(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の駒部材には少なくとも1つの切れ込みが形成され、ボルト本体の回動に伴って前記切れ込みが開くことで、当該駒部材の外周面が周方向に広がるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンカーボルト。
【背景技術】
【0002】
従来より、石材からなるモニュメント等を台座に設置するに当たっては、様々な手法がとられている。
図15、
図16に、モニュメント2を台座3等に固定する代表的な従来例を示す。
これらの図に示すように、モニュメント2を台座3に設置するに当たって、モニュメント2側の接合面(下面)2Aと台座3側の接合面(台座上面3A)に予め取付孔(挿入孔)2B,2B、取付孔(挿入孔)3B,3Bを形成し、この取付孔(挿入孔)2B,2B、3B,3Bに接着剤5を充填した状態で、各々の挿入孔2B,2B、挿入孔3B,3Bに、接合用ボルト10を挿入してモニュメント2と台座3とを接着剤5と接合用ボルト10とによって固定する手法が提案されている。
例えば、特開平7−34431号公報に、固定部材に組み石を固定するに当たって、組み石のアンカー穴に接着剤を充填し、固定部材に予め取り付けられたアンカーボルトの上端をアンカー穴に挿入することで、組み石と固定部材とを接着剤で固定する技術が開示されている。
【0003】
この手法では、台座上面3Aの所定の位置に予め複数の目地棒6,6,6,6が配置され、台座上面3Aに接着剤5が塗布される(
図15)。また台座上面3Aに設けられた取付孔3B,3Bにも接着剤5が充填される。
一方のモニュメント2の下面2Aの取付孔2B,2Bにも接着剤5が充填される。
【0004】
前記目地棒6によって台座上面3Aとモニュメント2の下面2Aとの間に設けられた隙間には接着剤5が入り込んで、モニュメント2の下面2Aと台座上面3Aが、接合用ボルト10と接着剤5により強固に固定されることになる。
【0005】
図17には、前記接合用ボルト10の代わりにカットアンカー20(
図17(A))を用いてモニュメント2と台座3とを接合する手法を示す。
この手法では、カットアンカー20を専用打込棒21を用いて台座3側の取付孔3Bに埋設し(
図17(B))、該カットアンカー20の内壁面に形成された雌ネジ20Cにネジ棒22の雄ネジ22Cを螺合させて取付け(
図17(C))、この螺合されたネジ棒22を、接着剤5が予め充填されたモニュメント2の取付孔2Bに挿入して、モニュメント2を台座上面3Aに固定する(
図17(D)、
図18)。
【0006】
また、前記カットアンカー20に代えてアンカーボルト30(
図19)や、アンカーボルト40(
図20)の一端を台座3側の取付孔3Bに固定しておき、他端(アンカーボルト30のボルト本体31のネジ部31A、アンカーボルト40の頭部40Aに取り付けられた金具41)を、接着剤5が予め充填された取付孔2B,2Bに挿入して、モニュメント2を台座3に固定する方法も知られている。
アンカーボルト30に関しては、特開平7−26633号公報で、円柱状ネジ部を、取付孔に挿入した状態で、円柱状ネジ部をナットに螺合し、ナットを回動することで、円柱状ネジ部が引き上げられ、このとき円柱状ネジ部の外側に設けられた拡開部が広がるアンカーボルトが開示されている。この拡開部が軸心に対して周方向に広がることで、アンカーボルトが取付孔に強固に固定される。
また、拡開型のアンカーボルト40に関しては、特開2003−90173号公報が、ボルトに螺合したテーパー状のナットの一端を、該ボルトとカラーとの間に挿入し、この状態で、ボルトを回動することでナットを引き上げて、カラーを拡開するアンカーボルトを開示している。
【0007】
これらカットアンカー20、アンカーボルト30、40を用いた何れの場合であっても、一方の設置面(
図15,16の台座上面3A側)ではアンカーボルトによって強固に固定されるものの、他方の設置面(モニュメント2の下面2A側)では、何れの場合も取付孔に予め充填された接着剤5や台座上面3A、モニュメント2の下面2Aに塗布される接着剤5により接合される構造となっている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係るアンカーボルト100を示す斜視図である。
この図に1に示すように、アンカーボルト100は、ボルト本体110と、第1、第2の円筒部(筒部)120、130と、外周面が内側に向かって先細るテーパー状の第1、第2の駒部材140、150と、六角形のフランジ(六角フランジ)160とによって構成されている。
【0022】
このように構成されたアンカーボルト100はその両側端(第1の円筒部120、第2の円筒部130)が、設置対象(モニュメント)に設けられた取付孔(挿入孔)と、設置面(台座)に設けられた取付孔(挿入孔)にそれぞれ挿入され、挿入された状態のままボルト本体110を回動することによって、第1の駒部材140と第2の駒部材150とが互いに引き付けられ、この駒部材140、150によって第1の円筒部120と第2の円筒部130の外側端部120A、130Aが、周方向に拡開されるように構成されている。
【0023】
よって、第1、第2の円筒部120、130の外側端部120A、130Aが、設置対象(モニュメント)に形成された取付孔や、設置面(台座上面)に形成された取付孔の内壁面をグリップすことになる。
外側端部120A、130Aが取付孔の内壁面をグリップした状態で更にボルト本体110を回動すると、そのグリップ力が強まると共に、第1の駒部材140と第2の駒部材150とが更に引き付け合うことになって、グリップ力を強めながら、設置対象(モニュメント)と設置面(台座上面)とを固定したまま引き付け合うことになる。
【0024】
図2は、アンカーボルト100の各部の詳細について説明するための分解斜視図である。
この図に示すように、アンカーボルト100のボルト本体110には、逆ネジ(雄ネジ)111が形成された第1のネジ部110Aと、正ネジ(雄ネジ)112が形成された第2のネジ部110Bとが設けられ、これらの間(ネジが切られていない部分)は、断面が六角形(多角形)の柱部(六角柱部)110Dとなっている。なお、この六角柱部110Dがボルト本体110の回動部となっている。
また、ボルト本体110の第1のネジ部110A側の先端は、第1の駒部材140を拡開するためのテーパー状円柱部110Cとなっている。
【0025】
六角形フランジ160は、ボルト本体110中央の六角柱部110Dに遊動できるよう挿入され、ボルト本体110の軸方向に摺動自在となっている。
六角形フランジ160を回動すると六角柱部110Dも周方向に回動する(ボルト本体110の回動)。
第1、第2の円筒部120、130には、その中央よりの端部(内側端部)120B、130Bに、位置決め用突起121,121、131,131が設けられている。
この位置決め用突起121,121、131,131は、第1、第2の円筒部120、130に曲げ加工によって形成される。
【0026】
このうち位置決め用突起131,131は、後述するように(
図11参照)、アンカーボルト100の一端を台座上面(設置面)3Aに設置するに当たって、台座上面3A側の位置合わせ用溝3C,3Cに嵌合されて、アンカーボルト100と取付孔3B,3Bとの位置合わせが行われる。一方、前記位置決め用突起121,121は、モニュメント2の下面2Aに設けられた位置合わせ溝2C,2Cに嵌合されて、アンカーボルト100と取付孔2B,2Bとの位置合わせが行われる。
なお、位置決め用突起121,121、131,131は、アンカーボルト100の締め付け時、ボルト本体110が回動した場合でも、第1、第2の円筒部120、130がモニュメント2や台座3に対して相対的に回転しないようストッパとしても機能する。
【0027】
また、前記第1、第2の円筒部120、130には、案内溝122,122、132,132も形成されている。
この案内溝122,122、132,132には、第1、第2の駒部材140、150側の突起部142,142、152,152が係合される。
これによりボルト本体110が回動して第1、第2の駒部材140、150が互いに引き付けられた場合でも、第1、第2の円筒部120、130と第1、第2の駒部材140、150とが、相対的に回動しないようになっている。
この結果、ボルト本体110が回動された場合でも、第1、第2の円筒部120、130の内部で、第1の駒部材140と第2の駒部材150とが互いに引き付け合うことになる。
【0028】
前記第1、第2の円筒部120、130には、拡開用スリット123,123、133,133が形成されている。
この拡開用スリット123,123、133,133を設けることによって、詳細は後述するように、第1の駒部材140と第2の駒部材150が軸方向に互いに引き付けられたとき、第1、第2の円筒部120、130の外側端部120A、130Aが周方向へ拡開する。
さらに、前記第1の駒部材140には、拡開用スリット143,143,143,143が形成され、詳細は後述するように、第1の駒部材140の内壁面が、ボルト本体110のテーパー状円柱部110Cの挿入によって広がるようになっている(後述の
図4、
図5)。
【0029】
なお、アンカーボルト100の大きさは特に限定されないが、この実施の形態では、ボルト本体110の軸方向の長さ102mm、第1、第2のネジ部110A、110Bの長さが共に33mm、六角柱部110Dの長さ36mm、その対辺が8mmとなっている。
また、第1、第2の円筒部120、130は、長さ32mm、外径13.5mm、内径10.5mm、位置決め用突起121,121、131,131の幅2mm、突起121、121、131、131が外周面から突出した長さ5mm、案内溝122,122、132,132の幅2.2mm、長さ23mm、拡開用スリット123,123、133,133の幅1mm、長さ23mmとなっている。
【0030】
また、第1、第2の駒部材140、150は、外側の外径13.5mm、中心側の外径10mm、突起部142,142、152,152の外周面から突出した長さ1.5mm、厚さ1mmとなっている。
また、六角形フランジ160は、内径の対辺8mm、外径の対辺17mm、厚さ5mmとなっている。
【0031】
次に、
図3を用いて、ボルト本体110の回動に伴う第1、第2の駒部材140、150の動作(引き付け合う動作)について説明する。
前述したように第1、第2の駒部材140、150は、第1、第2の円筒部120、130に対して周方向に回動しない。
また、前記第1、第2の円筒部120、130は、位置決め用突起121,121、131,131の作用によって、設置対象(モニュメント2)及び設置面(台座上面3A)に対して回動しない。この結果、第1、第2の駒部材140、150も設置対象(モニュメント2)及び設置面(台座上面3A)に対して回動しないことになる。
【0032】
この状態でボルト本体110を
図3(A)中、矢印方向に回動すると、第1の駒部材140と第2の駒部材150は、
図3(A)中、白抜きの矢印で示す方向に移動する(引き付け合う)。
第1の駒部材140、第2の駒部材150が引き付け合うと(
図3(B))、第1、第2の円筒部120、130が拡開する(図には現れていない)。
引き付けが進み、一方の駒部材(図示例では、第2の駒部材150)の軸方向の移動ができなくなると(第2の円筒部130が取付孔内壁をグリップした状態)、更なるボルト本体110の回動により、今度は、ボルト本体110が
図3(C)中、右方向に移動を開始する(黒塗り矢印)。
このとき第1の駒部材140が移動可能である限り、このボルト本体110の回動によって、第1の駒部材140が、第2の駒部材150側に引き付けられることになる(
図3(C)の白抜きの矢印)。
【0033】
次に、本発明に係る拡開型の第1の駒部材140の構成及び作用について、
図4、
図5を用いて説明する。
第1の駒部材140には、前述したように拡開用スリット143,143,143,143が形成されている(
図1、
図2)。
第1の駒部材140は、
図4に示すように、機能的に第1の領域140Aと第2の140Bとに分けられている。
このうち第1の領域140Aの内部は、径が一定の円筒状であるが、第2の領域140Bの内部は、径が、ボルト本体110の軸方向外側に向かって小さくなるテーパー状となっている(
図4(A))。
第1の駒部材140は、外周面が外側に向かって広がるテーパー状であり、内壁が外側に向かって狭まるテーパー状であるため、第2の領域140Bの厚みが増す度合いが、第1の領域140Aの厚みが増す度合いより大きくなる。
【0034】
第1の駒部材140の厚みの増す度合いが、第1の領域140Aと第2の140Bとで異なる2段階であるため、第1の駒部材140は、
図4(B)に示すように第1の領域140Aの壁面140aと第2の140Bの壁面140bとが面一となったとき、第1の駒部材140の厚みが増す度合いは、その略中央部から外側で急になる。
【0035】
図5は、上記構成の第1の駒部材140に、実際にボルト本体110を螺合した状態を示す断面図である。
アンカーボルト100の締め込み前は、ボルト本体110の雄ネジ111と第1の駒部材140の雌ネジ141とは、2〜3周程度螺合した状態に保たれている(
図5(A))。
アンカーボルト100が取付孔(図示省略)に挿入されてボルト本体110が回動されると、ボルト本体110の雄ネジ111が第1の駒部材140の雌ネジ141と更に螺合して、第1のネジ部110Aが、第1の駒部材140の第1の領域140Aの図中、左側の端部まで移動する(
図5(B))。
この状態からボルト本体110が更に回動されると、ボルト本体110のテーパー状円柱部110Cが、第2の140Bのテーパー面を周方向に押し広げ、第1の領域140Aの内壁140aと第2の140Bの内壁140bが面一になり、第1の駒部材140の外周は、その略中央で極端に広がる(
図5(C))。
【0036】
次にボルト本体110の回動に伴うアンカーボルト100の拡開動作について、
図6〜
図10を用いて説明する。
前述したように第1、第2の駒部材140、150と第1、第2の円筒部120、130は相対的に回動しないようになっており、また第1、第2の円筒部120、130は設置対象(2)、設置面(台座3)に対して回動しないようになっている。
アンカーボルト100は、締め込み前にボルト本体110の両端が、第1、第2の円筒部120、130に挿着され(
図6)、この状態で、ボルト本体110の雄ネジ111と第1の駒部材140の雌ネジ141が、雄ネジ112と第2の駒部材150の雌ネジ151とが軽く螺合されて、締め込みが可能な状態に維持される(
図7)。
【0037】
この状態からボルト本体110を回動すると(
図7の矢印方向の回動)、一端側ではボルト本体110側の雄ネジ(逆ネジ)111と第1の駒部材140の雌ネジ141が螺合し、他端側ではボルト本体110側の雄ネジ(正ネジ)112と第2の駒部材150の雌ネジ151が螺合されているので、第1、第2の駒部材140、150は、互いに引き付け合うように軸方向で移動する(
図7の状態から
図8の状態)。
第1、第2の駒部材140、150が引き付け合うと、駒部材の端部144、154がボルト本体110と第1、第2の円筒部120、130との隙間に入り込み、第1、第2の円筒部120、130が共に拡開を開始する。
【0038】
図8に示す状態から、ボルト本体110を更に図中、矢印方向に回動すると、第1、第2の駒部材140、150が更に引き付けられ、その端部144、154が、ボルト本体110と第1の円筒部120の隙間、ボルト本体110と第2の円筒部130の隙間を更に押し広げる(
図9)。
そして、少なくとも一方の円筒部(
図9では、第2の円筒部130)が取付孔(図示省略)の内壁面をグリップしロック状態になると、駒部材(第2の駒部材150)の軸方向の移動が制限される(自由に移動できなくなる)。
【0039】
図9に示す状態から、更にボルト本体110を回動すると、一方の駒部材(第2の駒部材150)の移動が禁止されているため(実際には、更なる締め付けで、隙間に食い込む)、今度は、ボルト本体110が、アンカーボルト100内部で
図9中、右方向への移動を開始する(
図9の状態から
図10の状態)。
このとき第1の駒部材140は、雌ネジ141と雄ネジ111の螺合によりボルト本体110に対して軸方向右側に移動するが、ボルト本体110自体も軸方向右側に移動するため、該第1の駒部材140の、アンカーボルト100内部での軸方向(図中右方向)への移動度合いが大きくなる。
この結果、第1の駒部材140の端部144の隙間への進入の度合いが大きくなって、第1の円筒部120の拡開の度合いも大きくなる。
【0040】
さらに第1の駒部材140は、前述したように、拡開用スリット143,143,143,143が設けられていること、更には第1の領域140Aの内壁140aが外側に向かって細くなるテーパー状となっていることによって(
図4、
図5参照)、第1の駒部材140自体が周方向に拡開するため、第1の円筒部120は、その拡開の度合いが更に大きくなる。
このように第1の円筒部120側の拡開の度合いを、第2の円筒部130側の拡開の度合いより大きくすることで、アンカーボルト100の一方の端部(第1の円筒部120側)を大きな径の取付孔(挿入孔)に挿入し、他方の端部(第2の円筒部130側)を小さな径の取付孔(挿入孔)に挿入しても、十分な接合強度を確保することができる。
【0041】
次に、本発明に係るアンカーボルト100を用いて、実際にモニュメント(設置対象)2を台座上面(設置面)3Aに固定し、台座(設置対象)3を更にコンクリート上面(コンクリート設置面)4Aに固定する手法について、
図11、
図12を用いて説明する。
モニュメント2を台座上面3Aに固定するに当たっては、最初に目地棒6(厚さ6mmで、六角形フランジ160の厚さ5mmより大きい)を台座上面3Aの所定位置に配置する(図示例では、4カ所)。
次いで、台座上面3Aに予め設けられている取付孔3B,3Bに、アンカーボルト100を挿入する。この例では、アンカーボルト100の第2の円筒部130側を挿入する(
図12(A))。このとき位置決め用突起131,131と位置合わせ用溝3C,3Cとが嵌合される。
この状態で台座3とモニュメント2との位置を合わせながら、当該モニュメント2を下降させ(
図11、
図12(B))、アンカーボルト100の第1の円筒部120側を、モニュメント2の取付孔(挿入孔)2B,2Bに差し込む。このとき位置決め用突起121,121は、位置合わせ溝2C,2Cに嵌合される。
【0042】
モニュメント2の台座上面3Aへの下降が終了したとき、台座上面3Aに配置された目地棒6,6,6,6によって、台座上面3Aとモニュメント2の下面2Aと間に、締め付け作業用の隙間(約6mm)が確保される(
図12(C))。
このように締め付け作業用の隙間を設けておくことによって、アンカーボルト100の六角フランジ160(厚さ5mm)が、この隙間の中に位置するようになり、スパナ等の工具でこれを回動することができる。
なお、六角形フランジ160は、ボルト本体110の軸方向に摺動自在であるため、アンカーボルト100の中心が、目地棒6により確保された隙間から外れていても、六角形フランジ160を常に隙間内に位置させることができ、ボルト本体110の回動が可能となる。
【0043】
前記六角フランジ160をスパナ等の工具(図示省略)を用いて、
図11中時計回りに回動すると、ボルト本体110の雄ネジ(正ネジ)112と第2の駒部材150の雌ネジ151との螺合によって該第2の駒部材150は図中上方に引き上げられる。
一方、ボルト本体110の雄ネジ(逆ネジ)111は、第1の駒部材140の雌ネジ141と螺合するため、該第1の駒部材140は図中下方に引き下げられる。
この結果、第1の駒部材140と第2の駒部材150は、
図11、
図12中、上下方向に引き付け合うことになる。
第1の駒部材140と第2の駒部材150とが互いに引き付け合うと、第1の駒部材140、第2の150の端部144、154が、ボルト本体110と第1、第2の円筒部120、130との隙間に入り込み、第1、第2の円筒部120、130の外側端部120A、130Aを周方向に押し広げることになる(
図12(D))。
【0044】
六角フランジ160を更に時計回りに回動すると、取付孔3B,3B側に挿入された第2の円筒部130の拡開が最大となり、第2の円筒部130の外側端部130Aが取付孔3B,3Bの内壁面をグリップする(
図12(E))。
ここで取付孔3B,3Bの内壁中央部には、第2の円筒部130によるグリップ効果を高めるための拡径凹部3Fが設けられており、これによって第2の円筒部130の外側端部130Aが拡径凹部3Fに嵌合して、その結合力が高められる。
このとき、第2の駒部材150はアンカーボルト100の内部での移動が制限される(実質的に禁止)。
【0045】
第2の駒部材150の移動(
図12中、上方向への移動)が制限された状態で、六角フランジ160を更に回動すると、第2の駒部材150の上昇は止まったままとなるが、第2の駒部材150の雌ネジ151とボルト本体110の雄ネジ112の螺合によってボルト本体110が、アンカーボルト100内を下方向に移動する。
また、第1の駒部材140の雌ネジ141は、回動するボルト本体110の雄ネジ111と螺合しているため(
図9)、この第1の駒部材140はアンカーボルト100内を下降し続ける。
このようにボルト本体110自体が下降し、更に第1の駒部材140がボルト本体110に対して下降するため、第1の駒部材140が、ボルト本体110と第1の円筒部120との隙間に入り込む度合いが進み、第1の円筒部120の拡開動作が大きくなる。
【0046】
この結果、第1の円筒部120が挿入された取付孔2Bの開口径が、他方の取付孔3Bより大きい場合でも、1つのアンカーボルト100で、設置対象(モニュメント2)と設置面(台座上面3A)とを強固に固定することができる。
ここで取付孔(挿入孔)2B,2Bの内壁中央部にも、第1の円筒部120の外側端部120Aによるグリップ効果を高めるための拡径凹部2Fが設けられ、これによって外側端部120Aが拡径凹部2Fに嵌合して、その結合力が高められる。
特に、このアンカーボルト100では、第1の駒部材140自体も、ボルト本体110の回動によって拡開する構成となっていること、更には、第1の駒部材140の第1の領域140Aに比べて、第2の140Bの断面形状のテーパーを急峻にしているため、第1のネジ部110が第2の140Bのテーパー状の内壁140bに当接した時点から拡開型の第1の駒部材140の拡開の度合いが大きくなって(
図5(B)から(C))、第1の円筒部120の拡開の度合いも更に大きくなる。
【0047】
このように本発明に係るアンカーボルト100は、第1の円筒部120と、第2の円筒部130との周方向の広がり(拡開)の度合いが異なるため(第1の円筒部120の方が急に広がる)、この実施の形態のように、モニュメント2の取付孔(挿入孔)2B,2Bと、台座3の取付孔(挿入孔)3B,3Bとで径が異なる場合に、一方の円筒部が拡開して取付孔にグリップした状態となっても、他方の円筒部の拡開が引き続き行われるため、設置対象と設置面とで、互いに径が異なる取付孔が形成された場合でも、当該アンカーボルト100による強固な接合が可能になる。
【0048】
また、アンカーボルト100は、台座3をコンクリート設置面4Aに固定する場合にも用いられる(
図11)。
この場合、台座3の下側の設置面3Dには、4つの取付孔3E,3E,3E,3Eが設けられ、コンクリート設置面4Aにも取付孔4E,4E,4E,4Eが設けられる。
また、設置面3Dとコンクリート設置面4Aとの間には目地棒6,6,6,6が設けられ、設置面3Dとコンクリート設置面4Aとの間に隙間(作業用の隙間6mm)が確保される。
台座3をコンクリート設置面4Aに設置する際にも、取付孔4E,4E,4E,4Eにアンカーボルト100の一端(第1の円筒部120側)を挿入した状態で、位置合わせをしながら台座3を上方から下降させればよい(
図11)。
その後、モニュメント2を設置する場合と同様の手順で、六角フランジ160を時計回りに回動して、アンカーボルト100により台座3をコンクリート設置面4Aに強固に設置することができる。
【0049】
以上説明したように、この実施の態様では、モニュメント2を台座3に設置するに当たって、アンカーボルト100にて両者を強固に固定できるため、モニュメント20に台座30に対して上方向(引き抜く方向)の力が作用した場合でも、アンカーボルト100がモニュメント20の取付孔2Bの壁面を強固にグリップし、ロックするため、想定外の縦方向の大きな揺れが発生しても、アンカーボルト100がモニュメント2や台座3に対して上下方向に外れる虞れがない。
また、接着剤を使用していないため経年劣化を考慮する必要がなくなる。
また、モニュメント20を上下方向のみならず、左右方向にも強固に固定しているため、横方向の僅かな移動(振動)が連続して生じても「ずれ」が生ずることがなく、アンカーボルト100の剪断力に対する耐性も向上する。
【0050】
なお、この実施の形態のアンカーボルト100では、第1の駒部材140のみ拡開可能な構成としたが、
図13に示すように第2の駒部材150にも拡開用スリット153,153,153,153を形成して拡開可能な構成にしてもよい。
また、この実施の形態では、ボルト本体110の六角柱部110Dに六角フランジ160を挿入しておき、この六角フランジ160を回動することで、ボルト本体110を回動する構成としたが、
図14に示すように、六角フランジを設けず、スパナ8で六角柱部110Dを直接回すようにしてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態では、ボルト本体110を円柱としたが、雄ネジを形成できるのであれば、他の断面形状(例えば多角形)でもよい。
また、上述した実施の形態では、ボルト本体110の駆動部(六角柱部110D)及びこれに挿着されるフランジ(六角形フランジ160)を六角形としたが、ボルト本体110を回動できるのであれば、他の形状(他の多角形)でもよい。
【0052】
また、上記した実施の形態では、第1のネジ部110Aに逆ネジが、第2のネジ部に正ネジを形成した例を示したが、第1のネジ部110Aに正ネジ、第2のネジ部に逆ネジを形成してもよいのは勿論である。この場合、第1の駒部材140の雌ネジ141、第2の駒部材150の雌ネジ151の正、逆を反対にするのは勿論である。
また、上記した実施の形態では、拡開する筒部を、円筒としたが、拡開して、設置対象の取付孔(挿入孔)をグリップできるのであれば、中空の多角形の柱等で構成してもよい。
【解決手段】 アンカーボルト100のボルト本体110は、一端に正ネジ112が、他端に逆ネジ111が形成される。正ネジ112と逆ネジ111との間の六角柱部110Dに六角形フランジ160が摺動自在に取り付けられる。ボルト本体110の両端には、拡開可能な第1、第2の円筒部120、130が挿入される。第1、第2の駒部材140、150の内壁面には、正ネジ112、逆ネジ111と螺合する雌ネジ111,112がそれぞれ形成される。第1、第2の駒部材140、150の端部144、154は、ボルト本体110と第1、第2の円筒部120との隙間に差し込まれる。ボルト本体110の回動に伴って、第1、第2の駒部材140、150とが互いに引き付けられ、前記第1、第2の円筒部120、130が拡開する。