特許第6321910号(P6321910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6321910封止シート、半導体装置の製造方法及び封止シート付き基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6321910
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】封止シート、半導体装置の製造方法及び封止シート付き基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20180423BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180423BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
   H01L21/60 311S
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-64586(P2013-64586)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-192237(P2014-192237A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】盛田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚英
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−258240(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078409(WO,A1)
【文献】 特開平10−178053(JP,A)
【文献】 特開2012−238704(JP,A)
【文献】 特開2008−258492(JP,A)
【文献】 特開2014−192238(JP,A)
【文献】 特開2011−74246(JP,A)
【文献】 特開2004−40049(JP,A)
【文献】 特開2010−1403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/31
H01L21/60−21/607
H05K3/32
B32B7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に設けられた以下の特性を有するアンダーフィル材(ただし、感光性を有するアンダーフィル材を除く。)とを備える封止シート。
前記基材からの90°剥離力:1mN/20mm以上50mN/20mm以下
25℃における破断伸度:50%以上
40℃以上100℃未満における最低粘度:20000Pa・s以下
100℃以上200℃以下における最低粘度:100Pa・s以上
【請求項2】
前記アンダーフィル材が熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む請求項1に記載の封止シート。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂は、25℃で液状の熱硬化性樹脂を含み、
前記熱硬化性樹脂の全重量に対する前記25℃で液状の熱硬化性樹脂の重量の割合が5重量%以上40重量%以下である請求項2に記載の封止シート。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がアクリル樹脂を含み、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂とフェノール樹脂とを含む請求項2又は3に記載の封止シート。
【請求項5】
前記アンダーフィル材はフラックス剤を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の封止シート。
【請求項6】
前記基材が熱可塑性樹脂を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の封止シート。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂はポリエチレンテレフタレートである請求項6に記載の封止シート。
【請求項8】
被着体と、該被着体と電気的に接続された半導体素子と、該被着体と該半導体素子との間の空間を充填するアンダーフィル材とを備える半導体装置の製造方法であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の封止シートを準備する準備工程と、
前記被着体上の前記半導体素子との接続位置を覆うように前記封止シートのアンダーフィル材を前記被着体に貼り合わせる貼合せ工程と、
前記被着体に貼り合わせたアンダーフィル材から前記基材を剥離する剥離工程と、
前記被着体と前記半導体素子の間の空間を前記アンダーフィル材で充填しつつ前記半導体素子に形成された突起電極を介して前記半導体素子と前記被着体とを電気的に接続する接続工程と
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板と、該基板に貼り付けられた請求項1〜7のいずれか1項に記載の封止シートとを備える封止シート付き基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止シート、半導体装置の製造方法及び封止シート付き基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型・薄型化による高密度実装の要求が、近年、急激に増加している。この要求に応ずるべく、半導体パッケージは、従来のピン挿入型に代わり、高密度実装に適した表面実装型が主流になっている。中でも、半導体チップの表面に形成した突起状の電極(端子)を介して半導体チップと基板とを電気的に接続するフリップチップ実装技術が展開されている。
【0003】
表面実装の際には、半導体素子表面の保護や半導体素子と基板との間の接続信頼性を確保するために、半導体素子と基板との間の空間への封止樹脂の充填が行われている。このような封止樹脂としては、液状の封止樹脂が広く用いられているものの、液状の封止樹脂では注入位置や注入量の調節が困難であったり、狭ピッチ化したバンプ周辺を十分充填できずにボイドが発生したりする。そこで、シート状の封止樹脂(アンダーフィルシート)を用いて半導体素子と基板との間の空間を充填する技術も提案されている(特許文献1)。
【0004】
上記技術では、基板に接着層(アンダーフィルシート)を配置しておき、半導体素子の基板への接続の際にこの基板に配置しておいた接着層により両者間の空間を充填するという手順が採用されている。この充填プロセスでは、被着体と半導体素子との間の空間の充填が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−45104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、アンダーフィルシートとしての接着層を単層形態で利用し、単層の接着層をそのままテープ基板に配置していることから、配置前の接着層の取り扱いが困難であり、意図しない箇所への付着や接着層の破断が生じることがある。これに対し、アンダーフィルシートを補強するための補強材を貼り合わせて封止用シートとして対応することも可能である。この場合は補強材の存在により基板への配置前のアンダーフィルシートの作業性は良好になるものの、アンダーフィルシートに加えて補強材を組み合わせて用いることから、配置の際に封止用シートにはその組み合わせに基づく新たな特性が要求される。
【0007】
本発明は、半導体素子や被着体の凹凸への良好な埋め込み性によりボイドの発生を抑制可能であるとともに、被着体への貼り付け前後を通じて作業性が良好な封止シート及びこれを用いる半導体装置の製造方法、並びに該封止シートを貼り合わせた基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは鋭意検討したところ、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の封止シートは、基材と、該基材上に設けられた以下の特性を有するアンダーフィル材とを備える。
前記基材からの90°剥離力:1mN/20mm以上50mN/20mm以下
25℃における破断伸度:10%以上
40℃以上100℃未満における最低粘度:20000Pa・s以下
100℃以上200℃以下における最低粘度:100Pa・s以上
【0010】
アンダーフィル材を基板等の被着体に貼り合わせた後、基材をアンダーフィル材から剥離する必要がある。当該封止シートでは、アンダーフィル材の基材からの90°剥離力を1mN/20mm以上50mN/20mm以下としているので、過剰な負荷がかかることなくスムーズに剥離することができる。また、アンダーフィル材の25℃における破断伸度を10%以上としていることから、被着体への貼り付け前に伸縮作用が働いても破断することなく、加えて、剥離の際に上記剥離力が負荷されてもアンダーフィル材自体の破断を防止することができる。さらに、アンダーフィル材の40℃以上100℃未満における最低粘度を20000Pa・s以下としているので、アンダーフィル材の被着体の凹凸への埋め込み性が良好であり、アンダーフィル材と被着体との間でのボイドの発生を防止することができる。また、アンダーフィル材の100℃以上200℃以下における最低粘度を100Pa・s以上としているので、アンダーフィル材からのアウトガス成分(水分や有機溶媒等)に起因するボイドの発生を抑制することができる。このように当該封止シートでは、基材とアンダーフィル材との組み合わせに対応するようその特性を制御しているので、ボイドの発生を抑制しつつ、被着体への貼り合わせ前後を通じて作業性を良好なものとすることができる。なお、本明細書において、90°剥離力、破断伸度、最低溶融粘度及び基材に対する剥離力の各測定方法は、実施例の記載による。
【0011】
当該封止シートでは、前記アンダーフィル材が熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含むことが好ましい。中でも前記熱可塑性樹脂がアクリル樹脂を含み、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂とフェノール樹脂とを含むことが好ましい。アンダーフィル材がこれらの成分を含むことにより、封止シートに要求される上記特性を好適に発揮することができる。
【0012】
前記熱硬化性樹脂は、25℃で液状の熱硬化性樹脂(以下、「液状熱硬化性樹脂」ともいう。)を含み、前記熱硬化性樹脂の全重量に対する前記液状熱硬化性樹脂の重量の割合が5重量%以上40重量%以下であることが好ましい。これにより上記特性をバランスよく発揮することができ、特に粘度調整が容易となってアンダーフィル材の被着体の凹凸への埋め込み性を良好なものとすることができる。
【0013】
前記アンダーフィル材はフラックス剤を含むことが好ましい。これにより、半田バンプ等の電極表面の酸化膜の除去や半田の濡れ性の向上等を図ることができ、半導体素子に設けられた半田バンプ等の突起電極を効率良く溶融させて半導体素子と被着体との電気的接続をより確実なものとすることができる。
【0014】
当該封止シートでは、前記基材が熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。中でも前記熱可塑性樹脂は、当該封止シートに適度な引張り強さ、伸び等の機械特性を付与する観点から、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0015】
本発明には、被着体と、該被着体と電気的に接続された半導体素子と、該被着体と該半導体素子との間の空間を充填するアンダーフィル材とを備える半導体装置の製造方法であって、
当該封止シートを準備する準備工程と、
前記被着体上の前記半導体素子との接続位置を覆うように前記封止シートのアンダーフィル材を前記被着体に貼り合わせる貼合せ工程と、
前記被着体に貼り合わせたアンダーフィル材から前記基材を剥離する剥離工程と、
前記被着体と前記半導体素子の間の空間を前記アンダーフィル材で充填しつつ前記半導体素子に形成された突起電極を介して前記半導体素子と前記被着体とを電気的に接続する接続工程と
を含む半導体装置の製造方法も含まれる。
【0016】
当該製造方法では、上記封止シートのアンダーフィル材を被着体に貼り合わせておき、その後半導体素子の電気的接続を図る。これにより、アンダーフィル材からの基材の剥離の際にアンダーフィル材の破壊等が生じず半導体素子との密着性を向上させることができる。加えて、貼り合わせの際にアンダーフィル材が所定の粘度を有することから、被着体や半導体素子の凹凸への追従性も向上させることができる。これらの作用により、ボイドの発生が抑制された高信頼性の半導体装置を製造することができる。
【0017】
本発明には、基板と、該基板に貼り付けられた当該封止シートとを備える封止シート付き基板も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る封止シートを示す断面模式図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面模式図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面模式図である。
図2C】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の封止シートは、基材と、該基材上に設けられた以下の特性を有するアンダーフィル材とを備える。
前記基材からの90°剥離力:1mN/20mm以上50mN/20mm以下
25℃における破断伸度:10%以上
40℃以上100℃未満における最低粘度:20000Pa・s以下
100℃以上200℃以下における最低粘度:100Pa・s以上
【0020】
また、本発明には、被着体と、該被着体と電気的に接続された半導体素子と、該被着体と該半導体素子との間の空間を充填するアンダーフィル材とを備える半導体装置の製造方法であって、
当該封止シートを準備する準備工程と、
前記被着体上の前記半導体素子との接続位置を覆うように前記封止シートのアンダーフィル材を前記被着体に貼り合わせる貼合せ工程と、
前記被着体に貼り合わせたアンダーフィル材から前記基材を剥離する剥離工程と、
前記被着体と前記半導体素子の間の空間を前記アンダーフィル材で充填しつつ前記半導体素子に形成された突起電極を介して前記半導体素子と前記被着体とを電気的に接続する接続工程と
を含む半導体装置の製造方法も含まれる。
【0021】
以下、本発明の一実施形態として、上記半導体装置の製造方法において上記封止シートを用いる態様を説明する。
【0022】
[準備工程]
準備工程では、封止シート10を準備する(図1参照)。この封止シート10は、基材1と、該基材1上に設けられた以下の特性を有するアンダーフィル材2とを備える。
前記基材からの90°剥離力:1mN/20mm以上50mN/20mm以下
25℃における破断伸度:10%以上
40℃以上100℃未満における最低粘度:20000Pa・s以下
100℃以上200℃以下における最低粘度:100Pa・s以上
【0023】
(基材)
上記基材1は封止シート10の強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。
【0024】
また基材1の材料としては、上記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。上記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。
【0025】
基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0026】
上記基材1は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材1には、帯電防止能を付与するため、上記の基材1上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材1は単層又は2種以上の複層でもよい。
【0027】
基材1の厚さは封止シート10の作業性等を考慮して適宜に決定でき、一般的には5μm以上200μm以下程度であり、好ましくは35μm以上120μm以下である。
【0028】
なお、基材1には、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、着色剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤等)が含まれていてもよい。
【0029】
(アンダーフィル材)
本実施形態におけるアンダーフィル材2は、表面実装された半導体素子5と被着体6との間の空間を充填する封止用フィルムとして用いることができる(図2C参照)。
【0030】
アンダーフィル材2の基材1からの90°剥離力は、1mN/20mm以上50mN/20mm以下である。90°剥離力の下限は1mN/20mm以上であれば特に限定されないが、5mN/20mm以上が好ましく、10mN/20mm以上がより好ましい。一方、90°剥離力の上限は50mN/20mm以下であれば特に限定されないものの、40mN/20mm以下が好ましく、30mN/20mm以下がより好ましい。このような90°剥離力を採用することにより、アンダーフィル材2を基板等の被着体6に貼り合わせた後、基材1をアンダーフィル材2から剥離する際に、封止シート10に過剰な負荷をかけることなくスムーズに剥離することができる(図2B参照)とともに、封止シートの取り扱い時にアンダーフィル材と基材との間の不用意な剥離が生じることも防止することができる。
【0031】
アンダーフィル材2の25℃における破断伸度は10%以上であり、好ましくは50%以上であり、より好ましくは100%以上である。封止シート10を取り扱う上で被着体への貼り付け前に伸縮作用が働いてもアンダーフィル材2が破断することなく、加えて、剥離の際に上記剥離力が負荷されてもアンダーフィル材2自体の破断を防止することができる。なお、上記破断伸度の上限は高いほど好ましいが、物理的に1000%程度が限度である。
【0032】
アンダーフィル材2の40℃以上100℃未満における粘度は20000Pa・s以下であり、好ましくは15000Pa・s以下であり、より好ましくは10000Pa・s以下である。このような粘度により、アンダーフィル材2の被着体6の凹凸への埋め込み性が良好であり、アンダーフィル材2と被着体6との間でのボイドの発生を防止することができる。なお、上記粘度の下限は特に限定されないものの、基板等の被着体への貼り合わせ時における形状維持性の観点から、1000Pa・s以上であればよい。
【0033】
アンダーフィル材2の100℃以上200℃以下における最低粘度は100Pa・s以上であり、好ましくは500Pa・s以上であり、より好ましくは1000Pa・s以上である。上記最低粘度の採用により、アンダーフィル材からのアウトガス(水分や有機溶媒等)に起因するボイドの発生を抑制することができる。なお、上記最低粘度の上限は特に限定されないものの、半導体素子が有する凹凸に対する埋まり込み性の観点から、10000Pa・s以下が好ましく、5000Pa・s以下がより好ましい。
【0034】
アンダーフィル材の構成材料としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用したものが挙げられる。又、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂単独でも使用可能である。
【0035】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0036】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0037】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマー、アクリロニトリル等のようなシアノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0038】
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0039】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0040】
さらに、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0041】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。すなわち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0042】
なお、本実施形態においては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を用いたアンダーフィル材が特に好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。この場合の配合比は、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合量が10〜200重量部である。
【0043】
上記熱硬化性樹脂は、液状熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。この場合、上記熱硬化性樹脂の全重量に対する上記液状熱硬化性樹脂の重量の割合は5重量%以上40重量%以下が好ましく、10重量%以上35重量%以下がより好ましい。これにより上記アンダーフィル材2の所要特性をバランスよく発揮することができ、特にアンダーフィル材2の被着体6の凹凸への埋め込み性を良好なものとすることができる。液状熱硬化性樹脂としては、上述の熱硬化性樹脂のうち、重量平均分子量が1000以下のものを好適に用いることができる。なお、重量平均分子量の測定方法は以下の方法で測定することができる。試料をTHFに0.1wt%で溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により重量平均分子量を測定する。詳しい測定条件は以下の通りである。
<重量平均分子量の測定条件>
GPC装置:東ソー製、HLC−8120GPC
カラム:東ソー製、(GMHHR−H)+(GMHHR−H)+(G2000HHR)
流量:0.8mL/min
濃度:0.1wt%
注入量:100μL
カラム温度:40℃
溶離液:THF
【0044】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の熱硬化促進触媒としては、特に制限されず、公知の熱硬化促進触媒の中から適宜選択して用いることができる。熱硬化促進触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化促進触媒としては、例えば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホウ素系硬化促進剤、リン−ホウ素系硬化促進剤などを用いることができる。
【0045】
アンダーフィル材2には、半田バンプの表面の酸化膜を除去して半導体素子の実装を容易にするために、フラックスを添加してもよい。フラックスとしては特に限定されず、従来公知のフラックス作用を有する化合物を用いることができるものの、pKaが3.5以上であるカルボキシル基含有化合物(以下、「カルボキシル基含有化合物」ともいう。)が好ましい。これにより、カルボン酸イオンの発生を抑制することができ、エポキシ基等の反応性官能基を有する熱硬化性樹脂等との反応性を抑制することができる。その結果、該カルボキシル基含有化合物は、半導体の実装時の熱によっても直ちに熱硬化性樹脂と反応することなく、その後経時的に付与される熱によってフラックス機能を十分に発揮することができる。
【0046】
(pKaが3.5以上であるカルボキシル基含有化合物)
本実施形態に係るカルボキシル基含有化合物としては、分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有し、酸解離定数pKaが3.5以上であってフラックス機能を有する化合物であれば特に限定されない。カルボキシル基含有化合物のpKaは3.5以上であればよいが、エポキシ樹脂との反応の抑制とともに、可撓性の経時的安定性及びフラックス機能の発現の観点から、3.5以上7.0以下が好ましく、4.0以上6.0以下がより好ましい。なお、カルボキシル基が2つ以上ある場合は第一解離定数pKaを酸解離定数とし、この第一解離定数pKaが上記範囲にあるものが好ましい。また、pKaは、カルボキシル基含有化合物の希薄水溶液条件下で、酸解離定数Ka=[H][B]/[BH]を測定し、pKa=−logKaにより求められる。ここでBHは、カルボキシル基含有化合物を表し、Bはカルボキシル基含有化合物の共役塩基を表す。pKaの測定方法は、pHメーターを用いて水素イオン濃度を測定し、該当物質の濃度と水素イオン濃度から算出することができる。
【0047】
上記カルボキシル基含有化合物としては、分子内にアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基及びアルキルアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有する芳香族カルボン酸(以下、単に「芳香族カルボン酸」と称する場合がある。)、並びに分子内にカルボキシル基を1つ以上有する炭素数が8以上の脂肪族カルボン酸(以下、単に「脂肪族カルボン酸」と称する場合がある。)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
(芳香族カルボン酸)
上記芳香族カルボン酸は、分子内にアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基及びアルキルアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有していれば特に限定されない。芳香族カルボン酸の上記置換基を除く母体骨格としては特に限定されず、安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸は、これらの母体骨格の芳香環上に上記置換基を有している。このうち、シート状封止組成物中での安定性やエポキシ樹脂との低反応性の観点から、芳香族カルボン酸の母体骨格としては安息香酸が好ましい。
【0049】
上記芳香族カルボン酸は、具体的に2位、4位及び6位のうちの少なくとも1つの水素原子が独立してアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基又はアルキルアミノ基で置換された安息香酸誘導体(以下、単に「安息香酸誘導体」と称する場合がある。)であることが好ましい。このような上記安息香酸誘導体では、所定の置換基が、安息香酸の2位、4位及び6位のうちの少なくとも1つの位置で単独で又は組み合わせて存在する。上記安息香酸誘導体の置換基の具体的な置換位置としては、2位、4位、2位と4位、2位と6位、2位と4位と6位が挙げられる。このうち、エポキシ樹脂との反応を抑制して、可撓性の経時的安定性を維持するとともに、フラックス機能を特に効率的に発現させるためには、2位又は4位に置換基を有することが好ましい。
【0050】
上記芳香族カルボン酸における上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基を挙げることができる。この中でも、pKaの調整やフラックス機能発現性の点から、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0051】
上記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキサノキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられるが、この中でも、上記と同様の点から、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がさらに好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0052】
上記アリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、p−トリルオキシ基等が挙げられ、上記と同様の観点からフェノキシ基が好ましい。
【0053】
上記アリール基としては、例えばフェニル基、トルイル基、ベンジル基、メチルベンジル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、上記同様の観点からフェニル基が好ましい。
【0054】
上記アルキルアミノ基としては、炭素数1〜10のアルキル基を置換基として有するアミノ基を好適に用いることができる。アルキルアミノ基の具体例として、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等が挙げられ、上記と同様の観点から、ジメチルアミノ基が好ましい。
【0055】
上記アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基又はアルキルアミノ基では、1つ以上の水素原子がそれぞれ独立して置換されていてもよい。そのような付加的な置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等の炭素数2〜5のシアノアルキル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、メトキシカルボニルメトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基、t−ブトキシカルボニルメトキシ基等の炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルコキシ基、フッ素、塩素等のハロゲン原子、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等のフルオロアルキル基等が挙げられる。
【0056】
具体的な置換位置と置換基との組み合わせを有する安息香酸誘導体としては、2−アリールオキシ安息香酸、2−アリール安息香酸、4−アルコキシ安息香酸、4−アルキルアミノ安息香酸が好ましい。
【0057】
上記安息香酸誘導体は、ヒドロキシル基を含まないことが好ましい。代表的な熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂との反応点となり得るヒドロキシル基を排除することで、アンダーフィル材2は可撓性を経時的に維持し、フラックス機能を好適に発揮することができる。
【0058】
(脂肪族カルボン酸)
上記脂肪族カルボン酸としては特に限定されず、鎖状脂肪族(モノ)カルボン酸、脂環式(モノ)カルボン酸、鎖状脂肪族多価カルボン酸、又は脂環式多価カルボン酸のいずれであってもよい。また、それぞれの態様を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
鎖状脂肪族(モノ)カルボン酸としては、例えばオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0060】
脂環式(モノ)カルボン酸としては、シクロヘプタンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸等の単環式カルボン酸、ノルボルナンカルボン酸、トリシクロデカンカルボン酸、テトラシクロドデカンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、メチルアダマンタンカルボン酸、エチルアダマンタンカルボン酸、ブチルアダマンタンカルボン酸等の炭素数8〜20の多環式又は有橋脂環式カルボン酸等が挙げられる。
【0061】
上記鎖状脂肪族多価カルボン酸としては、上記鎖状脂肪族(モノ)カルボン酸にさらにカルボキシル基が1つ以上付加されたカルボン酸が挙げられ、この中でも鎖状脂肪族ジカルボン酸がエポキシ樹脂との反応性が低く、フラックス機能を好適に発揮する点で好ましい。鎖状脂肪族ジカルボン酸としては、例えばオクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸等が挙げられ、この中でも炭素数が8〜12の鎖状脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0062】
上記脂環式多価カルボン酸としては、上記脂環式(モノ)カルボン酸にさらにカルボキシル基が1つ以上付加されたカルボン酸が挙げられ、この中でも脂環式ジカルボン酸がエポキシ樹脂に対する低反応性及びフラックス機能発現性の点で好ましい。脂環式ジカルボン酸としては、例えばシクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸等の単環式ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の多環式又は有橋脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
【0063】
以上の炭素数8以上の脂肪族カルボン酸においても、1つ以上の水素原子が上記付加的な置換基により置換されていてもよい。
【0064】
フラックス剤としてのカルボキシル基含有化合物の添加量は上記フラックス機能が発揮される程度であればよく、アンダーフィル材2中の有機樹脂成分の合計重量に対して0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。
【0065】
本実施形態では、アンダーフィル材2は、必要に応じて着色しても良い。アンダーフィル材2において、着色により呈している色としては特に制限されないが、例えば、黒色、青色、赤色、緑色などが好ましい。着色に際しては、顔料、染料などの公知の着色剤の中から適宜選択して用いることができる。
【0066】
また、アンダーフィル材2には、無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、貯蔵弾性率の調節等を可能にする。
【0067】
前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田等の金属、又は合金類、その他カーボン等からなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリカが好適に用いられる。
【0068】
無機充填剤の平均粒径は特に限定されないものの、0.005〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.01〜5μmの範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは0.05〜2.0μmである。無機充填剤の平均粒径が0.005μm未満であると、アンダーフィル材の可撓性が低下する原因となる。その一方、前記平均粒径が10μmを超えると、アンダーフィル材が封止するギャップに対して粒径が大きく封止性が低下する要因となる。なお、本発明においては、平均粒径が相互に異なる無機充填剤同士を組み合わせて使用してもよい。また、平均粒径は、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0069】
前記無機充填剤の配合量は、アンダーフィル材の有機樹脂成分100重量部に対し10〜400重量部であることが好ましく、50〜250重量部がより好ましい。無機充填剤の配合量が10重量部未満であると、貯蔵弾性率が低下しパッケージの応力信頼性が大きく損なわれる場合がある。一方、400重量部を超えると、アンダーフィル材2の流動性が低下し基板や半導体素子の凹凸に十分に埋まり込まずにボイドやクラックの原因となる場合がある。
【0070】
なお、アンダーフィル材2には、前記無機充填剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0071】
さらに、熱硬化前の上記アンダーフィル材2の温度23℃、湿度70%の条件下における吸水率は、1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。アンダーフィル材2が上記のような吸水率を有することにより、アンダーフィル材2への水分の吸収が抑制され、半導体素子5の実装時のボイドの発生をより効率的に抑制することができる。なお、上記吸水率の下限は小さいほど好ましく、実質的に0重量%が好ましく、0重量%であることがより好ましい。
【0072】
アンダーフィル材2の厚さ(複層の場合は総厚)は特に限定されないものの、アンダーフィル材2の強度や半導体素子5と被着体6との間の空間の充填性を考慮すると10μm以上100μm以下程度であってもよい。なお、アンダーフィル材2の厚さは、半導体素子5と被着体6との間のギャップや突起電極の高さを考慮して適宜設定すればよい。
【0073】
封止シート10のアンダーフィル材2は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでアンダーフィル材2を保護する保護材としての機能を有している。セパレータは封止シートのアンダーフィル材2を被着体6に貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
【0074】
(封止シートの製造方法)
まず、基材1は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0075】
アンダーフィル材2は、例えば、以下のようにして作製される。まず、アンダーフィル材2の形成材料である接着剤組成物を調製する。当該接着剤組成物には、アンダーフィル材の項で説明した通り、熱可塑性成分や熱硬化性樹脂、各種の添加剤等が配合されている。
【0076】
次に、調製した接着剤組成物を基材セパレータ上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ、アンダーフィル材を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に接着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、上記乾燥条件で塗布膜を乾燥させてアンダーフィル材を形成してもよい。その後、基材セパレータ上にアンダーフィル材をセパレータと共に貼り合わせる。
【0077】
続いて、アンダーフィル材2からセパレータを剥離し、アンダーフィル材と基材とを貼り合わせる。貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されず、例えば30〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。また、線圧は特に限定されず、例えば0.98〜196N/cmが好ましく、9.8〜98N/cmがより好ましい。次に、アンダーフィル材上の基材セパレータを剥離し、本実施形態に係る封止シートが得られる。
【0078】
[貼合せ工程]
貼合せ工程では、被着体6上の前記半導体素子との接続位置を覆うように前記封止シートのアンダーフィル材2を前記被着体6に貼り合わせる(図2A参照)。まず、封止シート10のアンダーフィル材2上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離し、前記被着体6の導電材7が形成された回路面とアンダーフィル材2とを対向させ、前記アンダーフィル材2と前記被着体6とを圧着により貼り合わせる。
【0079】
被着体6としては、リードフレームや回路基板(配線回路基板など)等の各種基板、他の半導体素子を用いることができる。基板の材質としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プラスチック基板が挙げられる。プラスチック基板としては、例えば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板、ガラスエポキシ基板等が挙げられる。
【0080】
本実施形態では、被着体とアンダーフィル材との貼り合わせを熱圧着により行うことが好ましい。熱圧着は通常、圧着ロール等の公知の押圧手段により行うことができる。押圧条件としては0.2MPa以上であればよく、好ましくは0.2MPa以上1MPa以下であり、より好ましくは0.4Pa以上0.8Pa以下である。また、熱圧着温度の条件としては40℃以上であればよく、好ましくは40℃以上120℃以下、より好ましくは60℃以上100℃以下である。また、圧着を減圧下で行ってもよい。減圧条件としては10000Pa以下であればよく、好ましくは5000Pa以下、より好ましくは1000Pa以下である。なお、減圧条件の下限は特に限定されないものの、生産性の点から10Pa以上であればよい。所定の熱圧着条件下で貼り合わせを行うことにより、アンダーフィル材が被着体表面の凹凸に十分追従することができ、被着体とアンダーフィル材との界面での気泡を大幅に低減して密着性を高めることができる。これにより上記界面でのボイドの発生を抑制することができ、その結果、半導体素子と被着体との接続信頼性に優れる半導体装置を効率良く製造することができる。
【0081】
また、この貼合せ工程を完了した段階で、被着体6に封止シート10が貼り付けられた封止シート付き基板20が得られる。封止シート付き基板20では、基材1がアンダーフィル材2の保護材として機能するので、封止シート付き基板20を、例えば生産調整のために半導体装置の製造のための中間品として待機させておくことが可能となる。
【0082】
[剥離工程]
剥離工程では、前記被着体6に貼り合わせたアンダーフィル材2から前記基材1を剥離する(図2B参照)。基材1の剥離は人の手によってもよく、機械的に剥離してもよい。上述のように、アンダーフィル材2の基材に対する90°剥離力を所定範囲としているので、アンダーフィル材2の破断や変形、アンダーフィル材2の被着体6からの剥離を生じさせることなくスムーズに基材1を剥離することができる。
【0083】
[接続工程]
接続工程では、前記被着体6と前記半導体素子5の間の空間を前記アンダーフィル材2で充填しつつ前記半導体素子5に形成された突起電極4を介して前記半導体素子5と前記被着体6とを電気的に接続する(図2C参照)。
【0084】
(半導体素子)
半導体素子5としては、一方の回路面に複数の突起電極4が形成されていてもよく(図2C参照)、半導体素子5の両方の回路面に突起電極が形成されていてもよい(図示せず)。バンプや導電材等の突起電極の材質としては、特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。突起電極の高さも用途に応じて定められ、一般的には15〜100μm程度である。もちろん、半導体素子5における個々の突起電極の高さは同一でも異なっていてもよい。
【0085】
半導体素子の両面に突起電極が形成されている場合、突起電極同士は電気的に接続されていてもよく、接続されていなくてもよい。突起電極同士の電気的接続には、TSV(Through Silicon Via)形式と呼ばれるビアを介しての接続等が挙げられる。
【0086】
なお、半導体素子5は公知の方法により作成することができ、代表的には、所定の回路及び突起電極が形成された半導体ウェハをダイシングして個片化し、これをピックアップすることで個々の半導体素子を得ることができる。
【0087】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、アンダーフィル材の厚さとしては、半導体素子表面に形成された突起電極の高さX(μm)と前記アンダーフィル材の厚さY(μm)とが、下記の関係を満たすことが好ましい。
0.5≦Y/X≦2
【0088】
前記突起電極の高さX(μm)と前記アンダーフィル材の厚さY(μm)とが上記関係を満たすことにより、半導体素子と被着体との間の空間を十分に充填することができると共に、当該空間からのアンダーフィル材の過剰のはみ出しを防止することができ、アンダーフィル材による半導体素子の汚染等を防止することができる。なお、各突起電極の高さが異なる場合は、最も高い突起電極の高さを基準とする。
【0089】
(電気的接続)
半導体素子5と被着体6との電気的接続の手順としては、半導体素子5を、半導体素子5の回路面が被着体6と対向する形態で、被着体6に常法に従い固定させる。例えば、半導体素子5に形成されているバンプ(突起電極)4を、被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材7(半田など)に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、半導体素子5と被着体6との電気的接続を確保し、半導体素子5を被着体6に固定させることができる。被着体6の回路面にはアンダーフィル材2が貼り付けられているので、半導体素子5と被着体6との電気的接続と同時に、半導体素子5と被着体6との間の空間がアンダーフィル材2により充填されることになる。
【0090】
一般的に、接続工程における加熱条件としては100〜300℃であり、加圧条件としては0.5〜500Nである。また、接続工程での加熱加圧処理を多段階で行ってもよい。例えば、150℃、100Nで10秒間処理した後、300℃、100〜200Nで10秒間処理するという手順を採用することができる。多段階で加熱加圧処理を行うことにより、突起電極とパッド間の樹脂を効率よく除去し、より良好な金属間接合を得ることができる。
【0091】
なお、接続工程では、突起電極及び導電材の一方又は両方を溶融させて、半導体素子5の回路面のバンプ4と、被着体6の表面の導電材7とを接続させているが、このバンプ4及び導電材7の溶融時の温度としては、通常、260℃程度(例えば、250℃〜300℃)となっている。本実施形態に係る封止シートは、アンダーフィル材2をエポキシ樹脂等により形成することにより、この接続工程における高温にも耐えられる耐熱性を有するものとすることができる。
【0092】
以上の手順により、被着体6上に半導体素子5が実装された半導体装置30を作製することができる。半導体装置30の製造に上記所定の特性を有するアンダーフィル材を用いているので、被着体とアンダーフィル材との間及びアンダーフィル材と半導体素子との間でのボイドの発生を防止することができ、高信頼性の半導体装置を得ることができる。
【0093】
[アンダーフィル材硬化工程]
なお、接続工程における加熱処理によりアンダーフィル材2が未硬化の場合、アンダーフィル材2を加熱により硬化させる。これにより、半導体素子5の回路面を保護することができるとともに、半導体素子5と被着体6との間の接続信頼性を確保することができる。加熱条件としては特に限定されず、150〜200℃程度で10〜120分加熱すればよい。なお、上記接続工程にて加えられる熱によりアンダーフィル材が硬化する場合は、本工程を省略することができる。
【0094】
[封止工程]
次に、実装された半導体素子5を備える半導体装置30全体を保護するために封止工程を行ってもよい。封止工程は、封止樹脂を用いて行われる。このときの封止条件としては特に限定されないが、通常、175℃で60秒間〜90秒間の加熱を行うことにより、封止樹脂の熱硬化が行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165℃〜185℃で、数分間キュアすることができる。
【0095】
前記封止樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁樹脂)であれば特に制限されず、公知の封止樹脂等の封止材から適宜選択して用いることができるが、弾性を有する絶縁樹脂がより好ましい。封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記に例示のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物による封止樹脂としては、樹脂成分として、エポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂など)や、熱可塑性樹脂などが含まれていてもよい。なお、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤としても利用することができ、このようなフェノール樹脂としては、前記に例示のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0096】
[半導体装置]
次に、当該封止シートを用いて得られる半導体装置について図面を参照しつつ説明する(図2C参照)。本実施形態に係る半導体装置30では、半導体素子5と被着体6とが、半導体素子5上に形成されたバンプ(突起電極)4及び被着体6上に設けられた導電材7を介して電気的に接続されている。また、半導体素子5と被着体6との間には、その空間を充填するようにアンダーフィル材2が配置されている。半導体装置30は、封止シート10を用いる上記製造方法にて得られるので、半導体素子5とアンダーフィル材2との間においてボイドの発生が抑制されている。従って、半導体素子5の表面保護、及び半導体素子5と被着体6との間の空間の充填が十分なレベルとなり、半導体装置30として高い信頼性を発揮することができる。
【実施例】
【0097】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、部とあるのは、重量部を意味する。
【0098】
[実施例1〜4及び比較例1〜3]
(封止シートの作製)
以下の成分を表1に示す割合でメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が23.6〜60.6重量%となる接着剤組成物の溶液を調製した。
【0099】
エポキシ樹脂1(25℃で液状):商品名「エピコート828」、JER株式会社製
エポキシ樹脂2:商品名「エピコート1004」、JER株式会社製
フェノール樹脂1:商品名「ミレックスXLC−4L」三井化学株式会社製
フェノール樹脂2(25℃で液状):商品名「MEH−8005」、明和化成株式会社製
エラストマー1:アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(商品名「パラクロンW−197CM」、根上工業株式会社製)
エラストマー2:アクリル酸ブチルーアクリロニトリルを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(商品名「SG−P3」、長瀬ケムテックス株式会社製)
フィラー:球状シリカ(商品名「SO−25R」、株式会社アドマテックス製)
有機酸:「2−フェニル安息香酸」、(東京化成株式会社製
硬化剤:イミダゾール触媒(商品名「2MA−OK」、四国化成株式会社製)
【0100】
各接着剤組成物の溶液を、基材としてのダイヤホイルMRA50(三菱樹脂製)上に塗布し、130℃で2分間乾燥して厚さ30μmのアンダーフィル材A〜Gを形成することにより、実施例及び比較例の封止シートを作製した。
【0101】
[評価]
実施例及び比較例の封止シート(アンダーフィル材の熱硬化前)を用いて以下の評価を行った。各結果を表1に示す。
【0102】
(90°剥離力の測定)
アンダーフィル材を基材から剥離する際の剥離力(mN/20mm)を測定した。具体的には、封止シートを長さ100mm×幅20mmに切りだして試験片とした。試験片を引張試験機(商品名「オートグラフAGS−H」、(株)島津製作所製)にセットし、温度25±2℃、剥離角度90°、剥離速度300mm/min、チャック間距離100mmの条件下でT型剥離試験(JIS K6854−3)を行った。
【0103】
(破断伸度の測定)
ロールラミネーター(装置名「MRK−600」、株式会社エム・シー・ケー製)を用いて、70℃、0.2MPaでアンダーフィル材を積層することによって厚さ120μmの測定用アンダーフィル材を得た。測定用アンダーフィル材を幅10mm×長さ30mmに切断して試験片とした後、引張試験機として「オートグラフASG−50D型」(島津製作所製)を用い、引張速度50mm/min、チャック間距離10mm、25℃で引張試験を行った。試験前のチャック間距離に対する試験片が破断した時のチャック間距離の比を求めて破断伸度(%)とした。
【0104】
(最低溶融粘度の測定)
アンダーフィル材の最低溶融粘度の測定は、レオメーター(HAAKE社製、RS−1)を用いて、パラレルプレート法により測定した値である。より詳細には、ギャップ100μm、回転プレート直径20mm、回転速度5s−1、昇温速度10℃/分の条件にて、40℃から200℃の範囲で溶融粘度を測定し、その際に得られる40℃以上100℃未満の範囲、及び100℃以上200℃以下の範囲での溶融粘度の最低値をそれぞれの温度範囲での最低溶融粘度とした。
【0105】
(アンダーフィル材の作業性及び基材に対する剥離性の評価)
封止シートを長さ7.5mm×幅7.5mmに切り出し、アンダーフィル材側をBGA基板に対向させて両者を貼り合わせた。貼り合わせは、70℃、1000Paの減圧下、ロールラミネーターを用いて線圧0.2MPaにて行った。その後、アンダーフィル材から基材を剥離して、アンダーフィル材付き基板を作製した。アンダーフィル材の作業性に関し、アンダーフィル材の切り出しから貼り合わせまでを行う際、問題なく行えた場合を「○」、アンダーフィル材の変形や破断、アンダーフィル材の基材からの剥離等が生じた場合を「×」として評価した。また、基材に対する剥離性に関し、アンダーフィル材から基材を剥離する際に、問題なく基材を剥離可能であった場合を「○」、アンダーフィル材が基材に移行したり、アンダーフィル材が基板から剥離したりした場合を「×」として評価した。
【0106】
(実装時のボイドの発生の評価)
下記の熱圧着条件により、7.3mm角、厚さ500μmの半導体チップのバンプ形成面とBGA基板とを対向させた状態で半導体チップをBGA基板に熱圧着して半導体チップの実装を行った。これにより、半導体チップがBGA基板に実装された半導体装置を得た。
【0107】
<熱圧着条件>
ピックアップ装置:商品名「FCB−3」パナソニック製
加熱温度:260℃
荷重:30N
保持時間:10秒
【0108】
ボイドの発生の評価は、上記手順で作製した半導体装置の半導体チップとアンダーフィル材との間で切断及び研磨し、研磨面を画像認識装置(浜松ホトニクス社製、商品名「C9597−11」、1000 倍)を用いて観察し、アンダーフィル材の面積に対するボイド部分の合計面積の割合を算出することで行った。研磨面の観察像におけるアンダーフィル材の面積に対して、ボイド部分の合計面積が0〜5%の場合を「○」、5%超の場合を「×」として評価した。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例のアンダーフィル材では、アンダーフィル材の作業性及び基材からの剥離性が良好であり、実装時のボイドも十分抑制されていた。一方、比較例1のアンダーフィル材では破断伸度が小さすぎ、作業時に破断が生じた。比較例2のアンダーフィル材では最低溶融粘度が高すぎたことから、作業時に基材の剥離が生じたことに加え、半導体チップの実装時には半導体チップの凹凸へのアンダーフィル材の埋まり込み性が十分でなくボイドが発生していた。さらに、比較例3のアンダーフィル材では最低溶融粘度が低すぎて粘着性が高くなったことから、作業性が低下したことに加え、実装時にはアンダーフィル材からのアウトガス成分によりボイドが発生していた。
【符号の説明】
【0111】
1 基材
2 アンダーフィル材
3 半導体ウェハ
4 突起電極
5 半導体素子
6 被着体
7 導電材
10 封止シート
20 封止シート付き基板
30 半導体装置
図1
図2A
図2B
図2C