(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ピーク電力上限値及び各チャンネルの優先度に基づいて、複数の操作量算出部によって算出された複数の操作量による電力使用量が前記ピーク電力上限値を超えないように、前記複数の操作量それぞれに対して削減処理を行う操作量削減処理部と、
前記操作量削減処理部から出力される出力用操作量に基づいて、操作信号を生成する出力制御部と
を備え、
前記出力制御部は、時間比例出力制御を行うものであり、
サイクル時間内において、各操作信号が同時にオンとなる時間が最も短くなるように、チャンネル毎に、操作信号がオンとなる時間をずらすように出力制御し、
更に、前記出力制御部は、予め決められた順番で、各チャンネルの操作信号のサイクル時間内におけるオンオフ時刻を決めていくものであって、
先の順番のチャンネルの操作信号がオフとなる時刻に、次の順番のチャンネルの操作信号がオンとなるようにオンオフ時刻を決定すると共に、
オン時間が、サイクル時間の終了時刻を超えるチャンネルについては、サイクル時間の終了時刻を超える部分のオン時間は、サイクル時間の開始時刻から、オンするようにする
ことを特徴とするピーク電力抑制装置。
前記操作量削減処理部は、前記複数の操作量の総和が、前記ピーク電力上限値を超える場合、前記ピーク電力上限値を超える超過量を、前記優先度に基づいて、各チャンネルに分配し、分配された超過量を、各チャンネルの操作量から削減する
ことを特徴とする請求項1に記載のピーク電力抑制装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明が適用される温度制御システムの構成例を説明するための図である。
【0020】
同図に示すように、温度制御システム100は、複数(本実施形態においては3つ)の制御対象10a〜10cの温度を制御するためのシステムであって、多チャンネル温度調節計110と、複数(本実施形態においては3つ)のSSR120a〜120cと、複数(本実施形態においては3つ)のヒータ130a〜130cと、複数(本実施形態においては3つ)の熱電対140a〜140cと、管理装置150とを備える。
【0021】
同図に示すように、多チャンネル温度調節計110には、SSR120a〜120cと、熱電対140a〜140cと、管理装置150とが接続されている。また、SSR120aには、ヒータ130aが接続され、SSR120bには、ヒータ130bが接続され、SSR120cには、ヒータ130cが接続されている。
【0022】
多チャンネル温度調節計110は、本発明が適用される温度調節装置であって、熱電対140a〜140cそれぞれによって検出される各制御対象10a〜10cの温度に応じて、各SSR120a〜120cに対して出力する操作信号を変化させて、各制御対象10a〜10cの温度の調節を行うものである。
【0023】
本実施形態においては、多チャンネル温度調節計110は、3つの温度調節計(チャンネル1〜3)の機能を実現しており、多チャンネル温度調節計110(チャンネル1)、SSR120a、ヒータ130a、制御対象10a及び熱電対140aが一つの温度制御ループを構成し、多チャンネル温度調節計110(チャンネル2)、SSR120b、ヒータ130b、制御対象10b及び熱電対140bが別の温度制御ループを構成し、多チャンネル温度調節計110(チャンネル3)、SSR120c、ヒータ130c、制御対象10c及び熱電対140cが更に別の温度制御ループを構成している。
【0024】
多チャンネル温度調節計110は、通常のデジタル式ボード型温度調節計と同様のハードウェア構成を有するものであり、例えば、CPU111、メモリ(例えば、ROM、RAM及びEEPROM)112、A/D変換器113、入力インタフェース部114、出力インタフェース部115等を備えるものである。本実施形態においては、基本的に、CPU111がメモリ(ROM)112に記憶されたプログラムを実行することで、3つの温度調節計の機能を論理的に実現している。
【0025】
SSR120a〜120cはそれぞれ、多チャンネル温度調節計110から出力される操作信号に従って、ヒータ130a〜130cの駆動制御をする半導体リレーである。ヒータ130a〜130cはそれぞれ、SSR120a〜SSR120cによって駆動制御されて、制御対象10a〜10cの加熱を行う加熱装置である。本実施形態においては、各ヒータ130a〜130cの容量(消費電力)は同一であるとする。SSR120a〜120c及びヒータ130a〜130cは、温度制御システム100の操作部を構成する。
【0026】
熱電対140a〜140cはそれぞれ、制御対象10a〜10cの温度を検出するための温度検出手段であり、温度制御システム100の検出部を構成する。熱電対140a〜140cは、検出した温度に対応した電圧を発生するものであり、熱電対140a〜140cによって発生された電圧は、多チャンネル温度調節計110内部で適宜増幅された上で、A/D変換器113によってデジタルデータに変換され、更に、CPU111によって、温度データに変換される。
【0027】
管理装置150は、多チャンネル温度調節計110の動作を管理するものであって、多チャンネル温度調節計110に対するパラメータ設定や、多チャンネル温度調節計110の制御動作の開始を指示するものである。管理装置150は、各種パラメータの設定や利用者の指示を入力するための入力部151と、各種情報を表示するための表示部152とを備えるものであり、例えば、キーボード等の入力装置とCRTやLCD等の表示装置とを備えた通常のパーソナルコンピュータその他のコンピュータによって構成される。
【0028】
図2は、多チャンネル温度調節計110の機能構成を説明するための図である。同図に示すように、多チャンネル温度調節計110は、複数(本実施形態では3つ)の操作量算出部210a〜210cと、操作量削減処理部221と、出力制御部222とを備える。操作量削減処理部221と出力制御部222と
によって、ピーク電力抑制部220が構成される。操作量算出部210a〜210c、操作量削減処理部221及び出力制御部222は、基本的に、多チャンネル温度調節計110が備えるCPU111がメモリ(ROM)112に記憶されたプログラムを実行することで実現される。
【0029】
操作量算出部210a〜210cはそれぞれ、熱電対140a〜140cによって検出された制御対象10a〜10cの温度、及び、利用者によって各制御対象10a〜10c毎に指定された目標温度に基づいて、検出温度が目標温度に一致するように、操作部(SSR120a〜120c)を操作するための操作量を算出するものである。本実施形態においては、操作量算出部210a〜210cは、通常のPID演算を行うことで、操作量を算出する。また、本実施形態においては、操作量は、%の値(例えば、0〜100%の値)として算出されるものとする。
【0030】
操作量削減処理部221は、出力制御部222と共にピーク電力抑制部220を構成するものであって、利用者によって管理装置150等を介して指定されたピーク電力上限値U
max及び各チャンネルの優先度β
1〜β
3に基づいて、複数の操作量算出部210a〜210cによって算出された操作量による電力使用量が、ピーク電力上限値U
maxを超えないように、各操作量算出部210a〜210cによって算出された操作量に対して、所定の削減処理を行うものである。
【0031】
ピーク電力上限値U
maxは、温度制御システム100におけるピーク電力の上限を規定するための値である。3つの操作量算出部210a〜210cを備える本実施形態においては、ピーク電力上限値U
maxとしては、100(%)又は200(%)のいずれかの値を指定することができる。なお、一般に、N個の操作量算出部を備える温度制御システムの場合は、ピーク電力上限値U
maxとして指定可能な値は、100(%),200(%),・・・,(N−1)×100(%)の(N−1)個の値ということになる。
【0032】
優先度β
1〜β
3は、各チャンネルの優先度を%で表す値であり、各チャンネル毎に決められる。優先度β
1〜β
3は、各チャンネルの制御性能を犠牲にする程度を調整するための重みを表す値であり、優先度β
1〜β
3の値が大きいほど、制御性能を犠牲にする程度が小さくなる。但し、各優先度β
1〜β
3は、全優先度の合計が100%となるように、すなわち、Nチャンネルの場合、以下の式1を満足するように各β
i(i=1,2,・・・,N)が決められる。
【0034】
N=3の場合は、例えば、β
1=10%、β
2=20%、β
3=70%のように決められる。
【0035】
操作量削減処理部221においては、操作量の削減処理が必要な場合は、各チャンネルの優先度β
1〜β
3に基づいて、各チャンネルの操作量から削減すべき削減量を算出することになる。また、操作量削減処理部221においては、操作量の削減処理が必要な場合は、優先度β
1〜β
3がより低いチャンネルから順番に、操作量の削減処理を行うことになる。操作量削減処理部221における削減処理の詳細については後述する。
【0036】
出力制御部222は、操作量削減処理部221と共にピーク電力抑制部220を構成するものであって、操作量削減処理部221から出力される出力用の操作量に基づいて、操作信号を生成して、SSR120a〜120cに対して出力するものである。出力制御部222は、時間比例出力制御を行うものであるが、従来の時間比例出力制御とは異なり、SSR120a〜120cが同時にオンとなる時間が最も短くなるように、チャンネル毎に、操作信号がオンとなる時間をずらすように出力制御を行う。
【0037】
3つのSSR120a〜120cを有する温度制御システム100においては、ピーク電力上限値U
maxとして100(%)を指定すると、3つのSSR120a〜120cのうち、同時にオンするのは1つのSSRだけとなり、ピーク電力は、一つのヒータ分(100%)の電力ということになる。また、ピーク電力上限値U
maxとして200(%)を指定すると、3つのSSR120a〜120cのうち、同時にオンするのは2つのSSRだけとなり、ピーク電力は、二つのヒータ分(200%)の電力ということになる。出力制御部222における処理の詳細については後述する。
【0038】
次に、操作量削減処理部221における処理の詳細について説明する。
【0039】
図3は、操作量削減処理部221における処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、以下の式等では、適宜、チャンネルの総数をNと一般化して説明する。
図1に示した温度制御システム100においては、N=3となる。
【0040】
同図に示すように、まず、各操作量算出部210a〜210cによって算出された操作量に基づいて、電力使用量を表す値が算出される(S31)。本実施形態においては、電力使用量は操作量に比例すること、及び、各ヒータ130a〜130cの容量(消費電力)は同一であることから、電力使用量を表す値として、操作量の総和Uが算出される。すなわち、以下の式2に従った計算を行うことによって、操作量の総和Uが算出される。なお、以下の式2では、u
iはチャンネル番号iのチャンネルの操作量を表し、Nは、チャンネルの総数を表す。
【0042】
次に、操作量の総和Uが、利用者によって指定されたピーク電力上限値U
maxを超えているか否かが判別される(S32)。本実施形態においては、操作量(の総和U)及びピーク電力上限値U
maxは共に、%で表されるので、両者を直接比較することができる。
【0043】
判別の結果、操作量の総和Uが、ピーク電力上限値U
maxを超えていない場合は(S32:No)、操作量削減処理は必要ないので、各操作量算出部210a〜210cによって算出された操作量u
iがそのまま、出力用の操作量u
i_outとされて(S33)、出力制御部222に渡される。
【0044】
一方、操作量の総和Uが、ピーク電力上限値U
maxを超えていた場合は(S32:Yes)、操作量削減処理が必要となる。
【0045】
そのため、まず、操作量の総和Uの超過量dUが算出される(S34)。すなわち、以下の式3に従った計算を行うことによってdUが算出される。
【0046】
dU=U−U
max ・・・・・(3)
【0047】
超過量dUが算出されると、次に、算出された超過量dUが0になるように各チャンネルの操作量の削減処理が行われる(S35)。当該削減処理の詳細については後述する。当該削減処理が終了すると、削減処理が施された出力用の操作量u
i_outが出力制御部222に対して出力される。
【0048】
次に、操作量削減処理部221における各チャンネルの操作量の削減処理(前述したステップS35における処理)の詳細について説明する。
【0049】
まず、操作量削減処理部221における各チャンネルの操作量の削減処理の基本的な考え方について説明する。
【0050】
操作量削減処理部221においては、まず、各チャンネルの優先度β
i(i=1,2,・・・,N)に基づいて、以下に示す式4に従った計算を行うことで、各チャンネルの操作量を削減する際の重みを表す削減係数γ
i(i=1,2,・・・,N)が算出される。
【0052】
なお、削減係数γ
iは、式4より、以下の式5に示すような関係を持つことになる。
【0054】
次に、以下に示す式6に従った計算を行うことで、各チャンネルの削減操作量du
i(i=1,2,・・・,N)が算出される。
【0056】
次に、以下に示す式7に従った計算を行うことで、削減処理を施した操作量u'
i(i=1,2,・・・,N)が算出される。
【0057】
u'
i=u
i−du
i ・・・・・(7)
【0058】
以上のようにして算出された操作量u'
iによれば、超過量dU=0となり、使用電力量をピーク電力上限U
max以下に抑えることができることになる。
【0059】
ところが、操作量には、出力可能最大値(上限)u
max、及び、出力可能最小値(下限)u
minが存在する。なお、本実施形態においては、すべてのチャンネルにおいて、操作量の上限u
max及び下限u
minは同一であるとする。
【0060】
一方、式7で算出される操作量u'
iについては、操作量の下限u
minを下回る場合が考えられるが、そのような操作量u'
i(<u
min)は、実際には出力をすることはできないことになる。
【0061】
本実施形態においては、このような場合に対処するため、まず、各チャンネルの優先度β
i(i=1,2,・・・,N)に基づいて各チャンネルの削減順位を決め、当該削減順位に従って、各チャンネルの削減処理を順次行うようにする。
【0062】
本実施形態においては、削減順位は、優先度β
iが低い順に決める。従って、優先度が一番低いチャンネルの削減順位が一位となり、その次に、優先度が低いチャンネルの削減順位が二位となり、優先度が一番高いチャンネルの削減順位が最下位となる。なお、優先度が等しいチャンネルが存在する場合は、所定の規則(本実施形態においては、チャンネル番号が小さい順)によってチャンネルの削減順位を決める。例えば、チャンネル1の優先度β
1とチャンネル3の優先度β
3が同じだった場合は、削減順位としては、まず、チャンネル番号が小さいチャンネル1が操作量の削減対象とされ、次に、チャンネル3が操作量の削減対象とされることになる。
【0063】
以上のようにして決められる削減順位に従って、各チャンネル毎に、上述した式7により削減処理を施した操作量u'
iを算出していき、算出された操作量u'
iが、操作量の下限u
minを下回ったチャンネルについては、操作量の下限u
minを、出力用の操作量u
i_outとすると共に、当該チャンネルで、削減しきれなかった削減操作量を、次の削減順位のチャンネルに持ち越して、当該次の削減順位のチャンネルの操作量から削減するようにする。
【0064】
このような処理を行うことにより、システム全体で、必要な操作量の削減が実現されることになる。
【0065】
図4は、各チャンネルの優先度β
1〜β
Nに基づいて決定された削減順位に従った各チャンネルの操作量の削減処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0066】
まず、処理に利用される変数j及びΔuが初期化される(S41)。すなわち、まず、処理対象となる削減順位を表す変数jが1に初期化される。更に、処理対象となったチャンネルにおいて、削減しきれず、次の削減順位のチャンネルに持ち越す削減操作量を表す変数Δuが0に初期化される。
【0067】
次に、処理対象となるチャンネルのチャンネル番号が取得される(S42)。
【0068】
本実施形態では、削減順位jとチャンネル番号iとを対応付けるための配列CH[N]が用意されており、前述したように優先度β
1〜β
Nに基づいて削減順位が決まると、決定された削減順位の順番で、チャンネル番号iが配列CHに格納される。その結果、配列要素CH[j]には、削減順位jのチャンネル番号iが格納されることになる。つまり、処理対象となる削減順位jに対応するチャンネル番号iは、以下の式8によって、配列CHから取得されることになる。
【0070】
次に、処理対象となるチャンネルの優先度β
iに基づいて、前述の式4に従った計算を行うことで、削減係数γ
iが算出され、更に、以下に示す式9に従った計算を行うことで、削減処理が施された操作量u'
iが算出される(S43)。
【0071】
u'
i=u
i−γ
idU−Δ
u ・・・・・(9)
【0072】
次に、削減処理が施された操作量u'
iが、操作量の下限u
min(例えば、0%)以上であるか否かが判別される(S44)。
【0073】
判別の結果、削減処理が施された操作量u'
iが、操作量の下限u
min以上である場合は(S44:Yes)、削減処理が施された操作量u'
iをそのまま、出力用の操作量u
i_outとし、更に、現在の処理対象チャンネルでは、次の削減順位のチャンネルに持ち越す削減操作量は存在しないことになるので、Δu=0とする(S45)。
【0074】
一方、判別の結果、削減処理が施された操作量u'
iが、操作量の下限u
minを下回っている場合は(S44:No)、削減処理が施された操作量u'
iを実際に出力することはできないので、操作量の下限u
minを、出力用の操作量u
i_outとし、更に、現在の処理対象チャンネルでは、削減しきれず、次の削減順位のチャンネルに持ち越す削減操作量Δuを、以下に示す式10に従った計算を行うことで算出する(S46)。
【0075】
Δu=u
min−u'
i ・・・・・(10)
【0076】
式10により算出されたΔuについては、次の削減順位のチャンネルについて削減処理(ステップS43の処理)を行う際に、次の削減順位のチャンネルの操作量から削減されることになる。
【0077】
次に、すべてのチャンネルについて、処理が終了したか否かが判別され(S47)、未だ処理されていないチャンネルが存在する場合は(S47:No)、処理対象となる削減順位を表す変数jに1を加算して(S48)、次の削減順位を処理対象として、再度、上記S42以下の処理を繰り返す。
【0078】
一方、すべてのチャンネルについて、処理が終了した場合は(S47:Yes)、処理を終了する。
【0079】
以上のような処理を行うことにより、各チャンネルの優先度βに基づいて決定された削減順位に従って順々に、各チャンネルの操作量から、各チャンネルの優先度β(削減係数γ)に基づいて各チャンネルに割り当てられた削減量が削減され、削減しきれなかった削減量が存在する場合は、次の削減順位のチャンネルに持ち越されて、次の削減順位のチャンネルの操作量から削減されるようになる。その結果、最終的に、超過量dUが0となるような、各チャンネル毎の出力用の操作量u
1_out〜u
N_outが算出されることになる。
【0080】
次に、出力制御部222における処理の詳細について説明する。
【0081】
まず、出力制御部222における処理の基本的な考え方について説明する。
【0082】
前述したように、出力制御部222は、時間比例出力制御を行うものである。時間比例出力制御では、一定周期で出力信号(操作信号)をオンオフさせ、かつ、1周期の中で、オンの時間を操作量に比例させる。更に、従来の時間比例出力制御では、各周期(サイクル時間)の開始に同期して、すべての出力信号(操作信号)をオンさせている。そのため、一般に、各出力周期(サイクル時間)の最初の部分では、すべての操作信号(SSR120a〜120c)が同時にオンすることになる。その結果、全チャンネルの操作量の総和Uが、ピーク電力上限値U
max以下となっていても、瞬間的なピーク電力は抑制されないことになる。一方、本発明による時間比例出力制御では、従来の時間比例出力制御とは異なり、操作信号(SSR120a〜120c)が同時にオンとなる時間が最も短くなるように、チャンネル毎に、操作信号がオンとなる時間をずらすように出力制御を行う。
【0083】
そのために、出力制御部222では、まず、各チャンネルの出力用操作量u
i_out(i=1,2,・・・,N)に基づいて、各チャンネルの操作信号の1周期(サイクル時間)内のオン時間t
i_on(i=1,2,・・・,N)を算出する。すなわち、以下に示す式11に従った計算を行うことで、各チャンネルのオン時間t
i_onを算出する。
【0085】
なお、式11において、Tはサイクル時間(出力周期)である。また、u
min及びu
maxはそれぞれ、操作量の下限及び上限であり、本実施形態では、それぞれ、0(%)及び100(%)とする。
【0086】
そして、算出された各チャンネルのオン時間t
i_onに基づいて、各チャンネルの操作信号をオンオフする時刻を決める。
【0087】
図5及び
図6は、各チャンネルの操作信号のオンオフする時刻の決め方を概念的に示した図である。ここでは、5チャンネル(ch1〜ch5)の場合を考えている。
【0088】
まず、
図5(a)に示すように、サイクル時間Tの開始時刻から、所定の順番(本実施形態では、チャンネル番号の小さい順)に、各チャンネルのオン時間t
i_onを並べていく。
【0089】
そして、同図(b)に示すように、並べている最中に、サイクル時間Tの終了時刻を超えた場合は、超えた部分については、再度、サイクル時間Tの開始時刻に戻って、並べるようにする。すなわち、同図(c)に示すように、一周期分並べ終わった場合は、並べ終わったものの上に重ねて並べるイメージである。そして、更に、各チャンネルのオン時間t
i_onを並べていき、再度、サイクル時間の終了時刻を超えた場合は、超えた部分については、再度、サイクル時間の開始時刻に戻って、更に上に積み重ねていく。なお、後述する様に、本実施形態においては、初期値0の変数pを用意して、サイクル時間の終了時刻を超える度に、変数pに1を加算していく。すなわち、変数pは、サイクル時間の終了時刻を超えた回数を管理するための変数である。
【0090】
前述したように、出力用の操作量u
i_out(i=1,2,・・・,N)は、トータルのピーク電力が、利用者が指定したピーク電力上限値U
maxを超えないように削減処理が施されている。従って、例えば、U
max=100(%)の場合は、u
i_outを全チャンネルについて加算した合計は、100%以下となる。同様に、U
max=200(%)の場合は、u
i_outを全チャンネルについて加算した合計は、200%以下となる。つまり、式11より、t
i_onの合計は、U
max=100(%)の場合、T以下となり、U
max=200(%)の場合、2T以下となる。その結果、U
max=100(%)の場合、すべてのチャンネルの総オン時間は、1周期内に収まることとなり、また、U
max=200(%)の場合、すべてのチャンネルの総オン時間は、2周期内に収まることとなる。
【0091】
そして、同図(d)に示すように、すべてのチャンネルについて並べ終わったら、
図6に示すように、各チャンネル毎に、操作信号をオンオフにする時刻を決定するようにする。同図に示すように、先の順番のチャンネルの操作信号がオフとなる時刻に、次の順番のチャンネルの操作信号がオンとなるように各操作信号のオンオフ時刻が決定されることになる。
【0092】
以上のような処理を行った場合、各チャンネルの操作信号の波形パターンは、
図7に示すような4種類のパターンを有することになる。
【0093】
すなわち、サイクル時間Tの開始時刻から一定時間オンとなるもの(パターン1)、サイクル時間の開始時刻から一定時間経過後、一定時間オンとなり、その後、一定時間オフとなるもの(パターン2)、サイクル時間の開始時刻から一定時間オンとなり、一旦、一定時間オフとなった後に、再度、サイクル時間の終了時刻までオンとなるもの(パターン3)、及び、サイクル時間の開始時刻から一定時間経過後、オンとなり、そのままサイクル時間の終了時刻までオンとなるもの(パターン4)の4種類である。
【0094】
図7に示した4種類の波形パターンを一般的に表現するため、本実施形態においては、
図8に示すように、サイクル時間を、4つの区間801〜804に分割する。そして、出力制御部222では、各区間801〜804の時間t
(1)i_on(同図におけるon1の時間),t
(1)i_off(同図におけるoff1時間),t
(2)i_on(同図におけるon2の時間),t
(2)i_off(同図におけるoff2の時間)(i=1,2,・・・,N)を算出し、算出された時間t
(1)i_on,t
(1)i_off,t
(2)i_on,t
(2)i_offに基づいて、出力制御を行うことで、
図7に示した4種類の出力パターンを実現する。
【0095】
なお、t
(1)i_on,t
(1)i_off,t
(2)i_on,t
(2)i_offについては、以下の式12及び13に示す関係が成立する。
【0098】
図9は、出力制御部222における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0099】
同図に示すように、まず、処理に使用される変数i,pが初期化される(S91)。iは、処理対象となるチャンネル番号を表す変数であり、本実施形態では、1に初期化される。また、pは、前述した、処理の最中にサイクル時間の終了時刻を超えた回数を管理するための変数であって、0に初期化される。
【0100】
次に、処理対象となるチャンネル番号iのチャンネルの出力用の操作量u
i_outに基づいて、上述した式11に従った計算を行うことで、1サイクル時間内においてオンを出力する時間t
i_onが算出される(S92)。
【0101】
次に、処理対象となるチャンネル番号iが1であるか否かが判別される(S93)。
【0102】
判別の結果、処理対象となるチャンネル番号iが1であった場合(S93:Yes)、操作信号が、波形パターン1で出力されるように、サイクル時間内の4つの区間801〜804の時間が、以下の式14〜17に従った計算を行うことで算出される(S94)。
【0107】
一方、処理対象となるチャンネル番号iが1でなかった場合は(S93:No)、次に、現在の処理対象チャンネルのオン時間が、サイクル時間の終了時刻を超えているか否かが判別される(S95)。具体的には、一番最初の処理対象チャンネルから現在の処理対象チャンネルまでの合計オン時間TS
onが、以下の式26に従った計算を行うことで算出され、算出された合計オン時間TS
onが、(1+p)Tを超えているか否かが判別される。
【0109】
判別の結果、現在の処理対象チャンネルのオン時間がサイクル時間の終了時刻を超えていない場合(S95:No)、すなわち、現在の処理対象チャンネルまでの合計オン時間TS
onが、(1+p)T以下であった場合は、波形パターン2又4で出力されるように、サイクル時間内の4つの区間801〜804の時間が、以下の式18〜21に従った計算を行うことで算出される(S96)。
【0114】
一方、現在の処理対象チャンネルのオン時間がサイクル時間の終了時刻を超えていた場合(S95:Yes)、すなわち、現在の処理対象チャンネルまでの合計オン時間TS
onが、(1+p)Tを超えていた場合は、変数pに1を加算した上で(S97)、波形パターン3で出力されるように、サイクル時間内の4つの区間801〜804の時間が、以下の式22〜25に従った計算を行うことで算出される(S98)。
【0119】
以上のようにして、サイクル時間内の4つの区間801〜804の時間が算出されると、次に、すべてのチャンネルについて処理が終了したか否かが判別され(S99)、処理が終了していないチャンネルが存在する場合は(S99:No)、次の処理対象となるチャンネル番号を示すように、変数iに1を加算して(S100)、次の処理対象となるチャンネルについて、再度、上記S92以下の処理を繰り返す。
【0120】
一方、すべてのチャンネルについて処理が終了していた場合は(
S99:Yes)、処理を終了する。
【0121】
以上のようにして、すべてのチャンネルについて、サイクル時間内の4つの区間801〜804の時間が算出される。
【0122】
図9に示した処理を終了すると、出力制御部222は、各チャンネル毎に算出されたサイクル時間内の4つの区間801〜804の時間t
(1)i_on,t
(1)i_off,t
(2)i_on,t
(2)i_offに基づいて、操作信号を適宜生成する。
【0123】
なお、
図9に示した処理では、チャンネル番号の小さい順に順次、各チャンネルについて処理を行うようにしているが、他の所定の順番(例えば、チャンネル番号の大きい順)に、各チャンネルについて処理を行うよう
にすることも考えられる。
【0124】
図10及び
図11は、出力制御部222によって生成される操作信号の例を示す図である。
【0125】
ここでは、操作量の下限及び上限がそれぞれ、0(%)及び100(%)であり、各チャンネルの優先度β
1,β
2及びβ
3をそれぞれ、10(%)、30(%)及び60(%)と指定した場合を考えている。この場合、各チャンネルの削減順位は、チャンネル番号の順と同じ、すなわち、チャンネル1が一位、チャンネル2が二位、チャンネル3が三位ということになる。更に、各チャンネルの削減係数γ
1,γ
2及びγ
3はそれぞれ、式4より、0.45,0.35及び0.20となる。
【0126】
図10は、U
maxを100(%)と指定し、各チャンネルの操作量算出部210a〜210cで算出された操作量u
1〜u
3がそれぞれ、100%であった場合を考えている。この場合、超過量dU=200(%)となり、操作量削減処理部221による削減処理が施された出力用操作量u
1_out〜u
3_outはそれぞれ、10.0%,30.0%及び60,0%となる。サイクル時間を10秒とすると、各チャンネルの操作信号のオン時間はそれぞれ、1.0秒、3.0秒及び6.0秒となる。更に、同図に示すように、各操作信号は、同時にオンしないように出力制御されて、トータルピーク電力は100%に抑制されることになる。
【0127】
一方、
図11は、U
maxを200(%)と指定し、各チャンネルの操作量算出部で算出された操作量u
1〜u
3がそれぞれ、100%であった場合を考えている。この場合、超過量dU=100(%)となり、操作量削減処理部221による削減処理が施された出力用操作量u
1_out〜u
3_outはそれぞれ、55.0%,65.0%及び80.0%となる。サイクル時間を10秒とすると、各チャンネルの操作信号のオン時間はそれぞれ、5.5秒、6.5秒及び8.0秒となる。更に、同図に示すように、各操作信号は、同時にオンする時間が最短となるよう出力制御されて、トータルピーク電力は200%に抑制されることになる。
【0128】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の実施形態は上記のものに限られない。例えば、上述した実施形態においては、多チャンネル温度調節計110内において、ピーク電力抑制部220を実現するようにしていたが、ピーク電力抑制部220を独立したピーク電力抑制装置として実現することも考えられる。この場合、ピーク電力抑制装置は、外部に設けられた複数の温度調節計から、各温度調節計が算出した操作量を適宜受け取り、受け取った操作量に対して、上述した操作量削減処理及び出力制御処理を行うことになる。
【0129】
また、上述した実施形態においては、出力制御部222は、時間比例出力制御を行うものであったが、出力制御部として、連続比例出力制御(例えば、DC4〜20mAの電流出力)を行うものを利用することも考えられる。この場合、出力制御部は、操作量削減処理部221から出力された出力用操作量を、そのまま、操作信号(例えば、DC4〜20mAの電流)に変換して出力すれば、使用電力量をピーク電力上限U
max以下に抑えることができることになる。