(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321690
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の新規な結晶及び製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/417 20060101AFI20180423BHJP
C07D 233/64 20060101ALI20180423BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20180423BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20180423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
A61K31/417
C07D233/64 105
A61P1/04
A61P25/04
A61P43/00 111
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-885(P2016-885)
(22)【出願日】2016年1月6日
(62)【分割の表示】特願2015-29289(P2015-29289)の分割
【原出願日】2008年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-128433(P2016-128433A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2016年1月6日
(31)【優先権主張番号】60/948,584
(32)【優先日】2007年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514017600
【氏名又は名称】フリエツクス・フアーマシユーテイカルズ・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイジ・アンザローン
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ジエイ・ビラニ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフアー・アラン・テレハ
(72)【発明者】
【氏名】ペニナ・フエイブツシユ
(72)【発明者】
【氏名】バリー・フエジエリー
【審査官】
齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5852625(JP,B2)
【文献】
特許第5702140(JP,B2)
【文献】
国際公開第2005/090315(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/099060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のα型結晶を含み、α型結晶が、2θ=10.2±0.2、11.3±0.2、14.0±0.2、14.3±0.2、14.7±0.2°の粉末X線回折ピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、製薬学的組成物。
【請求項2】
α型結晶が、2θ=10.2±0.2、11.3±0.2、11.8±0.2、14.0±0.2、14.3±0.2、14.7±0.2、16.1±0.2、及び18.3±0.2°の粉末X線回折ピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項3】
経口投与に適した剤形である、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項4】
固体剤形である、請求項3に記載の製薬学的組成物。
【請求項5】
剤形が、錠剤、カプレット、硬質ゼラチンカプセル、デンプンカプセル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル、および軟質弾性ゼラチンカプセルからなる群から選択される、請求項3に記載の製薬学的組成物。
【請求項6】
剤形が錠剤である、請求項3に記載の製薬学的組成物。
【請求項7】
オピオイド受容体疾患を罹患した哺乳動物に有効量の請求項1に記載の製薬学的組成物を投与することにより該疾患を治療するための、上記製薬学的組成物を製造するための請求項1のα型結晶の使用方法。
【請求項8】
オピオイド受容体疾患が過敏性腸症候群、疼痛、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
オピオイド受容体疾患が過敏性腸症候群である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
オピオイド受容体疾患が疼痛である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のβ型結晶を含み、β型結晶が、2θ=11.0±0.2、12.4±0.2、14.9±0.2、15.2±0.2、22.1±0.2°の粉末X線回折ピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、製薬学的組成物。
【請求項12】
経口投与に適した剤形である、請求項11に記載の製薬学的組成物。
【請求項13】
固体剤形である、請求項12に記載の製薬学的組成物。
【請求項14】
剤形が、錠剤、カプレット、硬質ゼラチンカプセル、デンプンカプセル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル、および軟質弾性ゼラチンカプセルからなる群から選択される、請求項12に記載の製薬学的組成物。
【請求項15】
剤形が錠剤である、請求項12に記載の製薬学的組成物。
【請求項16】
オピオイド受容体疾患を罹患した哺乳動物に有効量の請求項11に記載の製薬学的組成物を投与することにより該疾患を治療するための、上記製薬学的組成物を製造するための請求項11のβ型結晶の使用方法。
【請求項17】
オピオイド受容体疾患が過敏性腸症候群、疼痛およびそれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
オピオイド受容体疾患が過敏性腸症候群である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
オピオイド受容体疾患が疼痛である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の新規な結晶、及び5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に医薬品原薬(API)を投与するには、単なる分子の同定及びその使用以上のことが求められる。APIは患者への投与用に製剤化する必要があり、こうした製剤は(API活性以外に)米国食品医薬品局(FDA)及び欧州医薬品審査庁(EMEA)のような規制機関によって評価が行われる。FDAは異なる性質の中でも特に、送達性、安定性、一貫性、及び製造における制御性について製剤を評価する。特定の製剤の性質を決定するうえで重要な因子の1つとしてAPIの形態がある。APIは非晶体、結晶体、多形体、水和物、及び溶媒和物として存在することが知られている。APIごとに形態は異なる。ある特定のAPIは多形体又は溶媒和物として存在することが知られているが、別のAPIは非晶体でのみ存在することが知られている、というような場合がある。このような形態の多様性は、異なる多形体、溶媒和物、水和物又は非晶体のそれぞれが、安定性、溶解性、吸湿性などの異なる性質を有し得ることから重要である。
【0003】
APIのある形態は、FDAに認可され得る製剤に製剤化することができるが、他の形態はFDAの高い規制基準を満たすのに必要とされる性質を欠いている場合がある。特定のAPIが製剤化に適した1以上の形態で存在することができても、APIの形態の異なる性質が、製造プロセス、保存安定性、投与経路、バイオアベイラビリティー、及び他の重要な製品特性に影響する可能性がある。例えば、安定性又は吸湿性を向上又は調節することが可能であると、湿度制御されたチャンバの必要性が低下したり、APIを耐湿包装に包装する必要性が低下することによって、製造コストを低くすることができる。更に、これらの同様の変化によって製品の保存寿命を延ばすことが可能であり、これにより製品の流通の可能性が広まり、コストにも影響する。別の例として、APIのある形態が別の形態よりも高いバイオアベイラビリティーを有する場合がある。バイオアベイラビリティーのより高い形態を選択することによって、患者に投与する薬剤の用量を減らすことができる。
【0004】
更に、APIの製造プロセスを変更することによって、処理工程を減らし、純度を高め、コストを低下させることができる。こうした利点は医薬品業界にとって重要である。
【0005】
5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸は、オピオイド受容体のモジュレーター(μ受容体アゴニスト及びδ受容体アンタゴニスト)であり、過敏性腸症候群、疼痛及び他のオピオイド受容体疾患の治療に有用であり得る。5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸及びこの分子の製造方法は、米国特許出願第2005/02033143号に開示され
ている。米国特許出願第2005/02033143号の実施例9では、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の塩酸塩を製造している。出願人等は、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオン、及びこの双性イオンの2つの新規な結晶の製造方法を発見した。出願人等によって、これらの新規な結晶は諸性質が向上しており、より高純度で精製することが可能である。出願人等の新規なプロセスは、米国特許出願第2005/02033143号に開示される方法と比較して改良された、より低コストのプロセスの製造条件につながるものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のα型及びβ型結晶に関するものである。本発明は更に、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンの製造方法を提供する。本発明は更に、これらの新規な結晶を含む医薬組成物を提供する。本発明の組成物及び方法は、特に過敏性腸症候群などの様々な疾患の治療又は予防に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】典型的なα型結晶の粉末X線回折(PXRD)による測定結果を示す図。
【
図2】典型的なα型結晶の熱重量分析(TGA)による測定結果を示す図。
【
図3】典型的なα型結晶の示差走査熱量(DSC)測定による測定結果を示す図。
【
図4】典型的なβ型結晶の熱重量分析(TGA)による測定結果を示す図。
【
図5】典型的なβ型結晶の示差走査熱量(DSC)測定による測定結果を示す図。
【
図6】5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンの分子構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、過敏性腸症候群の治療において有用な5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の新規なα型結晶に関するものである。
【0009】
第1の実施形態では、本発明は5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のα型結晶からなる。本発明の一態様では、α型結晶は、粉末X線回折において2θ=約14.0、14.3、及び14.7°にピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明の更なる一態様では、α型結晶は、粉末X線回折において2θ=約10.2、11.3、14.0、14.3、及び14.7°にピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明のなお更なる一態様では、α型結晶は、粉末X線回折において2θ=約10.2、11.3、11.8、14.0、14.3、14.7、16.1
及び18.3°にピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明の別の一態様では、α型結晶は、実質的に表1に示されるような粉末X線回折ピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。別の実施形態では、α型結晶は、
図1の粉末X線回折パターンと実質的に同様の粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明の更なる一態様では、α型結晶は、
図2の熱重量分析(TGA)と実質的に同様のTGAによって特徴付けられる。本発明の更なる一態様では、α型結晶は、
図3の示差走査熱量(DSC)測定と実質的に同様のDSCによって特徴付けられる。本発明の一実施形態では、α型結晶は実質的に純粋である。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、過敏性腸症候群などのオピオイド受容体疾患を罹患した哺乳動物を治療する方法であって、前記哺乳動物に有効量の5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のα型結晶を投与することを含む方法からなる。別の実施形態では、前記哺乳動物はヒトである。
【0012】
本発明は更に、過敏性腸症候群、疼痛、及び他のオピオイド受容体疾患の治療において有用であり得る5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の新規なβ型結晶に関する。
【0013】
第1の実施形態では、本発明は5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,
6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のβ型結晶からなる。本発明の一態様では、β型結晶は、粉末X線回折において2θ=約11.0、12.4及び15.2°にピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明の更なる一態様では、β型結晶は、粉末X線回折において2θ=約11.0、12.4、14.9、15.2及び22.1°にピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明のなお更なる一態様では、β型結晶は、粉末X線回折において2θ=約11.0、12.4、14.9、15.2、22.1、25.6、27.4及び30.4°にピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明の別の一態様では、β型結晶は、実質的に表2に示されるような粉末X線回折ピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。別の実施形態では、β型結晶は、
図1の粉末X線回折パターンと実質的に同様の粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明の更なる一態様では、β型結晶は、
図4の熱重量分析(TGA)と実質的に同様のTGAによって特徴付けられる。本発明の更なる一態様では、β型結晶は、
図5の示差走査熱量(DSC)測定と実質的に同様のDSCによって特徴付けられる。本発明の一実施形態では、β型結晶は実質的に純粋である。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、過敏性腸症候群などのオピオイド受容体疾患を罹患した哺乳動物を治療する方法であって、前記哺乳動物に有効量の5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のβ型結晶を投与することを含む方法からなる。別の実施形態では、前記哺乳動物はヒトである。
【0016】
5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の結晶の医薬剤形は、経口投与を含むがこれに限定されない幾つかの方法によって投与することができる。経口医薬組成物及び剤形は、代表的な剤形である。場合により、経口剤形は、錠剤、カプレット、硬質ゼラチンカプセル、デンプンカプセル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル、又は軟質弾性ゼラチンカプセルなどの固体剤形である。本発明によれば、懸濁液、溶液、シロップ、又は乳濁液などの非限定的な例を含む液体剤形も更に提供される。別の実施形態では、本発明は5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の結晶を含む薬剤の調製法を含む。5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のβ型結晶を、制御放出又は遅延放出手段によって投与することができる。
【0017】
賦形剤の量及び種類と同様、剤形中の有効成分の量及び具体的な種類は、これに限定されるものではないが、剤形が哺乳動物に投与される経路などの因子によって異なり得る。しかしながら、本発明の典型的な剤形は、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸のβ型結晶を、約0.10mg〜約1.00g、約0.2mg〜約500.0mg、又は約1.0mg〜約250.0mgの量で含む。非限定的な例としては、0.2mg、0.50mg、0.75mg、1.0mg、1.2mg、1.5mg、2.0mg、3.0mg、5.0mg、7.0mg、10.0mg、25.0mg、50.0mg、100.0mg、250.0mg、及び500.0mgの用量が挙げられる。しかしながら、この用量は、患者の必要条件、治療される状態の重篤度、及び使用される化合物に応じて変わり得るものである。連日投与又は周期後投与(post-periodic dosing)のいずれかを用いることができる。
【0018】
本発明の5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の結晶を用いて、局所剤形、非経口剤形、経皮剤形、及び経粘膜剤形など、上記に述べた経口剤形以外の医薬剤形を調製することも可能である。例えばこうした剤形として、クリーム、ローション、溶液、懸濁液、乳濁液、軟膏、粉末、パッチ、坐剤などが挙げられる。
【0019】
本発明の5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の結晶は、熱重量分析(TGA)若しくは示差走査熱量(DSC)測定データ、又は粉末X線回折(PXRD)における任意の1つ、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、任意の5つ、任意の6つ、任意の7つ、任意の8つ、任意の9つ、若しくは任意の10の2θ角のピークによって、又は特定の結晶を明確に同定する上記に述べた分析法から得られるデータの任意の組み合わせによって特徴付けることが可能である。
【0020】
本発明は更に、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを単離及び調製する方法に関する。一実施形態では、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを調製する方法は、強イオン化可能性(ionizable)酸を5−({[2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸と合わせて5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の塩を調製する工程と、前記5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の塩を無機塩基で洗って5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを得る工程と、を含む。別の実施形態では、本発明は更に、前記5−({[2−アミノ−3−(4−カル
バモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを水で洗う工程を含む。本発明の一態様では、前記無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムから選択される。本発明の別の態様では、前記無機塩基は水酸化ナトリウムである。本発明の更なる態様では、前記イオン化可能性酸は、塩酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、蟻酸及びリン酸から選択される。本発明の別の態様では、前記イオン化可能性酸は塩酸である。
【0021】
一実施形態では、5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを調製する方法は、塩酸を5−({[2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸と合わせて5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の塩酸塩を調製する工程と、前記5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の塩を水酸化ナトリウムで洗う工程と、前記5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを水で洗う工程と、を含む。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、本発明のプロセスから得られる前記5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを再結晶化することを含む。更なる実施形態では、前記再結晶化は0〜40%の相対湿度で行われる。なお更なる実施形態では、前記再結晶化は60%よりも高い相対湿度で行われる。
【0023】
一実施形態では、本発明は、本発明のプロセスによって調製された5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1h−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の結晶性双性イオンを含む。更なる実施形態では、本発明のプロセスによって製造された前記結晶性双性イオンはα型結晶である。なお更なる実施形態では、本発明のプロセスによって製造された前記結晶性双性イオンはβ型結晶である。
【0024】
一実施形態では、本発明の結晶は安定性が向上している。
【0025】
以上、本発明をさまざまな実施形態に関して説明したが、本発明は付属の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内で、広範囲の更なる及び他の実施形態も可能である点が認識されるべきである。
【0026】
本発明の結晶を以下の方法を用いて分析した。
【0027】
示差走査熱量測定
結晶を両方とも、パーキンエルマー社(Perkin-Elmer)製の示差走査熱量計DSC−7を使用し、約25℃〜250℃、10℃/分の加熱速度にて分析した。
【0028】
粉末X線回折
分析はフィリップス社(Philips)製X’Pert Pro MPD回折計を用いて行った。各試料を16mmの試料ホルダーに装填して分析した。各試料を、X−Celerator検出器を用いて、2θ=0.0165°のステップサイズとし、各ステップの時間10.16秒で2θ=3〜50°まで走査した。有効走査速度は0.2067°/秒であった。器具電圧及び電流の設定値を45kV及び40mAとした。
【0029】
X線回折図のピークの相対強度は、例えば結晶不純物のためにピーク強度が試料ごとに異なり得ることから必ずしも粉末X線回折(PXRD)パターンの制限条件とはならない。更に、各ピークの角度は約±0.1°だけ、又は約±0.05°だけ変動し得る。較正の差、設定値、並びに他の器具間及び操作者間の変動のために、パターン全体、又はパターンのピークの大部分もやはりまた約±0.1°〜約±0.2°だけシフトし得る。図面、実施例及び本明細書の他の部分において報告されるPXRDのピークはすべて、2θ=約±0.2°の誤差で報告されている。特に断らない限りは、X線回折図はすべて室温付近(約24℃〜約25℃)で得られたものである。
【0030】
熱重量分析
結晶を両方とも、パーキンエルマー社(Perkin-Elmer)製の熱重量分析計TGA−7を使用し、約25℃〜200又は250℃、10℃/分の加熱速度にて分析した。
【0031】
以下の具体的実施例は、本発明をより詳細に説明するものである。しかしながら、これらの実施例は本発明の範囲をいかなる意味においても限定することを目的としたものではない。
【実施例】
【0032】
実施例1:5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンの調製
機械的攪拌子、添加用漏斗、及び熱電対を備えた1Lの三口丸底フラスコを揺動させずに装填した。34.2gの5−({[2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸(米国特許出願第2005/0203143号の実施例9を参照)、340mLのアセトン、及び17mLの204mmol濃塩酸をフラスコ内で合わせた。攪拌を開始したところ、得られたスラリーは透明な溶液を形成した。この溶液を激しく攪拌しながら45℃に加熱し、この温度で2時間熟成させた。反応終了後、反応マスを室温にまで冷却して上清を吸引して取り除いた。容器を残渣と一緒に20mLのアセトンですすぎ、上記と同様に取り除いた。170mLの水を加え、反応マスを攪拌下で均質な溶液が得られるまで熟成させた。次いでこの溶液を約30分かけて90mLの1N水酸化ナトリウム水溶液に加えた。これによりpHを6.5〜7.0に調節した。得られたスラリーを室温で約2時間熟成させ、10〜15℃に冷却し、この温度で約1時間熟成させた後、濾過した。固体を10mLの水で洗い、4〜5時間風乾した後、含水率が3%未満となるまで50〜55℃の真空オーブン中に置いた。
【0033】
実施例2:α型結晶の調製
5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを0〜25%の相対湿度で3日間保存することによってα型結晶を調製することができる。典型的な粉末X線回折(PXRD)、熱重量分析(TGA)、及び示差走査熱量(DSC)測定のデータをそれぞれ図
1〜3に示す。
【0034】
実施例3:β型結晶の調製
5−({[2−アミノ−3−(4−カルバモイル−2,6−ジメチル−フェニル)−プロピオニル]−[1−(4−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)−エチル]−アミノ}−メチル)−2−メトキシ−安息香酸の双性イオンを60%よりも高い相対湿度で3日間保存することによってβ型結晶を調製することができる。典型的な粉末X線回折(PXRD)、熱重量分析(TGA)、及び示差走査熱量(DSC)測定のデータをそれぞれ
図1、4及び5に示す。