特許第6321709号(P6321709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321709
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】表面疵検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   G01N21/952
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-61772(P2016-61772)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-173234(P2017-173234A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2016年3月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502203200
【氏名又は名称】株式会社サンユウ
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌弘
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−212283(JP,A)
【文献】 特開平9−14942(JP,A)
【文献】 特開2011−47681(JP,A)
【文献】 特開2007−225591(JP,A)
【文献】 特開2016−14598(JP,A)
【文献】 特開2013−224833(JP,A)
【文献】 特開2013−160745(JP,A)
【文献】 特開2015−125003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状からなる被検査物を回転手段によって所定位置で所定回数回転させる工程と、
前記回転している被検査物の軸線方向を境界として当該被検査物の明暗が分かれるように、複数の発光素子が均等に配列された照明バーと該照明バーから拡散される拡散光を集光し増幅して、明暗の光が交互に表れる帯状の光を照射するアクリル丸棒とで構成された光照射手段によって当該被検査物に該帯状の光が照射される工程と、
前記光照射手段によって照射された前記帯状の光を受光した被検査物を撮像手段によって撮像する工程と、
前記撮像手段によって撮像された画像に基づく1画素単位の濃度量を画像解析手段によって積算する工程と、
前記画像解析手段によって前記積算された濃度量が予め定められた閾値を超えるか否かに基づき前記被検査物表面の疵の有無を判定手段によって判定する工程と、を含む表面疵検査方法。
【請求項2】
前記光照射手段によって照射される帯状の光は、一方向からのみ照射されてなる請求項1に記載の表面疵検査方法。
【請求項3】
前記光照射手段は、第1光照射手段と、第2光照射手段とで構成され、
前記第1光照射手段によって照射される帯状の光は、一方向からのみ照射され、
前記第2光照射手段によって照射される帯状の光は、前記一方向とは異なる他方向からのみ照射されてなる請求項1に記載の表面疵検査方法。
【請求項4】
前記撮像手段は、ラインスキャンカメラである請求項1〜3の何れか1項に記載の表面疵検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒鋼を含む棒状からなる被検査物の表面疵を検査する表面疵検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒鋼を含む棒状からなる被検査物表面の疵を検査する方法として、一般的に、検査者が目視あるいは触診にて行っている。しかしながら、このような検査方法は、個人差があり検査精度のバラツキが大きく、一定の検査結果が得られないという問題があった。そこで、一定の検査結果が得られるように、漏洩磁束あるいは過流深傷等の非破壊検査方法が知られている。
【0003】
しかしながら、この非破壊検査方法は、機械構造に制約されるため、微小な疵も許されない引抜・ピーリング加工された棒鋼表面の微小な疵を発見することができないという問題があった。そこで、このような微小な疵を発見すべく、被検査物に光を照射し、その被検査物表面からの反射光を撮像カメラにより受光し、その光量を計測することにより被検査物表面の疵の有無を検出するという発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−163176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被検査物表面からの反射光は、直接光(光の伝搬方向に関する相対関係が変化しない光)であるため、光の照射方向や照射立体角、また、観察方向や観察立体角によって、被検査物表面の見た目の明るさが大きく変化し、光量を計測しても疵かどうか判別が難しく、もって、一定の検査結果が得られ難いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、棒状からなる被検査物表面の疵の有無を安定して検出することができる表面疵検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
請求項1の表面疵検査方法によれば、棒状からなる被検査物(K)を回転手段(回転駆動機構3参照)によって所定位置で所定回数回転させる工程(図5図9に示すステップS1,ステップS3、図9に示すステップS11,ステップS13参照)と、
前記回転している被検査物(K)の軸線(O2)方向を境界として当該被検査物(K)の明暗が分かれるように、複数の発光素子(LED)が均等に配列された照明バー(LED照明バー40参照)と該照明バー(LED照明バー40参照)から拡散される拡散光を集光し増幅して、明暗の光が交互に表れる帯状の光(LIC)を照射するアクリル丸棒(41)とで構成された光照射手段(LED照明装置4C参照)によって当該被検査物(K)に該帯状の光(LIC)が照射される工程と、
前記光照射手段(LED照明装置4C参照)によって照射された前記帯状の光(LIC)を受光した被検査物(K)を撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)によって撮像する工程(図5図9に示すステップS2,図9に示すステップS12参照)と、
前記撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)によって撮像された画像に基づく1画素単位の濃度量を画像解析手段(CPU60参照)によって積算する工程(図5図9に示すステップS5参照)と、
前記画像解析手段(CPU60参照)によって前記積算された濃度量が予め定められた閾値を超えるか否かに基づき前記被検査物(K)表面の疵(Ka)の有無を判定手段(CPU60参照)によって判定する工程(図5図9に示すステップS6参照)と、を含むことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載の表面疵検査方法において、前記光照射手段(LED照明装置4C参照)によって照射される帯状の光(LIC)は、一方向からのみ照射されてなることを特徴としている。
【0010】
一方、請求項3の発明によれば、上記請求項1に記載の表面疵検査方法において、前記光照射手段(LED照明装置4C参照)は、第1光照射手段(第1のLED照明装置4A参照)と、第2光照射手段(第2のLED照明装置4B参照)とで構成され、
前記第1光照射手段(第1のLED照明装置4A参照)によって照射される帯状の光(LIC)は、一方向からのみ照射され、
前記第2光照射手段(第2のLED照明装置4B参照)によって照射される帯状の光(LIC)は、前記一方向とは異なる他方向からのみ照射されてなることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4の発明によれば、上記請求項1〜3の何れか1項に記載の表面疵検査方法において、前記撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)は、ラインスキャンカメラ(5)であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1の発明によれば、棒状からなる被検査物(K)が回転手段(回転駆動機構3参照)によって所定位置で所定回数回転し、その回転している棒状からなる被検査物(K)に、その被検査物(K)の軸線(O2)方向を境界として当該被検査物(K)の明暗が分かれるように光照射手段(LED照明装置4C参照)によって当該被検査物(K)に、明暗の光が交互に表れる帯状の光(LIC)が照射されているから、被検査物(K)に疵(Ka)が形成されていた場合、その疵(Ka)が何れその軸線(O2)上の暗領域に位置することとなる。これにより、撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)によって光照射手段(LED照明装置4C参照)より照射された帯状の光(LIC)を受光した被検査物(K)を撮像すれば、疵(Ka)部分が明るく撮像されることとなる。しかるに、その疵(Ka)部分が明るく撮像された画像を画像解析手段(CPU60参照)にて解析し、その解析結果に基づき、前記被検査物(K)表面の疵(Ka)の有無を判定手段(CPU60参照)によって判定するようにすれば、疵(Ka)の有無を正確に判定することができる。
【0014】
よって、本発明によれば、棒状からなる被検査物表面の疵の有無を安定して検出することができる。さらに、本発明によれば、明暗の光が交互に表れる帯状の光(LIC)が被検査物(K)に照射された際、当該被検査物(K)に疵(Ka)が生じていると、局所的な歪みが発生し疵(Ka)部分をより鮮明に撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)にて捉えることができる。すなわち、被検査物(K)に疵(Ka)が生じていると、光(LIC)の正反射角度が変化することから、撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)にてその変化を捉えると、帯状の光(LIC)に局所的な歪みが発生することとなる。それゆえ、疵(Ka)部分をより鮮明に撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)にて捉えることができる。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、光照射手段(LED照明装置4C参照)によって照射される帯状の光(LIC)は、一方向からのみ照射されるようにしているから、散乱光を明確にし、もって、疵の濃淡を明確にすることができる。
【0016】
一方、請求項3の発明によれば、被検査物(K)の疵(Ka)が非常になだらかで浅い疵だったとしても、光照射手段(LED照明装置4C参照)を2つ設け、当該被検査物(K)に異なる方向から帯状の光(LIC)を照射するようにしているから、何れかの帯状の光(LIC)にて疵(Ka)部分が明るく光り、もって、その明るく光った疵(Ka)部分を撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)にて撮像することができる。これにより、被検査物(K)の疵(Ka)が非常になだらかで浅い疵だったとしても、疵(Ka)の有無を正確に判定することができる。
【0017】
他方、請求項4の発明によれば、撮像手段(ラインスキャンカメラ5参照)として、ラインスキャンカメラ(5)を用いているから、棒状の被検査物(K)を撮像するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る表面疵検査装置の正面図である。
図2】同実施形態に係る表面疵検査装置の平面図である。
図3】同実施形態に係る表面疵検査装置の概略構成図である。
図4】(a)は同実施形態に係るLED照明装置より照射された光が被検査物に形成されている疵によって散乱している状態を示す説明図、(b)はLED照明装置より照射された光により被検査物の軸線を境界として、当該被検査物の表面に明るい領域である明視野領域と、暗い領域である暗視野領域とが形成されている状態を示す説明図、(c)は2方向から光を照射させた場合に死角が発生することを示す説明図である。
図5】同実施形態に係る画像解析制御装置のROMに格納されているプログラムの処理内容を示すフローチャート図である。
図6】(a)は同実施形態に係るラインスキャンカメラにて撮像された画像を一画素単位で二値化し、その二値化した際の濃度量を示す説明図、(b)は予め定められた閾値を所定箇所が超えていることを示す説明図である。
図7】被検査物に疵が生じている箇所を画像処理した場合の画面例である。
図8】本発明の第2実施形態に係る表面疵検査装置の概略構成図である。
図9】同実施形態に係る画像解析制御装置のROMに格納されているプログラムの処理内容を示すフローチャート図である。
図10】他の実施形態に係るLED照明装置より被検査物に光が照射されている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明の表面疵検査方法に関する表面疵検査装置の第1実施形態を、図1図6を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0020】
図1に示すように、表面疵検査装置1は、支持枠2と、その支持枠2に固定されている回転駆動機構3と、その支持枠2に固定されているLED照明装置4と、その支持枠2に固定されているラインスキャンカメラ5と、画像解析制御装置6とで主に構成されている。
【0021】
支持枠2は、図2に示すように、平面視矩形状の底板20と、その底板20上の上下に互いに平行となるように固定されている長尺状の平面視矩形状からなる一対の枠体21と、その枠体21に夫々2箇所所定間隔をおいて立設されている立設枠体22(図1参照)と、上下方向に離間している立設枠体22同士を横架する横架枠23と、その横架枠23より底板20の中心方向に向って突設されている一対の固定枠24とで構成されている。
【0022】
一方、回転駆動機構3は、図1に示すように、サーボモータ30と、一対の回転部31とで構成されている。サーボモータ30は、図1に示すように底板20上に立設固定されており、画像解析制御装置6からの指令を受けて駆動又は停止するようになっている。また、サーボモータ30は、モータ位置を検出することができるエンコーダを画像解析制御装置6に出力(図1参照)できるようになっている。
【0023】
一方、回転部31は、図2に示すように、一端(図示上側)が図示上側に位置する枠体21の中間部に立設されている固定板31aに回転可能に取付固定されている棒状の軸部31bと、その軸部31bに所定間隔を置いて複数個回転可能に取付けられているローラ31cとで構成されている。このように構成される一対の回転部31は、図1に示すように、ベルトBを介してサーボモータ30と連結されており、サーボモータ30が回転駆動することによりベルトBを介して一対の回転部31が回転することとなる。
【0024】
かくして、上記のように構成される一対の回転部31上には、図1及び図2に示すように、図示しない搬送ラインより搬送されてきた棒鋼を含む棒状からなる被検査物Kが載置され、サーボモータ30が回転駆動することによりベルトBを介して一対の回転部31が回転し、もって、図1に示す矢印Y1方向に被検査物Kが回転することとなる。
【0025】
LED照明装置4は、図示しないLED照明用の可変型光源アンプが取り付けられており、これでもって、十分な光量の光を照射できるようになっている。そして、このようなLED照明装置4は、図1及び図2に示すように、図示右側に位置する固定枠24の下部に設けられている円弧状の可動支持枠24aに支持軸24a1を介して取り付け固定されており、被検査物Kに対して右上から左下方向に向って光を照射できるようになっている。具体的に説明すると、このLED照明装置4は、図2に示すように、平面視矩形状の後端部4aが支持軸24a1に取り付け固定され、先端部4bが長尺状のバーからなり、その内部には、図4(a)に示すように長尺状のバーからなる白色LED4b1が設けられ、その白色LED4b1には、一方向(図示では、左斜め方向)からのみ光LIが照射されるように指向性フィルム4b2が取り付けられている。
【0026】
かくして、このように構成されるLED照明装置4は、図3に示すように、被検査物Kの中心線O1からの水平方向の距離l1、高さh、被検査物Kの中心線O1を基点とした傾斜角θ1(θ1<90°)、被検査物Kの中心線O1までの光LIの照射距離Lとする位置に配置されている。これにより、LED照明装置4より光LIが照射されると、図4(b)に示すように、被検査物Kの軸線O2を境界として、被検査物Kに明るい領域である明視野領域K1と、暗い領域である暗視野領域K2とが形成されることとなる。この際、サーボモータ30の回転駆動によって、図1に示す矢印Y1方向に被検査物Kが回転しているから、被検査物Kに疵Kaが形成されていた場合、何れ、明視野領域K1と、暗視野領域K2との境界に疵Kaが位置することとなる。
【0027】
ここで、被検査物Kに疵Kaが形成されていた場合、図4(a)に示すように、疵Kaに光LIが照射されると、光LIが散乱し散乱光LIaが発生する。この際、被検査物Kの疵Kaが暗視野領域K2に位置していると、被検査物Kの疵Ka部分が明るくなるため、ラインスキャンカメラ5によって、その疵Kaが他の部分に比べ明るく撮像されることとなる。なお、この疵Kaは、表面疵,かき疵,擦り傷,打痕,凹み等、不良と判定される疵全てを含むものである。
【0028】
ところで、このような散乱光LIaをラインスキャンカメラ5によって正確に捉えようとした場合、被検査物KとLED照明装置4との距離を適切にとる必要がある。すなわち、散乱係数をR,散乱領域の体積をV,照射する光のビーム速度をIoとした場合、散乱強度Isは以下の式で表される。
【0029】
【数1】
【0030】
この数式1より、散乱強度Isは距離L(図3参照)の二乗に反比例している事が分かる。そのため、散乱光LIaをラインスキャンカメラ5によって正確に捉えようとすると、被検査物KとLED照明装置4との距離を適切にとる必要がある。それゆえ、本実施形態にて示すLED照明装置4は、図3に示すような位置に配置されている。
【0031】
また、LED照明装置4より照射される光LIの被検査物Kの表面における光の伝播方向の変化となる輝度をLd,照射光の輝度をLi,反射率をρとした場合、被検査物Kの表面における光の伝播方向の変化となる輝度Ldは、以下の式で表される。
【0032】
【数2】
【0033】
また、散乱光LIaにおける被検査物Kの表面における光の伝播方向の変化となる輝度をLs,被検査物Kの表面の点をP,散乱率をσとした場合、以下の式で表される。
【0034】
【数3】
【0035】
以上の式より、被検査物Kの表面における光の伝播方向の変化となる輝度は、照射光の輝度、反射率、散乱率と密接な関係があることが分かる。この点、指向性フィルム4b2を用いず白色LED4b1のみを用いた場合、被検査物Kとして反射率の高い冷間加工された引抜・ピーリング棒鋼を用いると、金属光沢のある表面の疵の散乱光を捉えることが難しい。そこで、本実施形態においては、指向性フィルム4b2を用い、一方向(図示では、左斜め方向)からのみ光LIが照射されるようにすることで、散乱光を明確にし、図4(b)に示すように疵Kaの濃淡が明確となるようにしている。
【0036】
なお、指向性フィルム4b2として、図4(c)に示すように、2方向(図示では左右斜め方向)から光LIを照射させることも考えられるが、これでは、死角Sが発生したり、散乱光が干渉しあったりし、疵Ka(図4(b)参照)の濃淡を明確にすることができない可能性が高い。それゆえ、一方向からのみ光LIが照射されるような指向性フィルム4b2を用いた方が好ましい。
【0037】
ラインスキャンカメラ5は、図1及び図2に示すように、後端部5aが図示左側に位置する固定枠24の下部に設けられている円弧状の可動支持枠24aに支持軸24a1を介して取り付け固定されており、先端部5bのカメラレンズ側より被検査物Kを右斜め方向から撮像できるようになっている。そして、このラインスキャンカメラ5は、上述のように、被検査物Kの疵Kaの撮像を目的としており、そのために、散乱光LIaを撮像する必要があるため、被検査物Kの真上に配置するのではなく、右斜め方向から被検査物Kを撮像できる位置に配置されている。具体的には、図3に示すように、被検査物Kの中心線O1からの水平方向の距離l2、高さh、被検査物Kの中心線O1を基点とした傾斜角θ2(θ1<90°)、被検査物Kの中心線O1までの焦点距離f、ラインスキャンカメラ5から被検査物KまでのワーキングディスタンションWDとする位置に配置されている。
【0038】
ところで、このワーキングディスタンションWDは、ラインスキャンカメラ5の倍率(カメラ画素サイズ/画素分解能)をMとした場合、以下の式で表される。
【0039】
【数4】
【0040】
なお、本実施形態においては、ラインスキャンカメラ5を用いて被検査物Kを撮像する例を示したが、それに限らず、エリアセンサカメラを用いても良い。しかしながら、エリアセンサカメラは、積分時間が長くシャッタが必要なため、回転している棒状の被検査物Kを撮像するのに適さない。それゆえ、ラインスキャンカメラを用いた方が好ましい。
【0041】
画像解析制御装置6は、ラインスキャンカメラ5にて撮像された被検査物Kの画像を解析し、被検査物Kの疵Ka(図4(b)参照)の有無を判定すると共に、サーボモータ30の駆動を制御するものである。具体的には、図3に示すように、CPU60と、画像を解析し疵Kaの有無を判定するプログラム並びにサーボモータ30の駆動を制御するプログラムが格納されているROM61と、CPU60にて処理したデータを一時的に格納するRAM62と、液晶ディスプレイ等からなる表示部63と、データの入出力を行うI/O64とで構成されている。
【0042】
ここで、このような画像解析制御装置6のROM61に格納されているプログラムの処理内容について、図5も用いて説明する。
【0043】
図示しない搬送ラインより搬送されてきた棒鋼を含む棒状からなる被検査物Kが一対の回転部31(図1図3参照)上に載置されると、CPU60は、サーボモータ30を駆動するように指令する指令信号をI/O64を介してサーボモータ30に出力する。これを受けて、サーボモータ30が回転駆動し、もって、図1に示すように、ベルトBを介して被検査物Kが矢印Y1方向に回転することとなる(ステップS1)。
【0044】
次いで、CPU60は、ラインスキャンカメラ5にて撮像された矢印Y1方向に回転している被検査物Kの画像を、I/O64を介して取得する(ステップS2)。なお、取得した画像は、RAM62内に一時的に格納される。
【0045】
次いで、CPU60は、サーボモータ30より出力されるモータ位置を検出することができるエンコーダをI/O64を介して取得し、サーボモータ30が所定回数(例えば、2回)回転駆動したか確認する(ステップS3)。所定回数回転駆動していなければ(ステップS3:NO)、ステップS2の処理に戻り、所定回数回転駆動していれば(ステップS3:YES)、ステップS4の処理に移行する。
【0046】
次いで、CPU60は、サーボモータ30の駆動を停止するように指令する指令信号をI/O64を介してサーボモータ30に出力する。これを受けて、サーボモータ30は回転駆動を停止する。これにより、被検査物Kの回転も停止することとなる(ステップS4)。
【0047】
次いで、CPU60は、RAM62内に一時的に格納しておいた画像を取得し、画像解析処理を行う(ステップS5)。具体的に説明すると、CPU60は、RAM62内に一時的に格納しておいた画像を一画素単位で二値化する。これにより、図6(a)に示すように、一画素単位の濃度量が算出されることとなる。そして、CPU60は、その算出された濃度量を積算する。例えば、図6(a)に示す数値を全て積算すると、1+2+2+3+3+4+5+6+6+9=41となる。なお、図6(a)に示す濃度量は、数値が低いほど暗く、数値が高いほど明るいことを示している。
【0048】
次いで、CPU60は、その積算した値が、予め決定しおいた閾値を超えているか否かの判定を行う(ステップS6)。閾値を超えていなければ、被検査物Kの表面に疵Ka(図4(b)参照)が無いと判定し(ステップS6:NO)、プログラムの処理を終える。
【0049】
一方、閾値を超えていれば(図6(b)参照)、被検査物Kの表面に疵Ka(図4(b)参照)があると判定し(ステップS6:YES)、その箇所を赤や黄色等に変色させる画像処理を行う。すなわち、表示部63に図7に示すような画像P1が表示されるような処理を行い(ステップS7)、プログラムの処理を終える。これにより、被検査物Kの疵Kaが存在している箇所を簡単容易に特定することができる。なお、画像P1に示されている図示左の数値(15.9又は14.7)は、疵Kaを示す画像の平均コントラストを示し、図示真ん中の数値(48.0又は51.0)は、疵Kaを示す画像の最大コントラストを示し、図示右の数値(45.0又は46.0)は、疵Kaを示す画像の画素を示すものである。
【0050】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、棒状からなる被検査物Kが回転駆動機構3によって回転し、その回転している棒状からなる被検査物Kに、その被検査物Kの軸線O2方向を境界として当該被検査物Kの明暗が分かれるようにLED照明装置4より光LIが照射されているから、被検査物Kに疵Kaが形成されていた場合、その疵Kaが何れその軸線O2上の暗視野領域K2に位置することとなる。これにより、ラインスキャンカメラ5によってLED照明装置4より照射された光LIを受光した被検査物Kを撮像すれば、疵Ka部分が明るく撮像されることとなる。しかるに、その疵Ka部分が明るく撮像された画像をCPU60にて画像解析し疵の有無を判定するようにすれば、疵Kaの有無を正確に判定することができる。
【0051】
よって、本実施形態によれば、棒状からなる被検査物K表面の疵Kaの有無を安定して検出することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、一般的に行われている画像全体を一律に二値化する手法は用いず、一画素単位で二値化し、その濃度量を算出し、そして、その算出した濃度量を積算し、その積算した値と予め決定しておいた閾値とを比較するようにしている。これにより、撮像面積が小さくとも、被検査物Kの疵Kaの有無を明確に判定することができ、より目視に近い判定をすることができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、一画素単位の濃度量を算出するにあたって、数値が低いほど暗く、数値が高いほど明るいようにしたが、それに限らず、数値が低いほど明るく、数値が高いほど暗いようにしても良い。その際、積算した値が、予め決定しておいた閾値を下回っていれば、被検査物Kの表面に疵Ka(図4(b)参照)が存在していると判定するようにしても良い。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明の表面疵検査方法に関する表面疵検査装置の第2実施形態を、図8及び図9を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0055】
第2実施形態と第1実施形態の異なる点は、LED照明装置4を2つ設けた点で、それ以外は同一である。LED照明装置4を2つ設けた理由は、被検査物Kの疵Kaが非常になだらかで浅い疵だった場合、LED照明装置4より照射された光LIが散乱しない、あるいは、散乱したとしても、ラインスキャンカメラ5で撮像できない位置に散乱する可能性がある。そうすると、その疵をラインスキャンカメラ5で撮像することができず、もって、被検査物Kの表面疵を検出できない可能性がある。そこで、本実施形態においては、そのような疵も検出できるように、LED照明装置4を2つ設けるようにしている。
【0056】
具体的には、図8に示すように、LED照明装置4は、第1のLED照明装置4Aと、第2のLED照明装置4Bとで構成されており、第1のLED照明装置4Aは、被検査物Kの中心線O1からの水平方向の距離l1、高さh1、被検査物Kの中心線O1を基点とした傾斜角θ1(θ1<90°)、被検査物Kの中心線O1までの光LI(図4(a)参照)の照射距離L1とする位置に配置されている。そして、この第1のLED照明装置4Aの内部には、図4(a)に示す長尺状のバーからなる白色LED4b1が設けられ、その白色LED4b1には、一方向(図示では、左斜め方向)からのみ光LIが照射されるように指向性フィルム4b2が取り付けられている。
【0057】
また、第2のLED照明装置4Bは、被検査物Kの中心線O1からの水平方向の距離l1+l3、高さh2、被検査物Kの中心線O1を基点とした傾斜角θ3(θ3<90°)、被検査物Kの中心線O1までの光LIB(図8(b)参照)の照射距離L2とする位置に配置されている。そして、この第2のLED照明装置4Bの内部には、図8(b)に示す長尺状のバーからなる白色LED4Bb1が設けられ、その白色LED4Bb1には、一方向(図示では、右斜め方向)からのみ光LIBが照射されるように指向性フィルム4Bb2が取り付けられている。すなわち、第2のLED照明装置4Bからは、第1のLED照明装置4Aと異なる方向から光が照射されるようになっている。
【0058】
かくして、このような第1のLED照明装置4Aと、第2のLED照明装置4Bとを用いて被検査物Kの疵を検出する方法を、図9に示す画像解析制御装置6のROM61に格納されているプログラムの処理内容を参照して説明することとする。
【0059】
図示しない搬送ラインより搬送されてきた棒鋼を含む棒状からなる被検査物Kが一対の回転部31(図8参照)上に載置されると、CPU60は、サーボモータ30を駆動するように指令する指令信号をI/O64を介してサーボモータ30に出力する。これを受けて、サーボモータ30は回転駆動する。これにより、図1に示すように、ベルトBを介して被検査物Kが矢印Y1方向に回転することとなる(ステップS1)。なお、この際、第1のLED照明装置4Aの光LIが照射され、第2のLED照明装置4Bは、消灯している。
【0060】
次いで、CPU60は、ラインスキャンカメラ5にて撮像された矢印Y1方向に回転している被検査物Kの画像を、I/O64を介して取得する(ステップS2)。なお、取得した画像は、RAM62内に一時的に格納される。
【0061】
次いで、CPU60は、サーボモータ30より出力されるモータ位置を検出することができるエンコーダをI/O64を介して取得し、サーボモータ30が所定回数(例えば、2回)回転駆動したか確認する(ステップS3)。所定回数回転駆動していなければ(ステップS3:NO)、ステップS2の処理に戻り、所定回数回転駆動していれば(ステップS3:YES)、ステップS4の処理に移行する。
【0062】
次いで、CPU60は、サーボモータ30の駆動を停止するように指令する指令信号をI/O64を介してサーボモータ30に出力する。これを受けて、サーボモータ30は回転駆動を停止する。これにより、被検査物Kの回転も停止することとなる(ステップS4)。
【0063】
次いで、CPU60は、第1のLED照明装置4Aが消灯し、第2のLED照明装置4Bの光LIBが照射されるように指令する指令信号をI/O64を介してLED照明装置4に出力する。これを受けて、LED照明装置4は、第1のLED照明装置4Aを消灯し、第2のLED照明装置4Bを点灯、すなわち、光LIBが照射されるようにする(ステップS10)。
【0064】
次いで、CPU60は、サーボモータ30を駆動するように指令する指令信号をI/O64を介してサーボモータ30に出力する。これを受けて、サーボモータ30は回転駆動する。これにより、図1に示すように、ベルトBを介して被検査物Kが矢印Y1方向に回転することとなる(ステップS11)。
【0065】
次いで、CPU60は、ラインスキャンカメラ5にて撮像された矢印Y1方向に回転している被検査物Kの画像を、I/O64を介して取得する(ステップS12)。なお、取得した画像は、RAM62内に一時的に格納される。
【0066】
次いで、CPU60は、サーボモータ30より出力されるモータ位置を検出することができるエンコーダをI/O64を介して取得し、サーボモータ30が所定回数(例えば、2回)回転駆動したか確認する(ステップS13)。所定回数回転駆動していなければ(ステップS13:NO)、ステップS12の処理に戻り、所定回数回転駆動していれば(ステップS13:YES)、ステップS14の処理に移行する。
【0067】
次いで、CPU60は、サーボモータ30の駆動を停止するように指令する指令信号をI/O64を介してサーボモータ30に出力する。これを受けて、サーボモータ30は回転駆動を停止する。これにより、被検査物Kの回転も停止することとなる(ステップS14)。
【0068】
次いで、CPU60は、RAM62内に一時的に格納しておいた画像を取得し、画像解析処理を行う(ステップS5)。具体的に説明すると、CPU60は、RAM62内に一時的に格納しておいた画像を一画素単位で二値化する。これにより、図6(a)に示すように、一画素単位の濃度量が算出されることとなる。そして、CPU60は、その算出された濃度量を積算する。
【0069】
次いで、CPU60は、その積算した値が、予め決定しおいた閾値を超えているか否かの判定を行う(ステップS6)。閾値を超えていなければ、被検査物Kの表面に疵Ka(図4(b)参照)が無いと判定し(ステップS6:NO)、プログラムの処理を終える。
【0070】
一方、閾値を超えていれば(図6(b)参照)、被検査物Kの表面に疵Ka(図4(b)参照)があると判定し(ステップS6:YES)、その箇所を赤や黄色等に変色させる画像処理を行う。すなわち、表示部63に図7に示すような画像P1が表示されるような処理を行い(ステップS7)、プログラムの処理を終える。これにより、被検査物Kの疵Kaが存在している箇所を簡単容易に特定することができる。
【0071】
しかして、以上説明した本実施形態においても、棒状からなる被検査物Kが回転駆動機構3によって回転し、その回転している棒状からなる被検査物Kに、その被検査物Kの軸線O2方向を境界として当該被検査物Kの明暗が分かれるようにLED照明装置4より光LI又は光LIBが照射されているから、被検査物Kに疵Kaが形成されていた場合、その疵Kaが何れその軸線O2上の暗視野領域K2に位置することとなる。これにより、ラインスキャンカメラ5によってLED照明装置4より照射された光LI又は光LIBを受光した被検査物Kを撮像すれば、疵Ka部分が明るく撮像されることとなる。しかるに、その疵Ka部分が明るく撮像された画像をCPU60にて画像解析し疵の有無を判定するようにすれば、疵Kaの有無を正確に判定することができる。
【0072】
よって、本実施形態においても、棒状からなる被検査物K表面の疵Kaの有無を安定して検出することができる。
【0073】
また、本実施形態においては、被検査物Kの疵Kaが非常になだらかで浅い疵だったとしても、LED照明装置4を2つ設け、異なる方向から光を照射するようにしているから、何れかの光LI,LIBにて疵Ka部分が明るく光り、もって、その明るく光った疵Ka部分をラインスキャンカメラ5にて撮像することができる。これにより、被検査物Kの疵Kaが非常になだらかで浅い疵だったとしても、疵Kaの有無を正確に判定することができる。
【0074】
ところで、LED照明装置4は、図10に示すようなものを用いることもできる。このLED照明装置4Cは、LEDが均等に配列されたLED照明バー40と、このLED照明バー40からの拡散光を集光し増幅して帯状の光LICを照射するアクリル丸棒41とで構成されている。この構成により、LED照明装置4Cは、破線GDで示す濃淡のグラデーションからなる帯状の光LICを照射することができ、もって、その照射された光LICが被検査物Kに照射されることとなる。なお、この際、図示はしないが、図4(b)に示すような、被検査物Kの軸線O2を境界として、被検査物Kに明るい領域である明視野領域K1と、暗い領域である暗視野領域K2とが形成されている。
【0075】
しかして、このような濃淡のグラデーションからなる帯状の光LICが被検査物Kに照射された際、当該被検査物Kに疵Kaが生じていると、局所的な歪みが発生し疵Ka部分をより鮮明にラインスキャンカメラ5にて捉えることができる。すなわち、被検査物Kに疵Kaが生じていると、光LICの正反射角度が変化することから、ラインスキャンカメラ5にてその変化を捉えると、濃淡のグラデーションからなる帯状の光LICに局所的な歪みが発生することとなる。それゆえ、疵Ka部分をより鮮明にラインスキャンカメラ5にて捉えることができる。
【0076】
一方、第1実施形態及び第2実施形態において、図3図8に示すように、被検査物KをLED照明装置4とラインスキャンカメラ5との間のほぼ中間位置に配置している例を示したが、それに限らず、被検査物KをLED照明装置4側に配置しても良く、被検査物Kをラインスキャンカメラ5側に配置しても良い。すなわち、図4(b)に示すように、被検査物Kの軸線O2を境界として、被検査物Kに明るい領域である明視野領域K1と、暗い領域である暗視野領域K2とを形成できるのであれば、どのような配置でも良い。
【0077】
また、第1実施形態において、図4(a)では、一方向(図示では、左斜め方向)からのみ光LIが照射される例を示したが、左斜め方向に限らず右斜め方向でも、垂直でも良い。
【0078】
なお、第1実施形態及び第2実施形態においては、被検査物Kを回転させる駆動手段としてサーボモータ30を例示したが、それに限らず、被検査物Kを回転させることができればどのようなものでも良い。
【符号の説明】
【0079】
1 表面疵検査装置
3 回転駆動機構(回転手段)
4 LED照明装置(光照射手段)
5 ラインスキャンカメラ(撮像手段)
6 画像解析制御装置
60 CPU(画像解析手段、判定手段)
K 被検査物
Ka 疵
O2 軸線
LI,LIB,LIC 光
LIa 散乱光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10