(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321903
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】バルブシート用焼結合金、これを利用したバルブシート製造方法およびバルブシート
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20180423BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20180423BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20180423BHJP
B22F 3/26 20060101ALI20180423BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20180423BHJP
F01L 3/02 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
C22C38/00 304
C22C33/02 B
B22F3/10 E
B22F3/26 F
B22F3/24 G
B22F3/24 B
F01L3/02 F
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-277738(P2012-277738)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-213278(P2013-213278A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0033989
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 必 基
(72)【発明者】
【氏名】金 圭 煥
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰 ソク
(72)【発明者】
【氏名】金 起 範
(72)【発明者】
【氏名】申 昌 鎮
【審査官】
川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−149819(JP,A)
【文献】
特開2011−157845(JP,A)
【文献】
特開2007−023383(JP,A)
【文献】
特開2006−299404(JP,A)
【文献】
特開2010−031385(JP,A)
【文献】
特表平08−501832(JP,A)
【文献】
特開平01−178712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 33/02
C22C 38/00−38/60
C22C 1/05
F01L 3/02
B22F 3/10
B22F 3/24
B22F 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量パーセント(%)で、炭素(C)が0.8〜1.2、ニッケル(Ni)が2.0〜4.5、クロム(Cr)が3.0〜5.0、モリブデン(Mo)が16.0〜20.0、コバルト(Co)が9.0〜13.0、バナジウム(V)が0.05〜0.15、硫黄(S)が0.2〜0.8、その他Feおよび不可避不純物からなるバルブシート用合金粉末とMnSからなり、
前記MnSは、前記合金粉末100重量部に対して0.5〜2.5重量部であり、
粒子径が12μm以下であり、
重量パーセント(%)でMnが60〜65、Sが35〜40であること、
を特徴とするバルブシート用焼結合金。
【請求項2】
重量パーセント(%)で、炭素(C)が0.8〜1.2、ニッケル(Ni)が2.0〜
4.5、クロム(Cr)が3.0〜5.0、モリブデン(Mo)が16.0〜20.0、
コバルト(Co)が9.0〜13.0、バナジウム(V)が0.05〜0.15、硫黄(
S)が0.2〜0.8、その他にFeおよび不可避不純物からなるバルブシート用合金粉
末にMnSをさらに含む原料を混合する段階、
前記混合された原料を成形して1次形状体を実現する段階、
前記成形された1次形状体を予備焼結する段階、
予備焼結された前記1次形状体を加圧して2次形状体を実現する段階、
前記2次形状体を本焼結する段階、および
前記本焼結された2次形状体に対してテンパリングを実施する段階、
を含み、
前記MnSは、前記合金粉末100重量部に対して0.5〜2.5重量部であり、
粒子径が12μm以下であり、
重量パーセント(%)でMnが60〜65、Sが35〜40であること、
を特徴とするバルブシート製造方法。
【請求項3】
前記MnSの含有量は、前記合金粉末100重量部に対して0.5〜2.5重量部であ
ることを特徴とする請求項2に記載のバルブシート製造方法。
【請求項4】
前記テンパリングの温度は、180〜220℃であることを特徴とする請求項2に記載の
バルブシート製造方法。
【請求項5】
前記テンパリングの時間は、100〜150分であることを特徴とする請求項2に記載の
バルブシート製造方法。
【請求項6】
前記テンパリングを実施した前記2次形状体にオイルを含浸させる段階をさらに含むこ
とを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載のバルブシート製造方法。
【請求項7】
前記オイルが含浸した2次形状体に加工およびバレルを実施する段階をさらに含むこと
を特徴とする請求項6に記載のバルブシート製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の前記焼結合金によって製造されることを特徴とするバルブシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブシート用焼結合金、これを利用したバルブシート製造方法およびバルブシートに係り、より詳しくは、加工性を改善するために焼結合金に硫化マンガン(MnS)を追加してテンパリングを実施したバルブシート用焼結合金、これを利用したバルブシート製造方法およびバルブシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車用エンジンの構成品であるバルブシートは、バルブ面と密着して燃焼室の気密を保存する役割を行う構成品である。
バルブシートは、バルブ面と接していた衝撃的な運動を反復して実行するため、損傷しない程度の硬度を有していなければならない。
従来のバルブシート(valve seat)用耐磨耗焼結合金は鉄を主成分とし、炭素0.4〜1.0重量%、ケイ素0.1〜1.0重量%、クロム0.5〜2.0重量%、モリブデン6.0〜10.0重量%、コバルト6.0〜15.0重量%、および鉛6.0〜18.0重量%を含むものが多く、また、その製造工程は下記のとおりである(例えば、引用文献1〜4参照)。
【0003】
まず、組成から鉛を除いた金属粉末を混合した後、面圧4〜8ton/cm
3の圧力を加えて成形する。そして、還元性雰囲気下で750〜800℃で40分間の予備焼結をした後、面圧7〜10ton/cm
3下で鍛造する。この後、水素雰囲気下に1,110〜1,140℃で30〜50分間の本焼結をした後、加工性を向上させるためにレジンを含浸させ、バレル工程を実施してバルブシート用耐磨耗焼結合金を製造していた。
しかし、組成および含有量で製造されたバルブシート用焼結合金は、ツール(tool)過多摩耗およびピッキング問題が発生し、加工性も不良であるため、これに対する改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−316745号公報
【特許文献2】特開2005−248234号公報
【特許文献3】特開2004−149819号公報
【特許文献4】特開平11−071651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところ
は、MnSを添加し、テンパリングを実施して、固体潤滑性を増大させると同時にバルブシートの粗度および表面状態を向上させることができる、バルブシート用焼結合金、これを利用したバルブシート製造方法およびバルブシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するためになされた本発明のバルブシート用焼結合金は
重量パーセント(%)で、炭素(C)が0.8〜1.2、ニッケル(Ni)が2.0〜4.5、クロム(Cr)が3.0〜5.0、モリブデン(Mo)が16.0〜20.0、コバルト(Co)が9.0〜13.0、バナジウム(V)が0.05〜0.15、硫黄(S)が0.2〜0.8、その他Feおよび不可避不純物からな
るバルブシート用合金粉末とMnS
からなり、
前記MnSは、前記
合金粉末100重量部に対して0.5〜2.5重量部であり、
粒子径が12μm以下であり、
重量パーセント(%)でMnが60〜65、Sが35〜40であること、
を特徴とする。 以上
【0008】
本発明のバルブシート製造方法は、
重量パーセント(%)で、炭素(C)が0.8〜1.2、ニッケル(Ni)が2.0〜
4.5、クロム(Cr)が3.0〜5.0、モリブデン(Mo)が16.0〜20.0、
コバルト(Co)が9.0〜13.0、バナジウム(V)が0.05〜0.15、硫黄(
S)が0.2〜0.8、その他にFeおよび不可避不純物からなるバルブシート用合金粉
末にMnSをさらに含む原料を混合する段階、
前記混合された原料を成形して1次形状体を実現する段階、
前記成形された1次形状体を予備焼結する段階、
予備焼結された前記1次形状体を加圧して2次形状体を実現する段階、
前記2次形状体を本焼結する段階、および
前記本焼結された2次形状体に対してテンパリングを実施する段階、
を含み、
前記MnSは、前記
合金粉末100重量部に対して0.5〜2.5重量部であり、
粒子径が12μm以下であり、
重量パーセント(%)でMnが60〜65、Sが35〜40であること、
を特徴とする。
【0009】
MnSの含有量は、合金粉末100重量部に対して0.5〜2.5重量部であることが好ましく、
テンパリングの温度は180〜220℃であり、
テンパリングの時間は100〜150分であることを特徴とする。
また、テンパリングを実施した2次形状体にオイルを含浸させる段階をさらに含んでもよく、オイルが含浸した2次形状体に加工およびバレルを実施する段階をさらに含んでもよい。
本発明のバルブシートは、焼結合金によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、MnSを追加してテンパリングを実施することによってバルブシートの粗度が改善し、表面状態が良好となり、バルブシートの加工性を向上させることができる。
また、バルブシートの耐摩耗性を向上させながらもバイト(bite)の摩耗量を増大させることなく、ピッキング現象を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るバルブシートの加工順序を示す模式図であり、(a)は補助面の加工前、(b)はA及びB面の加工後、(c)はC面の加工後を示した。
【
図2】本発明の実施形態に係るバルブシートの粗度を示したグラフである。
【
図3】比較例と本発明の実施形態に係る腐蝕前後の金属組織の写真であり、(a)は腐食前の比較例、(b)は腐食前の実施例、(c)は腐食後の比較例、(d)は腐食後の実施例を示した。
【
図4】本発明の実施形態に係るバルブシートの製造工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を基にして、本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態によれば、重量パーセント(wt%)で、炭素(C):0.8〜1.2、ニッケル(Ni):2.0〜4.5、クロム(Cr):3.0〜5.0、モリブデン(Mo):16.0〜20.0、コバルト(Co):9.0〜13.0、バナジウム(V):0.05〜0.15、硫黄(S):0.2〜0.8、その他にFeおよび不可避不純物からなる合金粉末に硫化マンガン(MnS)を添加してバルブシート用焼結合金を製造する。このとき、硫化マンガンは、焼結合金100重量部に対して1.0〜2.0重量部を含み、硫化マンガンがさらに含まれた焼結合金でバルブシートを製造する。
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る成分の数値限定理由について説明する。
まず、炭素(C)は鉄(Fe)に固溶し、材料の強度および硬度の向上による耐摩耗性を向上させ、基地(matrix)の強度を向上させる目的で添加するが、含有量が0.8重量部未満であれば、パーライト(Pearlite)と共にフェライト(Ferrite)が過多に形成されるため、基地(matrix)が軟化して強度と耐摩耗性が低下し、1.2重量%を超えれば、パーライトに所要されて残った炭素が網状(network)構造のセメンタイトを形成して基地金属を脆弱にする。したがって、本発明に係る実施形態では、炭素の含有量を0.8〜1.2重量%に限定する。
【0014】
ニッケル(Ni)は基地金属に拡散固溶し、耐熱性および高温特性を向上させるために
添加するが、Niの含有量が2.0重量%未満であれば効果が微弱になり、4.5重量%
を超えれば、基地組織がマルテンサイトおよびニッケルが豊富な(Ni−Rich)オー
ステナイト(Austenite)に変化して組織が不安定になり、必要以上に硬度が大
きくなって機械加工性が低下する。したがって、本発明に係る実施形態において、Niの
含有量は2.0〜4.5重量%に限定する。
クロム(Cr)は、基地にCrSで析出されて固体潤滑剤の役割を行うが、その含有量が3.0重量%未満であれば、固体潤滑剤であるCrSの形成が微小となり、耐摩耗性が低下する。この反面、5.0重量%を超えれば、固体潤滑剤であるCrSの形成が過多になり、基地金属を脆弱にする。したがって、本発明に係る実施形態では、Crの含有量を3.0〜5.0重量%に限定する。ただし、成分含有量は、本発明の効果を最適化するための一例に過ぎないため、これに限定されるものではない。
【0015】
また、モリブデン(Mo)は、Fe基地の拡散によってFe−Mo相を形成させて耐摩耗性を向上させる役割を行うが、その含有量が16.0重量%未満であれば、Fe−Mo相の形成が微小となって耐摩耗性が低下し、20.0重量%を超えれば、Fe−Mo相の形成が過多になって基地金属を脆弱にする。したがって、本発明に係る実施形態におけるMoの含有量は、16.0〜20.0重量%に限定する。
【0016】
本発明に係る実施形態において、バナジウム(V)は炭素と結合し、細粒炭化物を形成させて耐摩耗性および高温強度を向上させる役割を行うが、0.05重量%未満で添加すればその効果が微小になり、0.15重量%を超えれば、酸化物であるV
2O
5相を形成しやすくなり、酸化物は蒸気圧が高くて高温蒸発が容易となる。したがって、本発明に係る実施形態におけるVの含有量は、0.05〜0.15重量%に限定する。
また、硫黄(S)は固体潤滑剤に投入され、Crと結合してCrSで粒子内部に形成される。Sの含有量が0.2重量%未満であれば、固体潤滑剤の析出が微小となってその効果が微弱になり、0.8重量%を超えれば、CrS含有量が過多になって基地(matrix)の強度を低下させる。したがって、本発明に係る実施形態のSの含有量は、0.2〜0.8重量%に限定する。
【0017】
また、本発明の実施形態によれば、バルブシート用焼結合金は鉄(Fe)を主成分とし、工具(tool)摩耗性および加工性を改善するためにバルブシート用合金粉末に硫化マンガン(MnS)を添加した。本発明に係る実施形態では、周辺元素と反応せずに気孔(hole)に硫化マンガンで存在し、加工性および固体潤滑性を向上させるようにする。本発明に係る実施形態では、硫化マンガンが気孔(hole)内に均一に分布できるように重量平均粒子径が12μm以下であるものを使用する。MnSは、マンガン(Mn)の含有量が60〜65重量%であり、硫黄(S)の含有量が35〜40重量%で構成された化合物である。MnSは高温でも化合物として分解せずに安定するため、焼結後にもMnSの形態で焼結体の気孔(hole)内に残留し、機械加工時にバイト(Bite)の摩擦係数を低下させ、被削性に優れた焼結体が得られる。また、MnSは、固体潤滑剤の機能も行うため、金属間の衝撃および摩擦力を減少させることができる。
MnSの含有量が焼結合金(合金粉末)100重量部に対して0.5重量部未満であればその役割が微小となり、その含有量が2.5重量部を超えれば基地の強度が弱まり、バルブシートをヘッドに圧入するときに破壊し易くなる。したがって、本発明に係る実施形態におけるMnSの含有量は、焼結合金(合金粉末)100重量部に対して0.5〜2.5重量部に限定する。
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るバルブシートの製造方法について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係るバルブシートの製造工程のフローチャートである。
図4に示したとおり、炭素(C):0.8〜1.2、ニッケル(Ni):2.0〜4.5、クロム(Cr):3.0〜5.0、モリブデン(Mo):16.0〜20.0、コバルト(Co):9.0〜13.0、バナジウム(V):0.05〜0.15、硫黄(S):0.2〜0.8、その他にFeおよび不可避不純物からなる合金粉末に硫化マンガン(MnS)を合金粉末100重量部に対して1.0〜2.0重量部を混合する。混合された合金粉末と硫化マンガンを要求される密度および電装を考慮した上で1次成形(S100)を実施して1次形状体を実現する。
この後に予備焼結工程(S110)を経るが、これは、750〜800℃で2.5時間程度焼成する工程である。予備焼結工程は、密度を上げるための再加圧(鍛造)(S120)のために、成形された1次形状体に少量の炭素を拡散させて粘性を向上させる工程である。予備焼結工程の後は、1次形状体を再加圧(S120)して2次形状体を実現すると同時に密度を増大させる。このために面圧10トン(ton)/cm
2の圧力で加圧する。
【0019】
再加圧工程では、原料が物理的にのみ結合している状態であるため、2次形状体が化学的に結合するように本焼結(S130)を実施する。本焼結は1110〜1140℃で5時間程度焼成し、特に高温で50分程度を維持する。
本焼結が完了すれば、2次形状体に残留応力(residual stress)が発生するが、これを除去するために、大気圧状態で一定の温度を維持させるテンパリング(tempering)(S140)を実施する。本発明に係る実施形態におけるテンパリング温度は約180〜220℃であり、テンパリング時間は100〜150分である。テンパリングによって組織間の応力が緩和する。
【0020】
この後は、製品の切削性を向上させて発錆を防ぐために、真空状態で製品内部にオイルを2次形状体に含浸させる含有工程を経る。
含有工程が終われば、オイルが含浸した2次形状体をPM工法上で実現することができないサイズおよび形状を機械的に加工する。加工が終われば2次形状体に発生したバー(burr)および異物を除去し、最適の表面状態を維持するようにバレル(Barrel)工程(S150)を経る。バレル工程が完了すれば、製品表面にある欠陥を早期に発見し、顧客に伝達されないように最終点検を実施する。
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態に基づき、さらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明に係る一実施形態で重量%として、Fe:59.5、Ni:3.15、Mo:18.24、Cr:4.27、C:1.04、Co:11.6、Mn:0.95、S:0.88、V:0.1、およびその他に不可避不純物0.27を含有する合金粉末に合金粉末100重量部に対して硫化マンガン1.5重量部を均一に配合してバルブシート用焼結合金を製造するために組成で配合された合金粉末を加圧して成形した後に焼結し、200℃で120分間のテンパリングを実施した。
上記の方法によって製造されたバルブシートに対して摩耗量を測定するテストを実施した。バルブシート10は、シート部12、14、16と非シート部に分けられるが、本発明に係る実施形態ではシート部に重点を置いて実験を実施した。本発明に係る実施形態において、非シート部は、
図1において、シート部12、14、16の下端部にバルブ(図示せず)との摩擦が大きくない部分を意味する。
図1は、本発明の実施形態に係るバルブシートの加工順序を示す模式図であり、(a)は補助面の加工前、(b)はA及びB面の加工後、(c)はC面の加工後を示した。
図1で、シート部12、14、16は、それぞれA、B、およびC面を形成する。加工順序は、まず、シート部12(A面)及びシート部14(B面)を加工した後にシート部16(C面)を加工する。
【0023】
図1の(c)で、シート部16(C面)はバルブシート10がバルブ(図示せず)と当接する部分であり、シート部12(A面)及びシート部14(B面)はシート部16を形成するための補助面である。
[実験方法]
【0024】
本発明の実施形態に係るバルブシートの性能をテストするために、加工時にRPM:1,100、FEED:124.4、FEEDRATE:0.11で性能実験を実施した。材質あたり1,000個の製品を加工し、シート部12、14を加工した後にシート部16を加工した。テスト結果を表1及び表2に示した。
比較例は、MnSとレジン(Resin)を添加し、テンパリングを実施しないものを使用した。
【表1】
【表2】
【0025】
表1に示したとおり、比較例に比べて実施例におけるバルブシートの表面粗度が小さくなり表面形状が改善された。
図2は、本発明の実施形態に係るバルブシートの粗度を示したグラフである。縦軸は表面粗度(Rt)、横軸は測定個数を示した。このときの表面粗度(Rt)は、1つの材質あたり最大1,000個の製品に対して5回の実験を実施したものを平均した値である。
実施例において最大気孔の大きさが比較例に比べて半分以下に減り、100μmよりも大きい気孔数も著しく減少した。
【0026】
図3は、腐蝕前後の金属組織の写真として200倍に拡大したものであり、(a)、(b)はそれぞれ比較例と実施例における腐蝕前の金属組織の写真であり、(c)、(d)はそれぞれ比較例と実施例における腐蝕後の金属組織の写真である。
図3に示したとおり、比較例では腐蝕後には深刻な変化があるのに対し、実施例では組織の大きな変化はなく、実施例におけるバルブシートが耐食性に強いことが実証された。
また、比較例では300ホール(hole)未満で加工が可能であったが、実施例によって製造されたバルブシートは1400ホール(hole)以上の加工が可能であり、本発明に係る実施形態では、レジン(resin)を使用せずに加工面のピッキング現象が発生しなかった。したがって、本発明に係る実施形態のバルブシートは、特にバルブと接する部分に適合することができる。
【0027】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を有する者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0028】
10:バルブシート
12:シート部(A面)
14:シート部(B面)
16:シート部(C面)
Rt:表面粗度