(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
腹部大動脈瘤は、一般にAAAと呼ばれ、中膜、主に平滑筋細胞で構成される血管壁層の損傷に起因する腹大動脈の50%拡大から成ると考えられる。AAAの正確な病因はよく理解されていないが、血流力にかかわる複雑な過程ならびに局所の細胞外マトリックスリモデリング、マクロファージおよびリンパ球の浸潤およびマトリクスメタロプロテアーゼ酵素の増大であると考えられ、これらはすべて弾力繊維および平滑筋細胞を破壊する役割を担う。内側の弾力繊維が徐々に経時的に減少し、中膜のコラーゲンが薄くなり、動脈瘤の傾向を高める内膜が厚くなる。コラーゲンが代償的に産生することによって中膜の弾力および強度が減少し、動脈拡大に至り、動脈瘤を形成する。組織学的には、動脈瘤弾力繊維の破壊、慢性貫壁性炎症および平滑筋細胞の減少が認められる。動脈瘤の進行は、分子媒介物質とマトリックスメタロプロテアーゼ2および9を含む細胞外マトリックスを分解するプロテイナーゼとによって特徴付けられる。増大したコラーゲン代謝回転は、動脈瘤の成長および破裂の潜在的原因として標的にされる。
【0003】
試験は、50歳以上(主に男性)の3%にAAAがあることを示している。さらに、65歳以上の男性の2.1%は大動脈瘤破裂で死亡することになる。腎動脈レベルの動脈径の平均が約2cmであることから、動脈瘤は理論的に3cm拡大している。65歳までに、男性の5%および女性の1.7%が少なくとも3cmの大動脈径となる。3cm以上のAAAの有病率は、65歳以降10年毎に6%増大する。しかし、ほとんどの動脈瘤は、4cmまでは臨床的に関連すると考えられておらず、一般に、約5cmになるまで手術は行われない。破裂のリスクは、動脈瘤径とともに増大する。破裂性大動脈瘤がある患者の25%のみが病院に行き、10%のみが手術室に行く。このように高死亡率のため、破裂する前の動脈瘤を処置することが重要となる。
【0004】
現在のAAA処置は、侵襲手術または血管内動脈瘤修復を含み、患者の生理機能および病状によって決まる。動脈瘤の外科療法は、1951年に最初にDubostらによって実施されたが、1963年にCharles Robによって現在の後腹膜法を用いて再導入されている。後腹膜法では、患者が腹臥位の場合、11番目の肋骨より上の動脈瘤に到達することができない。別の外科手技が経腹膜的に行われ、動脈瘤は正中線に沿って切開することによって到達することができる。1991年には、外科切開術の代替法がJuan Parodiによって導入され、腸骨大腿からの経路を用いて、血管内グラフトを挿入し、動脈瘤を覆って血管内動脈瘤修復(EVAR)を実施している。
【0005】
EVARは、動脈瘤にグラフトを配置し、大腿動脈内に挿入するステント技術を利用し、分岐点で分かれる。グラフトは、動脈に大きな損傷をもたらすことなく大動脈の動脈瘤部分を閉塞するのに有用である。現在FDAが認可したステントグラフトは、ステンレスステント、コバルトクロム合金ステントまたはニチノールステントに被せたポリエステル(PET)繊維グラフトまたはePTFE繊維グラフトを含む。グラフトは、自己膨張、ステント、鉤またはこれらの組み合わせを使用して固定される。しかし、グラフトは血流から患部を分離するように作製されているため、その実装には固有の問題が存在する。腸骨動脈の分岐点が、特に90°以上捻転している場合、移植後にエンドリークを引き起こし、グラフトと大動脈の管腔との間に血液が滲出し、動脈瘤に達する可能性がある。また特に、石灰化が50%以上、あるいは血栓形成が25%〜50%である場合、石灰化およ
び血栓事象はEVARの有効性を抑える一因となる。EVARグラフトの成功は通常、4つの型のエンドリークがいずれも存在しないことによって定義される。I型エンドリークは、血液がグラフトとグラフトの近位端または遠位端の血管壁との間を流れる場合に発生する。血液が血管枝から動脈瘤嚢に流れる場合は、II型エンドリークとみなす。III型エンドリークはグラフトの異なる部分の間の吻合が不十分であることによる。グラフト材料から漏出が発生する場合はIV型エンドリークとみなす。一般に、II型およびIV型は自然消滅するが、I型およびIII型はさらに重大な危険性を引き起こし、後処置で処理する必要がある。
【0006】
AAA処置用の血管内グラフトの試験は、最初にin vitroで適切な細胞培養評価、構造機械的特性試験、次いで、特に凝固系および線溶系に関して適切に評価するための適切なAAA動物モデルを必要とする。イヌモデルおよびブタモデルは、現在のEVARデバイスを試験するのに適切していると考えられている。
【0007】
動物に動脈瘤を誘発するために使用される主流技術は、パッチモデルであり、空腸、腸骨静脈、直筋筋膜またはダクロンなどの材料で作製された楕円形のパッチを大動脈の縦切開部に縫合することを必要とする。この技術は、ヒトによく見られるものと同じように徐々に拡大させて破裂させることが可能である。この技術の最大の欠点は、生理的な動脈瘤形成および生体構造との矛盾である。さらに生理的に関連する技術は、壁細胞剥離であって、外膜と中膜の60〜70%とを切除して血管壁が拡張させることを可能にするモデルと、エラスチン剤に一時的に曝して血管壁層を破壊するエラスターゼモデルとを含む。しかし、この技術は制御が困難である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2A】エレクトロスピニングによる管状スカフォールドの極限引張応力における溶液濃度、押出速度および電圧の結果を比較するグラフである。
【
図2B】エレクトロスピニングによる管状スカフォールドの極限引張応力における溶液濃度、押出速度および電圧の結果を比較するグラフである。
【
図2C】エレクトロスピニングによる管状スカフォールドの極限引張応力における溶液濃度、押出速度および電圧の結果を比較するグラフである。
【
図3A】エレクトロスピニングによる管状スカフォールドの破損歪みにおける溶液濃度、押出速度および電圧の結果を比較するグラフである。
【
図3B】エレクトロスピニングによる管状スカフォールドの破損歪みにおける溶液濃度、押出速度および電圧の結果を比較するグラフである。
【
図3C】エレクトロスピニングによる管状スカフォールドの破損歪みにおける溶液濃度、押出速度および電圧の結果を比較するグラフである。
【
図4】さまざまなパラメータを使用して製造したスカフォールドの平均孔隙率のグラフである。
【
図5A】スカフォールド全体の形態変化の勾配を表す単一の管状スカフォールドの凹面と凸面との間のSEM画像である。
【
図5B】スカフォールド全体の形態変化の勾配を表す単一の管状スカフォールドの凹面と凸面との間のSEM画像である。
【
図5C】スカフォールド全体の形態変化の勾配を表す単一の管状スカフォールドの凹面と凸面との間のSEM画像である。
【
図6A】37℃で90日間、PBS中50RPM(n=6)で撹拌したエレクトロスピニングによる管状スカフォールドの分解性を示すグラフである。
【
図6B】37℃90日間、PBS中50RPM(n=6)で撹拌したエレクトロスピニングによる管状スカフォールドの分解性を示すグラフである。
【
図6C】37℃90日間、PBS中50RPM(n=6)で撹拌したエレクトロスピニングによる管状スカフォールドの分解性を示すグラフである。
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図7】エレクトロスピニングによる管状スカフォールドに接着したヒト大動脈内皮細胞のSEM写真である。
【
図8】14日間静置培養時のエレクトロスピニングによる管状PCLスカフォールドの大動脈平滑筋細胞の代謝活性を示す図である。
【
図9】生物反応器内のエレクトロスピニングによる管状スカフォールドの大動脈平滑筋細胞の代謝活性を示す図である。
【
図10】さまざまな無菌播種法を使用してヒト大動脈平滑筋細胞を比較するグラフである。
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図11】Aはエレクトロスピニングによるスカフォールド(ナノファイバー)の2000倍率のSEM写真である。 Bはエレクトロスピニングによるスカフォールド(マイクロファイバー)の2000倍率のSEM写真である。
【
図12A】さまざまなファイバー形態のスカフォールドに対するhAoECの代謝活性の変化を示すグラフである(各サンプルは0日値に正規化される)。
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図12B】さまざまなファイバー形態のスカフォールドに対するhAoSMCの代謝活性の変化を示すグラフである(各サンプルは0日値に正規化される)。
【
図13A】dsDNA含量を測定するPicogreenを使用し、n=6で求めたナノファイバー(A)、マイクロファイバー(B)またはフィルム(C)から成るスカフォールドにおけるhAoECの細胞増殖の経時変化グラフである。
【
図13B】dsDNA含量を測定するPicogreen(n=6)を使用して求めたナノファイバー(A)、マイクロファイバー(B)またはフィルム(C)から成るスカフォールドにおけるhAoSMCの細胞増殖の経時変化グラフである。
【
図14】Aは1日目のヒト大動脈内皮細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真である。 Bは3日目のヒト大動脈内皮細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真である。 Cは7日目のヒト大動脈内皮細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真である。 Dは10日目のヒト大動脈内皮細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真である。
【
図15】Aは1日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真である。 Bは3日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真である。 Cは7日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真である。 Dは10日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真である。
【
図16】Aは1日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Bは3日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Cは7日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Dは10日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Eは1日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Fは3日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Gは7日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Hは10日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Iは1日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Jは3日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Kは7日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。 Lは10日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、さまざまな変形例および代替形態を許容してもよく、それらの特定の実施形態を図面に例示し、本願明細書に詳細に説明する。図面は実寸で示したものでない。しかし、図面およびその詳細の記載は、開示する特定の形態に本発明を限定することを意図せず、それとは反対にその意図は、本願特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨および範囲のすべての変形例、均等物および代替例を含むことを理解する必要がある
。
【0016】
本発明は特定のデバイスまたは生物系に限定されず、変形させてもよいことは言うまでもないことが理解される。また、本願明細書に使用する用語は、特定の実施形態にのみ説明する目的のためのものであり、限定することを意図しないことが理解される。本願明細書および本願特許請求の範囲に使用されるように、明示しない限り、単数形「a」、「an」および「the」は単数および複数の指示対象を含む。
【0017】
EVARは、ステント技術を利用して血管内から動脈瘤にグラフトを配置し、血流から動脈瘤嚢を本質的に閉塞する。EVARによるリスクの多くは、非生物活性材を永久的に導入することによって発生する。そのようなリスクは、組織工学法を使用して回避してAAAを処置してもよい。組織工学は、欠陥領域に細胞が播種される生分解性スカフォールドを導入することによって組織を再建する手段である。スカフォールドは三次元構造をもたらし、細胞は増殖して新生組織に形成される。スカフォールドの特性を変えると、細胞が成長して組織化する方法が変わる。腹部大動脈瘤を処置するために組織工学法を選択すると、生体細胞がスカフォールドを浸潤して、適切な直径の大動脈壁にリモデリングすることが可能になる。
【0018】
組織工学の概念を適用して、本発明のシステムは、動脈瘤に血管内配置され、細胞を浸潤させることによって自然に播種される孔隙性の高い管状のスカフォールドを使用する。これにより、細胞は細胞外基質成分を分泌し、スカフォールド形態に対応して組織化するため、動脈瘤を「再舗装する」ことが可能となる。浸潤細胞は、スカフォールドを流れる血液と周辺組織とからもたらされる。最初に、細胞は創傷治癒反応に従って作用する。次に、最初に接着した細胞は、さらに適切な他の細胞に合図し、スカフォールドを介して接着して移動する。
【0019】
異種細胞が接着し、移動し、増殖すると、リモデリング過程が実施され、細胞外基質成分およびスカフォールド繊維は、一部の領域で破壊され、そのほかの領域で強化される。したがって、時間経過につれて、スカフォールドは、生理的状態に対応して組織化された機能性組織にゆっくりと入れ替わる。結果的には、スカフォールドは、正確な形状のところに組織を残し、コラーゲン、エラスチンおよび栄養血管などの重要な構成成分を含みながら、完全に分解されることになる。この時点では、動脈瘤は、最小限に抑えられるか、あるいは存在しなくなる。
【0020】
スカフォールドを血管内配置することによって、機械的な刺激作用を減少できる一方、孔隙性が高い構造を同時にもたらし、適切な細胞が接着し、移動し、増殖して新生血管壁に組織化する。さらに、細胞の浸潤はスカフォールドの強度、適合性および既存の組織への統合性を増大させる。これにより、現在のEVARステントグラフトによって発生するエンドリークの可能性を減少させる。血管壁リモデリング時には、スカフォールドは分解し、新生組織が形態および機能を継承することを可能にする。
【0021】
不浸透性の障壁をもたらそうとする現在のEVAR治療法と異なり、本願明細書に開示するスカフォールドは、最初は浸透性であり、細胞浸潤が可能である。適切な細胞が接着し、細胞外基質成分を定着させて増殖すると、スカフォールドは実質的に不浸透性になる。さらに、スカフォールドは生分解性であるため、新生組織が形成されると、本発明のスカフォールドは生体代謝経路でゆっくり分解されることになる。
【0022】
現在の組織設計された血管とは異なり、記載するデバイスは、切除または周辺組織への損傷を最小限にして損傷した心臓血管組織内に配置することが可能である。
【0023】
一実施形態では、設計された血管での使用を目的とするスカフォールドは、細胞移動、細胞増殖および細胞分化に有用な孔隙性および表面積と、生体血管に適合する硬さおよび機械的強度と、組織形成と同時に起こる微生物分解速度とを有する。一実施形態では、スカフォールドが大動脈を対象とし、血管内注入されるように構成される。大動脈に配置されるステントは、大腿動脈にカテーテルを使用して挿入され、動脈瘤部位で大動脈の公称寸法に拡大される。一実施形態では、スカフォールドは、大動脈でステントの5〜6倍の膨張に耐えることができる材料を含み、これはEVAR処置では必要とされる。さらに組織は、機械的応力を新生組織に徐々に転移可能にしながら発現するため、スカフォールドは機械的特性を低下させて消失させる材料を含む。
【0024】
実施形態では、スカフォールドは生分解性材料を含む。
【0025】
一実施形態では、スカフォールドは不織布状のポリカプロラクトン(PCL)ファイバーから成る。PCLは、強度、弾性特性および長分解時間に基づいてFDAに認可された臨床用途で一般に使用される生分解性材料である。スカフォールドとして使用可能な他のポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(D,L−乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)などのポリ(α−ヒドロキシエステル)であるが、これらに限定されない。
【0026】
これらのポリマーは、エステル結合の加水分解によって酸性モノマーに分解し、生体から正常な代謝経路を介して除去できることから、生分解用途に好適である。PCLの合成性によって、その安定性のため、特定用途にPCLを容易に適合させる。また、コラーゲン、エラスチンまたはDNAなどの天然高分子をこの用途に使用してもよい。
【0027】
実現可能な材料を選択することのほかに、スカフォールドの製造工程は、特定の用途に適していることが必要となる。エレクトロスピニングは、静電力を使用して不織布繊維を形成する繊維製造過程である。一極性の高電圧が高分子溶液または高分子溶融物に印加され、陽イオンの濃度が陰イオンを超えている場合にクーロン反発を引き起こす。溶液または溶解物が放出され、電圧が印加されると、放出された液滴中の類似電荷が互いに反発する。放出された液滴中の反発と集電体への引力との組み合わせによって、液滴中の分子が液滴形態を維持する表面張力を上回ることが可能となる。その後、溶液の噴射は集電体へと加速し、揮発性溶媒がスピナレットの先端と集電体プレートとの間で気化することが可能となる。流体が十分な速度で放出され、閾値より高い電位が印加される場合、その噴射は連続的となり、収集ユニットで数ナノメートル〜数マイクロメートルの連続繊維不織布を形成する。ポリカプロラクトンをエレクトロスピニングによって細胞外基質成分に匹敵する孔隙性の高さおよび繊維の大きさならびに分解特性および機械的特性の可能性があることから、大動脈スカフォールドでの使用に十分適した柔軟性のある不織布織物が得られる。製造パラメータまたは収集ユニットを変えることによって、無数のさまざまなスカフォールドを形成できる。
【0028】
エレクトロスピニング処理パラメータは、得られる繊維径および繊維の安定性に対して有意な作用がある。動脈瘤修復における使用のためにスカフォールドを調製するためには、それらのパラメータが、細胞増殖における役割を果たし、結果として得られるスカフォールドの特性、概してスカフォールドの成功にどのように影響するか理解することが望ましい。エレクトロスピニングは、溶液濃度、押出速度、印加電圧、先端から集電体への距離、温度、湿度、溶媒の揮発性およびポリマー特性を含む多くのパラメータの適切な組み合わせに依存する。エレクトロスピニングによるポリカプロラクトンの特性に対するこれらのパラメータの効果を試験した。同時に結果に影響する変数の数を制限するために、予備試験に基づいて、エレクトロスピニングデバイスの先端から集電体への距離は10cmで維持し、マンドレル回転は587.5RPMに固定した。さらに、クロロホルムに溶解
されたポリカプロラクトンを使用し、エレクトロスピニング装置内のポリマーおよび環境条件では、温度を23〜24℃、湿度を45〜55%に維持した。
【0029】
一実施形態では、スカフォールドは、製造されると細胞浸潤および細胞増殖に有用な表面上の成分部分を導入するために、ガスプラズマ処理される。スカフォールドのガスプラズマ処理は、反応ガスによって生成されたプラズマにスカフォールドを曝すことを含んでもよい。反応ガスは、酸素、窒素、アルゴン、アンモニアまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0030】
一実施形態では、スカフォールドは、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、アンギオテンシンII(アンII)、コラーゲンVIII、コラーゲンIまたはコラーゲンVを含む化学的刺激によって処理されるが、これらに限定されない。
【0031】
次に、ステントシステムはスカフォールドを配置するために使用される。ステンレスステント、コバルトクロム合金ステント、ニチノールステントまたは重合ステントにスカフォールドを取り付けてもよい。ステントスカフォールドシステムは、正常なEVAR治療手順を用いて移植され、大腿動脈は、システムを導入する経路であり、バルーンカテーテルを使用して血管内配置される。別の配置法は、ステントに繊維を直接回転させ、使用されるポリマーを変更し、異なる溶媒を使用し、あるいはステントの代わりに鉤を使用することを含む。これらの各配置法は、新規のものと同じ実施形態を使用して本質的に設計されるが、スカフォールドシステムの配置または分解特性が若干変更することを意味すると考えられる。
【0032】
スカフォールドシステムが動脈瘤の大動脈で拡張した後、血液および生体血管からの細胞は、正常な創傷治癒反応の結果としてスカフォールドを浸潤する。管が拡張した形態にあるため、繊維は、生体中膜と同じように、平滑筋細胞が同じ方向に沿って配置されることを可能にしながら、若干同心円状に配置される一方、血流は細胞が血流の方向に向いた細胞によって内皮細胞被覆を引き起こすことになる。時間経過につれて、生体材料によるスカフォールドは、加水分解され、生体代謝経路から除去され、その位置で新生組織を残す。細胞がスカフォールドを浸潤するため、結果として生じるグラフトは生体組織に直接接合されることから、現在のステントグラフトシステムとは異なり、エンドリークの発生を減少または除外する。さらに、コラーゲンおよび他の細胞外基質成分によって強化されることによって、細胞が存在している場合に認められるエレクトロスピニングによるスカフォールドの硬さおよび強度の増大をもたらすことが可能である。そのほかの便益として、組織リモデリングは、現在使用されているステントグラフトとは異なり、副行血管系が新生血管壁に接着することを可能にする。
【0033】
エレクトロスピニングファイバー上のさまざまな細胞の相互作用を検討すると、分解に対してさらに抵抗性があり、孔隙性が十分なポリマーで作製されたスカフォールドは、3次元構造のため細胞集積および細胞増殖を意図的に促進することが認められる。これは、三次元面は二次元面とは対照的に、細胞によって経時的に受け入れられるという広く支持される仮定を裏付けている。
【0034】
一実施形態では、スカフォールドの繊維は、直径が200nm未満〜10μm超であり、さまざまな細胞種別および接触傾向に対応するために、さまざまな孔隙性(孔隙率70〜85%)を示すように構成してもよい。さらに、繊維配向は、細胞接着、細胞移動および細胞増殖で役割を果たすことが認められている。構成された繊維に位置する細胞はほとんど、同じような配置を示し、これは、配置した組織を成長させるために利用可能な特徴である。繊維を構成していないスカフォールドに対して細胞応答を検討することにより、
組織を配置していないポリウレタン(PU)繊維とは対照的に配置したもので線維芽細胞を培養した場合、構成された繊維上で産生されたコラーゲンの量が増大したが、細胞数の増加は検出されなかったことを示した。面積当りの繊維濃度および繊維曲線によって、細胞接着、細胞増殖および細胞リモデリングを変更することが可能である。したがって、一実施形態では、スカフォールドは、凹面から凸面の形態学的勾配を含むように設計してもよい。たとえば、凹面は外観がループ状の繊維を含んでもよく、凸面は直線状の外観の繊維を含む。この形態学的な差は、別の構造を必要とすることなくスカフォールド全体の異種細胞の種類の組織化に有用となりうる。さらに、この変化はスカフォールド全体の血流を減少させるのに有用となりうることから、動脈瘤に加わる機械力を減少させて破裂する可能性を減少させる。
【0035】
現在の技術は、さらに生物不活性の材料を使用し、免疫応答の結果として線維性被膜をもたらすことが可能である。記載する実施形態は、グラフトが内皮細胞被覆を引き起こすことから、拒絶されない(被包される)。一実施形態では、本願明細書に記載するように形成されたスカフォールドグラフトは、組織化によって細胞が接着し、移動しおよび増殖するための手段を設けることによって免疫応答を利用してもよい。内皮細胞がループ状の凹面に接着すると、勾配は細胞によって現れ始め、さらに多くの接点を有するため、孔隙性は低下しない。内皮細胞は単一層内で成長しようとすることから、繊維濃度は内皮細胞の接着に有用となりうる。一方では、さらに直線状で、それほど濃度が高くない凸面は、平滑筋細胞のために設計され、線条に組織化し、繊維の長さをたどろうとする。繊維の直線性は、周辺の線条への組織化に有用となりうる。不活性面とは対照的に細胞のために設計されるスカフォールドを設けることによって、合併症の発症を減少させることが可能である。本発明に記載するスカフォールドグラフトは、血管が必要性から発現した大動脈に血液を供給することを可能にする。一般にこれは、単にこれらの血管を閉塞する現在の技術では可能でなく、これらの血管の1つが血液を嚢に供給している場合、嚢の破裂を導く恐れがある。
【0036】
特定用途にスカフォールドを適合させるために、溶液濃度、印加電圧、引っ張り応力および引っ張り歪みに対する押出速度、孔隙性および繊維形態の効果をこれらのパラメータの1つを変更することによって一度に評価した。これらの結果を集計した後、応力または歪みを許容できないスカフォールドをもたらしたパラメータを除外し、高孔隙性、中孔隙性および低孔隙性のスカフォールドをもたらす3つのパラメータを分解試験で90日間にわたって維持した。
【0037】
全作業において、使用されるエレクトロスピナーは、2.5mLの気密シリンジ(Hamilton社)の22Gs、2インチの先端の丸い注射針(Hamilton社)に取り付けた0〜30kV電圧源(Information Unlimited社)から成る特注モデルであった。エレクトロスピナーの略図を
図1に示す。シリンジは、PCのハイパーリンク端末機能によって入力されたシリアルコマンドを使用するバイステップコントローラ(Peter Norberg Consulting社)によって制御される非捕集型二極リニアアクチュエータ(Haydon Switch and Instruments社)で押し下げた。予備作業では、50r、125rおよび200rの連続コマンドを使用し、動作率をマイクロステップ/s/sで定義し、16.575mm/時、42.188mm/時および67.5mm/時でそれぞれモーターを回転させた。これにより、他の試験で求めたパラメータに匹敵する0.012mL/分、0.029mL/分および0.047mL/分の高分子溶液の流量を生じさせた。高電圧源の正端子を針の先端から約3mmのところに小型ワニ口クリップで接続した。平面状スカフォールドに関しては、アルミニウムスクリーンを覆う取り換え可能なアルミニウム箔から成る集電体プレートを電圧源の負端子に接続し、高感度のねじを使用して針の先端から1mm下側に配置した。管状スカフォールドが作製されると、アルミニウム箔およびアルミニウム箔スクリー
ンは、アルミニウムマンドレルシステムによって取り換えられる。マンドレルはブッシングを介して負端子に取り付けられる0.5径のアルミニウム棒から成る。12VDC永久磁石モーター(Grainger社)を使用して回転させ、587.5RPMとなるように3VDCのみ使用して動作させた。回転領域は、外部干渉を減らすためにアクリルのケースに入れた。スカフォールドは、634.92mmHg(25inHg)の減圧下の室温で個々のバイアルに保存した。平面状スカフォールドおよび管状スカフォールドは、機械的特性にどのように影響するかを決める製造パラメータによって分類される。さらに、管状スカフォールドの孔隙性および分解性に関する製造パラメータの効果を検討した。
【0038】
エレクトロスピニングのパラメータは、どの設定が最良の引張強度および膨張の特性をもたらすかを求めるように最適化した。先端から集電体プレーのト距離、溶液濃度および印加電圧の広範囲の最初の試験後に最大電位でパラメータを評価するように実験を構成した。サンプルは、クロロホルム(HPLC勾配99.8%超、Sigma−Aldrich社)に溶解したポリカプロラクトン(Mn 80000kDa、Aldrich社)を使用して作製した。8wt%、10wt%および12wt%の溶液で平面状スカフォールドに使用し、10wt%、12wt%および14wt%溶液を管状スカフォールドに使用した。各溶液を24時間以内に使用し、使用しないときは密閉した褐色ビンに保存した。DCM中のPCLを初期試験で評価し、成績不良であったことから、以降の試験から除外した。
【0039】
平面状スカフォールドに関しては、8kV、11kV、14kVおよび17kVの電圧を各濃度の溶液に印加し、シリンジは、0.012mL/分の流量に対応する50rシリアルコマンドで押し下げた。50r入力に加えて、同じ電圧で125rコマンドおよび200rコマンドを使用して12wt%溶液も回転した。これによって、スカフォールドに対する電圧および流量の効果のほかに得られた濃度の効果の分析が可能となった。
【0040】
各平面状のサンプルは厚さが約0.3mmであり、西洋カミソリ刃を使用し、機械的試験用に切り取った。各サンプルの正確な厚さおよび幅は、2つのガラススライド間にサンプルを配置することによって測定し、ノギスを使用して厚さを測定し、スライドの厚さを差し引いた。機械的試験時に応力値を求める際に、この情報を使用した。平均繊維径、繊維の大きさおよびサンプル形態の分布は、SEMを使用して分析した。管状スカフォールドに関しては、試験する拡張軸が、管状スカフォールドを一様に拡張させることによる周方向応力に対応するように、横帯片を切り取った。2枚の西洋カミソリ刃を0.5cm離して平行に貼り付けることによって、サンプル全体に刃を引かずに均一の帯片を切り取ることが可能となる。試験前に、各帯片の幅および厚さは、Bioquant(登録商標)ソフトウエアを用いて倒立顕微鏡を使用して40倍率で測定した。各寸法を10回測定し、その平均を用いて各サンプルの平均断面積を求めた。帯片全体の平均測定値は、1.1cm×0.538cm×0.080cmであった。
【0041】
引張伸び試験に関しては、スカフォールドの大きさが限定されるため、何らかの修正を入れた後にASTM D 5035、織物の破断荷重及び伸長に関する標準試験法(ストリップ法)を実施した。エレクトロスピニングによるスカフォールドを20mm×10mmの帯片で切り取り、定速伸長(CRE)試験用に10mm間隔で鉗子に配置し、200lbfロードセルを備えたInsight 5(MTS)システムを使用した。応力、歪み、力、変位および時間を各帯片に対して記録したが、サンプル厚さが変化したため、応力および歪みのみを分析に使用した。試験方法は、サンプルの緩みに合わせて調製するように予め負荷0.5Nをかけるように設定し、次にアクチュエータを1.000〜150mm/sで動作させた。拡張長さは、グラフトがカテーテル22Fを使用して挿入され、直径が40mmに拡張した場合に変化しうる周囲長を超えるように設定した。
【0042】
平面状スカフォールドの引張試験から収集されたデータは、歪みに関して低濃度と高濃度との間で明らかな違いを示した。8wt%および10wt%の溶液では、スカフォールドは比較的低い歪みで破損した。しかし、すべての12wt%溶液は、これより低濃度の引っ張り応力および引っ張り歪みの特性を超えていた。12wt%群では、区別はそれほどなく、排除率および電圧を比較すると、双方とも中程度であるのがさらに好ましいようにみえる。
【0043】
各パラメータの6つの平面状スカフォールドを直径1.5cmの八辺形に切り取り、3つそれぞれを酸素ガスプラズマで殺菌し、他の3つは、EtOガスで殺菌した。播種前に処理を直接開始し、平滑筋細胞増殖培地(培地231+SMGS、Cascade Biologics社)でサンプルを湿らせ、30分間温置した。落下播種法を使用して、ヒト大動脈平滑筋細胞(Cascade Biologics社、P4)を2×104細胞/cm2の密度でスカフォールドに播種した。播種したスカフォールドを定温器に配置し、7日間1日おきに培地を交換した。7日目に、スカフォールドを4%ホルマリンで固定してからFITCおよびDAPIで染色した。サンプルは、Leica社の蛍光共焦点顕微鏡を使用して分析した。
【0044】
スカフォールド毎の細胞数の定性的評価に基づいて、クロロホルムに溶解されたPCLで作製され、ガスプラズマ処理されたサンプルが、最も有望な結果を示した。サンプルサイズは、統計的有意性には十分大きくなかったが、DOスカフォールドとは対照的に、小さい繊維より大きい繊維を備えるスカフォールドと同じように、ガスプラズマ処理したスカフォールドでの細胞伸展および細胞増殖の全般的なパターンによって、将来の試験に何らかの方向性がもたらされる。
【0045】
平面状スカフォールドに対するエレクトロスピニングパラメータを調整することによって、各パラメータは得られた繊維に影響を与えるが、溶液の濃度は、排除率または電圧よりも大きな影響を繊維形態に及ぼす。溶液の濃度が増大すると、繊維径も増大する。しかし、12wt%超の濃度によって、繊維の大きさが2つに異なることを示し、回転が生じた際に噴射に発生する電荷反発によって、小さい繊維は大きい繊維から除去した。おそらく濃度依存の最も明確な効果は、溶液がシリンジにあって使用待ち状態にある間に溶媒が蒸発した際に生じた小さい濃度変化とともにほぼ認められ、さらに高濃度に適した繊維を作製した。
【0046】
平面状スカフォールドに関するこれらの予備試験の結果に基づいて、14kVにより0.012mL/分で押し出された濃度12wt%で作製されたスカフォールドと、距離が10cmで12kVにより0.029mL/分で押し出された濃度で作製されたスカフォールドは、最大引張強度で十分な膨張性および孔隙性をもたらすことを想定した。さらに、本発明による試験は、これらの条件を用いて作製されたスカフォールドに細胞が繁殖する実現可能性を裏付けている。このデータから、管状スカフォールドを取り上げるロバスト性試験を設計して実施した。
【0047】
上に記載したように、管状スカフォールドをPCLからエレクトロスピニングして、ガイドラインとして定速伸長(CRE)試験に次いでASTM D−5035「織物の破断荷重及び伸長に関する標準試験法」を用いて、機械的に試験したが、スカフォールドの固有の制限によって、この方法から多少逸脱させることが必要であった。ストリップ法は、不織布織物に対して規格に従って規定しているため使用するが、ドッグボーンの形状を用いる現在報告されているいくつかの方法とは異なる。破断は、引張強度が最大抗張力50%以下になった時点と定義した。Test Works 4(MTS Systems社)にデータを送る889.64N(200lbf)ロードセルを使用して応力を算出した。応力および歪みともに、Test Works 4によって記録された生データから記録し
、グラフ化した。エレクトロスピニングのパラメータをそれぞれ組み合わせた9つのサンプルを評価した(n=9)。しかし、場合によっては、試験時の検査サンプルと鉗子との間にずれがあり、これらは分析に含まなかった。
【0048】
1.0cm3のチャンバとヘリウムガスとを備える比重計(AccuPyc 1340、Micromeritics社)を使用し、各管状スカフォールドの真体積を定量し、サンプル毎に10個の測定値を得た。Bioquant(登録商標)ソフトウエアを使用し、40倍率の倒立顕微鏡で呼び容積を測定した。基準寸法に関しては、2つのガラススライド間でサンプルを挟持し、面積測定を行った。次に、サンプルを立てて、厚さの測定値を10個求めて平均した。面積を平均厚さで乗算し、平均呼び容積を求めた。呼び容積および真体積を使用してサンプルの孔隙率を求めた。各パラメータセット(n=6)からの6つのサンプルを測定して平均し、各パラメータセットの平均孔隙率を求めた。走査電子顕微鏡(SEM)を使用し、さまざまなパラメータに関して写真を取得し、各サンプルの内側および外側の形態全体に関して評価した。
【0049】
分解試験に関しては、大動脈瘤の用途に実行可能であるとみなされるスカフォールドから高孔隙性、中孔隙性および低孔隙性のスカフォールドを分析用に選択した。EVAR技術で使用される大動脈スカフォールドは、カテーテルを使用して大腿動脈に導入される。一般に、カテーテルは、小さい方が動脈への損傷を減らすため好ましい。カテーテル22Fを使用する場合、スカフォールド周囲は、大動脈に配置される際に5〜6回拡張する必要がある。配置にこのようなきわめて高い歪み性が要求されるため、平均歪み値が550%未満のスカフォールドは分解試験に不適切であるとみなした。高孔隙性とみなすスカフォールドは、孔隙率が85.4±1.8%(12wt%溶液、0.012mL/分、10kV印加)であり、中孔隙性のスカフォールドは、孔隙率が80.9±1.5%(14wt%溶液、0.029mL/分、10kV印加)であり、低孔隙性のスカフォールドは、孔隙率が76.8±5.6%(12wt%溶液、0.029mL/分、10kv印加)である。
【0050】
計72個のスカフォールドをこれら3つのパラメータセットから作製し(セット毎に24個のスカフォールド)、微量天秤で計量し、50RPMで振盪しながら37℃で水浴中の2.0mLリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)に浸漬した。1時間、30、60および90日後に、各パラメータセットに対応するスカフォールド(n=6)を取り除いて脱イオン水で3回すすいだ。次に、48時間真空下の室温でスカフォールドを乾燥させて再度計量し、上に記載したように機械的試験を実施した。結果を対照サンプルとして役割を果たした1時間後のものと比較し、機械的データの傾向と、重量損失の変化とを求めた。各時点からのサンプルを可能な限り素早く評価し、試験をしない間は真空下で乾燥剤とともに保存し、光から保護した。
【0051】
一方向ANOVA(a=0.05)を使用してパラメータセットを比較し、応力、歪み、孔隙性および分解性に有意的な効果を与えるパラメータを求めた。Z検定(α=0.05)およびボックスプロットを用いてサンプルデータ母集団の外れ値を求めた。
【0052】
定速伸長試験からの最大抗張力の結果を
図2A〜2Cに示す。実験計画は3つの別々の押出速度を使用するように要求したが、0.047mL/分で生成したサンプルすべてがマンドレルに達すると湿っていた。これにより、繊維構造が妨げられ、機械的試験ができず、組織スカフォールドとしての使用に適していない硬くてねじれたサンプルを得た。したがって、0.047mL/分で回転したサンプルを試験から除外した。0.029mL/分で回転したいくつかのサンプルは、不均一な収集を示し、マンドレルに単一のディスクを極端に形成したこともあった。不均一であるものの、これらのスカフォールドは十分形成された繊維を含み、試験することができた。これは製造パラメータセットに固有と思
われる反復傾向であり、これらのサンプルは試験に残した。0.012mL/分の速度は、巨視的規模の均一性に問題を示すように考えなかった。最大抗張力(UTS)は、12kVを印加して0.029mL/分で回転させた14wt%溶液に関して1.893+0.458MPaであった。試験したこの構成の9つのサンプルの5つは、鉗子から滑り出したため、測定できなかった。押出速度に基づいてUTSを比較すると、溶液濃度または印加電圧にかかわらず、サンプルすべてが低速回転と高速回転との間で有意差を示した。UTSを濃度に基づいて比較すると、12kVを印加した場合に0.029mL/分で12wt%と14wt%との間に唯一の有意差が生じた。同じように印加電圧に基づいてUTSを比較すると、0.012mL/分で10wt%の濃度を使用する間に10kVまたは12kVを印加することによって唯一の有意差が生じた。
【0053】
小血管に挿入して大血管に拡張するデバイスの実用的要求は、破損前に達成できる歪みを含む。
図3A〜3Cは、定速伸長試験から破損歪みの平均記録値を示す。最大平均破損歪みは、10kVを印加して0.029mL/分で押し出した12wt%溶液を使用して作製したサンプルに対して951.87±272.90%を記録した。歪みに対する印加電圧の効果を比較すると、14kVによる歪みは、0.029mL/分で押し出した10wt%および12wt%の溶液に印加した10kVまたは12kVによる歪みより小さい。しかし、押出速度が0.012mL/分の場合、10wt%溶液によって唯一の有意差が生じ、12kVを印加したサンプルは、10kVを印加したものより破断歪みが大きいことを示す。破断歪みに対する濃度の効果を評価すると、14kVを印加し、0.029mL/分で溶液を押し出す場合、10wt%と14wt%との間および12wt%と14wt%との間に唯一の有意差が生じる。応力に効果を与える押出速度とは異なり、歪みへの効果が最小であることは興味深い。10wt%溶液が10kVまたは12kVで印加される場合、0.012mL/分と0.029mL/分との間に唯一の有意差が生じる。
【0054】
機械的要求のほかに、スカフォールドは、細胞に有利となるように設計される。これは細胞接着、細胞移動および細胞増殖に対して十分な孔隙性を含む。エレクトロスピニングによるスカフォールドの優れた特性の1つは、細胞外マトリックスに類似する繊維およびその孔隙性である。
図4に示すように、大抵の場合、各サンプル群の平均孔隙率は、依然としてきわめて類似し、標準偏差が小さい。押出速度は、印加した電圧いずれでも10wt%で作製したサンプルとして孔隙性に最大の効果を与え、10kVを印加した12wt%で作製したサンプルと、10kVまたは12kVを印加した14wt%で作製したサンプルは、速度が0.012mL/分から0.029mL/分に増大した際に孔隙性が大幅に減少を示したことを示した。孔隙性に対する溶液濃度の効果を比較すると、12kVを印加し、0.012mL/分で回転させた10wt%溶液は、同じ設定で回転させた12wt%および14wt%溶液よりかなり大きかった。押出速度が0.029mL/分であり、14kVを印加した場合、12wt%溶液で作製したスカフォールドは、14wt%溶液で作製したものより孔隙性が高く、10wt%溶液のスカフォールドより孔隙性がかなり高かった。しかし、印加電圧を比較すると、スカフォールド孔隙性の間に有意差がなかった。
【0055】
図5に示すように、SEM写真は、サンプルの内部から外部の中程度の形態変化を示している。凹面の繊維は曲線構造を示すものがある一方、凸面の繊維は直線状に見える。これは全サンプルの場合ではないが、12wt%の濃度では凹面と凸面との間で直線性に差があったが、10wt%の濃度では直線性の差が最小であった。
【0056】
生溶解性ポリマーとして、PCLが分解されると予測される。しかし、スカフォールドは、生活組織が形成されるまで完全性を維持することが重要である。高孔隙性のスカフォールドは、増大した表面積のため、低孔隙性のスカフォールドの前に完全性を失うことがあることを予測しうる。
【0057】
90日後のさまざまな孔隙性のスカフォールドを比較すると、スカフォールドのある時点からの極限引張応力から初期強度の間には有意差がなかった。引っ張り応力の経時結果を
図6Aに示し、この試験の他の領域で得られた値に匹敵している。
【0058】
UTSの結果と同じように、いずれのスカフォールドに対しても90日後の破断歪みに有意差がなかった。
図6Bはこれらの結果のグラフを示している。
【0059】
90日後の重量損失は、
図6Cに示すように全サンプルに対して認められたが、初期損失後のプラトー部分に見られ、わずかである。
【0060】
この試験で最も決定的な効果は、押出速度と最大抗張力との間の関係であった。従来の引き抜き加工のように、ポリマーが押し出される際に引き抜かれると、個々のポリマーユニットは、強度がさらに大きくなるように配置されるため、押出速度は最大抗張力に大きな影響を及ぼしうる。しかし、電圧成分がエレクトロスピニングにかかわるため、機械的刺激の代わりに引き抜くための機構を備える。マンドレル上にリングを形成することによって明らかなように、押出速度がさらに高くなると、残留電荷蓄積をもたらすと考えられる。この残留電荷は、ポリマーユニットの配置構造の増大に関連していると考えられることから、最大抗張力が増大した。
【0061】
記載したように、押出速度を増大させて作製したスカフォールドは、マンドレルの狭い部分に厚いスカフォールドを形成する可能性が高く、リングの形成に至ることもあり、押出速度が低くなると、マンドレルに沿ってさらに一様に広がるスカフォールドを形成する傾向がある。確認されたリング現象は、ポリアニリン、導電性のポリマーに示される拡張徴候に関連すると考えられ、電子の自由移動を可能にする。絶縁性ポリマーのように平坦なマットに集まるポリアニリンの代わりに、ナノファイバーの網状の織物には、印加電場の方向に拡張する傾向がある。この拡張は、電子再分布の時間が短い場合、好ましい方向に向けられるか、あるいは曲がっているファイバーの網状の織物の部分で電荷蓄積を引き起こすものと説明される。
【0062】
均一に集電することは、スカフォールドの安定性および易製造性のために好ましいが、スカフォールドの膨張性に不利となりうる。低押出速度でさらに安定して製造したスカフォールドは、最大抗張力が低いことを示し、高速で作製されたものより低い歪み値で破断する。しかし、押出速度を増大して作製されたスカフォールドは、概して孔隙率が低いことを示した。これは、AAAスカフォールドのさらに良好な細胞移動および細胞増殖に対して機械的特性と好ましい孔隙性とのバランスをとる重要な妥協点を決定する。
【0063】
同じスカフォールドの曲線状の繊維を有する凹面と、直線状の繊維を有する凸面は、スカフォールド全体の機械的特性に寄与する。また、発明者らは、一部のスカフォールドが歪みを増大させる有意なネッキングを示すことを認めた。これらのスカフォールドを用いると、一般に、楕円の隙間の導入または層間剥離によってスカフォールドは破壊され、一部の繊維が、他の繊維が残りの繊維に引っ張り力を伝達する前に破壊していることを示唆する。一方では、いくつかのサンプルは、ネッキングがほとんどなく、突然破壊する。低押出速度で作製したサンプルは、突然破壊する可能性が高く、パラメータセットからのサンプルの約半分で発生した。これは、これらのサンプル群の偏差が増大したことを歪みによって説明することが可能である。しかし、偏差の大きいサンプルセットは応力偏差が大きくないことを示し、何らかの繊維再構成が生じて膨張およびネッキングを可能にするが、繊維自体には破壊閾値があることを示唆することが認められた。これは、スカフォールド全体の繊維構成および絡み合いの勾配に関連しうる。
【0064】
これらの特性を孔隙性の全体的な傾向と比較すると、低孔隙性のスカフォールドは、さらに均一の凹面およびで凸面に対応する傾向があった。
【0065】
最新の試験結果に基づいて、エレクトロスピニングによるスカフォールドは、製造パラメータのみならず、形態学的特徴全般によって分類することができる。たとえば、機械的特性に対する製造パラメータの最も顕著な効果は、最大抗張力における押出速度のものである。しかし、破断歪みに影響を及ぼす同じように顕著なパラメータは存在しないが、有意な効果を与えるパラメータのいくつかの組み合わせが存在する。最終的には、スカフォールドの絡み合いと他の形態学的特徴は、引っ張り力がどのように分散されるかを決定し、個々のスカフォールドの破断歪みに影響を与える。
【0066】
押出速度、印加電圧および溶液濃度の製造処理パラメータは、エレクトロスピニングによるPCLスカフォールドの機械的特性および形態にかなり影響を及ぼすことから、動脈瘤を修復するスカフォールドとしての有効性に影響を与える。しかし、パラメータには、スカフォールドの分解速度と対応する機械的特性とに対する経時的効果はそれほどない。押出速度は、極限引張応力および孔隙性に最大効果を与える一方、破断歪みを増大させる役割は小さくなる。一般に、破断歪みはスカフォールドの印加電圧および形態にさらに大きく依存すると考えられている。
【0067】
スカフォールドで細胞増殖を評価するために他の試験を実施した。管状スカフォールドを静的培養および動的培養に配置し、ヒト大動脈内皮細胞(Cascade Biologics社)またはヒト大動脈平滑筋細胞(Lonza社)をスカフォールドに配置し、それぞれの増殖をin vitroで観察した。
図7は、動的流れ下で培養した場合にヒト大動脈内皮細胞がスカフォールドに拡散していることを示す。内皮細胞を用いた試験は、予備的なものであるものの、この拡散は、内皮細胞が動的流れ下でスカフォールドに接着し、増殖することを示唆している。別の試験では、エチレンオキサイドガス(EtO)(n=3)または酸素ガスプラズマ(GP)の(n=3)で管状スカフォールドを殺菌して個々のウエルプレートに配置し、平滑筋細胞をスカフォールドに落下播種した。細胞は、1日おきに培地を変えて14日間増殖させた。AlamarBlue(登録商標)(Invitrogen社)を用いた代謝試験を用い、
図8に示すように0、3、5、7および14日目に細胞数を推定した。細胞数の増加は、スカフォールドが細胞成長および細胞増殖に有用であることを示す。次に、管状スカフォールドを生物反応器に配置し、1日おきに培地を変えて5日間動的流れに曝した。スカフォールドをNO(n=3)またはGP(n=3)で再度殺菌し、ヒト大動脈平滑筋細胞を播種し、AlamarBlueを使用して0、3および5日目に代謝活性を測定した。この試験の結果を
図9に示す。細胞数の増加は、細胞が動的流れ下で増殖できることを示す。これらの結果は好ましいものであるが、スカフォールドを通過する流体中の細胞が接着するかどうかに留意することも重要である。管状スカフォールドをEtO(n=1)またはGP(n=3)で殺菌し、生物反応器に配置して試験を実施した。しかし、スカフォールドに予め播種する代わりに、システムによって散布する培地の懸濁液に細胞を配置した。3日目に、スカフォールドを取り除き、AlamarBlueを使用して細胞数を求めた。結果は、細胞を予め播種しなくてもスカフォールドに接着できたことを示す。
図10は、懸濁試験ならびに細胞を予め播種した静的試験および動的試験の結果を比較している。これは、心血管系などの流れ系に配置されたスカフォールドが、流れの中で細胞を維持できることから、スカフォールドに予め播種する必要性を減らして患者に対してスカフォールドの移植にかかる時間を減らすという重要な表れである。
【0068】
さまざまなスカフォールド形態を比較する試験を実施した。PCLを3つの構成で調製した。第1のAは、先端から集電体の距離が15cmであり、シリンジの注射針に15kVを印加し、0.035mL/分でクロロホルム:メタノールが75:25(たとえば、
ハロゲン化有機溶媒とアルコールとの混合物)のPCL9wt%(たとえば約8〜10wt%)溶液をエレクトロスピニングすることから成る。第2のBは、先端から集電体の距離が10cmであり、シリンジの注射針に12.0kVを印加し、0.029mL/分の押出速度でPCL14wt%(たとえば約13〜15wt%)クロロホルム溶液をエレクトロスピニングすることから成る。第3のCは、発泡スチロール製の箱の内側のガラス片上にPCL12wt%(たとえば約11〜13wt%)クロロホルム溶液をキャスティングすることから成る。クロロホルムが気化した後、構成Bと厚さが一定して同じである約0.5mmのフィルムが残った。構成Aは、さらに薄い約0.3mmスカフォールドを作製した。サンプル「C」は、AおよびBの理論上の三次元構造を二次元構造と比較する対照群としての役割を果たす。上に記載したように、集電体は光沢のある方を上にしたアルミニウム箔片から成り、使用する高電圧源の負端子をアルミニウムスクリーンで覆った。スカフォールドを作製した後、西洋カミソリ刃を使用して5mm×5mmの正方形に切り取った。SEMを用いてスカフォールドを撮像し、平均繊維径を求めた。
図11A〜Bは、エレクトロスピニングによるスカフォールド(ナノファイバー)の2000倍率のSEM写真である。
【0069】
いくつかの実施形態では、スカフォールドは、3分間高RF酸素ガスプラズマに曝露することによって、開放したガラスシンチレーションバイアルで殺菌した。スカフォールドは殺菌するために分類し、1つの群で殺菌が異なる誤りを減らすために双方の細胞種群の全時点で一緒に殺菌した。殺菌後、接着性がきわめて低いウエルプレートの個々のウエルの各細胞種に対して無菌細胞培養培地にサンプルを曝した。
【0070】
ヒト大動脈内皮細胞(EC)およびヒト大動脈平滑筋細胞(SMC)をLifeline cell technologies社から購入した。SMC提供者は、49歳のアフリカ系アメリカ人男性の非喫煙者であり、高血圧症および心疾患に罹患し、脳内出血で死亡した。EC提供者は、61歳の白人男性の非喫煙者であり、高血圧症および心疾患に罹患し、脳内出血で死亡した。SMCは、Invitrogen社の基本培地、M231で平滑筋細胞成長サプリメントとともに培養し、ECは、Lifeline社の基本培地で内皮増殖サプリメントとともに培養した。双方の細胞種をP5によって成長させた。細胞をトリプシン処理して遠心分離し、再懸濁し、血球計を使用して計数した。SMCは、4×104個の細胞/スカフォールドの濃度でSMC培地によってウエルに導入した。ECは、4×104個の細胞/スカフォールドの濃度でEC培地によってウエルに導入した。また、標準曲線サンプルは、さまざまな体積の各細胞種を通常のウエルプレートに播種することによって得た。各時点に対して3つのスカフォールドに播種し、標準曲線サンプルに対して3つの複製に播種した。細胞は、初期分析の2.5時間前に接着させた。代謝データに関しては、試験を4回実施し、増殖データに関しては試験を2回実施し、顕微鏡検査に関しては試験を2回実施した。各試験に対してn=3を用いた。
【0071】
代謝活性を測定するために、培地をスカフォールドから取り除き、培地に10%のalamarBlue(AB)溶液を各ウエルに添加し、標準曲線サンプルを含めた。AB溶液は、各細胞種それぞれの培地を使用した。スカフォールドを2.5時間ABで温置してからABを不透明黒色の96ウエルに100μLで分注し、EX:530 EM:590の蛍光プレートリーダーで読み取った。ウエルからAB溶液を取り除いた後、PBSでスカフォールドをすすぎ、その後プレートですすいだ時点を0日とし、スカフォールドは、パラフィルムで包装して−80℃で冷凍庫に配置した。残りのスカフォールドでは培地を変え、プレートは定温器に戻した。このABの処理は、1、3、7、10日目に繰り返した。
図12A〜Bは、さまざまなファイバー形態のスカフォールドに対するhAoECおよびhAoSMCの代謝活性の変化に関するグラフを示す(各サンプルに対して0日値に正規化される)。
【0072】
全時点終了して冷凍した後、dsDNA定量化試験は、Picogreen(PG)を使用して実施した。−80℃からスカフォールドを取り出し、RTで30分間解凍させた。プロテイナーゼKをEC培地で1mg/mlに希釈し、各サンプルと標準曲線サンプルに100μL添加した。プレートを定温器で配置し、30分間で42℃に上昇させた。プレートを取り除いて、強度3で2分間プレートシェーカーに配置した。次に、プレートを−80℃に戻し、一晩静置させた。翌朝、−80℃からプレートを取り出し、室温で30分間解凍させた。強度3で2分間プレートシェーカーに再度配置し、さらに30分間−80℃で3回目の冷凍を行い、室温で30分間解凍した。TE緩衝液500μLをプレート1のサンプルすべてに添加した。次に、それぞれ5つの複製100μLをDNAseおよびRNAse含まない96ウエルプレートに取り除いた。プレート2および3は−20℃の冷凍庫に配置した。PG試験溶液を混合してTE緩衝液21ml中にPG100μLを含めた。1ウエル当りの全容積が200μLとなるように、PG溶液100μLをウエルプレートに添加した。プレートは、暗所で数分温置させ、EX:485 EM:528で蛍光プレートリーダーによって読み取った。同じ方法をプレート2および3に対して実施した。
図13A〜Bは、ナノファイバー(A)、マイクロファイバー(B)またはフィルム(C)から成るスカフォールドのhAoECおよびhAoSMCの細胞増殖の経時変化グラフを示す。dsDNA含量を測定するPicogreenを使用し、n=6で求めた。
【0073】
細胞の導入前と各時点とにおいて、走査電子顕微鏡を使用して繊維状のスカフォールドを撮像した。細胞が存在した場合、サンプルは、パラホルムアルデヒド4%に固定し、エタノール勾配を使用して脱水し、室温で真空オーブンに配置した。
【0074】
各時点のサンプルをパラホルムアルデヒド4%に固定し、α−アクチン結合FITCまたは蛍光色素分子およびDAPIと共に抗CD−31で染色し、核を染色した。サンプルをSlowfade(登録商標)で標本にし、蛍光共焦点顕微鏡を使用し、それぞれの波長を利用して観察した。
図14A〜Dは、1、3、7、10日目のヒト大動脈内皮細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真を示す。
図15A〜Dは、1、3、7、10日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーのSEM写真を示す。
【0075】
一方向ANOVAを用いて細胞数および代謝活性の有意な増大を定量した。テューキー検定を事後実施した。z検定を用いて外れ値を求めた。
【0076】
図16A〜Lは、1,3,7および10日目のヒト大動脈平滑筋細胞が接着したエレクトロスピニングによるマイクロファイバーの画像である(
図16A〜DはスカフォールドAのSMCを示し、
図16E〜HはスカフォールドBのSMCを示し、
図16I〜LはスカフォールドCのSMCを示し、各セットはそれぞれ1、3、7および10日目を示す)。スカフォールドは、かなり異なるように示しているが、同じような方法を用いて同じ材料から製造している。スカフォールド「A」は、0.245±0.158μmと測定され、スカフォールド「B」は、6.744±0.265μmである。代謝データおよび増殖データに基づいて、内皮細胞は、同じ材料で作製されたフィルムまたはナノファイバー製のスカフォールドよりマイクロファイバーに良好に応答すると判断することができる。更に具体的には、ナノファイバーに関しては、内皮細胞は代謝が増大したものの増殖は増大しなかったことを示し、細胞に障害を与える可能性があることを示唆することに留意する必要がある。同じような傾向がフィルム対照群で認められるが、マイクロファイバーによるスカフォールドでは見られない。マイクロファイバーによるスカフォールドの視覚映像を用いた代謝と増殖とのコントラストによって、細胞は他のサンプルと異なり、スカフォールドを浸潤している。
【0077】
本発明のさまざまな態様の他の変形例および別の実施形態は、本願明細書を考慮すれば当業者には明らかになる。したがって、本願明細書は、単に説明目的として理解され、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示する目的のためにある。本願明細書に示して記載する本発明の形態は、実施形態の実施例としてみなすことが理解される。要素および材料は、本願明細書に例示して記載したものと置き換えてもよく、部品および過程を逆にしてもよく、本発明の特定の特徴を別個に利用してもよく、本発明の本願明細書の利点を享受した後にすべて当業者に明らかとなる。変更は、本願明細書に記載する要素において本願特許請求の範囲に記載するように発明の趣旨および範囲から逸脱することなく実施してよい。