特許第6321789号(P6321789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321789
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】回路の層を転写するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20180423BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-520577(P2016-520577)
(86)(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公表番号】特表2016-522584(P2016-522584A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】FR2014051478
(87)【国際公開番号】WO2014202886
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】1355765
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルセル ブルークアールト
(72)【発明者】
【氏名】ローラン マリニエール
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−036185(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0020873(US,A1)
【文献】 特開2007−165769(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0203167(US,A1)
【文献】 特開平10−270298(JP,A)
【文献】 特開2005−183622(JP,A)
【文献】 国際公開第03/046993(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0014346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込み回路層(2)を転写するためのプロセスであって、
内部にエッチング停止ゾーン(7、7’)を備え、回路層(2)が形成された表面(12)を有するドナー基板(1、1’)を用意するステップと、
前記ドナー基板(1,1‘)の前記回路層(2)で覆われた前記表面の全周にわたって、前記ドナー基板の側縁部(13)から距離をおいて延在する周辺トレンチ(3)または周辺削り取り部(3’)を生成するステップであって、前記周辺削り取り部(3’)または前記周辺トレンチ(3)が、前記回路層(2)を貫通し、前記ドナー基板(1、1’)内へ延在するような深さにわたって生成されるステップと、
前記回路層(2)の露出面(21)上に、および前記周辺削り取り部の削り取られた面(13’)または前記周辺トレンチ(3)の壁面のうち少なくともいずれかの面上に、前記周辺トレンチ(3)または前記周辺削り取り部(3‘)を充填しないように、前記回路層(2)のエッチングに対して選択性のある第2の停止層(4)を堆積させるステップと、
レシーバ基板(5)と、前記ドナー基板(1,1‘)の前記第2の停止層(4)によって覆われた側とを接合するステップと、
前記埋込み回路層(2)の前記レシーバ基板(5)への転写を得るように、前記エッチング停止ゾーン(7、7’)に達するまで、前記ドナー基板(1)をその裏面(11)の化学エッチングによって薄層化するステップと、
を備えることを特徴とする埋込み回路層(2)を転写するためのプロセス。
【請求項2】
前記エッチング停止ゾーンは、前記ドナー基板(1)の裏部(101)の材料への前記化学エッチングに対して選択性のある材料からなる第1の停止層(7)であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記エッチング停止ゾーンは、前記ドナー基板(1’)のドープされた表面層(102’)とドープされていない裏面層(101’)との間の界面(7’)であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記周辺削り取り部(3’)または前記周辺トレンチ(3)は、前記ドナー基板(1、1’)の前記裏部(101)または裏面層(101’)に侵入することなく、前記エッチング停止ゾーン(7、7’)を貫通するような深さを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記周辺削り取り部(3’)または前記周辺トレンチ(3)は、それが前記エッチング停止ゾーン(7、7’)を貫通しないような深さにわたって生成されること、および化学エッチング薄層化ステップの後、前記ドナー基板(1、1’)の残留する周辺リング(14)の機械的な除去の追加のステップは、研削または化学機械研磨(CMP)によって実行されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記周辺削り取り部(3’)または前記周辺トレンチ(3)は、それが前記ドナー基板(1、1’)の前記エッチング停止ゾーン(7、7’)を貫通し、前記裏部(101)または前記裏面層(101’)へ延在するような深さを有すること、および前記化学エッチング薄層化ステップの後、前記第2の停止層(4)の残留物(41)の機械的な除去の追加のステップは、研削または化学機械研磨(CMP)によって実行されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第2の停止層(4)は、化学気相成長(CVD)またはスピンコーティングから選択された技法によって堆積させられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記周辺トレンチ(3)は、レーザーエッチング、ドライエッチングおよびウェットエッチングから選択された技法を用いて生成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記周辺トレンチ(3)は、5mm以下の前記ドナー基板(1、1’)の前記側縁部(13)から距離(D1)を置いて配置されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記周辺トレンチ(3)の幅(L1)は、10μmと500μmの間にあることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1の停止層(7)および前記第2の停止層(4)を形成する材料は、酸化物または窒化物から選択されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の停止層(7)および前記第2の停止層(4)を形成する材料は、酸化シリコン(SiO2)、シリコン酸窒化物(SiOxy)またはシリコン酸炭化物(SiOxy)から選択されることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第1の停止層(7)および前記第2の停止層(4)を形成する材料は、同一であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ドナー基板(1)は、半導体材料から生成されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ドナー基板(1)および前記レシーバ基板(5)の前記接合は、分子接合によって行われることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子工学、光学、および/または光電子工学の分野に位置する。
【0002】
本発明は、より詳細には埋込み回路層を転写するプロセスに関する。
【0003】
様々な電子部品は、そのような埋込み回路層を含む基板から製造される。これらの中でも、例として、背面照射技術を使用するセンサ(「裏面照射センサ(backside illumination sensor)」に対する「BSIセンサ」の頭字語の下で当業者に知られている)について言及されてもよい。これらのセンサは、それらを形成する様々な層の新規な配置に基づく。これらのセンサは、捕獲される光量を増加させることが可能であり、したがって、より効率的である。これらは、特に最新世代のタブレットおよび電話機の画面に使用されることが意図されている。
【背景技術】
【0004】
前述の技術分野で使用される基板の薄層化は、例えば化学エッチングによって実行されることがある。
【0005】
半導体オンインシュレータ(SeOI(semiconductor−on−insulator))タイプの基板が薄層化される場合、化学エッチングは、埋込み酸化物層がエッチング停止層として働くため使用するのが比較的容易である。固体基板の問題である場合は、固体基板を、例えば、p型ドーピングまたはn型ドーピングすることによってエッチング停止層を生成することが必要なため、薄層化は、いささかより複雑である。
【0006】
しかし、ドナー基板が埋込み回路層を備える特定の場合は、埋込み回路層を覆う材料の層の化学エッチングが実に問題となる。特に、使用される化学溶液(例えば、シリコンのエッチングの場合、硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)またはフッ化水素酸(HF))は、金属に対して、したがって回路を備える層に対して特に反応性が高い。
【0007】
その結果、エッジから1センチメートル以上に達する、埋込み回路層の横方向のエッチングが生じる。この損傷を受けたゾーンの近傍で製造されたBSIセンサは、したがって使用不可能である。
【0008】
層の転写によって、接合された基板を製造するためのプロセスが文献(特許文献1)により既に知られており、このプロセスは、ドナー基板の前面に周溝を生成するステップと、この基板を熱酸化するステップと、前面にレシーバ基板を接合するステップと、溝の底部に達するまでドナー基板をその裏面から薄層化するステップとを備える。
【0009】
そのようなプロセスによって、レシーバ基板にドナー基板の中央部分だけを転写し、不完全に接合された周辺部分を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1962325号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、この文献は、埋込み回路層を備えるドナー基板の処理については全く記載しておらず、さらに、そのような層は、この文献に記載されている、接合の後に実行される1000℃を超える熱酸化、または熱処理に耐えられないであろう。
【0012】
したがって、本発明の目的は、従来技術の前述の欠点を解決する、特にこれらの回路の損傷を回避する埋込み回路層を転写するプロセスを提案することである。
【0013】
このため、本発明は、埋込み回路層(2)を転写するプロセスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、このプロセスは、
埋込み回路層(2)を転写するためのプロセスであって、
− 内部にエッチング停止ゾーンを備え、「前」面と呼ばれる、ドナー基板の面のうちの1つの面が回路層で覆われたドナー基板を用意するステップと、
− その面が回路層で覆われた側で、前記ドナー基板の全周にわたって、この基板の側縁部から距離をおいて延在する周辺トレンチ、または周辺削り取り部を生成するステップであって、この削り取り部またはこのトレンチが、それらが回路層を完全に通過し、ドナー基板内へ延在するような深さにわたって生成されるステップと、
− 前記回路層の露出面上に、および削り取られた面上に、または前記トレンチの壁に、「第2の停止層」と呼ばれる、前記回路層のエッチングに対して選択性のある停止材料の層を、前記トレンチを充填せずに、堆積させるステップと、
− レシーバ基板を、面が前記第2の停止層によって覆われた側で前記ドナー基板に接合するステップと、
− 前記埋込み回路層の前記レシーバ基板への転写を得るように、前記エッチング停止ゾーンに達するまで、ドナー基板(1)をその裏面の化学エッチングによって薄層化するステップと、
を備える。
【0015】
本発明の他の有利で限定しない特徴によると、
− 前記エッチング停止ゾーンは、「第1の停止層」と呼ばれる、ドナー基板の裏部の材料のエッチングに対して選択性のある材料の層であることと、
− 前記エッチング停止ゾーンは、ドナー基板のドープされた前面層とドープされていない裏面層との間の界面であることと、
− 周辺削り取り部または周辺トレンチは、それがドナー基板の裏部または裏面層に侵入せずに、前記エッチング停止ゾーンを通過するような深さを有することと、
− 周辺削り取り部または周辺トレンチは、それが前記エッチング停止ゾーンを通過しないような深さにわたって生成され、化学エッチング薄層化ステップの後、ドナー基板の残留する周辺リングの機械的な除去の追加のステップは、特に研削または化学機械研磨(CMP(chemical mechanical polishing))によって実行されることと、
− 周辺削り取り部または周辺トレンチは、それが前記エッチング停止ゾーンを通過し、ドナー基板の裏部または裏面層へ延在するような深さを有し、化学エッチング薄層化ステップの後、前記第2の停止層の残留物の機械的な除去の追加のステップは、特に研削または化学機械研磨(CMP)によって実行されることと、
− 第2の停止層は、化学気相成長(CVD(chemical vapor deposition))またはスピンコーティングから選択された技法によって堆積させられることと、
− 周辺トレンチは、レーザーエッチング、ドライエッチングおよびウェットエッチングから選択された技法を用いて生成されることと、
− 前記周辺トレンチは、5mm以下のドナー基板の側縁部から距離をおいて配置されることと、
− トレンチの幅は、10μmと500μmの間にあることと、
− 第1の停止層および第2の停止層を形成する材料は、酸化物または窒化物から選択されることと、
− 第1の停止層および第2の停止層を形成する材料は、酸化シリコン、シリコン酸窒化物またはシリコン酸炭化物から選択されることと、
− 第1の停止層および第2の停止層を形成する材料は、同一であることと、
− ドナー基板は、半導体材料から生成されることと、
− ドナー基板およびレシーバ基板の接合は、分子付着によって行われることと、
が単独でまたは組み合わせて得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、例として、限定することなく可能性のある実施形態を示す添付された図面を参照して、次に示される記載から明らかとなるであろう。
図1】本発明によるプロセスの一実施形態のステップを示す図である。
図2】本発明によるプロセスの一実施形態のステップを示す図である。
図3】本発明によるプロセスの一実施形態のステップを示す図である。
図4】本発明によるプロセスの一実施形態のステップを示す図である。
図5】本発明によるプロセスの一実施形態のステップを示す図である。
図6】本発明によるプロセスの一実施形態のステップを示す図である。
図7】本発明によるプロセスの別の実施形態のステップを示す図である。
図8】本発明によるプロセスの別の実施形態のステップを示す図である。
図9】本発明によるプロセスの別の実施形態のステップを示す図である。
図10A図4および図5に示されたプロセスのあるステップの変形実施形態の拡大されたスケールでの詳細図である。
図10B図4および図5に示されたプロセスのあるステップの変形実施形態の拡大されたスケールでの詳細図である。
図10C図4および図5に示されたプロセスのあるステップの変形実施形態の拡大されたスケールでの詳細図である。
図10D図4および図5に示されたプロセスのあるステップの変形実施形態の拡大されたスケールでの詳細図である。
図11A図4および図5に示されたプロセスのあるステップの変形実施形態の拡大されたスケールでの詳細図である。
図11B図4および図5に示されたプロセスのあるステップの変形実施形態の拡大されたスケールでの詳細図である。
図11C図4および図5に示されたプロセスのあるステップの変形実施形態の拡大されたスケールでの詳細図である。
図11D図4および図5に示されたプロセスのあるステップの変形実施形態の拡大されたスケールでの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の第1の実施形態が図1から図6を参照して記載される。
【0018】
図1では、「裏面」と呼ばれる面11、および「前面」と呼ばれる反対の面12を有するドナー基板1が見てわかる。
【0019】
前面12は、回路層2で覆われている。
【0020】
さらに、このドナー基板1は、内部にエッチング停止ゾーンを有する。
【0021】
本発明の第1の実施形態によると、このエッチング停止ゾーンは、「第1の停止層」と呼ばれる材料の層7である。
【0022】
停止層7は、このようにしてドナー基板1を、この停止層7と回路層2との間に延在する「前」部と呼ばれる部分102と、この停止層7と裏面11との間に延在する「裏」部と呼ばれる部分101とに分割する。
【0023】
示される例では、これらの前部102および裏部101は、単層である。しかしながら、これらは、多層である可能性もある。
【0024】
第1の停止層7は、ドナー基板1を形成する材料(複数可)、特にドナー基板1の裏部101に対して選択性のある材料から生成される。
【0025】
この第1の停止層7は、堆積によって、例えば化学気相成長(CVD)によって、または裏部101上のエピタキシーによって得られてもよい。また、それは、層転写によって得られてもよい。
【0026】
前部102は、層7の形成の後に、層7に対して上記されたものと同一の技法によって得られてもよい。
【0027】
また、別の変形実施形態によると、停止層7は、ドーピングによってドナー基板7に注入されてもよい。この技法によって、上記の前部102を追加するステップを回避することが可能となる。
【0028】
純粋に例示的な例として、ドナー基板1は、「半導体オンインシュレータ」(SeOI)または「シリコンオンインシュレータ」(SOI(silicon−on−insulator))タイプであってもよい。この場合、停止層7は、酸化シリコン(SiO2)から構成される。
【0029】
本発明の第2の実施形態によると、エッチング停止ゾーンは、単にドナー基板の2つの層間の界面であってもよい。この変形実施形態が図7に示されている。界面には、参照記号7’がついており、ドナー基板1’の裏面層101’と前面層102’との間に延在する。
【0030】
前面層102’は、層101’と同一の化学的性質の層であるが、高度にドープされていることが好ましい。
【0031】
エッチング停止ゾーン7、7’の実施形態にかかわらず、エッチング停止ゾーン7、7’は、回路層2の形成の前に常に生成されることが留意される。
【0032】
プロセスの次のステップが図2に示されており、ドナー基板1の全周にわたって、その面が回路層2で覆われた側で、このドナー基板の側縁部13から距離をおいて延在する周辺トレンチ3を生成することにある。
【0033】
このトレンチ3は、回路層2を完全に通過するように、およびドナー基板1内へある深さまで延在するように深さ全体にわたって生成され、このことが図10および図11に関連して引き続き詳細に記載される。
【0034】
周辺トレンチ3は、レーザーエッチング、ドライエッチング、およびウェットエッチングから選択された技法を用いて生成されるのが好ましい。最初の2つの技法に関しては、回路層2を保護することは必要ではなく、一方、ウェットエッチングに関しては、所望の部分のみをエッチングするために、層2の上にエッチングマスクを追加することが必要である。
【0035】
例として、トレンチ3は、10μmと500μmの間の幅L1を有するのが有利である。さらに、この周辺トレンチ3は、5mm以下のドナー基板の側縁部13から距離Dlに配置されるのが好ましい。それは、電子部品の作製に引き続き使用されるものであるため、そのような距離によって、回路層2の中央部分を最大限に維持することができる。
【0036】
次いで、回路層2の露出面21、すなわち、その前面、およびトレンチ3の面および底部内部壁も、エッチング停止材料の層4で覆われ、このエッチング停止材料の層4が回路層2のエッチングに対して選択性があり、「第2の停止層」と呼ばれる。
【0037】
このステップは、堆積、好ましくは化学気相成長(CVD)またはスピンコーティングから選択された技法によって行われる。スピンコーティングは、基板の中央部分に粘性材を堆積させること、および中心軸のまわりに基板を回転させることにある。
【0038】
図3に示される層4を形成するステップは、前に形成されたトレンチ3をもちろん充填しないように注意しながら行われる。エッチング停止層4を形成するために使用される材料の粘度および回転速度は、トレンチ3を充填しないように選択される。
【0039】
第1の停止層7および第2の停止層4を形成する材料は、酸化物または窒化物から選択されるのが好ましく、酸化シリコン(SiO2)、シリコン酸窒化物(SiOxy)、シリコン酸炭化物(SiOxy)または窒化シリコン(Si34)から選択されるのがより好ましい。
【0040】
酸化シリコンは、例えば、酸素プラズマまたは酸素アルゴンプラズマ中でテトラメトキシシラン(TEOS)を使用して堆積させられてもよい。
【0041】
第1の停止層7および第2の停止層4を形成する材料は、同一であるのが有利であるがそれに限定されない。
【0042】
トレンチ3を超えて放射状に延在する、材料の周辺リングには、参照記号14がついている。
【0043】
次いで、図4に示されるように、レシーバ基板5が、ドナー基板1上に堆積させられた第2の停止層4に接合される。
【0044】
この接合は、分子接合によって行われるのが好ましい。ドナー基板5は、任意選択でボンディング層50、例えば酸化シリコン(SiO2)の層または窒化シリコン(Si34)の層で覆われていてもよいことが留意される。
【0045】
次いで、図5で見てわかるように、ドナー基板1の薄層化は、裏部101を除去し、エッチング停止層7に達するようにドナー基板1の裏面11から開始する化学エッチングによって実行される。
【0046】
このステップは、引き続きより詳細に記載されるように、レシーバ基板5に接合されていないドナー基板の周辺リング14を、すぐにまたは追加の機械的な薄層化ステップの後に除去する効果も有する。
【0047】
レシーバ基板5に転写された、前面層102の下に埋め込まれた回路層2がこのようにして得られる。このようにして得られた最終基板には、参照記号6がついている(図6参照)。
【0048】
停止層7、ならびに露出面21および回路層2の側縁部上の第2の停止層4の存在によって、回路が化学エッチング薄層化段階中に損傷されないことが保証され、浸入が防止される。
【0049】
停止ゾーンが酸化シリコン停止層7で、裏部101の材料がシリコンである場合、化学エッチング薄層化は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH(tetramethylammonium hydroxide))またはKOH(水酸化カリウム)の槽を使用して実行されるのが有利である。
【0050】
停止ゾーンが停止界面7’であり、裏面層101’がシリコンで前面層102’が高度にドープされたシリコンである場合、化学エッチング薄層化は、硫酸(H2SO4)の溶液、リン酸(H3PO4)、フッ化水素酸(HF)またはプロパン酸(C25COOH)の溶液を使用して実行されてもよい。
【0051】
次に、図7から図9に示される転写プロセスについて記載される。この転写プロセスは、図1から図6に関して以前に記載されたプロセスの変形形態である。同一の構成要素には、同じ数字の参照記号がついている。
【0052】
この場合、l’がつけられたドナー基板は、周辺の削り取りが行われている。削り取られた部分には、参照記号3’がついている。
【0053】
この削り取りは、ドナー基板1’の全周にわたって、それが回路層2を完全に通過し、ドナー基板1’内へ延在するような深さまで実行される。
【0054】
この削り取りは、例えば、ドナー基板1’の側縁部13の一部分に適用されるツールを使用して、研磨または研削によって行われてもよい。
【0055】
したがって、第2の停止層4は、回路層2の露出面21上およびドナー基板1の削り取られた面13’上の両方に堆積させられ得る。
【0056】
レシーバ基板5への接合(図8参照)およびドナー基板1の化学的な薄層化(図9参照)の後に、引き続き記載されるように、レシーバ基板5に転写された回路層2は、すぐにまたは機械研磨の追加のステップの後に得られる。
【0057】
6’がつけられた最終の基板が得られ、これは前部102が前面層102’と置き換えられている点で図6の基板6とは異なる。
【0058】
周辺の環状の削り取りの選択肢について、もっぱら、ドナー基板1’が停止界面7’を備える基板である、図7から図9に関連して記載されたが、停止層7を備える、図1から図6に示されたドナー基板1についてもこの削り取りのステップが行われ得ることが理解されるはずである。
【0059】
反対に、図7から図9のドナー基板1’は、図1から図6に記載されるように周辺トレンチ3の形成が行われてもよい。
【0060】
上記の様々な実施形態では、第1の停止層7の厚さ、および第2の停止層4の厚さは、0.01μmと100μmの間にあるのが好ましい。
【0061】
ここで、ドナー基板1’の周辺トレンチ3の深さに関するパラメータについて、図10Aから図10Dおよび図11Aから図11Dに関連して記載される。これらの図では示されていないが、トレンチ3が周辺の削り取り部3’によって置き換えられるかどうか、またはドナー基板が停止界面7’を有する基板1’であるかどうかの理屈は同じである。
【0062】
図10Aでは、トレンチ3は、それが回路層2を完全に通過し、停止層7に達することなく、ドナー基板1’内へ延在するような深さにわたって生成される。
【0063】
図10Bに示される変形形態では、このトレンチ3は、今回は停止層7に達するが、それを通過しない。
【0064】
これらの両方のシナリオで、裏部101の化学的な薄層化のステップの後に、ならびに図11Aおよび図11Bでそれぞれ見てわかるように、周辺リング14は、大なり小なり材料の厚さだけ前部102に付着したままである。これら両方の場合で、残留するリング14の機械的な除去の追加のステップを、特に横方向の化学機械研磨または研削によって実行することが必要である。
【0065】
図10Cに示される変形実施形態では、周辺トレンチ3は、それがエッチング停止層7を通過するが、ドナー基板1の材料の裏部101内へ侵入しないような深さを有する。
【0066】
この場合、化学エッチングは、周辺リング14を除去するのに十分である。実際、第2の停止層4の残留する厚さ40は、小さすぎ、したがって脆弱すぎて、周辺リング14を保持できない。したがって、この変形形態は、本発明の好ましい変形実施形態である(図11C参照)。
【0067】
最後に、本発明の第4の変形実施形態によると、周辺トレンチ3は、それがエッチング停止層7を通過するだけでなく、裏部101内へ延在するような深さを有する(図10D参照)。
【0068】
この場合、および図11Dに示されるように、化学エッチングステップの後に、第2の停止層4の材料の「段差」41が残ることが観察される。次いで、欠陥のない平坦性を得ることが望まれる場合、この段差は、その小さな厚さのその固有の脆弱性のために、または研削もしくは化学機械研磨によって除去される。
【0069】
本発明の特徴により、回路層2は、その転写中に保護され、それを覆う層102’または前部102は、停止層7の位置を選ぶことによって所望の厚さに調整され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D