(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1軸の回転を規制する位置と、前記第2軸の回転を規制する位置とに移動することにより、前記第1軸および前記第2軸のいずれか一方の回転を規制する規制部材を備えることを特徴とする請求項3に記載のヒンジ装置。
前記固定体は、前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられ、前記第1回転体および前記第2回転体のそれぞれと摺動可能に当接する固定板であることを特徴とする請求項9に記載のヒンジ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような電子機器では、例えばディスプレイ筐体の安定した開閉操作性を確保し、さらにディスプレイ筐体を所望の角度位置で安定して保持するために、ヒンジ装置によって十分な回転トルクを発生させる必要がある。そこで、従来の電子機器におけるヒンジ装置では、例えばディスプレイ筐体や本体筐体に固定された回転軸と同軸に回転体を設け、この回転体との間で摩擦力を発生する固定体をヒンジブロック側に設けたトルク発生機構が採用されている。
【0006】
ところで、電子機器の分野では筐体の薄型化が急速に進んでいるため、2つの筐体間を連結するヒンジ装置についても、筐体の厚み方向に沿った寸法を縮小することが求められている。しかしながら、トルク発生機構で所望の回転トルクを発生させるためには、回転体と固定体との間である程度の接触面積を確保しておく必要があり、その小型化には限界がある。すなわち、トルク発生機構が障害となってヒンジ装置全体の小型化が難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、所望の回転トルクを発生可能でありながら装置構成を小型化することができるヒンジ装置および当該ヒンジ装置を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るヒンジ装置は、2つの筐体間を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、一方の筐体に固定される第1軸と、前記第1軸の回転に伴って回転することにより、前記第1軸に回転トルクを発生させる第1トルク発生機構と、他方の筐体に固定される第2軸と、前記第2軸の回転に伴って回転することにより、前記第2軸に回転トルクを発生させる第2トルク発生機構と、を備え、前記第1トルク発生機構の回転軸と前記第2トルク発生機構の回転軸とは、同軸であることを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るヒンジ装置は、2つの筐体間を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、一方の筐体に固定される第1軸と、前記第1軸の回転に伴って回転することにより、前記第1軸に回転トルクを発生させる第1トルク発生機構と、他方の筐体に固定される第2軸と、前記第2軸の回転に伴って回転することにより、前記第2軸に回転トルクを発生させる第2トルク発生機構と、を備え、前記第1軸の回転軸と前記第1トルク発生機構の回転軸とは、直交しており、前記第2軸の回転軸と前記第2トルク発生機構の回転軸とは、直交していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るヒンジ装置は、上記発明において、前記第1トルク発生機構は、前記第1軸の回転に伴って回転する第1回転体を備え、前記第2トルク発生機構は、前記第2軸の回転に伴って回転する第2回転体を備え、前記第1回転体と前記第2回転体とは、互いに摺動可能に当接しており、前記第1回転体の回転中は前記第2回転体の回転が停止し、前記第2回転体の回転中は前記第1回転体の回転が停止するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るヒンジ装置は、上記発明において、前記第1軸の回転を規制する状態と、前記第2軸の回転を規制する状態とに変化する規制部材を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るヒンジ装置は、上記発明において、前記第1軸の回転を規制する位置と、前記第2軸の回転を規制する位置とに移動することにより、前記第1軸および前記第2軸のいずれか一方の回転を規制する規制部材を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るヒンジ装置は、上記発明において、前記第1トルク発生機構は、前記第1軸の回転に伴って回転する第1回転体を備え、前記第2トルク発生機構は、前記第2軸の回転に伴って回転する第2回転体を備え、前記第1回転体と前記第2回転体との間に、前記第1回転体および前記第2回転体のそれぞれと摺動可能に当接する固定板が設けられていることを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るヒンジ装置は、2つの筐体間を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、一方の筐体に固定される第1軸と、前記第1軸の回転に伴って回転することにより、前記第1軸に回転トルクを発生させる第1トルク発生機構と、他方の筐体に固定される第2軸と、前記第2軸の回転に伴って回転することにより、前記第2軸に回転トルクを発生させる第2トルク発生機構と、を備え、前記第1トルク発生機構は、前記第1軸の回転に伴って回転する第1回転体を備え、前記第2トルク発生機構は、前記第2軸の回転に伴って回転する第2回転体を備え、前記第1回転体と前記第2回転体とは、互いに摺動可能に当接しており、前記第1回転体の回転中は前記第2回転体の回転が停止し、前記第2回転体の回転中は前記第1回転体の回転が停止するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るヒンジ装置は、上記発明において、前記一方の筐体が前記他方の筐体に対して所定角度まで開かれる場合、前記第1回転体が回転するとともに、前記第2回転体の回転が停止し、前記一方の筐体が前記他方の筐体に対して所定角度を超えて開かれる場合、前記第2回転体が回転するとともに、前記第1回転体の回転が停止することを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るヒンジ装置は、2つの筐体間を開閉可能に連結するヒンジ装置であって、一方の筐体に固定される第1軸と、第1回転体と固定体を備え、前記第1軸の回転に伴って第1回転体を固定体に対して摺動させることにより、前記第1軸に回転トルクを発生させる第1トルク発生機構と、他方の筐体に固定される第2軸と、第2回転体と固定体を備え、前記第2軸の回転に伴って第2回転体を固定体に対して摺動させることにより、前記第2軸に回転トルクを発生させる第2トルク発生機構と、を備え、前記第1トルク発生機構および前記第2トルク発生機構は、前記固定体を共有していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るヒンジ装置は、上記発明において、前記固定体は、前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられ、前記第1回転体および前記第2回転体のそれぞれと摺動可能に当接する固定板であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るヒンジ装置は、上記発明において、前記第1回転体は、前記第2回転体の回転に伴って回転し、前記第2回転体は、前記第1回転体の回転に伴って回転することを特徴とする。
【0019】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、上記したヒンジ装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るヒンジ装置および電子機器によれば、第1トルク発生機構の回転軸と第2トルク発生機構の回転軸とを同軸に構成することにより、ヒンジ装置の小型化とこれを適用する電子機器の薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るヒンジ装置および当該ヒンジ装置を備える電子機器の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
まず、本発明の各実施形態に係るヒンジ装置を適用可能な電子機器の構成について、
図1を参照しながら説明する。電子機器1は、本体筐体10と、ディスプレイ筐体20と、左右のヒンジ装置30と、を備えている。なお、以下では、
図1に示す状態からディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して閉じた状態(0度位置)を基準とし、ディスプレイ筐体20および本体筐体10のヒンジ装置30側の端部を後端(後方)、その反対側の端部を前端(前方)、厚み方向を上下方向、幅方向を左右方向と呼んで説明を行う。
【0024】
電子機器1は、2軸構造のヒンジ装置30を備えることにより、ディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して90度前後の角度位置に回動させた状態ではノート型PCとして好適に使用でき(
図1参照)、ディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して360度位置まで回動させて反転させた状態ではタブレット型PCとして好適に使用できる、いわゆるコンバーチブル型PCである。ただし、本発明は、上記のようなコンバーチブル型PC以外にも、例えばディスプレイ筐体20が180度位置程度までしか回動しない一般的なノート型PC、携帯電話、スマートフォンまたは電子手帳等、ヒンジ装置によって2つの筐体が開閉可能に連結された構成の電子機器であれば好適に適用できる。
【0025】
本体筐体10は、
図1に示すように、平板状かつ箱状に形成されている。本体筐体10は、その後端部に設けられたヒンジ装置30によってディスプレイ筐体20と連結されている。本体筐体10の上面10aにはキーボード装置11等の入力手段が設けられ、本体筐体10の内部には図示しない基板、演算装置およびメモリ等の各種電子部品が設けられている。キーボード装置11は、例えば本体筐体10の上面10aに設けられた図示しないタッチパネル式のディスプレイに表示される方式で構成されてもよい。
【0026】
ディスプレイ筐体20は、
図1に示すように、本体筐体10よりも薄い平板状に形成されている。ディスプレイ筐体20は、その後端部に設けられたヒンジ装置30によって本体筐体10と連結されているとともに、ヒンジ装置30を通過したケーブル44(
図2および
図4参照)によって本体筐体10と電気的に接続されている。ディスプレイ筐体20の内面20aにはディスプレイ装置21等の表示装置が設けられている。ディスプレイ装置21は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置によって構成されている。
【0027】
ヒンジ装置30は、本体筐体10とディスプレイ筐体20からなる2つの筐体間を開閉可能に連結するものであり、
図1に示すように、左右一対で構成されている。ヒンジ装置30は、2軸構造により、ディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して、0度位置から360度位置まで回動させる。
【0028】
[ヒンジ装置(第1実施形態)の構成]
以下、本発明の第1実施形態に係るヒンジ装置30の構成について、
図2および
図3を参照しながら説明する。なお、
図2は、ディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して閉じて0度位置とした状態でヒンジ装置30を正面側から見た断面図であり、
図3は、
図2のヒンジ装置30をX−X方向で切断した状態を示す断面図である。
【0029】
ヒンジ装置30は、
図2に示すように、第1軸31と、第2軸32と、ヒンジブロック33と、支持部材34,35,36と、第1円板37と、第2円板38と、フロートピン39と、軸部材40と、第1トルク発生機構41と、第2トルク発生機構42と、を備えている。
【0030】
第1軸31は、左右方向に延びた棒状の部材であり、
図2に示すように、一端側(左側)がディスプレイ筐体20(図示省略)に対して回転不能に連結されており、他端側(右側)がヒンジブロック33内に回転可能に挿入されている。第1軸31の一端側は、ヒンジブロック33から一側面側から突出しており、ディスプレイ筐体20(図示省略)に挿入固定されることにより、ディスプレイ筐体20の回動に伴って、当該ディスプレイ筐体20と一体的に回転する。また、第1軸31の他端側は、リング状の支持部材34と、ヒンジブロック33内に設けられた支持部材35,36とによって回転可能に保持されている。また、第1軸31の他端には、後記する従動歯車412と噛み合う駆動歯車311が外嵌固定されている。なお、駆動歯車311は、かさ歯車で構成されている。
【0031】
第2軸32は、左右方向に延びた棒状の部材であり、
図2に示すように、一端側(左側)が本体筐体10(図示省略)に対して回転不能に連結されており、他端側(右側)がヒンジブロック33内に回転可能に挿入されている。第2軸32の一端側は、ヒンジブロック33から一側面側から突出しており、本体筐体10(図示省略)に挿入固定されることにより、本体筐体10の回動に伴って、当該本体筐体10と一体的に回転する。また、第2軸32の他端側は、リング状の支持部材34と、ヒンジブロック33内に設けられた支持部材35,36とによって回転可能に保持されている。また、第2軸32の他端には、後記する従動歯車422と噛み合う駆動歯車321が外嵌固定されている。なお、駆動歯車321は、かさ歯車で構成されている。
【0032】
ヒンジブロック33は、箱状に形成されており、内部に設けられた支持部材35,36によって、第1軸31および第2軸32を回転可能に保持している。また、ヒンジブロック33は、本体筐体10およびディスプレイ筐体20の後端部に設けられた切欠部10b,20b間に亘って配置される。
【0033】
支持部材34は、リング状に形成され、第1軸31および第2軸32に外嵌されることにより、第1軸31および第2軸32の軸ブレを抑制している。支持部材35は、板状に形成され、ヒンジブロック33の厚み方向に設けられている。支持部材36は、断面コの字状に形成され、軸支持部361によって軸部材40を回転可能に支持している。
【0034】
第1円板37は、支持部材35と支持部材36との間において、第1軸31に外嵌固定されている。また、第2円板38は、支持部材35と支持部材36との間において、第2軸32に外嵌固定されている。そして、フロートピン39は、第1円板37と第2円板38とに挟まれる位置に配置されており、第1円板37と第2円板38との間を往復移動可能、かつ回転可能に支持されている。
【0035】
フロートピン39は、ディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度位置に応じて、
図3に示すように、第1円板37の外周面に形成された溝部371、または第2円板38の外周面に形成された溝部381に選択的に嵌合するように構成されている。すなわち、フロートピン39は、溝部371の位置と溝部381の位置との間を移動することにより、第1軸31の回転を規制する状態と、第2軸32の回転を規制する状態とに変化する規制部材として機能する。これにより、フロートピン39が嵌合している円板の軸(第1軸31または第2軸32)の回転が規制され、第1軸31および第2軸32は、ディスプレイ筐体20の開き角度位置に応じていずれかが選択的に回転可能となる。
【0036】
フロートピン39は、例えばディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度位置が0度位置から180度位置までの間である場合、第2軸32側の溝部381に嵌合する。従って、この場合は第2軸32の回転が規制され、第1軸31のみが回転可能となる。
【0037】
一方、フロートピン39は、例えばディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度位置が180度位置から360度位置までの間である場合、第1軸31側の溝部371に嵌合する。従って、この場合は第1軸31の回転が規制され、第2軸32のみが回転可能となる。
【0038】
ここで、例えばディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度を0度から180度にする場合、ヒンジ装置30を中心としてディスプレイ筐体20を反時計回りに回動させる。これにより、
図3の符号Aに示すように、ディスプレイ筐体20の回動に伴って第1軸31および第1円板37が回転し、溝部371の位置も反時計回りに変化する。そして、ディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度が180度になると、溝部371が
図3の符号Bで示した位置に移動し、当該溝部371にフロートピン39が嵌合する。
【0039】
一方、ディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度を180度から360度にする場合、ヒンジ装置30を中心として本体筐体10を時計回りに回動させる。これにより、
図3の符号Cに示すように、本体筐体10の回動に伴って第2軸32および第2円板38が回転し、溝部381の位置も時計回りに変化する。そして、ディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度が360度になると、溝部381が
図3の符号Dで示した位置に移動する。このように、本実施形態に係るヒンジ装置30は、ディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度を2段階で調整することができる、いわゆる「2ステップヒンジ」である。
【0040】
軸部材40は、
図2に示すように、第1回転体411、従動歯車412、第2回転体421および従動歯車422を軸支しており、これらを回転可能に保持している。なお、軸部材40は、第1回転体411および第2回転体421と固定されていない。
【0041】
第1トルク発生機構41は、第1軸31の回転に伴って回転することにより、当該第1軸31に回転トルクを発生させるものである。第1トルク発生機構41は、
図2に示すように、第2回転体421と摺動可能に当接する第1回転体411と、かさ歯車からなる従動歯車412と、を備えている。
【0042】
第1回転体411には、駆動歯車311および従動歯車412を介して第1軸31の回転が伝達される。これにより、第1回転体411は、第1軸31の回転に伴って軸部材40の軸周りに回転し、第2回転体421との摺動面43に所定の摩擦力を発生させる。そして、この摩擦力が従動歯車412および駆動歯車311を介して第1軸31に伝達されることにより、当該第1軸31に回転トルクが付与される。
【0043】
なお、第1回転体411は、前記したフロートピン39による回転軸選択機能によって、第2回転体421の回転が停止している場合にのみ回転可能であり、第2回転体421の回転中は回転が停止するように構成されている。すなわち、第1回転体411は、ディスプレイ筐体20が本体筐体10に対して所定角度(180度)を超えた範囲まで開かれ、第2回転体421が回転している場合は、回転不可能な固定体として機能する。第1回転体411は、例えばスプリングワッシャを2枚以上重ねたものや、摩擦板等で構成されている。
【0044】
第2トルク発生機構42は、第2軸32の回転に伴って回転することにより、当該第2軸32に回転トルクを発生させるものである。第2トルク発生機構42は、
図2に示すように、第1回転体411と摺動可能に当接する第2回転体421と、かさ歯車からなる従動歯車422と、を備えている。
【0045】
第2回転体421には、駆動歯車321および従動歯車422を介して第2軸32の回転が伝達される。これにより、第2回転体421は、第2軸32の回転に伴って軸部材40の軸周りに回転し、第1回転体411との摺動面43に所定の摩擦力を発生させる。そして、この摩擦力が従動歯車422および駆動歯車321を介して第2軸32に伝達されることにより、当該第2軸32に回転トルクが付与される。
【0046】
なお、第2回転体421は、前記したフロートピン39による回転軸選択機能によって、第1回転体411の回転が停止している場合のみ回転可能であり、第1回転体411の回転中は回転が停止するように構成されている。すなわち、第2回転体421は、ディスプレイ筐体20が本体筐体10に対して所定角度(180度)までの範囲内で開かれ、第1回転体411が回転している場合は、回転不可能な固定体として機能する。第2回転体421は、例えばスプリングワッシャを2枚以上重ねたものや、摩擦板等で構成されている。
【0047】
ここで、ヒンジ装置30では、
図2に示すように、第1トルク発生機構41の回転軸と第2トルク発生機構42の回転軸とが同軸に構成されている。すなわち、第1回転体411および第2回転体421はともに軸部材40を回転軸としており、いわば回転軸を共有する関係となっている。これにより、ヒンジ装置30は、従来はトルク発生機構ごとに設けていた回転軸を一つにまとめることができるため、部品点数を削減し、小型化を図ることができるとともに、当該ヒンジ装置30を適用する電子機器1の薄型化を図ることができる。
【0048】
また、ヒンジ装置30では、かさ歯車で構成された駆動歯車311,321、従動歯車412,422によって回転の伝達を行うことにより、2つの軸の回転軸の方向と2つのトルク発生機構の回転軸の方向とを直角に変換している。すなわち、ヒンジ装置30では、
図2に示すように、第1軸31の回転軸が第1トルク発生機構41の回転軸(軸部材40)と直交し、第2軸32の回転軸が第2トルク発生機構42の回転軸(軸部材40)と直交するような関係となっている。これにより、ヒンジ装置30は、例えば第1軸31および第2軸32に付与する回転トルクを増加させたい場合は、第1回転体411および第2回転体421の外径w(
図2参照)を大きくすればよく、ヒンジブロック33の厚みt(同図参照)を増加させる必要がないため、小型化を図ることができる。
【0049】
また、前記したように、第1回転体411は、第2回転体421の回転中は固定体として機能し、第2回転体421は、第1回転体411の回転中は固定体として機能する。これにより、ヒンジ装置30は、従来はトルク発生機構ごとに設けていた固定体の数を減らすことができるため、部品点数を削減し、小型化を図ることができる。
【0050】
[ヒンジ装置(第1実施形態)の動作]
以下、ヒンジ装置30を備える電子機器1の動作について説明する。
【0051】
本実施形態に係るヒンジ装置30を備える電子機器1では、ディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して開き操作すると、前記したフロートピン39による回転軸選択機能によって、ディスプレイ筐体20の開き角度位置に応じて第1軸31または第2軸32が適宜回転する。
【0052】
例えば第1軸31が回転すると、その回転が駆動歯車311から従動歯車412に伝達され、第1トルク発生機構41の第1回転体411が回転すると同時に、フロートピン39によって回転が規制されている第2回転体421が第1回転体411に対して摺動するため、第1軸31が所定の回転トルクで回転する。
【0053】
一方、第2軸32が回転すると、その回転が駆動歯車321から従動歯車422に伝達され、第2トルク発生機構42の第2回転体421が回転すると同時に、フロートピン39によって回転が規制されている第1回転体411に対して第2回転体421が摺動するため、第2軸32が所定の回転トルクで回転する。これにより、ディスプレイ筐体20の安定した開閉操作性が確保されるとともに、ディスプレイ筐体20を所望の角度位置で安定して保持することができる。
【0054】
[ヒンジ装置(第2実施形態)の構成]
以下、本発明の第2実施形態に係るヒンジ装置30Aの構成について、
図4および
図5を参照しながら説明する。なお、
図4は、ディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して閉じて0度位置とした状態でヒンジ装置30Aを正面側から見た断面図であり、
図5は、
図4のヒンジ装置30AをY−Y方向で切断した状態を示す断面図である。
【0055】
ヒンジ装置30Aは、前記した第1実施形態に係るヒンジ装置30と比較すると、支持部材36、第1円板37、第2円板38、軸部材40、第1トルク発生機構41および第2トルク発生機構42の代わりに、支持部材36A、第1円板37A、第2円板38A、軸部材40A、第1トルク発生機構41Aおよび第2トルク発生機構42Aを備え、かつフロートピン39を備えていない点が異なる。
【0056】
支持部材36Aは、
図4に示すように、軸支持部361に加えて、固定板362を備えている。固定板362は、第1回転体411と第2回転体421との間に設けられた板状物であり、第1回転体411および第2回転体421のそれぞれと摺動可能に当接している。また、固定板362には、厚み方向に図示しない貫通孔が形成されており、当該貫通孔に軸部材40Aが挿通されている。
【0057】
ここで、前記した第1実施形態に係るヒンジ装置30では、第1回転体411の回転中は第2回転体421が固定体として機能し、第2回転体421の回転中は第1回転体411が固定体として機能していた。一方、本実施形態に係るヒンジ装置30Aでは、固定板362が固体体として機能し、第1回転体411および第2回転体421は回転体としてのみ機能する。従って、
図4に示すように、固定板362の一方の面(上面)が第1回転体411との摺動面43Aとなり、固定板362の他方の面(下面)が第2回転体421との摺動面43Bとなる。
【0058】
軸部材40Aは、前記した軸部材40(
図2参照)と同様に、第1回転体411、従動歯車412、第2回転体421および従動歯車422を軸支している。一方、軸部材40Aは、前記した軸部材40とは異なり、第1回転体411および第2回転体421と固定されている。従って、ヒンジ装置30Aでは、第1回転体411が第2回転体421の回転に伴って回転し、第2回転体421が第1回転体411の回転に伴って回転するように構成されている。
【0059】
第1トルク発生機構41Aは、第1軸31の回転に伴って回転することにより、当該第1軸31に回転トルクを発生させるものである。第1トルク発生機構41Aは、
図4に示すように、固定板362と摺動可能に当接する第1回転体411と、かさ歯車からなる従動歯車412と、を備えている。
【0060】
第1回転体411には、駆動歯車311および従動歯車412を介して第1軸31の回転が伝達される。これにより、第1回転体411は、第1軸31の回転に伴って軸部材40Aの軸周りに回転し、固定板362との摺動面43Aに所定の摩擦力を発生させる。そして、この摩擦力が従動歯車412および駆動歯車311を介して第1軸31に伝達されることにより、当該第1軸31に回転トルクが付与される。
【0061】
第2トルク発生機構42Aは、第2軸32の回転に伴って回転することにより、当該第2軸32に回転トルクを発生させるものである。第2トルク発生機構42Aは、
図4に示すように、固定板362と摺動可能に当接する第2回転体421と、かさ歯車からなる従動歯車422と、を備えている。
【0062】
第2回転体421には、駆動歯車321および従動歯車422を介して第2軸32の回転が伝達される。これにより、第2回転体421は、第2軸32の回転に伴って軸部材40Aの軸周りに回転し、固定板362との摺動面43Bに所定の摩擦力を発生させる。そして、この摩擦力が従動歯車422および駆動歯車321を介して第2軸32に伝達されることにより、当該第2軸32に回転トルクが付与される。
【0063】
ここで、ヒンジ装置30Aは、
図5に示すように、フロートピン39(
図3参照)を備えておらず、第1円板37Aおよび第2円板38Aにそれぞれ溝部371,381(同図参照)が形成されていない。従って、ディスプレイ筐体20の本体筐体10に対する開き角度に応じて第1軸31または第2軸32の回転が規制されることはない。
【0064】
また、ヒンジ装置30Aは、第1回転体411および第2回転体421が軸部材40Aに固定されているため、例えば第1軸31の回転が、駆動歯車311、従動歯車412、従動歯車422および駆動歯車321を介して、第2軸32に伝達される。すなわち、ディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して開くと、
図5の符号Eおよび符号Fに示すように、本体筐体10の回動に伴って第1軸31および第1円板37Aが反時計回りに回転するとともに、それに連動して、第2軸32および第2円板38Aが時計回りに回転する。このように、本実施形態に係るヒンジ装置30Aは、ディスプレイ筐体20の動きと本体筐体10の動きとが連動する、いわゆる「シンクヒンジ」である。
【0065】
[ヒンジ装置(第2実施形態)の動作]
以下、ヒンジ装置30Aを備える電子機器1の動作について説明する。
【0066】
本実施形態に係るヒンジ装置30Aを備える電子機器1では、第1軸31および第2軸32が連動して回転する。例えば、ディスプレイ筐体20を本体筐体10に対して開き操作すると、第1軸31の回転が駆動歯車311から従動歯車412に伝達され、第1トルク発生機構41Aの第1回転体411が回転する。そして、第1回転体411が固定板362に対して摺動し、その回転トルクが第1軸31に伝達されることにより、第1軸31が所定の回転トルクで回転する。
【0067】
また、第1回転体411が回転すると同時に、第2回転体421も連動して回転する。そして、第2回転体421が固定板362に対して摺動し、その回転トルクが第2軸32に伝達されることにより、第2軸32が所定の回転トルクで回転する。これにより、本体筐体10に対するディスプレイ筐体20の開き操作に連動して、本体筐体10側もディスプレイ筐体20から離れる方向に開かれることになる。
【0068】
以上、本発明に係るヒンジ装置および当該ヒンジ装置を備える電子機器について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0069】
例えば
図3では、第1軸31および第2軸32の回転を規制する規制部材として、第1円板37の溝部371または第2円板38の溝部381に選択的に嵌合するフロートピン39を例示したが、規制部材はこれに限定されない。規制部材としては、例えば溝部371と、溝部381との間をシーソー運動あるいはピボット運動で動作することにより、第1軸31の回転を規制する状態と、第2軸32の回転を規制する状態とに変化するピン等を用いても構わない。