(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321908
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】むくみ治療用経口組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/87 20060101AFI20180423BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20180423BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
A61K36/87
A23L33/105
A61P7/10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-29599(P2013-29599)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159379(P2014-159379A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年1月5日
【審判番号】不服2017-7991(P2017-7991/J1)
【審判請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102496
【氏名又は名称】エスエス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 実
(72)【発明者】
【氏名】澤村 淳
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
淺野 美奈
【審判官】
前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−511476号公報(JP,A)
【文献】
特開2011−111421号公報(JP,A)
【文献】
特表2007−517785号公報(JP,A)
【文献】
特表2007−523110号公報(JP,A)
【文献】
応用薬理,2012年,Vol.83, No.1/2,p.1−7
【文献】
食品と開発,2001年,Vol.36, No.3,p.50−53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00-36/9068
A61K31/33-31/80
A61K47/00-47/48
A61K9/00-9/72
A23L33/105
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントシアンを0.2質量%以上及び総ポリフェノールを4質量%以上含む赤ブドウの葉から水で抽出され、2.75〜8.25質量%の総フラボノイドを含有する抽出物である赤ブドウ葉抽出物を有効成分とし、赤ブドウ葉抽出物を、赤ブドウ葉抽出物(固形分):二酸化ケイ素:グルコースシロップ(乾燥したグルコースとして)=80:3:17(質量比)で含む赤ブドウ葉抽出物混合物として含有し、赤ブドウ葉抽出物の固形分換算で1日あたり360mgを1日1回服用するものである、むくみに伴う、だるさ、つっぱり感、ピリピリ感、痛み、熱感及びかゆみから選択される1つ以上の症状の治療用経口組成物。
【請求項2】
医薬品である請求項1に記載の治療用経口組成物。
【請求項3】
健康食品である請求項1に記載の治療用経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、むくみおよびむくみに伴う諸症状の軽減または予防効果を有するむくみ治療用経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
むくみは医学的には「浮腫」と呼ばれ、細胞、組織等における水状液の過剰な貯留を特徴とする症状である。実際には、長時間の立ち仕事、同じ姿勢での長時間労働等の後に足や顔にむくみ症状が生じることが多い。また、特に女性においてむくみ症状を感じる割合が高いとされている。
【0003】
足や顔のむくみの原因として、血流が低下することや利尿作用が低下することが考えられている。しかしながら、血流を改善したからといって、必ずしもむくみ症状が改善されるわけではない。さらに、むくみがあると、重量感・疲れ(だるさ)、つっぱり感、ピリピリ感、痛み、熱感、かゆみなどの様々な自覚症状を伴うことが多い。
【0004】
そこで、むくみ及びむくみに伴う様々な諸症状を治療・改善するための医薬品や飲食品が提案されている。
むくみ治療用の組成物としては、シトルリンと、ケイ、シナモン、ニッケイ等のCinnamomum属植物とを含有する組成物(特許文献1)、アカショウマ等のチダケサシ属に属する植物を有効成分とするむくみ予防剤(特許文献2)、コエンザイムQ10、メリロートエキス及びウラジロガシエキスを有効成分とする抗むくみ用組成物(特許文献3)、アムラー果実等の抽出物を有効成分とするむくみ予防用組成物(特許文献4)、ブルーベリー果実由来物を含有するむくみの予防、治療用組成物(特許文献5)、ロイシン、イソロイシン及びバリンを含有する足のむくみの予防又は改善用食品組成物(特許文献6)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−111421号公報
【特許文献2】特開2010−1279号公報
【特許文献3】特開2008−37787号公報
【特許文献4】特開2006−335711号公報
【特許文献5】特開2006−306797号公報
【特許文献6】特開2002−330728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の経口投与のむくみ予防改善剤の効果は充分満足できるものではなかった。
従って、本発明の課題は、的確にむくみを予防、改善し得る経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、種々の化合物及び植物抽出物を用いて経口投与によるむくみに対する作用を検討してきたところ、赤ブドウ葉の抽出物が、むくみの自覚症状を有するヒトを対象とした経口投与による臨床試験において、顕著にむくみを減少させ、むくみに伴う重量感・疲れ(だるさ)、つっぱり感、ピリピリ感、痛み、熱感、かゆみなどの様々な自覚症状を顕著に改善する作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔8〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕赤ブドウ葉抽出物を有効成分とするむくみ治療用経口組成物。
〔2〕赤ブドウ葉抽出物が、アントシアンを0.2質量%以上及び総ポリフェノールを4質量%以上含む赤ブドウの葉から水で抽出された抽出物である〔1〕記載のむくみ治療用経口組成物。
〔3〕赤ブドウ葉抽出物が、2〜25質量%の総フラボノイドを含有するものである〔1〕又は〔2〕記載のむくみ治療用経口組成物。
〔4〕赤ブドウ葉抽出物の固形分換算で1日あたり80〜1000mgを服用するものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のむくみ治療用経口組成物。
〔5〕1日1回服用するものである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のむくみ治療用経口組成物。
〔6〕赤ブドウ葉抽出物を、赤ブドウ葉抽出物(固形分):二酸化ケイ素:グルコースシロップ(乾燥したグルコースとして)=80:3:17(質量比)で含む赤ブドウ葉抽出物混合物として含有するものである〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のむくみ改善用経口組成物。
〔7〕医薬品である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のむくみ治療用経口組成物。
〔8〕健康食品である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のむくみ治療用経口組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物を経口服用、例えば1日1回経口服用すれば、むくみの改善効果やむくみに伴う重量感・疲れ(だるさ)、つっぱり感、ピリピリ感、痛み、熱感、かゆみなどの様々な自覚症状を改善する効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のむくみ治療用経口組成物の有効成分は、赤ブドウ葉抽出物である。
抽出原料である赤ブドウ葉は、別名「dyer」と呼ばれる黒っぽい青の果皮と赤い果肉のブドウ(vitis vinifera LINNE)の葉である。赤ブドウの葉であればよく、ブドウの品種は問わない。
【0012】
赤ブドウ葉中の各種ポリフェノール化合物の濃度とそれらの構成は、植物の生育する多様な環境生理学的要因を受ける。本発明には出発原料としてアントシアンを0.2質量%以上及び総ポリフェノールを4質量%以上含む赤ブドウ葉を用いることが好ましい。ここでアントシアンにはアントシアニジン及びその配糖体であるアントシアニンが含まれる。また、総ポリフェノールは、種々のポリフェノールの総称である。
このような特性を持った赤ブドウ葉は、フラボノイド含量が最適に達した時点、すなわち、通常ブドウ果実の収穫時付近で集めた赤ブドウ葉である。
さらに、赤ブドウ葉は、長さ15cm以下、幅12cm以下のものを用いることが好ましい。葉は乾燥し、粉砕して用いるのが好ましい。抽出のため葉は好ましくは5ないし10mmのピースへカットするのが好ましい。
【0013】
本発明に用いる赤ブドウ葉抽出物は、赤ブドウ葉の水性抽出物が好ましく、赤ブドウ葉から水で抽出した抽出物がより好ましい。
【0014】
高いフラボノイド含量を得るため、抽出は、好ましくは60℃〜80℃の範囲内の温度において少なくとも6時間〜10時間にわたって精製水を用いて行われる。
好ましい抽出方法は徹底的なパーコレーション(an exhaustive percolation)である。抽出過程において得られるいわゆる液状抽出物を液体投与形態の調製に直接使用することができる。
【0015】
さらに濃縮した抽出物を得るためには、溶剤の少なくとも一部を適当なエパポレーターの使用によって除去するのが好ましい。
濃い抽出物は、好ましくは120〜150℃にて1〜30秒間、より好ましくは140〜145℃にて2〜5秒間、加熱加圧状態に置くことにより殺菌処理される。
このステップにおいて得た濃い抽出物も液状投与形態の製造に直接使用することができる。
【0016】
固形投与形態の調製のため、濃い抽出物は例えば真空乾燥オーブンまたは真空乾燥コンベヤーの使用によって乾燥する。抽出物のその後の処理を容易化するため乾燥の間、賦形剤を添加することができる。このような賦形剤としては、二酸化ケイ素、マルトデキストリン、グルコースシロップ、セルロース等から選ばれる1種又は2種以上を例示することができる。本発明においては、二酸化ケイ素及びグルコースシロップから選ばれる1種又は2種を用いることが好ましい。
その添加量は、特に制限されるものではないが、赤ブドウ葉抽出物混合物中に、赤ブドウ葉抽出物(固形分として)80質量%に対し、二酸化ケイ素3質量%及びグルコースシロップ(乾燥物として)17質量%の比率とすることが好ましい(以下、この混合物を、赤ブドウ葉抽出物混合物という)。
【0017】
本発明において用いる赤ブドウ葉抽出物は、赤ブドウ葉抽出物の純エキス(固形分)換算で総フラボノイド(ケルセチン−3−O−β−D−グルクロナイド(quercetin−3−O−β−D−glucuronide)として)を2〜25質量%含むものが好ましく、2.5〜12.5質量%含むものが更に好ましく、2.75〜8.25質量%含むものが特に好ましい。
この総フラボノイド含有量は、赤ブドウ葉抽出物混合物[赤ブドウ葉抽出物(固形分として)80質量%、二酸化ケイ素3質量%及びグルコースシロップ(乾燥物として)17質量%の比率の固形物]中では、総フラボノイド(ケルセチン−3−O−β−D−グルクロナイドとして)を1.6〜20質量%含むものが好ましく、2〜10質量%含むものが更に好ましく、2.2〜6.6質量%含むものが特に好ましい。
【0018】
本発明のむくみ治療用経口組成物に使用される赤ブドウ葉抽出物の投与量は、成人に対する1日投与量として赤ブドウ葉抽出物(固形分)換算で通常64〜800mgの範囲にあり、好ましくは240〜640mgであり、更に好ましくは280〜600mg、より更に好ましくは360mgである。
【0019】
赤ブドウ葉抽出物混合物の投与量は、赤ブドウ葉抽出物混合物換算で、成人に対する1日服用量として通常80〜1000mgの範囲にあり、好ましくは300〜800mgであり、更に好ましくは350〜750mg、より更に好ましくは450mgである。
【0020】
本発明のむくみ治療用経口組成物は、経口的に摂取される。摂取は1日1回が好ましい。より好ましくは朝、特に朝食前に1日1回摂取することが望ましい。活性成分の用量調節は、年齢、体重、及び顕在性症状を反映することができる。上記の赤ブドウ葉抽出物に加え、本発明の組成物は他の活性成分も含んでいても良い。
【0021】
本発明のむくみ治療用経口組成物は、種々のタイプの経口投与製剤、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、カプレット、軟カプセル剤、丸剤、内服液剤、飲料、ゼリー、シロップ剤、ドライシロップ剤、チュアブル剤、トローチ剤、発泡錠、ドロップ剤、懸濁剤、口中内崩壊錠等の経口投与製剤として用いることができる。これらは常法により製造し得る。また、前述の混合物成分に加え、必要に応じて通常使用し得るどの様な賦形剤をこれら製剤に添加してもよい。さらに、マイクロカプセル、ナノカプセル、マイクロスフィアー、ナノスフィアー、リポゾーム等の微小粒子とした後、前述の製剤としてもよい。
【0022】
赤ブドウ葉抽出物は、個別の顆粒、多層顆粒、多層錠あるいは有核錠、別々の顆粒による錠剤、マイクロカプセルなどとすることができる。チュアブル錠、口腔内崩壊錠、マトリックス錠、マトリックス顆粒、発泡錠、共粉砕、固溶体と同様に糖衣錠、フィルムコーティング錠、コーティング顆粒の様なコーティング製剤とし得る。これらの方法を組み合わせることもできる。さらに、安定性、放出性、持続性、崩壊性、溶解性、風味のマスキング、用量の改善などの本発明の経口組成物の特性は、当技術分野で周知の添加剤を加えることによって調節することができる。
【0023】
本発明組成物の経口投与形態は、常法により、一般的な医薬添加剤及び食品添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、被覆剤、糖衣剤、可塑剤、消泡剤、光沢剤、発泡剤、静電防止剤、乾燥剤、界面活性剤、可溶化剤、緩衝化剤、溶解剤、溶解補助剤、溶媒、希釈剤、安定化剤、乳化剤、懸濁液、懸濁化剤、分散剤、等張化剤、吸着剤、還元剤、抗酸化剤、湿潤剤、湿潤条件剤、充填剤、増量剤、接着剤、粘性剤、柔軟剤、p H調整剤、防腐剤、保存剤、甘味剤、矯正剤、冷却剤、調味剤、香料、芳香剤、着色剤を、有効成分に加えることにより製造してもよい。該添加剤の例は、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社)及び第8版食品添加物公定書(日本食品添加物協会)に記載されている。
【0024】
本発明の組成物は他の成分を更に含んでいても構わない。他の成分は飲食品、医薬品などの最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分である限り特に限定されない。
【0025】
本発明のむくみ治療用経口組成物は、経口投与によりむくみの改善効果やむくみに伴う重量感・疲れ(だるさ)、つっぱり感、ピリピリ感、痛み、熱感、かゆみなどの様々な自覚症状を改善する飲食品組成物又は医薬品組成物として使用することができる。
【実施例】
【0026】
本発明を以下の実施例によって説明する。しかし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
カプセル剤の製造:
以下の成分を、常法により充填用粉末として調製し、1つのカプセル当たり247mgの量をカプセルに充填した。
【0028】
【表1】
【0029】
試験例1
(被験者)
ふくらはぎやくるぶし等のむくみを有し、触診による圧痕を呈し、かつ、むくみに伴う自覚症状「重量感・疲れ(だるさ)」、「つっぱり感」、「ピリピリ感」、「痛み」、「熱感」、「かゆみ」を有する20〜50歳代の男性(16名)及び女性(163名)の合計179例。
(方法)
実施例1のカプセル剤を用い、1日1回2カプセルを12週間に渡って朝投与した。重量感・疲れ(だるさ)179例、つっぱり感156例、ピリピリ感53例、痛み100例、熱感107例、かゆみ43例の各症状の改善度、及び、以上の症状別改善度より判定した全般改善度179例を評価した。
さらに、投与開始前日と投与開始12週後のふくらはぎ及びくるぶしの周径を比較した。
【0030】
全般改善度を表2に示す。
全般改善度は、「中等度改善」以上で81%、「軽度改善」以上で95%と高い改善率であった。
【0031】
【表2】
【0032】
重量感・つかれ(だるさ)の改善度を表3に示す。
重量感・つかれ(だるさ)の改善度は、「中等度改善」以上で59.8%、「軽度改善」以上で83.8%と良好な改善率であった。
【0033】
【表3】
【0034】
つっぱり感の改善度を表4に示す。
つっぱり感の改善度は、「中等度改善」以上で69.9%、「軽度改善」以上で81.4%と高い改善率であった。
【0035】
【表4】
【0036】
ピリピリ感の改善度を表5に示す。
ピリピリ感の改善度は、「中等度改善」以上で79.2%、「軽度改善」以上で84.9%と高い改善率であった。
【0037】
【表5】
【0038】
痛みの改善度を表6に示す。
痛みの改善度は、「中等度改善」以上で74%、「軽度改善」以上で80%と高い改善率であった。
【0039】
【表6】
【0040】
熱感の改善度を表7に示す。
熱感の改善度は、「中等度改善」以上で61.7%、「軽度改善」以上で77.6%と良好な改善率であった。
【0041】
【表7】
【0042】
かゆみの改善度を表8に示す。
かゆみの改善度は、「中等度改善」以上で74.4%、「軽度改善」以上で86%と良好な改善率であった。
【0043】
【表8】
【0044】
投与開始前と投与開始12週のふくらはぎ及びくるぶしの周径を表9に示した。
投与開始前と比較して、ふくらはぎ及びくるぶしともに、周径に関して優位な減少(p<0.05)を認めた。
【0045】
【表9】