(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321812
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】単一モノリシックに形成された射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20180423BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C45/27
【請求項の数】29
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-545749(P2016-545749)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公表番号】特表2016-532589(P2016-532589A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】US2014054875
(87)【国際公開番号】WO2015047727
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/884,069
(32)【優先日】2013年9月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595155303
【氏名又は名称】ハスキー インジェクション モールディング システムズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HUSKY INJECTION MOLDING SYSTEMS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】イェンコ,エドワード ジョゼフ
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0237631(US,A1)
【文献】
特開平5−200800(JP,A)
【文献】
特開平4−284217(JP,A)
【文献】
特開2008−114588(JP,A)
【文献】
特開2013−35204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/38
B29C 45/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置であって、
自由形式製造プロセスを用いて製造した単一モノリシック本体を備え、前記モノリシック本体は、
少なくとも1つのメルトチャンネルを有するマニホルドと、
前記モノリシック本体の内部と前記マニホルドの外部との間であって前記モノリシック本体の内に形成された断熱キャビティとを有し、
前記断熱キャビティは、前記マニホルドを実質的に包囲し、
前記モノリシック本体は、外部を有し、前記断熱キャビティと前記モノリシック本体の前記外部との間で流体連通する形成材料退避ポートを備え、
前記形成材料退避ポートに対して封止係合される閉鎖部をさらに備える射出成形装置。
【請求項2】
前記マニホルドは、前記自由形式製造プロセスを用いて前記マニホルドと一体形成されたスプルー構造を有し、前記少なくとも1つのメルトチャンネルは、前記スプルー構造と連通する請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記マニホルドは、前記自由形式製造プロセスを用いて前記マニホルドと一体形成されたノズル構造を有し、前記少なくとも1つのメルトチャンネルは、前記ノズル構造と連通する請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記ノズル構造は、根元部と、前記根元部から延びる長手方向軸とを有し、前記ノズル構造がバルブゲートに係合されて前記マニホルドが熱成長を受けると、前記ノズル構造のたわみを許容するように構成された熱膨張収容部を前記射出成形装置はさらに備える請求項3に記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記熱膨張収容部は、前記ノズル構造と前記マニホルドとの間に配置される請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記ノズル構造は第1弾性断面係数を有し、前記熱膨張収容部は、前記第1弾性断面係数より小さい第2弾性断面係数を備える請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項7】
前記ノズル構造は第1材料を備え、前記熱膨張収容部は、前記第1材料とは異なる第2材料を備える請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項8】
ノズル構造は、根元部と、前記根元部から延びる長手方向軸とを有し、前記ノズル構造がバルブゲートに係合されて前記マニホルドが熱成長を受けると、前記ノズル構造のたわみを許容するよう構成された熱膨張収容部を前記射出成形装置はさらに備える請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項9】
前記熱膨張収容部は、前記ノズル構造と前記マニホルドとの間に配置される請求項8に記載の射出成形装置。
【請求項10】
前記ノズル構造は、フレキシブルな可撓性部分から延在する請求項8に記載の射出成形装置。
【請求項11】
前記ノズル構造は、第1弾性断面係数を有し、前記熱膨張収容部は、前記第1弾性断面係数より小さい第2弾性断面係数を備える請求項10に記載の射出成形装置。
【請求項12】
前記ノズル構造は第1材料を備え、前記熱膨張収容部は、前記第1材料とは異なる第2材料を備える請求項10に記載の射出成形装置。
【請求項13】
前記モノリシック本体の前記内部と前記断熱キャビティ内の前記マニホルドの前記外部との間に延びる少なくとも1つのスペーサをさらに備え、前記少なくとも1つのスペーサは、自由形式の製造プロセスにより、前記モノリシック本体及び前記マニホルドと一体形成される請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項14】
前記マニホルドは、第1熱伝導率を有する第1材料で作成され、前記少なくとも1つのスペーサは、前記第1熱伝導率より低い第2熱伝導率を有する第2材料で作成される請求項13に記載の射出成形装置。
【請求項15】
モノリシックに構成される射出成形装置の製造方法であって、
マニホルド格納構造体を自由形式で製造するステップと、
前記射出成形装置が完成する際に、マニホルド部が前記マニホルド格納構造体内のキャビティ内に配置されるように、前記マニホルド格納構造体内に前記マニホルド部を自由形式で製造するステップと、
少なくとも1つのスペーサが前記マニホルド格納構造体と前記マニホルド部の各々にモノリシックに連続するように、前記マニホルド格納構造体と前記キャビティ内の前記マニホルド部との間に延びる前記少なくとも1つのスペーサを自由形式で製造するステップを備える方法。
【請求項16】
前記自由形式で製造するステップは各々、結果として前記キャビティに非結合粒子を充填する粒子添加技術を用いて実施され、前記方法はさらに、前記キャビティから前記非結合粒子を除去するステップを備える請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マニホルド格納構造体を前記自由形式で製造するステップは、退避ポートを有するように前記マニホルド格納構造体を自由形式で製造するステップを含み、前記キャビティから前記非結合粒子を除去するステップは、前記退避ポートを介して前記非結合粒子を除去するステップを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記非結合粒子を除去するステップは、前記退避ポートを吸引するステップ、気体又は液体を前記退避ポート内に流し込むステップ、及び前記退避ポートから物質を排出するステップのうちの少なくとも1つを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記非結合粒子を除去するステップに続いて、前記退避ポートを閉鎖するステップをさらに備える請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記マニホルド部を自由形式で製造するステップは、第1熱伝導率を有する第1材料で前記マニホルド部を自由形式で製造するステップを含み、前記少なくとも1つのスペーサを自由形式で製造するステップは、前記第1熱伝導率より低い第2熱伝導率を有する第2材料で前記少なくとも1つのスペーサを自由形式で製造するステップを含む請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記方法はさらに、前記マニホルド部の一部としてスプルー構造を自由形式で製造するステップを備える請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記方法はさらに、前記マニホルド部の一部としてノズル構造を自由形式で製造するステップを備える請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記方法はさらに、可撓性のある弾力部を形成するステップを備え、前記ノズル構造がフレキシブルな可撓性部分から延在する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法はさらに、第1弾性断面係数を有する前記ノズル構造を自由形式の製造により形成するステップと、前記第1弾性断面係数より小さい第2弾性断面係数を有する前記フレキシブルな可撓性部分を形成するステップとを備える請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法はさらに、第1材料から前記ノズル構造を形成するステップと、前記第1材料とは異なる第2材料から前記フレキシブルな可撓性部分を形成するステップとを備える請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記方法はさらに、前記マニホルド部の一部としてスプルー構造及びノズル構造を自由形式で製造するステップと、前記スプルー構造及び前記ノズル構造と連通する少なくとも1つのメルトチャンネルを形成するステップとを備える請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記方法はさらに、フレキシブルな可撓性部分を自由形式で製造するステップを備え、前記ノズル構造が前記フレキシブルな可撓性部分から延びる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法はさらに、第1弾性断面係数を有する前記ノズル構造を形成するステップと、前記第1弾性断面係数より小さい第2弾性断面係数を有するフレキシブルな可撓性部分を形成するステップとを備える請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記方法はさらに、第1材料から前記ノズル構造を形成するステップと、前記第1材料とは異なる第2材料からフレキシブルな可撓性部分を形成するステップとを備える請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して射出成形分野に係り、特に、成形システムにおいて用いられる単一モノリシックに形成されたホットランナシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
成形品を製造する射出成形システムは、多くの場合、射出成形機械と、金型プレートと、加熱マニホルドを含むホットランナアセンブリとを備え、マニホルドは、マニホルドとは別個に形成され好適な手段でマニホルドと係合された一組の射出ノズルに溶解材料を分配する。ホットランナマニホルドは、通常、1つ以上のメルトチャンネル注入口と、ノズルと連通するメルトチャンネル注出口との間に延びるメルトチャンネルを規定する本体を備える。各射出ノズルは、バルブゲート型又はホットチップ型のいずれかであってもよいが、ノズルの射出端部に近接して配置されたゲートを通じて、金型の成形キャビティ内に1つ以上の溶解材料を射出する。従来のホットランナアセンブリの一部は、個別に製造された後、熟練の技術者によって組み立てられる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の種々の様態の範囲は、独立請求項によって与えられる範囲に限定されることが理解され、また本発明の範囲は、(i)従属請求項、(ii)非限定的実施形態の詳細な説明、(iii)概要、(iv)要約、及び/又は(v)本願文書以外(即ち、出願、審査の際、及び/又は特許付与された際における本願以外文書)で与えられる説明に限定されないことも理解される。
【0004】
一の具現化において、本開示は、射出成形装置を対象とする。当該装置は、自由形式製造プロセスを用いて製造した単一モノリシック本体を備え、単一モノリシック本体は、少なくとも1つのメルトチャンネルを有するマニホルドと、モノリシック本体の内部とマニホルドの外部との間に形成された断熱キャビティとを備える。
【0005】
他の具現化において、本開示は、モノリシックに構成された射出成形装置の製造方法を対象とする。当該方法は、マニホルド格納構造体を自由形式で製造するステップと、射出成形装置が完成した際にマニホルド部がマニホルド格納構造体内のキャビティ内に配置されるように、マニホルド格納構造体内にマニホルド部を自由形式で製造するステップと、少なくとも1つのスペーサがマニホルド格納構造体及びマニホルドの各々とモノリシックに連続するような態様で、マニホルド格納構造体とキャビティ内のマニホルドとの間に延びる少なくとも1つのスペーサを自由形式で製造するステップとを備える。
【0006】
当業者にとって、以下に述べる本発明の特定の非限定的実施形態の説明を添付の図面とともに検討することにより、本発明の種々の態様に係る非限定的実施形態のこれらの側面並びに特徴、並びに他の側面並びに特徴が明らかとなるであろう。
図面は、本発明を説明する目的で、本発明の1つ以上の実施形態の様態を示している。しかしながら、本発明は図面に示す精密な配置及び手段に限定されるものでないことが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一様態に係る単一モノリシックに形成された射出成形装置の側面図である。
【
図2】
図1に示す単一モノリシックに形成された射出成形装置の線2−2に沿った拡大断面図である。
【
図3A】材料除去ポートを有する単一モノリシックに形成された射出成形装置の部分断面図であり、過剰な材料を除去する様子を示している。
【
図3B】材料除去ポートと材料除去ポートの閉鎖部とを有する単一モノリシックに形成された射出成形装置の部分断面図である。
【
図4】本発明の一様態に係る一体型ノズルを有する単一モノリシックに形成された射出成形装置の部分断面図であり、ノズルが金型に係合する様子を示しており、この装置は熱成長を取り込むように意図されているたわみ領域を備える。
【
図5】本発明の一様態に係る他のノズルたわみ領域を有する他の単一モノリシックに形成された射出成形装置の部分断面図である。
【
図6A】本発明の一様態に係る一体形成されたスペーサを有する単一モノリシックに形成された射出成形装置の部分断面図である。
【
図6B】本発明の一様態に係る他の一体形成されたスペーサを有する他の単一モノリシックに形成された射出成形装置の部分断面図である。
【
図7】本発明の一様態に係る単一モノリシックに形成された射出成形装置の形成方法を示すフロー図である。
【0008】
[詳細な説明]
図面は、必ずしも縮尺で描く必要はなく、仮想線、図式的表現や部分図で示されることがある。ある事例において、実施形態の理解に不要な詳細説明や他の詳細を把握するのを困難にしてしまう詳細説明については省略したものもある。
いくつかの態様によると、本発明は、単一モノリシックに構成された射出成形装置と同装置の製造方法とを対象とする。本発明による例示的な実施形態において、これらの装置を、1つ以上の自由形式の製造プロセスを全体的に又は部分的に用いて製造してもよい。「単一モノリシックに構成する」とは、金型プレート、ホットランナマニホルド、バッキングプレート(裏板)、ノズル、スプルーブッシング等の2つ以上の構成要素が、従来は個別に製造された後に組み立てられたが、これらを単一の形成プロセスで一緒に形成することを意味する。本発明の態様に係る射出成形装置の製造に自由形式の単一形成プロセスを用いることにより、従来の射出成形装置を個別の製造部品から製造する際に必要であった熟練の技術者による費用と時間のかかる追加の組み立てのステップを部分的又は全体的に回避することができる。また本発明の態様により、個別に機械の部材を製造することによって生じる既知の累積誤差を部分的又は完全に排除することにより、装置の個別の特徴をより正確且つ精密に製造することが可能となる。本開示に係る単一モノリシックに構成された射出成形装置の他の利点として、製造コストの削減、材料の削減、重量の低減、及び動作条件に合わせて構成を最適化することができることが挙げられるが、これに限定されるものでない。当業者は、本開示全体を熟読した後、射出成形装置の設計者及び製造者が上記した利点及び他の利点をいかにして得ることができるかを容易に理解するであろう。
【0009】
本発明に係る単一モノリシック射出成形装置を、少なくとも部分的に、「固体自由形式製造プロセス(solid freeform fabrication process)」と呼ばれている付加的製造プロセスによって製造してもよい。固体自由形式製造(SFF)は、エネルギー及び/又は材料を空間における特定の箇所に連続して送出することにより固体物を製造する技術の集積のうちのいずれかをいう。SFFは、「高速試作」、「高速製造」、「積層製造」、や「付加的製造」とも称されることがある。尚、SFFは自由形式製造(freeform manufacturing (FFF))と称されることがある。以下は、SFFの多数の典型的な技術である。(A)電子ビーム積層造形(electron beam melting)(粉末原料からの完全溶解ボイドフリー固体金属部材)、(B)電子ビーム自由形式製造(electron beam freeform fabrication)(ワイヤ供給原料からの完全溶解ボイドフリー固体金属部材)、(C)熱溶解積層法(fused deposition modeling)(熱溶解積層法はノズルから高温のプラスチックを押し出して積層を行う。)、(D)薄板積層法(laminated object manufacturing)(紙又はプラスチックフィルムをスプレーされたのり、加熱された又は埋め込まれた接着剤のいずれかによって前の層に付着させた後、レーザー又はナイフを用いて層を所望の輪郭に切断する。完成品は、典型的には木材のように見える)、(E)レーザー操作によるネットシェイプ(laser-engineered net shaping)(レーザーを用いて金属粉末を溶解し、部材に直接堆積させる。これによれば、部材は完全に固体であり、部材の容積の全体にわたって金属合金組成を動的に変更することができる利点がある。)、(F)ポリジェットマトリクス(POLYJET MATRIX)(多種類の材料の同時噴射を可能にした最初の技術)、(G)選択的レーザー焼結(selective laser sintering)(選択的レーザー焼結ではレーザを用いて粉末金属、ナイロン、又はエラストマーを溶融する。高密度金属部材の製造には追加的処理が必要である。)、(H)シェイプデポジション製造(shape deposition manufacturing)(印刷ヘッドを用いて部品及び支持材を堆積させ、ほぼ最終形状に機械加工する。)、(I)固体下地硬化(solid ground curing)(フォトポリマー層を硬化させるために、静電マスクにUV光を照射する。サポートのために固体ワックスを用いる。)、(J)ステレオリソグラフィー(stereolithography)(ステレオリソグラフィーでは、レーザーを用いて液体フォトポリマーを硬化させる。)、(K)3次元プリンティング(three-dimensional printing)(このラベルには、最新の3Dプリンタの多数の技術が含まれており、これらはすべて材料を層状に堆積させるのにインクジェットに類似の印刷ヘッドを用いる。通常、これには熱位相変化インクジェット及びフォトポリマー位相変化インクジェットが含まれるが、これに限定されるものでない。)、及び/又は(L)ロボ鋳造(robocasting)(ロボ鋳造は、ロボット制御のシリンジ又は押し出しヘッドによる材料の堆積をいう。)
【0010】
他の例における単一モノリシック装置の製造方法では、鋳造等の非固体自由形式製造を用いるものがある。鋳造は、通常、所望の形状のキャビティを有する金型に液体材料を注ぎ入れ、固体化させる製造プロセスである。固体化された部材は、また鋳造物としても知られ、金型から取り出されるか、抜き出されてプロセスを完了する。鋳造材料は、通常、2つ以上の成分をともに混合した後、硬化する種々の低温硬化材料や金属であり、例としてエポキシ、コンクリート、プラスター、及びクレイが挙げられる。鋳造は、他の方法では製造が困難であったり不経済となってしまうような複雑な形状を製造するために用いられることがかなり多い。選択的レーザー焼結(SLS)は、支持構造を必要としないため好適とされることが多い。SLSで構成された部材は、常に、非焼結粉末で包囲されるが、これにより複雑な構造の構築が可能となる。
【0011】
さて図面を参照すると、
図1は、本発明に係る単一モノリシックに構築された射出成形装置、特にホットランナ装置100を示している。本例において、ホットランナ装置100は、マニホルド格納構造体104と、スプルーブッシング108と、複数のノズル、ここでは4つのノズルとを備えるが、4つのノズルのうちの3つ、すなわちノズル112(1)、112(2)、及び112(3)を
図1に見出すことができ、これらはすべて上述のSFF鋳造技術のうちの1つにより、好適な製造技術を用いて単一モノリシック本体として形成されている。ホットランナ装置100の単一モノリシックな特性を示すために、装置の断面図を
図2に示している。
図2において容易に見受けられるとおり、スプルーブッシング108及びマニホルド格納構造体104は、ホットランナマニホルド200及び一組のスペーサ204とともに、単一の部材として形成される。
図2に見受けられるように、ホットランナマニホルド200及びノズル112(1)〜112(3)にはメルト(溶融)チャンネルが設けられ、このうち4つのメルトチャンネル208(1)〜208(4)が示されている。自由形式製造により、例えば、メルトチャンネル208(1)〜208(4)を含むメルトチャンネルを、とりわけ、
図2に示す湾曲形状等、所望の形状に製造することができる。スペーサ204は、例えば、マニホルド格納構造体104及び金型(不図示)からホットランナマニホルド200を断熱するのに役立つ断熱キャビティ212(混乱を避けるため、複数の断熱キャビティのいくつかの領域にのみ表示している)を設けることができる。
【0012】
上述のとおり、いくつかのタイプの自由形式製造では、部材を成形するため、粉末材料を溶融する。例えば、選択的レーザー焼結では、レーザーを用いて、粉末ナイロン、エラストマー、又は金属を、層毎に、所定の部材に溶融する。
図3Aに示すホットランナ装置300等、本発明に係る射出成形装置は、
図3Aにおいて材料除去ポート304がマニホルド格納構造体308内に設けられるように、マニホルド格納構造体内に1つ以上の材料除去ポートを設けることにより、これらの自由形式製造の一つのタイプを用いて実現することができる。このような材料除去ポート304により、ホットランナマニホルド316とマニホルド格納構造体308との間に存在するような過剰な未溶融材料312を排出させることができる。未溶融材料の除去は、1つ以上の材料除去ポートを設けること、吸引、圧縮空気又は強制空気、化学溶媒の噴射、及び/又はその他任意の好適な方法のうちのいずれか1つ以上によって達成されてもよい。
【0013】
過剰な未溶融材料を排出させた後、閉鎖部320が材料除去ポート304に装着されている
図3Bに示すように、個別に形成された閉鎖部を1つ以上の材料除去ポートの各々に装着することができる。閉鎖部320を装着することにより、ホットランナマニホルド316とマニホルド格納構造体308との間の内部空間324を封止し、断熱空気空間を形成する。他の実施形態においては、内部空間324には、とりわけ、断熱エアロゲル(図示せず)等の好適な断熱材料を充填することができる。閉鎖部320を材料除去ポート304内に永続的に又は取り外し可能に取り付けるようにしてもよい。図示の例において、閉鎖部320は、材料除去ポート304内にねじ留め係合されている。
図3A及び
図3Bに示すとおり、ホットランナマニホルド316は、
図2に示す矩形断面のマニホルド200と対照的に、楕円形の断面を有する。これは、自由形式製造技術を用いて実装することのできる設計が豊富であることを示すことを意図したものである。
図3A及び
図3Bに示すホットランナマニホルド316の楕円形の断面形態は、例えば、従来の製造技術を用いた場合に比べて、成形材料の使用効率をより高めることができ、また、マニホルドとマニホルド格納構造体308との間の断熱特性を向上できる。
【0014】
ポート304及び閉鎖部320等、材料除去ポート及び閉鎖部が用いられることにより、また状況により、射出成形装置の検査及び/又はメンテナンスのために閉鎖部を取り外すことができるという利点がある。そのような検査及び/メンテナンスは、ボアスコープ、エンドスコープ(endoscope)、ラパロスコープ(laprascope)、又はその他任意の好適なツールを用いて実施されてもよい。このような場合、本発明の様態に係る射出成形装置の修理を行うために、外科分野に関連のツールを適宜修正を加えて用いることができる。ロボット、振動減衰安定化コンピュータプロセス、及び/又はバーチャルリアリティシミュレータを用いて、このような検査及び/又はメンテナンス作業を自動化又は補助してもよい。
【0015】
本開示に係るホットランナマニホルドの、例えば、金型ゲートインサートに対する熱成長を取り込むために、1つ以上のノズルの各々の根元部付近に、すなわちノズルとホットランナマニホルドとの接合部分付近に熱膨張収容部を設けることが有利である。例えば、
図4に示すように、このような熱膨張収容部400は、縮径部又はネックのような形態を採ることができ、ノズル404自体の断面係数(又は慣性モーメント)より小さい断面係数(又は慣性モーメント)を有するように設計することができる。使用中、ホットランナマニホルド408及びノズル404は高温に達し得るが、これがノズルとゲートインサート416との間のオフセット412及び/又はマニホルドとノズルとの間の接合部分420に極めて高い応力を生じさせる。
図4に示したように(実線は、冷却状態のノズル404及びホットランナマニホルド408を示す。破線は、マニホルド及びノズルが加熱された際、両者間で発生する膨張及び屈曲を示している。)、熱膨張収容部400は、膨張やホットランナマニホルド408とゲートインサート416との間の膨張の違いの結果として生じるオフセットを取り込むことができるように設計することができる。
【0016】
図4は、熱膨張収容部の一例のみ、すなわち熱膨張収容部400のみを描いていることを強調しておく。本開示を踏まえると、当業者にとって、適用例に応じて、異なる形状及び/又は非対称の断面を有する熱膨張収容部、異なる形状及び/又は非対称の外形を有する熱膨張収容部、より長い又はより短い熱膨張収容部がすべて実施可能であり、且つ好適に用いられることが明らかであろう。所定の射出成形装置内のすべてのノズルが同一の熱膨張収容部を有する必要はないことをさらに強調しておく。実際は、例えば、スプルーブッシングへの近接程度及び/又は使用中の装置内における熱膨張、またゲートインサート等の装置の他の部材に対する熱膨張による個別の動きに基づき、本発明に係る所定の射出成形装置の異なるノズルには異なる熱膨張収容部を用いることが好ましい。
【0017】
図5は、ホットランナマニホルド504から延び、
図4に示すものとは異なる形態の熱膨張収容部508を有するノズル500を示している。
図4及び
図5を比較すると明確に見受けられるとおり、
図5に示す熱膨張収容部508は異なる形状を有し、外形がより短く、異なる材料で形成されている。
図5の熱膨張収容部508に用いられる材料512は、ホットランナマニホルド504の他の部分及びノズル500の他の部分に用いられる材料516より可撓性があり撓みやすいものが選択されている。例えば、ホットランナマニホルド504の他の部分及びノズル500の他の部分の材料516は、とりわけ、強度、剛性、硬度、摩擦耐久性、及び熱伝導率等、1つ以上の他の指標を満たすように選択されてもよい。種々の自由形式製造の製造技術により、
図5に示すホットランナ装置520等、射出成形装置に一つ以上の材料をモノリシックに一体化することができるようになる。例えば粉末溶融技術において、適切なタイミングで、用いられる設備の種別に応じて、材料の所望の各領域に部分的に又は製造土台全体に亘って、溶融に先立って堆積される粉末のタイプを変更することができる。他の例として、溶融配線技術(molten wire technique)によると、用いられる配線のタイプを特定の材料が必要とされる各領域において変更することができる。当業者は、本開示全体を熟読した後、本開示に係る複数材料の単一モノリシック射出成形装置の特定のインスタンス化を行うのに適切な材料及び適切な製造プロセスをどのように選択すべきかを理解するであろう。
【0018】
図6A及び
図6Bは各々、例えば、
図2に示すスペーサ204に比べてより良好な断熱性び/又は可撓性を有するように設計されたスペーサ600及び650を示している。
図6Aに示すとおり、スペーサ600は、マニホルド格納構造体604に融合させることができ、かつスペーサ600は、マニホルド格納構造体の材料612及びホットランナマニホルド616の材料とは異なる材料608(例えば、熱伝導率がより低く、且つ/又は、可撓性のより高い材料)で形成することができる。スペーサ600とホットランナマニホルド616との間の接合部分における
図6Aに示すような未溶融不連続部分620により、自由形式製造で形成された射出成形装置624に極度の応力を生じさせることなく、比較的自在にマニホルドを伸縮させることができる。種々の自由形式の製造技術により、単一モノリシックな構造に不連続部分を設けることができる。例えば、粉末溶融技術において溶融を精密に制御することにより、所望の領域において1つ以上の粉末層を溶融させないことができる。未溶融領域が適正に構成された場合、未溶融の材料は、自在に流出することができないために不連続部分に残留してしまったとしても、隣接部分が互いに対して(ここでは、
図6Aの紙面に対して垂直方向に)スライドできるようになる。これは、2つの部材間に比較的高い摩擦を生じさせることとなるが、これらの部材は依然として互いに拘束されずに動くことができる。
【0019】
図6Bは、ホットランナマニホルド654とマニホルド格納構造体658の双方とモノリシックに形成されたスペーサ650を示しており、スペーサ650は、マニホルド格納構造体及びマニホルドの材料666とは異なる材料662(例えば、熱伝導率がより低く、且つ/又は、可撓性がより高い材料)で形成されている。スペーサ650をホットランナマニホルド654及びマニホルド格納構造体658と単一モノリシックに形成する一例としての技術は、
図5との関連で上述したとおりである。適用に応じて、
図2に示したスペーサ204で十分であるが、場合によっては、十分な耐性、弾力性、及び熱操作性を確保するため、
図6A及び
図6Bに各々示したスペーサ600及び650のようなスペーサを使う必要があることもあろう。
【0020】
図7は、本発明の一様態に係る単一モノリシックに構成された射出成形装置の製造方法700を示す。ステップ705において、マニホルド格納構造体を自由形式製造を用いて形成する。ステップ710において、自由形式製造を用いて、マニホルド格納構造体内に形成されたキャビティ内にマニホルド部を形成する。ステップ715において、自由形式製造を用いて、マニホルド格納構造体とマニホルドとの間に延びる少なくとも1つのスペーサを形成する。任意のステップ720において、所望の場合(用いられる自由形式の製造の種別に応じて決める)、マニホルド格納構造体に材料除去ポート(又は排出ポート)を作成することができ、非結合粒子/未溶融粉末を材料除去ポートを介して除去することができ、材料除去ポートを(上述したように永続的又は取り外し可能に)塞ぐことができる。実際には、自由形式製造は、
図7に示すほど明確な方法を辿るものでなく、むしろ、
図7及び本明細書の説明に示すステップは、異なる順序で実施されてもよく、互いに重複されてもよく、また追加ステップを必要としてもよいことに留意すべきである。例えば、ステップ720の「格納構造体内に少なくとも1つの退避ポートを自由形式で製造する」という部分は、状況によっては、ステップ705に含ませることができ、ステップ720の残りの「退避ポートを介して非結合粒子を除去する」及び「退避ポートを塞ぐ」という部分は、プロセスの最終ステップのままとすることができる。さらに、ステップ720の「退避ポートを介して非結合粒子を除去する」という部分は、例えば、退避ポートを吸引する、退避ポート内に圧縮空気を送る、退避ポート内に化学溶媒を注入する、及び/又は上述のとおりその他任意の好適な方法等、追加ステップを含むことができる。これも上述のとおりであるが、必要な材料除去プロセスを最適化するため、ステップ720において、マニホルド格納構造体内に1以上の退避ポートが設けられてもよい。
【0021】
例示的な実施形態が上記のとおり開示され添付の図面に示されている。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示した実施形態に種々の変更、省略、及び追加が行われてもよいことを理解するであろう。