【文献】
Biochem Biophys Res Commun,2011年 1月28日,vol. 404, no. 4,page. 991-996
【文献】
EMBO J,英国,2012年11月14日,vol.31, no.22,page. 4258-4275
【文献】
Molecular Biology of the Cell,2003年,vol.14,page. 274-287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
免疫原として、CGGRGRGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)を動物(ただし、ヒトを除く。)に投与する工程と、
前記動物から抗体産生細胞を回収する工程と、
前記抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマを調製する工程と、
前記ハイブリドーマが産生する抗体と、前記アミノ酸配列からなるペプチドを含む組成物とを接触させ、該アミノ酸配列からなるペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程と、
前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体を回収する工程とを含む方法により得られ、
前記選択されたハイブリドーマが、受託番号NITE P−01591のハイブリドーマであり、
前記アミノ酸配列からなるペプチドに結合し、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを認識し、アルギニン残基がメチル化されていないTLS及びアルギニン残基が対称ジメチル化されたTLSは認識しないことを特徴とする抗TLSモノクローナル抗体。
免疫原として、CGGRGRGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)を動物(ただし、ヒトを除く。)に投与する工程と、
前記動物から抗体産生細胞を回収する工程と、
前記抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマを調製する工程と、
前記ハイブリドーマが産生する抗体と、前記アミノ酸配列からなるペプチドを含む組成物とを接触させ、該アミノ酸配列からなるペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程と、
前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体を回収する工程とを含み、
前記回収された抗体が、前記アミノ酸配列からなるペプチドに結合し、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを認識し、アルギニン残基がメチル化されていないTLS及びアルギニン残基が対称ジメチル化されたTLSは認識しないことを特徴とする抗TLSモノクローナル抗体の製造方法。
免疫原として、CGGRGRGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)を動物(ただし、ヒトを除く。)に投与する工程と、
前記動物から抗体産生細胞を回収する工程と、
前記抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマを調製する工程と、
前記ハイブリドーマが産生する抗体と、前記アミノ酸配列からなるペプチドを含む組成物とを接触させ、該アミノ酸配列からなるペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程とを含み、
前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体が、前記アミノ酸配列からなるペプチドに結合し、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを認識し、アルギニン残基がメチル化されていないTLS及びアルギニン残基が対称ジメチル化されたTLSは認識しないことを特徴とするハイブリドーマの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(抗TLSモノクローナル抗体及びその製造方法、並びにハイブリドーマ及びその製造方法)
本発明の抗TLSモノクローナル抗体は、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを認識する抗体であり、本発明の抗TLSモノクローナル抗体の製造方法により、好適に製造することができる。
本発明のハイブリドーマは、前記アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを認識する抗TLSモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであり、本発明のハイブリドーマの製造方法により、好適に製造することができる。
以下、抗TLSモノクローナル抗体の製造方法、及びハイブリドーマの製造方法の説明と併せて、本発明の抗TLSモノクローナル抗体、及びハイブリドーマを説明する。
【0011】
前記抗TLSモノクローナル抗体の製造方法は、免疫原を投与する免疫原投与工程と、抗体産生細胞を回収する抗体産生細胞回収工程と、ハイブリドーマを調製するハイブリドーマ調製工程と、ハイブリドーマを選択するハイブリドーマ選択工程と、抗体を回収する抗体回収工程とを含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0012】
前記ハイブリドーマの製造方法は、免疫原を投与する免疫原投与工程と、抗体産生細胞を回収する抗体産生細胞回収工程と、ハイブリドーマを調製するハイブリドーマ調製工程と、ハイブリドーマを選択するハイブリドーマ選択工程とを含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記ハイブリドーマの製造方法における、前記免疫原投与工程、前記抗体産生細胞回収工程、前記ハイブリドーマ調製工程、及び前記ハイブリドーマ選択工程は、前記抗TLSモノクローナル抗体の製造方法と同様に行うことができる。
【0013】
<免疫原投与工程>
前記免疫原投与工程は、免疫原として、CGGRGRGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)を動物に投与する工程である。
【0014】
<<免疫原>>
前記CGG
RG
RGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)は、TLSの213番目から222番目のアミノ酸に相当する。前記配列番号1中、下線部で示されたアルギニン残基は、内在的にジメチル化されることが報告されている。なお、前記TLSのアミノ酸配列情報は、GenBankから、アクセッション番号NP_004951で入手することができる。
【0015】
アルギニン残基のジメチル化の流れを
図1に示す。
タンパク質中のアルギニン残基のメチル化は、タンパク質アルギニンメチル化酵素(protein arginine methyltransferase、以下、「タンパク質アルギニンメチル基転移酵素」、「PRMT」と称することがある)が、S−アデノシルメチオニン(以下、「SAM」、「AdoMet」と称することがある)をメチル基供与体として、前記アルギニン残基へのメチル基の導入を触媒することにより行われる。
ここで、前記タンパク質アルギニンメチル化酵素には、タイプIと、タイプIIとが存在する。前記タイプIとしては、PRMT1が挙げられ、前記タイプIIとしては、PRMT5が挙げられる。
前記タイプIのタンパク質アルギニンメチル化酵素によると、前記アルギニン残基は、非対称ジメチル化され、非対称性ジメチル化アルギニンとなる。一方、前記タイプIIのタンパク質アルギニンメチル化酵素によると、前記アルギニン残基は、対称ジメチル化され、対称性ジメチル化アルギニンとなる。
【0016】
前記CGG
RG
RGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学合成により調製することができる。
【0017】
<<動物>>
前記動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、マウスが好ましい。
前記マウスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、BALB/cマウスなどが挙げられる。
【0018】
<<投与>>
前記免疫原を投与する方法(動物を免疫する方法)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アジュバントとともに投与することが、前記マウスの免疫原への免疫応答性を高めることができる点で、好ましい。
前記アジュバントとしては、特に制限はなく、公知のアジュバントを適宜選択することができ、例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバントなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記免疫原の投与は、原則1回であるが、複数回であってもよい。前記免疫原の投与を複数回行う場合に使用するアジュバントは、各回同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記免疫原の投与を複数回行う場合の投与間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記免疫原の投与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記アジュバントの投与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記免疫原及びアジュバントの投与部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、尾根部に投与することが好ましい。
【0019】
<抗体産生細胞回収工程>
前記抗体産生細胞回収工程は、前記動物から抗体産生細胞を回収する工程である。
【0020】
<<抗体産生細胞回収>>
前記抗体産生細胞を回収する時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、最後の免疫原の投与から17日間後などが挙げられる。
前記抗体産生細胞の回収方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マウスの腸骨リンパ節を取り出し、細胞をたたき出し、ステンレスのワイヤーメッシュを通して、回収する方法などが挙げられる。
【0021】
<ハイブリドーマ調製工程>
前記ハイブリドーマ調製工程は、前記抗体産生細胞とミエローマとを細胞融合し、ハイブリドーマを調製する工程である。
【0022】
<<ミエローマ>>
前記ミエローマの由来としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、マウス由来のものが好ましい。
前記マウス由来のミエローマとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、P3U1、P3X63−Ag8.653、SP2/O−Ag14などが挙げられる。
【0023】
<<細胞融合>>
前記細胞融合の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールを用いる方法(PEG法)、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法などが挙げられる。
前記細胞融合された細胞の選択方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、選択培地として、ヒポキサン−アミノプテリン−チミジン培地(HAT培地)を用いて細胞を培養する方法などが挙げられる。前記HAT培地を用いることにより、親細胞株が死滅し、細胞融合された細胞のみが増殖する。
【0024】
<ハイブリドーマ選択工程>
前記ハイブリドーマ選択工程は、前記ハイブリドーマが産生する抗体と、前記CGG
RG
RGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)を含む組成物とを接触させ、該アミノ酸配列からなるペプチドを含む組成物に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程である。
【0025】
<<選択>>
前記ハイブリドーマ選択工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ELISA法により選択する方法、ウエスタンブロット法により選択する方法などが挙げられる。これらは、単独で行なってもよいし、併用してもよい。
前記選択の回数としては、特に制限はなく、1回であってもよいし、複数回であってもよい。
【0026】
前記CGG
RG
RGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)を含む組成物(以下、「ペプチド組成物」と称することがある)は、前記CGG
RG
RGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、前記配列番号1中、Rは、非対称ジメチル化されたアルギニン残基である。)を含み、必要に応じてその他の構成を含む。
前記ペプチド組成物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記CGG
RG
RGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、前記CGG
RG
RGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドとGSTタンパク質とを融合させたペプチドなどが挙げられる。
【0027】
前記ELISA法としては、例えば、前記ペプチド組成物として、前記CGG
RG
RGGSG(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを用いた場合には、例えば、前記ペプチドを感作用プレートに固相化し、次いで、前記ハイブリドーマが産生する抗体が含まれる培養上清を加え反応させた後、酵素標識抗マウスIgGを加えて反応させ、次いで、酵素基質(発色剤)を加え、発色させた後、波長492nmの吸光度を測定する方法が挙げられる。
ここで、前記吸光度が高いものを選択することで、よりアルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSに特異的な抗体を産生しているハイブリドーマを選択することができる。
【0028】
前記ウエスタンブロット法としては、例えば、前記TLSを発現する細胞の溶解液を調製し、該溶解液をS−アデノシルメチオニンの存在下でPRMT1にて処理し、前記処理液をSDS−PAGEにて分離後、一次抗体として、前記ハイブリドーマが産生する抗体を用い、二次抗体として、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識された抗体を用い、発光シグナルを検出することにより行う方法が挙げられる。
前記ELISA法と組み合わせることにより、よりアルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSに特異的な抗体を産生しているハイブリドーマを選択することができる。
【0029】
前記選択したハイブリドーマを分離する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、限界希釈法、軟寒天法、蛍光励起セルソーターを用いる方法などが挙げられる。
【0030】
−ハイブリドーマ−
本発明のハイブリドーマは、上述した工程により得ることができる。
前記本発明のハイブリドーマであるハイブリドーマ2B12株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、受領番号NITE AP−01591として、2013年4月10日に寄託申請し
、受託番号NITE P−01591として受託された(受領日は2013年4月11日である)。
【0031】
<抗体回収工程>
前記抗体回収工程は、前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体を回収する工程である。
【0032】
<<抗体回収>>
前記選択されたハイブリドーマが産生する抗体を回収する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイブリドーマの培養上清から回収する方法、ハイブリドーマを移植したマウスの腹水から回収する方法などが挙げられる。
【0033】
前記ハイブリドーマの培養上清から回収する方法における前記ハイブリドーマの培養方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、静置培養、高密度培養、スピナーフラスコによる培養などが挙げられる。前記各培養の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ハイブリドーマを移植したマウスの腹水から回収する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、プリスタンなどの免疫抑制作用を有する物質を投与したマウスの腹腔内へ前記ハイブリドーマを移植し、約1週間後から3週間後に腹水を採取する方法などが挙げられる。
【0034】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製工程などが挙げられる。
【0035】
<<精製工程>>
前記精製工程は、前記回収工程により回収された抗体を精製する工程である。
前記精製の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ProteinAを充填したカラムに培養上清をアプライし、精製する方法などが挙げられる。
【0036】
−抗TLSモノクローナル抗体−
本発明の抗TLSモノクローナル抗体は、上述のように、受
託番号NITE
P−01591のハイブリドーマが産生し、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを認識する抗体である。
本発明の抗TLSモノクローナル抗体は、前記免疫原を用いているため、前記TLSの216番目及び218番目のアルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを特異的に認識すると考えられる。
【0037】
前記抗TLSモノクローナル抗体が、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを特異的に認識するか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、in vitroメチル化アッセイを行い、ウエスタンブロット法により確認する方法などが挙げられる。
【0038】
前記in vitroメチル化アッセイは、例えば、以下のようにして行うことができる。
前記TLSと、前記アルギニンメチル化酵素(PRMT1又はPRMT5)とをS−アデノシルメチオニンの存在下、メチレーションバッファー(50mM HEPES(pH8.0)、10mM NaCl、1mM DTT、1mM PMSF)中で反応させる。前記反応液をSDS−PAGEにより分離した後、一次抗体として、前記抗TLSモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロットを行う。
前記ウエスタンブロットの結果、前記アルギニンメチル化酵素として、PRMT1を用いた場合にのみ、前記TLSが検出された場合には、前記抗TLSモノクローナル抗体は、前記アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを特異的に認識していると判断することができる。
前記in vitroメチル化アッセイにおけるTLSの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、GSTタンパク質と融合させた融合タンパク質の態様などが挙げられる。
前記in vitroメチル化アッセイの反応条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、30℃で60分間とするなどが挙げられる。
【0039】
(抗TLSモノクローナル抗体含有組成物)
前記抗TLSモノクローナル抗体含有組成物は、前記抗TLSモノクローナル抗体を含み、必要に応じて更にその他の構成を含む。
前記抗TLSモノクローナル抗体含有組成物は、前記抗TLSモノクローナル抗体が、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを特異的に認識できるので、前記TLSのメチル化状態を調べるための試薬として好適に用いることができる。また、前記TLSは、前記ALSの原因遺伝子の1つであるので、前記抗TLSモノクローナル抗体含有組成物は、前記ALSのバイオマーカーとしても好適に用いることができる。
【0040】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の試薬又は試薬キットに用いられている構成を目的に応じて適宜選択することができる。前記公知の試薬又は試薬キットに用いられている構成としては、例えば、標識、緩衝液、プレート、反応停止液などが挙げられる。前記標識の具体例としては、酵素とその発色基質、放射性同位元素、発光物質、蛍光物質、着色物質などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、製造例、試験例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は、以下の製造例、試験例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(製造例1:免疫原の調製)
免疫原として、以下の3種類のペプチドを化学合成により製造した(AnyGen社製)。
免疫原1:CGG
RG
RGGSG(配列番号1)
ただし、前記配列番号1中、下線部で示された「R」は、非対称ジメチル化されたアルギニン残基であり、左から順に、TLSにおける216番目、218番目のアルギニン残基に相当する。前記配列番号1で表されるペプチドは、TLSの213番目から222番目の部分に相当する。
免疫原2:CGYEP
RGRGG(配列番号2)
ただし、前記配列番号2中、下線部で示された「R」は、非対称ジメチル化されたアルギニン残基であり、TLSにおける242番目のアルギニン残基に相当する。前記配列番号2で表されるペプチドは、TLSの237番目から246番目の部分に相当する。
免疫原3:CPMG
RGGYGG(配列番号3)
ただし、前記配列番号3中、下線部で示された「R」は、非対称ジメチル化されたアルギニン残基であり、TLSにおける394番目のアルギニン残基に相当する。前記配列番号3で表されるペプチドは、TLSの390番目から399番目の部分に相当する。
【0043】
(製造例2:ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の製造)
<免疫原投与工程>
免疫原として、前記免疫原1を用い、以下のようにしてマウスに免疫原を投与した。
前記免疫原1と、オボアルブミンとをガラスニードル中で混合して抗原エマルジョンを作製し、該抗原エマルジョンをBALB/cマウスの尾根部に注射した。
【0044】
<抗体産生細胞回収工程>
前記免疫原投与工程免疫原の投与から17日間後に、免疫したマウスの腸骨リンパ節を取り出し、以下のようにして細胞を回収した。
前記取り出したマウスの腸骨リンパ節を破砕し、ステンレスのワイヤーメッシュを通して、リンパ球細胞を回収した。
【0045】
<ハイブリドーマ調製工程>
前記抗体産生細胞回収工程で回収したリンパ球細胞と、ミエローマ細胞(P3U1)とを用い、以下のようにして細胞融合を行った。
前記リンパ球細胞と、前記ミエローマ細胞とを遠心管に入れ、混ぜ合わせた。前記混ぜ合わせた細胞を遠心して回収し、培地を除去した。そこに、予め温めておいたPEGを添加し、緩やかに震盪した。次いで、RPMI培地を加え、PEGを希釈した。その後、遠心して細胞を回収し、該細胞をHAT培地で96穴プレートにまいて培養した。
【0046】
<ハイブリドーマ選択工程>
前記細胞融合を行った細胞について、以下のようにして、ELISA法によるスクリーニング、及び単クローン化を行い、ハイブリドーマ2B12株を得た。
96穴プレートの各穴に抗原(前記免疫原1(配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド))を加え、室温で3時間、又は4℃で一晩反応させた。その後、各穴に前記細胞融合で得られたハイブリドーマの培養上清を加え、室温で3時間、又は4℃で一晩反応させた後、PBSで4回洗浄した。
次いで、西洋ワサビパーオキシターゼ標識された抗体(P0161、DAKO社製)を各穴に加え、室温で3時間、又は4℃で一晩反応させた後、西洋ワサビパーオキシターゼの基質O−フェニレンジアミン(161−11851、Wako社製)を各穴に加え、発色させた。前記発色は、波長492nmの吸光度を測定することにより確認した。前記発色が強かったハイブリドーマを選択し、以下のようにして単クローン化した。
前記ハイブリドーマの単クローン化は、限界希釈法により、以下のようにして行った。
前記選択されたハイブリドーマを96穴プレートの穴からはがして回収し、段階希釈した。次いで、1穴に1細胞だけ撒けた穴を記録し、数日後に抗体産生の有無を確認した。
【0047】
前記ハイブリドーマ2B12株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、受領番号NITE AP−01591として、2013年4月10日に寄託申請し
、受託番号NITE P−01591として受託された(受領日は2013年4月11日である)。
【0048】
<抗体回収工程>
前記ハイブリドーマ2B12株を以下のようにして培養した後、培養上清を回収し、抗体を回収した。
前記ハイブリドーマ2B12株は、10%牛胎児血清入りRPMI1640培地中で、5%二酸化炭素、37℃で、1×10
7細胞/mL程度になるまで培養し、3日ごとに継代培養した。なお、前記ハイブリドーマは、無血清培地での培養する馴化を行なうことも可能である。
【0049】
<精製工程>
前記培養上清に含まれる抗体を以下のようにして精製し、モノクローナル抗体1を得た。
回収した培養上清を遠心した後、Protein Aを充填したカラムに前記培養上清をアプライした。その後、結合バッファー(20mM リン酸ナトリウム(pH7.0))で洗浄し、次いで、溶出バッファー(0.1M クエン酸ナトリウム)で溶出した。
【0050】
(比較製造例1:ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の製造)
<免疫原投与工程>
前記製造例2において、前記免疫原1を用いた代わりに前記免疫原2を用いた以外は、前記製造例2と同様にして、マウスに免疫原を投与した。
【0051】
<抗体産生細胞回収工程>
前記製造例2と同様にして、細胞を回収した。
【0052】
<ハイブリドーマ調製工程>
前記製造例2と同様にして、細胞融合を行った。
【0053】
<ハイブリドーマ選択工程>
前記製造例2において、抗原として免疫原1(配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド)を用いた代わりに、免疫原2(配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド)を用いた以外は、前記製造例2と同様にして、ELISA法によるスクリーニング、及び単クローン化を行い、ハイブリドーマ4E5株を得た。
【0054】
<抗体回収工程>
前記製造例2において、前記ハイブリドーマ2B12株を用いた代わりに前記ハイブリドーマ4E5株を用いた以外は、前記製造例2と同様にして、抗体を回収した。
【0055】
<精製工程>
前記製造例2において、ハイブリドーマ2B12株の培養上清を用いた代わりにハイブリドーマ4E5株の培養上清を用いた以外は、前記製造例2と同様にして精製し、モノクローナル抗体2を得た。
【0056】
(比較製造例2:ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の製造)
<免疫原投与工程>
前記製造例2において、前記免疫原1を用いた代わりに前記免疫原3を用いた以外は、前記製造例2と同様にして、マウスに免疫原を投与した。
【0057】
<抗体産生細胞回収工程>
前記製造例2と同様にして、細胞を回収した。
【0058】
<ハイブリドーマ調製工程>
前記製造例2と同様にして、細胞融合を行った。
【0059】
<ハイブリドーマ選択工程>
前記製造例2において、抗原として免疫原1(配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド)を用いた代わりに、免疫原3(配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド)を用いた以外は、前記製造例2と同様にして、ELISA法によるスクリーニング、及び単クローン化を行い、ハイブリドーマB5株を得た。
【0060】
<抗体回収工程>
前記製造例2において、前記ハイブリドーマ2B12株を用いた代わりに前記ハイブリドーマB5株を用いた以外は、前記製造例2と同様にして、抗体を回収した。
【0061】
<精製工程>
前記製造例2において、ハイブリドーマ2B12株の培養上清を用いた代わりにハイブリドーマB5株の培養上清を用いた以外は、前記製造例2と同様にして精製し、モノクローナル抗体3を得た。
【0062】
(試験例1:アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSの認識)
前記モノクローナル抗体1〜3の特異性をin vitroメチル化アッセイを行い、ウエスタンブロット法により確認した。
【0063】
<GSTとTLSとの融合タンパク質の調製>
−プラスミドの調製−
大腸菌DH5α株にトランスフォーメーションした以下のプラスミドDNAをもつシングルコロニーを、アンピシリン含有LB培地で、37℃で一晩震盪培養した。培養後、遠心により大腸菌を回収し、アルカリSDS法で大腸菌から前記プラスミドDNAを抽出した。
前記プラスミドDNAは、配列番号4で表されるGSTとTLSとの融合タンパク質をコードするDNAを含むものであり、Wang et al.、Induced ncRNAs allosterically modify RNA−binding proteins in cis to inhibit transcription.、 Nature 2008年、454(7200)、126−130の記載を参考にして作製した。
−大腸菌による融合タンパク質の発現−
大腸菌Y10 90株にトランスフォーメーションした前記プラスミドDNAをもつシングルコロニーを、アンピシリン含有LB培地で、37℃で一晩震盪培養した。一晩培養した大腸菌5mLをアンピシリン含有LB培地200mLに移し替え、37℃で3時間震盪培養した後、IPTG(最終濃度2.5mM)を加え、20℃で3時間震盪培養した。その後、遠心により大腸菌を回収し、WCEバッファー(25mM HEPES(pH7.9), 150mM NaCl, 1.5mM MgCl
2, 0.2mM EDTA, 0.05% Triton X100, 10% Glycerol)を加え、超音波破砕を行った。次いで、遠心により、融合タンパク質を含む細胞抽出液を回収した。
−融合タンパク質の精製−
前記大腸菌で発現させた融合タンパク質は、GSTアガロースビーズ(シグマアルドリッチ社製)を用い、以下のようにして精製した。
カラムに、前記融合タンパク質の細胞抽出液と、前記GSTアガロースビーズとを加え、4℃で30分間ローテーターによりカラムを旋回させた。その後、遠心により前記GSTアガロースビーズを回収し、WCEバッファーで洗った。この操作を2回繰り返した後、SDSサンプルバッファーを加え、前記融合タンパク質を溶出させた。
【0064】
<タンパク質アルギニンメチル化酵素PRMT1の調製>
−プラスミドの調製−
前記GSTとTLSとの融合タンパク質の調製におけるプラスミドの調製において、GST−TLSのプラスミドDNAを用いた代わりに、以下のPRMT1のプラスミドDNAを用いた以外は同様にして調製した。
前記PRMT1のプラスミドDNAは、配列番号5で表されるPRMT1タンパク質をコードするDNAを含むものであり、前記非特許文献1の記載を参考にして作製した。なお、前記PRMT1の配列情報は、GenBankから、アクセッション番号NM_198318、NP_938074で入手することができる。
−大腸菌によるPRMT1の発現−
前記GSTとTLSとの融合タンパク質の調製における大腸菌による融合タンパク質の発現において、GST−TLSのプラスミドDNAを保有する大腸菌株を用いた代わりに、前記PRMT1のプラスミドDNAを保有する大腸菌株を用いた以外は同様にして行い、PRMT1を含む細胞抽出液を回収した。
【0065】
<タンパク質アルギニンメチル化酵素PRMT5の調製>
−プラスミドの調製−
前記GSTとTLSとの融合タンパク質の調製におけるプラスミドの調製において、GST−TLSのプラスミドDNAを用いた代わりに、以下のPRMT5のプラスミドDNAを用いた以外は同様にして調製した。
前記PRMT5のプラスミドDNAは、配列番号6で表されるPRMT5タンパク質をコードするDNAをpASK−IBAベクター(2−1404−000、IBA社製)のBamHI、EcoRI部位に挿入したものである。前記DNAは、HeLa細胞のRNAから作製したcDNAを鋳型として、PCR法により調製した。なお、前記PRMT5の配列情報は、GenBankから、アクセッション番号NM_006109、NP_006100で入手することができる。
−大腸菌によるPRMT5の発現−
前記GSTとTLSとの融合タンパク質の調製における大腸菌による融合タンパク質の発現において、GST−TLSのプラスミドDNAを保有する大腸菌株を用いた代わりに、PRMT5のプラスミドDNAを保有する大腸菌株を用いた以外は同様にして行い、PRMT5を含む細胞抽出液を回収した。
【0066】
<in vitroメチル化アッセイ>
1μgの前記融合タンパク質(GST−TLS)と、200ngの前記PRMT1及び前記PRMT5のいずれかとを、20μMのS−(5’−Adenosyl)−L−methionine(以下、「SAM」と称することがある)を含むメチレーションバッファー(50mM HEPES(pH8.0)、10mM NaCl、1mM DTT、1mM PMSF)中で、30℃で60分間反応させた。
前記反応液をWCEバッファー(25mM HEPES(pH7.9), 150mM NaCl, 1.5mM MgCl
2, 0.2mM EDTA, 0.05% Triton X100, 10% Glycerol)により洗浄した後、SDSサンプルバッファーを8μL加え、その全量をSDS−PAGEにより分離後、以下のようにしてウエスタンブロット法にて解析した。
【0067】
−ウエスタンブロット−
前記SDS−PAGE後、ニトロセルロース膜(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)へブロッティングした。
前記ブロッティングされた膜を、前記モノクローナル抗体1〜3のいずれかと、1%スキムミルク含有PBS中で1時間、室温で反応させ、次いで、二次抗体であるAnti−rabbit IgG, HRP−linked antibody (Cell Signaling Technology社製)と1%スキムミルク含有PBS中で1時間、室温で反応させた後、発光シグナルをSuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Scientific社製)により検出した。結果を
図2から
図4に示した。
【0068】
図2は、一次抗体として前記モノクローナル抗体1を用いた結果を示し、
図3は、一次抗体として前記モノクローナル抗体2を用いた結果を示し、
図4は、一次抗体として前記モノクローナル抗体3を用いた結果を示す。
図2から
図4中、「M」は、分子量マーカーを示し、「no」は、タンパク質アルギニンメチル化酵素を用いなかった場合の結果を示し、「P1」は、タンパク質アルギニンメチル化酵素としてPRMT1を用いた場合の結果を示し、「P5」は、タンパク質アルギニンメチル化酵素としてPRMT5を用いた場合の結果を示す。
図2から
図4の結果から、前記モノクローナル抗体1を用いた場合には、タンパク質アルギニンメチル化酵素としてPRMT1を用いた場合にのみ前記融合タンパク質のシグナルが確認され、タンパク質アルギニンメチル化酵素を用いなかった場合及びタンパク質アルギニンメチル化酵素としてPRMT5を用いた場合には、前記融合タンパク質のシグナルは、確認されなかった。前記PRMT1は、アルギニン残基の非対称ジメチル化を触媒し、前記PRMT5は、アルギニン残基の対称ジメチル化を触媒することから、前記モノクローナル抗体1は、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを特異的に認識することがわかった。
一方、前記モノクローナル抗体2及び3では、タンパク質アルギニンメチル化酵素を用いなかった場合及びタンパク質アルギニンメチル化酵素としてPRMT5を用いた場合にも前記融合タンパク質のシグナルが確認された。そのため、前記モノクローナル抗体2及び3は、アルギニン残基が非対称ジメチル化されたTLSを特異的に認識するものではないことがわかった。