特許第6321798号(P6321798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321798フォンダパリヌクスナトリウムを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321798
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】フォンダパリヌクスナトリウムを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 1/00 20060101AFI20180423BHJP
   C07H 15/04 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   C07H1/00
   C07H15/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-528607(P2016-528607)
(86)(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公表番号】特表2016-525145(P2016-525145A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】IB2013002376
(87)【国際公開番号】WO2015011519
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2016年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】513105579
【氏名又は名称】サイノファーム タイワン,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】クオ ルン−ホワーン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シャーン−ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ワーン リー−ティーン
(72)【発明者】
【氏名】シー ウエン−リー
(72)【発明者】
【氏名】リヤオ ユエン−シウ
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0116066(US,A1)
【文献】 特開平05−331182(JP,A)
【文献】 特表2010−517998(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0306757(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103122012(CN,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02557086(EP,A2)
【文献】 KOZIOL, A. et al.,A Fast and Effective Hydrogenation Process of Protected Pentasaccharide: A Key Step in the Synthesis of Fondaparinux Sodium,Organic Process Research & Development,2013年,17,pp. 869-875
【文献】 LIN F. et al.,Synthesis of Fondaparinux: modular synthesis investigation for heparin synthesis,CARBOHYDRATE RESEARCH,2013年,371,pp. 32-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式ABCDE4:
【化1】
の化合物を、
フォンダパリヌクスナトリウム(Fondaparinux sodium):
【化2】
に変換する工程を含む、フォンダパリヌクスナトリウムを調製する方法であって、
ここで、前記変換開始前、化合物ABCDE4はpH8.0〜9.0を有する溶液内にあり、そして、
前記変換は9.0未満の反応pHで三酸化硫黄-アミン錯体の存在下にて実施される、前記方法。
【請求項2】
前記変換は、7.5〜9.0未満の反応pHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三酸化硫黄-アミン錯体は、三酸化硫黄-ピリジン錯体、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄-トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄-ジメチルエチルアミン錯体、三酸化硫黄-ジメチルアニリン錯体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記三酸化硫黄-アミン錯体は、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
成されたフォンダパリヌクスナトリウムは、
以下のABCDE4-4S-1、ABCDE4-4S-2、ABCDE4-4S-3、ABCDE4-4S-4、ABCDE4-4S-5、ABCDE4-4S-6:
【化3-1】
【化3-2】
の混合物を1%未満で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記式ABCDE4の化合物は、前記変換工程の前に、活性炭を用いて精製される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記変換は、7.5〜8.5の反応pHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
8.0〜9.0未満の反応pHで三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体の存在下にて、
式ABCDE4:
【化4】
の化合物を、
フォンダパリヌクスナトリウム:
【化5】
に変換する工程を含む、フォンダパリヌクスナトリウムを調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォンダパリヌクスナトリウム(Fondaparinux sodium)を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォンダパリヌクスナトリウム(CAS 114870-03-0)は、Choay, S.A.(米国特許第4,818,816号参照)により開発された、O-[2-デオキシ-6-O-スルホ-2-(スルホアミノ)-α-D-グルコピラノシル]-(1--4)-O-(β-D-グルコピラヌロノシル)-(1--4)-O-[2-デオキシ-3,6-ジ-O-スルホ-2-(スルホアミノ)-α-D-グルコピラノシル]-(1--4)-O-(2-O-スルホ-α-L-イドピラヌロノシル)-(1--4)-O-[2-デオキシ-1-O-メチル-6-O-スルホ-2-(スルホアミノ)-α-D-グルコピラノシド]デカナトリウム塩という化学名を持つオリゴ糖/ヘパリンのメンバーである。この化合物は、整形外科手術を受けた患者における深部静脈血栓症の予防、ならびに深部静脈血栓症および肺塞栓症の治療に使用され、抗凝固薬として指示される合成五糖類Xa因子阻害剤である。これは、2001年に米国食品医薬品局によって承認され、商品名Arixtra(商標)の下で皮下投与用として販売されている。
【0003】
米国特許第4,818,816号に開示されたフォンダパリヌクスナトリウムの調製方法は、最終生成物を得るために60を超える工程を要し、収率も低いため大規模生産には不向きである。
【0004】
米国特許第8,288,515号は、フォンダパリヌクスナトリウムを調製するために保護および脱保護工程を適用する。しかし、脱保護工程により、収率が低くなり追加的な反応時間がかかってしまう。
【0005】
もう一つの方法としては、米国特許出願第2011/0306757号に開示のものがあるが、追加的なアジドの還元工程により更なる精製が必要であり、最終的なN-スルホン化工程での収率は低い(68%)ままである。
【0006】
米国特許出願第2012/0116066号は、フォンダパリヌクスナトリウムおよびその中間体の調製について記載する。しかし、EMod3といったいくつかの中間体の調製にカラム精製が必要である。また、CモノマーおよびDモノマーとの間の結合におけるα/β比が低く、そして、時間のかかる手続きが数多くあるので最適ではない。
【0007】
上記の観点より、フォンダパリヌクスナトリウムの工業的製造のために、より高い収率/純度が得られる単純な方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、フォンダパリヌクスナトリウムを調製するための経済的な方法を提供する。
【0009】
一の態様では、本発明は、9.0以下の反応pHで、式ABCDE4の化合物を三酸化硫黄-アミン錯体に接触させる工程を含む、フォンダパリヌクスナトリウムを調製する方法を提供する。
【0010】
【化1】
【0011】
好ましくは、三酸化硫黄-アミン錯体は、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄-トリエチルアミン錯体、および三酸化硫黄-ジメチルエチルアミン錯体等の三酸化硫黄トリアルキルアミン錯体、三酸化硫黄-ジメチルアニリン錯体等の三酸化硫黄-ジアルキルアニリン錯体、および三酸化硫黄-ジメチルホルムアミド錯体、ならびにそれらの混合物、からなる群から選択される。より好ましくは、三酸化硫黄-アミン錯体は、三酸化硫黄-トリメチルアミンまたは三酸化硫黄-トリエチルアミン錯体である。
【0012】
従来、pH9〜9.5で三酸化硫黄-ピリジン錯体(SO3-Py)を用いてフォンダパリヌクスを調製すると、不純物が最終生成物内に存在した。米国特許出願第2012/0116066号を参照のこと。いくつかの不純物、例えば脱硫酸化不純物の構造を以下のスキーム1に示す。更に、SO3-Pyを用いて調製したフォンダパリヌクスナトリウムは、茶色の固体であり、製薬業界において好ましくない。
【0013】
【化2】
【0014】
三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体の使用により、SO3-Pyを使用する従来の方法に比べて不純物が減少したこと、およびフォンダパリヌクスナトリウムが茶色ではなく白色の固体として得られたことが見出された。さらに、本明細書に記載の方法の使用により、上記のスキーム1に示す脱硫酸化不純物の発生が減少する。一群の実施形態では、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体を使用して調製したフォンダパリヌクスナトリウムは、最終生成物における脱硫酸化不純物が約3%未満、または最終生成物における脱硫酸化不純物が約2%未満、好ましくは、最終生成物における脱硫酸化不純物が約1.55%未満である。
【0015】
好ましくは、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体を使用する硫酸化反応は、約8.0〜9.0のpH範囲で実施される。より好ましくは、三酸化硫黄-トリエチルアミンを使用する硫酸化反応用の反応混合物のpHは8.0である。反応混合物のpHが9.0を超えると、ABCDE4の過硫酸化が見られ、以下の過硫酸化不純物(以下のスキーム2に示すABCDE4-4S-1〜ABCDE4-4S-6)が不純物としてかなり生じてしまう。
【0016】
【化3-1】
【化3-2】
【0017】
種々の反応pH範囲を比較すると、反応をpH=8.5で実施すると過硫酸化不純物の合計量が低い(1.55%)が、一方、反応をpH=10.5で実施すると不純物はより多く生じた(13.37%)ことが発見された。また、これらのABCDE4溶液のpH値および反応混合物をpH8.0〜9.0の範囲に制御すると、フォンダパリヌクスナトリウムにおける過硫酸化による不純物の量が更に0.7%まで減少した。したがって、ここに記載の方法は、最終フォンダパリヌクス生成物における(脱硫酸化不純物および過硫酸化不純物を含む)不純物を減少させる。一群の実施形態では、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体を使用して調製したフォンダパリヌクスナトリウムは、最終生成物における過硫酸化不純物が約3%未満、または最終生成物における過硫酸化不純物が約2%未満、好ましくは、最終生成物における過硫酸化不純物が約1.55%未満、より好ましくは、最終生成物における過硫酸化不純物が約1%または0.8%未満である。本方法では、粗フォンダパリヌクスナトリウムの純度は約90%であった。
【0018】
Sanofi-Synthelaboは、米国特許出願第2005/020536号において、以下のスキーム3に示す関連シクロヘキシル不純物の含有量を低減するために、活性炭を用いる最終工程によりフォンダパリヌクスを精製できると報告した。対照的に、本発明の方法は、三酸化硫黄アミン錯体と反応させる前に、中間体である式ABCDE4の化合物を活性炭により精製することを含む。本発明は、最終生成物つまりフォンダパリヌクスではなく、中間体つまりABCDE4混合物から不純物を除去するために活性炭を使用する。したがって、本明細書に記載の方法は、合成の後半で行う硫酸化工程の前に、活性炭を用いてシクロヘキシル不純物を早期に除去することによって最終フォンダパリヌクス生成物の純度を更に高める。
【0019】
【化4-1】
【化4-2】
【発明を実施するための形態】
【0020】
I.概要
本発明は、フォンダパリヌクスナトリウムを調製するための方法を提供する。この本明細書に記載の新規な方法により、フォンダパリヌクスナトリウムをより高い収率かつより少ない不純物で得られる。本発明の方法は、特定の合成工程に必要な時間を減ずることにより製造コストを低減させる。
【0021】
II.定義
本明細書で使用する用語「接触」とは、少なくとも2つの異なる種同士が反応できるように接触させるプロセスを指す。しかし、得られる反応生成物は、添加試薬同士の反応から直接的に生じてもよく、あるいは反応混合物中で生じる添加試薬の1つまたは複数由来の中間体からも生じてもよいことが、理解されるべきである。
【0022】
特に明記しない限り、本明細書で使用する用語「アルキル」は、それ自体または他の置換基の一部としての、直鎖または分枝鎖炭化水素ラジカルを意味する。アルキル置換基並びに他の炭化水素置換基は、当該置換基中の炭素原子数を示す指示子を含んでもよい(すなわち、C1〜C8は、1〜8個の炭素原子数を意味する)が、このような指示子は省略されていてもよい。特に明記しない限り、本発明のアルキル基は、1〜12個の炭素原子を含む。例えば、アルキル基は、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7、1〜8、1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、2〜3、2〜4、2〜5、2〜6、3〜4、3〜5、3〜6、4〜5、4〜6または5〜6個の炭素原子を含み得る。アルキル基の例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、等が挙げられる。
【0023】
アルキル、フェニル、およびベンジルについて言及する際に本明細書で使用する用語「置換された」は、1つまたは複数の置換基、典型的には、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、低級アルキル(例えば、C1-4アルキル)、低級アルコキシ(例えば、C1-4アルキル-O-)、低級アルキルアミノ(例えば、C1-4アルキル-NH-)、ジ-低級アルキルアミノ(例えば、ジ-C1-4アルキルアミノ)、およびハロアルキル、等の非干渉置換基から選択される1個〜3個の置換基により置換されたことを指す。当業者は、追加的な置換されたアルキル、フェニル、およびベンジルが、公知であり、本発明の文脈において有用であることを理解するであろう。
【0024】
様々な保護基および保護試薬(ヒドロキシル保護試薬を含む)が当業者に知られており、例えば、その全体が参照により本明細書に援用されるProtective Groups in Organic Synthesis,4th edition,T. W. Greene, and P. G. M. Wuts,John Wiley & Sons,New York,2006に開示されている化合物が挙げられる。
【0025】
III. 発明の実施形態
本明細書に記載する方法における出発材料ABCDE4は、以下のような一連の工程により調製される。まず、ABC1を、以下の工程(a)および(b)により調製する。
a)式A4:
【0026】
【化5】
【0027】
の化合物を変換して、式A5:
【0028】
【化6】
【0029】
の化合物を設ける工程;および、
b)式ABC1:
【0030】
【化7】
【0031】
の化合物を提供するのに十分な条件下で、
式A5の化合物を式BC8:
【0032】
【化8】
【0033】
の化合物と接触させる工程。
【0034】
上記工程(a)において、A4からA5への変換は塩基およびトリクロロアセトニトリルの存在下にて実施される。一群の実施形態では、塩基は有機アミン(例えば、DBU、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピロリジン、またはかかる他の任意の有機塩基)である。別の一群の実施形態では、塩基は、無機塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、またはかかる他の任意の無機塩基)である。特にDBU、炭酸カリウム、およびそれらの混合物では、塩基の数がこの変換において有用である。好ましくは、使用される塩基は、アルカリ塩基である。
【0035】
上記工程(b)における、式ABC1の化合物を設けるために式A5の化合物を式BC8の化合物と接触させる工程は、一般的に促進剤の存在下、有機溶媒中で実施される。エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、MTBE、IPE、ジグリム、トルエン、DCM、DCE、およびそれらの混合物等の様々な溶媒が有用である。一群の実施形態では、溶媒は、ジエチルエーテル、MTBE、IPE、ジグリム、トルエン、DCM、およびそれらの混合物から選択される。一群の実施形態では、溶媒は、MTBEに0〜20%のトルエンまたはDCMを含む混合物である。別の実施形態では、溶媒は、MTBEに約15〜25%のトルエンを含む、より好ましくは、MTBEに約20%のトルエンを含む混合物である。当該一群の実施形態で使用する促進剤は、トリアルキルシリル、トリフルオロメタンスルホネート、およびトリアルキルシリルとトリフルオロメタンスルホネートの混合物から選択される。一群の実施形態では、促進剤は、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)、トリエチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TESOTf)、tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBSOTf)、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)、およびそれらの混合物である。個々のトリアルキルシリルトリフラート(例えば、TMSOTf、TESOTf、およびTBSOTf)、あるいはそれらの混合物を本明細書では包括的に「トリアルキルシリル」と総称する。実施例1は、ABC1を調製するための例示的な手順を示す。当業者は、化合物A5のトリクロロアセトイミデート基の代わりに他の脱離基を用いてもよいことを理解するであろう。当業者は、ABC1を調製するためのBC8との反応は、脱離基の選択に応じて、他の条件下でも実施できることを理解するであろう。
【0036】
その後、以下のような一連の工程を経てABC1をABCDE4に変換する。(1)まず、促進剤、有機溶媒、塩基、およびアシル化剤の存在下にて、ABC1をケタール加水分解生成物ABC2に変換する。一般的に、反応は、おおよそ周囲温度(例えば、20℃〜30℃)、場合により更に高い温度で、実施される。適切な促進剤として、トリアルキルシリル、トリフルオロメタンスルホネート、およびトリアルキルシリルとトリフルオロメタンスルホネートとの混合物が挙げられる。例示的なケタール加水分解およびアノマーアシル化を実施例2に示す。(2)ABC2におけるアノマー位のアセチル基を、塩基および非プロトン性溶媒の存在下にて切断し、化合物ABC3を設ける。非プロトン性溶媒の例として、トルエン、キシレン、THF、EA、DCM、DCE、等が挙げられる。例示的なアセチル基の切断を実施例3に記載する。(3)脱離基を、ABC3のアノマー基に導入して、化合物ABC4を設ける。適切な脱離基の例として、ハロゲン、活性化エステル、アセトイミデート、等が挙げられる。一般的に、反応は、非プロトン性溶媒中で実施される。非プロトン性溶媒の例として、トルエン、キシレン、THF、EA、DCM、DCE、等が挙げられる。トリクロロアセトイミデート(TCA)脱離基の例示的な導入を実施例4に示す。
【0037】
(4)促進剤が存在する有機溶媒中でABC4をチオールと反応させることにより、ABC4からチオドナー化合物ABC5を生成する。一般的に、反応は、非プロトン性溶媒中で実施される。非プロトン性溶媒の例として、トルエン、キシレン、THF、EA、DCM、DCE、等が挙げられる。適切な促進剤として、トリアルキルシリル、トリフルオロメタンスルホネート、およびトリアルキルシリルとトリフルオロメタンスルホネートとの混合物が挙げられる。チオフェニル基の例示的な導入を実施例4に記載する。一般的に、反応混合物は塩基を含む。塩基の例として、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、等の有機塩基,または炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、等の無機塩基が挙げられる。当業者は、チオドナー部分の導入は、様々な条件下で可能であり、化合物中に存在する脱離基に依存することを理解するであろう。
【0038】
(5)チオドナー化合物ABC5を、DE4等のアクセプター化合物と反応させて、オリゴ糖ABCDE1を得る。反応は、ラジカル開始剤および/または促進剤が存在する有機溶媒中で実施される。一般的に、反応は、非プロトン性溶媒中で実施される。非プロトン性溶媒の例として、トルエン、キシレン、THF、EA、DCM、DCE、等が挙げられる。反応は、一般的に約-30℃〜約40℃の範囲の温度で実施される。適切な促進剤として、トリアルキルシリル、トリフルオロメタンスルホネート、およびトリアルキルシリルとトリフルオロメタンスルホネートとの混合物が挙げられる。ラジカル開始剤の非限定的な例としてN-ヨードスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、等が挙げられる。ドナーとアクセプター化合物との例示的な反応を実施例5に示す。当業者は、ドナー-アクセプター反応は、様々な条件下で可能であり、化合物中に存在するチオドナー部分およびアクセプター部分に依存することを理解するであろう。
【0039】
ABCDE1からABCDE5への変換は、以下のように達成される。(6)ABCDE1のエステル基を、過酸化物および塩基が存在する非プロトン性溶媒中で切断して、ABCDE2を設ける。非プロトン性溶媒の例として、トルエン、キシレン、THF、EA、DCM、DCE、等が挙げられる。反応は、一般的に最初は10℃未満の温度で、その後周囲温度(例えば、20℃〜30℃)に温めて実施される。実施例6は、オリゴ糖におけるエステル切断の例示的な手順を示す。(7)その後、ABCDE2を塩基の存在下にてO-硫酸化し、ABCDE3を設ける。反応は、一般的に、非プロトン性溶媒中で硫酸化試薬を用いて硫酸基を導入し、その後塩基を添加して硫酸基に対イオンを導入することにより実施される。実施例7は、硫酸ナトリウム基の導入の例示的な手順を示す。(8)適切な条件下でABCDE3内のCbz保護基を除去して、ABCDE4を設ける。いくつかの場合、アジド基をアミン基に還元する水素化を利用する。水素化は、典型的には周囲温度(例えば、20℃〜30℃)で1〜5日間、好ましくは、1〜3日間の期間実施される。実施例8は、ABCDE3からABCDE4への変換の例示的な手順を示す。
【0040】
上記のように調製したABCDE4を、本明細書で提供する方法において使用する。第1の態様では、本願は、
式ABCDE4:
【0041】
【化9】
【0042】
の化合物を、
フォンダパリヌクスナトリウム:
【0043】
【化10】
【0044】
に変換する工程を含む、フォンダパリヌクスナトリウムを調製するための方法であって、
ここで前記変換は約9.0未満の反応pHで実施される、前記方法を提供する。
【0045】
一群の実施形態では、変換は硫酸化反応である。一群の実施形態では、前記変換は、約7.0〜9.0、約7.5〜9.0、約8.5〜9.0、好ましくは、約8.0〜9.0の反応pHで実施される。別の一群の実施形態では、前記変換は、約7.0〜8.5、または約7.5〜8.5の反応pHで実施される。
【0046】
一群の実施形態では、変換は、硫酸化剤の存在下にて実施される。一群の実施形態では、変換は、三酸化硫黄-アミン錯体の存在下にて実施される。三酸化硫黄-アミン錯体は、一般的に芳香族またはアルキルアミン三酸化硫黄錯体から選択される。一群の実施形態では、三酸化硫黄-アミン錯体は、三酸化硫黄-ピリジン錯体、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄-トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄-ジメチルエチルアミン錯体、三酸化硫黄-ジメチルアニリン錯体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。選択的な実施形態では、三酸化硫黄-アミン錯体は、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体である。
【0047】
一例では、変換を、ABCDE4溶液を用いて約8.0〜9.0の反応pHで実施したとき、上述の方法を用いて形成されたフォンダパリヌクスナトリウムは、ABCDE4-4S-1、ABCDE4-4S-2、ABCDE4-4S-3、ABCDE4-4S-4、ABCDE4-4S-5、ABCDE4-4S-6の混合物を約1%未満で含む。ここで、ABCDE4-4S-1、ABCDE4-4S-2、ABCDE4-4S-3、ABCDE4-4S-4、ABCDE4-4S-5、ABCDE4-4S-6は、本明細書の「発明の概要」の欄で説明した通りである。
【0048】
上述の方法のいくつかの実施形態では、式ABCDE4の化合物は、変換工程の前に、活性炭を用いて精製される。かかる実施形態のいくつかでは、活性炭に接触したABCDE4は、水溶液の形態である。かかる実施形態のいくつかでは、ABCDE4溶液と活性炭との接触は、周囲温度(例えば、20℃〜30℃)で実施される。代替的な実施形態では、ABCDE4溶液と活性炭との接触は、より高い温度(例えば、周囲温度より高く溶媒の沸点未満の温度)で実施される。
【0049】
第2の態様では、本願は、
三酸化硫黄トリアルキルアミン錯体の存在下にて、式ABCDE4:
【0050】
【化11】
【0051】
の化合物を、
フォンダパリヌクスナトリウム:
【0052】
【化12】
【0053】
に変換する工程を含む、フォンダパリヌクスナトリウムを調製する方法を提供する。
【0054】
上述の方法についての一群の実施形態では、三酸化硫黄-トリアルキルアミン錯体は、三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄-トリエチルアミン錯体、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、三酸化硫黄-トリアルキルアミン錯体は三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体である。
【0055】
一群の実施形態では、三酸化硫黄-トリアルキルアミン錯体の存在下にて実施される反応は、硫酸化反応である。一群の実施形態では、反応は、約7.0〜9.0、約7.5〜9.0、約8.5〜9.0、好ましくは、約8.0〜9.0の反応pHで実施される。別の一群の実施形態では、反応は、約7.0〜8.5、または約7.5〜8.5の反応pHで実施される。
【0056】
第3の態様では、本願は、
約8.0〜9.0の反応pHで三酸化硫黄-トリメチルアミン錯体の存在下にて、
式ABCDE4:
【0057】
【化13】
【0058】
の化合物をフォンダパリヌクスナトリウム:
【0059】
【化14】
【0060】
に変換する工程を含む、フォンダパリヌクスナトリウムを調製する方法を提供する。
【実施例】
【0061】
本発明をさらに詳細に説明するために、以下の実施例を示す。しかしながら、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるものではない。本明細書及び実施例において以下の略語を使用する:DCMはジクロロメタンである;EAは酢酸エチルである;THFはテトラヒドロフランである;MTBEはメチルtert-ブチルエーテルである;DMAcはジメチルジメチルアセトアミドである;OTCAはトリクロロアセトイミデート基である;DCEはジクロロエタンである;IPEはイソプロピルエーテルである;CBzはカルボキシベンジル、カルバメート保護基である。化合物BC8は、米国出願公開第2012/0083594号に従って調製できる。化合物A4は、J. Am Chem Soc.,2005,127,3767-3773;またはTetrahedron:Asymmetry,2005,16(2),411-424の手順に従って調製できる。
【0062】
実施例1
ABC1の調製
【0063】
【化15】
【0064】
A4→A5
四つ口丸底フラスコに、機械的撹拌機と温度計を備え付けた。このフラスコに、A4(32g,75mmol,1.4当量)、トルエン(64mL)、K2CO3(52g,374mmol,7.0当量)、およびCCl3CN(37mL,374mmol,7.0当量)を、20〜30℃で窒素下にて添加した。この混合物を、20〜30℃で4時間撹拌した。この混合物を濾過し、濾過ケーキをトルエン(64mL)で洗浄した。濾液と洗浄液を混合し、A5を含むトルエン溶液を得た。-10℃未満に冷却した後、A5/トルエン溶液を使用する準備が整った。
【0065】
BC8→ABC1
四つ口丸底フラスコに、機械的撹拌機と温度計を備え付けた。このフラスコに、BC8(32g,53mmol,1当量)およびMTBE(576mL)を、20〜30℃で窒素下にて添加した。この混合物を、溶解するために45℃未満に加熱した。20〜30℃に冷却した後、3Åの分子篩(15g)をこの混合物に添加し、得られた混合物をこの温度で2時間撹拌した。その後、この混合物を-35〜-25℃に冷却した。TBSOTf(5mL,21mmol,0.4当量)を-35〜-25℃で添加し、この混合物をこの温度で約15分間撹拌した。得られたBC8および3Åの分子篩をMTBE内に含有する混合物を、使用する準備が整った。
【0066】
A5/トルエン溶液を含むフラスコに、BC8および3Åの分子篩を含むMTBEの混合物を、温度を-35〜-25℃に保ちつつ30分かけて添加した。この混合物を、-35〜-25℃で1時間撹拌した。トリエチルアミン(23mL,160mmol,3当量)およびAc2O(5mL,53mmol,1当量)を、-35〜-25℃で順次添加した。この混合物を、約50℃に加熱し6時間撹拌した。この混合物を濾過し、濾過ケーキをMTBE(64mL)で洗浄した。濾液と洗浄液を混合し、濃縮して粗ABC1溶液を得た。粗ABC1溶液を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー;溶出溶媒:EtOAc/n-ヘプタン(最初の溶出溶媒は1:4、その後2:3)を用いて精製し、その後濃縮してABC1を含むEtOAc/n-ヘプタン(1/1)溶液(50g,88%)を得た。
【0067】
実施例2
ABC2の調製
【0068】
【化16】
【0069】
三つ口丸底フラスコに、機械的撹拌機と温度計を備え付けた。このフラスコに、前もって調製したABC1を含むEtOAc/n-ヘプタン溶液(162mL,1/1(v/v))を、20〜30℃で窒素下にて添加した。この混合物を0〜10℃に冷却した後、Ac2O(16.3g,0.16mol,3.0当量)およびTMSOTf(3.6g,0.02mol,0.3当量)を、この温度で順次添加した。この混合物を、0〜10℃で10時間以上撹拌した。トリエチルアミン(45mL,0.27mol,6.0当量)を0〜10℃でゆっくりと加えた。この混合物を、0〜10℃で1時間撹拌した。20%NaCl水溶液(64mL,2vol)を0〜10℃でゆっくりと加えた。この混合物を2時間撹拌した。分離した水性部分は廃棄した。ABC2を含有するEtOAc/n-ヘプタン(1/1(v/v))溶液を含む分離有機部分を、次の工程に使用する準備が整った。
【0070】
実施例3
ABC3の調製
【0071】
【化17】
【0072】
三つ口丸底フラスコに、機械的撹拌機と温度計を備え付けた。このフラスコに、前もって調製したABC2を含むEtOAc/n-ヘプタン(1/1(v/v))溶液を、20〜30℃で窒素下にて添加した。H2NNH2-H2O(3.8g,80mmol,1.4当量)を20〜30℃で添加し、この混合物をこの温度で3時間撹拌した。5%NaCl水溶液(160mL)を20〜30℃で添加し、この混合物をこの温度で1時間撹拌した。相を分離させるために撹拌を停止した。分離した水相は廃棄した。有機部分とエマルジョン部分を混合して濃縮し、粗ABC3を含むEtOAc/n-ヘプタン溶液を得た。粗ABC3溶液を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶出溶媒:アセトン/トルエン(0.05%(v/v)のEt3Nを含む,5/95(v/v)))により精製し、その後濃縮してABC3を含むトルエン溶液(44g,94%)を得た。
【0073】
実施例4
ABC5の調製
【0074】
【化18】
【0075】
ABC3→ABC4
四つ口丸底フラスコに、機械的撹拌機と温度計を備え付けた。このフラスコに、ABC3/トルエン溶液(約96mL,3vol)を、20〜30℃で窒素下にて添加した。K2CO3(74g,0.53mol,10当量)およびCCl3CN(77g,0.53mol,10当量)を、20〜30℃で順次添加した。この混合物を、20〜30℃で4時間以上撹拌した。この混合物を濾過し、濾過ケーキをトルエン(64mL,2vol)で洗浄した。濾液と洗浄液を混合し、ABC4を含むトルエン溶液を得た。-5℃未満に冷却した後、ABC4/トルエン溶液(約160mL,5vol)を、使用する準備が整った。
【0076】
ABC4→ABC5
四つ口丸底フラスコに、機械的撹拌機と温度計を備え付けた。このフラスコに、チオフェノール(24g,0.2mmol,4当量)およびトルエン(260mL)を、20〜30℃で窒素下にて添加した。この混合物を-20〜-10℃に冷却した。TBSOTf(21g,0.08mol,1.5当量)を-20〜-10℃で添加した。得られたチオフェノールおよびTBSOTfをトルエン中に含む混合物を、使用する準備が整った。
【0077】
ABC4溶液を含むフラスコに、チオフェノールおよびTBSOTfを含むトルエンの混合物を、温度を-20〜-10℃に保ちつつ30分かけて添加した。この混合物を-20〜-10℃で2時間撹拌した。Et3N/トルエン(15mL/65mL)を、温度を-5℃未満に保ちつつ30分かけてゆっくりと添加した。この混合物を-5℃未満で30分間撹拌した。この混合物を濃縮して粗ABC5をトルエン中に含む溶液を得た。ABC5溶液を、カラム(シリカゲル;溶出溶媒:EtOAc/トルエン(0.05%(v/v)のEt3Nを含む,2/98(v/v)))を用いて精製し、ABC5を含むトルエン溶液(42g,88%)を得た。
【0078】
実施例5
ABCDE1の調製
【0079】
【化19】
【0080】
ABC5(35g,0.03mol,1.0当量)、DE4(28g,0.033mol,1.1当量)、およびDCM(700g)を、20〜40℃で窒素下にて機械的撹拌機と温度計を備え付けた四つ口丸底フラスコに添加した。この混合物を20〜40℃で30分間撹拌し、均一な溶液を得た。3Åの分子篩(35g)を20〜40℃で添加し、この混合物をこの温度で1時間撹拌した。
【0081】
この混合物を-30〜-20℃に冷却した後、N-ヨードスクシンイミド(NIS)(10.2g,1.5当量,0.045mol)をこの温度で添加し、15分間撹拌した。TfOH(1.8g,0.012mol,0.4当量)を含むDCM(10mL)を-30〜-20℃でゆっくりと加え、この混合物をこの温度で2時間撹拌した。Et3N(6.1g,0.06mol,2当量)を-30〜-20℃で添加し、この混合物をこの温度で30分間撹拌した。この混合物をセライトパッドを用いて濾過し、濾過ケーキをDCM(140mL)で洗浄した。濾液と洗浄液を混合し、30%Na2S2O3・5H2O水溶液(105mL,3vol)を20〜40℃で添加した。混合物を20〜40℃で1時間撹拌した後、相を分離させるために撹拌を約5分間停止した。分離した水性部分は廃棄した。分離した有機部分を濃縮して、粗ABCDE1溶液を含むDCMを得た。粗ABCDE1溶液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶出溶媒:EtOAc/トルエン(Et3N(0.1%(v/v))を含む,1/9(v/v))により精製し、ABCDE1溶液を含むトルエン溶液を得た。
【0082】
ABCDE1を含むトルエン溶液(約105mL)を、機械的撹拌機と温度計を備え付けた四つ口丸底フラスコに窒素下にて添加した。この混合物を35〜45℃に加熱した後、IPA(105mL)およびn-ヘプタン(105mL)をこの温度で順次添加した。ABCDE1種(0.035g)を35〜45℃で添加し、この混合物をこの温度で1時間撹拌した。n-ヘプタン(175mL)を35〜45℃で添加した後、この混合物を15〜25℃に冷却し、1時間撹拌した。この混合物を濾過し、濾過ケーキをn-ヘプタン(70mL)で洗浄した。湿ったケーキを60℃未満で乾燥し、ABCDE1を白色固体として得た(39g,65%)。
【0083】
実施例6
ABCDE2の調製
【0084】
【化20】
【0085】
THF(250mL)およびABCDE1(50g,26.4mmol,1.0当量)を、四つ口丸底フラスコに、20〜40℃で窒素下にて添加した。この混合物を10℃に冷却し、35%H2O2水溶液(102.5mL,1161mmol,44当量)を、この温度で添加した。2N NaOH水溶液(356mL,712.4mmol,27当量)を10℃で添加した。この混合物を20〜30℃に加熱し、48時間撹拌した。相を分離させるために撹拌を約5分間停止した。分離した有機部分は保存し、分離した水性部分は廃棄した。保存した有機部分に30%Na2S2O3・5H2O水溶液(250mL,5vol)を添加し、この混合物を約5分間撹拌した。相を分離させるために撹拌を約5分間停止した。分離した有機部分は保存し、分離した水性部分は廃棄した。保存した有機部分に30%Na2S2O3・5H2O水溶液(250mL,5vol)を添加し、この混合物を約5分間撹拌した。相を分離させるために撹拌を約5分間停止した。分離した有機部分は保存し、分離した水性部分は廃棄した。保存した有機部分にH2O(500mL,10vol)を添加し、1N HCl水溶液(45mL,0.9vol)を混合物のpHが4〜5に達するまで添加した。アセトン(250mL,5vol)を添加し、容積が約700mLに達するまで、混合物を35〜60℃で濃縮した。1N HCl水溶液(5mL)を、混合物のpHが2.5〜3.5に達するまで添加した。20〜30℃で30分間撹拌した後、混合物を濾過し、濾過ケーキをH2O(250mL)で洗浄した。湿ったケーキを60℃未満で乾燥し、ABCDE2を白色の固体として得た(38.4g,82%収率)。
【0086】
実施例7
ABCDE3の調製
【0087】
【化21】
【0088】
ABCDE2(8g,1.0当量,5.02mmol)、SO3-TMA錯体(38.4g,55当量,275.92mmol)、およびDMAc(88mL)を、機械的撹拌機と温度計を備え付けた丸底フラスコに、20〜40℃で窒素下にて添加した。このスラリー混合物を55〜65℃に加熱し、6時間撹拌した。10℃未満に冷却した後、この混合物に8%NaHCO3水溶液(40mL)を30℃未満で添加した。この混合物を濾過し、濾過ケーキをDMAc(96mL)で洗浄した。濾液と洗浄液を混合し10℃未満に冷却した後、温度を30℃に保ちつつ水(88mL)をゆっくりと加えた。粗ABCDE3を含むDMAc/水の溶液を含有する混合物を、このようにして得た。ABCDE3を、HP20SS樹脂を用い、溶出溶媒としてNaCl水溶液(10%)、その後MeOH、その後水で溶媒交換を行い精製し、ABCDE3水溶液を得た。
【0089】
実施例8
ABCDE4の調製
【0090】
【化22】
【0091】
ABCDE3水溶液(8gのABCDE2に基づく)および10%Pd/C(3.2g,40%wt)を、20〜30℃のオートクレーブに添加した。この混合物を、水素(0〜0.5kgのゲージ圧)に20〜30℃で48時間曝した。この混合物をセライトパッドを用いて濾過し、濾過ケーキを水(32mL)で洗浄した。濾液と洗浄液を混合した後、活性炭(1.6g)を20〜30℃で加え、この混合物をこの温度で3時間撹拌した。この混合物をセライトパッドを用いて濾過し、濾液を保存した。反応物を水(32mL)でリンスし、溶液を0.2ミクロンのフィルターを用いて濾過した。2つの濾液を混合しABCDE4水溶液を得た。
【0092】
実施例9
フォンダパリヌクスの調製
【0093】
【化23】
【0094】
ABCDE4水溶液(8gのABCDEに基づく)を、機械的撹拌機と温度計を備え付けた丸底フラスコに20〜40℃で添加した。この混合物に1N HCl水溶液を、pHが8〜9に達するまで添加した。SO3・TMA(23.04g,33当量,165.5mmol)を20〜40℃で添加した後,この混合物を40〜50℃に加熱し10時間撹拌した。この混合物を10℃以下に冷却した。この混合物を濾過し、濾過ケーキを水(32mL)で洗浄した。濾液に1N NaOH水溶液を、pHが9〜10に達するまで添加した。この混合物を45〜55℃に加熱し、20時間撹拌した。この混合物を30℃未満に冷却した。このようにして、粗フォンダパリヌクスナトリウム水溶液を含有する混合物を得た。
【0095】
粗フォンダパリヌクスナトリウム水溶液(2.4g)を、Q Sepharose Fast Flow樹脂(QSFF)(190mL)により0.4M NaCl水溶液、0.8M NaCl水溶液、および2M NaCl水溶液を溶出溶媒として用いて精製し、フォンダパリヌクスナトリウム溶液を得た。フォンダパリヌクスナトリウムを、0.1m2の1 kDa regenerousセルロース(RC)膜よりタンジェンシャルフロー濾過(TFF)を用いて脱塩し、その後凍結乾燥してフォンダパリヌクス(2.2g,80%)を得た。
【0096】
前述の発明は、明確に理解する目的のために例示および実施例によっていくらか詳細に記載されているが、当業者は、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲内で実施され得ることを理解するであろう。各文献は個別に参照により援用されるのと同程度に、その全体が参照により本明細書に援用される。本出願と本明細書中に援用される文献との間に矛盾が存在する場合、本出願が支配するものとする。