(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用したPC鋼材劣化状況判別システムついて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0014】
図1は、本発明を適用したPC鋼材劣化状況判別システム1の全体構成を示すブロック図である。PC鋼材劣化状況判別システム1は、PC構造物7のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を非破壊検査により判別する。PC鋼材劣化状況判別システム1は、非破壊検査部8と、非破壊検査部8に接続された評価装置9と、評価装置9に接続された判別装置2と、判別装置2に接続されたデータベース3とを備えている。
【0015】
PC構造物7は、PC鋼材72及びシース71が内部に配設された橋梁や高架橋、建築物等である。
【0016】
シース71は、内部にPC鋼棒又は多数のPC鋼線等を始めとするPC鋼材72が緊張状態で、しかも当該シース71の内壁面から離間する形で配設される。ちなみに、本実施の形態においては、ポストテンション方式のPC構造物7を対象としていることから、かかる場合にはPC構造物7中にシース71を配置した後にコンクリートを充填並びに硬化させ、その後にシース71内にPC鋼材72を挿入して引張応力を負荷する。更にその後、シース71内にグラウトを充填して硬化させる。
【0017】
非破壊検査部8は、例えばX線透過法、漏洩磁束法、AE(Acoustic Emission)、電気抵抗計測、振動計測、赤外線サーモグラフィー、高周波衝撃弾性波法、電磁パルス法、電磁レーダー法、自然電位法、分極抵抗法等の非破壊検査手法により、PC鋼材72の劣化状況を判別するための検査データを検出する。非破壊検査部8は、検出した検査データを評価装置9へ送信する。
【0018】
評価装置9は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)やスマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等の電子機器で構成されている。この評価装置9は、非破壊検査部8により取得された検査データが波形からなるものであれば、それを解析することにより、シース71内におけるグラウトの充填度を評価する上で最適なものに適宜加工する。例えばこの評価装置9は、得られた周波数軸のデータについてFFT(Fast Fourier Transform)変換を施すことにより、時間軸の波形データを周波数軸のスペクトラムデータに変換するようにしてもよい。評価装置9は、このようにして適宜加工した検査データを判別装置2へと送信する。
【0019】
ちなみに、この評価装置9は、例えば図示しないディスプレイ等からなる表示部を介して各検査データを表示することができる。また評価装置9は、これら各データをストレージ内に記録し、ユーザによる命令に基づいてこれらデータを表示部へ表示し、又は携帯型メモリにこれらデータを書き込むことができる。ユーザは、この携帯型メモリを評価装置9から取り外して自由に持ち運びすることが可能となる。更に評価装置9は、これら各データを公衆通信網を介して他の電子機器へ転送することも可能となる。
【0020】
なお、本発明においてこの評価装置9の構成は必須ではなく、省略するようにしてもよい。かかる場合には、非破壊検査部8から出力される検査データは、判別装置2へ直接送信されることとなる。
【0021】
データベース3は、提供すべきPC鋼材72の劣化状況の判別条件に関するデータベースが構築されている。データベース3には、公衆通信網を介して送られてきた情報、或いは本システムのユーザによって入力された情報が蓄積される。またデータベース3は、判別装置2からの要求に基づいて、この蓄積した情報を判別装置2へと送信する。
【0022】
判別装置2は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等を始めとした電子機器で構成されているが、PC以外に、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等、他のあらゆる電子機器で具現化されるものであってもよい。ユーザは、この判別装置2による探索解としてのPC鋼材72の劣化状況の判別結果を得ることにより、シース71内におけるPC鋼材72が劣化しているか否かを判別することが可能となる。そして、PC鋼材72が劣化している場合には、これを交換する等の作業を行うこととなる。
【0023】
図2は、判別装置2の具体的な構成例を示している。この判別装置2は、判別装置2全体を制御するための制御部24と、操作ボタンやキーボード等を介して各種制御用の指令を入力するための操作部25と、有線通信又は無線通信を行うための通信部26と、最適な設計条件を探索する探索部27と、ハードディスク等に代表され、実行すべき検索を行うためのプログラムを格納するための記憶部28とが内部バス21にそれぞれ接続されている。更に、この内部バス21には、実際に情報を表示するモニタとしての表示部23が接続されている。
【0024】
制御部24は、内部バス21を介して制御信号を送信することにより、判別装置2内に実装された各構成要素を制御するためのいわゆる中央制御ユニットである。また、この制御部24は、操作部25を介した操作に応じて各種制御用の指令を内部バス21を介して伝達する。
【0025】
操作部25は、キーボードやタッチパネルにより具現化され、プログラムを実行するための実行命令がユーザから入力される。この操作部25は、上記実行命令がユーザから入力された場合には、これを制御部24に通知する。この通知を受けた制御部24は、探索部27を始め、各構成要素と協調させて所望の処理動作を実行していくこととなる。
【0026】
探索部27は、PC鋼材72の劣化状況の判別結果を探索する。この探索部27は、探索動作を実行するに当たり、必要な情報として記憶部28に記憶されている各種情報や、データベース3に記憶されている各種情報を読み出す。この探索部27は、人工知能により制御されるものであってもよい。この人工知能はいかなる周知の人工知能技術に基づくものであってもよい。
【0027】
表示部23は、制御部24による制御に基づいて表示画像を作り出すグラフィックコントローラにより構成されている。この表示部23は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等によって実現される。
【0028】
記憶部28は、ハードディスクで構成される場合において、制御部24による制御に基づき、各アドレスに対して所定の情報が書き込まれるとともに、必要に応じてこれが読み出される。また、この記憶部28には、本発明を実行するためのプログラムが格納されている。このプログラムは制御部24により読み出されて実行されることになる。
【0029】
上述した構成からなるPC鋼材劣化状況判別システム1における動作について説明をする。
【0030】
PC鋼材劣化状況判別システム1では、例えば
図3に示すように、検査データA、B、・・・からなる入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況の判別結果に関する出力解を探索する。このPC鋼材72の劣化状況の判別結果は、例えば腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等を判定する。腐食度合、断面欠損の度合は、例えば0%、50%、100%等のような確率として示されるものであってもよいし、PC鋼材72における側面視、断面視でいかなる分布で腐食や断面欠損が起きているかを示すものであってもよい。
【0031】
入力パラメータとしては、非破壊検査部8により検出され、必要に応じて評価装置9により加工され、解析された検査データである。検査データA、B、・・が入力パラメータとして入力される。
【0032】
このようにして検査データが非破壊検査部8により検出された後に、実際に探索プログラムによる処理動作が実行されていくこととなる。この探索プログラムの処理動作フローを
図4に示す。
【0033】
評価装置9は、ステップS11において非破壊検査部8により検出された検査データについて各種解析を行い、また後段の探索装置による探索を行い易くするために各種データに加工を施す(ステップS12)。
【0034】
次にステップS13へ移行し、ステップS12において解析、加工した検査データと連関度の出力解を探索する。この探索を行う前において、データベース3は、参照用の入力パラメータ(以下、参照用入力パラメータという。)と、出力解としてのPC鋼材72の劣化状況の判別結果との3段階以上の連関度を予め取得しておく。
【0035】
X線透過法
図5は、このデータベース3において予め取得した連関度の例を示している。この
図5の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、X線透過法を利用する。このX線透過法に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えばX線透過法に基づいて撮影した画像等で構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これらX線透過法に基づいて撮影した画像r1、r2、r3、・・・・を予め学習させることとなる。
【0036】
データベース3には、参照用入力パラメータとしてのX線透過法に基づいて撮影した画像r1、r2、r3、・・・・と、出力解としてのPC鋼材72の劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図5の例によれば、参照用入力パラメータが画像r1である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが画像r2である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0037】
これらの連関度は、以前にX線透過法に基づいて非破壊検査を行った際の画像r1、r2、r3、・・・と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、X線透過法に基づいて非破壊検査を行った際の画像に基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えばX線透過法に基づく画像r3に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様にX線透過法に基づく画像r2に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0038】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図5に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータの画像が、参照用入力パラメータとしての画像r1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。また、これ以外に矢印が繋がっていない出力解を選択してもよいことは勿論である。即ち、このPC鋼材72の劣化状況の選択は、連関度が高いものから順に選択される場合に限定されるものではなく、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0039】
また、ステップS12において解析した入力パラメータの画像が、参照用入力パラメータとしての画像r2にも一部類似しているが、画像r3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、画像間の特徴等に着目して判断するようにしてもよい。かかる場合には、例えばPC鋼材72を構成する画素の輝度を画像内の特徴領域とみなして何れに割り当てるか判断するようにしてもよい。入力パラメータの画像が何れの参照用入力パラメータに類似しているかを判別する際には、例えばディープラーニング等を活用するようにしてもよい。ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき、何れの参照用入力パラメータに割り当てるかを判別することとなる。このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0040】
なお、ステップS12において解析した入力パラメータに対する出力解の選択方法は、上述した方法に限定されるものではなく、連関度を参照するものであればいかなる方法に基づいて実行するようにしてもよい。また、このステップS13の探索動作では、人工知能を利用して行うようにしてもよい。
【0041】
次にステップS14へ移行し、選択した最適解としてのPC鋼材72の劣化状況を表示部23を介して表示する。これによりユーザは、表示部23を視認することにより、これからPC鋼材72の劣化状況の判別結果を即座に把握することが可能となる。
【0042】
図6は、X線透過法による過去の非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・・と、PC鋼材72の形態情報やPC鋼材72の配置情報の何れか1以上との組み合わせと当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0043】
PC鋼材72の形態情報としては、例えばPC鋼材72の材質や部材の厚み等の情報や、PC鋼材72がPC鋼線の束で構成されている場合には、その空洞の形成箇所や、空洞の大きさ等の情報で構成される。またPC鋼材72の配置情報は、その配置形態に関するあらゆる情報が含まれる。このPC鋼材72の配置情報の例としては、例えば、正面視におけるPC鋼材72が並列で配置されているか否か、またPC鋼材72間の間隔等に関する情報が含まれる。
【0044】
かかる場合において、連関度は、
図6に示すように、非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・と、PC鋼材72の形態情報やPC鋼材72の配置情報の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、画像r1が連関度80%で、また配置情報としての「並列配置」が連関度80%で連関している。またノード61cは、画像r2が連関度60%で、形態情報としての「部材厚 500mm〜1500mm」が連関度60%、配置情報としての「非並列配置」が連関度40%で連関している。
【0045】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・PC鋼材72の形態情報やPC鋼材72の配置情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図6に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、画像r1であり、かつ形態情報として「部材厚 150〜500mm」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0046】
探索プログラムは、この探索結果に基づいて同様にステップS14において解を出力することになる。
【0047】
漏洩磁束法
図7の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、漏洩磁束法を利用する。この漏洩磁束法は、強磁性体であるPC鋼材72を着磁させ、漏洩磁束の有無を判定することによりPC鋼材72の劣化を判断する手法である。この漏洩磁束法に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば磁束密度の分布等のデータで構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら漏洩磁束法に基づいて検出した磁束密度の分布等のデータを予め学習させることとなる。
【0048】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての磁束密度の分布と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図7の例によれば、参照用入力パラメータの磁束密度の分布r1である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが磁束密度の分布r2である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0049】
これらの連関度は、以前に漏洩磁束法に基づいて非破壊検査を行った際の分布r1、r2、r3、・・・と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、漏洩磁束法に基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば漏洩磁束法に基づく分布r3に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に漏洩磁束法に基づく画像r2に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0050】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図7に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての分布r1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0051】
また、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての分布r2にも一部類似しているが、分布r3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき判断するようにしてもよい。
【0052】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0053】
図8は、漏洩磁束法による過去の非破壊検査の検査データとしての分布r1、r2、・・・と、PC鋼材72の形態情報、PC鋼材72の種類情報、PC鋼材72の配置情報、PC鋼材72が挿通されるシース71の情報の何れか1以上との組み合わせと当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0054】
PC鋼材72の形態情報の例としては上述と同様である。PC鋼材72の種類情報は、実際に使用されているPC鋼材72の種類に関するあらゆる情報を含む。PC鋼材72の配置情報は、上述に加え、PC鋼材72のかぶり厚、PC鋼材72の周囲の鉄筋の配置情況等が含まれる。PC鋼材72が挿通されるシース71の情報とは、シース71の材質やシース71の配置や状態等に関する各種情報が含まれる。
【0055】
かかる場合において、連関度は、
図8に示すように、非破壊検査の検査データとしての分布r1、r2、・・と、PC鋼材72の種類情報やPC鋼材72の配置情報等の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、分布r1が連関度80%で、また配置情報としての「かぶり厚30〜600mm」が連関度80%で連関している。またノード61cは、分布r2が連関度60%で、種類情報としての「種類β」が連関度60%、配置情報としての「かぶり厚600〜1800mm」が連関度40%で連関している。
【0056】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての分布r1、r2、・・PC鋼材72の種類情報やPC鋼材72の配置情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図8に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、分布r1であり、かつ種類情報として「種類α」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0057】
この
図8の例では、図示していないが、PC鋼材72の形態情報、シース71の情報の何れか1以上との組み合わせの連関度が定義されている場合も同様である。
【0058】
AE(Acoustic Emission)
図9の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、AEを利用する。このAEは、複数配置したAEセンサによりAE波の伝播時間の差と伝搬速度を計測することによりPC鋼材72の劣化を判断する手法である。このAEに基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えばAE波形で構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これらAE波形のデータを予め学習させることとなる。
【0059】
データベース3には、参照用入力パラメータとしてのAE波形と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図9の例によれば、参照用入力パラメータのAE波形r1である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータがAE波形r2である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0060】
これらの連関度は、以前にAEに基づいて非破壊検査を行った際のAE波形r1、r2、r3、・・・と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、AEに基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えばAEに基づくAE波形r3に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様にAEに基づくAE波形r2に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0061】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図9に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしてのAE波形r1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0062】
また、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしてのAE波形r2にも一部類似しているが、AE波形r3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき判断するようにしてもよい。
【0063】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0064】
図10は、AEによる過去の非破壊検査の検査データとしてのAE波形r1、r2、・・・と、PC鋼材72の形態情報、PC鋼材72の種類情報、PC鋼材72が埋設される構造物を構成するコンクリートの情報の何れか1以上との組み合わせと、当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0065】
PC鋼材72の形態情報の例としては上述と同様であり、PC鋼材72の形状(長さ、曲げ配置形状等)である。PC鋼材72の種類情報は、上述と同様である。PC鋼材72が埋設される構造物を構成するコンクリートの情報は、上述と同様であるが、これに加えて、コンクリート桁の大きさ等の情報も含まれる。
【0066】
かかる場合において、連関度は、
図10に示すように、非破壊検査の検査データとしてのAE波形r1、r2、・・と、PC鋼材72の種類情報やコンクリート情報等の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、AE波形r1が連関度80%で、またコンクリート情報としての「桁の長さ4m以上」が連関度80%で連関している。またノード61cは、AE波形r2が連関度60%で、種類情報としての「種類β」が連関度60%、コンクリート情報としての「桁の長さ 4m未満」が連関度40%で連関している。
【0067】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしてのAE波形r1、r2、・・PC鋼材72の種類情報やコンクリート情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図10に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、AE波形r1であり、かつ種類情報として「種類α」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0068】
この
図10の例では、図示していないが、PC鋼材72の形態情報もこの組み合わせの連関度にて定義されている場合も同様である。
【0069】
電気抵抗計測
図11の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、電気抵抗計測を利用する。この電気抵抗計測は、PC鋼材72の電気抵抗値の変化からPC鋼材72の劣化を判断する手法である。この電気抵抗計測に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば電気抵抗値の初期値からの差分値等のデータで構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら電気抵抗計測に基づいて検出した差分値のデータを予め学習させることとなる。
【0070】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての電気抵抗値の差分値と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図11の例によれば、参照用入力パラメータの差分値が「0〜0.01Ω」である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが差分値「0.01〜0.03Ω」である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0071】
これらの連関度は、以前に電気抵抗値に基づいて非破壊検査を行った際の差分値と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、電気抵抗計測に基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば電気抵抗計測に基づく電気抵抗値の差分値「0.03Ω以上」に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に電気抵抗計測に基づく差分値「0.01〜0.03Ω」に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0072】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図11に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての差分値「0〜0.01Ω」か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0073】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0074】
図12は、電気抵抗計測による過去の非破壊検査の検査データとしての差分値と、PC鋼材72の形態情報、PC鋼材72の種類情報、PC鋼材72の配置情報の何れか1以上と電気抵抗計測による過去の非破壊検査の検査データとの組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0075】
PC鋼材72の形態情報の例としては上述と同様である。PC鋼材72の形態情報は、上述に加え、PC鋼材72の長さや曲げ配置形状等である。PC鋼材72の種類情報は、上述と同様である。PC鋼材72の配置情報は、上述に加え、シース71との相対的位置関係や接触状況等の各種情報が含まれる。
【0076】
かかる場合において、連関度は、
図12に示すように、非破壊検査の検査データとしての各差分値と、PC鋼材72の種類情報やPC鋼材72の配置情報等の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、差分値「0〜0.01Ω」が連関度80%で、また配置情報としての「シース71と接触」が連関度80%で連関している。またノード61cは、差分値「0.01〜0.03Ω」が連関度60%で、種類情報としての「種類β」が連関度60%、配置情報としての「シース71と非接触」が連関度40%で連関している。
【0077】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての差分値と、PC鋼材72の種類情報やPC鋼材72の配置情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図12に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、差分値が「0〜0.01Ω」であり、かつ種類情報として「種類α」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0078】
この
図12の例では、図示していないが、PC鋼材72の形態情報の何れか1以上との組み合わせの連関度が定義されている場合も同様である。
【0079】
振動計測
図13の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、振動計測を利用する。この振動計測は、加速度計により、PC構造物7の振動を計測し、振動特性からPC鋼材72の劣化を判断する手法である。この振動計測に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば時系列的に計測した加速度の対数減衰率等のデータで構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら対数減衰率の変化等のデータを予め学習させることとなる。
【0080】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての加速度の対数減衰率と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図13の例によれば、参照用入力パラメータの対数減衰率が「0〜0.5%」である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが対数減衰率「0.5〜1%」である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0081】
これらの連関度は、以前に振動計測に基づいて非破壊検査を行った際の対数減衰率と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、振動計測に基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば振動計測に基づく対数減衰率「1〜2%」に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に振動計測に基づく差分値「0.5〜1%」に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0082】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図13に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての対数減衰率「0〜0.5%」か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0083】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0084】
図14は、振動計測による過去の非破壊検査の検査データとしての対数減衰率と、PC鋼材72の形態情報、PC鋼材72の種類情報、PC鋼材72が埋設される構造物を構成するコンクリート情報、振動計測の加速度情報の何れか1以上と振動計測による過去の非破壊検査の検査データとの組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0085】
PC鋼材72の形態情報の例としては上述と同様である。PC鋼材72の種類情報も上述と同様である。コンクリート情報としては、上述に加えて、コンクリート桁の劣化状況やコンクリート桁の形状等を含む。振動計測の加速度情報は、振動計測の加速度の大きさや振動させる各種要因等が含まれる。
【0086】
かかる場合において、連関度は、
図14に示すように、非破壊検査の検査データとしての各対数減衰率と、PC鋼材72の種類情報や加速度情報等の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、対数減衰率「0〜0.5%」が連関度80%で、また加速度情報としての「±0.04〜0.08」が連関度80%で連関している。またノード61cは、対数減衰率「0.5〜1%」が連関度60%で、種類情報としての「種類β」が連関度60%、加速度情報としての「±0.01〜0.04」が連関度40%で連関している。
【0087】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての差分値と、PC鋼材72の種類情報やPC鋼材72の配置情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図14に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、対数減衰率「0〜0.5%」であり、かつ種類情報として「種類α」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0088】
この
図14の例では、図示していないが、PC鋼材72の形態情報、コンクリート情報の何れか1以上との組み合わせの連関度が定義されている場合も同様である。
【0089】
赤外線サーモグラフィー
図15の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、赤外線サーモグラフィーを利用する。この赤外線サーモグラフィーは、計測対象から発散される赤外線放射エネルギーを検出し、見かけ上の温度に変換して温度分布を画像表示する。実際にはIHヒーターにより計測対象を強制加熱した上で撮影を行う。そして、表示されたこの画像からPC鋼材72の劣化を判断する手法である。この赤外線サーモグラフィーに基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば赤外線サーモグラフィーの画像等で構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら赤外線サーモグラフィーに基づいて検出した画像上の温度分布等のデータを予め学習させることとなる。
【0090】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての赤外線サーモグラフィーの画像と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図15の例によれば、参照用入力パラメータの赤外線サーモグラフィーの画像r1である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが赤外線サーモグラフィーの画像r2である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0091】
これらの連関度は、以前に赤外線サーモグラフィーに基づいて非破壊検査を行った際の画像r1、r2、r3、・・・と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、赤外線サーモグラフィーに基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば赤外線サーモグラフィーに基づく画像r3に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に赤外線サーモグラフィーに基づく画像r2に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0092】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図15に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての画像r1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0093】
また、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての画像r2にも一部類似しているが、画像r3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき判断するようにしてもよい。
【0094】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0095】
図16は、赤外線サーモグラフィーによる過去の非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・・と、PC鋼材72の形態情報、PC鋼材72の配置情報、PC鋼材72が埋設される構造物を構成するコンクリート情報、赤外線サーモグラフィーの条件情報の何れか1以上との組み合わせと、当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0096】
PC鋼材72の形態情報の例としては上述と同様であり、例えばPC鋼材72の径等の情報も含まれる。PC鋼材72の配置情報は、上述と同様であるが、かぶり厚等の情報も含む。コンクリート情報としては、これに埋め込まれる鋼材に関する情報、コンクリートのひび割れの有無である。赤外線サーモグラフィーの条件情報は、例えば赤外線サーモグラフィーの撮影を行う際のIHヒーターによる加熱条件等も含まれる。
【0097】
かかる場合において、連関度は、
図16に示すように、非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・と、PC鋼材72の配置情報や赤外線サーモグラフィーの条件情報等の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、画像r1が連関度80%で、また配置情報としての「かぶり厚30〜600mm」が連関度80%で連関している。またノード61cは、画像r2が連関度60%で、条件情報としての「加熱温度45〜65℃」が連関度60%、配置情報としての「かぶり厚600〜1800mm」が連関度40%で連関している。
【0098】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・、条件情報やPC鋼材72の配置情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図16に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、画像r1であり、かつ形態情報として「加熱温度25〜45℃」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0099】
この
図16の例では、図示していないが、PC鋼材72の形態情報、コンクリート情報の何れか1以上との組み合わせの連関度が定義されている場合も同様である。
【0100】
高周波衝撃弾性波法
図17の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、高周波衝撃弾性波法を利用する。この高周波衝撃弾性波法に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば高周波衝撃弾性波法に基づいて検出された入出力比や伝搬速度等のデータで構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら高周波衝撃弾性波法基づいて検出した入出力比や伝搬速度等のデータを予め学習させることとなる。
【0101】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての加速度の対数減衰率と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図17の例によれば、参照用入力パラメータが「入出力比:0.001〜0.1(×10
-3)、伝搬速度:3.0〜4.0(m/s)」である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが「入出力比:0.1〜1(×10
-3)、伝搬速度:4.0〜5.0(m/s)」である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0102】
これらの連関度は、以前に高周波衝撃弾性波法に基づいて非破壊検査を行った際のデータと、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、高周波衝撃弾性波法に基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば高周波衝撃弾性波法に基づく「入出力比:1〜10(×10
-3)、伝搬速度:5.0〜6.0(m/s)」に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に高周波衝撃弾性波法に基づく「入出力比:0.1〜1(×10
-3)、伝搬速度:4.0〜5.0(m/s)」に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0103】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図17に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての「入出力比:0.001〜0.1(×10
-3)、伝搬速度:3.0〜4.0(m/s)」の範囲内に入る場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0104】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
図18は、高周波衝撃弾性波法による過去の非破壊検査の検査データと、PC鋼材72の種類情報、PC鋼材72が挿通されるシース71内のグラウト充填情報、高周波衝撃弾性波法の条件情報の何れか1以上と、高周波衝撃弾性波法によるによる過去の非破壊検査の検査データとの組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0105】
PC鋼材72の種類情報の例としては上述と同様である。グラウト充填情報は、シース71内におけるグラウトの充填比率等である。高周波衝撃弾性波法の条件情報は、打撃方法等に関する各種情報が含まれる。
【0106】
かかる場合において、連関度は、
図18に示すように、非破壊検査の検査データと、PC鋼材72の種類情報や、グラウト充填情報等の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、「入出力比:0.001〜0.1(×10
-3)、伝搬速度:3.0〜4.0(m/s)」が連関度80%で、またグラウト充填情報としての「充填率:0〜50%」が連関度80%で連関している。またノード61cは、「入出力比:0.1〜1(×10
-3)、伝搬速度:4.0〜5.0(m/s)」が連関度60%で、種類情報としての「種類β」が連関度60%、グラウト充填情報としての「充填率:50〜100%」が連関度40%で連関している。
【0107】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データと、PC鋼材72の種類情報やグラウト充填情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図18に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、「入出力比:0.001〜0.1(×10
-3)、伝搬速度:3.0〜4.0(m/s)」であり、かつ種類情報として「種類α」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0108】
この
図18の例では、図示していないが、高周波衝撃弾性波法の条件情報との組み合わせの連関度が定義されている場合も同様である。
【0109】
電磁パルス法
図19の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、電磁パルス法を利用する。この電磁パルス法は、コイルから発生したパルス磁場を介して金属から音を発生させ、その音響を解析することによりPC鋼材72の劣化を判断する手法である。この電磁パルス法に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば音響波形で構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら音響波形のデータを予め学習させることとなる。
【0110】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての音響波形と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図19の例によれば、参照用入力パラメータの音響波形r1である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが音響波形r2である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0111】
これらの連関度は、以前に電磁パルス法に基づいて非破壊検査を行った際の音響波形r1、r2、r3、・・・と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、電磁パルス法に基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば電磁パルス法に基づく音響波形r3に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に電磁パルス法に基づく音響波形r2に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0112】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図19に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての音響波形r1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0113】
また、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての音響波形r2にも一部類似しているが、音響波形r3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき判断するようにしてもよい。
【0114】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0115】
図20は、電磁パルス法による過去の非破壊検査の検査データとしての音響波形r1、r2、・・・と、PC鋼材72の配置情報、PC鋼材72が埋設される構造物を構成するコンクリート情報の何れか1以上との組み合わせと、当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0116】
PC鋼材72の配置情報の例としては上述と同様であり、PC鋼材72の周囲にある鉄筋径やかぶり厚さ等の情報が含まれる。コンクリート情報は、上述に加え、そのコンクリートのひび割れ劣化度合等も含まれる。
【0117】
かかる場合において、連関度は、
図20に示すように、非破壊検査の検査データとしての音響波形r1、r2、・・と、PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、音響波形r1が連関度80%で、また配置情報としての「かぶり厚30〜600mm」が連関度80%で連関している。またノード61cは、音響波形r2が連関度60%で、コンクリート情報としての「ひび割れ無」が連関度60%、配置情報としての「かぶり厚600〜1800mm」が連関度40%で連関している。
【0118】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての音響波形r1、r2、・・PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図20に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、音響波形r1であり、かつコンクリート情報として「ひび割れ有」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0119】
電磁レーダー法
図21の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、電磁レーダー法を利用する。この電磁レーダー法は、多配列の電磁レーダーにより計測した反射波データに基づいて三次元データを作成し、この三次元データからPC鋼材72の劣化を判断する手法である。この電磁レーダー法に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば画像で構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら画像のデータを予め学習させることとなる。
【0120】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての画像と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図21の例によれば、参照用入力パラメータの画像r1である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが画像r2である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0121】
これらの連関度は、以前に電磁レーダー法に基づいて非破壊検査を行った際の画像r1、r2、r3、・・・と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、電磁レーダー法に基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば電磁レーダー法に基づく画像r3に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に電磁レーダー法に基づく画像r2に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0122】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図21に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての画像r1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0123】
また、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての画像r2にも一部類似しているが、画像r3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき判断するようにしてもよい。
【0124】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0125】
図22は、電磁レーダー法による過去の非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・・と、PC鋼材72の形態情報、PC鋼材72の配置情報、PC鋼材72が埋設される構造物を構成するコンクリート情報の何れか1以上との組み合わせと、当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0126】
PC鋼材72の形態情報は、上述同様である。PC鋼材72の配置情報も上述に加え、周囲の鋼材の配置量等も含まれる。コンクリート情報は、上述に加え、そのコンクリートのひび割れ劣化度合、コンクリートの強度等も含まれる。
【0127】
かかる場合において、連関度は、
図22に示すように、非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・と、PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、画像r1が連関度80%で、また配置情報としての「かぶり厚30〜600mm」が連関度80%で連関している。またノード61cは、画像r2が連関度60%で、コンクリート情報としての「ひび割れ無」が連関度60%、配置情報としての「かぶり厚600〜1800mm」が連関度40%で連関している。
【0128】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図22に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、画像r1であり、かつコンクリート情報として「ひび割れ有」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0129】
この
図22の例では、図示していないが、PC鋼材72の形態情報もこの組み合わせの連関度にて定義されている場合も同様である。
【0130】
自然電位法
図23の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、自然電位法を利用する。この自然電位法は、PC鋼材72と照合電極との電位差を測定することによりPC鋼材72の劣化を判断する手法である。この自然電位法に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば電位等を等高線で表した画像で構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら画像のデータを予め学習させることとなる。
【0131】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての画像と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図23の例によれば、参照用入力パラメータの画像r1である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが画像r2である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0132】
これらの連関度は、以前に自然電位法に基づいて非破壊検査を行った際の画像r1、r2、r3、・・・と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、電磁パルス法に基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば自然電位法に基づく画像r3に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に自然電位法に基づく画像r2に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0133】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図23に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての画像r1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0134】
また、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての画像r2にも一部類似しているが、画像r3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき判断するようにしてもよい。
【0135】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0136】
図24は、自然電位法による過去の非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・・と、PC鋼材72の配置情報、PC鋼材72が埋設される構造物を構成するコンクリート情報の何れか1以上との組み合わせと、当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0137】
PC鋼材72の配置情報も上述に加え、周囲の鋼材の配置量等も含まれる。コンクリート情報は、上述に加え、コンクリートの劣化状況やコンクリートの湿潤状況等も含まれる。
【0138】
かかる場合において、連関度は、
図24に示すように、非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・と、PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、画像r1が連関度80%で、また配置情報としての「かぶり厚30〜600mm」が連関度80%で連関している。またノード61cは、画像r2が連関度60%で、コンクリート情報としての「劣化無」が連関度60%、配置情報としての「かぶり厚600〜1800mm」が連関度40%で連関している。
【0139】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図24に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、画像r1であり、かつコンクリート情報として「劣化有」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0140】
分極抵抗法
図25の例では、非破壊検査部8における非破壊検査方法として、分極抵抗法を利用する。この分極抵抗法は、鉄筋に微小の交流電流を通電させることにより得られる分極抵抗を測定することにより、PC鋼材72の劣化を判断する手法である。この分極抵抗法に基づいて非破壊検査部8により検出した検査データは、例えば分極抵抗等を等高線で表した画像で構成される。このため、参照用入力パラメータにおいては、これら画像のデータを予め学習させることとなる。
【0141】
データベース3には、参照用入力パラメータとしての画像と、出力解としてのPC鋼材72における劣化状況の判別結果との間での3段階以上の連関度を予め記憶させておく。
図25の例によれば、参照用入力パラメータの画像r1である場合に、「断面欠損率40%」が連関度80%、「腐食率10%」が連関度60%で設定されている。また参照用入力パラメータが画像r2である場合に、「腐食率90%」が連関度90%、「断面欠損率5%」が連関度40%で設定されている。
【0142】
これらの連関度は、以前に分極抵抗法に基づいて非破壊検査を行った際の画像r1、r2、r3、・・・と、その判別結果としての腐食度合や、断面欠損の度合、破断の有無等をデータベース3内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、分極抵抗法に基づいて非破壊検査を行った際のデータに基づいて、実際のシース71内におけるPC鋼材72の劣化状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば分極抵抗法に基づく画像r3に対しては、連関度70%の「破断」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「断面欠損率40%」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に分極抵抗法に基づく画像r2に対しては、連関度90%の「腐食率90%」が最も的確な判断に近く、連関度40%の「断面欠損率5%」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0143】
ステップS13に移行後、探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、PC鋼材72の劣化状況を判別する作業を行う。このPC鋼材72の劣化状況を判別する上で予め取得した
図25に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての画像r1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照した場合、連関度の最も高い「断面欠損率40%」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「腐食率10%」を最適解として選択するようにしてもよい。PC鋼材72の劣化状況の選択は、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0144】
また、ステップS12において解析した入力パラメータが、参照用入力パラメータとしての画像r2にも一部類似しているが、画像r3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき判断するようにしてもよい。
【0145】
このようにして、ステップS12において解析した入力パラメータを参照用入力パラメータに割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としてのPC鋼材72の劣化状況を選択することになる。
【0146】
図26は、分極抵抗法による過去の非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・・と、PC鋼材72の配置情報、PC鋼材72が埋設される構造物を構成するコンクリート情報の何れか1以上との組み合わせと、当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0147】
PC鋼材72の配置情報も上述に加え、周囲の鋼材の配置量等も含まれる。コンクリート情報は、上述に加え、コンクリートの劣化状況やコンクリートの湿潤状況等も含まれる。
【0148】
かかる場合において、連関度は、
図26に示すように、非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・と、PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、画像r1が連関度80%で、また配置情報としての「かぶり厚30〜600mm」が連関度80%で連関している。またノード61cは、画像r2が連関度60%で、コンクリート情報としての「劣化無」が連関度60%、配置情報としての「かぶり厚600〜1800mm」が連関度40%で連関している。
【0149】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の連関度に応じた出力解を探索する。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図26に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、画像r1であり、かつコンクリート情報として「劣化有」である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。
【0150】
また上述した実施の形態においては、非破壊検査方法として、各種例にとり説明をしたが、これに限定されるものではなく、他のいかなる非破壊検査方法に代替されるものであってもよいことは勿論である。
【0151】
何れの非破壊検査方法においても、ユーザは、出力された判別結果に基づいて、PC鋼材72の劣化状況を把握することができる。そして、把握したPC鋼材72の劣化状況に基づいて、必要な場合には補修を行うことが可能となる。
【0152】
特に本発明によれば、PC鋼材72の劣化状況の把握を、特段の熟練を要することなく容易に行うことが可能となる。また本発明によれば、PC鋼材72の劣化状況の把握をより高精度に行うことが可能となる。更に、上述した連関度を人工知能で構成することにより、これを学習させることでその判別精度を更に向上させることが可能となる。
【0153】
また、本発明によれば、3段階以上に設定されている連関度を介して最適なPC鋼材72の劣化状況の判別結果の探索を行う点に特徴がある。連関度は、例えば0〜100%までの数値で記述することができるが、これに限定されるものではなく3段階以上の数値で記述できるものであればいかなる段階で構成されていてもよい。
【0154】
このような3段階以上の数値で表される連関度に基づいて探索することで、複数のPC鋼材72の劣化状況の判別結果が選ばれる状況下において、当該連関度の高い順に探索して表示することも可能となる。このように連関度の高い順にユーザに表示できれば、より可能性の高いPC鋼材72の劣化状況の判別結果を優先的に選択することを促すこともできる。一方、連関度の低いPC鋼材72の劣化状況の判別結果であってもセカンドオピニオンという意味で表示することができ、ファーストオピニオンで上手く分析ができない場合において有用性を発揮することができる。
【0155】
これに加えて、本発明によれば、連関度が1%のような極めて低いPC鋼材72の劣化状況の判別結果も見逃すことなく判断することができる。連関度が極めて低いPC鋼材72の劣化状況の判別結果であっても僅かな兆候として繋がっているものであり、何十回、何百回に一度は、PC鋼材72の劣化状況の判別結果として役に立つ場合もあることをユーザに対して注意喚起することができる。
【0156】
更に本発明によれば、このような3段階以上の連関度に基づいて探索を行うことにより、閾値の設定の仕方で、探索方針を決めることができるメリットがある。閾値を低くすれば、上述した連関度が1%のものであっても漏れなく拾うことができる反面、PC鋼材72の劣化状況の判別結果を好適に検出できる可能性が低く、ノイズを沢山拾ってしまう場合もある。一方、閾値を高くすれば、最適なPC鋼材72の劣化状況の判別結果を高確率で検出できる可能性が高い反面、通常は連関度は低くてスルーされるものの何十回、何百回に一度は出てくる好適な解を見落としてしまう場合もある。いずれに重きを置くかは、ユーザ側、システム側の考え方に基づいて決めることが可能となるが、このような重点を置くポイントを選ぶ自由度を高くすることが可能となる。
【0157】
更に本発明では、上述した連関度を更新させるようにしてもよい。この更新は、例えばインターネットを始めとした公衆通信網を介して提供された情報を反映させるようにしてもよい。公衆通信網から取得可能なサイト情報や書き込み等を通じて、入力パラメータと、出力解(PC鋼材72の劣化状況の判別結果)との関係性について新たな知見が発見された場合には、当該知見に応じて連関度を上昇させ、或いは下降させる。
【0158】
この第1連関度の更新は、公衆通信網から取得可能な情報に基づく場合以外に、専門家による研究データや論文、学会発表や、新聞記事、書籍等の内容に基づいてシステム側又はユーザ側が人為的に、又は自動的に更新するようにしてもよい。これらの更新処理においては人工知能を活用するようにしてもよい。
【0159】
なお、本発明では2種以上の非破壊検査方法を組み合わせてPC鋼材の劣化状況を判別するようにしてもよい。
【0160】
図27は、自然電位法と電磁パルス法という互いに異なる2種の非破壊検査方法を組み合わせてPC鋼材の劣化状況を判別する例を示している。
【0161】
即ち、自然電位法による過去の非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・・と、電磁パルス法に基づいて非破壊検査を行った際の音響波形u1、u2、u3、・・・ととの組み合わせと、当該組み合わせに対するPC鋼材72の劣化状況との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0162】
かかる場合において、連関度は、
図27に示すように、非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・と、PC鋼材72の配置情報やコンクリート情報の何れか1以上の組み合わせの集合がいわゆる隠れ層のノード61a〜61eとして表現されることとなる。各ノード61a〜61eは、参照用入力パラメータに対する重み付けと、出力解に対する重み付けがそれぞれ設定されている。この重み付けが3段階以上の連関度である。例えば、ノード61aは、画像r1が連関度80%で、また配置情報としての「かぶり厚30〜600mm」が連関度80%で連関している。またノード61cは、画像r2が連関度60%で、コンクリート情報としての「劣化無」が連関度60%、配置情報としての「かぶり厚600〜1800mm」が連関度40%で連関している。
【0163】
このような連関度が設定されている場合も同様に、ステップS13へ移行した場合には、ステップS12において抽出した入力パラメータとしての非破壊検査の検査データとしての画像r1、r2、・・音響波形u1、u2、u3、・・が入力される。探索プログラムは、ステップS12において解析した入力パラメータに基づいて、出力解の中から最適解を1又は2以上に亘り選択する作業を行う。この最適解を選択する上で、予め取得した
図27に示す連関度を参照する。例えば、ステップS12において解析した入力パラメータにおいて、画像r1であり、かつ音響波形u1である場合、連関度を介してノード61bが関連付けられており、このノード61bは、「断面欠損率40%」が連関度60%、「破断」が連関度40%で関連付けられている。これらを出力解として出すことが可能となる。
【0164】
なお、参照用入力パラメータの種類としては、これらの自然電位法と電磁パルス法との組み合わせに限定されるものではない。X線透過法、漏洩磁束法、AE、電気抵抗計測、振動計測、赤外線サーモグラフィー、高周波衝撃弾性波法、電磁パルス法、電磁レーダー法、自然電位法、分極抵抗法等のうち何れか2種以上の非破壊検査方法の検査データの組み合わせで連関度を構成するようにしてもよい。換言すれば
図27の連関度は、自然電位法と電磁パルス法との組み合わせの代替として、X線透過法、漏洩磁束法、AE、電気抵抗計測、振動計測、赤外線サーモグラフィー、高周波衝撃弾性波法、電磁パルス法、電磁レーダー法、自然電位法、分極抵抗法等のうち何れか2種以上の検査データの組み合わせで設定されるものとなる。
【0165】
2種以上の非破壊検査方法の組み合わせに基づいて最適解を探索することにより、その探索精度の向上を図ることが可能となる。
【解決手段】PC鋼材72に対する過去の非破壊検査の検査データと、当該検査データに対するPC鋼材72の劣化状況の判別結果との3段階以上の連関度を予め取得する連関度取得ステップと、新たに劣化状況を判別するPC鋼材72が埋設されたPC構造物7に対して上記非破壊検査を行うことにより得られた検査データが入力される入力ステップと、上記連関度取得ステップにおいて取得した連関度を参照し、上記入力ステップにおいて入力された情報に基づき、PC鋼材72の劣化状況を判別する判別ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。