特許第6321790号(P6321790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321790バスシステムの調整装置、並びに、バスシステム内でCAN加入者及びCAN FD加入者を駆動する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321790
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】バスシステムの調整装置、並びに、バスシステム内でCAN加入者及びCAN FD加入者を駆動する方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/40 20060101AFI20180423BHJP
   G06F 13/36 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   H04L12/40 Z
   G06F13/36 310E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-521657(P2016-521657)
(86)(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公表番号】特表2016-534594(P2016-534594A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】EP2014071699
(87)【国際公開番号】WO2015052299
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】102013220377.2
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(72)【発明者】
【氏名】ニッケル、パトリック
【審査官】 衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−129672(JP,A)
【文献】 特開2003−198592(JP,A)
【文献】 特開2011−188011(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/150248(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/40
G06F 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスシステム(1)の調整装置(12)であって、
受信されたメッセージ(45、46、47)がCAN FD仕様書に準拠したメッセージ(46)であるか否かに関して、前記受信されたメッセージ(45、46、47)を評価する受信経路評価ユニット(121)と、
前記受信経路評価ユニット(121)の評価の結果、前記受信されたメッセージ(45、46、47)がCAN FD仕様書に準拠したメッセージ(46)であることが判明した場合には、
前記バスシステム(1)のCAN加入者局(10;30)の通信制御装置(11)へとダミーフレームを出力する受信経路出力ユニット(122)と、
を備える、調整装置(12)。
【請求項2】
前記ダミーフレームは、CANフォーマットで正確なCAN構造を表す、請求項1に記載の調整装置(12)。
【請求項3】
前記受信経路評価ユニット(121)は、前記バスシステム(1)の調停フェーズにおいてEDLビットを評価するよう構成される、請求項1又は2に記載の調整装置(12)。
【請求項4】
前記受信経路評価ユニット(121)はさらに、BRSビットを評価するよう構成される、請求項3に記載の調整装置(12)。
【請求項5】
前記受信経路評価ユニット(121)はさらに、メッセージ(45、46、47)の長さを検出するよう構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の調整装置(12)。
【請求項6】
前記受信経路評価ユニット(121)は、フレームの長さを検出するために、DLCフィールドを復号するよう構成され又はバスアクティビティ及び終端セグメントを検知する構成される、請求項5に記載の調整装置(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスシステムの調整装置、並びに、バスシステム内でCAN加入者及びCAN FD加入者を駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のバスシステムは、より大きな帯域幅、より少ない待ち時間、及びより厳密な実時間性能となるよう絶え間なく開発されている。例えば、制御装置、アクチュエータ、センサ、ゲートウェイ等の構成要素をバスシステムによってネットワーク化するために、CANバスが車両の適用においては非常に普及しており、その並列トポロジにより、多くの適用のために非常に良好に適している。データ量が常に増大するため、CAN FDの導入によって、より高速のデータレートへの既存の制御装置及び車両プラットフォームの移行が可能となる。
【0003】
CANバスシステムでは、ISO11898のCAN仕様書に記載されているように、メッセージはCANプロトコルによって伝送される。これについて、最近ではさらに、例えばCAN FDのような、「CAN with Flexible Data−Rate、Specification Version 1.0」(出典:http://www.semiconductors.bosch.de)という仕様書に対応してメッセージが伝送される技術が提案された。このような技術では、をデータフィールド内での1MBit/sの値を超える高速クロックの導入によって、最大可能データレートが上げられる。
【0004】
CANバスシステム内では、例えば、制御装置、アクチュエータ、センサ、ゲートウェイのような従来のCANベースのネットワーク構成要素は大部分が、マイクロコントローラに組み込まれた、通信のためのCANコントローラを利用する。これにより、CANトランシーバ及びコモンモードチョーク(CMC:Common Mode Choke)を含む通信経路に関して、非常に低コストな構成が可能となる。代替的に、例えばSPIインタフェースを介してマイクロコントローラへと接続される統合CANコントローラが存在する。
【0005】
欠点は従来では、バスを統一的に、同一形態の加入者局のみ、例えばCAN加入者局のみ又はCAN FD加入者局のみを用いて設計しなければならないことである。そうでなければ、既存のCAN加入者局とCAN FD加入者局との間に互換性が無いことによって、ネットワーク内でエラーが発生するのがその理由である。このエラーは、従来のCAN加入者局がCAN FDの調停フェーズを許容するが、高レートの真ん中のデータセグメントを解釈する能力がないために、当該データセグメントを誤りがあると判定することにより発生する。既存の加入者局は、例えば、ビットスタッフィング(Bit−Stuffing)が必要な形式に対応していないと評価することになる。結果として、CAN加入者局は、エラーフレーム(Error−Frame)の形態によりエラーをバス上に発する可能性があろうし、これにより、進行中の通信が妨害されるであろう。
【0006】
さらに、バスシステムの既存の構成要素を利用することが場合により望まれることが問題である。このことは、現在では容易に可能ではない。その代りに大抵は、全てのCANコントローラを交換する必要がある。マイクロコントローラにCANコントローラが組み込まれている場合は、マイクロコントローラを交換する必要性が生じる。独立型CANコントローラ(スタンドアローンの(Stand−Alone)CANコントローラ)の場合は、独立型CANコントローラ全体が交換される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、先に挙げた課題を解決するバスシステムの調整装置及び方法を提供することである。特に、CANバスシステム内で必要な際にCAN FD構成要素も低コストで駆動可能であり、またCAN FDバスシステム内で必要な際にCAN構成要素も低コストで駆動可能なバスシステムの調整装置及び方法を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、請求項1の特徴を備えたバスシステムの調整装置によって解決される。調整装置は、受信されたメッセージがCAN FD仕様書に準拠したメッセージであるか否かに関して、受信されたメッセージを評価する受信経路評価ユニットと、受信経路評価ユニットの評価の結果、受信されたメッセージがCAN FD仕様書に準拠したメッセージであることが判明した場合には、バスシステムのCAN加入者局の通信制御装置へとダミー(Dummy)フレームを出力する受信経路出力ユニットと、を備える。
【0009】
加入者局によって、ネットワーク内又はバスシステム内でCAN FD加入者局が使用される際に全CAN加入者局がCAN FD加入者局を許容するという可能性が低コストで提供される。これにより加入者局によって、バスシステム内でCANの構成要素とCAN FDの構成要素とを利用することが可能となり、その際に、このように混合した駆動によってエラーが発生することはない。例えば、CAN FDフレームの送信によって、エラーフレームによるデータ伝送の中断はもはや起こらない。
【0010】
調整装置は、既存のシステムが非常に僅かなハードウェアコスト及びソフトウェアコストで調整可能であるという利点をもたらす。
【0011】
調整装置の有利な更なる別の構成は、従属請求項において示される。
【0012】
ダミーフレームは、CANフォーマットで正確なCAN構造を表すことが可能である。
【0013】
受信経路評価ユニットがバスシステムの調停フェーズにおいてEDLビットを評価するよう構成されるということが可能である。その際に、受信経路評価ユニットはさらに、BRSビットを評価するよう構成されてもよい。追加的又は代替的に、受信経路評価ユニットは、メッセージ内の他の特徴又はパターンであって、メッセージがCAN FDフレームであることを推定させる上記特徴又はパターンを評価するよう構成されてよい。
【0014】
受信経路評価ユニットがさらに、メッセージの長さを検出するよう構成されるということも可能である。その際に、受信経路評価ユニットは、フレームの長さを検出するために、DLCフィールドを復号するよう構成され又はバスアクティビティ及び終端セグメントを検知する構成されてもよい。
【0015】
本課題は、請求項7の特徴を備えたバスシステムの調整装置によって解決される。調整装置は、バスシステムのCAN加入者局の通信制御装置の送信経路内でエラーフレームが送信されるか否かについて評価する送信経路評価ユニットと、送信経路評価ユニットが送信経路内でエラーフレームを検出した場合に、エラーフレームを遮断する送信経路出力ユニットと、を備える。
【0016】
先に記載した第1の調整装置及び第2の調整装置は、バスシステムの加入者局であって、バスシステム内での通信を制御する通信制御装置と、加入者局のメッセージ又は加入者局のためのメッセージを送信又は受信する送信/受信装置と、をさらに備える上記加入者局の構成要素であってもよい。
【0017】
加入者局の更なる別の構成において、第1の調整装置は、通信制御装置の構成要素又は送信/受信装置の構成要素であってもよく、及び/又は、第2の調整装置は、通信制御装置の構成要素又は送信/受信装置の構成要素であってもよい。
【0018】
上述の加入者局は、バス線と、互いに通信出来るようにバス線を介して相互接続された少なくとも2つの加入者局と、を有するバスシステムの構成要素であってもよい。その際に、少なくとも2つの加入者局のうちの少なくとも1つの加入者は、上述の加入者局である。
【0019】
先に挙げた課題は、さらに、バスシステム内でCAN加入者局及びCAN FD加入者局を駆動する方法によって解決される。本方法は、受信されたメッセージがCAN FD仕様書に準拠したメッセージであるか否かに関して、受信経路評価ユニットによって、受信されたメッセージを評価する工程と、受信経路評価ユニットの評価の結果、受信されたメッセージがCAN FD仕様書に準拠したメッセージであることが判明した場合には、受信経路出力ユニットによって、バスシステムのCAN加入者局の通信制御装置へとダミーフレームを出力する工程と、を含み、及び/又は、バスシステムのCAN加入者局の通信制御装置の送信経路内でエラーフレームが送信されるか否かを、送信経路評価装置によって評価する工程と、送信経路評価ユニットが送信経路内でエラーフレームを検出した場合には、送信経路出力ユニットによって、エラーフレームを遮断する工程と、の2つの工程を含む。
【0020】
本方法は、調整装置に関して先に挙げた利点を同じ利点をもたらす。
【0021】
本発明の更なる別の可能な実現は、実施例に関して以前に又は以下に記載される特徴又は実施形態の明示的に挙げられない組み合わせも含む。その際に、当業者は、本発明の各基本形態への改良又は補足を、個々の観点として追加するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下では、本発明が、添付の図面を参照して実施例を用いて詳細に記載される。
図1】第1の実施例に係るバスシステムの簡素化されたブロック図を示す。
図2】第1の実施例に係る調整装置を備えたバスシステムの送信/受信装置の電気回路図を示す。
図3】第1の実施例に係る調整装置によって利用されるCAN FDフレーム構造を示す。
図4】第1の実施例に係る方法のフロー図を示す。
図5】第2の実施例に係る調整装置を備えたバスシステムの送信/受信装置の電気回路図を示す。
図6】第2の実施例に係る方法のフロー図を示す。
図7】第3の実施例に係る調整装置を備えたバスシステムの送信/受信装置の電気回路図を示す。
【0023】
図面では、特に明記しない限り、同一又は機能的に同一の構成要素には同じ符号が付される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、バスシステム1を示しており、このバスシステム1内では、CANプロトコルによるメッセージ又は信号、又はCAN FD仕様書に準拠したメッセージ又は信号が伝送可能である。しかしながら、必要な際には、CANプロトコルによるメッセージ若しくは信号のみ、又はCAN FD仕様書に準拠したメッセージ若しくは信号のみが伝送可能である。バスシステム1は、車両内、特に原動機付き車両内、飛行機内等で、又は、病院内等で利用されうる。
【0025】
図1では、バスシステム1は、複数の加入者局10、20、30を有し、この複数の加入者局10、20、30は各々バス線40に接続されている。バス線40を介して、メッセージ45、46、47は、信号の形態により個々の加入者局10、20、30間を伝送されうる。加入者局10、20、30は、例えば、車両の制御装置又は表示装置であってもよい。
【0026】
図1に示されるように、加入者局10、30は各々、通信制御装置11と、調整装置12と、送信/受信装置13と、を有する。これに対して、加入者局20は、通信制御装置14と、送信/受信装置13と、を有する。加入者局10、20、30の送信/受信装置13は、図1には示されていないが、バス線40に直接接続されている。
【0027】
通信制御装置11、14は、各加入者局10、20、30と、バス線40に接続された加入者局10、20、30のうちの他の加入者局と、のバス線40を介した通信を制御するために用いられる。通信制御装置11は、例えばメッセージ45、47のような、CANプロトコルに準拠したメッセージを生成して処理する。通信制御装置11は、従来のCANコントローラ(CAN−Controller)のように実現されてもよい。従って、加入者局10、30は、CAN加入者局10、30とも称される。通信制御装置14は、例えばメッセージ46のような、CAN FD仕様書に準拠したメッセージを生成して処理する。通信制御装置11は、従来のCAN FDコントローラのように実現されてもよい。従って、加入者局20は、CAN FD加入者局20とも称される。
【0028】
調整装置12は、以下で詳細に記載するように、CAN FD仕様書に準拠したメッセージ46が伝送される場合のための調整アクションを行う。送信/受信装置13は、従来のCANトランシーバ(CAN−Transceiver)のように実現されてもよい。
【0029】
図2は、通信制御装置11と送信/受信装置13との間の調整装置12の構成をより厳密に示している。その際に、通信制御装置11は、図2の調整装置12の左側の、端子TX0、RX0上及び反転端子(invertierter Anschluss)RES上に配置されている。従来のCANトランシーバとしての送信/受信装置13は、図2の調整装置12の右側に配置されている。調整装置12は、本実施例では、通信制御装置11と送信/受信装置13との間の受信経路内、即ち、端子RX0上に配置されている。
【0030】
図2で概略的に示されるように、調整装置12は、受信経路評価ユニット121と、受信経路出力ユニット122と、を有する。受信経路評価装置121は、送信/受信装置13により受信された、メッセージ45、46、47としてのバス信号を評価するために用いられる。受信経路評価ユニット121は、受信されたメッセージがCAN FD仕様書に準拠したメッセージであるか否かに関して、信号又はメッセージ45、46、47を評価する。その際に、受信経路評価ユニット121は、図3に示すような、CAN FDフレームの構造を利用する。受信経路評価ユニット121及び受信経路出力ユニット122の機能は、図4に関連してより詳細に記載される。送信/受信装置13はさらに、熱動開閉ユニット131を備える。
【0031】
図3によれば、CAN FDフレーム内では、調停フィールドの後に制御フィールドが続く。制御フィールドは特に、EDL(EDL=Extended Data Length、拡張データ長)と、BRSビット(BRS=Bit Rate Switch、ビットタイミング(Bittaktung))と、DLCフィールドと(DLC=Data Length Code、データフィールド内のビット数)と、を含む。さらに、CAN FDフレーム内には、ACK及びEOFから成る終端セグメントが含まれている。
【0032】
図4は、本実施例において実行される、バスシステム1内でCAN加入者局10,30及びCAN FD加入者局20を駆動する方法を示している。本方法では、調整装置12が、本方法の開始後に工程S1において、送信/受信装置13からメッセージ45、46、47のうちの1つを受信する。
【0033】
工程S2では、受信経路評価ユニット121が、メッセージ45、46、47のうちの、工程S1で受信されたメッセージを評価する。本実施例では、受信経路評価ユニット121は、EDLビットがリセッシブ(rezessiv)であるか、又はドミナント(dominant)であるかについて評価する。CACN FDフレームを示すEDLビットの場合、特に、リセッシブなEDLビットの場合には、フローは工程S3へと進む。他のEDLビットの場合、特にドミナントなEDLビットの場合には、CAN FDフレームではなくて通常のCANメッセージであるため、フローは工程S4へと進む。
【0034】
工程S3では、受信経路出力ユニット122が、ダミーフレーム又はダミーバースト(Dummy−Burst)を生成する。ダミーフレームは基本的に、従来のフォーマットで、特にビットスタッフィング(Bit−Stuffing)が施された正確なCAN構造を表わす。この後で、フローは工程S4へと進む。
【0035】
工程S4では、受信経路出力ユニット122が、ダミーフレーム、又は、変更されていないCANメッセージを受信方向に出力し、即ち、端子RX0を介して通信制御装置11へと出力する。この後で、本方法は終了する。
【0036】
従って、調整装置12は、変更の無い通常のCANメッセージを通信制御装置11へと出力し、CAN加入者局10、30に適するように対応してCAN FDメッセージを変更する。
【0037】
第1の実施例の変形例によれば、受信経路評価ユニット121は、工程S2において、EDLビットに加えてBRSビットも評価する。従って、メッセージのデータ長が拡張されているか否かついての標識の他に、データレートが上がっているか否かに関する標識も評価される。EDLビット及びBRSビットによって、CAN FDフレームであることが判明した場合には、即ち、EDLビットが特にリセッシブで、BRSビットが特にリセッシブである場合には、フローは工程S3へと進む。EDLビット及びBRSビットによって、CAN FDフレームではないことが判明した場合には、フローは工程S4へと進む。BRSビットの代わりに又はBRSビットに加えて、工程S2では、メッセージがCAN FDフレームであることを確実に推定しうるために、CAN FDフレームの1つ以上の他の特徴も評価することが可能である。
【0038】
第1の実施例の更なる別の変形例によれば、受信経路評価ユニット121は、工程S2において、CAN FDを検出して場合により変更して伝達することに加えて、受信経路内でメッセ―ジ45、46、47のうちの1つのメッセージの長さを検知してもよい。このことは、DLCフィールド(DLC=Data Length Code=データフィールド内のビット数)の復号を介して行われてもよく、又は、バスアクティビティ及びCAN FDフレーム内の終端セグメント(ACK、EOF)の検出によって行われてもよい。RX0端子上の通信制御装置11に伝達される際には、ダミーフレームの内容が、対応する長さに渡って構成され、CANフレームの終りが有効な状態で終端する。これには、チェックサム(CRC)ACK及びEOFが含まれる。
【0039】
第1の実施例及びその変形例では、全メッセージの一意のアドレス指定が調停部において既に行われているために、調整装置12の調整によって、間違ったメッセージが、特にダミーフレームの内容を介して、CANノードに届いてしまうということが排除されていることに注意されたい。CAN FDメッセージには、使用されておらずかつ衝突を引き起こさないCANアドレスが常に付けられる。これまで利用されていないアドレスを利用するメッセージは、任意の内容のでも解釈されず、利用されない。
【0040】
図5は、第2の実施例に係る調整装置12の構成を示しており、ここでは、調整装置12は、第1の実施例のように、再び通信制御装置11と送信/受信装置13との間に配置されている。しかしながら、本実施例に係る調整装置12は、端子TX0上の通信制御装置11と、送信/受信装置13と、の間の送信経路内に配置されている。送信/受信装置13は再び従来のCANトランシーバであり、図5の調整装置12の右側に配置されている。
【0041】
本実施例では、調整装置12は、送信経路評価ユニット123と、送信経路出力ユニット124と、を含む。送信経路評価ユニット123は、メッセージ45、46、47のうちの、通信制御装置11から送信/受信素子13へと送信されたメッセージを評価するために用いられる。送信経路評価ユニット123は、送信されたメッセージがエラーフレームであるか否かに関してメッセージを評価する。
【0042】
図6は、本実施例で実行される、バスシステム1内でCAN加入者局10、30及びCAN FD加入者局20を駆動する方法を示している。本方法では、調整装置12が、本方法の開始後に工程S11において、端子TX0を介して通信制御装置11からメッセージ45、46、47のうちの1つのメッセージを受信する。その後に、フローはS12へと進む。
【0043】
工程S12では、送信経路評価ユニット123は、上述のように、工程S11で通信制御装置11から受信されたメッセージを評価する。エラーフレームである場合には、フローは工程S13へと進む。エラーフレームではない場合には、フローは工程S14へと進む。
【0044】
工程S13では、送信経路出力ユニット124がエラーフレームを遮断する。この後に本方法は終了する。
【0045】
工程S14では、送信経路出力ユニット124が、メッセージ45、46、47のうちの、通信制御装置11により送信されたメッセージを送信方向へと出力し、即ち、送信/受信装置13へと出力する。この後で、本方法は終了する。
【0046】
他の点に関しては、本実施例は、第1の実施例で記載したように構成されている。
【0047】
図7に示されるように、第3の実施例に係る調整装置12は、第1の実施例及び/又はその変形例に係る受信経路評価ユニット121及び受信経路出力ユニット122と、第2の実施例に係る送信経路評価ユニット123及び送信経路出力ユニット124と、を備える。
【0048】
従って、本実施例では、図4に係る方法及び図6に係る方法が実行される。
【0049】
要約すると、上述の実施例によれば、例えば、新しいタイプのトランシーバが使用され、この新しいタイプのトランシーバは、既存のトランシーバと比べて、送信側の通常のバスドライバ及び受信側のシュミットトリガ(Schmitt−Trigger)の他に、追加的なロジック部、即ち調整装置12を含む。このロジック部は、完全なCANコントローラに比べて非常に簡素化されているが、受信の場合には、例えば調停フェーズを評価することが可能であり、CAN FDフレームの検出時には、ダミーフレームを通信制御装置11へと伝達することが可能である。拡張案又は代替案として、送信の場合にエラーフレームが遮断されうる。これにより、CANトランシーバは、混合型のネットワークと、例えば従来のCANコントローラがチップに統合された従来のCANベースの制御装置と、の間のブリッジとして利用可能である。制御装置のこの構成要素(CANトランシーバ)のみを交換すること又は当該構成要素を他の形態により装備することにより、ユーザは、既存の構成要素を高速のCAN FDネットワーク内で使用し、逆に、CAN FDベースの構成要素をCANベースのネットワークに導入することが可能である。
【0050】
第1〜第3の実施例に係るバスシステム1と、加入者局10、20、30と、方法と、の上述の構成は全て、個別に又は全ての可能な組み合わせにおいて利用されうる。追加的に、特に以下の変更が構想されうる。
【0051】
第1〜第3の実施例に係る上述のバスシステム1は、CANプロトコルに基づくバスシステムを用いて記載される。しかしながら、第1〜第3の実施例に係るバスシステムは、他の形態の通信ネットワークであってもよい。バスシステム1で、少なくとも特定期間の間、バス線40又はバス線40の共有チャネルへの加入者局10、20、30の衝突の無い排他的なアクセス権が保証されていることは有利ではあるが、必ずしも前提条件ではない。
【0052】
第1〜第3の実施例に係るバスシステムは、特にCANネットワーク又はCAN FDネットワーク又はLINネットワーク又はFlexRayネットワークが並行して駆動可能なネットワークである。
【0053】
第1〜第3の実施例に係るバスシステム1内の加入者局10、20、30の数及び構成は、任意である。特に、加入者局10のみ又は加入者局30のみが、第1〜第3の実施例のバスシステム1内に存在してもよい。
【0054】
バス信号又はメッセージ45、46、47の評価は、加入者局10、30の送信/受信経路内の様々な箇所で行われてもよい。さらに、CA信号の様々な特性がCA FDフレームの検出のために使用可能であり、従って、低コストでの実装が実現される。CAN FD識別ビット(EDL、BRS)の他に、アドレス範囲に基づく評価が行われてもよい。
【0055】
調整装置12の機能を拡張するために、設定可能/プログラム可能なアドレス範囲フィルタを追加することが構想されうる。
【0056】
「プリテンディッドネットワーキング」(Pretended Networking)及び「パーシャルネットワーキング」(Partial Networking)という意味での節電機能をサポートするために、調整装置12の先に挙げた機能を、調整装置12の変更すべき構成要素に一緒に実装することが可能である。これに加えて、節電モードからハードウェア構成要素を起動させるために、外部への追加的な制御線が構想可能である。さらに、メッセージを遅延させて伝達できるために、バッファが組み込まれうる。
【0057】
上述の実施例の機能は、第1〜第3の実施例に関して、トランシーバ若しくは送信/受信装置13、又は、通信制御装置11等に実装される。さらに、CAN送信/受信経路の既存の構成要素への組み込み、特に、コモンモードチョーク(CMC:Common Mode Choke)等への組み込みも構想可能である。追加的又は代替的に、特に別体の構成要素として、既存の製品に組み込まれてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7