特許第6321828号(P6321828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321828
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】骨折用固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   A61B17/80
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-570042(P2016-570042)
(86)(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公表番号】特表2017-516573(P2017-516573A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015061319
(87)【国際公開番号】WO2015181057
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】102014107497.1
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514203786
【氏名又は名称】ヒップ メディカル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヒップ、 マークス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルト、 アンドレ
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0046378(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/185864(WO,A1)
【文献】 米国特許第06129728(US,A)
【文献】 特表2009−535114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの張力要素(1,1’,1”)と、骨折の端部領域において骨の内部に導入可能な少なくとも2つの締結手段(7)と、少なくとも2つのスリーブ要素(5)と、を備える骨折用の固定装置であって、
各張力要素(1,1’,1”)が、
上から見ると中空であって、周壁を有し、かつ前記張力要素(1,1’,1”)の幅方向(B)に相対向し、上から見て前記張力要素(1,1’,1”)の仮想中心点から円弧状に外に向かう2つの側面フランク(10)を有する外構体(6)であって、前記側面フランク(10)は継目なしでY字形接続点(9)に合体し、前記Y字形接続点から延伸して上から見ると円弧状で前記張力要素(1,1’,1”)の仮想中心点方向の内側に向いた、一体成形された受部の一部分(15)を構成する、外構体(6)と、
前記張力要素(1,1’,1”)の長手方向(L)の相対向する位置にあり、かつそれぞれが受部(2)を介して挿入可能な前記スリーブ要素(5)及び/又は前記締結手段(7)を受ける役目をする、少なくとも2つの相互に離間した環状受部(2)であって、前記環状受部(2)の一部分(15)は前記環状受部(2)と一体の構成部品であって前記外構体(6)と一体を成し、スリーブ要素(5)及び/又は締結手段(7)を囲む、環状受部(2)と、
を備え、
複数の張力要素(1,1’,1”)、スリーブ要素(5)及び/又は締結手段(7)を連接することによってチェーンを構成することが可能であることを特徴とし、
各張力要素(1,1’,1’’)の前記外構体(6)の前記周壁は前記側面フランク(10)領域において少なくとも部分的にばね弾性的に変形可能であり、
各張力要素(1、1’、1”)は前記張力要素(1、1’、1”)の長手方向(L)に関して鏡面対称を成し、かつ、前記張力要素(1、1’、1”)の長手方向(L)に相互に対向して存在する、相互に離間した前記環状受部(2)が、
1つの受部(2)が、各張力要素(1、1’、1”)の長手方向(L)の仮想中心線を起点として、前記張力要素(1、1’、1”)の前記外構体(6)の外端に向かって前記外構体(6)の高さ(H)方向上向きに延在し、
もう1つの受部(2)が、各張力要素(1、1’、1”)の長手方向(L)の仮想中心線を起点として、前記張力要素(1、1’、1”)の前記外構体(6)の外端に向かって前記外構体(6)の高さ(H)方向下向きに延在するように構成され、
各環状受部(2)が各張力要素(1、1’、1”)の前記長手方向(L)の前記仮想中心線に向かってその接触面上に歯機構(3)を有し、
各張力要素(1、1’、1”)が相互に接続されて、各張力要素(1、1’、1”)の前記長手方向(L)の前記仮想中心線を起点として、前記張力要素(1、1’、1”)の前記外構体(6)の外端に向かって前記外構体(6)の高さ(H)方向上向き又は下向きに延在する前記環状受部(2)どうしが、前記張力要素(1、1’、1”)の前記仮想中心線の方向に向かう前記環状受部(2)の接触面で実質的に相互に一致して重なり合うことが可能なようになっており、かつ
前記張力要素(1、1’、1”)は、前記長手方向の各張力要素(1、1’、1”)の前記仮想中心線にそれぞれが向かって対向する、前記環状受部(2)の前記接触面上に形成された前記歯機構(3)を互いに係合させることにより、相互に所定の角度位置に配列することが可能である、固定装置。
【請求項2】
前記スリーブ要素(5)は、長さをその軸方向に、ばね弾性的に可変であるように形成されている、請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記スリーブ要素(5)は前記環状受部(2)の中に捕捉的に導入可能である、請求項1又は請求項2に記載の固定装置。
【請求項4】
前記張力要素(1、1’、1”)の相互の角度位置は、前記締結手段(7)が導入されるまでは、前記相対向する受部(2)上に形成された前記歯機構(3)によって実装されるラッチ機能によって変更可能である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項5】
各張力要素(1、1’、1”)の上側及び/又は下側を向いた前記環状受部(2)の表面は凹面である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項6】
前記相対向する受部(2)の1つの前記接触面上に形成された前記歯機構(3)は、前記相対向する受部(2)のもう1つの前記接触面上に形成された前記歯機構(3)と相補的になっている、請求項1に記載の固定装置。
【請求項7】
前記締結手段はコーティカルスクリューである、請求項1に記載の固定装置。
【請求項8】
各コーティカルスクリューのスクリューヘッドは円錐状または球状に構成され、前記環状受部(2)の方向を向いた前記スクリューヘッドの表面は、前記スクリューヘッドに対面する前記環状受部(2)の表面に対してそれぞれ相補的となっている、請求項に記載の固定装置。
【請求項9】
環状に形成され、かつ歯機構(4)で構成された接触面(11)を有する、少なくとも1つの終端要素(8)をさらに備え、
前記終端要素(8)は、一体形成されて、張力要素(1、1’、1”)の前記環状受部(2)の1つを介して導入可能なスリーブ(12)をさらに備え、前記スリーブ(12)は、前記終端要素(8)の前記歯機構(4)が移動して前記環状受部(2)上に形成された前記歯機構(3)と相補的に係合し、前記張力要素(1、1’、1”)の前記環状受部(2)が受ける前記終端要素(8)のスリーブ(12)を介して前記締結手段(7)を導入することにより前記張力要素(1、1’、1”)を前記骨に固定可能とするように構成されている、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項10】
前記張力要素(1、1’、1”)の少なくとも1つは、前記張力要素(1、1’、1”)の長手方向端部の環状受部(2)の代わりに、終端要素の役目をし、それを介してスリーブ要素(5)及び/又は骨に固定するための締結手段(7)を導入可能な環状受部(16)を有する、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項11】
前記張力要素(1、1’、1”)の少なくとも1つは、一片が中央環状受け要素(13)の周りにあるY字形となった、複数の分肢で形成されており、かつそのような複数の分肢を有する張力要素(1、1’、1”)の各分肢端部は、一体的に接合された環状受部(2)を有し、各張力要素(1、1’、1”)の前記長手方向(L)にある前記仮想中心線に向いたその接触面上には歯機構(3)が形成されている、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項12】
前記張力要素(1、1’、1”)の少なくとも1つは、1つ又は両方の環状受部(2)の代わりに、前記張力要素(1、1’、1”)の長手方向の少なくとも一端に設けられ、歯付きのディスクまたはそれに類似したもので構成された環状受ディスク(14)を備え、複数の張力要素(1、1’、1”)、スリーブ要素(5)、及び/又は締結手段(7)を連接するときは、前記環状受ディスク(14)を他の張力要素(1、1’、1”)の上側の環状受部(2)とさらに他の張力要素(1、1’、1”)の下側の環状受部(2)との間に挿入して、張力要素(1、1’、1”)、スリーブ要素(5)、及び/又は締結手段(7)のY字形、星形、又はその他の組合せを形成することができる、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の骨折用固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折が不十分に固定された場合、カルス形成、すなわち骨組織の過剰成長による骨折端部の胼胝腫様の肥大が発生し得ることが知られている。カルスによるそのような間接的な骨折治癒を避けるために、折れた骨の表層に当てられて取り付けられる骨プレートが使用され、これにより骨折部位が治癒過程の間固定される。
【0003】
そのような骨折処置のために、従来技術では剛体で平坦な穴あきの金属骨プレートが主に知られており、それが骨折部位の両端でねじ止めされる。そのような固定装置の固定には、いわゆるコーティカルスクリューが通常使用される。このようなスクリューは、骨の最大強度を有する外部骨組織、いわゆる皮層にねじ止めされる。この固定により骨折端部を相互に動かないように確保して、新しく形成される骨組織が荷重を受けないで堆積されるようにする。
【0004】
さらには、嵌め合わされた骨折部位に圧縮力を掛けることが骨折の治癒過程に有利に作用し得ると考えられている。その結果、特に密接した適応、すなわち互いに再生して行く骨折端部間の隙間を非常に小さくすることが行われる。
【0005】
従来技術には数多くの異なる骨折固定方法がある。
【0006】
複数の医療器具に集中的に従事している本出願人は、骨プレートの分野、すなわち骨折用の固定装置の開発においても成果を挙げてきた。
【0007】
例えば、本出願人による独国特許出願第102011001016(A1)号明細書には骨プレートモジュールシステムが開示され、中空外構体から成る複数の張力要素が一種のさねはぎ接続によって相互接続されてその外構体に貫通挿入され得るスクリュー等を囲い込むようになっている。複数の張力要素を結合させることにより、チェーン、星形、またはチェーンと星形形状の任意の組合せが配置可能である。ただし、個々の張力要素の互いの相対配列を固定することはできない。それゆえ張力要素は位置ずれすることがあり、望ましくない。
【0008】
この問題を克服するために、出願人は骨折用固定装置の別の実施形態を提案した。独国特許出願第102012105123(A1)号明細書に開示のこの固定装置は、同じように中空の外構体から成る複数の張力要素を備え、その張力要素の長手方向に相互に離間した端部に、締結手段を挿入可能な受部が形成されている。処置する骨折の種類及び複雑さに依存して、個別の張力要素を相対的に然るべき角度位置に固定するために、独国特許出願第102012105123(A1)号明細書に開示した固定装置では、受部に内部歯機構を形成することと、張力要素を対応するスクリューで骨へ締結する前に、相互接続されて相対的に整列された張力要素を外部歯機構のあるスリーブを受部に正確に嵌合導入して接続することとを提案している。スリーブと張力要素を相互に組合せることにより角度位置が固定され、こうして組立てられた固定装置を対応するスクリューで骨折端部に締結できる。
【0009】
出願人による骨折用骨プレートすなわち固定装置の更なる実施形態が、独国特許出願第102011001018(A1)号明細書から知られる。これは実質的に連続する輪から成る固定装置用の張力要素を開示している。この輪には可撓性があり、実質的に塑性変形をせず、これを貫通して少なくとも2つのコーティカルスクリューを挿入できる。またこの張力要素には連続する輪に挿入可能な可変長の延伸要素がある。これをその連続する輪の内部で広げて所定の引張応力を連続する輪の周囲に形成する。これにより延伸要素が締結手段に相互に引き合う力を掛けることを可能としている。
【0010】
最後に本出願人による独国特許出願第102012105125(A1)号明細書では、骨プレートの個々の部分が互いに相対位置を変更可能とするジョイントを備える骨プレートが開示されている。
【0011】
特に、この非常に繊細な使用法に関して様々な要求があるために、従来技術で知られている骨プレート又は固定装置は複数の異なる構成要素からなる複雑な構造を持っている。したがってそのような「システム」の製造はそれに応じて複雑となりコストがかかる。
【0012】
したがって、医療においてこれまでは限られた患者群又は骨折のタイプしか加圧固定という有利な方法の恩恵を受けられなかった。
【0013】
したがって本発明の目的は、特に量産において特別に安価に製造可能であり、かつ骨折の加圧固定の適用範囲拡大に適した骨折用固定装置を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願第102011001016(A1)号明細書
【特許文献2】独国特許出願第102012105123(A1)号明細書
【特許文献3】独国特許出願第102011001018(A1)号明細書
【特許文献4】独国特許出願第102012105125(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この目的は、請求項1に記載の骨折用固定装置により達成される。有利な実施形態が独立請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、骨折用の固定装置が提案される。これは、少なくとも2つの張力要素と、好ましくは骨折の端部領域において骨の内部に導入可能な少なくとも2つの締結手段と、少なくとも2つのスリーブ要素と、を備える。
各張力要素には、上から見ると中空であって、周壁を有し、かつ張力要素の幅方向(B)に相対向し、上から見て張力要素の仮想中心点から円弧状に外に向かう2つの側面フランクを有する外構体であって、その側面フランクは継目なしにY字形接続点に合体してそこから延伸して上から見ると円弧状で張力要素の仮想中心点方向の内側に向いた一体成形された受部の一部分を構成する、外構体と、好ましくは張力要素の長手方向の相対向する位置にあり、かつそれぞれが受部を介して挿入可能なスリーブ要素及び/又は締結手段を受ける役目をする少なくとも2つの相互に離間した環状受部であって、その受部の一部分は環状受部と一体の構成部品であって外構体と一体を成し、スリーブ要素及び/又は締結手段を囲む環状受部と、が含まれており、複数の張力要素、スリーブ要素、及び/又は締結手段を連接することによってチェーンを構成することが可能である。
ここで、各張力要素の外構体の周壁は側面フランク領域において少なくとも部分的にばね弾性的に変形可能である。
各張力要素は張力要素の幅方向に点対称または長手方向に関して鏡面対称を成す。そして好ましくは張力要素の長手方向に相互に対向して存在する相互に離間した受部は、1つの受部が、好ましくは各張力要素の長手方向の仮想的中心線から、張力要素の外構体の外端方向の外構体の高さ方向上向きに延在し、もう1つの受部が、好ましくは各張力要素の長手方向の仮想的中心線を起点として、張力要素の外構体の外端に向かって外構体の高さ方向下向きに延在するように構成される。
各環状受部は各張力要素の長手方向の仮想中心線に向かってその接触面上に歯機構を有する。
ここで、各張力要素が相互に接続されて、各張力要素の長手方向の仮想中心線を起点として、張力要素の外構体の外端に向かって外構体の高さ方向上向き又は下向きに延在する受部どうしが、張力要素の仮想中心線方向に向かう受部の接触面で実質的に相互に一致して重なり合うことが可能なようになっている。
そして、張力要素は、長手方向の各張力要素の仮想中心線にそれぞれが向かって対向する、受部の接触面上に形成された歯機構を互いに係合させることにより、相互に所定の角度位置に配列することが可能である。
【0017】
本発明による固定装置によれば、たとえば頭蓋骨や顎骨の領域の複雑な骨折であっても治癒過程に好影響を及ぼさせるための整列が有利に可能である。この場合、個々の張力要素がばね弾性変形能を有するために、張力要素の材料で決まる所定圧力を骨折部の両端に掛けることができ、それが骨折部の両端が共に良好な成長をするように寄与する。さらに、張力要素は必要に応じて互いに結合して、チェーンや網目状構造のようなより複雑な構造を形成することが可能であり、受部上の相補的歯機構が提供するラッチ機能により正確に整列可能であるので、具体的には例えば粉砕骨折などのような最も困難な骨折でも固定可能である。これは従来の固定装置ではこれまで不可能であった。個々の張力要素の寸法は、適用分野によって決定される。従って、例えば脊柱分野では顔面手術分野よりも大きな張力要素が使用される。同様に、チェーンも適用分野に応じて長短が変わり得る。
【0018】
本発明による固定装置は、手術自体の間においても整列させることができるので有利である。したがって、張力要素とスリーブ要素がモジュール構造であることにより、担当外科医が例えば固定装置の位置及び/又は個々の張力要素の相互配列を、破断状況により必要な場合には迅速に調節することができる。例えば、骨折を「固定」するとき、外科医は張力要素の角度位置を変更して骨折端部が相互にきちんと並ぶようにすることができる。受部の歯機構が上記のラッチ機能を与えるので、整列された張力要素がその選択された角度位置に保持される。そうして張力要素が「ずれる」ことなく、固定装置を骨にねじ止めすることができる。こうして骨折部両端の整列と固定が改良され、その結果カルスを発生させない骨折の治癒に寄与する。
【0019】
さらに、本発明による固定装置は非常に少数の異種個別部品から成る。したがって、固定装置は簡単かつ安価に製造可能である。使用される張力要素は長手軸に沿って鏡面対称に設計されているので、複数の同一部品すなわち張力要素から、実質的に無限長のチェーンなどを製造可能である。このように必要とする異種部品数が著しく減少し、その一方で同時に骨折の加圧固定の適用分野が拡大される。
【0020】
本発明による固定装置の一実施形態によればスリーブ要素は、長さをその軸方向に好ましくはばね弾性的に可変であるように形成されている。スリーブ要素は受部の中に捕捉的に導入可能であり、張力要素の相互の角度位置は、締結手段が導入されるまでは、互いに対向する受部上に形成された歯機構によって実装されたラッチ機能によって変更可能である。
【0021】
可変長のスリーブ要素の実施形態では、スリーブ要素が張力要素の受部に挿入されて張力要素が組立てられた状態であっても、張力要素の相対位置、すなわち角度位置は引き続き変更可能であることは有利である。結果的に骨折端部を整列させた後でも担当医師は、最適な骨折処置に必要な範囲で張力要素の角度位置を調節可能であり、骨折の治癒の進行に伴い、発明の背景で述べたようなカルス形成すなわち骨組織の過成長による骨折端部の胼胝腫様肥大の形成を回避するようにする。受部、より具体的にはスリーブ要素に保持されたスクリューを骨にねじ込むことにより、スリーブ要素が最初はその長さ方向に互いに押され、次いで圧縮されて、最後には最適状態に軽く押しつぶされる。こうして受部上に形成された歯が相互に固定的に係合することで、張力要素どうしの相対的な可動性が抑止される。張力要素どうしの事前設定された角度位置をこうして固定し、次いですべての受部を適切なスクリューで骨にねじ止めすることによって、複数の張力要素とスリーブ要素等から成る固定装置が固定されて治癒過程を最適な状態で支援する。
【0022】
さらに、受部のなかに捕捉的に挿入可能なスリーブ要素により、担当医師の指示に従って手術室看護師又は外科医自身が、必要な数の個別部品をごく大雑把に組み立てておいて、手術直前に「体に部品を取り付ける」ということが可能であるので有利である。これとは反対に、治療をする担当医師及び/又は病院が既製の「システム」すなわち長さの異なる張力要素とスリーブ要素等で構成され、結合してチェーンや類似のものを形成する、骨折用固定装置を購入することも可能である。例えば、そのような骨折用の既製の固定装置は、張力要素とスリーブ要素等の2片、3片、4片、または5片の集合体として設計可能であり、それが骨折と処置する骨の種類に応じて手術直前に選択されて手術準備の一環として提供される。
【0023】
本発明による固定装置の更なる実施形態によれば、各張力要素の上側及び/又は下側に向いた受部の表面、または受部の中心点に向いた固定装置の内壁領域は、凹面である。
【0024】
各張力要素の上側及び/又は下側を向いた受部表面の凹型形状により、骨折用固定装置の固定に使用される工具受けのあるスクリューヘッド上側を理想的に受部と同一高さとして、そこに当たる組織に悪影響を与える可能性をもつ突出端をなくすことができるという利点が提供される。
【0025】
本発明による固定装置の別の実施形態によれば、相対向する受部の1つの接触面上に形成された歯機構は、相対向する受部のもう1つの接触面上に形成された歯機構と相補的になっている。
【0026】
張力要素の受部の面上にそれぞれが互いに当接するように移動可能な相補的歯機構を形成することにより、正確なラッチをして張力要素どうしの角度位置の制御及び調節を確保することが可能である。具体的には、受部の歯機構が相補的に形成されていない場合には、張力要素が直線的にならなかったり、相互に所望または必要な角度位置にならなかったりすることがあり得る。このため本発明によれば、受部の接触面上に形成され、移動して互いに当接することが可能な歯機構どうしは相補的に形成されて、張力要素が互いに正確に角度位置を調節可能となるような準備がなされる。
【0027】
本発明による固定装置の一実施形態によれば、締結手段はコーティカルスクリューであり、各コーティカルスクリューのスクリューヘッドは、スクリュー溝に対面する下側が好ましくは円錐状または球状に構成され、受部の方向を向くスクリューヘッドの表面は、それぞれがスクリューヘッドに対面する受部の表面に対して相補的となっている。
【0028】
医療分野において一般的に使用されているコーティカルスクリューを使用することにより、使用前に高価な手段を用いてその新規スクリューの適合性に関する動物又は人体試験を行い、そのスクリューを所轄委員会により承認してもらうということは、原則的に必要ない。各張力要素の上側及び/又は下側に向いた受部の表面の凹型形状と同様に、コーティカルスクリューのスクリューヘッドの円錐形又は球形の形状は、骨折用固定装置の固定に使用されるスクリューの工具受けのあるスクリューヘッド上側を理想的に受部と同一高さとするようにねじ込むことができ、そこに当たる組織に悪影響を与えないで済むという利点を提供する。
【0029】
上記のようにして形成される張力要素は、張力要素上に形成された受部に挿入されるスリーブ要素とともに接続されて、ほぼ無限長のチェーンを形成することが可能である。ただし、これらのチェーンを言わば「ずれやがたつきなしに」安定かつ確かに骨に固定可能とするために、張力要素のスクリューを保持する部分が可能であればその全面で骨に載ることが必要である。さらに、固定目的で使用されるコーティカルスクリューは、骨の中には所定の深さしかねじ込むことができない。
【0030】
更なる実施形態によれば本発明による固定装置は、環状に形成されかつ歯機構で構成された接触面を有する少なくとも1つの終端要素をさらに備えることができる。ここで終端要素は、そこに一体形成されて張力要素の受部の1つを介して導入可能なスリーブをさらに備え、終端要素の歯機構が移動して受部上に形成された歯機構と相補的に係合し、張力要素の受部が受ける終端要素のスリーブを介して締結手段を導入することにより張力要素を骨に固定可能とするようになっている。
【0031】
チェーンの各末端において移動して張力要素の受部に容易に係合可能なこの終端要素により、コーティカルスクリューを十分にガイドしかつ骨へのねじ込みを深すぎないようすることを有利に保証することが可能であり、それと同時に骨の上に「チェーン末端」の安定支持面を提供することができる。
【0032】
本発明による固定装置の別の更なる実施形態によれば、張力要素の少なくとも1つは、張力要素の長手方向端部に受部の代わりに、終端要素の役目をし、かつそれを介してスリーブ要素及び/又は骨に固定するための締結手段を導入可能な環状受部を有することができる。
【0033】
この終端要素に関する代替実施形態は、使用される異なる部品の数を減少させ、かつ個別形成された終端要素に関連して上記で達成可能な利点を同様に達成する。
【0034】
本発明による固定装置の別の実施形態によれば、張力要素の少なくとも1つは、好ましくは一片が中央環状受け要素の周りにあるY字形となった複数の分肢で形成されており、かつそのような複数の分肢を有する張力要素の各分肢端部はそこに一体的に接合された受部を有し、各張力要素の長手方向にある仮想中心線に向いたその接触面上には歯機構が形成されている。
【0035】
そのような複数(例えば3または4以上)の分肢を有する、「複雑」で複肢の張力要素を使用することで、相互連結された張力要素の複雑な配置を作製可能である。この場合、上記の「単純」な張力要素と、「複雑」な複肢張力要素(例えば、1つの複肢張力要素と複数の単純張力要素からなるY字形集合体、又は複数の複肢張力要素と複数の単純張力要素からなる網状構造を含む星形集合体)を、特に好ましい方法で使用することができる。これは、例えば手首関節領域の複雑骨折により骨折を確実に最適な治癒させるためには骨折端部及び/又は骨を複数固定しなければならない場合に特に有利である。
【0036】
本発明による固定装置の一実施形態によれば、張力要素の少なくとも1つは、張力要素の長手方向の少なくとも1つの端部上の1つ又は2つの受部の代わりに、歯付きのディスクまたはそれに類似したもので構成された環状受ディスクを備え、張力要素、スリーブ要素、及び/又は締結手段を連接するときにこれを他の張力要素の環状受部の間に挿入して、張力要素、スリーブ要素、及び/又は締結手段のY字形、星形、又はその他の組合せを形成することができる。
【0037】
上記の複肢張力要素と同様に、歯付きのディスクまたはその類似のものとして形成された受ディスクを有する張力要素により、複数連接した張力要素の複雑な構成を作製することができる。さらに、歯付きディスクまたはそれに類似のものとして形成され、張力要素上に別に備えられた受部の歯機構に対して相補的に形成された歯機構を有する受ディスクのある個々の張力要素の構成は、この「歯付きディスク」のお陰で、複肢張力要素により事前設定された角度位置ではなく、任意に選択された相互の角度位置で結合して複雑な形を形成可能とする利点がある。その結果、そのような張力要素を使用する本発明の固定装置の適用分野が、さらに拡大される。
【0038】
本発明の更なる実施形態、特徴、及び利点は、図面を参照した以下の実施形態の説明で明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明による固定装置を緩めて配置した実施形態の斜視図である。
図2図1の固定装置の張力要素を噛み合せた実施形態の斜視図である。
図3】本発明による固定装置に使用される例示的張力要素の実施形態の詳細図である。
図4】本発明による固定装置に使用される例示的スリーブ要素の実施形態の詳細図である。
図5】本発明による固定装置に使用される例示的終端要素の実施形態の詳細図である。
図6】本発明による固定装置の終端要素を備えた例示的実施形態の斜視図である。
図7】本発明による固定装置に使用される例示的終端要素の更なる実施形態の詳細図である。
図8】本発明による固定装置に使用可能な例示的張力要素の更なる実施形態の詳細図である。
図9】本発明による固定装置に使用可能な例示的張力要素の別の実施形態の詳細図である。
図10】本発明による固定装置の別の実施形態の斜視図である。
【0040】
骨折用の例示的固定装置の好適な実施形態を図1図3を参照して以下に説明する。この場合図1図2が、スリーブ要素5によって相互接続された2つの張力要素1から成る骨折用固定装置の斜視図を示す。図3はこの実施形態に使用されている張力要素1の詳細を示す。
【0041】
図1では、本発明の基本原理を示すために2つの張力要素1がスリーブ要素によって「緩く」(すなわち変更可能な角度で)接続されている。ただし実際には骨折の治療に必要な張力要素1の数は要求に応じて判定され、例えば3つや4つ以上の張力要素1である。そして必要な張力要素1は、張力要素1にそれぞれ形成された受部2が図のように相互に重なるようにして配置される。
【0042】
それぞれの場合、スリーブ要素5が重なった受部2を貫通して導入され、その上端と下端を折り曲げるか固定して(ここでは図示せず)、重なり合った受部2に捕捉的に保持される。
【0043】
張力要素1の各受部2は、各張力要素1の長手方向Lの仮想中心線に向いたその接触面上に歯機構3をもっており、これによって個別の張力要素1を所定の角度位置に相互に配列することができる。
【0044】
個別の張力要素1の受部2が相互に重なり合う配置となっているために、図1図2に示すように、それぞれが張力要素1の長手方向の仮想中心線に向いた接触面上で歯機構3が補完的に接触する。張力要素1の長手方向にそれぞれが互いに離間しかつ互いに反転配置されている受部2の歯機構3は、相補的となっている。したがって相互に離間した受部2のそれぞれ中心線を向いた歯機構3は同数の歯を持っている。
【0045】
個々の張力要素1の相体角度の所望調整度合いに依存して歯機構3に形成される歯の数が増減する。これは、歯機構3の歯が多いほど張力要素1相互の角度の調整精度が上がることを意味している。ここに示す実施形態では、歯機構3はジグザグパターンとして形成されている。ただし、張力要素1の相対的な角度位置が相応に調節可能でありかつそれによって固定可能でありさえすれば、歯機構3は波形輪郭、ダイアモンド型輪郭、又はその他の任意の実行可能な嵌合形状に形成することができる。
【0046】
図2は張力要素1が、所望の角度位置に整列され、受部2上に形成された個別の張力要素1の歯機構3の相互係合によりその位置と角度位置を固定された状態を示している。
【0047】
スリーブ要素5が、個々の張力要素1の重なり合った受部2を介して捕捉的に導入されて、それらの要素を結合してチェーンを形成する。そうして、個々の張力要素1がチェーンリンクを形成し、スリーブ要素5を中心に互いに相対回転可能なようにスリーブ要素5によって保持される。
【0048】
このことは2つの張力要素1を、スリーブ要素5は受部2に形成された歯機構3の歯をまだ相互係合させないか又は軽くのみ係合させてラッチ機能を提供するような状態に相互接続することを意味している。この結果、張力要素1相互間の角度位置は調整可能であり、選択された角度位置は張力要素1が保持されなくなってもラッチ機能によって維持される。スクリュー7(ここには図示せず)を受部2に配置されたスリーブ要素5を介してねじ止めすると、図6に示すように角度位置が固定される。そうして張力要素1のそれ以上の相互回転が不可能となる。
【0049】
上記のように個々の張力要素1がスリーブ要素5の周りで回転できるようにするために、スリーブ要素5は例えば相対的に長めに形成されている。このスリーブ要素は、受部2の中へ挿入されてその端部を長手方向の位置に固定された後でも相互接続された張力要素1に対する十分な「移動遊隙」を持ち、張力要素1の回転とそれに伴う歯機構3の歯面に沿う上下動を可能としている。
【0050】
ただし、スリーブ要素5は好ましくは軸方向にばね弾性を持つように形成されているので、角度調節のために張力要素1が相対回転するとき、スリーブ要素(ばねスリーブとも称す)5は長手方向に「伸縮」できる。これにより張力要素1を受部2の歯機構3の目盛に沿って後から相互に角度調節することが可能である。そのようなばね弾性スリーブ要素5の例を図4に示す。
【0051】
そこに示した実施形態では、スリーブ要素5は実質的に丸スリーブであり、ばね弾性を付与するためにその壁に円弧状の切込み17が交互に入れられている。この図に示した実施形態に代わるものとしてスリーブ要素5をコイルバネと同じように構成することもできる。
【0052】
骨折の固定目的で相互に整列した張力要素1を骨に固定するためにスリーブ要素5を介してスクリューがねじ込まれると、スリーブ要素5はまず互いに押し付けられ、次に圧縮される。そして特定の条件下ではねじ込み力に応じて軽く押しつぶされる。受部2に保持されたばねスリーブを介してスクリューを骨へねじ込み、それにより各張力要素1に形成された受部2の歯機構3の歯が相互に係合することにより、張力要素1相互間の角度が変化できないように固定される。
【0053】
個々の張力要素1はチェーン構成とすることができる。これは、担当医師の指示による、適切に訓練された手術室看護師の手術準備の一環として、スリーブ要素5でそれぞれ接続された張力要素1がチェーンリンクに形成される。
【0054】
ただし代替として、担当医師又は治療を行う病院が、手術に適した殺菌パッケージとなった既製の「チェーン」を購入することも実行可能である。これらのチェーンは、その受部2にスリーブ要素5が対応して挿入された、2個、3個、又は4個以上の張力要素1の組合せで事前に作製されたものである。そのスリーブ要素5は上記で説明したように、長さ方向に端部が固定されているために、既に互いに重なり合う受部2の中に捕捉的に保持されているが、それでも張力要素1の角度位置を相互に調節できるようになっている。この場合、理想的にはそれぞれの「張力要素チェーン」に合うように誂えたスクリュー(例えば、医療分野でよく使われるコーティカルスクリュー、モジュール式骨プレート用のその他の特製スクリュー、並びに釘又は合わせ釘システム)も同時に購入することができる。
【0055】
図3は本発明による固定装置に使用される張力要素1の詳細を示す。
【0056】
図3に示すように、張力要素1は卵形又は楕円体であり、上から見ると中空の外構体6を持っている。この外構体6は引張要素1の幅方向Bに相対向して存在し、上から見ると引張要素1の仮想中心点から円弧状に外に向かっている2つの側面フランク10を有する周壁を持っている。側面フランク10は継目なしにY字形接続点9に合体し、そこから延伸して、上から見ると引張要素1の仮想中心点に向かって弧状に内向きとなった一体成形された受部の一部分15となっている。
【0057】
図1図3からわかるように、個々の張力要素1はその長手軸Lに関して鏡面対称につくられている。そして好ましくは張力要素1の長手方向Lに互いに対向して存在する、相互に離間した受部2は、ここに示す張力要素1の実施形態の受部2の1つが、好ましくは各張力要素1の長手方向Lの仮想中心線を起点として、張力要素1の外構体6の外端方向に外構体6の高さH方向上向きに延在し、かつもう1つの受部2が、好ましくは各張力要素1の長手方向Lの仮想中心線を起点として、張力要素1の外構体6の外端方向に外構体6の高さH方向下向きに延在するように構成されている。
【0058】
さらに、張力要素1は2つの相互に離間した環状受部2を有し、これらは好ましくは張力要素1の長手方向Lに互いに対向して存在し、この受部2を介してそれぞれが挿入可能なスリーブ要素5及び/又は締結手段7(ここでは図示せず)を受ける役目をしている。また受部の一部分15は環状受部2と一体の構成部品であり、外構体6と一体を成してスリーブ要素5及び/又は締結手段7を囲むように構成されている。
【0059】
図3に示した張力要素1の実施形態では、受部2はその上面又は下面が張力要素1の側面フランク10と同じ高さになるように形成されている。
【0060】
ただし、受部は必ずしも張力要素1の長手方向の仮想中心線から外構体6の上端及び/又は下端まで延伸する必要はない。受部2の安定性が確保される限り、受部2はその高さが外構体6の上端及び/又は下端まで完全に延伸しなくて、例えば受部2と側面フランク10の間の遷移部に段差を形成するか、又は受部2から側面フランク10へ連続的に移行するような形であってもよい。したがって例えば、外構体6の上側又は下側に向いた受部の表面が張力要素1の長手方向の外側にあるその端部から側面フランク10まで所定の角度で上昇することもまた可能である。
【0061】
医療分野で使用するために張力要素1は生体適合材料で作られる。さらには、外構体6の壁が側面フランク10の領域では所望の弾性特性を有する材料から成り、張力要素1のその他の部分、例えば受部2などが剛体又は吸収性の材料でできているという、混合構造も同様に可能である。そのような混合構造は、例えば断面で見ると異種材料部分で構成された、対応する複合プロファイルを選択することによって実現可能である。側面フランク10を弾性構造とすることで所定の張力を張力要素1に導入可能となり、その結果骨折の加圧固定が可能となる。
【0062】
張力要素1に使用可能な出発物質としては、例えば、X42CrMo15、Xl00CrMo17、X2CrNiMnMoNNb21−16−5−3、X20Cr13、X15Cr13、X30Cr13、X46Cr13、X17CrNi16−2、X14CrMoS17、X30CrMoN15−1、X65CrMo17−3、X55CrMo14、X90CrMoV18、X50CrMoV15、X38CrMoV15、G−X20CrMo13、X39CrMo17−1、X40CrMoVN16−2、X105CrMo17、X20CrNiMoS13−1、X5CrNi18−0、X8CrNiS18−9、X2CrNi19−11、X2CrNi18−9、X10CrNi18−8、X5CrNiMo17−12−2、X2CrNiMo17−12−2、X2CrNiMoN25−7−4、X2CrNiMoN17−13−3、X2CrNiMo17−12−3、X2CrNiMo18−14−3、X2CrNiMo18−15−3、X2CrNiMo18143、X13CrMnMoN18−14−3、X2CrNiMoN22136、X2CrNiMnMoNbN2l−9−4−3、X4CrNiMnMo21−9−4、X105CrCoMo18−2、X6CrNiTi18−10、X5CrNiCuNb16−4、X3CrNiCuTiNb12−9、X3CrNiCuTiNb12−9、X7CrNiAl17−7、CoCr20Ni15Mo、G−CoCr29Mo、CoCr20W15Ni、Co−20Cr−l5W−10Ni、CoCr28MoNi、CoNi35Cr20Mo10、Ti1、Ti2、Ti3、Ti4、Ti−5Al−2,5Fe、Ti−5Al−2,5Sn、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−4V ELI、Ti−3Al−2,5V(Gr9)、99,5Ti、Ti−12Mo−6Zr−2Fe、Ti−13,4Al−29Nb、Ti−13Nb−13Zr、Ti−15Al、Ti−15Mo、Ti−15Mo−5Zr−3Al、Ti−15Sn、Ti−15Zr−4Nb、Ti−15Zr−4Nb−4Ta、Ti−15Zr−4Nb−4Ta−0,2Pd、Ti−29Nb−13Ta−4,6Zr、Ti−30Nb−10Ta−5Zr、Ti−35,5Nb−1,5Ta−7,1Zr、Ti−35Zr−10Nb、Ti−45Nb、Ti−30Nb、Ti−30Ta、Ti−6Mn、Ti−5Zr−3Sn−5Mo−15Nb、Ti−3Al−8V−6Cr−4Zr−4Mo、Ti−6Al−2Nb−1Ta−0,8Mo、Ti−6Al−4Fe、Ti−6Al−4Nb、Ti−6Al−6Nb−1Ta、Ti−6Al−7Nb、Ti−6Al−4Zr−2Sn−2Mo、Ti−8,4Al−15,4Nb、Ti−8Al−7Nb、Ti−8Al−1Mo−1V、Ti−11Mo−6Zr−4Snから成る群のうちの金属が含まれる。
【0063】
また、MBS、PMMI、MABS、CA、CTA、CAB、CAP、COC、PCT、PCTA、PCTG、EVA、PMP、PHEMA、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド2、PAEK、PEEK、PB、PC、PPC、PETP、PBT、MDPE、LDPE、HDPE、UHMWPE、LLDPE、PI、PAI、PEI、PIB、POM、PPO、PPE、PPS、PP、PS、PSU、PESU、PVC、PVC−P、PVC−U、ABS、SAN、TPE−U、TPE−A、TPE−E、PVDC、PVA、SI、PDMS、EPM、EP、UF、MF、PF、PUR、UP、PEBA、PHB、PLA、PLLA、PDLA、PDLLA、PGL、PGLA、PGLLA、PGDLLA、PGL−co−polyTMC、PGL−co−PCL、PDS、PVAL、PCL、Poly−TMC、PUR(linear)、超弾性NiTi、形状記憶NiTiから成る群のうちのポリマーを使用することも可能である。
【0064】
また、Al2O3(酸化アルミニウム)、Y−TZP(酸化ジルコニウムセラミック)、AMC(アルミナマトリックス複合材料)、HA(ヒドロキシルアパタイト)、TCP(リン酸三カルシウム)、セラバイタル(Ceravital)(ガラスセラミック/バイオグラス(Bioglas)(登録商標))、FZM/K(部分安定化酸化ジルコニウム)、TZP−A(酸化ジルコニウムセラミック)、ATZ(アルミナ強化ジルコニア)、C799(酸化アルミニウムセラミック)、ショット8625(Schott8625)(トランスポンダガラス)から成る群のうちのセラミックも使用可能である。
【0065】
またそれらの組合せも使用可能である。
【0066】
問題としている個々の張力要素1と骨の大きさに関しては、本質的には定まった仕様はない。逆に、張力要素1の寸法は適用分野によって決まる。したがって、例えば骨折の固定への適用と顔面骨折又は頭蓋骨折などの固定への適用とではかなり違ってくる。使用されるスクリューシステムに対して釣り合う大きさの張力要素1が、寸法選択の近似的な目安として考えられる。実際の医療技術から、コーティカルスクリュー又は海綿骨スクリューの公称直径と適用分野との相関を概略的に確立可能である。それを下表に示す。
【表1】
【0067】
スクリューシステムと張力要素1の寸法と位置取りの選択もまた骨折のタイプ(例えば横骨折、斜骨折)と骨折位置とに依存し、それにより荷重ケースが異なる。
【0068】
したがって骨幹骨折の場合にはほとんどの場合皮質骨システムが使用されて、海綿骨の割合はない。他方で、関節近くの骨折の場合には海綿骨システムが使用され、この領域では海綿骨のパーセンテージが非常に高い。海綿骨スクリューは、同一の公称直径に対してコア直径がより大きいのでより大きな接触面積の割合となる。関節骨折すなわち関節面を含む骨折の場合、その部分の解剖学的条件によって皮質骨システムと海綿骨システムが使用される。複合骨折の場合にも両システムを使用し得る。
【0069】
さらに、単一すなわち単皮質骨固定とは別に、骨を貫通して両側の皮質骨領域でスクリューを固定する複皮質骨システムも提供され得る。
【0070】
図6に示すように、終端要素の役目をする張力要素1が張力要素チェーンの両端に備えられ、このように組立てられた固定装置の両端を対応するスクリュー7で骨に固定可能とする。図5はそのような終端要素付きの張力要素1の例示的実施形態を示す。図5からわかるように、この終端要素は可能な限り通常の張力要素1と同じように構成されているが、長手方向端部に歯機構3を有する受部2の代わりに環状受部16があって、スリーブ要素5と骨固定用のスクリュー7がそこを通って導入される。また、歯機構を備える受部2の場合と同様に、少なくともスクリューヘッドに面する接触面あるいは環状受部17の受部中心点に向かう内壁領域は凹面であって、スクリューヘッドを(環状受部17の)受部2の上端と可能な限り同一高さとなるようにねじ込むことが可能である。こうして周囲の組織への刺激がないようにする。終端要素の場合には個々の張力要素1を相互に回転可能とする必要がないために、スクリュー7を中間スリーブなしで環状受部17の中へ導入して張力要素1を骨にねじ止めすることが可能である。
【0071】
終端要素8の代替実施形態を図7に示す。この終端要素8は環状に構成されて歯機構4をもつ接触面11を有し、またそこに一体となった、張力要素1の1つの受部2を介して導入可能なスリーブ12を持っている。この終端要素8の歯機構4が受部2に形成された歯機構3の方向に移動して相補的に係合し、その張力要素1の受部2に受け止められた終端要素8のスリーブ12を介してスクリュー7を導入することにより張力要素1が固定できる。
【0072】
そのような終端要素は、他の張力要素1とスリーブ要素5で組み立てられた「チェーン」の末端を骨に円滑に配置するのに必要である。
【0073】
図1図3に特に関連して説明した張力要素1の代わりまたは追加として、本発明による固定装置を形成するのに、図8に示す張力要素1’を使用することも可能である。
【0074】
この張力要素1’は上記の張力要素1とは異なり、1つ又は両方の受部2の代わりに張力要素1’の長手方向の少なくとも一端に、歯付きのディスクまたはその類似のものとして構成された環状受けディスク14が形成されている。そして張力要素、スリーブ要素5、及び/又はスクリュー7と連接するときに、図9に示すように他の張力要素1の環状受部2の間に挿入可能である。1つ又は複数の張力要素1、1’を連接することにより、例えばY字形や星形の張力要素、スリーブ要素及び/又はスクリュー、あるいはそれらの他の組合せを容易に作製することが可能である。
【0075】
張力要素の更なる実施形態が図10に示されている。この張力要素1”は、卵形状の代わりに複肢形状を有している点がこれまでに説明した張力要素とは異なっている。具体的には図10に示す複肢張力要素1”は、中央の環状受要素13のまわりにY字型に一体形成され、複肢となった張力要素1”の各分肢端部には一体的に接合された受部2があり、張力要素1”の長手方向Lの仮想中心線に向くその接触面上には歯機構3が形成されている。これにより上記のように、ラッチ機能が生成されて張力要素を相互に整列させることができ、また同時に張力要素がねじ止めされるとすぐに確実に所望角度位置に固定される。
【0076】
図には示されていないが、複肢張力要素1”は、4又は5以上の分肢で構成することも可能である。ここで説明した張力要素1、1’1”は任意の方法で相互に結合させることが可能であり、その結果上記のチェーンや星形配置の他に、張力要素1、1’1”の任意の組合せによって実現可能なあらゆる配置を提供することができる。したがって、ここに図示した3つの張力要素1、1’、1”のすべての組合せから複雑な「網状組織」を作製することも可能である。ここで、図7に示す個別の終端要素8、又は終端要素の役目をする一体型環状受部16を有する図6の張力要素のいずれかが、接合された張力要素1、1’、1”の各終端に使用される。
【0077】
本発明は、上記で説明したとおり、少なくとも2つの張力要素1、1’、1”と少なくとも2つの締結手段7と少なくとも2つのスリーブ要素5を有する骨折用固定装置を提供する。張力要素1、1’、1”のそれぞれは外構体6を有し、その長手方向に相互に離間した両端部にはスリーブ要素5又は締結要素7を取り囲む受部2がある。そうして複数の張力要素1、スリーブ要素5、及び/又は締結手段7を連接することでチェーン又はその類似物を構成することが可能である。各張力要素1は、幅方向に点対称、又は長手方向に関して鏡面対称に形成されている。ここで受部2は、張力要素1の長手方向Lの仮想中心線を起点として、張力要素1の高さ方向Hに外構体6の外端に向かってそれぞれが上向き又は下向きに延伸しており、その仮想中心線に面する接触面上には歯機構3を持っている。そして、個別の張力要素1を相互接続する場合、受部2の相対向する接触面上に形成された歯機構3を相互係合させることによりこれらの要素を相互に所定の角度位置に整列させることができる。
【符号の説明】
【0078】
1,1’,1” 張力要素
2 環状受部
3,4 歯機構
5 スリーブ要素
6 外構体
7 締結手段
8 終端要素
9 接続点
10 側面フランク
11 接触面
12 スリーブ
13 受け要素
14 環状受けディスク
15 受部の一部分
16 環状受部
17 切込み
B 幅方向
L 長手方向
H 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10