【文献】
Anderl, J. et al.,Chemical modification allows phallotoxins andamatoxins to be used as tools in cell biology,Beilstein J. Org. Chem.,2012年,Vol. 8,pp. 2072-2084
【文献】
Moldenhauer, G. et al.,Therapeutic potential of amanitin-conjugated anti-epithelial cell adhesion molecule monoclonal antibody against pancreatic carcinoma,J. Natl. Cancer Inst.,2012年,Vol. 104,pp. 622-634
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アマトキシンは、α−アマニチン、β−アマニチン、アマニン、アマニンアミド、又はこれらの塩若しくは類縁体から選択される、請求項1〜4の何れか一項に記載のアマトキシン。
nが1であり、リンカーの長さが最大12原子長、特に2〜10原子長、より具体的には4〜9原子長、最も具体的には6〜8原子長である、請求項1(ii)、1(iii)、及び2〜5の何れか一項に記載のアマトキシン。
前記リンカーLが、アルキレン、ヘテロアルキレン、アルケニレン、ヘテロアルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、又はヘテロアラルキレン基であり、ここでヘテロ原子はN、O、及びSから選択される1〜4のヘテロ原子でありであり、前記リンカーは任意により置換されていてもよい、請求項1(ii)、1(iii)、及び2〜6の何れか一項に記載のアマトキシン。
前記リンカーLが、ジスルフィド、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、カルボキサミド、ウレタン、及び尿素部分から選択される部分を含む、請求項1(ii)、1(iii)、及び2〜7の何れか一項に記載のアマトキシン。
標的結合部分が、腫瘍細胞に存在するエピトープに特異的に結合し、特に標的結合部分が、ヒト上皮成長因子受容体2(human epidermal 生育 factor receptor 2:HER2)のエピトープに特異的に結合する、請求項1(iii)及び2〜8の何れか一項に記載のアマトキシン。
前記抗体又はその抗原結合断片が、二特異性抗体(diabody)、四特異性抗体(tetrabody)、ナノボディ、キメラ抗体、脱免疫化(deimmunized)抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体から選択される、請求項10に記載のアマトキシン。
患者の癌の処置に使用され、特に前記癌が、乳癌、膵癌、胆管癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、腎臓癌、悪性メラノーマ、白血病、及び悪性リンパ腫からなる群より選択される、請求項1(iii)及び2〜12の何れか一項に記載のアマトキシン。
請求項1(iii)及び2〜12の何れか一項に記載のアマトキシンを含むと共に、更に一又は二以上の医薬的に許容可能な希釈剤、担体、賦形剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、吸着剤、及び/又は保存剤を含む医薬組成物。
Xがカルバミン酸誘導体−NH−C(O)−Zであり、ここでZは、標的結合部分の求核基により、特に標的結合部分の一級アミンにより、置換されてもよい脱離基である、請求項1(ii)に記載のアマトキシン。
【背景技術】
【0002】
アマトキシンは8アミノ酸からなる環状ペプチドであり、例えばタマゴテングタケ(Amanita phalloides mushrooms)から単離し、或いは合成により得ることができる。アマトキシンは、哺乳類細胞のDNA依存性RNAポリメラーゼIIを特異的に阻害しうると共に、これにより被毒細胞の転写及びタンパク質生合成を特異的に阻害しうる。細胞における転写の阻害により、生育及び増殖が停止する。アマニチンとRNAポリメラーゼIIとの複合体は、共有結合ではないが極めて強固である(K
D=3nM)。酵素からのアマニチンの脱離は極めて緩やかな過程であるため、被毒細胞が回復することは困難である。転写の阻害が長期間継続すると、細胞はプログラム細胞死(アポトーシス)を生じる。
【0003】
腫瘍治療の細胞毒性部分としてのアマトキシンの使用に関し、1981年に、Trp(アミノ酸4;
図1参照)のインドール環にジアゾ化により連結したリンカーを用い、抗Thy1.2抗体をα−アマニチンに連結する試みがなされている(Davis & Preston, Science, 1981, 213, 1385-1388)。Davis及びPrestonは連結位置を7’位と特定している。同様にMorris及びVentonも、7’位での置換によって細胞毒性活性を維持する誘導体が得られる旨を示している(Morris & Venton, Int. J. Peptide Protein Res, 1983, 21, 419-430)。
【0004】
欧州特許出願第EP1859811A1号(2007年11月28日公開)は、β−アマニチンのアマトキシンのアミノ酸1γ位C原子が直接、即ちリンカー構造を介さずに、アルブミン又はモノクローナル抗体HEA125、OKT3、若しくはPA-1に連結されたコンジュゲートを記載する。更に、これらのコンジュゲートが乳癌細胞(MCF−7)、バーキットリンパ腫細胞(Raji)、及びT−リンパ腫細胞(Jurkat)の増殖に対して及ぼす阻害作用も示されている。リンカーの使用についても示唆しており、例えばアミド、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、炭化水素部分等の要素を含むリンカーを挙げているが、斯かる構築物は実際には全く示されておらず、アマトキシンに対する連結部位等の詳細も供されていない。
【0005】
特許出願第WO2010/115629号及び同第WO2010/115630号(何れも2010年10月14日公開)は、アマトキシンに対して抗EpCAM抗体等の抗体、例えばヒト化huHEA125等を、(i)アマトキシンアミノ酸1のγ位C原子、(ii)アマトキシンアミノ酸4の6’位C原子、又は(iii)アマトキシンアミノ酸3のδ位C原子を介して、何れの場合も直接又はリンカーを介して連結したコンジュゲートを記載する。リンカーとしては、例えばエステル、エーテル、ウレタン、ペプチド結合等の要素を含むものが挙げられている。更に、これらのコンジュゲートが乳癌細胞(細胞株MCF-7)、膵癌(細胞株Capan−1)、直腸癌(細胞株Colo205)、及び胆管癌(細胞株OZ)の増殖に対して及ぼす阻害作用も示されている。
【0006】
アマトキシン類の構造と活性との関係は、Wielandによって検討されている(T. Wieland, Peptides of Poisonous Amanita Mushrooms, Springer series in molecular biology, Springer Verlag New York, 1986)。アミノ酸2(ヒドロキシプロリン)の水酸基及びアミノ酸3(ジヒドロキシイソロイシン)のγ−水酸基が活性によって重要だと推測されているのに対し、アミノ酸1(アスパラギン酸又はアスパラギン)、アミノ酸4(6−ヒドロキシトリプトファン)の官能基、並びにアミノ酸3のγ−水酸基は、化学修飾に対する耐性がより高いと考えられる。これは、後者の位置の方がリンカー連結部位として好ましいのに対して、前者の修飾は避けるべきである、との知見を示している。
【0007】
アマトキシン類は、抗体分子等の大型生体分子担体に連結すると、相対的に毒性が低くなること、また、生体分子担体を切断した後でないとその細胞毒性活性を発揮できないことが知られている。アマトキシンの毒性、特に肝臓細胞に対する毒性を考慮すると、標的化腫瘍治療用のアマトキシンコンジュゲートは血漿投与後も極めて安定であること、また、アマトキシンの放出が標的細胞への内在化の後に生じることが、とりわけ重要である。以上に鑑みると、コンジュゲートの安定性の僅かな改善であっても、治療用途のアマトキシンコンジュゲートの治療域及び安全性に対して、劇的な影響を与える可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、以下の発明の詳細な説明、及びそこに含まれる実施例を参照することにより、より理解が容易となるであろう。
【0023】
第1の態様では、本発明は式Iのアマトキシンに関する。
【化3】
式中、
R
1は、C=O、C=、C=NR
6及びCR
7R
8から選択され;
R
2は、S=O、SO
2、及びSから選択され;
R
3は、NHR
5及びOR
5から選択され;
R
4は、H、OR
5、及びOC
1-6−アルキルから選択され;
R
6は、C
1-6−アルキレン−R
5、シクロアルキレン−R
5、ヘテロシクロアルキレン−R
5、アリーレン−R
5、及びヘテロアリーレン−R
5から選択され;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、H、C
1-6−アルキレン−R
5、シクロアルキレン−R
5、ヘテロシクロアルキレン−R
5、アリーレン−R
5、及びヘテロアリーレン−R
5から選択され;
ここで、
(i)各R
5はHであるか;
(ii)R
5の1つは−L
n−Xであり、ここでLはリンカーであり、nは0及び1から選択され、Xは標的化部分と連結されてもよい化学部分であり、残りのR
5はHであるか;或いは
(iii)R
5の1つは−L
n−X
*−Yであり、ここでLはリンカーであり、nは0及び1から選択され、Yは標的化部分であり、X
*は、XとYの官能基との連結により生じる化学部分であり、残りのR
5はHである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「標的結合部分」という用語は、標的分子又は標的エピトープに特異的に結合できるいずれの分子又は分子の一部を指す。本願の文脈における好ましい標的結合構成部分は、(i)抗体又はその抗原結合断片、(ii)抗体様タンパク質、及び(iii)核酸アプタマーである。典型的には、本発明での使用に適した「標的結合構成部分」は40,000Da(40kDa)以上の分子量を有する。
【0025】
本明細書で使用される場合、第1の化合物(例えば抗体)が第2の化合物(例えば標的タンパク質等の抗原)に対して100μM以下、好ましくは50μM以下、好ましくは30μM以下、好ましくは20μM以下、好ましくは10μM以下、好ましくは5μM以下、より好ましくは1μM以下、より好ましくは900nM以下、より好ましくは800nM以下、より好ましくは700nM以下、より好ましくは600nM以下、より好ましくは500nM以下、より好ましくは400nM以下、より好ましくは300nM以下、より好ましくは200nM以下、さらにより好ましくは100nM以下、さらにより好ましくは90nM以下、さらにより好ましくは80nM以下、さらにより好ましくは70nM以下、さらにより好ましくは60nM以下、さらにより好ましくは50nM以下、さらにより好ましくは40nM以下、さらにより好ましくは30nM以下、さらにより好ましくは20nM以下、及びさらにより好ましくは10nM以下の解離定数K
Dを有する場合、第1の化合物は前記第2の化合物に「特異的に結合する」とみなされる。
【0026】
本願の文脈では、「標的分子」及び「標的エピトープ」という用語は、それぞれ標的結合部分によって特異的に結合される抗原及び抗原のエピトープをそれぞれ指す。好ましくは、標的分子は腫瘍関連抗原、特に非腫瘍細胞の表面と比べて増加した濃度及び/又は異なる立体高次構造で1つ以上の腫瘍細胞タイプ又は腫瘍関連細胞の表面に存在する抗原又はエピトープである。好ましくは、前記抗原又はエピトープは、1つ以上の腫瘍又は腫瘍間質細胞タイプの表面に存在するが、非腫瘍細胞の表面には存在しない。特定の実施形態では、標的結合部分はHER−2/neu又は上皮細胞接着分子(EpCAM)のエピトープに特異的に結合する。その他の実施形態では、前記抗原又はエピトープは自己免疫疾患に関与する細胞に優先的に発現される。特定のそのような実施形態では、標的結合部分はIL−6受容体(IL−6R)のエピトープに特異的に結合する。その他の実施形態では、前記抗原又はエピトープは炎症性疾患に関与する細胞に優先的に発現する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「抗体又はその抗原結合断片」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫的に活性のある部分、すなわち、免疫特異的に抗原と結合する抗原結合部位を含む分子を指す。また、例えば、標的分子、例えば、標的タンパク質Her−2/neu又はEpCAMに特異的に結合するファージディスプレイを含む技術によって選択される免疫グロブリン様のタンパク質も含まれる。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のいずれの種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであることができる。本発明での使用に適した「抗体及びその抗原結合断片」としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、二重特異性抗体、ヘテロ複合体抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化(特にCDR移植)抗体、脱免疫化抗体、又はキメラ抗体、一本鎖抗体(例えば、scFv)、Fab断片、F(ab’)
2断片、Fab発現ライブラリーによって作られる断片、ダイアボディ(diabodies)又はテトラボディ(tetrabodies)(Holliger P. et al.,1993)、ナノボディ(nanobodies)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体)、及び上記いずれのエピトープ結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
幾つかの実施形態では、抗原結合断片は本発明のヒト抗原結合抗体断片であり、例としては、Fab、Fab’及びF(ab’)
2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(dsFv)、並びにVL又はVH領域のいずれかを含む断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗原結合抗体断片、例えば単鎖抗体は、可変領域のみを含んでもよく、又はヒンジ領域、CL、CH1、CH2、及びCH3領域の全て若しくは一部を組み合せて含んでいてもよい。また、可変領域とヒンジ領域、CL、CH1、CH2、及びCH3領域とのいずれの組み合わせを含む抗原結合断片も本発明に含まれる。
【0029】
本発明に使用可能な抗体は、例えば、鳥類及び哺乳類を含むいずれの動物由来でありうる。好ましくは、抗体は、ヒト、齧歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、若しくはウサギ)、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウシ、ウマ、ロバ、ネコ、又はイヌ由来である。抗体はヒト又はネズミ由来であるのが特に好ましい。本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」はヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体又は1つ以上のヒト免疫グロブリンが遺伝子導入され、内在性の免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。それらは、例えば、Kucherlapati及びJakobovitsによる米国特許第5,939,598号に記載される。
【0030】
「抗体様タンパク質」という用語は、(例えばループ構造を突然変異生成により)改変されて標的分子に特異的に結合するタンパク質を指す。典型的には、そのような抗体様タンパク質は、両端でタンパク質スキャホールドに結合した少なくとも1つの可変ペプチドループを含む。この二重の構造的制約は、抗体様タンパク質の結合親和性を抗体の結合親和性に匹敵するレベルまで大幅に増加させる。典型的には、可変ペプチドループ長さは10〜20個のアミノ酸からなる。スキャホールドタンパク質は、良好な溶解特性を有するいずれのタンパク質でありうる。好ましくは、スキャホールドタンパク質は小さな球形タンパク質である。抗体様タンパク質としては、限定することなく、アフィボディ(affibodies)、アンチカリン、及び人工(designed)アンキリン反復タンパク質が挙げられる(総説については、Binz et al. 2005を参照)。抗体様タンパク質は、突然変異体の大規模ライブラリー由来であることができ、例えば大規模ファージディスプレイライブラリーから選択(panned)でき、通常の抗体と同様に単離できる。また、抗体様結合タンパク質は、球形タンパク質の表面露出残基のコンビナトリアル突然変異生成によって得ることができる。
【0031】
「核酸アプタマー」という用語は、インビトロ選択又はSELEX(試験管内進化法)を繰り返すことによって改変して標的分子に結合する核酸分子を指す(総説については、Brody and Gold, 2000を参照)。核酸アプタマーはDNA又はRNA分子でありうる。アプタマーは修飾形態、例えば、2’−フッ素置換ピリミジン等の修飾ヌクレオチドを含みうる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アプタマー複合体」は、標的結合部分が上記代替物(iii)の核酸アプタマーである標的結合部分毒素複合体を指す。
【0033】
本発明の文脈では、「リンカー」は、それぞれがリンカーの一端に結合した2つの構成要素、例えば、本発明の場合では標的結合部分とアマトキシンとの間等を接続する分子を指し、2つの構成要素の間の距離を増加させ、それらの構成要素間の立体障害を軽減する。リンカーがない場合、アマトキシンと標的結合部分との直接結合は、アマトキシンのRNAポリメラーゼIIと相互作用する能力を減らしうる。特定の実施形態では、リンカーはその主鎖に、1〜30個の原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の原子)の連続鎖を有し、すなわち、リンカーの長さは、アマトキシン部分と標的結合部分との間の原子又は結合の数によって測定される最短の結合として定義され、リンカー主鎖の一方はアマトキシンと反応し、もう一方は標的結合部分と反応する。本発明の文脈において、リンカーは、好ましくは、随意に置換された、C
1−
20−アルキレン、C
1−
20−ヘテロアルキレン、C
2−
20−アルケニレン、C
2−
20−ヘテロアルケニレン、C
2−
20−アルキニレン、C
2−
20−ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、又はヘテロアラルキレン基である。リンカーは、カルボキサミド、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、炭化水素構成部分等の1つ以上の構造要素を含みうる。リンカーはまた、2つ以上のこれら構造要素の組み合わせを含んでもよい。これら構造要素の各々は、2箇所以上、例えば、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所、又は6箇所存在してよい。幾つかの実施形態では、リンカーはジスルフィド結合を含んでいてもよい。単工程又は2つ以上の後続の工程で、リンカーをアマトキシン及び標的結合部分に結合させる必要があることが理解される。そのためには、リンカーとなるべきものは、好ましくは近位及び遠位の端に2つの基をもつことになり、(i)連結される構成要素の1つに存在する基、好ましくはアマトキシン若しくは標的結合ペプチド上の活性化された基と共有結合を形成することができ、又は(ii)アマトキシン上の基と共有結合を形成するのに活性化される若しくは活性化できる。したがって、化学基がリンカーの遠位端及び近位端に存在し、それが、カップリング反応、例えばエステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ペプチド結合等の結果であることが好ましい。
【0034】
本発明の文脈では、「アマトキシン」という用語は、テングタケ(Amanita)属から単離され、Wieland T.及びFaulstich H.(Wieland T, Faulstich H., CRC Crit Rev Biochem. 1978 Dec; 5(3):185-260))に記載されるような8個のアミノ酸からなる環状ペプチドの全てを含み、さらにその全ての化学誘導体、さらにその全ての半合成類縁体、さらに天然化合物の主要構造(環状、8個のアミノ酸)に従って基本構成要素から構築されるその全ての合成類縁体、さらにヒドロキシル化アミノ酸の代わりに非ヒドロキシル化アミノ酸を含有する全ての合成又は半合成類縁体、さらにスルフィド、スルホンによって、又は硫黄以外の原子、例えばアマニチンのカルバ類縁体中の炭素原子によってチオエーテルスルホキシド部分が置換された全ての合成又は半合成類縁体を含み、いずれの場合にもいずれのそのような誘導体又は類縁体は、哺乳類のRNAポリメラーゼIIを阻害することによって機能的に活性である。
【0035】
本明細書で使用される場合、化合物の「化学誘導体」(又は略して「誘導体」)は、その化合物と同様の化学構造を有するが、その化合物中には存在しない少なくとも1つの化学基を含有し、及び/又はその化合物中に存在する少なくとも1つの化学基を欠く化学種を指す。誘導体が比較される化合物は、「親」化合物として知られる。典型的には、「誘導体」は1つ以上の化学反応工程で親化合物から作られうる。
【0036】
本明細書で使用される場合、化合物の「類縁体」は、その化合物と構造的に関連するが同一ではなく、その化合物の少なくとも1つの活性を示す。類縁体が比較される化合物は、「親」化合物として知られる。上記で言及した活性としては、限定することなく、別の化合物との結合活性;阻害活性、例えば酵素阻害活性;毒性作用;活性化活性、例えば酵素活性化活性が挙げられる。類縁体はそのような活性を親化合物と同程度まで示す必要はない。本願の文脈内では、化合物が親化合物の活性の少なくとも1%(より好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%)の程度まで関連する活性を示す場合、その化合物は類縁体とみなされる。よって、本明細書で使用される場合、「アマトキシンの類縁体」とは、
図1に示すようなα−アマニチン、β−アマニチン、γ−アマニチン、ε−アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン、及びアマヌリン酸(amanullinic acid)のいずれか1つと構造的に関連し、α−アマニチン、β−アマニチン、γ−アマニチン、ε−アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン及びアマヌリン酸の少なくとも1つと比較して哺乳類のRNAポリメラーゼIIに対して少なくとも1%(より好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%)の阻害活性を示す化合物を意味する。本発明での使用に適した「アマトキシン類縁体」はさらに、哺乳類のRNAポリメラーゼIIに対してα−アマニチン、β−アマニチン、γ−アマニチン、ε−アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン、又はアマヌリン酸のいずれか1つより大きな阻害活性を示してもよい。阻害活性は、50%の阻害が生じる濃度(IC
50値)を決定することによって測定されうる。哺乳類のRNAポリメラーゼIIに対する阻害活性は、細胞増殖への阻害活性を測定することによって間接的に決定できる。細胞増殖の阻害を測定するのに好適なアッセイは実施例に記載されている。
【0037】
「半合成類縁体」は、出発材料として天然のソース(例えば、植物材料、細菌培養物、真菌培養物、又は細胞培養物)由来の化合物を用いる化学合成によって得られる類縁体を指す。典型的には、本発明の「半合成類縁体」は、テングタケ(Amanitaceae)科のキノコから単離された化合物から出発して合成される。対照的に、「合成類縁体」は、小さな(典型的には石油化学的な)基本構成要素からのいわゆる全合成によって合成される類縁体を指す。通常この全合成は、生物学的なプロセスを用いることなく行なわれる。
【0038】
機能的には、アマトキシンは哺乳類のRNAポリメラーゼIIを阻害するペプチド又はデプシペプチドとして定義される。好ましいアマトキシンは、上記で定義されるリンカー分子又は標的結合構成部分と反応できる官能基(例えば、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール又はチオール捕捉基(thiol-capturing group))をもつものである。本発明の複合体に特に適したアマトキシンは、
図1に示されるようなα−アマニチン、β−アマニチン、γ−アマニチン、ε−アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン、及びアマヌリン酸、ならびにその塩、化学誘導体、半合成類縁体、及び合成類縁体である。本発明での使用に特に好ましいアマトキシンは、α−アマニチン、β−アマニチン、及びアマニンアミドである。
【0039】
本発明の特定の実施形態では、(iii)のアマトキシン、(iii)のアマトキシンのYの官能基はアミノ基である。特定のそのような実施形態では、X
*は尿素部分である。
【0040】
本発明の特定の実施形態では、−L
n−X
*−Yである前記残基R
5は、
(i)R
1に存在するか;
(ii)R
3に存在するか;
(iii)R
4に存在するか;或いは
(iv)R
5に存在する。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、前記アマトキシンは、α−アマニチン、β−アマニチン、アマニン、アマニンアミド、又はこれらの塩若しくは類縁体から選択される。
【0042】
特定の実施形態では、(ii)又は(iii)のリンカーLは、それぞれ独立に、C、O、N、及びSから選択される1〜20個の原子、特に2〜16個の原子、より具体的には5〜14個の原子、さらにより具体的には6〜12個の原子の直鎖である。特定の実施形態では、直鎖中の少なくとも60%の原子はC原子である。特定の実施形態では、直鎖中の原子は単結合によって連結される。
【0043】
特定の実施形態では、(ii)又は(iii)のリンカーの長さが最大12原子長、特に2〜10原子長、より具体的には4〜9原子長、最も具体的には6〜8原子長である。
【0044】
特定の実施形態では、リンカーLは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アルケニレン、ヘテロアルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、又はヘテロアラルキレン基であり、ヘテロ原子はN、O、及びSから選択される1〜4のヘテロ原子であり、前記リンカーは任意により置換される。
【0045】
「アルキレン」という用語は、1〜20個の炭素原子を有する二価の直鎖飽和炭化水素基、例えば、1〜10個の炭素原子を有する基を指す。ある実施形態では、アルキレン基は低級アルキレン基でありうる。「低級アルキレン」という用語は、1〜6個の炭素原子、ある実施形態では、1〜5個又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を指す。アルキレン基としては、例えば、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2−CH
2−)、n−プロピレン、n−ブチルエン、n−ペンチルエン、及びn−ヘキシルエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
「アルケニレン」という用語は、2〜20個の炭素原子を有する二価の直鎖基を指し、少なくとも1つの炭素−炭素結合は二重結合であり、一方で他の結合は単結合であってもよく、さらに二重結合であってもよい。本明細書で使用される場合、「アルキニレン」という用語は、2〜20個の炭素原子を有する基を指し、少なくとも1つの炭素−炭素結合は三重結合であり、一方で他の結合は単結合、二重結合、さらに三重結合であってもよい。アルケニレン基としては、例えば、エテニレン(−CH=CH−)、1−プロペニレン、2−プロペニレン、1−ブテニルエン、2−ブテニルエン、3−ブテニルエン等が挙げられる。アルキニレン基としては、例えば、エチニレン、1−プロピニレン、2−プロピニレン等が挙げられる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキレン」は、いずれの安定な単環又は多環系の一部である二価の環を指すことを意図し、そのような環は3〜12個の炭素原子を有するが、ヘテロ原子を有さず、そのような環は完全飽和である。「シクロアルケニルエン」という用語は、いずれの安定な単環又は多環系の一部である二価の環を指すことを意図し、そのような環は3〜12個の炭素原子を有するが、ヘテロ原子を有さず、そのような環は少なくとも部分的に不飽和である(しかし、いずれのアリーレン環も除く)。シクロアルキレンとしては、例えば、シクロプロピルエン、シクロブチルエン、シクロペンチルエン、シクロヘキシルエン、及びシクロヘプチルエンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルケニルエンとしては、例えば、シクロペンテニルエン、及びシクロヘキセニルエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキレン」及び「ヘテロシクロアルケニレン」という用語は、いずれの安定な単環又は多環系の一部である二価の環を指すことを意図し、そのような環は3〜約12個の原子を有し、そのような環は炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子からなり、特に、少なくとも1つのヘテロ原子は独立してN、O、及びSからなる群から選択され、ヘテロシクロアルキレンは、完全に飽和であるそのような環を指し、ヘテロシクロアルケニレンは、少なくとも部分的に一部非飽和である環を指す(いずれのアリーレン又はヘテロアリーレン環を除く)。
【0049】
「アリーレン」という用語は、いずれの安定な単環又は多環系の一部である二価の環又は環系を意味することを意図し、そのような環又は環系は3〜20個の炭素原子を有するが、ヘテロ原子を有さず、その環又は環系は、「4n+2」π電子則によって定義される芳香族部分、例えばフェニルエンである。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリーレン」という用語は、いずれの安定な単環又は多環系の一部である二価の環又は環系を指し、そのような環又は環系は3〜20個の炭素原子を有し、その環又は環系は、「4n+2」π電子則によって定義される芳香族部分からなり、炭素原子並びに1つ以上の窒素、硫黄、及び/又は酸素ヘテロ原子を含有する。
【0051】
本発明の文脈において、「置換された」という用語は、示される原子の通常の原子価、又は置換される基の適切な原子の原子価が超過されることなく、かつ置換が安定的な化合物をもたらすことを条件として、リンカーの骨格に存在する1つ以上の水素が、示される基から選択して置き換えられることを示すことを意図する。「随意に置換された」という用語は、本明細書で定義される1つ以上の置換基で、本明細書に定義されるようにリンカーが置換されない又は置換されることを意味することを意図する。置換基が、ケト(又はオキソ、すなわち=O)基、チオ又はイミノ基等の場合、リンカー骨格原子上の2つの水素が置き換えられる。例示的な置換基としては、例えば、以下が挙げられる:アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アロイル、ヘテロアロイル、カルボキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アロイルオキシ、ヘテロアロイルオキシ、アルコキシカルボニル、ハロゲン、(チオ)エステル、シアノ、ホスホリル、アミノ、イミノ、(チオ)アミド、スルフィドリル、アルキルチオ、アシルチオ、スルホニル、サルフェート、スルフォネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、アジド、パラフルオロアルキル(トリフルオロメチル等)を含むハロアルキル、ハロアルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホノアミノ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アルキルカルボキシ、アルキルカルボキシアミド、オキソ、ヒドロキシ、メルカプト、(随意に、例えばアルキル、アリール、若しくはヘテロアリールによって一置換若しくは二置換された)アミノ、イミノ、カルボキサミド、(随意に、例えばアルキル、アリール、若しくはヘテロアリールによって一置換若しくは二置換された)カルバモイル、アミジノ、アミノスルホニル、アシルアミノ、アロイルアミノ、(チオ)ウレイド、アリールチオ)ウレイド、アルキル(チオ)ウレイド、シクロアルキル(チオ)ウレイド、アリールオキシ、アルアルコキシ、又は−O(CH
2)
n−OH、−O(CH
2)
n−NH
2、−O(CH
2)
nCOOH、−(CH
2)
nCOOH、−C(O)O(CH
2)
nR、−(CH
2)
nN(H)C(O)OR、若しくは−N(R)S(O)
2R、nは1〜4であり、Rは、独立して、水素、−アルキル、−アルケニル、−アルキニル、−シクロアルキル、−シクロアルケニル、−(C−連結−ヘテロシクロアルキル)、−(C−連結−ヘテロシクロアルケニル)、−アリール、及び−ヘテロアリールから選択され、複数の置換が許容される。ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキル等の置換基又は−OH、−NHR等の官能基は、適切な場合にはそれ自体が置換を受けることができることを当業者なら理解するであろう。置換される構成部分自体も適切な場合には置換されることができることを当業者なら理解するであろう。
【0052】
特定の実施形態では、リンカーLは、次の構成部分:ジスルフィド(−S−S−)、エーテル(−O−)、チオエーテル(−S−)、アミン(−NH−)、エステル(−O−C(=O)−又は−C(=O)−O−)、カルボキサミド(−NH−C(=O)−又は−C(=O)−NH−)、ウレタン(−NH−C(=O)−O−又は−O−C(=O)−NH−)、及び尿素部分(−NH−C(=O)−NH−)の1つから選択される部分を含む。
【0053】
本発明の特定の実施形態では、(ii)又は(iii)のリンカーLは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、及びヘテロアラルキレン基のリストから選択されるm基を含み、各基は随意に独立して置換されてもよく、そのリンカーは、以下の構成部分:ジスルフィド(−S−S−)、エーテル(−O−)、チオエーテル(−S−)、アミン(−NH−)、エステル(−O−C(=O)−又は−C(=O)−O−)、カルボキサミド(−NH−C(=O)−又は−C(=O)−NH−)、ウレタン(−NH−C(=O)−O−又は−O−C(=O)−NH−)、及び尿素部分(−NH−C(=O)−NH−)の1つから独立して選択さるn部分さらに含み、m=n+1である。特定の実施形態では、mが2でありnが1であるか、mが3でありnが2である。特定の実施形態では、リンカーは、2又は3つの非置換アルキレン基、及び非置換アルキレン基に連結する、それぞれ1又は2つのジスルフィド、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、カルボキサミド、ウレタン、又は尿素構成部分を含む。
【0054】
特定の実施形態では、直鎖中のC原子は独立して随意に置換されたメチレン基(−CH
2−)の一部である。特定のそのような実施形態では、随意の置換基は、ハロゲン及びC
1−
6−アルキル、特にメチルから独立して選択される。
【0055】
特定の実施形態では、リンカーL、特に段落[0043]に示されるリンカーLは、次のリンカーの群から選択される:
アマトキシン側: −(CH
2)
2− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
3− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
4− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
5− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
6− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
7− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
8− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
9− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
10− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
11− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
12− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
16− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
2−S−S−(CH
2)
2− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
3−S−S−(CH
2)
2− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
2−S−S−(CH
2)
3− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
3−S−S−(CH
2)
3− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
4−S−S−(CH
2)
4− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
2−CMe
2−S−S−(CH
2)
2− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
2−S−S−CMe
2−(CH
2)
2− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
2−O−(CH
2)
2− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−標的結合部分側;
アマトキシン側: −CH
2−C
6H
4−NH−Cit−Val−(CH
2)
6− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −CH
2−C
6H
4−NH−Lys−Phe−(CH
2)
6− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −CH
2−C
6H
4−NH−Val−Val−(CH
2)
6− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −CH
2−C
6H
4−NH−Ile−Val−(CH
2)
6− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −CH
2−C
6H
4−NH−His−Val−(CH
2)
6− 標的結合部分側;
アマトキシン側: −CH
2−C
6H
4−NH−Met−Val−(CH
2)
6− 標的結合部分側;及び
アマトキシン側: −CH
2−C
6H
4−NH−Asn−Lys−(CH
2)
6− 標的結合部分側
【0056】
特定の実施形態では、標的結合部分は腫瘍細胞上に存在するエピトープに特異的に結合し、特に、その標的結合部分はヒト上皮成長因子受容体2(HER2)のエピトープに特異的に結合する。
【0057】
特定の実施形態では、抗体はトラスツズマブ若しくはHEA125であるか、又はトラスツズマブ若しくはHEA125の抗原結合断片を含む抗体断片である。
【0058】
特定の実施形態では、1つより多いアマトキシン分子が1つの標的結合部分に連結する。複合体当たりのアマトキシンの数の増加は、毒性も増加させることになる。したがって、特定の実施形態では、標的結合部分のアマトキシンに対する割合は、1〜15個のアマトキシン分子、具体的に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個に対して1つの標的結合部分である。IgG等の抗体二量体の場合、割合を計算するために二量体は1つ標的結合部分とみなされる。
【0059】
特定の実施形態では、標的結合部分は:
(i)抗体又はその抗原結合断片;
(ii)抗体様タンパク質;及び
(iii)核酸アプタマー
からなる群より選択される。
【0060】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、二特異性抗体、四特異性抗体、ナノボディ、キメラ抗体、脱免疫化抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体から選択される。
【0061】
特定の実施形態では、抗原結合断片は、Fab、F(ab’)
2、Fd、Fv、単鎖Fv、及びジスルフィド連結Fvs(dsFv)からなる群から選択される。
【0062】
別の態様では、本発明は薬剤として使用される本発明のアマトキシンに関する。
【0063】
別の態様では、本発明は、患者の癌の処置に使用され、特にその癌が、乳癌、膵癌、胆管癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、腎臓癌、悪性メラノーマ、白血病、及び悪性リンパ腫からなる群より選択される本発明のアマトキシンに関する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「患者」とは、本明細書に記載される標的結合部分毒素複合体を用いる処置から恩恵を受けうるいずれの哺乳類又は鳥類を意味する。好ましくは、「患者」は、実験動物(例えば、マウス若しくはラット)、野性ではない動物(例えば、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウシ、ウマ、ロバ、ネコ、若しくはイヌを含む)、又はヒトを含む霊長類からなる群から選択される。「患者」はヒトであることが特に好ましい。
【0065】
本明細書で使用される場合、疾患又は障害を「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」又は「処置(treatment)」とは、(a)障害の重症度を低減すること;(b)処置される障害に特徴的な症状の発症を制限又は予防すること;(c)処置される障害に特徴的な症状の悪化を阻止すること;(d)障害を以前に有したことがある患者での障害の再発を制限又は予防すること;及び(e)過去に障害の症状を呈した患者での症状の再発を制限又は予防することのうち1つ以上を達成することを意味する。
【0066】
本明細書で使用される場合、処置は、本発明にかかる複合体又は医薬組成物を患者に投与すること含んでいてもよく、「投与すること」は、生体内投与、及び静脈移植等の生体外組織への直接投与を含む。
【0067】
特定の実施形態では、本発明の複合体の治療上有効な量が使用される。
【0068】
「治療上有効な量」は、意図した目的を達成するのに十分な治療薬の量である。所定の治療薬の有効量は、薬剤の性質、投与の経路、治療薬を受ける動物の大きさ及び種、並びに投与の目的等の要因によって異なることになる。各々の個別の場合における有効量は、当該技術分野で確立された方法に従って当業者によって経験的に決定されうる。
【0069】
別の態様では、本発明は、本発明によるアマトキシンを含むと共に、更に1つ以上の医薬的に許容可能な希釈剤、担体、賦形剤、充填材、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、吸着剤;及び/又は保存剤を含む医薬組成物に関する。
【0070】
「医薬的に許容可能な」とは、連邦若しくは州政府の規制当局に認可されているか、又は米国薬局方、若しくは動物、より具体的にヒトでの使用に一般に認められている他の薬局方で収載されていること意味する。
【0071】
特定の実施形態では、医薬組成物は全身的に投与される薬剤の形態で使用される。これは非経口剤を含み、とりわけ注射剤及び注入剤を含む。注射剤は、アンプルの形態又はいわゆるすぐに使える(ready-to-use)注射剤、例えばすぐに使える注射器若しくは使い捨ての注射器の形態のいずれか、及びそれに加えて数回の抜取りを行うための穿刺可能なフラスコ中に製剤化される。注射剤の投与は、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、又は皮内(i.c.)適用の形態であることができる。特に、結晶の懸濁液、溶液、例えばヒドロゾルのようなナノ粒子若しくはコロイド分散系としてそれぞれ好適な注射製剤を作ることが可能である。
【0072】
さらに、注射用製剤は濃縮物として作ることができ、その濃縮物は水性等張希釈剤を用いて溶解又は分散できる。また、注入剤は等張溶液、脂肪乳剤、リポソーム製剤、及びマイクロエマルションの形態で調製できる。注射剤と同様に、注入製剤もまた、希釈用濃縮物の形態で調製できる。また、注射用製剤は、例えばミニポンプにより、入院療法及び外来療法双方における、持続的な(permanent)注入剤の形態で適用することもできる。
【0073】
例えば、アルブミン、血漿、増量剤、表面活性物質、有機希釈剤、pH調整物質(pH-influencing substances)、錯化物質、又は高分子物質を、特に本発明の標的結合部分毒素複合体のタンパク質又は高分子への吸着に影響を与える物質として非経口製剤に加えることができ、又は本発明の標的結合部分毒素複合体の注射器にような材料又は包装材料、例えばプラスチック若しくはガラスへの吸着を減らす目的でこれらを加えることができる。
【0074】
標的結合部分を含む本発明のアマトキシンは、非経口剤中のマイクロ担体又はナノ粒子、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ乳酸塩、ポリグリコール酸塩、ポリアミノ酸、又はポリエーテルウレタンをベースとする微分散粒子に結合できる。また、例えば、本発明の標的結合部分毒素複合体をそれぞれ微分散形態、分散形態、及び懸濁形態で導入する場合、例えば「複数単位原理(multiple unit principle)」に基づき、又は本発明の標的結合部分毒素複合体を製剤中に、例えば、後に埋め込まれる錠剤若しくは棒剤(rod)中に封入する場合、薬剤中の結晶の懸濁液として若しくは「単一単位原理(single unit principle)」に基づき、非経口製剤をデポー製剤として変更することもできる。単一単位製剤及び複数単位製剤でこれらの埋め込み剤又はデポー製剤は多くの場合、いわゆる生分解性高分子、例えば乳酸及びグリコール酸のポリエステル、ポリエーテルウレタン、ポリアミノ酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、又は多糖類等からなる。
【0075】
非経口剤として製剤化される本発明の医薬組成物の製造時に加えられる補助剤及び担体は、好ましくは滅菌水(aqua sterilisata(sterilized water))、pH値調整物質、例えば有機酸若しくは無機酸若しくは有機塩基若しくは無機塩基及びその塩等、pH値調整用の緩衝物質、等張化用の物質、例えば塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、グルコース及びフルクトース等、それぞれ界面活性剤(tensides)及び界面活性剤(surfactants)、並びに乳化剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸の部分エステル(例えばTween(登録商標))、若しくは例えばポリオキシエチレンの脂肪酸エステル(例えばCremophor(登録商標))等、脂肪油、例えば落花生油、大豆油若しくはヒマシ油等、脂肪酸の合成エステル、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び中性油(例えばMiglyol(登録商標))等、並びに高分子補助剤、例えばゼラチン、デキストラン、ポリビニルピロリドン等、有機溶媒の溶解度を増加させる添加剤、例えばプロピレングリコール、エタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコール等、又は錯体形成物質、例えばクエン酸塩及び尿素等、保存料、例えば安息香酸ヒドロキシプロピルエステル及びメチルエステル、ベンジルアルコール等、酸化防止剤、例えば亜硫酸ナトリウム等、並びに安定化剤、例えばEDTA等である。
【0076】
好ましい実施形態において懸濁剤として本発明の医薬組成物を製剤する場合、本発明の標的結合部分毒素複合体の硬化を防止する増粘剤、又は沈殿物の再懸濁を確実にする界面活性剤及び多価電解質、並びに/又は例えばEDTAといった錯体形成剤がを加えられる。また、活性成分のさまざまな高分子との錯体を得ることが可能である。そのようなポリマーの例は、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、カルボキシメチルセルロース、例としては、ポリエチレングリコール、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、Pluronics(登録商標)、又はポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(polyethylene glycol sorbit fatty acid ester)である。また、本発明の標的結合部分毒素複合体は、例えばサイクロデキストリンを用いた封入化合物の形で液体製剤に取り込まれることができる。特定の実施形態では、分散剤はさらなる補助剤として加えられることができる。凍結乾燥物の製造のために、スキャホールド剤(scaffolding agents)、例えばマンニット、デキストラン、サッカロース、ヒトアルブミン、ラクトース、PVP、又はさまざまなゼラチンを使用できる。
【0077】
本発明の特定の実施形態では、Xはカルバミン酸誘導体−NH−C(O)−Zであり、Zは標的結合部分の求核基、特に標的結合部分の一級アミンにより、置換されてもよい脱離基である。
【0078】
特定の実施形態では、Zは、−
tブチルオキシ、−スクシニミジルオキシ、−1−O−スクシニミジルオキシ−3−スルフォネート(−スルフォ−NHS)、−O−(4−ニトロフェニルオキシ)、−O−(3−ニトロフェニルオキシ)、−O−(2,4−ジニトロフェニルオキシ)、−O−(2,4−ジクロロ−6−ニトロフェニルオキシ)、−ペンタフルオロフェニルオキシ、−ペンタクロロフェニルオキシ、−O−(2,4,5−トリクロロフェニルオキシ)、−O−(3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル)、−O−(エンド−1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド−1−イル)、−1−フタルイミドイルオキシ、−1−ベンゾトリアゾリルオキシ、−1−(7−アザ−ベンゾトリアゾリル)オキシ)、及び−N−イミダゾリルから選択される。
【0079】
別の態様では、本発明は、本発明のアマトキシンを合成するための方法に関し、その方法は式IIのアマトキシン
【化4】
(式中
R
2は、S=O、SO
2、及びSから選択され;
R
3は、NHR
5及びOR
5から選択され;
R
4は、H、OR
5、及びOC
1-6−アルキルから選択され;
R
6は、C
1-6−アルキレン−R
5、シクロアルキレン−R
5、ヘテロシクロアルキレン−R
5、アリーレン−R
5、及びヘテロアリーレン−R
5から選択され;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、H、C
1-6−アルキレン−R
5、シクロアルキレン−R
5、ヘテロシクロアルキレン−R
5、アリーレン−R
5、及びヘテロアリーレン−R
5から選択され;
そこにおいて、R
5の1つは−L
n−Xであり、ここでLはリンカーであり、nは0及び1から選択され、Xは標的化部分と連結されてもよい化学部分であり、残りのR
5はHである)
を、(i)N,N’−ジスクシニミジルカーボネート(DSC)、(ii)チオカルボキシル化試薬、特にチオホスゲン、1,1’−チオカルボキシルジイミダゾール又は1,1′−チオカルボニルジ−2(1H)−ピリドン;(iii)イミノカルボキシル化試薬、特にイソシアニド二塩化物又はフェニルイソチオシアネート;或いは(iv)アルデヒド、ケトン又は非環式アセタールと反応させることを含む。
【実施例】
【0080】
実施例1 アマトキシン複合分子の合成
1.1 6´−N−Boc−(6−アミノヘキシル)−α−アマニチン HDP30.0132の合成
【化5】
アルゴン下室温にて、180mg(196μmol)の真空乾燥したα−アマニチンを5000μlの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かした。N−Boc−アミノヘキシルブロミド(439mg、8当量)及び1M水酸化ナトリウム(215.5μl、1.1当量)を加えた。2時間後、100μlのDMSO中の1M酢酸溶液を用いて反応、室温で混合物を酸性化してpH=5にした。揮発性物質を真空で蒸発させ、残留物を500μlのメタノールに溶かし、40mlの氷冷メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)に加えた。沈殿物を遠心分離し、40mlのMTBEに再懸濁することで洗浄した。沈殿物を4000μlのメタノールに溶かし、濾過し、500μlに小分けしてC18カラムでの分取クロマトグラフィー(250×21.2mm、Luna RP−18、10μm、100オングストローム)で精製した。溶媒A:水、溶媒B:メタノール;勾配:0分 5%B;5分 5%B;20分 100%B;25分 100%B;27分 5%B;35分 5%B;流速30ml/分。保持時間が18.4〜19.1分の画分を集め、溶媒を蒸発させて無色の固体として126mg(57%)のHDP30.0132を得た。
【0081】
MS(ESI+)1118.5[M+H]
+,1140.5[M+Na]
+
【0082】
保持時間が12.8〜13.4分の画分を蒸発させることによって、35mg(19%)のα−アマニチンを回収できた。
【0083】
1.2 6´−(6−アミノヘキシル)−α−アマニチン HDP30.0134の合成
【化6】
6´−NH−boc−6−アミノヘキシル−α−アマニチン(HDP30.0132、81.82mg、73.17μmol)を300μlのトリフルオロ酢酸(TFA)に溶かした。反応混合物をアルゴン下で周囲温度にて撹拌した。2分後、酸を真空下で20℃にて除去し、2回の3mlの乾燥トルエンとの共蒸発によって微量のTFAを除去した。残留物を3000μlの0.05%TFAを含む95:5の水/メタノールに溶かし、500μlに小分けしてC18カラムでの分取クロマトグラフィー(250×21.2mm、Luna RP−18、10μm、100オングストローム)で精製した。溶媒A:水(0.05%TFA含有)、溶媒B:メタノール(0.05%TFA含有);勾配:0分 5%B;5分 5%B;20分 100%B;25分 100%B;27分 5%B;35分 5%B;流速30ml/分。保持時間が13.4〜13.9分の画分を集め、溶媒を蒸発させて無色の固体として75.52mg(89%)HDP30.0134を得た。
【0084】
HR−MS(ESI+)計算値1018.46749 C
45H
68N
11O
14Sについて1018.46679[M+H]
+
【0085】
1.3 6´−(6−(スクシンイミジルオキシ−カルボニル)−アミノヘキシル−α−アマニチン HDP30.0643の合成
【化7】
HDP30.0134(160.52mg、141.78μmol)を1000μlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、4000μlの乾燥DMF中の363.19mg(10当量)のN,N’−ジスクシニミジルカーボネート(DSC)を一度に加えた後、39.3μl(2当量)トリエチルアミンを加え、混合物を室温で撹拌した。30分後、反応混合物を等量ずつ40mlの氷冷MTBEが入った2つの遠心分離チューブに滴下して加えた。各々、結果として生じた沈殿物を遠心分離し、40mlのMTBEに再懸濁することで洗浄した。沈殿物を真空下で乾燥し、2400μlの0.05%TFA含有95%メタノールに溶かして合わせた。400μlに小分けしてC18カラムでの分取クロマトグラフィー(250×21.2mm、Luna RP−18、10μm、100オングストローム)で精製した。溶媒A:水(0.05%TFA含有)、溶媒B:メタノール(0.05%TFA含有);勾配:0分 5%B;5分 5%B;20分 100%B;25分 100%B;27分 5%B;35分 5%B;流速30ml/分。保持時間が15.4〜16.5分の画分を集め、溶媒を蒸発させ、残留物を8mlのtert‐ブタノールから凍結乾燥して、白色の粉末として151.46mg(92%)HDP30.0643を得た。
【0086】
MS(ESI+)1159.1[M+H]
+,1181.0[M+Na]
+
【0087】
1.4 環状カルボネート誘導体 HDP30.1165の合成
【化8】
10.23mg(9.04μmol)のHDP30.0134を500μlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、乾燥DMF中の452μl(10当量)のN,N’−ジスクシニミジルカーボネート(DSC)の0.2M溶液を一度に加えた。トリエチルアミン(2.51μl、2当量)を加え、混合物を室温で90分間撹拌した。その後続いて、揮発性物質を浴温40℃にて真空下で除去した。残留物を500μlの0.05%TFA含有95%メタノールに溶かし、C18カラムでの分取クロマトグラフィー(250×21.2mm、Luna RP−18、10μm、100オングストローム)で精製した。溶媒A:水(0.05%TFA)、溶媒B:メタノール(0.05%TFA);勾配:0分 5%B;5分 5%B;20分 100%B;25分 100%B;27分 5%B;35分 5%B;流速30ml/分。保持時間が15.4〜16.5分の画分を集め、溶媒を蒸発させ、残留物を2mlのtert‐ブタノールから凍結乾燥して、白色の粉末として9.06mg(85%)HDP30.1065を得た。
【0088】
MS(ESI+)1185.10[M+H]
+,1207.07[M+Na]
+
【0089】
1.5 6´−N−Boc−(6−アミノヘキシル)−S−デオキシ−α−アマニチン HDP30.0741の合成
【化9】
2mlのエタノール中のHDP30.0132(18.64mg、16.67μmol)の溶液にモリブデンヘキサカルボニル(51mg、11.6当量)を加え、混合物を密閉したチューブで75℃に25時間熱した。その後続いて、揮発性物質を真空下で除去し、残留物を2mlのメタノールに溶かした。不溶物質を遠心分離によって除去し、上澄みを500μlに濃縮し、C18カラムでの分取クロマトグラフィー(250×21.2mm、Luna RP−18、10μm、100オングストローム)で精製した。溶媒A:水、溶媒B:メタノール;勾配:0分 5%B;5分 5%B;20分 100%B;25分 100%B;27分 5%B;35分 5%B;流速30ml/分。保持時間が17.9〜18.6分の画分を集め、溶媒を蒸発させて、無色の固体として10.95mg(60%)のHDP30.0741を得た。
【0090】
MS(ESI+)1102.3[M+H]
+,1124.5[M+Na]
+
【0091】
1.6 6´−(6−アミノヘキシル)−S−デオキシ−α−アマニチン HDP30.0743の合成
【化10】
HDP30.0741(10.95mg、9.93μmol)を500μlのTFAに溶かし、室温で2分間インキュベーションした。次に、揮発性物質を真空下で蒸発させ、2回の1mlの乾燥トルエンとの共蒸発によって微量のTFAを除去した。12.38mgの粗生成物をさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0092】
MS(ESI+)1002.4[M+H]
+,1024.3[M+Na]
+
【0093】
1.7 6´−(6−(スクシンイミジルオキシ−カルボニル)−アミノヘキシル−S−デオキシ−α−アマニチン HDP30.1033の合成
【化11】
HDP30.0743(12.38mg、10.51μmol)を500μlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、乾燥DMF中の525(10当量)のN,N’−ジスクシニミジルカーボネート(DSC)の0.2N溶液を一度に加えた後、2.91μl(2当量)のトリエチルアミンを加え、混合物を室温で撹拌した。30分後、反応混合物を等量ずつ10mlの氷冷MTBEが入った遠心分離チューブに滴下して加えた。結果として生じた沈殿物を遠心分離し、10mlのMTBEに再懸濁することで洗浄した。沈殿物を真空下で乾燥し、500μlの0.05%TFA含有95%メタノールに溶かし、C18カラムでの分取クロマトグラフィー(250×21.2mm、Luna RP−18、10μm、100オングストローム)で精製した。溶媒A:水(0.05%TFA含有)、溶媒B:メタノール(0.05%TFA含有);勾配:0分 5%B;5分 5%B;20分 100%B;25分 100%B;27分 5%B;35分 5%B;流速30ml/分。保持時間が16.0〜17.2分の画分を集め、溶媒を蒸発させ、残留物を3mlのtert‐ブタノールから凍結乾燥して、白色の粉末として10.93mg(91%)のHDP30.1033を得た。
【0094】
MS(ESI+)1143.3[M+H]
+
【0095】
1.8 環状カルボネート誘導体 HDP30.1036の合成
【化12】
粗製HDP30.0743(12.38mg、9.93μmol)を500μlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、乾燥DMF中の497μl(10当量)のN,N’−ジスクシニミジルカーボネート(DSC)の0.2M溶液を一度に加えた。トリエチルアミン(2.75μl、2当量)を加え、混合物を室温で90分間撹拌した。その後続いて、揮発性物質を真空下浴温40℃で除去した。残留物を500μlの0.05%TFA含有95%メタノールに溶かし、C18カラムでの分取クロマトグラフィー(250×21.2mm、Luna RP−18、10μm、100オングストローム)で精製した。溶媒A:水(0.05%TFA)、溶媒B:メタノール(0.05%TFA);勾配:0分 5%B;5分 5%B;20分 100%B;25分 100%B;27分 5%B;35分 5%B;流速30ml/分。保持時間が15.9〜17.2分の画分を集め、溶媒を蒸発させ、残留物を3mlのtert‐ブタノールから凍結乾燥して、白色の粉末として10.06mg(87%)HDP30.1036を得た。
【0096】
MS(ESI+)1191.08[M+Na]
+
【0097】
実施例2 アマトキシン抗体複合体の合成−トラスツズマブと既活性化(pre-activated)アマトキシン−NHS−カルバミン酸塩との結合
1.1 トラスツズマブ−30.0643
1.15mg mgの既活性化アマトキシン−リンカー誘導体HDP30.0643を230μlの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かし、3.33mlのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH=7.4)中の6mg/ml抗体溶液に加えた。結果として得られた溶液を4℃で一晩振とうし、Sephadex G-25ゲル濾過(PD−10カラム;GEヘルスケア・ライフサイエンス)によって分けた。前もってPD−10カラムを5mlのPBS溶液、pH=7.4で6回洗浄した。複合体画分をブラッドフォード溶液によって検出し、合わせて1つの溶液にした。次に、その溶液を、Slide-A-Lyzerカセット(サーモサイエンティフィック;0.5〜3ml;20,000MWCO)で1LのPBS、pH7.4に対して4℃で一晩透析した。タンパク質濃度をRotiQuantアッセイ(Carl Roth社;ドイツ)によって求めた。Amicon Ultra Centrifugal Filters 50,000MWCO(ミリポア;4000rpmで遠心分離)でADC濃度を増加させ、最終的に3mg/mlに調整した。トラスツズマブのアマニチンペイロード(payload)は、A=280nm及びA=310nmでのUV吸収を決定することによって求めた。
【0098】
1.2 トラスツズマブ−30.1033
2.00mgの既活性化アマトキシン−リンカー誘導体HDP30.1033を400μlの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かし、2.62mlのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH=7.4)中の10mg/ml抗体溶液に加えた。結果として得られた溶液を4℃で一晩振とうし、Sephadex G-25ゲル濾過(PD−10カラム;GEヘルスケア・ライフサイエンス)によって分けた。前もってPD−10カラムを5mlのPBS溶液、pH=7.4で6回洗浄した。複合体画分をブラッドフォード溶液によって検出し、合わせて1つの溶液にした。次に、その溶液を、Slide-A-Lyzerカセット(サーモサイエンティフィック;0.5〜3ml;20,000MWCO)で1LのPBS、pH7.4に対して4℃で一晩透析した。タンパク質濃度をRotiQuantアッセイ(Carl Roth社;ドイツ)によって求めた。Amicon Ultra Centrifugal Filters 50,000MWCO(ミリポア;4000rpmで遠心分離)でADC濃度を増加させ、最終的に3mg/mlに調整した。トラスツズマブのアマニチンペイロードは、A=280nm及びA=310nmでのUV吸収を決定することによって求めた。
【0099】
1.3 トラスツズマブ−30.1036
2.00mgの既活性化アマトキシン−リンカー誘導体HDP30.1036を400μlの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かし、2.57mlのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH=7.4)中の10mg/ml抗体溶液に加えた。結果として得られた溶液を4℃で一晩振とうし、Sephadex G-25ゲル濾過(PD−10カラム;GEヘルスケア・ライフサイエンス)によって分けた。前もってPD−10カラムを5mlのPBS溶液、pH=7.4で6回洗浄した。複合体画分をブラッドフォード溶液によって検出し、合わせて1つの溶液にした。次に、その溶液を、Slide-A-Lyzerカセット(サーモサイエンティフィック;0.5〜3ml;20,000MWCO)で1LのPBS、pH7.4に対して4℃で一晩透析した。タンパク質濃度をRotiQuantアッセイ(Carl Roth社;ドイツ)によって求めた。Amicon Ultra Centrifugal Filters 50,000MWCO(ミリポア;4000rpmで遠心分離)でADC濃度を増加させ、最終的に3mg/mlに調整した。トラスツズマブのアマニチンペイロードは、A=280nm及びA=310nmでのUV吸収を決定することによって求めた。
【0100】
1.4 トラスツズマブ−30.1165
0.90mgの既活性化アマトキシン−リンカー誘導体HDP30.1165を180μlの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かし、2.00mlのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH=7.4)中の5mg/ml抗体溶液に加えた。結果として得られた溶液を4℃で一晩振とうし、Sephadex G-25ゲル濾過(PD−10カラム;GEヘルスケア・ライフサイエンス)によって分けた。前もってPD−10カラムを5mlのPBS溶液、pH=7.4で6回洗浄した。複合体画分をブラッドフォード溶液によって検出し、合わせて1つの溶液にした。次に、その溶液を、Slide-A-Lyzerカセット(サーモサイエンティフィック;0.5〜3ml;20,000MWCO)で1LのPBS、pH7.4に対して4℃で一晩透析した。タンパク質濃度をRotiQuantアッセイ(Carl Roth社;ドイツ)によって求めた。Amicon Ultra Centrifugal Filters 50,000MWCO(ミリポア;4000rpmで遠心分離)でADC濃度を増加させ、最終的に3mg/mlに調整した。トラスツズマブのアマニチンペイロードは、A=280nm及びA=310nmでのUV吸収を決定することによって求めた。
【表1】
【0101】
実施例3 インビトロでのHER2陽性腫瘍細胞株に対するHer−30.0643[4.4]、Her−30.1033[3.9]、Her−30.1036[4.0]、及びHer−30.1165[5.0]の細胞毒性
HER2陽性腫瘍細胞株SK−OV−3(卵巣がん)、SKBR−3(乳癌)、及びJIMT−1(乳癌)、並びに化学発光BrdU取り込みアッセイ(ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いて、トラスツズマブ−アマトキシン複合体の細胞毒性活性をインビトロで評価した。異なる濃度の複合体と37℃、5%CO
2で72時間インキュベーションした後、、固定して透過性にした細胞を抗−BrdU−HRP抗体を用いてBMG Labtech Optimaマイクロプレートリーダーで測定することによって細胞生存度を決定した。用量反応曲線のEC
50値を、グラフパッドプリズム4.0ソフトウェアで計算した。
【0102】
異なるHer2陽性細胞株におけるトラスツズマブ−アマトキシン複合体のEC
50値(
図2〜5も参照されたい):
【表2】
【0103】
実施例4 トラスツズマブ抵抗性JIMT−1異種移植片モデルにおけるHer−30.0643[4.4]及びHer−30.1036[4.0]の生体内有効性
6週齢の無傷(intact)の雌NMRI nu/nu胸腺欠損マウスを購入(Janvier社)し、無作為に各群8頭ずつ3群に分けた。5×10
6個のJIMT−1細胞を各マウスの側面に皮下注射した。腫瘍接種後14日目に、トラスツズマブ−アマトキシン複合体Her−30.0643[4.4]及びHer−30.1036[4.0]をアマニチンにして30μg/kg及び150μg/kgの投与量で1回静注した。一方、陰性対照には媒体(PBSバッファー)を注射した。腫瘍体積を記録した(
図6を参照)。両複合体はともに抗腫瘍活性を示し、30μg及び150μg/kgで完全な腫瘍の減少をもたらした。
【0104】
実施例5 マウスにおけるHer−30.0643[4.4]及びHer−30.1036[4.0]の忍容性
7週齢の無傷の雌NMRI nu/nu胸腺欠損マウスを購入(Janvier社)し、無作為に1群当たり3頭の3群に分けた。ハーセプチン−アマトキシン複合体Her−30.0643[4.4]及びHer−30.1036[4.0]を投与量300μg/kgで1回静注した。一方、陰性対照には媒体(PBSバッファー)を注射した。マウスの体重を記録した(
図7を参照)。Her−30.0643[4.4]で処置した動物は全て、適用後9日以内に死亡した。一方、Her−30.1036[4.0]で処置した動物は全て、14日後、陰性対照群と同等の体重を示した。