【実施例】
【0036】
実施形態を、以下の実施例によってさらに明らかにする。
【0037】
実施例1
実施例1は、ガラスリボンの目標の温度プロファイルの変化に近似するために、どのようにしてガラスリボンの実際の温度プロファイルの変化を修正するかを示す。ガラスリボンの温度プロファイルの変化は、冷却を伴わずに1xガラス流量でガラスリボンの温度プロファイルを最適化するように設計された延伸部に対して、実験的にまたはモデリングソフトウェアを用いて理論的に判定される。ガラスリボンのこの目標の温度プロファイルの変化は、
図7に710で示されている。7つのポートが
図8に描かれているように延伸部内の種々の位置に含まれる。
図8において延伸部の壁は実線で描かれており、またガラスリボンは破線で描かれている。
図8を参照すると、第1のポート810は根底部からおよそ40インチ(101.6cm)に位置付けられ、第2のポート820は根底部からおよそ60インチ(152.4cm)に位置付けられ、第3のポート830は根底部からおよそ65インチ(165.1cm)に位置付けられ、第4のポート840は根底部からおよそ80インチ(203.2cm)に位置付けられ、第5のポート850は根底部からおよそ105インチ(266.7cm)に位置付けられ、第6のポート860は根底部からおよそ125インチ(317.5cm)に位置付けられ、さらに第7のポート870は根底部からおよそ140インチ(355.6cm)に位置付けられている。
【0038】
ガラスリボンの温度プロファイルに対する流体抜取りの影響を測定する。流体を第1のポート810から約280lb/hr(0.127m
3/h)の流量で抜き取り、ガラスリボンの温度プロファイルの変化を延伸部の鉛直方向に沿って測定する。ガラスリボンの得られた温度プロファイルの変化を、
図9に910で示す。同様に、流体を第2のポート820から約280lb/hr(0.127m
3/h)の流量で抜き取り、ガラスリボンの温度プロファイルの変化を延伸部の鉛直方向に沿って測定する。ガラスリボンの得られた温度プロファイルの変化を、
図9に920で示す。同様に、流体を第3のポート830、第4のポート840、第5のポート850、第6のポート860、および第7のポート870から280lb/hr(0.127m
3/h)の流量で個々に抜き取り、ガラスリボンの温度変化を延伸部の鉛直方向に沿って測定する。得られた温度プロファイルの変化を、
図9に夫々930、940、950、960、および970で示す。
図9から分かるように、空気を抜き取ると、延伸部の上方領域よりも延伸部の下方領域でガラスのバルクはより冷却されることになる。逆流は出口で認められない。
【0039】
抜取りの測定に続いて、室温の空気の注入によるガラス温度への影響を測定する。室温の空気を第1のポート810内に約280lb/hr(0.127m
3/h)の流量で注入し、ガラスリボンの温度プロファイルの変化を延伸部の鉛直方向に沿って測定する。ガラスリボンの得られた温度プロファイルの変化を、
図10に1010で示す。同様に、室温の空気を第2のポート820内に280lb/hr(0.127m
3/h)の流量で注入し、ガラスリボンの温度プロファイルの変化を延伸部の鉛直方向に沿って測定する。ガラスリボンの得られた温度プロファイルの変化を、
図10に1020で示す。同様に、室温の空気を延伸部内へと、第3のポート830、第4のポート840、第5のポート850、第6のポート860、および第7のポート870から280lb/hr(0.127m
3/h)の流量で個々に注入し、ガラスリボンの温度変化を延伸部の鉛直方向に沿って測定する。得られた温度プロファイルの変化を、
図10に夫々1030、1040、1050、1060、および1070で示す。
図10から分かるように、室温空気を注入すると、注入位置付近およびその上方のガラスを冷却するが、延伸部のより下方領域(すなわち根底部から最も離れた部分)ではガラスを加熱する。逆流は出口で起こり得ない。
【0040】
上で行われた抜取りおよび注入の測定による、温度プロファイルの変化を用いて、各ポートに対するAGain
iを、方程式(1)を使用して計算する。
【0041】
【数3】
【0042】
AGain
iが各ポートに対して計算されると、方程式2を用いて最小二乗を行って各ポートに対するm
iの値を計算する。
【0043】
【数4】
【0044】
最小二乗計算から得られた各m
iを次いで、物理的実験の延伸部またはソフトウェアモデルに導入する。計算されたm
iの値を使用して、温度変化プロファイルを再び各ポートに対して測定する。これらの新たな温度変化プロファイルを、次いで新たな基準として使用してさらなるAGain
i値を計算してもよく、さらにこのさらなるAGain
i値を方程式(2)で使用して、温度変化プロファイルをさらに精密化してもよい。このプロセスを、1x流に対して最適化された延伸部に基づく温度変化プロファイルに、得られた温度変化プロファイルが密接に一致するまで繰り返してもよい。この方法を使用して、
図11に示されている流体注入/抜取りを組み合わせたスキームが引き出される。
図11において、正の空気流は延伸部からの流体の抜取りを表し、負の空気流は延伸部への室温空気の注入を表す。
図11はさらに、空気注入/抜取りによる方法を、流体が延伸部から40lb/hr(0.01814m
3/h)超で第1のポート810より抜き取られる、抜取りのみの方法と比較する。
図7に示されているように、注入/抜取りによる方法を用いたガラスリボンの温度プロファイルの変化(曲線720で示されている)は、抜取りのみで達成されたガラスリボンの温度プロファイルの変化(曲線730で示されている)よりも、冷却なしで1xガラス流量から得られたガラスリボンの温度プロファイルの変化(曲線710で示されている)の形状に密接に近似することができる。
【0045】
従ってこの実施例は、注入/抜取り冷却を組み合わせたものが、抜取りのみの冷却よりも、目標の温度プロファイルの変化に密接に近似可能であることを示している。特に、例えば
図10に示されているように注入により達成されるガラスリボンの温度プロファイルの変化は、ガラスリボンの温度プロファイルに達成される変化のカスタマイズを可能にする、より多くの自由度を有する。
【0046】
実施例2
本書で開示した実施例1に示した方法を使用すると、ガラス流量が延伸部内で増加したときに流体注入/抜取り冷却を用いてガラスリボンの温度プロファイルを制御することができる。
【0047】
2xガラス流量
1xガラス流量でガラスリボンの温度プロファイルを最適化するように設計された延伸部内で温度プロファイルを測定することによって、ガラスリボンの基準温度プロファイルを得る。この基準延伸部内の流体流は、延伸部を上る自然の流体流であり、注入または抜取りによって誘発されたものではない。基準空気流量は約0.0022m
3/sである。ガラスリボンの基準温度プロファイルを
図12Aに1210で示す。
【0048】
延伸部内のガラス流量を次いで2xに増加させ、上述した実施例1における方法を用いて7ポートの夫々に対して流体流量を決定する。各ポートに対する流体流量が計算されると、
図12Bに示されているような注入/抜取りスキームが得られる。
図12Bの空気流量は、ガラス流量が1xである延伸部内の基準空気流量の関数として測定されたものである(例えば、
図12Bのy軸上の2は基準空気流量の2倍である)。
図12Bに示されている正の流れは延伸部からの流体抜取りを示し、また負の流れは延伸部への流体注入を示す。
図12Bでは、第1のポートのみで約3.5の流量で流体を抜き取ることによって、抜取りのみのスキームが計算される。
図12Aは、(1xガラス流量で測定された)基準温度プロファイルを1210で、いかなる流体冷却も伴わない2xガラス流量での温度プロファイルを1220で、
図12Bに示したスキームを用いた流体注入/抜取り冷却を伴う、2xガラス流量での温度プロファイルを1230で、そして流体抜取りのみを伴う2xガラス流量での温度プロファイルを1240で示している。
図12Aが示すように、流体冷却を伴わない2xガラス流量での温度プロファイルは、基準温度プロファイルに近似しない傾斜を有し、ガラス流量が2xに設定されると延伸部内であまり冷却されなくなることを示唆している。しかしながら注入/抜取りスキームおよび抜取りのみのスキームは、両方が基準温度プロファイルに密接に近似する。従って2xガラス流量では、注入/抜取りスキームの他、抜取りのみのスキームも延伸部において適切な冷却を提供することができる。しかしながら
図12Aに示されているように、流体注入/抜取り冷却を用いて得られた温度プロファイルは基準温度プロファイルに略一致し、これは注入/抜取りスキームを用いることによって可能な温度制御の改良を示している。
【0049】
3xガラス流量
1xガラス流量でガラスリボンの温度プロファイルを最適化するように設計された延伸部内で温度プロファイルを測定することによって、ガラスリボンの基準温度プロファイルを得る。この基準延伸部内の流体流は、延伸部を上る自然の流体流であり、注入または抜取りによって誘発されたものではない。基準空気流量は約0.0022m
3/sである。ガラスリボンの基準温度プロファイルを
図13Aに1310で示す。
【0050】
ガラス流量を次いで3xに増加させ、実施例1において説明した方法論を用いて7ポートの夫々に対して流体流量を決定する。各ポートに対する流体流量が計算されると、
図13Bに示されているような注入/抜取りスキームが得られる。
図13Bの空気流量は、ガラス流量が1xである延伸部内の基準空気流量の関数として測定されたものである(例えば、
図13Bのy軸上の2は基準空気流量の2倍である)。
図13Bに示されている正の流れは延伸部からの流体抜取りを示し、また負の流れは延伸部への流体注入を示す。
図13Aは、(1xガラス流量で測定された)基準温度プロファイルを1310で、いかなる流体冷却も伴わない3xガラス流量での温度プロファイルを1320で、さらに
図13Bに示したスキームを用いた流体注入/抜取り冷却を伴う、3xガラス流量での温度プロファイルを1330で示している。
図13Aが示すように、流体冷却を伴わない3xガラス流量での温度プロファイルは、基準温度プロファイルに近似しない傾斜を有し、ガラス流量が3xに設定されると延伸部内であまり冷却されなくなることを示唆している。3xガラス流量では、抜取り単独で、遷移ゾーンでの逆流を伴わずにガラスを十分に冷却することはできない。この逆流はガラスを冷却する代わりにこれを加熱し、凝縮の問題を生じさせる可能性がある。
図13Aに示されているように、流体注入/抜取りスキームを使用すると、基準温度プロファイルに略一致する温度プロファイルを実現することができる。従って、注入/抜取りスキームを使用すると、延伸部の物理的寸法または断熱性を変化させることなく、ガラスの流量を3xに増加させることができる。
【0051】
4xガラス流量
1xガラス流量でガラスリボンの温度プロファイルを最適化するように設計された延伸部内で温度プロファイルを測定することによって、ガラスリボンの基準温度プロファイルを得る。この基準延伸部内の流体流は、延伸部を上る自然の流体流であり、注入または抜取りによって誘発されたものではない。基準空気流量は約0.0022m
3/sである。ガラスリボンの基準温度プロファイルを
図14Aに1410で示す。
【0052】
ガラス流量を次いで4xに増加させ、実施例1において説明した方法論を用いて7ポートの夫々に対して流体流量を決定する。各ポートに対する流体流量が計算されると、
図14Bに示されているような注入/抜取りスキームが得られる。
図14Bの空気流量は、ガラス流量が1xである延伸部内の基準空気流量の関数として測定されたものである(例えば、
図14Bのy軸上の2は基準空気流量の2倍である)。
図14Bに示されている正の流れは延伸部からの流体抜取りを示し、また負の流れは延伸部への流体注入を示す。
図14Aは、(1xガラス流量で測定された)基準温度プロファイルを1410で、いかなる流体冷却も伴わない4xガラス流量での温度プロファイルを1420で、さらに
図14Bに示したスキームを用いた流体注入/抜取り冷却を伴う、4xガラス流量での温度プロファイルを1430で示している。
図14Aが示すように、流体冷却を伴わない4xガラス流量での温度プロファイルは、基準温度プロファイルに近似しない傾斜を有し、ガラス流量が4xに設定されると延伸部内であまり冷却されなくなることを示唆している。4xガラス流量では、抜取り単独で、遷移ゾーンでの逆流を伴わずにガラスを十分に冷却することはできない。この逆流はガラスを冷却する代わりにこれを加熱し、凝縮の問題を生じさせる可能性がある。
図14Aに示されているように、流体注入/抜取りスキームを使用すると、基準温度プロファイルに略一致する温度プロファイルを実現することができる。従って、注入/抜取りスキームを使用すると、延伸部の物理的寸法または断熱性を変化させることなく、ガラスの流量を4xに増加させることができる。
【0053】
請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく、本書において説明された実施形態の種々の改変および変形が作製可能であることは当業者には明らかであろう。従って、本書において説明された種々の実施形態の改変および変形が、添付の請求項およびその同等物の範囲内であるならば、本明細書はこのような改変および変形を含むと意図されている。