメント(62)が、前記蓄勢装置(74)とともに働き、前記サーモエレメントが、前記制御ピストン(30)に作用する付勢力の、温度に依存する変化をもたらし、
前記弁ハウジング(12)内の前記サーモエレメント(62)に対し、前記給油接続端(P)と第1の流体ポート(22)との間に、流体ライン(27)が設けられている、ことを特徴とする、
弁。
【請求項13】
前記弁ハウジング(12)内の前記サーモエレメント(62)に対し、前記給油接続端(P)と第1の流体ポート(22)との間に、流体ライン(27)が設けられている、ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の弁。
【請求項14】
少なくとも1つの油圧負荷(86)と請求項1から13のいずれか1項に記載の弁(10)とを有し、前記弁(10)の作動油接続端(A)に接続された少なくとも1つの油圧負荷(86)を温度に従って制御するための、油圧システムであって、
前記弁(10)の前記制御ピストン(30)が、前記サーモエレメント(62)の温度(TFluid)に従って、前記給油接続端(P)から前記作動油接続端(A)へのP−A接続を、少なくとも部分的に開き又は閉じる、
油圧システム。
【請求項15】
前記油圧負荷(86)に対応づけられた、可変容量ポンプ(98)と油圧モーター(108)とを備えたモーターポンプユニットを有し、前記油圧負荷(86)が、前記作動油接続端(A)を支配する作動圧のフィードバックを介して、前記可変容量ポンプ(98)の吐出体積を、前記可変容量ポンプ(98)の揺動角度(SW)を設定することによって調節する、ことを特徴とする、請求項14に記載の油圧システム。
【請求項16】
前記油圧負荷が、駆動シリンダ(86)として形成されており、駆動シリンダのピストン(88)が、可変容量ポンプ(98)の揺動角度(SW)を設定し、この場合に、前記駆動シリンダ(86)のピストン室(90)が、前記作動油接続端(A)と接続されており、前記駆動シリンダ(86)のロッド室(92)が、システム圧を制御する可変容量ポンプ(98)の圧力側と接続されており、前記システム圧が、入口絞り(106)と給油接続端(P)とを介して、弁(10)の第1の流体室(26)内の制御圧力として機能する、ことを特徴とする、請求項15に記載の油圧システム。
【請求項17】
前記油圧モーター(108)が、油圧回路(114)に含まれる熱交換器(112)を冷却するために、ファン(110)を駆動する、ことを特徴とする、請求項15又は16に記載の油圧システム。
【請求項18】
油圧システムであって、
少なくとも1つの油圧負荷(86)と、
少なくとも1つの油圧負荷を温度に従って制御するための弁(10)であって、
少なくとも1つのタンク接続端(T)、少なくとも1つの作動油接続端(A)、及び、少なくとも1つの給油接続端(P)、を備えた、弁ハウジング(12)と、
接続端(A、P、T)を制御するために弁ハウジング(12)内に摺動可能に配置された、作動ばね(74)のような蓄勢装置によって付勢された、制御ピストン(30)と、
予め定めることができる温度(TFluid)を有する流体を供給することができ、前記制御ピストン(30)と作用上結合された、サーモエレメント(62)と、
を有し、
前記制御ピストンが、前記給油接続端(P)を支配する制御圧によって動かすことができ、この場合に、前記サーモエレメント(62)が、前記蓄勢装置(74)とともに働き、前記サーモエレメントが、前記制御ピストン(30)に作用する付勢力の、温度に依存する変化をもたらす、弁と、
を有し、
前記弁(10)の作動油接続端(A)に接続された少なくとも1つの油圧負荷(86)を温度に従って制御するための、油圧システムであって、
前記弁(10)の前記制御ピストン(30)が、前記サーモエレメント(62)の温度(TFluid)に従って、前記給油接続端(P)から前記作動油接続端(A)へのP−A接続を、少なくとも部分的に開き又は閉じ、
前記弁(10)が、制御圧と、作動圧とを、分離して利用するようにされており、所望の低い制御圧を得ることができ、この結果、制御オイル消費量が小さいことによる、最適化された効率を得ることができる、ことを特徴とする、
油圧システム。
【請求項19】
前記弁(10)が、制御圧と、作動圧とを、分離して利用するようにされており、所望の低い制御圧を得ることができ、この結果、制御オイル消費量が小さいことによる、最適化された効率を得ることができる、ことを特徴とする、請求項14から17のいずれか1項に記載の油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのタンク接続端、少なくとも1つの作動油接続端、及び、少なくとも1つの給油接続端、を備えた、弁ハウジングと、弁ハウジング内に摺動可能に配置され、作動ばねのような蓄勢装置によって付勢された、接続端を制御するための、制御ピストンと、予め温度を定めることができる流体を供給される、サーモエレメントと、を有し、このサーモエレメントが制御ピストンと作用上結合されており、少なくとも1つの油圧負荷を、温度に従って制御する、弁に関する。更に、本発明は、少なくとも1つのこのような弁を有する、油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧システム内では、エネルギが変換され、移送され、このエネルギ変換とエネルギ移送の際に損失が生じる。その際に、機械エネルギと油圧エネルギとが、熱に変換される。冷却装置の課題は、油圧システムからこの熱を逃がすことである。冷却装置のファンは、普通、油圧駆動可能であって、この場合に、対応づけられた油圧モーター用の油圧駆動ユニットは、冷却される流体の回路に関係なく、専用の回路として形成することができる。
【0003】
公開された特許文献1からは、上述のタイプの弁が知られている。この既知の弁は、冷却される流体の温度に従ってファンの油圧ドライブを駆動するために、もっと正確には、ファン回転数を設定するために、使用される。弁と、この弁によって駆動されるファンドライブとは、共通の油圧回路内に配置されている。既知の弁を、調節範囲の限られた応答の遅い油圧システムで使用することには、更に改良の余地がある。更に、弁によって設定される制御圧を制限し、これに伴ってサーモエレメントを過負荷から保護できるようにすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許公開第DE102012008480.3号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、弁の適用領域を広げ、特に、調節範囲の限られた応答の遅い油圧システムを含み、弁に対して更なる機能を利用できるようにして、弁の作動する態様を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴を有する弁によって解決される。
【0007】
本発明において、サーモエレメントと制御ピストンは、2つの別々の構成要素であって、これらは弁ハウジング内で共通の流体室内に配置することができる。流体、たとえば冷却される媒体は、温度作動エレメントとも称するサーモエレメントに流入し、サーモエレメントの回りを流れ、又は、サーモエレメントを貫流し、サーモエレメントに温度を与える。流体の温度が上昇すると、サーモエレメントが、蓄勢装置の動き、圧縮、又は、延び、を生じ、したがって、初期負荷の変化を生じ、この変化が、メイン制御ピストンとも称される制御ピストンによって制御される圧力を、設定する。圧縮ばねとして、したがって作動ばねとして形成されることが一般的な、蓄勢装置、を使用することによって、特に、調節範囲の限られた応答の遅い油圧システムを制御するために、本発明に係る弁を使用することができる。しかし、本発明に係る解決手段は、応答の速い応用にも、使用することができる。
【0008】
本発明に係る弁の好ましい実施形態において、弁ハウジング内で摺動可能な絞りピストンが、サーモエレメントと制御ピストンとの間に配置されており、この絞りピストンが、一方で、アクチュエータ部分を介して、サーモエレメントと作用上結合されていることが好ましく、他方では、蓄勢装置と作用上結合されていることが好ましく、この場合に、この蓄勢装置は、絞りピストンから離れる方向を向いた端部において、制御ピストンと作用上結合されていることが好ましい。サーモエレメントには、アクチュエータ部分、たとえばプッシュロッド、が形成されていることが好ましく、このアクチュエータ部分は、流体の温度が上昇すると、ストローク、すなわち作用方向への動きを発生し、この動きは、作動距離とも称され、同時に、絞りピストンにおける力を増加させる。もっと正確に表現すると、アクチュエータ部分が、絞りピストンに添接し、絞りピストンを、温度に依存するアクチュエータ部分の作動距離に従って、摺動させることが好ましい。作動距離とこれに伴う力は、絞りピストンを介して、蓄勢装置へ伝達される。
【0009】
更に、給油接続端からタンク接続端へのP−T流体接続が、弁ハウジング内に形成され、この流体接続が、絞りピストンによって制御でき、絞りピストンが、サーモエレメントの作動距離に従って、P−T流体接続を閉じ、又は少なくとも部分的に開くことが好ましい。絞りピストンは、作動距離を介して、表現を変えると、サーモエレメントのストロークを介して、給油接続端からタンク接続端への絞り断面を開いて増大させる。給油接続端から、調節される作動圧が支配する作動油接続端への、P−A流体接続は、通常、メイン制御ピストンとして作動する制御ピストン上に、形成される。
【0010】
本発明に係る弁の他の好ましい形態において、少なくとも1つの入口絞りが設けられており、この入口絞りは、弁ハウジング内の、給油接続端に対応づけられた、少なくとも1つの流体室内に配置されることが好ましい。入口絞りを介しての圧力差は、絞りピストンの絞り断面の増大に従って増大し、油圧負荷に対応づけられた油圧システム内のシステム圧は、制御ピストンにおける力のバランスを維持するためには、非線形に上昇しなければならない。このため、本来線形の、圧力−温度、特性曲線を、所望の負荷特性曲線に、たとえば3乗のような、非線形に上昇するファンの特性曲線に、適合させることができる。
【0011】
更に、サーモエレメントは、制御ピストンから遠い側の端部において、過負荷ばねのような過負荷エレメントと、好ましくは圧縮ばねと、作用上結合されていることが好ましく、この場合に過負荷エレメントは、初期負荷や、蓄勢装置を介して制御ピストンに作用する力を制限する。このようにして、ある種の圧力制限が実現されて、システム圧が最大許容値を上回った場合に、制御ピストンが、絞りピストンを介してサーモエレメントと完全接触するに至り、制御される圧力が、サーモエレメントにおける過負荷エレメントに作用する。制御される圧力は、過負荷エレメントによってあらかじめ設定された値に制限され、したがって、サーモエレメントは、過負荷から保護される。
【0012】
弁の制御ピストンの設計に関して、制御ピストンは、共通のピストンロッド上の差動ピストンとして、メインピストン部分と、メインピストン部分に対して異なる有効なピストン面を備えた第2のピストン部分と、を有するように構成することが好ましく、これらの間に第1の流体室が画成されて、第1の流体室の中へ給油接続端が給油し、この場合にメインピストン部分が、制御用エッジ又は制御用切り欠きによって、第1の流体室と作動油接続端との間の通路断面を制御することが好ましい。
【0013】
更に、弁ハウジング内に、第1の流体室から絞りピストンへの接続ラインと、この絞りピストンからタンク接続端へ通じる分岐ラインと、を設けることができ、この場合に、接続ラインと分岐ラインの間の流体通路が、絞りピストンによって制御可能である。
【0014】
更に、サーモエレメントにおける温度を設定するための流体用に、弁ハウジングにおける外側の流体入出ポート間に、流体通路が形成されており、サーモエレメントがこの流体通路内に配置されている場合に、本発明に係る弁を、自立して、すなわち外部の流体ラインなしで、制御することができる。更に、サーモエレメントからタンク接続端へ通じる流体還流路を設け、これが同様に弁ハウジング内に延びていると、効果的である。流体供給と流体還流が、サーモエレメントの温度供給のための、一種の内部フラッシング流体通路を形成する。
【0015】
代替的に、サーモエレメントの温度を設定する流体のために、外側の流体入出接続端の間の流体通路を弁ハウジング内に形成することができ、この場合にサーモエレメントは流体通路内に配置されている。この代替案において、外側の流体ポートを利用することができ、この場合に流体又はフラッシング液の還流は、弁ハウジング又はポンプハウジングを介して内部で行われるのではなく、外部で行われる。
【0016】
サーモエレメントへの流体供給又は温度供給の形態に関係なく、弁ハウジング内に、サーモエレメントに対応づけられた、少なくとも1つの外側の流体ポートを形成することができる。
【0017】
本発明は、また、特許請求項10に記載するように、少なくとも1つの油圧負荷と、この少なくとも1つの油圧負荷を温度に従って制御する、本発明に係る少なくとも1つの弁と、を有する油圧システムに関し、少なくとも1つの油圧負荷は、弁の作動油接続端に接続されており、この場合に、制御ピストンが、サーモエレメントの温度に従って、給油接続端から作動油接続端へのP−A流体接続を、少なくとも部分的に開き又は閉じる。
【0018】
この場合に、少なくとも1つの油圧負荷は、油圧モーターに対応づけることができ、この油圧モーターが可変容量ポンプと共に油圧システム、特に、モーターポンプユニットを形成し、この場合にそれぞれの油圧負荷は、作動圧のフィードバックを介して、可変容量ポンプの吐出体積を調節し、特に、可変容量ポンプの揺動角度を設定することが好ましい。本発明に係る好ましい油圧システム内で、モーター出力の温度に依存する制御が実現され、油圧モーター出力の制御が実現される。少なくとも1つ、好ましくは複数のばね、特に、直列接続の圧縮ばねの機能に基づく使用により、調節範囲の限られた応答の遅いシステムの温度に依存する制御が得られる。本発明に係る油圧システムのこの形態において、該当する油圧負荷は、作動シリンダとして形成され、この作動シリンダが、作動側を、弁の作動油接続端に接続されており、作動シリンダのピストンが、可変容量ポンプの揺動角度を設定することが好ましい。
【0019】
本発明に係る油圧システムの他の好ましい実施形態において、油圧モーターは、油圧システムによって設定されるファン回転数によって、冷却装置のファンを駆動する。
【0020】
この場合に、本発明によれば、電気的又は電子的なコンポーネントを使用することなしに、ファンドライブ用の内蔵された温度制御弁を有するアキシャルピストンポンプが得られる。
【0021】
本発明の他の利点と特徴が、図及び以下の図面の説明から明らかにされる。上述した特徴及び更に記載される特徴は、本発明に基づいてそれぞれ単独で、又は互いに任意に組み合わせて実現することができる。図に示される特徴は、純粋に図式的かつ縮尺にとらわれないものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る弁の第1の実施形態を示す断面図と、対応づけられた油圧システムのシンボル表示と、を示し、流体の冷間状態におけるシステムのアクティブな作動状態を示している。
【
図2】本発明に係る弁の一部としてのサーモエレメントの、作動距離−温度、の特性曲線を示している。
【
図3】本発明に係る弁の、システム圧−温度、の特性曲線を示している。
【
図4】第1の実施形態の非アクティブな作動状態を、
図1に比較して図式的に簡略化して示している。
【
図5】冷却される流体が温かい状態の、アクティブな作動状態を示す、
図4と同様の図である。
【
図6】過負荷における圧力遮断の作動状態を示す、
図4と5に対応する図である。
【
図7】本発明に係る弁の第2の実施形態を、一部断面で、かつ部分的にシンボル表示で示しており、非アクティブな作動状態を示している。
【
図8】第2の実施形態を、
図7に比較してより簡略化した概略図であり、流体が冷たい状態におけるアクティブな作動状態を示している。
【
図9】第2の実施形態の同様の図であって、冷却される温かい流体を有する作動状態を示している。
【
図10】第2の実施形態の同様の図であって、過負荷での圧力遮断を有する作動状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、一部は断面で、また、一部はシンボル表示で、本発明に係る弁による解決手段の第1の実施形態が示されている。弁は、全体を符号10で示しており、弁ハウジング12を有し、弁ハウジングは、3つの部分14、16、18からなり、これらが、垂直に延びる分離箇所20に沿って、弁ハウジング12の実用的な組立を可能にしている。図を簡略化したので、接続に関する解決手段は、詳細には示されていない。
図1に記載の弁10を見る視線方向において、弁ハウジング12の下側に給油接続端又はポンプ接続端P、作動油接続端又は利用接続端A、及び、タンク接続端T、が配置されており、このタンク接続端は、タンク圧又は環境圧力を有している。更に、
図1を見る視線方向において、弁ハウジングの左側16には、2つの流体ポート22、24が存在しており、流体ポート22、24を通って、たとえば油圧オイルの形式の流体が、矢印方向に流れることができる。
【0024】
弁ハウジング部分18の内部には、弁ハウジング部分18の長手方向に延びるように相前後して配置された2つの流体室26、28が設けられている。2つの流体室26、28内及び弁ハウジング12の内壁の内部に、長手方向に摺動可能に案内されて、制御ピストン30が設けられている。制御ピストン30のピストンロッド32上に、
図1に示す表示に従って軸方向に互いに離隔して3つの、ピストンロッド32に対して直径を拡幅されたピストン部分34、36、38が存在している。2つのリング状又は円筒状に形成されたピストン部分34、36は同一の外径を有しているが、これに対してピストン部分38は、流体室28内を走行することができるようにするために、流体室28に対応して、直径が減少されており、この流体室は、外径を、流体室26に対して同様に減少されている。流体室28は、一種のばね室を形成しており、この中に、圧縮ばね40の形式の蓄勢装置が収容されている。しかし、本発明に係る解決手段は、圧縮ばね40なしでも十分である。
【0025】
図1の表示に基づくピストンロッド32は、ピストンロッド32の右側においてピストン部分38を越えて軸方向に突出しており、突出し部の前側の自由平面において、停止面39を形成しており、停止面39は、流体内に位置する弁ハウジング12の内壁と、この箇所で添接する可能性がある。しかしピストンロッド32は、これとは反対の側においては、ピストン部分34へ直接移行しており、このピストン部分は、弁による解決手段の、冷間作動状態に相当する
図1の表示によれば、停止部42に添接し、この停止部は、他の流体室44が、隣接する流体室26よりも直径において小さく形成されているので、その限りにおいて、弁ハウジング部分16内に、直径の段部の存在によって形成されており、この弁ハウジング部分は、上述した垂直に延びる分離箇所20において、弁ハウジング部分18に対して段部を形成し、この段部が、
図1に示す左の当接位置にある限りにおいて、制御ピストン30全体のための停止部42として用いられる。
【0026】
制御ピストン30の左のピストン部分34には、他のピストン部分46が連続しており、他のピストン部分46は、直径においてピストン部分30に対して減少されて、他の流体室44内で長手方向に走行可能に案内されている。図示のこの実施形態において、他のピストン部分46は、ピストン部分30の一体的な構成要素であって、段部20に沿って直径が減少されている。しかしまた、ピストンロッド32を通して案内して、2つのピストン部分38と46を互いに一体的に形成することも、考えられる。
図1を見る視線方向において、他のピストン部分46はその左側にストッパ部分48を有しており、このストッパ部分は、弁ハウジング内部のピストン配置の走行位置に従って、符号50で示す絞りピストンの前側の添接面と添接可能である。絞りピストン50は、流体室44の内部で長手方向に走行可能に案内されており、2つのリング状のピストン部分52、54を有し、これらは、軸方向に見て中央に配置されているピストンロッド部分56を介して互いに距離をもって保持されている。このような絞りピストン50は、一体的に形成されていることが好ましい。
【0027】
図1に示す弁配置の冷間作動状態において、絞りピストン50は、左のピストン部分52の前側の自由平面によって他の停止部58に添接しており、この停止部は、ここでも、第4の流体室60による直径減少によって得られ、この第4の流体室は、ピストン配置の軸方向に見てその右側を、絞りピストン50のピストン部分52の前側によって画成され、他の対向する側においては、サーモエレメント62によって画成されている。更に、第4の流体室60は、弁10の軸方向に見て、サーモエレメント62に属するアクチュエータ部分64によって貫通されている。
【0028】
サーモエレメント62は、弁ハウジング部分16内部のエレメント収容部66内に、収容されている;しかし、弁10の作動状態に従って、サーモエレメント62は、他の圧縮ばね68の形式の他の蓄勢装置の作用に抗して、
図1を見る視線方向において左へ、摺動することができ、この場合に、サーモエレメント62は、その右の前端部において、停止面70に対して距離を有し、これについては、以下で詳細に説明する。その他において、他の圧縮ばね68は、その一方の自由端部において、サーモエレメント62に支持され、他方の自由端部においては、弁ハウジング部分14の内側に支持され、弁ハウジング部分14は、弁ハウジング12を、外側から、エンドキャップの形式で閉じている。更に、サーモエレメント62は、リング状チャンバ72によって包囲されており、このリング状チャンバ内へ、流体ポート22、24が連通している。
【0029】
絞りピストン50と他のピストン部分46との間に、圧縮ばねの形式の他の第3の蓄勢装置が延びており、これを、以下においては作動ばね74と称する。
図1から更に明らかなように、給油接続端又はポンプ接続端Pと作動油接続端Aが、少なくとも部分的に第1の流体室26内へ連通し、第1の流体室26は、2つのピストン部分36、38によって、端縁側を画成されている。タンク接続端Tも、制御ピストン30の2つのピストン部分34と36の間の領域内で、第1の流体室26内へ連通している。第1の流体室26の、2つのピストン部分36と38の間に延びる部分の間に、接続ライン76が連通しており、この接続ラインは、弁ハウジング12の上方の領域を、長手方向に貫通しており、その他方の端部が、第3の流体室44内へ、特に、絞りピストン50の2つのピストン部分52と54によって画成される領域内へ、連通している。しかし、接続ライン76は、この構成の代わりに、構成によっては、弁ハウジング12の上方の領域内ではなく、下方の領域(図示せず)内に配置することができる。弁ハウジング12の下側に、接続ライン76に対して平行に軸方向に延びるようにして、他の第2の接続ライン78が設けられており、その一方の自由端部は、タンク接続端T内へ、そしてその他方の自由端部は、第4の流体室60内へ、連通している。更に、横方向に延びる分岐ライン80、82が設けられており、これらは、接続ライン78から出ており、一方では、分岐ライン80を通って作動ばね室84(この中に作動ばね74が延びている)内へ連通し、そして一方では、分岐ライン82を通って、第3の流体室44の方向へ連通し、この場合に、
図1の表示に基づく弁の冷間作動状態において、第2の分岐ライン82は、絞りピストン50のピストン部分54によって完全に覆われている。
【0030】
更に、
図1に示すように、弁10には、差動シリンダとして形成された駆動シリンダ86が接続されており、駆動シリンダ86については以下で更に詳細に説明するが、この場合に、駆動シリンダ86のピストン88は、シリンダハウジング内部で、ピストン室90をロッド室92から、通常のように、流体密に分離する。ロッド室92の内部に復帰ばね96が設けられており、この復帰ばねは、復帰ばねの弛緩した状態の方向において、ピストン88を、
図1を見る視線方向において右から左へ移動させようとし、ロッド室は、駆動ロッド94によって貫通されており、この駆動ロッドも、ピストン88の一体的な構成要素として、ピストンによって駆動されることが好ましい。ピストンロッドとして形成された駆動ロッド94は、駆動シリンダ又は可変容量シリンダ98とともに、可変容量ポンプ98の調節装置(揺動角度SW)を形成し、例えば、アキシャルピストン機械として形成することができる。電動機100を、可変容量ポンプ98のための駆動装置として用いることができ、電動機100は、一定工程のモーター又は可変回転数のモーターとすることができる。電動機の代わりに、その他の駆動源も考えられる。この駆動の機能説明のために、ポンプの駆動回転数は、一定であると仮定されるが、この仮定は、実際の駆動においては、絶対的な前提ではない。可変容量ポンプ98は、タンクTから油圧液を取り出して、これを、ポンプ出口で交差箇所102を介して、ポンプ接続端Pの方向へ、従って弁へ、供給することができ、この場合に、このような給油ライン104内に、圧力差絞り又は入口絞りとしてのブラインド又は絞り106が接続されている。交差箇所102の出口には、駆動シリンダ86のロッド室92が、流体を導くように接続されており、交差箇所102の反対側には、油圧モーター108が接続されており、この油圧モーターが、ファンドライブとして用いられ、ファンブレード110を、ロータの形式で駆動する。可変容量ポンプ98から油圧モーター108を通って送られた流体は、再びタンク側Tへ流出する。通常の方法でファンブレード110によって発生された空気流量は、たとえばプレート熱交換器として形成された熱交換器112を貫流し、この熱交換器には、油圧回路114が接続されており、この油圧回路は、たとえば油圧作動シャフト(図示せず)を作動させるために用いられ、この油圧回路の、他のポンプ装置(図示せず)によって熱交換器112を通して送られる流体が、温度調節され、特に、冷却される。油圧回路114は、流体通路(図示せず)を介して、入口側を弁10の第1の流体ポート22に、そして出口側を第2の流体ポート24に接続することができる。しかしまた、別の流体回路内で、第1と第2の流体ポート22と24を介して、温度を下げることもでき、この回路は、油圧回路114内の運転温度状況を、間接的に反映するだけである。更に、上述の流体通路の他に、駆動シリンダ86のピストン室90が、他の接続ライン116を介して、作動油接続端Aに接続されている。
【0031】
図示の弁による解決手段の機能を詳しく説明する前に、更に、実用上の機能のためには、第2の流体室28内の圧縮ばね40を省くこともでき、基本的な図では、ダンパー絞り118が、弁ハウジング12内部の利用接続端Aとタンク接続端Tとの間に流体接続されていることを、注意願いたい。流体室28は、タンクTへ排液されなければならないが、それは示されていない。
【0032】
機能の態様を説明するために、まず
図4を参照し、
図4においては、弁10及び対応づけられた油圧システムの非アクティブな作動状態が示されている。この場合に、駆動モーター又は電動機100がオフにされている場合に、作動ポンプ98の駆動回転数は、n
An=0であるので、システム圧はp
o=0である。この場合に、
図4に示すように、可変容量ポンプ98は、全体積流量に調節されており、すなわち可変容量ポンプ98の揺動角度SWは、最大にされている。この場合に、面積差を有するピストンとして形成されている制御ピストン30は、作動ばね74によって、右側のA−T位置に保持されているので、作動油接続端Aが、タンク接続端Tと接続されており、これに伴って、駆動シリンダ86のピストン室90が、タンク接続端Tと接続されている。ピストン室90に対してタンクとの接続が形成されていることに基づいて、駆動シリンダ90内で案内されるピストン88は、復帰ばね96によって、最大の揺動角度SWに相当する位置に保持される。駆動シリンダ86内に復帰ばね96が存在することは、機能にとって必ずしも必要ではない。というのは、ばね復帰なしでも、作動システムは実現可能だからである。その他において、弁ハウジング12内にダンパー絞り118を介して形成されている接続を通して、作用接続端Aとタンク接続端Tとの間に、恒久的な接続が存在する。流体の最低温度T
Fluid=minに従って、サーモエレメント62のアクチュエータ部分64の作動距離はS=min、絞りピストン50に作用する力はF=minで、最小であり、ゼロに等しいことが好ましい。したがって制御ピストン30は、実質的に変化せずに、このA−T位置に留まる。サーモエレメント62に対応づけられた側において、絞りピストン50は、非アクティブな作動状態において、弁ハウジング12の内部の直径を小さくすることによって形成された停止部58(
図5を参照)に添接する。
【0033】
システムが非アクティブな状態からアクティブな状態へ移行した場合に、可変容量ポンプ98は、常用回転数n
Anで駆動される。流体がまだ冷たい場合には、サーモエレメント62を介して絞りピストン50へ、実質的に力F=f(Smin)は作用しないので、絞りピストンは、制御用エッジの閉鎖を介して、接続ライン76と78とを互いに分離する。したがって、給油接続端Pに構築されるシステム圧p
oは、接続ライン76を介して低下せず、したがって、予め定めることができる強さで制御ピストン30の差圧面に作用し、この制御ピストンは、生じる油圧力全体によって、作動ばね74に抗して移動され、これによって、
図1に示すように、P−A接続が開かれる。差動ピストンの上に形成されている、給油接続端Pと作動油接続端Aとの間の圧力降下からもたらされる体積流が、駆動ピストン88と共に、力を、大きい方のピストン面へもたらす。この力が、ピストンの環状面の力の作用を上回ると、すなわちピストンロッドの側部へのすなわち小さい方の環状のピストン面への圧力に基づく力の作用を上回ると、駆動ピストン88が、
図1の右側に見える終端位置の方向に摺動される。その結果として、まず、駆動シリンダ86のロッド側の体積が最小にされて、これによって、駆動シリンダ86のピストン88が、揺動角度SWを最小値の方向に変化させ、これにより、可変容量ポンプ98の吐出体積が、最小に減少される。
【0034】
自動的に決まるシステム圧p
oは、比較的弱く付勢された作動ばねの力とポンプ調節機構の必要な作動力との合計に相当し、理想的には、ファン110を駆動する油圧モーター108の始動に必要な最小圧を下回る。流体が低い温度を有する場合に、サーモエレメント62のアクチュエータ部分64は、最小の作動長さを有し、すなわち完全に引き込まれている。Fminは、最小の作動長さから生じる力であって、これが、絞りピストン50に作用し、流体の冷間状態(詳しく定義しない)においては、ほぼゼロと見なすことができる。これは、流体が冷たい場合に、絞りピストン50の初期位置が、
図4に示す非アクティブな状態に対して変化していないので、ライン76と78とは、上述で説明したように、閉鎖された制御用エッジによって、互いに分離されていることを意味している。この状態での変化は、流体の温度上昇が生じることに基づいて、初めて行われる。
【0035】
この状態の変化が、
図5に示されている。流体の温度T
Fluidの上昇に基づいて、サーモエレメント62又はサーモエレメント62のアクチュエータ部分64の作動距離の増大と、これに伴って、絞りピストン50のこれに応じた摺動が生じる。
【0036】
図2に示すサーモエレメント62の、作動距離−温度、の特性曲線は、サーモエレメント62の機能を説明しており、第1の領域とこれに続く第2の領域とを示し、第1の領域は、レギュラーの作動距離Sregを有し、レギュラーの作動距離Sregは、流体の温度T
Fluidに対して線形に、第1の勾配(ここではほぼ1)で増加する。第2の領域は、非レギュラーの作動距離Soverを有し、非レギュラーの作動距離Soverは、流体の温度T
Fluidに対して線形に、第1の勾配に比べて小さい第2の勾配で増加し、最大値まで増加する。この場合に、レギュラー作動距離Sregは、作動領域内のサーモエレメント62又はサーモエレメント62のアクチュエータ部分64の、ストロークに相当し、したがって、非レギュラー作動距離Soverは、サーモエレメント62又はこれと結合されたアクチュエータ部分64の、オーバーストロークに相当する。
【0037】
流体の温度上昇によってもたらされるサーモエレメント62のアクチュエータ部分64の作動距離の延びに従って、絞りピストン50の摺動が生じるので、増加した付勢力が、作動ばね74を介して制御ピストン30にもたらされる。作動ばね74の増加する力が、制御ピストン30を、
図5において右へ摺動させ、これによって、ピストン部分36における制御用エッジが、給油接続端Pから作動油接続端Aへの、そして更に駆動シリンダ86のピストン室90への、P−A流体接続を、次第に減少させ、これによって、駆動シリンダ86のピストン88の運動が、可変容量ポンプ98の揺動角度SWを、次第に増大させて、これによって、吐出体積が、これに応じて増加する。同時に、絞りピストン50が、ピストン部分54に位置する制御用エッジによって、接続ライン76と、タンク接続Tへ通じる第2の接続ライン78と、の間の接続を、次第に開く。これによって、流体室26内の、入口絞り106の後方の制御ピストン30に作用する制御圧が、低下し、このことは、制御ピストン30における力の均衡を維持するためには、可変容量ポンプ98の圧力側に与えられるシステム圧p
oが、非線形に上昇しなければならないことを、意味している。これによって、本来線形の、圧力−温度、特性曲線は、
図3に示すように、線形ではなく、3乗で上昇するファン特性曲線に、合わされる。
図3を参照。これにおいて、Iは、非アクティブなシステムの作動点、IIは、流体が冷たい状態におけるアクティブなシステムの作動点、そしてIIIは、流体が温かい状態における運転領域内部の作動点、を示している。見てわかるように、線形の圧力に相当する制御圧P
1に対して、絞りピストン50を介しての圧力減少に基づく制御範囲にわたって、制御圧力を維持するためには、付加的な圧力P
2が必要である。流体の温度が上昇すると、これに対応して、システム圧P
0の上昇を生じ、これと共に、油圧モーター108によって発生されるファン回転数の、対応する上昇を生じる。
【0038】
図6は、システム圧P
0が、過負荷状態に相当する値に上昇した状態を示している。この場合に、
図6で左へ向いたピストンのストッパ部分48(
図1を参照)が、絞りピストン50と完全に接触し、すなわち、絞りピストン50上に添接し、流体室26内を支配する制御ピストン30に作用する圧力は、絞りピストン50を介してアクチュエータ部分64に加わり、したがって、圧力が、サーモエレメント62に加わる。しかし、サーモエレメント62を支持する他のばね68が、サーモエレメント62のしなやかな動きを可能にし、過負荷を防止するように働き、サーモエレメント62の過負荷は回避される。同時に、制御ピストン30の過負荷状態に相当する位置において、弁ハウジング12におけるP−A接続は、実際には圧力を遮断するように絞られていないので、駆動シリンダ86のピストン88が動かされ、作動ポンプ98の揺動角度SWを、最小吐出体積の方向へ動かし、その結果、圧力を遮断する。
図3では、圧力−温度、の特性曲線上で、過負荷状態に達した場合の作動点が、IVで記載されている。
【0039】
図7から9は、第2の実施形態を示している。この第2の実施形態は、第1の実施形態とは異なり、内部の流体供給路が、弁ハウジング12内に設けられており、給油接続端Pからサーモエレメント62上のポート22への流体ライン27を通る流体供給路と、ポート22から還流ライン29を介して第2の接続ライン78へ、そしてタンク接続端Tへの流体供給路と、が設けられている。このように、サーモエレメントの温度を設定する流体のために、内部のフラッシング流体ラインが設けられているので、代替的に、図面に示すように、サーモエレメントの、外側のポート22自体を省くことができる。その限りにおいて、ファンドライブの完全に自立した作動が望ましい場合に、内部の流体接続が、外側のポートに代わるものとなる。内部の流体ライン27は、入口絞り31を介して給油接続端Pと接続されており、第2の入口絞り33は、給油接続端Pと、ピストン部分38に隣接する流体室と、の間に設けられている。第1の例に対する他の差異は、制御ピストン30が、終端側のピストン部分38とピストン部分36との間に、中間ピストン部分35を有し、中間ピストン部分35が、ピストン部分36と同一の有効なピストン面を有していることによって、給油接続端Pの後方に、制御流体と作動流体の分離が形成されていることにある。ピストン部分36と中間ピストン部分35との間の流体室26内へ、給油接続端Pから分岐する流体ブランチ37が連通している。制御圧、すなわち流体室26内で制御力として制御ピストン30に作用する制御圧と、作動圧、すなわち分岐する流体ブランチ37を介して作動油接続端Aに生じる作動圧と、の間のこの分離は、ピストン部分36によって制御されるやり方で、駆動シリンダ86の必要最小作動圧を下回る制御圧で制御することが、可能となる。制御ピストン30で必要なばね剛性が小さくてよいことに対応して、制御圧が低いので、制御オイル消費量が少なくてすみ、その限りにおいて、制御弁での効率のレベルにおいて、損失を小さくすることができる。
【0040】
その他において、第2の実施形態の機能は、第1の実施形態の機能に一致するので、更に詳しく説明する必要はないであろう。